非上場株式の税務評価を否認されたら|相続・贈与・低額譲渡の争点 |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|

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非上場株式の税務評価を否認されたら|相続・贈与・低額譲渡の争点

自社株などの非上場株式を相続・贈与で取得した後や、親族が経営する会社など関係のある法人へ譲渡した後に、税務調査で評価額が低すぎると指摘されることがあります。最初に確認すべきなのは、評価方式の名称ではなく、どの税目について、誰の、いつの時点の評価が問題とされているかです。本記事では、日本の居住者である個人が発行会社以外の内国法人へ非上場株式を低い価額で譲渡した場面を主な例に、争点、証拠、手続を整理します。結論は、取引の時点、株主構成、会社の資産や業績などの事情により異なります。

この記事のポイント

  • 税目、取引の類型、評価の時点、評価される株主の立場、手続の段階を先に特定します。
  • 相続税評価額、売買や和解で決めた価格、会社法上の価格は、相互にそのまま流用できません。
  • 個人が法人へ時価の2分の1未満の対価で株式を譲渡すると、時価で譲渡所得を計算します。2分の1以上でも問題が残ることがあります。
  • 配当還元方式は、持株が少ない、無配であるといった事情だけでは使えません。主な例では、譲渡した個人の譲渡直前の議決権で判定します。
  • 反論は、事実・方式・入力値・税目固有の調整のどこに差があるかを分けて組み立て、期限の管理と並行して進めます。

否認された評価を検討する前に確認すること

評価額の議論に入る前に、次の5点を確定させます。これらが定まらないまま評価額だけを比べても、課税庁の指摘とかみ合いません。

  • 税目:相続税、贈与税、所得税、法人税のどれか
  • 当事者:譲渡した人と取得した人は個人か法人か、発行会社が関わるか
  • 評価日:相続開始日、贈与日、譲渡日など
  • 否認の理由:株主区分、評価方式、計算の数値、通達によらない評価のどれか
  • 手続の段階:調査中、修正申告を勧められた後、更正処分を受けた後のどれか

相続・贈与・低額譲渡で異なる評価の入口

同じ株式でも、取引の形と税目によって、課税される人と評価の入口が変わります。相続税・贈与税では、取得した財産を、特別の定めがあるものを除き取得の時の時価で評価し(相続税法第22条)、国税庁の財産評価基本通達は、株式を取得した人の議決権などによって評価方式を区分しています。これに対し、個人が法人へ株式を譲渡した場合の所得税では、譲渡した個人の側から評価を考えます。

取引類型と評価の入口
取引の類型 課税が問題となる人と税目 評価で確認する主な点
相続・遺贈・贈与 取得した相続人・受遺者の相続税、受贈者の贈与税 取得の時の時価が出発点です。財産評価基本通達では、取得した人の議決権などで株主区分を判定します。
法人への低額譲渡 譲渡した個人の所得税(譲渡所得)。本記事の主な例です。 対価が時価の2分の1未満なら、時価で譲渡したものとして計算します(所得税法第59条第1項第2号)。株主区分は、譲渡した個人の譲渡直前の議決権で判定します。
個人間の低額譲渡 取得した個人の贈与税(相続税法第7条により、時価との差額を贈与とみなします) 「著しく低い」かどうかを、所得税の2分の1基準で一律に判断しません。同条ただし書などの例外も確認します。

個人間の低額譲渡は、国税庁のタックスアンサーNo.4423「個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」も参考になります。法人が当事者となる取引では、買主となった法人の受贈益や、法人が低い価額で資産を譲渡した場合の寄附金など、法人税の検討が個人側とは別に必要です(法人税法第22条第2項、第37条第7項・第8項)。また、法人からの贈与で取得した財産は贈与税の対象外とされているため(相続税法第21条の3第1項第1号)、法人から個人への利益の移転を直ちに贈与税の問題とすることはできません。評価の目的ごとの違いは、非上場株式の評価目的と方法の全体像で解説しています。

