社長・取締役の自己破産|個人保証・役員の地位・会社の借金の違い |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|

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社長・取締役の自己破産|個人保証・役員の地位・会社の借金の違い

会社の資金繰りが苦しくなったとき、あるいは社長個人の借入れや保証債務が重くなったとき、多くの経営者が最初に迷うのは「会社の借金と自分の借金は、どこまで同じものなのか」という点です。会社は返済を続けられるのに社長個人の返済だけが行き詰まっている場合もあれば、金融機関から個人保証の履行を求められている場合もあり、状況によって検討すべき手続は変わります。

自己破産を考え始めると、「会社も一緒に倒産するのか」「取締役や代表取締役を続けられないのか」「自社の株式はどうなるのか」「会社に貸したお金は戻らないのか」という疑問が同時に生じます。これらは根拠となる法律が別であり、「破産すればこうなる」とまとめて答えられるものではありません。

この記事は、株式会社の社長・代表取締役・取締役ご本人を主な読者として、会社の借金と個人の責任が分かれる場所、破産手続開始の決定が役員の地位に与える影響、保有株式と会社・役員間の貸借の扱い、会社を残す場合と法人・代表者を同時に整理する場合の確認事項を整理します。合同会社等の持分会社には異なる規律があるため、その違いにも触れます。

この記事で分かること

  • 会社の借金のうち、社長個人が支払義務を負うのはどの部分か
  • 破産手続開始の決定を受けると取締役の地位はどうなり、再び就任できるのか
  • 保有する自社株式と、会社の財産はどう区別されるのか
  • 役員貸付金と役員借入金は、資金の向きによって扱いがどう変わるのか
  • 会社を存続させる場合と、法人・代表者を同時に整理する場合の確認事項

会社の資料と個人の資料を分けて確認することで、会社を存続させる場合の課題や、必要な整理の範囲を検討しやすくなります。署名や送金の前に、いったん状況を整理することをおすすめします。

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結論|「誰の借金か」「誰の資産か」「どの地位か」を分けて考える

先に方向性をお伝えします。次の五点を分けて確認できれば、検討すべき手続の範囲はかなり絞り込めます。

  • 会社と社長は別の法的主体です。会社は法人であり(会社法第3条)、株主の責任は出資額を限度とします(同法第104条)。社長であることそれ自体を理由に、会社の借金を個人が負うわけではありません。
  • 個人が負うのは、保証・担保提供・共同債務・役員としての損害賠償責任など、別の原因がある場合です。中小企業の融資では個人保証が付いていることが多く、実際にはこの部分が個人の負担の中心になります。
  • 破産手続開始の決定を受けると、会社との委任関係が終了し、取締役はいったん退任します(会社法第330条、民法第653条第2号)。もっとも、破産は会社法上の取締役の欠格事由ではないため、改めて選任されれば就任できます(同法第331条第1項)。
  • 保有する自社株式は個人の財産であり、会社の預金・不動産・売掛金とは別のものです。株式は破産財団に属し、換価の可否と価値が調査されます。会社の財産がそのまま個人の破産財団になるわけではありません。
  • 会社を残せるかどうかは、会社自身の支払能力で決まります。社長個人の破産だけで会社が当然に消滅することはありませんが、代表者不在、株式の換価、役員との貸借の回収などが事業に影響することはあります。

以下の説明は、株式会社を前提としています。合同会社等の持分会社では、社員(出資者)の破産による法定退社という別の規律があります(会社法第607条第1項第5号)。ご自身の会社がどの形態かを、履歴事項全部証明書で確認してから読み進めてください。

会社の借金と社長個人の責任は、どこで分かれるか

「会社の借金」と呼ばれているものの中には、法律上まったく性質の異なるものが混ざっています。まず、支払義務を負う主体ごとに切り分けます。

株主としての責任は、出資額を限度とする

株式会社の株主は、引き受けた株式の価額を限度として責任を負います(会社法第104条)。これを有限責任といいます。全株式を保有するオーナー社長であっても、株主であることを理由に会社の債務を追加で負担する義務は生じません。

「社長だから会社の借金をすべて負う」「会社が破産すれば社長も必ず破産する」という理解は正確ではありません。個人が支払義務を負うのは、次に述べる別の原因がある場合です。

個人保証・連帯保証・物上保証・共同債務は、それぞれ効果が異なる

中小企業の融資では、代表者が連帯保証人になっている例が多く見られます。連帯保証人は、主たる債務者である会社と並んで支払義務を負い、催告の抗弁・検索の抗弁を主張できません(民法第454条)。会社が返済を続けている間は請求を受けなくても、債務そのものは存在しています。

これに対し、自宅などの個人所有不動産に抵当権を設定しているだけで、保証契約を締結していない場合を物上保証といいます。物上保証では、担保に入れた財産の価値の範囲でしか責任を負わず、不足額について個人が支払義務を負うわけではありません。保証契約書と担保設定契約書の双方を確認しないと、この区別はつきません。保証人として請求を受けた場面での確認事項は、連帯保証人として請求されたときの確認事項を見るで整理しています。

さらに、会社名義ではなく社長個人名義で借り入れて会社の運転資金に充てている場合は、そもそも個人が主たる債務者です。名義と資金の使途が一致していない例は珍しくないため、契約書の当事者欄を必ず確認してください。

