税務署や国税局から「税務調査に伺いたい」と連絡を受けたら、まず連絡の内容を記録して顧問税理士と共有し、会計データや請求書などの元資料を今の状態のまま保全します。電話で日程を調整している段階でも、加算税の計算では「調査通知」があったと扱われることがあり、その後に申告の誤りを修正すると、原則として過少申告加算税が課されます。本記事では、法人税・消費税などの通常の税務調査を前提に、連絡直後から修正申告の判断までに確認すべきことを順に整理します。結論は、通知の時点、対象税目・期間、指摘された事実とその法的評価、納税資金などの個別事情により異なります。
この記事の要点
- 連絡を受けたら、税務調査か行政指導かを確認し、日時・相手・対象税目・対象期間・通知先を記録して顧問税理士と共有します。
- 加算税の「調査通知」は、日時まで知らせる「事前通知」とは別の概念で、日程が未定の段階でも通知済みとなる場合があります。
- 準備の中心は、帳簿と証憑の照合と元データの保全です。事実と異なる契約書や議事録を後から作成したり、元データを削除・上書きしたりしてはいけません。
- 修正申告の勧奨に応じるかは会社の判断です。提出前に、指摘の根拠、税額、救済手段、納税資金を確認します。
- 期限内申告がある通常の場合、過少申告加算税は、調査通知と更正予知の時点によって「課されない」「5%」「10%」の3段階に分かれ、5%・10%の区分では基準額を超える部分に5%が加算されます(重加算税や帳簿の加重などは別に判断します)。
税務調査の連絡を受けた直後にすること
通知内容を記録し、顧問税理士と共有する
最初に確認するのは、その連絡が税務調査なのか、申告内容の自発的な見直しを求める行政指導なのかです。国税庁は、計算誤りや記載漏れなどが疑われる申告について、行政指導として見直しを要請することがあり、担当者は手続に入る前にどちらに当たるかを明示するとしています。期限内申告をしていた場合、行政指導を受けて自主的に修正申告をしたときは、延滞税を納付することはあっても、過少申告加算税は課されないと説明されています(国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」)。
税務調査の事前通知は、原則として電話で口頭により行われ、納税者の希望に応じて通知内容を記載した書面が交付されることはないとされています。書面が届いていないことは、通知がないことを意味しません。法令上「調査の何日前までに通知する」という一律の日数もなく、国税庁は、準備ができるよう相当の時間的余裕を置いて通知するとしています。電話を受けたら、次の事項をその場で記録します。
- 連絡を受けた日時と、相手の所属官署・部署・担当者名・連絡先
- 税務調査か行政指導か、事業所などを訪れる実地の調査を行うのか
- 調査の目的、対象税目、対象期間、対象となる帳簿書類
- 調査を開始する日時と場所(未定の場合は、その旨と次の連絡予定)
- 通知の相手(会社か、顧問税理士か)
記録したら、すぐに顧問税理士と共有し、税理士側にも連絡が入っていないかを確認します。あわせて、会計データや証憑などの元資料を、今ある状態のまま保全します。この記録と共有は法令が定める手続ではなく、後の判断に必要な事実を残すための実務上の工夫です。
連絡先は、通知をしてきた官署と担当者に確認します。神戸市須磨区・垂水区を管轄するのは須磨税務署ですが、調査を担当するのが常に同署とは限らず、国税局が調査を行うこともあります。同署の案内ページに掲載されている申告書等の郵送先も、調査についての連絡先ではありません(大阪国税局「須磨税務署」)。
事前通知と調査通知は何が違うか
事前通知は、実地の調査の前に、調査を開始する日時・場所、調査の目的、対象税目、対象期間、対象となる帳簿書類、調査担当者の氏名・所属官署などを知らせる手続です(国税通則法第74条の9第1項、国税通則法施行令第30条の4)。