計算の誤りと通達によらない評価を分ける

「否認」といっても、争点の性質は一つではありません。調査での説明や更正通知書の記載から、次のどれが問題とされたかを特定します。

  • 株主区分の事実認定:同族関係者の範囲、議決権の数、役員であるかどうかなど
  • 評価方式の適用:配当還元方式などを使う条件を満たすか
  • 計算と資産価額:決算数値の転記、資産・負債の評価額、税目固有の調整の漏れなど
  • 通達所定の評価から離れる評価:財産評価基本通達6は、通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価すると定めています

前の三つは通達の当てはめをめぐる争いで、最後の一つとは検討の枠組みが異なります。通常の判定誤りまで「総則6項の問題」と呼ぶと、争点を取り違えるおそれがあります。後で取り上げる令和2年の最高裁判決も、同通達6を適用した事件ではありません。

個人から法人への低額譲渡は何が問題になるか

本記事の主な例は、日本の居住者である個人が、譲渡所得の基因となる非上場株式を、発行会社以外の内国法人(親族が経営する会社など)へ低い価額で譲渡する場面です(発行会社による自己株式の取得は、別の課税関係が問題となるため扱いません)。所得税法第59条第1項第2号は、居住者が譲渡所得の基因となる資産を、著しく低い価額の対価として政令で定める額で法人に譲渡した場合、その時の価額(時価)で譲渡したものとみなすと定めています。この場合は、実際に受け取った代金ではなく、時価を収入金額として譲渡所得を計算します。

時価の2分の1未満と、半額以上でも残る問題

政令で定める額は、譲渡の時の価額の2分の1に満たない金額です(所得税法施行令第169条)。「2分の1以下」ではないため、対価がちょうど時価の2分の1であれば、この規定の対象にはなりません。判定に用いる対価には、金銭のほか、相手方に債務を引き受けさせることなどによる経済的な利益も含まれます(所得税基本通達59-2)。

次は、仕組みを示すための仮定の計算です。居住者である個人が非上場株式100株を発行会社以外の内国法人へ1株4万円で譲渡し、所得税法第59条の時価が1株10万円と認定されたと仮定します。取得費の総額は200万円、譲渡費用は0円とし、他の株式の譲渡損益や特例は考慮しません。

仮定設例の計算
項目 金額 計算の内容
実際の対価 400万円 4万円×100株
時価(仮定) 1,000万円 10万円×100株
時価の2分の1 500万円 実際の対価400万円はこれに満たないため、所得税法第59条第1項第2号が適用されます。
収入金額とみなす額 1,000万円 時価で譲渡したものとみなします。
取得費 200万円 仮定の金額です(譲渡費用は0円)。
譲渡所得の金額 800万円 1,000万円-200万円

実際の対価で計算すれば200万円であった譲渡所得の金額が、800万円になります。差の600万円は、実際の対価と収入金額とみなされる額との差であり、追加で納める税額ではありません。買主である法人の課税は別に検討が必要です。この設例は、実在の事件や実際の株価算定を示すものではありません。

対価が時価の2分の1以上であれば、同号は適用されません。ただし、同族会社等の行為又は計算で、これを容認すると株主等である個人などの所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、所得税法第157条により、時価に相当する金額で譲渡所得を計算されることがあります(所得税基本通達59-3)。親族が経営する会社など同族会社との取引であることだけで当然に同条が適用されるわけではありませんが、「半額以上の価格にしておけば問題にならない」という説明は正確ではありません。

相続税評価明細書をそのまま転用できない理由

所得税基本通達59-6は、株式の時価を、同通達23~35共-9に準じて算定するとしています。所得税基本通達23~35共-9(4)は、取引相場のない株式について、適正と認められる最近の売買実例(同イ)、公開途上にある株式の公募等の価格(同ロ)、類似する法人の株式の価額(同ハ)のいずれにも当たらない場合(同ニ)は、純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額によるとしています。59-6は、この価額を、原則として一定の条件の下で財産評価基本通達の例により算定するとしています。

したがって、「非上場株式は常に相続税評価額になる」という理解は正確ではありません。国税庁は、通達改正の際の意見募集の結果で、純然たる第三者の間で経済的な条件を考慮して定めた価額による取引と認められる場合にまで、財産評価基本通達の例による算定を用いるのは相当でない旨を説明しています。もっとも、当事者が交渉した、評価書を作成したというだけで、これに当たるとは限りません。