取締役としての損害賠償責任は、要件を満たす場合の別問題

保証をしていなければどのような場合も責任を負わない、とまではいえません。取締役は、任務を怠ったときは会社に対して損害賠償責任を負い(会社法第423条第1項)、職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは第三者に対しても損害賠償責任を負います(同法第429条第1項)。同条第2項では、虚偽の登記や計算書類の虚偽記載など、類型化された行為について、注意を怠らなかったことを証明しない限り責任を負うものとされています。

もっとも、これは要件を満たす場合の責任であり、単なる経営不振や結果としての倒産が、直ちにこれらの責任に結び付くわけではありません。粉飾決算による融資など、行為の性質が問われる事情がある場合には、責任の有無を個別に検討する必要があります。この点は、粉飾決算で融資を受けた会社の破産に関する解説を見るで詳しく取り上げています。

会社の債務と社長個人の責任の対応関係
債務・責任の類型 支払義務を負う主体 社長個人への影響 確認する資料
会社名義の融資(個人保証なし) 会社のみ 株主・取締役であることだけを理由に支払義務は生じない 金銭消費貸借契約書、返済予定表
会社名義の融資(代表者が連帯保証) 会社と保証人の双方 会社が返済中でも保証債務は存在し、個人の債務として扱われる 保証契約書、変更契約書、保証解除の書面
社長個人名義の借入れ 社長個人 資金を会社が使っていても、主たる債務者は個人 契約書の当事者欄、入金先口座、会計処理
個人資産への担保設定(物上保証) 会社(担保財産の価値の範囲で個人が負担) 担保財産の価値を超える部分について当然には支払義務を負わない 抵当権設定契約書、登記事項証明書
取締役としての損害賠償責任 要件を満たす取締役 任務懈怠や悪意重過失など、要件の充足が個別に判断される 議事録、稟議書、決算書類、経緯の記録
会社の公租公課 会社 会社の税金が当然に社長へ移るわけではない(第二次納税義務等は別途要件の検討が必要) 納税証明書、滞納の通知、納付計画

登記上の役職と、保証の有無は連動しません。取締役を退任しても、代表者を交代しても、既に締結した保証契約が自動的に解除されるわけではありません。保証を外すには、原則として債権者との間で保証解除の合意が必要です。退任や代表者変更を検討する場合は、その前に保証契約の内容と、債権者に求める手続を確認してください。

保証意思の公正証書は、経営者保証には原則として不要

事業のための貸金等を個人が保証する場合、契約に先立ち公正証書で保証意思を表示することが必要とされています(民法第465条の6)。ただし、主たる債務者が法人である場合のその理事・取締役・執行役又はこれらに準ずる者、総株主の議決権の過半数を有する者などは、この規定の適用から除かれます(同法第465条の9)。したがって、取締役や代表取締役が自社の借入れを保証する場合には、通常この公正証書は必要とされません。「経営者保証にはすべて公正証書が要る」という説明は正確ではありません。

他方、経営から離れた親族や従業員が保証人になっている場合には、適用除外に当たらないことがあります。保証人が誰かによって結論が変わるため、保証人欄の記載を確認してください。

個人の破産・免責と、会社の債務の関係

「破産すれば借金がなくなる」と一言でいわれることがありますが、実際には複数の段階に分かれており、それぞれ生じる効果が異なります。会社の債務との関係も、段階ごとに整理する必要があります。

相談・受任・申立て・開始決定・免責許可・免責確定は別の段階

破産手続は、裁判所が手続の開始を決定し、破産管財人を選任して、管財人が財産を金銭に換えて債権者に配当する手続です。財産が少ない場合には、管財人を選任しないまま終えることもあります。開始決定によって当然に返済を免れるわけではなく、債務を免れるには免責の許可を受ける必要があります(破産法第253条第1項)。

破産手続の段階と、その段階で生じる主な効果
段階 その段階で生じる主なこと まだ生じていないこと
弁護士への相談 資料に基づく方針の検討。手続を選ぶ前の整理 債権者への通知、法的効果は生じない
受任(依頼)と受任通知 債権者への通知により、窓口が弁護士に移ることが多い 債務は消滅しない。保証債務も残る
破産手続開始の申立て 裁判所への申立て。予納金・必要書類の提出 開始決定前であり、財産の管理処分権はまだ移らない
破産手続開始の決定 破産財団に属する財産の管理処分権が破産管財人に専属する(破産法第78条第1項)。会社との委任関係が終了する 債務は免責されていない
免責許可の決定 裁判所が免責を許可する判断を示す 確定前であり、効力はまだ生じていない
免責許可決定の確定 配当を除き、破産債権について責任を免れる。復権する(破産法第253条第1項、第255条第1項第1号) 非免責債権は残る。会社の債務は消滅しない

社長個人の免責は、会社の債務を消さない

免責は、破産した個人の責任を免れさせるものです。主たる債務者である会社の債務がなくなるわけではありませんし、他に保証人がいる場合、その保証人の債務も別に残ります。担保が設定されていれば、担保権の行使も別に検討されます。会社の破産と個人の免責は、目的も効果も異なる制度です。

逆に、会社が破産して法人格が消滅しても、代表者の保証債務は当然には消えません。保証債務の整理は、会社の手続とは別に方針を決める必要があります。

債権者を選んで破産することはできない

「個人保証をしている金融機関だけを対象にしたい」という相談を受けることがありますが、破産手続では債権者を選べません。会社が返済を続けている借入れの保証債務も、現に負担している債務である以上、債権者一覧に記載して申告し、検討の対象とする必要があります。