これに対し、加算税の割合を分ける「調査通知」は、実地の調査で質問や帳簿の確認を行う旨と、対象税目・対象期間の通知をいいます(国税通則法第65条第6項、同法施行令第27条第4項)。日時や場所までは要しないため、日程が決まっていない電話連絡の段階でも、調査通知があったと扱われることがあります。「日程が未定なので、まだ通知前である」という理解は正確ではありません。
顧問税理士が税務代理権限証書を提出している場合、事前通知は原則として会社と税理士の双方に行われます。税務代理権限証書に事前通知に関する同意を記載している場合は、税理士への通知で足り(国税通則法第74条の9第5項)、その税理士への通知も加算税上の調査通知に含まれます(国税通則法施行令第27条第5項)。社長が直接連絡を受けていないことだけでは、調査通知の前とはいえません。
日程変更や無予告調査にどう対応するか
通知された開始日時や場所について、合理的な理由を付して変更を求めた場合、税務署長等は協議するよう努めるものとされています(国税通則法第74条の9第2項)。国税庁は、通知の際にあらかじめ都合を尋ね、申告・決算業務の繁閑にも配慮して日時を調整するとし、通知後も、一時的な入院、親族の葬儀、業務上やむを得ない事情などがあれば変更を協議するとしています。ただし、希望どおりの延期を保証する制度ではありません。具体的な事情と、対応できる代替日を示して協議します。法令上、変更の協議の対象は開始日時と場所であり、対象税目や対象期間は含まれません。
一方、申告や過去の調査結果の内容、事業内容などの情報から、事前通知をすると違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等の把握を困難にするおそれなどがあると認められる場合には、事前通知なしに実地の調査が行われることがあります(国税通則法第74条の10)。無予告であることだけで、その調査が違法になるわけではありません。国税庁は、事前通知がない場合でも臨場後速やかに対象税目・対象期間・調査の目的などを説明するとしていますので、相手の所属・氏名と説明された内容を記録し、直ちに顧問税理士へ連絡します。
調査前に準備する資料と電子データ
帳簿と証憑を照合し、説明できる状態にする
準備の中心は、新しい資料を作ることではなく、既にある帳簿・証憑・入出金記録を照合し、取引の事実を説明できる状態にすることです。準備の範囲は、事前通知で示された対象税目・対象期間を基本にします。「3年分」「7年分」と一律に決めて足りるものではありません。
次の表は、中小企業の調査で問題になり得る論点について、どの資料で何を確かめるかを整理したものです。個々の処理が税務上妥当かどうかは、事実関係と法令に照らして個別に判断します。
| 論点 | 資料 | 確かめる事実 |
|---|---|---|
| 売上の計上時期 | 契約書・注文書、納品書・検収書、請求書、入金記録、売上元帳 | 会社が採用している計上基準(出荷・引渡し・検収など)に照らして、期末前後の取引の計上日・事業年度が資料と整合しているか |
| 役員に関係する支出 | 領収書、振込記録、取締役会・株主総会の議事録、出張・会合の記録 | 支出の相手方と内容、業務上の目的、会社としての決定の有無 |
| 外注費と給与 | 業務委託契約書、実際の業務指示・作業管理の記録、請求書、支払記録 | 契約書の形式と、実際の指揮命令・働き方が一致しているか |
| 棚卸資産・固定資産 | 実地棚卸の記録、固定資産台帳、取得時の契約書・請求書 | 実地棚卸の方法と結果が期末在庫の計上額に反映されているか、資産の取得時期・取得価額が台帳の記載と一致しているか |
| 消費税 | 請求書等、取引内容が分かる資料、帳簿の税区分 | 取引ごとの内容と、帳簿に付けた税区分・請求書等の保存が対応しているか |
会計ソフトの元データ、仕訳の変更履歴、電子取引のデータは削除・上書きせずに残し、税務署へ提出するために抽出したコピーとは分けて管理します。事実と異なる契約書や議事録を後から作成すること、データの削除、関係者間の口裏合わせはしてはいけません。偽りの記載をした帳簿書類を提示・提出することは、罰則の対象にもなります(国税通則法第128条第3号)。他方、現在の日付で作成し、元資料の出所を示した照合表や、取引の経緯をまとめたメモは、虚偽の証拠を作ることとは異なり、説明の整理に役立ちます。