財産評価基本通達の例による場合も、所得税基本通達59-6(1)~(4)により、相続・贈与の評価とは次の違いがあります。相続・贈与のために作成した評価明細書は、そのまま所得税の時価の根拠とせず、これらの読替え・調整が反映されているかを確認します。

相続税評価との主な違い
確認項目 相続・贈与の評価 法人への譲渡の所得税
株主区分の判定 株式を取得した人の議決権などで判定します。 株式を譲渡した個人の、譲渡直前の議決権で判定します。
会社規模 実際の規模により、大会社・中会社・小会社に区分します。 原則的評価方式による場合、譲渡した個人が譲渡直前に中心的な同族株主に当たるときは、小会社として扱います。
土地・上場有価証券 純資産価額の計算では相続税評価額によります(課税時期前3年以内に取得・新築した土地等・家屋等は通常の取引価額)。 純資産価額の計算では、譲渡の時の価額によります。
法人税額等相当額 評価差額に対する法人税額等相当額を控除します。 控除しません。

所得税で譲渡の時の価額によるとされるのは、土地(土地の上に存する権利を含みます)と上場有価証券であり、建物を含む資産全般ではありません。また、相続・贈与の評価で控除する法人税額等相当額の割合は、令和8年4月1日以後に取得した財産について38%とされていますが、主な例の所得税の評価では、この控除自体を行いません。過去の取引に改正後の割合を当てはめないよう注意します。

配当還元方式と会社区分をどう確認するか

配当還元方式は、同族株主以外の株主など、財産評価基本通達188が定める株主が取得した株式について、配当金額を基に評価する方式です(財産評価基本通達188・188-2)。非上場であること、売却が難しいこと、持株数が少ないこと、無配であることだけでは選べません。株主の区分、議決権、会社の状態の順に確認します。

同族株主と譲渡直前の議決権

主な例の所得税では、株主区分を判定するのは株式を譲渡した個人であり、判定の時点は譲渡の直前です(所得税基本通達59-6(1))。買主である法人が取得後に少数株主となることは、それだけでは配当還元方式を用いる理由になりません。財産評価基本通達188の各号に照らし、次の事項を確認します。

  • 同族関係者の範囲(親族のほか、同族関係者に当たる会社を含みます)
  • 自己株式などの扱いを踏まえた議決権総数と、譲渡した個人及びその同族関係者の議決権の合計
  • 中心的な同族株主・中心的な株主に当たるかどうか
  • 譲渡した個人自身の議決権の数と、役員であるかどうか

持株比率と議決権割合は一致しないことがあるため、株主名簿の株数だけで判定しないよう注意します。

会社規模と特定の評価会社

配当還元方式によらない場合は、会社規模に応じた方式で評価するのが原則です。会社規模は資本金の額ではなく、業種、直前期末の総資産価額(帳簿価額)、従業員数、直前期末以前1年間の取引金額によって大会社・中会社・小会社に区分します(財産評価基本通達178)。大会社は類似業種比準方式、中会社はこれと純資産価額方式の併用、小会社は純資産価額方式を原則としつつ、それぞれ選択できる方式も定められています(同179)。

主な例で譲渡した個人が中心的な同族株主に当たり、発行会社を小会社として扱う場合でも、純資産価額方式に固定されるわけではなく、類似業種比準価額と純資産価額を半分ずつ用いる併用方式を選ぶ余地は残ります。この併用の割合と、類似業種比準価額の計算に用いる斟酌割合は別のものです。国税庁は意見募集の結果で、59-6(2)は財産評価基本通達179の適用に関する取扱いであり、斟酌割合は評価会社の規模区分(大会社・中会社・小会社)に応じた割合による旨を説明しています。