申告漏れは、後の問題につながります。破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権は、免責の対象から除かれます(破産法第253条第1項第6号)。保証債務は、通知が届いていないために失念しやすい類型です。

信用保証協会の保証が付いている場合の関係

信用保証付きの融資では、会社・金融機関・信用保証協会・個人保証人の四者が関係します。会社が返済できなくなった場合、信用保証協会が金融機関に対して貸付残額を支払うことがあり、これを代位弁済といいます。代位弁済をすると、信用保証協会は会社および保証人に対して、代位弁済額を元本とする債権を取得します。これを求償権といいます。

したがって、「保証協会が支払えば社長の負担も消える」わけではありません。請求先が金融機関から信用保証協会に移り、求償権として請求が続くことになります。代位弁済の通知が届いたら、金額、内訳、請求主体を確認してください。

免責されない債権がある

免責許可の決定が確定しても、次のような請求権については責任を免れません(破産法第253条第1項各号)。実務でよく問題になるのは、租税等の請求権(第1号)、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(第2号)、故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(第3号)、雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権(第5号)、知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(第6号)です。

ここで注意が必要なのは、個人に帰属する税金等と、会社の公租公課は別だという点です。会社の滞納税金が当然に社長へ移るわけではありません。他方、役員としての損害賠償債務が常に非免責になるわけでもなく、保証債務であれば必ず免責されると決まっているわけでもありません。いずれも、原因となった事実関係を踏まえて要件を検討することになります。免責されない債権の範囲については、非免責債権に関する解説を見るもご参照ください。

会社の借入れ・口座への影響は、契約内容と金融機関の対応による

代表者の破産が会社の借入契約にどう影響するかは、契約条項によって異なります。期限の利益喪失事由、保証人の変更義務、代表者変更時の報告義務などが定められていることがあり、その場合には金融機関との協議が必要になります。会社名義の預金口座や決済への影響も、金融機関の対応によって差があります。

「社長が破産すれば会社の口座も必ず凍結される」とも、「会社の口座には一切影響しない」とも言い切れません。取引約定書と保証契約書を確認し、いつ、誰に、何を伝えるかを決めてから動くことが重要です。

保証契約書、株主名簿、役員貸付金・役員借入金の元帳を確認すると、どの債務が個人に帰属し、どの財産が調査の対象になるのかを具体的に検討できます。

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取締役・代表取締役の地位は、破産でどうなるか

ここは誤解の多いところです。「破産しても役員の地位はそのまま」という説明も、「復権するまで株式会社の取締役にはなれない」という説明も、いずれも正確ではありません。退任と再選任を分けて考えます。

開始決定により委任関係が終了し、いったん退任する

株式会社と取締役の関係には、委任に関する規定が適用されます(会社法第330条)。委任は、受任者が破産手続開始の決定を受けたことによって終了します(民法第653条第2号)。したがって、取締役本人について開始決定があると、その時点で委任関係が終了し、取締役を退任します。代表取締役も取締役であることが前提ですから、代表取締役の地位もあわせて失われます。

破産は、会社法上の取締役の欠格事由ではない

会社法第331条第1項は、取締役となることができない者として、法人(第1号)、一定の犯罪により刑に処せられ執行を終わるなどしてから2年を経過しない者(第3号)、その他の法令違反により拘禁刑以上の刑に処せられその執行が終わるまでの者(第4号)を挙げています。ここに「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」は含まれていません。つまり、破産それ自体は取締役の欠格事由ではありません。

再び取締役になるには、改めて選任と就任承諾が必要

欠格事由でない以上、復権を待たずに再び取締役に就任できます。ただし、自動的に復職するわけではありません。役員は株主総会の決議によって選任され(会社法第329条第1項)、本人の就任承諾が必要です。代表取締役は、取締役会設置会社では取締役会の決議で選定し(同法第362条第2項第3号、第3項)、取締役会を設置していない会社では定款、定款の定めに基づく取締役の互選、又は株主総会の決議によって定めます(同法第349条第3項)。

退任と就任は登記事項の変更に当たるため、2週間以内に本店の所在地において変更の登記をしなければなりません(会社法第915条第1項)。退任の登記だけを済ませて就任の登記を失念する例があるため、司法書士等と手順を確認してください。

取締役の退任から再選任までの各段階と確認事項
段階 生じること 主な根拠 確認すること
破産手続開始の決定 会社との委任関係が終了し、取締役を退任する。代表取締役の地位も失われる 会社法第330条、民法第653条第2号 決定の日、他の取締役の有無、代表権の空白の有無
欠格事由の有無 破産は会社法上の取締役の欠格事由ではない 会社法第331条第1項 刑事事件など、他の欠格事由に当たる事情がないか
再選任の決議 株主総会の決議による選任が必要。自動的な復職ではない 会社法第329条第1項 誰が議決権を行使できるか、招集手続、定足数
就任承諾 本人の承諾によって就任の効力が生じる 会社法第330条(委任の成立) 就任承諾書、本人確認資料
代表取締役の選定 取締役会設置会社は取締役会の決議、非設置会社は定款・互選・株主総会の決議による 会社法第362条第2項第3号・第3項、第349条第3項 機関設計、定款の定め、議事録
変更の登記 退任と就任について、2週間以内に変更の登記をする 会社法第915条第1項 添付書類、印鑑の届出、登録免許税