訪問前に電子データの提出を求められた場合
国税庁は、実地の調査の前に帳簿等のデータの提出を依頼する取組を行っています。令和8年(2026年)10月に公表されたQ&Aは、この依頼を、実地の調査を予定して調査通知を行う場合の取組と位置付けたうえで、原則として事前通知の後に行い、訪問日時の調整に時間を要する場合などには事前通知に先立って依頼することもあるとしています。訪問を伴わずにデータを求める行為は、実地の調査以外の調査として行う質問検査等に当たり、依頼は調査に必要な範囲に限るとされています(国税庁「税務調査等における帳簿等データの提出依頼等に関するQ&A」)。
正当な理由なく提出に応じない場合は罰則の対象となり得る一方、国税庁は、依頼に応じないことのみをもって罰則が適用されるものではなく、理解と協力の下で承諾を得て実施するとしています。依頼を放置することも、範囲を確かめずに社内のデータを一括して渡すことも避け、次の点を確認したうえで対応します。
- 依頼の対象となる帳簿の種類と期間、データの形式、提出期限
- 提出の方法(送信の経路)と、提出したデータの管理・消去についての説明
- セキュリティ上の懸念やデータ形式の制約など、対応が難しい事情とその内容
国税庁は、データの提出を依頼する際に、提出されたデータの取扱いについて説明文書の交付などによる説明を行うとしています(国税庁「税務調査等における帳簿等データの提出依頼に関する取組等について」)。データを提出したことと加算税の関係は、「調査通知と更正予知による割合の違い」で説明します。
調査当日の受け答えと資料提出
事実と評価を分け、回答と追加依頼を記録する
通常の税務調査における質問や帳簿の確認(質問検査)の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならないとされており(国税通則法第74条の8)、脱税の刑事責任を追及する査察とは区別されます。ただし、「任意調査だから全面的に断れる」という説明は正確ではありません。法律に基づく質問に答えない、偽りの答弁をする、検査を拒むといった行為や、正当な理由なく帳簿書類の提示・提出に応じない行為は、罰則の対象となります(国税通則法第74条の2、第128条第2号・第3号)。
当日は、資料で確かめられる事実を答え、記憶が曖昧なことや社内の担当者(経理・営業など)への確認が必要なことは、推測で断定せずに「確認して回答します」と伝え、回答の期限を決めます。調査担当者の指摘には、事実の確認だけでなく、その支出をどの費用に当たると見るかといった税務上の評価が含まれていることがあります。事実関係には答えつつ、評価については顧問税理士と確認してから回答します。
質問の内容、実際の回答、提示・提出した資料、未回答の事項と回答予定日は、その日のうちに記録します。資料の要求について必要性や範囲に疑問がある場合も、その場で一律に拒むのではなく、顧問税理士などの税務代理人と確認したうえで、対象と趣旨を調査担当者に尋ねて協議します。
調査範囲の追加と帳簿の預かりを確認する
調査の過程で、事前通知した事項以外の事項について誤り(非違)が疑われる場合には、通知していない税目や期間なども調査の対象とされることがあり、その部分には事前通知の規定が適用されません(国税通則法第74条の9第4項)。国税庁は、追加する税目・課税期間などを説明し、理解と協力を得たうえで行うとしています。追加があったときは、追加された税目・期間と説明された内容を記録します。なお、例えば対象年度の減価償却費を確かめるために、資産を取得した年度の帳簿書類の提示を求められることがありますが、国税庁は、これは対象年度の調査であって、その年度を調査の対象に加えるものではないとしています(国税庁の税務調査手続FAQ・問9)。
