一人親方の自己破産|工具・仕事用の車・売掛金と仕事の継続 |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|

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一人親方の自己破産|工具・仕事用の車・売掛金と仕事の継続

「破産したら、もう職人として働けないのではないか」「工具と軽トラックを持っていかれたら、明日から現場に出られない」。材料代や外注費の支払い、事業資金の返済が重なった一人親方の方から、こうしたご相談をいただきます。

結論からいえば、自己破産をしても、職人として働くこと自体が禁止されるわけではありません。ただし、「働くこと」と「これまでどおりの形で事業を続けること」は別の問題です。工具、仕事用の車、元請への売掛金、工事途中の契約、建設業許可のそれぞれについて、確認すべき条件も資料も違います。

この記事では、労働者を雇わずに自分で工事を請け負う個人事業主(本記事ではこれを「一人親方」と呼びます)が自己破産を検討するときに、仕事を続けるために何を確認すればよいかを、破産法・民事執行法・建設業法の条文に沿って整理します。事案によって結論が変わる点も、あわせて示します。

督促と現場の段取りが重なって判断できないときは、工事の契約書と売掛金の一覧を手元に置いたうえで、支払い・現場対応・仕事の継続について方針を整理するところから始められます。

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一人親方は自己破産をしても働けるのか

まず、言葉を四つに分けて考えます。混同したまま検討すると、必要のない廃業を選んだり、逆に、やってはいけない処分に手を出したりすることになります。

  • 職人として働くこと。破産手続は、大工・内装・塗装・左官・設備といった技能そのものを制限する手続ではありません。雇われて働くこともできます。
  • 従前の個人事業をそのまま続けること。屋号・取引先・工具・車・許可・契約が一体となった「これまでの営業」を、そのままの形で続けられるかは別の検討になります。
  • 同じ工具や車を使い続けること。その物が処分の対象になるかどうかで結論が変わります。
  • 既存の契約を続けて、許可を維持すること。契約の処理と許可の扱いは、別の条文で決まります。

「一人親方は破産しても仕事に影響がない」という説明も、「破産したら必ず廃業しなければならない」という説明も、どちらも正確ではありません。影響の有無は、次の表の項目を一つずつ確認して初めて判断できます。

仕事を続けられるかを左右する確認事項

仕事の継続に影響する確認事項
確認事項 何を見るか 結論を変える条件 確認資料
建設業許可の有無 許可業者か、軽微な建設工事だけを請け負っているか 許可業者かどうかで届出・取消しの有無が変わる 許可通知書、直近の工事の請負代金額
工具・機械の所有と用途 本人の所有物か、業務に欠くことができない物か、転売用の在庫か 用途・数量・代替性・所有関係で分かれる 写真、型番、購入資料、リース契約書
仕事用の車の所有と担保 完済済みか、所有権留保付きか、リースか、他人名義か 所有関係と担保の有無で出発点が変わる 自動車検査証、ローン契約書、残債証明、査定書
元請への売掛金・出来高 いつの工事の請求か、完成・引渡し・検収はいつか 破産手続開始の前後で扱いが変わる 契約書・注文書・請書、請求書、検収書
工事途中の契約 自分と相手方のどちらの履行が残っているか 双方の履行が残っているかで枠組みが変わる 請負契約書、工程表、施工記録
材料代・外注費・未払金 いつ発生した債務か、相手は誰か 過去の未払いと開始後の債務では扱いが違う 買掛金一覧、外注先一覧、支払予定表
税・社会保険料の滞納 税目、年度、滞納額、督促・差押えの有無 免責の対象にならない債権が含まれる 納税通知書、督促状、差押調書
保証人・共同債務者 事業資金の借入れに保証人が付いているか 本人が免責されても保証人の責任は残る 金銭消費貸借契約書、保証契約書

手続の段階によって、できることが変わる

「破産」と一括りに語られますが、実際には段階があり、財産の扱いが変わる時点も決まっています。相談を始めた時点と、破産手続開始の決定があった時点と、免責許可の決定が確定した時点は、別のものとして区別してください。

破産手続の段階と、財産・仕事との関係
段階 その時点で起きること 財産・仕事との関係
相談・受任通知 弁護士が受任し、債権者へ通知する まだ財産の帰属は変わらない。資料の収集と、支払い・処分を止める判断が中心になる
申立て 裁判所に破産手続開始の申立てをする 申立日は財産の帰属を決める基準時ではない。財産の管理はなお本人が行う
破産手続開始の決定 裁判所が開始を決定し、原則として破産管財人が選任される この時に有する財産が破産財団になる(破産法第34条第1項)。その管理処分権は破産管財人に専属する(同法第78条第1項)
管財手続又は同時廃止 財産の調査・換価・配当が行われるか、費用不足のため開始と同時に廃止される 破産管財人は裁判所の許可を得て事業を継続することもできる(同法第36条)。本人は自由財産と新たに得た財産で生活・活動する
免責許可の決定・確定 免責の可否が判断され、決定が確定する 確定すると復権する(同法第255条第1項第1号)。破産手続の終了と免責の確定は別の出来事である