会社法第346条第1項の権利義務取締役は、「任期の満了又は辞任により退任した役員」について、後任が就任するまで役員としての権利義務を有するとする規定です。破産手続開始の決定による退任は、任期満了でも辞任でもありません。破産による退任にも当然に同条が適用されると考えるのは適切ではなく、員数が欠ける場合の対応は、一時役員の選任の申立て(同条第2項)を含めて個別に検討する必要があります。

取締役が1人の会社、全株式を保有している会社では、先に手順を検討する

取締役が代表者1人だけの会社では、開始決定によって取締役が不在となり、契約締結、銀行取引、登記申請などの日常業務が滞るおそれがあります。取引先や従業員にも影響が及びます。

本人が全株式を保有している会社では、検討事項がさらに増えます。再選任のための株主総会で誰が議決権を行使するのかは、株式が破産財団に属したままか、破産管財人が財団から放棄するか、議決権行使が管理処分権の行使に当たるかによって扱いが変わり得ます。「本人が従来どおり議決できる」とも「管財人が会社経営の全権を取得する」とも決まっていません。申立て前に、後任の候補、招集手続、想定される空白期間を検討しておく必要があります。

なお、会社自身が破産する場合には、その取締役等に、破産管財人等の請求に対する説明義務が生じます(破産法第40条第1項第3号)。会社と個人の手続が並行するときは、この義務も踏まえて対応することになります。

合同会社等の持分会社は、規律が異なる

合同会社・合名会社・合資会社といった持分会社の「社員」は、一般的な意味の従業員ではなく出資者を指します。持分会社の社員は、破産手続開始の決定によって退社します(会社法第607条第1項第5号)。株式会社の株主とはまったく異なる規律です。

ただし、持分会社は、社員が同項第5号から第7号までに掲げる事由の全部又は一部によっては退社しない旨を定款で定めることができます(同条第2項)。定款にこの定めがあるかどうかで結論が変わるため、定款の原本を確認してください。なお、同法第608条は、社員が死亡した場合等に相続人が持分を承継する旨を定款で定められるとする規定であり、破産の場面の例外を定めた条文ではありません。

社員が1人の合同会社では、社員の退社によって社員が欠けることになり、業務執行社員・代表社員の地位、持分の払戻し、会社の存続の可否まで検討が必要になります。株式会社の再選任の説明をそのまま当てはめることはできません。

許認可・業法上の制限は、会社法とは別に確認する

会社法上は再選任が可能でも、業種によっては、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者であることが、許可・免許・登録の欠格事由とされています。たとえば、建設業の許可(建設業法第8条第1号)、宅地建物取引業の免許(宅地建物取引業法第5条第1項第1号)、警備業(警備業法第3条第1号)では、いずれも「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」が欠格事由として定められています。役員がこれに該当する場合、会社の許認可自体に影響することがあります。

これらの制限は、免責許可の決定が確定するなどして復権すれば解消されます(破産法第255条第1項第1号)。もっとも、制限の対象者、発生時期、届出の要否、更新への影響は業法ごとに異なります。会社法上再選任できるからといって、どの業種でも従来どおり営業できるとは限りません。所管する官公庁の資料で、自社の業種について確認してください。資格制限と復権の全体像は、破産による資格制限と復権に関する解説を見るで整理しています。

保有する会社株式と、会社の財産

破産手続では、破産手続開始の時において破産者が有する一切の財産が破産財団となります(破産法第34条第1項)。ここでいう「破産者が有する財産」は、あくまで個人名義の財産です。

会社の財産は、社長個人の破産財団に入らない

会社の預金、不動産、車両、機械、売掛金は、会社という別の法人に帰属する財産です。社長が全株式を保有していても、会社財産がそのまま個人の破産財団になることはありません。個人の破産財団に入るのは、社長が保有する「株式」という財産です。個人の財産のうち手元に残せる範囲については、自己破産で手元に残せる財産に関する解説を見るをご参照ください。

この区別は、会社を残しながら個人だけを整理する場合に特に重要です。会社の事業用資産が直ちに処分されるわけではない一方、株式という形で会社の支配関係が調査の対象になる、という構造を押さえてください。

保有株式は、財団に属する財産として調査・換価の対象になる

破産手続開始の決定があると、破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は破産管財人に専属します(破産法第78条第1項)。株式についても、管財人が価値を調査し、換価できるかどうかを検討します。換価の方法や、権利を放棄して財団から外す判断など、一定の行為には裁判所の許可が必要とされています(同条第2項)。

ここで、「非上場だから価値はゼロ」「譲渡制限が付いているから処分されない」「赤字なので申告しなくてよい」といった扱いは適切ではありません。株式は株主が譲渡できるのが原則であり(会社法第127条)、譲渡制限株式であっても、会社の承認手続を経る仕組みが定められているにすぎません(同法第2条第17号、第136条以下)。承認が得られない場合には、会社又は指定買取人が買い取る手続が用意されています。譲渡制限は、換価の手順を規律するものであって、換価そのものを否定するものではありません。

株価は、帳簿上の純資産だけでは決まらない

株式の評価は、会社の資産・負債の内容、収益状況、持株割合、株式の権利内容、譲渡制限の有無など、複数の要素を踏まえて検討されます。相続税評価額、額面、資本金の額、1株当たりの帳簿価額をそのまま換価額に置き換えることはできません。