提出した帳簿書類などを税務署が預かる「留置き」について、国税庁は、必要性を説明したうえで承諾を得て行うとしています。留め置く場合、職員は、物件の名称又は種類、数量、提出年月日などを記載した書面を交付し、留め置く必要がなくなったときは遅滞なく返還しなければなりません(国税通則法第74条の7、国税通則法施行令第30条の3)。原本を預けるときは、業務に必要な部分の写しを手元に残し、交付された書面の記載が預けた物件と一致しているかを確かめます。なお、国税庁は、調査担当者に提出するために新たに作成した写しの提出は留置きに当たらない一方、事業のために保有している写しを預ける場合は留置きの手続によるとしています。
修正申告を勧められたときの判断
指摘の内容と根拠を整理する
実地の調査の結果、更正決定等をすべきと認められない場合は、その旨が書面で通知されます(国税通則法第74条の11第1項)。誤りがあると判断された場合は、更正決定等をすべきと認めた額とその理由を含む調査結果の内容が説明されます(同条第2項)。国税庁は、この説明は原則として口頭で行い、必要に応じて非違の項目や金額を整理した資料を示すことはあるものの、要望に応じて調査結果を記載した書面を交付することはないとしていますので、指摘の項目、金額、理由はその場で記録します。
この説明の際に、修正申告を勧められること(勧奨)があります。職員は、修正申告をした場合には不服申立てはできないが更正の請求はできる旨を説明し、その旨を記載した書面を交付しなければなりません(同条第3項)。勧奨に応じるかどうかは会社の判断であり、応じない場合は、調査結果に基づいて更正などの処分が行われます。国税庁は、勧奨に応じなかったことで、応じた場合と比べて不利な取扱いを受けることは基本的にないとしています。調査結果の説明や勧奨は、それ自体が更正などの処分ではありません。応じるかどうかを決める前に、次の点を分けて確認します。
- 対象となる税目・年度と、指摘された取引
- 指摘の前提となる事実に同意できるか、資料の確認が終わっていない部分はないか
- その事実に税法をどう当てはめるか(法的評価)について、見解が分かれていないか
- 本税・加算税・延滞税の見込み額と、納付の資金
会社に代えて顧問税理士に調査結果の説明などを受けてもらうには、会社の同意が必要です(同条第4項)。事前通知についての同意とは別の同意ですので、税務代理権限証書の記載を顧問税理士に確認します。
修正申告と更正処分では争い方が異なる
修正申告は会社自身が行う申告であり(国税通則法第19条)、税務署の処分ではないため、それ自体に不服申立てはできず、税額が過大であるなどの要件に当たる場合は更正の請求によります(国税通則法第23条)。これに対し、勧奨に応じずに受けた更正処分には、不服申立てができます。
| 指摘への対応 | 手続の効果 | 確認事項 |
|---|---|---|
| 修正申告書を 提出する |
会社自身の申告となり、修正申告そのものには不服申立てができない。増えた本税の納期限は提出日 | 指摘の事実と金額に同意できるか。加算税・延滞税を含めた納付額と資金 |
| 修正申告の後、 税額の過大が判明した |
法定申告期限から原則5年以内であれば、更正の請求ができる。請求をしても当然に減額されるわけではない | 過大であることを示す資料と、請求の期限(修正申告をした日から5年ではない) |
| 修正申告の後、 加算税の賦課決定を受けた |
賦課決定は処分であり、不服申立ての対象となる | 調査通知・更正予知の時点、正当な理由の有無 |
| 勧奨に応じず、 更正を受けた |
更正・賦課決定に対して、再調査の請求又は審査請求ができる。増えた本税の納期限は、更正通知書が発せられた日の翌日から起算して1か月を経過する日 | 争う点が事実か法的評価か、その裏付けとなる資料、不服申立ての期限 |