あわせて、株式等保有特定会社、土地保有特定会社、開業後3年未満の会社などの特定の評価会社に当たるかどうかも確認します(財産評価基本通達189)。特定の評価会社に当たるからといって配当還元方式が一律に使えなくなるわけではなく、区分ごとの確認が必要です。また、合理的な理由なく資産構成を変え、株式等保有特定会社や土地保有特定会社の判定を免れようとしたと認められる場合には、その変動はなかったものとして判定する定めもあります。

最高裁令和2年3月24日判決が示したこと

最高裁判所第三小法廷令和2年3月24日判決(平成30年(行ヒ)第422号、所得税更正処分取消等請求事件)は、発行会社の代表者であった個人が、株式を配当還元方式で算定した価額で法人へ譲渡した事案で、譲受人である法人の取得後の株主区分を用いて評価してよいかが争われたものです。

最高裁は、譲渡所得の課税は、譲渡人が資産を保有していた間に生じた増加益を、資産が譲渡人の手を離れる機会に清算して課税するものであるとし、株式の価額の算定では、譲受人ではなく譲渡人の会社への支配力の程度に応じた評価方法を用いるべきであると判断しました。そのうえで、譲受人が少数株主となることを理由に配当還元方式による評価を認めた原審の判断を破棄し、株式の価額等についてさらに審理させるため、事件を東京高等裁判所に差し戻しました。

判断された争点と、最高裁が確定していない株価

判断されたのは、所得税の低額譲渡の判定で、株主区分を譲渡人と譲受人のどちらの立場で捉えるかという点です。配当還元方式そのものを否定したものではなく、最高裁が株式の最終的な価額を確定したものでもありません。事案の会社には財産評価基本通達188(1)に定める同族株主がいなかった点にも注意が必要です。

宇賀裁判官と宮崎裁判官の補足意見は、通達が法規ではないことや、納税者の予見可能性の観点から通達の定め方を論じていますが、反対意見ではなく、本件の課税を違法とするものでもありません。判決の後、国税庁は令和2年8月28日付けで所得税基本通達59-6を改正し、株主区分を、譲渡又は贈与をした個人の譲渡又は贈与直前の議決権で判定することなどを読替えの形で明確にしました(所得税基本通達の一部改正(令和2年8月28日))。国税庁は、この改正は従来の取扱いを変更するものではないと説明しています。

裁判上の和解価格でも税務上の時価とは限らない

国税不服審判所の令和7年9月10日裁決は、同族会社の株式を親族が経営する別の会社へ譲渡した個人の所得税の事案で、譲渡価格は、請求人らが発行会社を被告として起こした株主総会決議の取消訴訟の中で成立した、訴訟上の和解に基づいて定められていました。

請求人は、担当裁判官の勧めもあって交渉を尽くした価格であるから時価に当たると主張しましたが、審判所は、訴訟上の和解という通常の取引とは異なる事情の下で同族関係者の間で成立した価格であり、不特定多数の当事者の間で自由な取引が行われる場合に通常成立する価額とはいえないとして、採用しませんでした。支配株主と対立し経営から排除されていたとして、令和2年の最高裁判決がいう支配力の程度に照らして通達の方法は妥当でないとの主張についても、同族株主等の範囲を形式的な基準で定める通達の扱いは課税の公平の観点から合理的であるとして、通達の方法によっては時価を適正に算定できない特別の事情とは認めず、発行会社を小会社として扱う所得税基本通達59-6(2)の適用を維持しました。譲渡の2年以上前に同族関係者の間で訴訟上の和解により行われた売買も最近の適正な売買実例とは認めず、審査請求を棄却しています(過少申告加算税の賦課決定も維持されました)。

これは一つの事案についての審判所の判断であり、裁判所の判決ではありません。すべての和解価格や親族間の対立に当てはまるとはいえませんが、裁判官が関与した合意であることだけで、直ちに時価の裏付けになるとは限らないことを前提に、取引の時点、当事者の関係、価格を決めた根拠を確認する必要があります。会社法上の株式買取請求で裁判所が定める価格も、税務上の時価の判断とは手続も判断の対象も異なります(株式買取請求と会社法上の価格決定)。