「破産財団」とは、破産手続のなかで債権者への配当に充てるために、破産管財人が管理・処分する財産のまとまりのことです。これに対して、手元に残せる財産を「自由財産」といいます。どちらに入るかで、工具も車も売掛金も扱いが変わります。

屋号があっても、事業の借金だけを整理することはできない

事業の債務と生活の債務は一体で確認する

個人事業では、屋号を使っていても、本人とは別の法人格が生じるわけではありません。事業用の口座も生活用の口座も、事業資金の借入れも生活費のカードローンも、すべて同じ一人の債務者に属します。

そのため、「事業の借金だけを破産で整理する」「材料屋さんだけ債権者一覧から外す」という進め方はできません。債権者を意図的に記載しなかった場合、その請求権は免責の効力が及ばない債権として残り得ます(破産法第253条第1項第6号)。さらに、虚偽の債権者名簿を提出したことは免責不許可事由として掲げられています(同法第252条第1項第7号)。

法人化している場合は、主体・所有・保証を分けて確認する

すでに法人を設立していて、その法人名義で受注している場合は、破産の主体(法人か個人か、あるいは双方か)、工具・車の所有名義、借入れの保証関係を分けて確認する必要があります。個人事業を前提とした本記事の説明がそのまま当てはまらない場面が出てきますので、資料を持参して個別に確認してください。

「一人親方」という呼び方だけで労働者性は決まらない

現場で一人親方と呼ばれていても、実態として特定の会社の指揮監督の下で働き、報酬が労務の対価と評価される場合には、労働基準法上の労働者に当たると判断されることがあります。厚生労働省は、指揮監督下の労働といえるか、報酬が労務の対価といえるかという「使用従属性」を中心に、依頼への諾否の自由、業務遂行上の指揮監督、拘束性、代替性、事業者性、専属性を加えて、契約の形式ではなく個別に総合判断すると説明しています。

この区別は破産手続でも意味を持ちます。雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権と預り金の返還請求権は免責されない債権とされ(破産法第253条第1項第5号)、破産手続開始前3か月間の使用人の給料の請求権は財団債権とされています(同法第149条第1項)。帳簿上「外注費」と処理していても、実態が賃金であれば通常の仕入債務と同じ扱いにはなりません。逆に、一人親方だからといって、元請に対する請負代金が当然に賃金と同じ保護を受けるわけでもありません。

工具・機械・材料は何を残せるか

出発点は「破産財団」と「差押禁止動産」の関係

破産手続開始の時に破産者が有する一切の財産は、原則として破産財団になります(破産法第34条第1項)。もっとも、同条第3項は、破産財団に属しない財産として、民事執行法第131条第3号に規定する額に2分の3を乗じた額の金銭(同項第1号)と、差し押さえることができない財産(同項第2号)を掲げています。

ここでいう差押禁止財産のうち、職人の仕事道具に直接かかわるのが、民事執行法第131条第6号です。同号は「技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)」と定めています。括弧書きで除かれているのは「商品」であって、「機械」ではありません。

この規定は、対象を金額で区切っていません。「20万円以下なら全国どこでも残せる」といった説明は条文の内容ではなく、裁判所ごとの運用に関する話が混ざったものです。また、帳簿上の減価償却が終わって帳簿価額がゼロであることと、中古市場で値段が付くかどうかは別問題です。取得価格、減価償却後の帳簿価額、実際の中古売却価値は、それぞれ分けて確認してください。

持ち物を区分して確認する

同じ「工具」でも、次のように性質が異なります。まず自分の物かどうかを確認し、次に法定の保護が及ぶ範囲かどうか、最後に個別の判断が必要かどうかという順で整理すると、抜けが出にくくなります。