更正の請求には、法人税の欠損金額に関する請求や、判決などの後発的な理由に基づく請求など、原則の5年とは別の期限が定められているものもあります。請求書には、請求の理由の基礎となる事実を証明する書類を添付します(国税庁「法人税及び地方法人税の確定申告に係る税額等についての更正の請求」)。税務署長は、請求を受けて調査したうえで、更正をするか、更正をすべき理由がない旨を通知します(国税通則法第23条第4項)。
更正や加算税の賦課決定に対する不服申立ては、処分の通知を受けた日の翌日から原則として3か月以内に、処分をした税務署長等への再調査の請求か、国税不服審判所長への審査請求のいずれかを選んで行います。再調査の請求をした場合、その決定になお不服があるときは、再調査決定書の謄本の送達があった日の翌日から1か月以内に審査請求ができます。また、最初に行う再調査の請求や直接の審査請求は、処分があった日の翌日から1年を経過すると、原則としてできません(再調査の決定後の審査請求には、この1年の制限はありません)。いずれの期間にも正当な理由がある場合の例外があるため、期限は処分ごとに確認します(国税通則法第77条、国税不服審判所「不服申立手続等」)。
不服申立てや更正の請求をしても、それだけで処分の効力や徴収の手続が当然に止まるわけではありません(国税通則法第23条第5項、第105条第1項)。納税資金の手当てや、納付が困難な場合の制度は、別に検討する必要があります。なお、調査の終了後に新たに得られた情報に照らして非違があると認められる場合に行われる再度の調査(国税通則法第74条の11第5項)と、不服申立ての「再調査の請求」は、別の制度です。
過少申告加算税と延滞税は何で変わるか
調査通知と更正予知による割合の違い
期限内に申告していた税目について、修正申告や更正によって納付すべき税額が増えると、原則として過少申告加算税が課されます。割合は、修正申告が調査通知の前か後か、「調査があったことにより更正があるべきことを予知」した後か(更正予知)によって、次の3段階に分かれます(国税通則法第65条第1項・第2項・第6項)。
| 加算税の3段階 | 基本部分 | 基準額を超える部分 |
|---|---|---|
| 調査通知の前で、 更正予知もない修正申告 |
課されない | 課されない |
| 調査通知の後、 更正予知の前の修正申告 |
5% | 10% |
| 更正予知の後の修正申告、 又は更正 |
10% | 15% |
この区分は、期限内申告がある場合の通常の過少申告加算税についてのものです。無申告加算税、源泉所得税の不納付加算税、重加算税、帳簿の不提示などによる加重、正当な理由がある場合の除外は、別に判断します。
表の「基本部分」は、増えた税額のうち基準額までの部分をいいます。基準額は、期限内申告税額と50万円のいずれか多い額です。期限内申告税額は、中間納付額などを加えて法令に従って計算する額であり、確定申告の際に納付した額と一致するとは限りません。同じ税目・期間について以前にも修正申告や更正があった場合は、それまでに増えた税額(累積増差税額)を加えて基準額と比べます。この3段階の区分は、平成29年(2017年)1月1日以後に法定申告期限が到来する国税に適用されています。
仮定の計算例:期限内申告税額が100万円、修正申告や更正によって増える本税が200万円で、同じ税目・期間について過去の修正申告や更正がなく、重加算税・帳簿の加重・正当な理由などの特例もないと仮定します。基準額は100万円(100万円と50万円のいずれか多い額)です。
- 調査通知の前で、更正予知もなく修正申告した場合:過少申告加算税は課されません
- 調査通知の後、更正予知の前に修正申告した場合:100万円×5%+100万円×10%=15万円
- 更正予知の後に修正申告した場合、又は更正を受けた場合:100万円×10%+100万円×15%=25万円
いずれも、本税200万円と延滞税は別に納付します。端数が生じないように置いた説明用の仮定です。
