「自己破産を考えているが、今の仕事を続けられるのか」「資格を失ってしまうのか」——債務整理を検討するとき、借金そのものよりも仕事への影響が心配で踏み出せない、という声は少なくありません。とくに警備員、保険募集人、不動産関係、建設業、士業など、資格・登録・許認可が関わる仕事の方ほど不安は大きくなります。
結論から申し上げると、自己破産をしても、すべての職業に就けなくなるわけではありません。制限されるのは一部の資格・登録・許認可に限られ、その多くは「復権」によって解消される一時的なものです。もっとも、どの仕事が制限対象になるか、いつから・いつまで制限されるかは、職種や登録制度によって異なり、勤務先や登録先の資料を確認したうえで判断する必要があります。
この記事では、破産による資格制限の仕組み、制限が始まる時期と終わる時期、制限が問題になりやすい代表的な職業、復権の意味、そして破産申立て前に確認しておきたい資料を整理します。仕事や資格への影響を確認したうえで、債務整理の方針を検討するための材料としてお役立てください。
仕事や資格への影響が不安な方は、破産申立て前に資料を確認し、対応方針を整理しておくことをおすすめします。神戸みらい法律会計事務所では、債務整理に関するご相談を承っています。
Contents
結論|破産で就けなくなる職業は一部に限られ、多くは復権で回復します
まず全体像を整理します。自己破産と仕事の関係は、次の三点を押さえると理解しやすくなります。
破産と仕事の関係・3つのポイント
- すべての職業が制限されるわけではなく、制限は一部の資格・登録・許認可に限られます。
- 制限される職種かどうかは破産法ではなく、その仕事を定める個別の法令で決まります。
- 制限は「復権」によって解消される仕組みがあり、多くは一時的なものにとどまります。
| 確認項目 | 基本的な考え方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 制限される職業の範囲 | 一部の資格・登録・許認可に限られ、一般の会社員やアルバイトが破産だけで当然に就業できなくなるわけではありません。 | 勤務先の就業規則や担当業務により取扱いが異なる場合があります。 |
| 制限が始まる時期 | 原則として破産手続開始決定を受けた時点から問題になります。 | 申立て前・弁護士へ相談した時点では資格制限は生じません。 |
| 制限が終わる時期 | 復権により解消されます。最も多いのは免責許可決定の確定によるものです。 | 「決定が出た日」と「決定が確定した日」は異なります。 |
| 復権後の手続 | 法律上の資格制限は解消される方向です。 | 再登録・届出・更新の要否は登録先・制度により確認が必要です。 |
| 債務整理の選択肢 | 任意整理・個人再生では資格制限は問題になりません。 | どの手続が適切かは資料を確認したうえで個別に検討します。 |
破産による「資格制限」とは|破産法と個別資格法令の関係
資格制限は破産法に一覧があるわけではない
「破産者が就けない職業の一覧」が破産法にまとめて定められている、というイメージを持たれることがありますが、実際の仕組みは異なります。破産法は、後で述べる「復権」によって資格制限が解消されることを定めているにとどまり、どの資格・職業が制限されるかは、警備業法・保険業法・宅地建物取引業法・建設業法・弁護士法など、それぞれの仕事を規律する個別の法令が定めています。
そのため、自分の仕事が制限対象かどうかは、その職業を定める法令の欠格事由・登録拒否事由・許可の基準を一つずつ確認する必要があります。インターネット上の情報には古い法令の文言が残っていることもあるため、最終的には現行の条文と登録先の取扱いで確認することが大切です。
「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」という考え方
制限対象となる資格の多くは、その法令の中に「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」は資格を取得できない、登録できない、許可を受けられない、といった定めを置いています。言い換えると、破産手続開始決定を受けてから復権を得るまでの間に限って制限が問題になる、という構造です。したがって、過去に自己破産をしていても、すでに復権していれば、この欠格事由には当たりません。
「復権を得ない者」という表現は分かりにくいものですが、おおむね「破産手続を開始したあと、まだ破産者の状態から回復していない期間にある人」を指します。復権すれば破産者ではなくなり、この制限から外れます。
制限が始まる時期・終わる時期(時系列)