実務では、決算書、勘定科目内訳明細書、不動産や保険の含み損益、役員貸付金・役員借入金の残高、簿外債務の有無などを踏まえて、価値の見込みを検討していくことになります。事業に価値があると評価されれば、株式に換価価値が認められる可能性があります。評価方法の考え方は、非上場株式の評価方法と買取価格に関する解説を見るで説明しています。

議決権を誰が行使するのか、株式が移転するとどうなるのか

破産管財人による株式の管理処分と、会社の日常的な業務執行は別のものであり、管財人が当然に会社の経営を引き継ぐわけではありません。役員の再選任や重要な決議を予定している場合は、議決権行使に誰が関与するのかを事前に整理しておく必要があります。

株式が第三者に移転した場合、会社が当然に消滅するわけではありませんが、支配関係と経営への関与には影響します。取引先との関係、金融機関との取引方針、従業員の処遇にも波及し得ます。

申立て前に、親族や関連会社へ株式を無償で譲渡したり、著しく低い価額で売却したりする対応は、後の手続で否認や免責の判断に影響し得ます(破産法第160条、第252条第1項参照)。「会社を残す方法」として株式を先に移す、という進め方は避け、順序と方法を相談のうえで決めてください。

役員貸付金と役員借入金|資金の向きを取り違えない

会社と役員の間の貸借は、呼び方が紛らわしく、相談の場でも取り違えが起こりやすい論点です。混乱を避けるため、必ず「会社の帳簿から見た名称」で確認します。

役員貸付金と役員借入金の対比
資金の向き 会社の帳簿上の表示 会社にとって 役員個人にとって 個人が破産する場合の主な確認事項
会社から役員へ資金が出ている 役員貸付金 資産(会社が持つ債権) 会社に対する債務 債権者一覧への記載、返済条件、会社側からの請求の見込み
役員から会社へ資金が入っている 役員借入金 負債(会社が負う債務) 会社に対する貸付債権(個人の財産) 財産目録への計上、回収可能性、管財人による回収が会社の資金繰りに与える影響

役員が会社に貸している場合(会社の帳簿では役員借入金)

この場合、社長個人は会社に対する貸付債権を持っています。これは個人の財産ですから、破産手続では財産目録に計上し、回収可能性を調査する対象になります。「自分の会社に貸したお金だから申告しなくてよい」という扱いはできません。

会社を残す場合には、この債権が破産管財人の管理下に入り、回収の可否が検討されます。会社にとっては、返済を求められる可能性が生じるということです。もっとも、契約上の返済期限や条件を無視して直ちに全額が回収されると決まっているわけではなく、金銭消費貸借契約書の有無、返済条件、会社の支払能力を踏まえて、管財人と協議しながら扱いが決まります。

なお、この債権を「社長の役員貸付金」と呼ぶ人がいますが、会社の帳簿では役員借入金です。呼称が混在すると、資料の突合や説明の場面で誤解が生じます。会社の総勘定元帳の勘定科目名で統一してください。平時における解消方法や税務上の論点は、役員貸付金・役員借入金の税務と法務に関する解説を見るで扱っています。

会社が役員に貸している場合(会社の帳簿では役員貸付金)

この場合、社長個人は会社に対して債務を負っています。個人の破産では、会社も債権者の一人として債権者一覧に記載することになります。

他方、会社が破産する場合には、会社側の破産管財人が、この貸付金を会社の財産として調査し、回収を検討します。会社と個人のどちらが破産するかによって、調査・回収を行う主体が変わる点を取り違えないでください。会社・個人の双方が破産する場合には、それぞれの管財人の間で調整が必要になります。

帳簿の残高だけでは、貸借の存在も回収可能性も確定しない

役員貸付金・役員借入金の残高は、実際の資金移動と一致しないことがあります。立替経費の精算漏れ、仮払金の未整理、役員報酬の未払計上、私的支出の付替えなどが混在していると、法律上の貸借としての性質そのものが争われることもあります。

金銭消費貸借契約書、総勘定元帳、通帳の入出金、経費精算の記録、役員報酬の議事録と源泉徴収の記録を突き合わせ、いつ、誰から誰へ、いくらが、どのような趣旨で動いたのかを確認してください。役員報酬・賞与・退職慰労金についても、給与だからといって一律に自由財産として扱えるわけではなく、支給時期、決議の有無、金額の相当性を含めて確認が必要です。

相殺・債権放棄・報酬への振替は、法務・会計・税務を分けて検討する

役員貸付金と役員借入金を相殺する、会社が債権を放棄する、貸倒れとして処理する、役員報酬に振り替えるといった対応が検討されることがあります。これらは、法律上の効力、会社法上必要な手続、会計上の処理、税務上の取扱いがそれぞれ別に判断されます。

「帳簿から消せば申告は不要」「相殺すれば問題がなくなる」という理解は誤りです。特に、支払不能に近い時期に行った処理は、否認や免責の判断で問題になり得ます(破産法第160条、第162条参照)。実行前に、時期、相手方、対価の有無、会社の資金繰りへの影響を整理して相談してください。

会社を残すか、会社と個人を同時に整理するか

実際の相談では、次の四つの場面のいずれかに当てはまることが多くあります。会社と個人それぞれの返済可能性、事業の収益性、資金繰り、担保・保証の状況、従業員や取引先への影響から検討します。会社側の手続の選び方は法人破産・民事再生・私的整理・廃業の違いと選び方を見る、双方を同時に申し立てる場合の進め方は法人破産と代表者の個人破産を同時に進める手続を見るで扱っています。