更正予知は、訪問日だけで線引きされるものではありません。法人税について国税庁は、臨場調査、取引先への反面調査、申告内容を検討したうえでの誤りの指摘などにより、会社が調査のあったことを知ったと認められた後の修正申告は、原則として更正予知に当たり、臨場の日時の連絡を受けた段階の修正申告は、原則として当たらないとしています(国税庁「法人税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)」)。ただし、その段階で調査通知を受けていれば、更正予知の前であっても「課されない」区分には当たらず、原則として5%の区分になります(同指針第1の4(2))。訪問前にデータの提出を依頼された場合も、その依頼は実地の調査を予定して調査通知を行う場合の取組とされているため、その後の修正申告は、原則として「課されない」区分には当たりません。データを提出したことのみで更正予知に当たるわけではないとされる一方、データの検討に基づいて誤りを指摘された後の修正申告は、訪問前であっても更正予知に当たると判断される可能性があります(帳簿等データの提出依頼等に関するQ&A・問1・問2・問8)。また、調査通知がなくても更正予知があれば、「課されない」の区分には当たりません。
帳簿の加重については、令和6年(2024年)1月1日以後に法定申告期限が到来する法人税・消費税などで、修正申告等の前に帳簿の提示等を求められ、帳簿を提示しなかったときや、売上金額などの記載が所定の程度に不十分なときは、納税者の責めに帰すべき事由がない場合を除き、加算税の割合が5%又は10%上乗せされます(国税通則法第65条第4項)。上乗せの対象は帳簿に記載すべき事項に係る税額であり、国税庁は、法人税・消費税では、指摘された非違事項に基づく税額の全てが一般に対象になるとしています(国税庁「帳簿の提出がない場合等の加算税の加重措置に関するQ&A」問20)。また、正当な理由による除外(国税通則法第65条第5項)は、法令を知らなかった、誤解していたという事情だけで当然に認められるものではありません。
重加算税は、課税標準等の計算の基礎となる事実を隠蔽し又は仮装し、それに基づいて申告していた場合に、その部分について過少申告加算税に代えて課される加算税です(国税通則法第68条第1項)。単なる計算誤りや見解の相違があることだけで、当然に課されるものではありません。隠蔽・仮装を指摘された場合は、どの事実がどの申告にどのように結び付けられているのかを確認します。
延滞税の割合と計算期間から除かれる期間
延滞税は、増えた本税について、原則として元の法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて課されます(国税通則法第60条)。修正申告をした日から計算が始まるわけではありません。延滞税は本税に対して計算され、加算税自体には課されません。
割合は、納期限までの期間と、納期限の翌日から2か月を経過する日までの期間が低い割合、その後の期間が高い割合となり、令和8年(2026年)中の期間は、それぞれ年2.8%、年9.1%です。割合は暦年ごとに定められるため、過去の期間には、その年の割合を用います。ここでいう納期限は、元の法定納期限とは別のもので、修正申告の場合は提出日、更正の場合は更正通知書が発せられた日の翌日から起算して1か月を経過する日です(国税通則法第35条第2項、国税庁「No.9205 延滞税について」)。納期限の翌日から2か月を経過した後も未納の部分には高い割合が適用されるため、修正申告の判断と同時に納税資金も確認します。
期限内申告をしていた場合で、法定申告期限から1年を経過する日の後に修正申告をし、又は更正通知書が発せられたときは、その1年を経過する日の翌日から修正申告書の提出日又は更正通知書が発せられた日までの期間は、延滞税の計算期間から除かれます(国税通則法第61条第1項)。調査通知の後や更正予知の後であることだけで、この特例がなくなるわけではありません。