資格制限が問題になるのは、原則として破産手続開始決定を受けた時点からです。弁護士へ相談した時点や、裁判所へ申立てをした時点では、まだ資格制限は生じません。そして、復権を得た時点で制限は解消されます。時系列で整理すると次のとおりです。
| 段階 | 資格制限との関係 |
|---|---|
| 弁護士への相談・受任 | 資格制限は生じません。 |
| 裁判所への破産申立て | 申立てだけでは資格制限は生じません。 |
| 破産手続開始決定 | この時点から、制限対象の資格について制限が問題になります。 |
| 免責許可決定 | 決定が出ただけでは確定しておらず、なお注意が必要です。 |
| 免責許可決定の確定(=復権) | 多くの場合、この時点で当然復権し、資格制限が解消されます。 |
申立て前から相談が望ましいのは、制限対象の職種では、開始決定後の業務継続、配置転換、休職、登録・更新の時期などをあらかじめ調整しておく必要がある場合があるためです。これらは申立てのタイミングと関係するため、早めに見通しを立てておくと選択肢が広がります。
資格制限が問題になりやすい職業・資格の代表例
制限が問題になりやすい代表的な職業・資格を整理します。下表は確認できた法令に基づく代表例であり、制限されるすべての資格・職業を網羅するものではありません。ご自身の職種が当てはまるかどうかは、登録先・許認可窓口や弁護士に確認することをおすすめします。
| 職業・資格・立場 | 問題になる場面 | 確認する法令 | 相談前に確認する資料 |
|---|---|---|---|
| 警備員 | 復権を得るまでの間、警備業務に従事できないとされています。警備業者は該当者を警備業務に従事させられません。 | 警備業法第14条第1項、第3条第1号 | 雇用契約書、警備員としての配置状況、配置転換の可否 |
| 生命保険募集人・損害保険代理店等(保険募集人) | 新たに登録を受けようとする場面では登録が拒否されます。すでに登録済みの場合の取扱いは、別途確認が必要です。 | 保険業法第279条第1項第1号、第307条 | 募集人登録の有無、所属保険会社・代理店の取扱い |
| 宅地建物取引業者(免許) | 復権を得ない者は宅地建物取引業の免許を受けられません。 | 宅地建物取引業法第5条第1項第1号 | 免許の名義、法人か個人か、役員構成 |
| 宅地建物取引士(登録) | 復権を得ない者は宅地建物取引士の登録を受けられません。 | 宅地建物取引業法第18条第1項第2号 | 登録の有無、登録先の都道府県 |
| 建設業の許可 | 復権を得ない者がいると、建設業の許可を受けられないとされています。 | 建設業法第8条第1号 | 許可の名義、役員・経営業務管理責任者の状況 |
| 弁護士・公認会計士・税理士・司法書士 | 復権を得ない者は、その資格を有しない、または登録できないとされています。 | 弁護士法第7条第4号、公認会計士法第4条、税理士法第4条第2号、司法書士法第5条 | 登録の有無、所属会・登録先への確認事項 |
| 後見人(成年後見人等) | 破産者は後見人となることができないとされています。 | 民法第847条第3号 | 現に後見人か、候補者か、家庭裁判所への報告の要否 |
会社の取締役などの役員は、破産そのものが欠格事由とされているわけではありません。もっとも、会社と役員の委任契約は破産手続開始決定によって終了するため(民法第653条)、いったん退任する必要があります。退任後、改めて株主総会で選任されれば、復権前であっても役員に復帰できると考えられています。具体的な取扱いは事案により異なります。
復権とは何か|資格制限が解消される仕組み
復権とは、破産手続の開始によって生じた資格や権利の制限が解消され、本来の法的地位が回復することをいいます。復権には、一定の事由が生じれば自動的に効力が生じる「当然復権」と、裁判所へ申し立てて決定を受ける「申立てによる復権」があります。
当然復権(破産法第255条)
破産法第255条第1項は、次のいずれかに該当する場合に当然に復権するとしています。実務上、最も多いのは①の免責許可決定の確定によるものです。
| 当然復権の事由 | 主な内容 |
|---|---|
| 免責許可決定の確定 | 免責許可決定が確定したとき。自己破産をした方の多くがこの形で復権します。 |
| 同意による破産手続廃止の決定の確定 | 債権者の同意による破産手続廃止(同意廃止)の決定が確定したとき。 |
| 再生計画認可決定の確定 | 破産手続中に個人再生へ移行し、再生計画認可の決定が確定したとき。 |
| 開始決定後10年の経過 | 破産手続開始決定後、詐欺破産罪(破産法第265条)について有罪の確定判決を受けることなく10年を経過したとき。 |