ここで注意したいのは、会社の破産手続開始の原因が支払不能又は債務超過であるのに対し(破産法第15条第1項、第16条第1項)、個人については支払不能が原因である点です(同法第15条第1項)。会社が債務超過でも資金が回っている、個人は資産があるが支払不能である、といった組合せがあり得るため、両者を混同しないでください。

四つの場面の比較(その1)|検討の前提と債務の扱い
比較項目 会社は存続し、役員個人だけが破産する場合 会社が破産し、代表者は破産しない場合 会社と代表者の双方が破産を申し立てる場合 会社の再建又は廃業と、経営者保証の私的整理等を組み合わせる場合
検討の前提 会社の資金繰りが回っており、事業を継続できる見込みがあること 会社の支払能力はないが、代表者に十分な資産があるか、保証債務を別の方法で整理できること 会社・代表者のいずれも支払不能又は債務超過の状態にあること 事業に継続価値があるか、廃業を選ぶ場合でも早期の着手に経済合理性が見込めること
会社債務の扱い 会社が引き続き返済する。代表者の破産が期限の利益喪失事由に当たらないかを取引約定書で確認する 破産手続で清算され、配当後に法人格が消滅する 会社側の破産手続で清算される 再建型の手続、事業譲渡、私的整理、解散・清算などの選択によって異なる
個人債務・保証の扱い 保証債務を含めて個人の破産手続で処理し、免責の可否を判断する 保証債務は残る。任意の弁済、私的整理、個人再生などを別に検討する 会社の債務が保証債務として個人側の手続に反映される 経営者保証に関するガイドラインなどの枠組みで、対象債権者との合意を目指す
事業継続 継続を前提とするが、代表者不在の期間や取引先の反応を見込む必要がある 原則として継続しない。事業譲渡を行う場合は別に検討する 原則として継続しない 継続を目指す場合と、円滑な廃業を目指す場合の双方があり得る
四つの場面の比較(その2)|役員の地位・財産・確認資料
比較項目 会社は存続し、役員個人だけが破産する場合 会社が破産し、代表者は破産しない場合 会社と代表者の双方が破産を申し立てる場合 会社の再建又は廃業と、経営者保証の私的整理等を組み合わせる場合
役員の地位 開始決定で退任する。再選任の可否と手順、代表権の空白を事前に検討する 代表者の地位は破産を理由に失われない。清算に伴う職務は別に生じる 個人側の開始決定で退任する。会社側では説明義務等が及ぶ 個人の破産を回避できれば退任は生じない。合意の成否により結論が変わる
株式・会社との貸借 保有株式と会社に対する債権が財団に属し、調査・換価の対象になる 会社側の管財人が役員貸付金等を調査し、回収を検討する 双方の管財人が関与し、債権債務の調整が必要になる 資産の開示と経済合理性の説明が前提になる
確認資料 個人の債権者一覧、保証契約書、株主名簿、役員との貸借の元帳、個人の通帳 会社の決算書、資金繰り表、債権者一覧、保証契約書、個人の資産一覧 会社と個人の双方の債権者一覧・財産資料・貸借の記録 決算書、事業計画、資産負債の明細、対象債権者の一覧、返済状況
主な注意点 会社の存続は会社自身の支払能力で決まる。株式・貸借の扱いが事業に影響し得る 保証債務が残ることを前提に、資金の手当てと整理方針を決める 関連事件として進行を調整できても、財産・債権者・費用は別に管理される 枠組みの利用には要件があり、希望すれば当然に適用されるものではない

判断を左右する材料

どの場面を選ぶかは、次のような事実によって変わります。数値の優劣だけで機械的に決まるものではありません。

  • 会社の営業損益と資金繰りの見通し。運転資金が何週間もつのか(会社の資金繰りが厳しいときの初動を見る)
  • 担保の設定状況と、担保物件の処分見込額
  • 個人保証の総額と、個人の資産・収入で対応できる範囲
  • 役員貸付金・役員借入金の残高と、その回収・返済が資金繰りに与える影響
  • 従業員の雇用、給与・社会保険料の支払状況、取引先の与信
  • 許認可の有無と、役員の資格制限が営業に与える影響

会社と代表者の利害が対立する場面があります。役員貸付金の回収、否認の対象となり得る行為の評価、責任追及の可否などが典型です。この場合、同一の弁護士が会社と役員の双方を代理できるとは限らず、依頼関係と代理体制を確認する必要があります。また、会社の資金から個人の申立費用を支出してよいかは、当然には決まりません。支出の前にご相談ください。

経営者保証に関するガイドラインという選択肢

経営者保証に関するガイドラインは、平成25年12月に公表され、平成26年2月1日から適用されている自主的なルールです。ガイドライン自体に「法的拘束力はないものの、主たる債務者、保証人及び対象債権者によって、自発的に尊重され遵守されることが期待されている」ものと位置付けられています。希望すれば当然に適用される法定の免責制度ではありません。

既存の保証債務を整理する場面では、保証契約が所定の要件を満たすこと、主たる債務者について法的債務整理手続又は準則型私的整理手続が申し立てられ、係属し、又は終結していること、破産手続による配当よりも多くの回収が見込まれるなど対象債権者にとって経済的な合理性が期待できること、保証人に免責不許可事由がないことなどが要件とされ、あわせて資力を誠実に開示し、その内容の正確性を表明保証することが求められます。