工具・機械・材料の区分と、扱いの出発点
区分 扱いの出発点 確認資料
日常使用する手工具 のこぎり、かんな、こて、レベル、脚立 業務に欠くことができない器具に当たるかを、職種と用途から確認する 写真、使用状況、職種・工程の説明
電動工具 丸のこ、インパクトドライバー、集じん機 電動であることだけで一律には判断されない。用途と必要性を個別に確認する 型番、購入資料、使用頻度
予備機・重複所有 同種の工具を複数所有している場合 「業務に欠くことができない」といえる数量かどうかが問題になる 数量の一覧、稼働状況、現場ごとの必要数
大型設備・機械 足場一式、高所作業台、大型の据置機械 価額、代替性、使用状況を踏まえた個別の判断になる 査定資料、設置場所、担保の有無
転売用の商品・材料在庫 仕入れて保管している建材、未使用の設備機器 民事執行法第131条第6号の括弧書きにより「商品」は除かれる 仕入伝票、在庫表、保管場所
元請からの支給材 現場に搬入された元請支給の資材 本人の財産でない可能性がある。所有関係の確認が先になる 受領書、契約書の支給条項、搬入記録
リース品・借用品 リース中の機械、レンタルの仮設材 本人の所有物ではない。契約上の返還・清算の問題になる リース契約書、レンタル契約書

法定の自由財産、自由財産の拡張、財団からの放棄は別のもの

「残せる」といっても、根拠は一つではありません。次の三つは区別して考えてください。

  • 法定の自由財産。破産法第34条第3項各号により、最初から破産財団に属しない財産です。差押禁止動産はここに含まれます。
  • 自由財産の拡張。裁判所が、破産者の生活の状況、開始時に有していた財産の種類と額、収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を広げる決定です(同条第4項)。申立て又は職権により、破産手続開始の決定があった時から、その決定が確定した日以後1か月を経過する日までの間に行われます。開始決定の日と、決定が確定した日は別の日である点に注意してください。
  • 破産財団からの放棄。破産管財人が、換価が見込めない財産などについて、裁判所の許可を得て財団から放棄するものです(同法第78条第2項第12号)。

いずれの場合も、財産一覧に記載して申告すべきことは変わりません。「残せる見込みがあるから書かなくてよい」ということにはなりません。破産財団の価値を不当に減少させる行為や、帳簿・書類の隠滅は免責不許可事由として掲げられています(破産法第252条第1項第1号・第6号)。

なお、破産財団に属しない現金の枠(破産法第34条第3項第1号)は「現金」についてのものであり、預貯金・車・売掛金を含む財産全体が自動的に保護されるという意味ではありません。手元に残すために預金を引き出して現金に換える対応も勧められません。自由財産の全体像は自己破産で手元に残せる財産の解説記事を読むをご覧ください。

軽トラック・仕事用の車はどうなるか

まず所有関係を確認する

仕事に使っているという事実だけで、車が当然に保護されるわけではありません。工具についての考え方をそのまま当てはめることもできません。車は登録制度と担保の仕組みがあるため、まず「誰の物か」「担保が付いているか」を確認するところから始めます。

仕事用の車の所有・契約別の整理
区分 確認する書類 扱いの出発点 注意点
完済済みの自己所有車 自動車検査証、査定書、レッドブック等の評価資料 破産財団に属するかが問題になる。時価の評価が出発点になる 年式・走行距離・車種で評価が分かれる。仕事に使っていることは、拡張の判断で考慮され得る事情の一つにとどまる
所有権留保付きのローン車 自動車検査証(所有者欄・使用者欄)、ローン契約書、残債証明、返済明細 担保権者による引揚げが問題になる。担保の有無と対抗要件の確認が先になる 自動車検査証の所有者欄の記載だけで、留保の効力や対抗要件が決まるわけではない
リース車 リース契約書、支払明細、残リース料の計算書 本人の所有物ではない。契約の処理として扱われる 契約書の解除条項と清算条項を確認する
家族・第三者名義の車 自動車検査証、購入時の資金の出所が分かる資料 誰が代金を負担したか、実質的な所有者は誰かが問題になる 手続を意識した名義変更は、否認や免責不許可の検討対象になり得る

残すことを検討する場合の道筋

車を残す方向で検討する場合、自由財産の拡張を申し立てる、破産管財人が財団から放棄する、適正な条件で第三者が取得したうえで本人が借りる、レンタルやリースに切り替えるといった選択肢が挙がることがあります。いずれも、財源、価格の適正さ、手続、破産管財人や裁判所の判断が必要になる選択肢であり、本人の判断だけで進められるものではありません。

次の対応は勧められません。家族への名義変更や、時価より低い価格での譲渡を、財産を守る方法として行うことローンだけを払い続ければ車を残せると考えて、他の債権者への支払いを止めたまま特定の会社にだけ返済を続けること家族が代わりに払えば必ず引き揚げられないと考えることです。特定の債権者に対する債務の消滅に関する行為は否認の対象になり得ますし(破産法第162条第1項)、免責の判断にも影響し得ます(同法第252条第1項第3号)。また、保証人が付いている場合、本人の免責は保証人に対する債権者の権利に影響しません(同法第253条第2項)。