評価明細と証拠を突き合わせて価格差を説明する

反論では、評価額の総額を比べるだけでは足りません。課税庁の計算、申告時の計算、資料に基づいて検証し直した計算の三つを、同じ基準日・同じ単位(1株当たりなど)で並べ、差がどこで生じているかを次の四つに分けて把握します。

  • 事実:株主構成、議決権、役員、取引の当事者や日付など
  • 方式:株主区分、会社規模、特定の評価会社の判定と、それに基づく評価方式
  • 入力値:決算の数値、資産・負債の評価額、配当の金額など
  • 税目固有の調整:所得税基本通達59-6の読替えや、法人税額等相当額を控除しない扱いなど

差の大きい項目から順に、裏付けとなる資料を決めます。評価明細書の様式は国税庁が適用時期に応じた版を掲載しているため(取引相場のない株式(出資)の評価明細書)、過去の取引は、その取引の時点の様式と通達で検証します。

資料と確認事項を対応させる

主な資料と、それぞれで確認することは次のとおりです。

争点ごとの資料
争点 資料 確認すること
株主区分・議決権 取引前後の株主名簿、親族・法人の関係図、定款、役員に関する資料 議決権総数と、本人・同族関係者の議決権、株主区分。持株比率と議決権割合を同一視しない
取引の内容 売買契約書、決済の記録、譲渡承認の決議、交渉の記録 取引の主体、日付、株式の種類・数、金銭以外も含む対価
評価の計算 評価明細書と元の計算ファイル、使用した様式の版 算定の目的、基準日、計算式、読替え・調整、転記の誤り
会社の規模・業績 複数期の決算書・申告書、勘定科目内訳明細書、総勘定元帳、試算表、従業員に関する資料 会社規模、利益・配当、資産・負債、評価時点までの変動
不動産・有価証券 会社が保有する不動産・有価証券の取得や評価に関する資料 取得時期、特定の評価会社の判定、評価時点の価額と時価への調整
売買実例 他の売買事例とその契約条件 時点、当事者の独立性、権利の内容、株数、支配力、決済条件が比較できるか
処分・期限 調査での説明の記録、更正通知書、受領・送達を示す資料、提出済みの申告書 指摘の根拠、処分の有無、金額、期限

原本には手を加えずに保管し、検証用の写しや計算ファイルを別に作って、作成した時点、根拠とした資料、修正の履歴を残しておくと、後から説明しやすくなります。資料を書き換えたり、後から作った資料を当時のものとして扱ったりしてはいけません。会社の資料を持たない株主や相続人は、正当な方法で入手できる範囲を確認します。

評価担当者との連携と費用対効果

算定書を追加するだけでは反論になりません。先に、評価の目的(どの税目の、どの取引の時価を示すのか)、基準日、反論する指摘を決め、算定書には、使用した資料、評価方式を選んだ理由、課税庁の指摘への回答、計算の過程を示します。事案に応じて、弁護士が法的な争点と手続を検討し、税理士、公認会計士、不動産鑑定士などが必要な評価や税額の検証を担う形で組み合わせます。

株価の差額が、そのまま争う利益になるわけではありません。税目ごとに課税標準、税率、延滞税や加算税などの附帯税への影響を確認し、争う場合の費用や時間と比べて方針を決めます。

税務調査・修正申告・更正処分で対応を分ける

対応は手続の段階で変わります。まず、更正処分の通知を受けているかどうかと、受け取った日を確認し、期限の管理と資料の収集を並行して進めます。資料がそろうのを待つ間に期限が過ぎないよう注意が必要です。

修正申告に応じる前と、処分を受けた後

修正申告を勧められても、応じるかどうかは納税者の任意です(国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」)。提出した修正申告は税務署長の処分ではないため、不服申立てはできませんが、要件と期間を満たせば、更正の請求(国税通則法第23条)を検討できます。勧奨に応じなければ更正処分を受けることがあり、その処分に不服があれば不服申立てを検討します。

「修正申告に応じる義務がある」「修正申告をしたら一切争えない」という説明は、いずれも正確ではありません。指摘の内容、評価の検証結果、附帯税への影響、更正の請求ができる期間を確認したうえで判断します。