ただし、偽りその他不正の行為により税を免れた納税者が更正予知の後に提出した修正申告(特定修正申告)や、そのような納税者に対する更正(特定更正)には、この特例は適用されません。国税庁の通達は、重加算税が課された場合などには特例を適用しないものとして取り扱う一方、特例を適用しないのは不正の行為により免れた部分の税額に限るとしています(国税庁「延滞税の計算期間の特例規定の取扱いについて(法令解釈通達)」)。どの部分に特例が適用されるかは、事実関係に応じて区分して判断されます。期限後申告の場合や、減額更正の後に再び税額が増えた場合などには、別の定めがあります。
顧問税理士と弁護士・公認会計士の役割を整理する
法律上の争点と会計数値をつなぐ
日常の申告と税務調査への対応は、税務代理人である顧問税理士が担うのが基本です。そのうえで、次のような事情がある場合には、弁護士への相談を検討する意味があります。
- 取引の事実関係や契約の解釈について、税務署と会社の見解が分かれている
- 隠蔽・仮装(重加算税)を指摘されている、又はその可能性がある
- 役員・従業員・取引先の間で、取引についての説明が食い違っている
- 役員の責任、従業員による横領、取引先との契約紛争など、税務以外の法律問題が関係している
- 更正処分を受けた場合の不服申立てや訴訟に備えて、主張と証拠を整理しておきたい
会計の面では、仕訳、証憑、入出金の記録、決算書、申告書を順につないで追い、どの事実やどの数値に食い違いがあるのかを特定することが、主張と資料を整理する出発点になります。その際、会計上の処理、税務上の評価、会社法などの法律上の論点は分けて検討します。いずれも顧問税理士との資料の共有と役割分担を前提とするもので、弁護士や公認会計士が関与すること自体によって税額が下がるわけではありません。
税理士登録と通知制度、委任範囲を確認する
税務調査に立ち会い、会社に代わって税務署に主張や陳述をすることは、税理士法の「税務代理」に当たり(税理士法第2条第1項第1号)、国税庁も、原則として税務代理人しか行うことができないとしています。「立会い」と呼べば資格や権限を問わずに行える、というものではありません。
弁護士と公認会計士は税理士となる資格を有する場合がありますが(税理士法第3条)、税理士となるには税理士名簿への登録が必要です(同法第18条)。弁護士は、税理士登録をしなくても、所属弁護士会を経て国税局長に通知することにより、その国税局の管轄区域内で随時、税理士業務を行うことができます(同法第51条第1項)。弁護士法人がこの方法で税理士業務を行うには、社員である弁護士の全員が通知をしていることを前提に、法人としても通知をする必要があります(同条第3項)。公認会計士の資格だけで、税務代理ができるわけでもありません(同法第52条)。
税理士業務(税務代理、税務書類の作成、税務相談。税理士法第2条第1項各号)を依頼するときは、依頼先が税理士登録をしているか、第51条の通知をしているか(どの国税局に対してか)、依頼の相手が個人か法人か、委任の範囲(対象の税目・期間、調査での主張・陳述の代理や申告書の作成を含むか)を確認します。
よくある質問
社長が直接連絡を受けていなくても、調査通知があったことになりますか。
なることがあります。税務代理権限証書に事前通知に関する同意を記載している場合は、事前通知や調査通知を顧問税理士などの税務代理人に対して行えば足ります。また、日程が決まっていない連絡でも、実地の調査を行う旨と対象税目・対象期間が伝えられていれば、調査通知に当たり得ます。まず顧問税理士に連絡の有無を確認してください。
何年分の資料を準備すればよいですか。
事前通知で示された対象税目・対象期間を基本に準備します。「3年分」「7年分」と一律に決まるものではありません。対象期間の処理を確かめるために以前の年度の資料を求められることや、調査の過程で対象が追加されることもあります。
訪問前にデータを提出しただけで、「更正を予知した」ことになりますか。
提出したことだけで直ちに更正予知に当たるわけではありません。ただし、訪問前であることだけで更正予知の前と判断されるわけでもなく、提出したデータの検討に基づいて誤りを指摘された後の修正申告は、更正予知に当たると判断される可能性があります。また、訪問を予定したデータの提出依頼は調査通知を行う場合の取組とされているため、その後の修正申告は、更正予知の前でも原則として5%(基準額を超える部分は10%)の区分になります。