ローンが残る車の扱いは、手続の種類によって考え方が変わります。詳しくは自動車ローンと所有権留保の解説記事を読むでご確認ください。

元請への売掛金・出来高・入金予定

「開始時に有する財産」と「開始前の原因に基づく将来の請求権」

破産財団は、破産手続開始の時に有する一切の財産です(破産法第34条第1項)。加えて、同条第2項は、破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権も破産財団に属すると定めています。

したがって、「開始後に振り込まれれば自由に使える」という理解は誤りです。振込日ではなく、その請求権の原因がいつ生じたかが問題になります。また、請求書の発行日を後にずらせば開始後の売上になる、という考え方も通りません。むしろ、事実と異なる資料の作成は、帳簿・書類の偽造として免責不許可事由の検討対象になります(同法第252条第1項第6号)。

他方で、破産手続開始後に自分が働いて新たに得た報酬は、開始の時に有していた財産ではありませんから、原則として破産財団には含まれません。これが「新得財産」と呼ばれるものです。開始の前後にまたがる工事について、単純に日割りで分ける、あるいは入金日だけで切り分ける、という処理はできません。契約の内容、履行の状況、破産管財人が契約を続行するかどうかなどを踏まえて判断する必要があります。

時期と資料の対応

売掛金・出来高の場面と、確認しておく資料
場面 確認する時期 扱いの出発点 確認資料
完成済みで未入金 完成・引渡し・検収の各日付 開始前の原因に基づく請求権として破産財団に属するかが問題になる 契約書・注文書・請書、完成届、検収書
未請求の出来高 施工期間と、開始決定日との前後関係 出来高の範囲と評価が争点になりやすい 工程表、施工写真、日報
保留金・留保金 契約上の支払時期と条件 支払条件が成就しているかを契約から確認する 請負契約書の支払条項、精算書
追加・変更工事の代金 指示・合意の時期と方法 合意の成立と金額が争われやすい。書面の有無が効く 指示書、打合せ記録、メッセージの履歴
手形・電子記録債権 振出日・満期日 券面と満期の管理が必要になる 手形、電子記録債権の記録事項
譲渡済み・担保に入れた債権 譲渡・譲渡担保・ファクタリングの契約日 すでに債権が移転していないかを契約から確認する 債権譲渡契約書、通知・承諾の記録

元請が主張する控除と相殺

元請から「貸付分と相殺する」「立替えた材料代を差し引く」「赤伝で処理する」と言われることがあります。これらをすべて当然に有効な処理として受け入れることはできません。

破産債権者は、破産手続開始の時において破産者に対して債務を負担するときは、破産手続によらないで相殺することができます(破産法第67条第1項)。もっとも、同法第71条は、破産手続開始後に破産財団に対して債務を負担したとき、支払不能・支払停止・破産手続開始の申立てを知った後に債務を負担したときなど、相殺が禁止される場合を掲げています。同法第72条は、破産者に対して債務を負担する者が破産債権を取得した場合の相殺禁止を定めています。相殺の主張については、相手方の債権の内容と発生時期、こちらの債務の負担時期、相手方がいつ何を知っていたかを整理して確認することになります。赤伝処理、立替払い、材料の支給、下請への直接払いも、契約上の根拠と実際の処理を突き合わせる対象です。

売掛金の額から材料代や外注費を差し引いた「手取りの利益」だけを申告すればよい、という処理はできません。売掛金は売掛金として、買掛金・外注費は債務として、それぞれ一覧にしてください。また、本人が破産したという事実だけで、元請の工事代金支払義務が当然になくなるわけではありません。もっとも、契約の解除、相殺、契約不適合、出来高の争いなどがある場合には、別途の検討が必要になります。

次の対応は勧められません。元請に頼んで入金を遅らせてもらうこと家族名義の口座に振り込んでもらうこと現金で受け取って申告しないこと知人に債権を移すこと。いずれも、破産財団の価値を不当に減少させる行為として免責不許可事由の検討対象になり得ますし(破産法第252条第1項第1号)、否認の対象にもなり得ます。

なお、元請自体が倒産して工事代金が回収できない場合は、この記事とは別の対応になります。届出・担保・相殺の考え方は取引先が倒産したときの売掛金回収の解説記事を読むで整理しています。