いわゆる残存資産についても、一定期間の生計費に相当する額や華美でない自宅等を残すことを検討すべき場合があるとされていますが、これは対象債権者との合意によって決まるものです。「必ず自宅を残せる」「必ず一定額を手元に残せる」「経営者なら誰でも利用できる」といった説明はできません。なお、新たな保証契約の締結や既存保証の解除を求める場面と、既に生じた保証債務を整理する場面とでは、確認する要件が異なります。廃業を選ぶ場合の考え方については、別途「廃業時における『経営者保証に関するガイドライン』の基本的考え方」が公表されています。ガイドラインの位置付けと使える場面は経営者保証ガイドラインと法人破産に関する解説を見る、要件と自宅の扱いは経営者保証ガイドラインの要件と自宅維持の可能性に関する解説を見るをご参照ください。

また、一般の消費者向けローンやカードローンなど、事業に関係しない個人の債務まで同じ枠組みで整理できるわけではありません。個人の債務の内訳によっては、ガイドラインだけでは解決しないことがあります。

任意整理・個人再生も選択肢に入る

個人の債務整理には、破産のほかに、債権者と個別に返済条件を協議する任意整理や、裁判所の手続で債務を圧縮する個人再生があります。個人再生では、債務の額、継続的な収入の見込み、清算価値との比較などが要件として検討されます。ここでも、会社の債務そのものと、本人が負う保証債務は分けて把握する必要があります。

もっとも、保証債務の額が大きい場合、個人再生の要件を満たさないことがあります。住宅を残せるかどうかを含め、要件の充足は資料を確認して判断することになります。

申立て前に確認すること

手続の選択は、資料を確認しなければ判断できません。もっとも、すべてがそろうまで相談を待つ必要はありません。手元にあるものから順にご持参いただければ、不足資料の取り寄せ方法もあわせて整理できます。

相談前に用意したい資料

会社の資料と個人の資料を分けてお持ちいただくと、どの債務が誰に帰属するのかを早く確認できます。

借入れ・保証に関するもの

  • 会社と個人それぞれの債権者一覧(債権者名、借入残高、返済予定)
  • 金銭消費貸借契約書、保証契約書、変更契約書、保証解除に関する書面
  • 担保設定契約書、担保物件の登記事項証明書
  • 督促状、代位弁済の通知、差押えに関する書類

会社と役員に関するもの

  • 履歴事項全部証明書、定款(持分会社の場合は退社に関する定めの有無)
  • 株主名簿、機関設計が分かる資料(取締役会の設置の有無)
  • 許認可に関する書類(許可証、更新期限、届出の記録)
  • 役員の選任・報酬に関する株主総会・取締役会の議事録

財産と資金繰りに関するもの

  • 直近の決算書、法人税等の申告書、勘定科目内訳明細書
  • 試算表、資金繰り表
  • 会社と個人それぞれの通帳(記帳済みのもの)
  • 個人の資産一覧(不動産、車両、保険、有価証券、退職金の見込額)
  • 株式に関する資料(保有株数、持株比率、譲渡制限の有無)

会社・役員間の取引に関するもの

  • 役員貸付金・役員借入金の総勘定元帳と内訳明細
  • 会社と役員の間の契約書、入出金の記録
  • 立替金・仮払金・経費精算の記録
  • 役員報酬・賞与・退職慰労金に関する議事録と支給の記録

今後の支払に関するもの

  • 給与、家賃、仕入れ、税金、社会保険料の支払予定
  • 会社と個人それぞれの手元資金
  • 保証の履行や契約の更新を求められている場合は、その期限

判断の前に相談したい行為

次の行為は、後の手続で否認の対象となったり、免責の判断や役員の責任の有無に影響したりすることがあります。日常の事業支出や通常の返済がすべて問題になるという意味ではありませんが、支払の主体、目的、資金の出どころ、時期、相手方、事業への影響を整理してからご相談ください。

  • 親族や関連会社への財産の移転、株式の無償譲渡や著しく低い価額での売却
  • 役員が会社に対して有する債権の放棄、会社が役員に対して有する債権の免除
  • 特定の債権者だけへの返済、担保の追加提供
  • 帳簿・会計データの修正や廃棄、名義の変更、入金口座の付替え
  • 直前の不自然な役員報酬の増額、賞与や退職慰労金の支給
  • 役員の変更登記、代表者の交代、株式の譲渡
  • 新たな保証契約への署名、会社資金の個人的な使用

契約書、帳簿、通帳、会計データ、メール、電子取引の記録は、会社のものと個人のものを分けて保存してください。資料が残っていれば、行為の目的や必要性を説明しやすくなります。

よくある質問

社長個人が自己破産すると、会社も必ず倒産しますか。

必ず倒産するわけではありません。会社と社長は別の法的主体であり、会社が支払を続けられるのであれば存続します。ただし、破産手続開始の決定によって取締役を退任するため代表権の空白が生じ得ること、保有株式や会社に対する債権が調査・換価の対象になること、取引契約に期限の利益喪失事由が定められている場合があることから、事業への影響は個別に検討する必要があります。

自己破産をすると、取締役や代表取締役を続けられませんか。

破産手続開始の決定により会社との委任関係が終了するため、いったん退任します(会社法第330条、民法第653条第2号)。もっとも、破産は会社法上の取締役の欠格事由ではないため(同法第331条第1項)、復権を待たずに再び就任することは可能です。ただし自動的に復職するわけではなく、株主総会の決議による選任と就任承諾、代表取締役については選定の手続、そして変更の登記が必要です。