申立てによる復権(破産法第256条)
当然復権の事由に当たらない場合でも、破産者が弁済その他の方法によって破産債権者に対する債務の全部について責任を免れたときは、破産裁判所に対して復権の申立てをすることができます(破産法第256条第1項)。たとえば、免責を受けられなかったものの、その後に借金をすべて返済したような場合が考えられます。このときは申立てが必要で、完済しただけで自動的に復権するわけではない点に注意が必要です。
「免責許可決定」と「免責許可決定の確定」の違い
当然復権の中心となるのは免責許可決定の「確定」です。免責許可決定は、出された後に官報へ公告され、債権者からの不服申立てがないまま一定期間が経過することで確定します。「決定が出た日」と「決定が確定した日」は異なるため、資格制限が解消される時期を考えるときは、確定の時点を基準にする必要があります。具体的な確定時期や手続は、依頼している弁護士に確認してください。
復権によって法律上の資格制限は解消される方向ですが、信用情報機関に登録された情報は復権によって直ちに消えるわけではありません。資格制限の解消と、クレジットカードやローンの審査への影響は別の問題として整理しておくとよいでしょう。
「自分の仕事は制限対象なのか」「復権までどのくらいかかるのか」は、登録先や勤務先の資料を確認することで見通しを立てやすくなります。資料を整理したうえで、債務整理の方針をご相談ください。
ケース別に確認したいポイント
ここでは、ご相談で迷われやすい場面ごとに、一般的な確認ポイントを整理します。いずれも個別事情により結論が変わるため、最終的には資料を確認したうえでの判断が必要です。
警備員として勤務している場合
復権を得るまでの間は警備業務に従事できないとされているため(警備業法第14条第1項、第3条第1号)、開始決定から復権までの期間の働き方が問題になります。警備業務以外への配置転換や、その間の休職が可能かどうか、勤務先と早めに相談しておくことが考えられます。資格制限の影響が大きい場合には、任意整理・個人再生など他の選択肢も含めて検討する余地があります。
保険募集人として登録している場合
新たに登録を受ける場面では、復権を得ない者は登録が拒否されます(保険業法第279条第1項第1号)。一方、すでに登録済みの方については、登録取消し・業務停止が「できる」と定められており(保険業法第307条)、運用上の取扱いには幅があります。所属する保険会社・代理店の取扱いや、登録先への確認が重要になります。
宅建・不動産の仕事をしている場合
復権を得ない者は宅地建物取引業の免許や宅地建物取引士の登録を受けられません(宅地建物取引業法第5条第1項第1号、第18条第1項第2号)。個人として宅建士登録がある場合と、法人として免許を持つ場合とで影響の出方が異なるため、名義と立場を確認したうえで検討する必要があります。
建設業許可・会社役員に関わる場合
復権を得ない者がいると建設業の許可に影響し得ます(建設業法第8条第1号)。また、会社役員については、破産自体は欠格事由ではないものの、委任契約が終了して一旦退任することになります(民法第653条)。許可の維持や役員構成への影響は、会社の状況により異なるため、個別の確認が必要です。
士業の資格・登録がある場合
弁護士・公認会計士・税理士・司法書士などは、復権を得ない者はその資格を有しない、または登録できないとされています(弁護士法第7条第4号、公認会計士法第4条、税理士法第4条第2号、司法書士法第5条)。復権後の登録回復の手続は資格・登録先により異なるため、所属会・登録先への確認をおすすめします。
後見人になっている・候補になっている場合
破産者は後見人となることができないとされています(民法第847条第3号)。現に後見人に就いている場合や、候補者になっている場合には、家庭裁判所への対応も含めて確認が必要です。
一般の会社員で勤務先に知られるか不安な場合
資格制限のない一般の会社員は、破産だけで当然に就業できなくなるわけではありません。もっとも、官報公告、給与差押え、勤務先からの書類提出などをきっかけに知られる可能性が全くないとは言い切れません。「絶対に知られない」「必ず解雇される」といった断定はできず、就業規則や担当業務によって状況が異なります。
家族の破産が自分の資格に影響するか不安な場合
資格制限は、原則として破産した本人について生じるものです。家族が破産したことで、本人の資格が当然に制限されるわけではありません。ただし、家族が同じ会社の役員・保証人である場合など、別の論点が関わることもあるため、具体的な事情に応じた確認が必要です。
破産申立て前に確認すべきチェックリスト