支払いを止めるべきか、今月の入金を使ってよいか、現場をどうするかは、契約書・請求書・入金予定が分かる資料を確認したうえで判断する必要があります。資料の一部しか手元になくても、支払日や工期が近いものから先に確認できます。

借金問題(債務整理)の取扱業務を確認する

材料代・外注費・税金等の支払い

付き合いのある相手にだけ先に払ってよいか

取引を続けたい材料業者や外注先にだけ支払いたい、という相談は多くあります。しかし、この対応には二つの別々の問題があります。

  • 否認の問題。既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為は、支払不能になった後又は破産手続開始の申立てがあった後にされたもので、債権者がその事実を知っていた場合などに、破産財団のために否認することができます(破産法第162条第1項)。否認されると、支払を受けた相手方が破産管財人から返還を求められることになり、取引関係はかえって悪化します。
  • 免責の問題。特定の債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、義務に属しない、あるいは方法・時期が義務に属しない担保の供与や債務の消滅に関する行為をしたことは、免責不許可事由として掲げられています(同法第252条第1項第3号)。

もっとも、免責不許可事由に当たる行為があった場合でも、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することができるとされています(同条第2項)。したがって、「特定の支払いをすれば必ず免責されない」と断定することもできません。実際にどう評価されるかは、支払の時期、金額、相手方との関係、資力の状況によって変わります。

支払いの種類ごとに分けて確認する

「すべての支払いを一律に止める」という指示も、「仕事に必要なら過去の外注費も払ってよい」という指示も、いずれも正確ではありません。次のように区分してください。

支払いの区分と、確認しておく点
支払いの種類 具体例 確認しておく点
過去の未払債務 相談前に発生した材料代、外注費、借入金、カード利用分 手続のなかで一律に扱う対象になる。独断で一部だけ支払わない
相談後に発生する取引 受任後に新たに仕入れる材料、新たに発注する外注 支払える見込みを先に確認する。見込みのない仕入れ・借入れ・前受金の受領はしない
破産手続開始後の債務 開始決定後に本人が負担した債務 破産債権とは別の扱いになる。負担する前に方針を確認する
税・社会保険料 所得税、消費税、住民税、国民健康保険料、国民年金保険料 免責されない債権が含まれる。納付相談・猶予の申請は別に検討する
従業員を雇っている場合の賃金等 未払給与、預り金、源泉徴収した所得税 通常の仕入債務とは扱いが異なる。実態が雇用かの確認が先になる

税・社会保険料と、免責されない債権

免責許可の決定が確定すると、破産者は破産債権について責任を免れますが、租税等の請求権は例外として掲げられています(破産法第253条第1項ただし書第1号)。ほかに、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(同項第2号)、故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(同項第3号)、雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び預り金の返還請求権(同項第5号)などがあります。工事中の事故や契約不適合による損害賠償についても、「破産すればすべて消える」とはいえません。

また、租税等の請求権のうち、破産手続開始前の原因に基づいて生じたもので、開始当時まだ納期限が到来していないもの、又は納期限から1年を経過していないものは財団債権とされ(同法第148条第1項第3号)、破産手続開始前3か月間の使用人の給料の請求権も財団債権です(同法第149条第1項)。これらは破産債権とは別の枠組みで扱われます。

租税等の請求権や罰金等の請求権について、徴収の権限を有する者に対してした担保の供与又は債務の消滅に関する行為には、破産法第162条第1項の否認の規定は適用されません(同法第163条第3項)。つまり、税金の支払いを、取引先への返済と同じ否認の枠組みでそのまま説明することはできません。もっとも、これは「どの税金をいつ払ってもよい」という意味ではありませんので、支払う前に、債務の種類と支払いの根拠を確認してください。

税・社会保険料が払えない状態が続いている場合は、猶予や分割納付の相談が別に用意されています。詳しくは、税金・国民健康保険の滞納と非免責債権の解説記事を読む消費税・社会保険料が払えないときの解説記事を読むをご確認ください。なお、確定申告、帳簿の保存、税・社会保険料の納付相談は、債務整理とは別に残る手続です。

工事途中の契約・前受金・現場対応

請負人としての立場と、注文者としての立場を分ける

一人親方は、元請から工事を受注する「請負人」であると同時に、別の職人へ工事を発注する「注文者」でもあります。同じ人が両方の立場を持つため、契約ごとにどちらの立場かを確認しないと、当てはめる条文を取り違えます。