不服申立て・取消訴訟と納付の問題

税務署長等による通常の更正処分を前提とした主な手続と期限は、次のとおりです(国税不服審判所「不服申立手続等」)。

処分後の手続と期限
手続 期限(原則) 確認すること
再調査の請求 処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内 処分をした税務署長等に対する手続です。これを経ずに、直接審査請求をすることもできます。
審査請求 直接する場合は、処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内。再調査の請求についての決定を経た場合は、再調査決定書謄本の送達があった日の翌日から1か月以内 国税不服審判所長に対する手続です。
取消訴訟 原則として審査請求の裁決を経たうえで、裁決があったことを知った日の翌日から6か月以内 審査請求がされた日の翌日から起算して3か月を経過しても裁決がないときなどは、裁決を経ずに提起できます(国税通則法第115条)。

いずれも原則的な期限であり、期限を過ぎた場合の例外や別の期間制限の有無は、個別に確認が必要です。税務署とのやり取りを続けていても、相談を予約しても、法定の期限は止まりません。また、不服申立てをしても、それだけで納付や徴収の手続が当然に止まるわけではありません(国税通則法第105条)。徴収の猶予など納付・徴収に関する制度は要件を別に確認し、争う方針と資金繰りを並行して検討します。

よくある質問

無配の会社なら、株式の評価はゼロになりますか。

無配であることだけで、評価がゼロになるわけではありません。配当還元方式でも、無配の場合は年配当金額(1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の金額)を2円50銭として計算します(財産評価基本通達188-2)。また、配当還元方式を使えない株主であれば、純資産価額や類似業種比準価額を基に評価します。

株式を買い取る法人が少数株主になる場合、配当還元方式で評価できますか。

個人から法人への譲渡の所得税では、それだけでは理由になりません。株主区分は、譲渡した個人の譲渡直前の議決権で判定します(所得税基本通達59-6)。相続・贈与では取得した人の側で判定するため、税目ごとに確認します。

資料がそろうまで、相談を待ったほうがよいですか。

期限が近い場合は、待つ必要はありません。通知書の有無と受け取った日、取引の日付と当事者、問題とされた点を整理し、資料の収集は期限の管理と並行して進めます。株主名簿や決算書などの機密資料は、利益相反の確認と受渡方法の案内を受けてから送ってください。

相談前に確認しておきたいこと

次の事項を確認しておくと、争点と期限を整理しやすくなります。期限が近いときは、すべてがそろうのを待たず、確認できたものから伝えてください。

  • 更正通知書などを受け取っているか、受け取った日はいつか
  • 修正申告を勧められているか、修正申告書を提出したか
  • 取引の日付、当事者(個人か法人か、発行会社か)、株式の種類・数、金銭以外も含む対価
  • 課税庁が否定した点(株主区分、評価方式、計算の数値、通達によらない評価)
  • 申告時の評価明細書と元の計算ファイル、使用した様式の版
  • 譲渡直前の株主名簿、親族・法人の関係図、役員の状況
  • 決算書や申告書など、会社の資料を入手できる範囲

対応範囲・相談方法・費用のお問い合わせ

非上場株式の税務評価に関する紛争について、当事務所で対応できる範囲、相談の方法、費用をお問い合わせいただけます。最初のご連絡では、氏名、会社名、相手方や関係する会社の名称、事案の概要、期限(通知を受けた日など)をお知らせください。

株主名簿、決算書、評価明細書などの機密資料は、利益相反の確認と資料の受渡方法のご案内の後にお送りください。お問い合わせや相談の予約は、ご依頼(委任契約)の成立を意味するものではなく、不服申立てなどの法定の期限を止めるものでもありません。

対応可能な範囲と相談予約について問い合わせる

相談の方法と相談料の条件、弁護士費用の一般的な案内は、次のページにあります。

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参考資料と情報基準日

本記事は、令和8年(2026年)10月17日時点で確認した法令・通達・公表資料に基づく一般的な情報です。過去の取引には、その取引の時点で適用される法令・通達を確認する必要があります。個別の事案の結論は、資料と事実関係により異なります。

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