会社の借金を個人保証していなければ、自分で返済する必要はありませんか。

保証をしていなければ、株主・取締役であることだけを理由に会社の借金の支払義務を負うことはありません(会社法第104条)。ただし、個人名義での借入れ、共同債務、担保の提供がないかを契約書で確認する必要があります。また、任務を怠った場合の会社に対する責任や、悪意・重過失があった場合の第三者に対する責任は、要件を満たせば別に生じ得ます(同法第423条第1項、第429条)。

会社を辞めたり代表者を変更したりすれば、個人保証はなくなりますか。

なくなるとは限りません。保証契約は債権者との間の契約であり、退任や代表者変更によって当然に解除されるものではありません。保証を外すには、原則として債権者との合意が必要です。契約書に代表者変更時の取扱いが定められている場合もあるため、退任や交代を検討する前に、保証契約書の内容と債権者の対応を確認してください。

非上場の会社株式は、破産するとどうなりますか。

保有株式は破産財団に属する個人の財産として、価値の調査と換価の可否の検討の対象になります(破産法第34条第1項、第78条)。非上場であることや譲渡制限が付いていることは、直ちに価値がないことを意味しません。評価は、会社の資産・負債、収益状況、持株割合、株式の権利内容などを踏まえて検討されます。会社の預金や不動産といった会社財産自体が個人の破産財団に入るわけではありません。

会社に貸したお金と、会社から借りたお金はどう扱われますか。

向きによって扱いが逆になります。役員が会社に貸している場合(会社の帳簿では役員借入金)、その債権は個人の財産ですから財産目録に計上し、回収可能性を調査します。会社が役員に貸している場合(会社の帳簿では役員貸付金)、役員は会社に対する債務者であり、会社も債権者の一人として扱われます。帳簿の残高だけでは確定しないため、契約書、元帳、通帳、経費精算の記録と突き合わせて確認します。

会社と社長は同時に破産しなければなりませんか。

同時申立てが常に必要というわけではありません。会社が事業を継続できる場合には、個人だけの整理を検討することもあります。もっとも、会社に支払能力がなく代表者が保証している場合には、双方の手続を並行して進めることが多くあります。関連する事件として進行を調整できることはありますが、財産、債権者、費用は会社と個人で別に管理されます。同じ破産管財人が選任されるとも、費用が半分になるとも決まっていません。

経営者保証ガイドラインを利用して、個人の破産を避けられますか。

避けられる場合がありますが、希望すれば当然に適用される制度ではありません。ガイドラインには法的拘束力がなく、対象債権者との合意によって進めるものです。保証契約の内容、主たる債務者について法的債務整理手続又は準則型私的整理手続が申し立てられ、係属し、又は終結していること、対象債権者にとっての経済的合理性、免責不許可事由がないことなどが要件とされ、資力の誠実な開示も求められます。残せる資産の範囲も合意によって決まるため、事前に資料を確認して見通しを検討することになります。

まとめ

  • 会社と社長は別の法的主体です。株主の責任は出資額を限度とし、個人が支払義務を負うのは保証・担保提供・共同債務・役員としての損害賠償責任など、別の原因がある場合です。
  • 免責が確定しても、会社の債務や他の保証人の債務は消えません。債権者を選んで破産することもできず、会社が返済中の保証債務も申告の対象です。
  • 破産手続開始の決定で取締役はいったん退任しますが、破産は会社法上の欠格事由ではないため、改めて選任されれば就任できます。登記と代表権の空白に注意してください。
  • 会社の財産は個人の破産財団に入りませんが、保有株式と会社に対する債権は個人の財産として調査されます。「非上場だから価値ゼロ」とは扱えません。
  • 役員貸付金と役員借入金は、会社の帳簿から見た名称で確認してください。向きを取り違えると、誰が誰に請求するのかを見誤ります。
  • 会社を残せるかどうかは会社自身の支払能力で決まります。四つの場面を比較し、資料に基づいて方針を決めてください。
  • 次の行動としては、会社の資料と個人の資料を分けて集め、株式譲渡・役員変更・保証契約への署名・関連当事者への支払を行う前に確認することをおすすめします。

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会社の決算書・株主名簿・役員との貸借の元帳と、個人の債権者一覧・保証契約書・通帳を分けてお持ちいただければ、どの債務が個人に帰属し、どの財産が調査の対象になるのか、会社を存続させる場合に何が課題となるのかを整理できます。手続を選ぶ前の段階でも、確認すべき資料と期限を明確にできます。

当事務所では、法人破産・事業者破産、借金問題(債務整理)について、初回の法律相談を無料でお受けしています(事前のご予約をお願いしています。オンライン相談・出張相談は無料相談の対象外です。対象や条件は「初めての方へ」でご確認ください)。

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弁護士紹介

藤井 貴之(ふじい たかゆき)
弁護士・公認会計士/兵庫県弁護士会所属・日本公認会計士協会兵庫会所属
弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所 代表弁護士

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参考資料(本文で参照した法令・公的資料)

本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言を行うものではありません。手続の選択、免責の可否、役員の地位や許認可への影響、株式の評価、役員との貸借の扱いは、契約内容、資産負債の状況、時期その他の個別事情により異なります。実際のご対応にあたっては、最新の法令・公式情報をご確認のうえ、弁護士にご相談ください。記載の内容は令和8年9月時点の情報に基づきます。

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