  • 双方未履行の双務契約については、破産者と相手方が開始の時にともにまだ履行を完了していないとき、破産管財人が解除するか、破産者の債務を履行して相手方の履行を請求するかを選べます(破産法第53条第1項)。相手方は相当の期間を定めて確答を催告でき、期間内に確答がないときは解除したものとみなされます(同条第2項)。
  • 解除された場合、相手方は損害賠償について破産債権者として権利を行使し、破産者の受けた反対給付が破産財団中に現存するときは返還を請求でき、現存しないときはその価額について財団債権者として権利を行使できます(同法第54条)。
  • 民法第642条は「注文者についての破産手続の開始による解除」の規定です。注文者が破産手続開始の決定を受けたときに、請負人又は破産管財人が解除できるという内容であり、請負人である一人親方が破産した場合に契約が自動的に終了するという規定ではありません。反対に、一人親方が外注先に対して注文者の立場にある契約については、この条文の検討が必要になり得ます。

したがって、「破産すれば工事契約はすべて自動的に終了する」とも、「途中の現場は必ず最後まで完成させられる」ともいえません。どちらになるかは、契約ごとの履行状況と、破産管財人・裁判所の判断によります。

契約書で確認しておく条項

  • 倒産解除条項(破産手続の申立てや開始を解除事由とする条項)の有無と内容。条項があるからといって常に有効とも、常に無効ともいえません。
  • 出来高の精算方法、工期、遅延損害金、違約金の定め。
  • 契約不適合責任の範囲と期間。
  • 前受金の額、使途の定め、返還条項。
  • 材料の所有関係、支給材の扱い、現場への搬入状況。
  • 下請への発注が禁止・制限されていないか。
  • 工事保険、賠償責任保険、公的保証の加入状況。

前受金は、名称だけで「預り金だから自由に使える運転資金ではない」とも、「もらったお金だから自由に使える」とも決められません。契約上どのような性質の金銭とされているか、実際にどう管理していたか(専用口座か、一般の運転資金と混在しているか)を確認する必要があります。

現場でまずやること

  • 現場の安全を確保する。足場・開口部・仮設電源など、放置すると危険が生じる状態のまま離れない。
  • 出来高の写真、施工記録、日報、指示のやり取りを日付が分かる形で保存する。
  • 元請、あるいは破産管財人が選任された後は破産管財人と、連絡経路を決める。
  • 資材・工具・支給材の所在と数量を確認し、一覧にする。
  • 引継ぎが必要な場合に備えて、施工手順と残工事の内容を書き出しておく。

無断で工事を放置することは避けてください。他方で、許可の有無、資金の手当て、契約の処理を確認しないまま「必ず完成させます」と約束することも避けてください。どちらも後の紛争につながります。

建設業許可の有無と、仕事への影響

まず、自分がどの類型かを確認する

建設業を営もうとする者は、営業所の所在地に応じて国土交通大臣又は都道府県知事の許可を受けなければなりませんが、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者はこの限りでないとされています(建設業法第3条第1項ただし書)。軽微な建設工事は、工事一件の請負代金の額が500万円(建築一式工事である場合は1,500万円)に満たない工事、又は建築一式工事のうち延べ面積が150平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事です(建設業法施行令第1条の2第1項)。ただし、次の点に注意が必要です。

  • 同一の建設業を営む者が工事の完成を二以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額によります。正当な理由に基づいて契約を分割したときは、この限りではありません(同条第2項)。
  • 注文者が材料を提供する場合には、その市場価格又は市場価格及び運送賃を請負代金の額に加えた額によります(同条第3項)。
  • 金額は「未満」で区切られており、建築一式工事とそれ以外で基準が異なります。

「500万円以下なら自由に受注できる」という単純化はできません。支給材の扱いや契約の分割によって、判断が変わり得るためです。

許可業者が破産手続開始の決定を受けた場合

建設業法第8条第1号は、「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」を、許可をしてはならない者として掲げています。これに該当するに至ったときは、2週間以内に書面で許可行政庁へ届け出なければならず(同法第11条第5項)、許可行政庁は許可を取り消さなければならないとされています(同法第29条第1項第2号)。

この届出は、許可を受けた建設業を廃止したときなどに30日以内に行う廃業等の届出(同法第12条)とは別のものです。また、滞納が始まった時点、弁護士に相談した時点、申立てをした時点では、これらの届出義務は生じません。起算点は、それぞれの条文が定める事由に該当するに至った時です。

復権と、許可の再取得

復権の代表的な原因は、免責許可の決定が確定したときです(破産法第255条第1項第1号)。「免責の申立てをしたとき」でも「免責許可の決定が出た日」でも「破産手続が終わったとき」でもありません。復権の効果は、人の資格に関する法令の定めるところによるとされています(同条第2項)。