修正申告をしたら、もう一切争えませんか。
修正申告そのものに不服申立てはできませんが、税額が過大であるなどの要件を満たせば、法定申告期限から原則5年以内に更正の請求ができます。また、修正申告に伴う加算税の賦課決定は、処分として不服申立ての対象になります。ただし、更正の請求をしても、当然に税額が減るわけではありません。
相談前に整理したいこと
税務調査に関連して弁護士へ法律相談をする場合は、次の資料を手元にある範囲で用意すると、論点と期限を整理しやすくなります。すべてがそろっていなくても、税務署への回答予定日、修正申告に応じるかどうかの回答時期、不服申立ての期限などが近い場合は、その前にご相談ください。
- 税務署・国税局からの連絡を記録したメモ(日時、担当者、調査か行政指導か、対象税目・期間)
- 対象期間の申告書と決算書
- 指摘された内容のメモと、勧奨の際に交付された書面、更正通知書・賦課決定通知書
- 指摘に関係する契約書、請求書、入出金記録などの主要な資料
- 次の回答期限、資料の提出予定日、面談の予定
法律相談のご予約
取引の事実関係や契約の解釈、隠蔽・仮装の指摘、役員の責任などの法律問題を、修正申告に応じる前や処分を受けた後に整理したい場合は、相談方法・費用をご確認のうえ、法律相談をご予約ください。
最初のご連絡では決算書や帳簿などの資料を送らず、会社名、ご相談者名、問題に関係する取引先・役員などの名称、ご相談の概要、期限のみをお知らせください。利益相反の確認後に、資料の受け渡し方法をご案内します。同じ問題で利害が対立する当事者の一方から既にご相談を受けている場合など、利益相反の確認の結果、ご相談をお受けできないことがあります。
お問い合わせフォームは24時間送信できますが、弁護士が直ちに内容を確認できるとは限りません。期限が迫っている場合は、その日付を最初のご連絡に明記してください。フォームの送信や相談のご予約によってご依頼(委任契約)が成立するものではなく、ご相談やお問い合わせによって、税務署への回答期限や不服申立ての期限が止まることもありません。
事務所のご案内
本記事は、弁護士法人ひょうご支所神戸みらい法律会計事務所が掲載しています。
- 法人名:弁護士法人ひょうご
- 支所名:神戸みらい法律会計事務所
- 所属弁護士会:兵庫県弁護士会
所属弁護士の氏名・資格・経歴は、所属弁護士の紹介ページでご確認いただけます。
参考資料・情報基準日
- e-Gov法令検索「国税通則法」
- e-Gov法令検索「国税通則法施行令」
- e-Gov法令検索「税理士法」
- 国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」
- 国税庁「税務調査等における帳簿等データの提出依頼等に関するQ&A」(令和8年10月・PDF)
- 国税庁「税務調査等における帳簿等データの提出依頼に関する取組等について」
- 国税庁「法人税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
- 国税庁「帳簿の提出がない場合等の加算税の加重措置に関するQ&A」(PDF)
- 国税庁「No.9205 延滞税について」
- 国税庁「延滞税の計算期間の特例規定の取扱いについて(法令解釈通達)」
- 国税庁「法人税及び地方法人税の確定申告に係る税額等についての更正の請求」
- 国税不服審判所「不服申立手続等」
- 大阪国税局「須磨税務署」
情報基準日:2026年10月16日
本記事は、税務調査への対応に関する一般的な情報を提供するもので、個別の事案についての法的助言や税務上の助言ではありません。具体的な税額や手続の選択は、事実関係と資料に基づいて個別に判断する必要があります。

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