仕事や資格への影響を見極めるため、相談前に次の資料・情報を手元で確認しておくと、見通しを立てやすくなります。
- 職種名・資格名・登録番号・許認可の種類
- 雇用契約書、就業規則、資格手当や職務分掌に関する資料
- 登録証・免許証・許可証、登録先や許認可窓口からの通知
- 登録・更新の期限、配置転換や休職に関する社内の取扱い
- 債権者一覧、借入先、請求書・督促状、給与明細などの家計資料
- 裁判所からの書類がある場合はその写し
- 勤務先や登録機関から提出を求められている書類
- 復権後の再登録・届出・更新が必要かどうかの確認事項
弁護士に相談するタイミング
相談によって結果が保証されるわけではありませんが、資料を確認することで、資格制限の有無や復権までの見通し、申立てのタイミングといった判断材料を整理しやすくなります。とくに次のような場面では、早めの相談が選択肢を広げます。
- 破産申立て前に、仕事や資格への影響を確認しておきたいとき
- 勤務先や登録先に説明する前に、対応方針を整理したいとき
- 登録・更新の期限が近く、手続のタイミングを検討したいとき
- 免責許可決定後に、復職や再登録の進め方を確認したいとき
債務整理には任意整理・個人再生・自己破産といった選択肢があり、資格制限の有無は手続選択にも関わります。どの方法が適しているかは、資料を確認したうえで個別に検討することになります。
自己破産するとすべての仕事に就けなくなりますか。
いいえ。制限されるのは一部の資格・登録・許認可に限られ、一般の会社員やアルバイトが破産だけで当然に就業できなくなるわけではありません。制限対象かどうかは職種ごとの法令で異なります。
資格制限はいつから始まりますか。
原則として破産手続開始決定を受けた時点からです。弁護士へ相談した時点や、裁判所へ申立てをした時点では資格制限は生じません。
資格制限はいつ終わりますか。
復権を得た時点で解消されます。多くは免責許可決定の確定によるもので、期間は事案により異なります。
復権とは何ですか。
破産手続の開始により生じた資格や権利の制限が解消され、本来の法的地位が回復することです。一定事由で自動的に生じる当然復権と、裁判所へ申し立てる復権があります(破産法第255条・第256条)。
警備員や保険募集人、宅建士は自己破産で影響がありますか。
これらは制限が問題になりやすい代表例です。復権を得るまでの間、就業や新規登録が制限される場面があります(警備業法、保険業法、宅地建物取引業法)。すでに登録済みの場合の取扱いは登録先により異なるため確認が必要です。
免責許可決定が出たらすぐ復権しますか。
決定が出ただけでは確定しておらず、官報公告後に一定期間が経過して確定します。資格制限の解消は確定の時点が基準になります。確定時期は依頼している弁護士にご確認ください。
自己破産したことは勤務先に必ず知られますか。
「絶対に知られない」とも「必ず知られる」とも言えません。官報公告や給与差押え、登録更新などをきっかけに知られる可能性はありますが、状況は勤務先の取扱いにより異なります。
破産申立て前に弁護士へ相談した方がよいケースはありますか。
資格制限が関係する仕事の方は、申立て前の相談が有用です。配置転換・休職・登録更新の時期や、債務整理の方法の選択を、資料を確認したうえで整理しやすくなります。
まとめ
- 自己破産をしても、すべての職業に就けなくなるわけではなく、制限は一部の資格・登録・許認可に限られます。
- 制限対象かどうかは破産法ではなく、警備業法・保険業法・宅地建物取引業法・建設業法・士業の各法令などの個別法令で決まります。
- 資格制限は破産手続開始決定の時点から問題になり、復権(多くは免責許可決定の確定)によって解消されます。
- 「免責許可決定」と「その確定」は時期が異なり、復権後の再登録・届出・更新の要否は登録先により確認が必要です。
- 仕事や資格への影響を資料で確認したうえで、任意整理・個人再生・自己破産のいずれが適切かを検討することが大切です。
仕事や資格への影響が気になる方は、破産申立て前に資料を確認し、見通しと対応方針を整理することをおすすめします。神戸みらい法律会計事務所では、債務整理に関するご相談を承っています。担当弁護士の紹介やご相談の流れは、以下のページからご確認いただけます。
監修者
藤井 貴之(弁護士・公認会計士/兵庫県弁護士会所属)
神戸みらい法律会計事務所(弁護士法人ひょうごあわじみらい法律会計事務所 神戸支所)。債務整理・自己破産をはじめとする借金問題に対応しています。記事の内容は一般的な情報であり、個別の事案については弁護士にご相談ください。
参考資料

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