誤解が多い二点を整理します。

  • 「取消し後は必ず5年間取得できない」わけではありません。建設業法第8条第2号が定める5年の期間は、同法第29条第1項第7号(不正の手段による許可・認可の取得)又は第8号(情状が特に重い場合等)に該当することにより許可を取り消された場合のものです。破産手続開始の決定を理由とする取消しは同項第2号によるものであり、第8条第2号の対象として掲げられていません。
  • 「復権すれば取り消された許可が自動的に戻る」わけでもありません。建設業法には、復権によって取り消された許可が当然に効力を回復するという規定は置かれていません。改めて第3条第1項の許可を受ける必要があり、その際は、経営業務の管理責任者等、営業所技術者等、誠実性、財産的基礎といった許可の要件を、その時点で満たしているかが別に判断されます。

取消し等の前に契約した工事を完成させられるか

建設業法第29条の3第1項は、許可が取り消された場合などに、処分を受けた者又はその一般承継人が、処分を受ける前に締結された請負契約に係る建設工事に限り施工することができると定め、処分後2週間以内に注文者へ通知しなければならないとしています。その者は、当該工事を完成する目的の範囲内で建設業者とみなされます(同条第4項)。他方、注文者は通知を受けた日又は処分を知った日から30日以内に限り契約を解除でき(同条第5項)、許可行政庁は公益上必要があると認めるときは施工の差止めを命ずることができます(同条第3項)。

この規定は、既存の工事を完成させるためのものであり、新規に受注して自由に事業を続けてよいとする規定ではありません。また、これは行政上の取扱いを定めたものであって、破産手続における契約の処理(破産法第53条・第54条)や、破産財団の管理(同法第78条第1項)とは別の話です。実際に施工できるかどうかは、両方を確認する必要があります。

建設業許可以外の登録・届出は、別の制度である

建設業許可が不要な場合でも、業種によっては別の登録・届出が必要です。重要なのは、それぞれの制度の欠格要件が建設業法と同じとは限らない点です。

  • 解体工事業。土木工事業、建築工事業又は解体工事業の建設業許可を受けた者を除き、都道府県知事の登録が必要です(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律第21条第1項)。同法第24条第1項が定める登録の拒否事由に、破産に関する号は掲げられていません。
  • 電気工事業。電気工事業の業務の適正化に関する法律第6条が定める登録の拒否事由にも、破産に関する号は掲げられていません。

いずれも罰金以上の刑や登録の取消しなど別の事由が定められています。「建設業許可がなくなるのだから他の登録も同じだろう」と類推せず、必要な登録・届出は業種ごとに公式情報で確認してください。

名義を借りて工事を請け負うこと、許可の要否を避けるために形式的に契約を分割すること、家族名義に付け替えて事業を続けることは、いずれも解決策になりません。契約の分割については、建設業法施行令第1条の2第2項が合計額によることを定めています。

破産と資格・職業の制限の関係は、破産による資格制限と復権の解説記事を読むもあわせてご覧ください。

元請への説明と、手続の選び方

元請が事情を知り得る経路

「絶対に知られない」とも「必ずすべての取引先に通知される」とも言えません。実際には次の経路があります。誰に何をいつ伝えるかは、資料を確認したうえで調整する事項です。

  • 債権者への受任通知。元請が貸付金や立替金の債権者でもある場合は通知の対象になります。売掛金の支払義務があるだけの元請は、当然には通知の対象ではありません。
  • 破産管財人からの連絡。売掛金や出来高が破産財団に属する場合、破産管財人が元請に対して請求・照会を行います。
  • 官報による公告。破産手続開始の決定は公告されます(破産法第32条第1項、第10条)。免責許可の決定についても、破産債権者への送達は公告をもって代えることができます(同法第252条第3項、第10条第3項)。
  • 契約上の申告事項。倒産解除条項や通知義務が定められている契約では、申告が必要になる場合があります。
  • 許可に関する手続。許可業者の届出や許可の取消しは行政上の手続として処理され、取消し等の前に締結した工事については注文者への通知が義務づけられています(建設業法第29条の3第1項)。

同時廃止と管財の振分け

裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に破産手続廃止の決定をしなければならないとされています(破産法第216条第1項)。ただし、費用を支弁するのに足りる金額の予納があった場合には、この規定は適用されません(同条第2項)。

「一人親方なら必ず同時廃止」「事業をしていたから必ず管財」「廃業すれば同時廃止」といった説明はできません。事業用の資産、売掛金、契約関係が残っていれば財産の調査が必要になり、扱いが変わり得ます。申立先の裁判所の運用にもよります。神戸地方裁判所の運用の詳細は公開資料として確認できるものではないため、本記事では具体的な金額や書式、期間は示しません。手続費用の考え方は手続費用が払えないときの選択肢の解説記事を読むをご覧ください。

任意整理・個人再生・自己破産をどう比べるか

「仕事を残したいなら必ず個人再生」という選び方はできません。継続的な収入、税・社会保険料を含めた支払い余力、工具や車の権利関係、清算価値、取引先との関係、許可への影響を、資料に基づいて比べることになります。

判断項目ごとに見た三つの手続(適否は個別事情により異なります)
判断項目 任意整理 個人再生 自己破産
継続的な収入の必要性 返済原資が必要 継続的・反復的な収入が前提になる 返済を前提としない
対象にする債権者の選択 交渉する相手を選べるのが一般的 原則としてすべての債権者が対象になる 原則としてすべての債権者が対象になる
工具・車などの事業用資産 手続の中で当然に処分されるわけではない 清算価値の算定に影響する 破産財団に属するか、自由財産かの判断が必要になる
税・社会保険料 交渉の対象にならない 減額の対象にならない 免責の対象にならない
保証人への影響 対象から外す交渉の余地がある 保証人に請求が及び得る 保証人に請求が及び得る
建設業許可との関係 許可の欠格要件に直接は関係しない 許可の欠格要件に直接は関係しない 開始決定を受けて復権を得ない間は欠格要件に当たる

手続の基本的な違いは自己破産と任意整理の違いの解説記事を読む、事業をたたむ場合の段取りは個人商店の廃業と借金整理の解説記事を読む、事業資金の借入れが返せない場合は個人事業主の融資返済に関する解説記事を読む、保証人がいる場合は連帯保証人として請求されたときの解説記事を読むをご覧ください。

手続の後の働き方

手続を経た後も、職人として働く道が閉ざされるわけではありません。雇用されて働く、受注の規模を見直すといった選択肢があります。労働者を使用しないで事業を行うことを常態とする方には労災保険の特別加入の制度があり(労働者災害補償保険法第33条第3号)、働き方を変えると加入する保険の種類も変わり得ますので、あわせて確認してください。

今後の資金繰りは、「入金予定」「必要経費」「税・社会保険料」「生活費」「手続費用」に分けて月ごとに書き出すところから確認します。売上と利益、入金と売上計上は別のものです。請求書は出したが入金は翌々月という取引が多い場合、帳簿上の利益が出ていても手元の資金が不足することがあります。

相談前に用意する資料と、動く前のチェックリスト

持参する資料

相談時に持参する資料
分類 具体的な資料 何を確認するためか
債務 債権者一覧、借入契約書、督促状、通帳と入出金履歴 債務の総額、相手方、保証人の有無、支払の履歴
事業の状況 確定申告書、決算書、帳簿 売上・経費の推移、資産の計上状況
債権・債務の一覧 売掛金一覧、未払金・買掛金一覧、外注先一覧 回収予定と支払予定、相手方ごとの残高
工事ごとの書類 請負契約書、注文書・請書、見積書、請求書 契約の内容、支払条件、解除条項の有無
出来高の資料 検収書、出来高調書、施工写真、日報、追加工事のやり取り どこまで施工したか、いつの工事か
前受金 入金記録、契約書の前受金条項、使途の記録 金銭の性質と管理の実態
工具・材料 工具の写真と一覧、型番、購入資料、在庫表 所有関係、業務上の必要性、数量
車両 自動車検査証、ローン契約書、残債証明、リース契約書、査定書 所有関係、担保の有無、時価
許可・登録 建設業許可通知書、登録証、更新の記録 許可・登録の有無と種類、届出の要否
税・社会保険 納税通知書、督促状、差押書類、納付相談の記録 滞納の有無と額、差押えの進行状況

すべてがそろうまで相談を待つ必要はありません。支払日、入金日、工期、契約上の通知期限が近いものから順に持参していただければ、そこから確認できます。

支払い・処分・契約変更の前に確認すること

  • 特定の材料業者・外注先・金融機関にだけ返済しようとしていないか。
  • 工具、車、機械を、売却・譲渡・名義変更しようとしていないか。
  • 元請に入金の時期や振込先の変更を頼もうとしていないか。
  • 売掛金をファクタリングや債権譲渡に回そうとしていないか。
  • 支払える見込みのない仕入れ、借入れ、前受金の受領をしようとしていないか。
  • 契約書に署名・押印する前に、解除条項と精算条項を確認したか。
  • 許可業者の場合、届出の期限(欠格要件に該当したときは2週間以内、廃業等は30日以内)を確認したか。
  • 現場の安全確保と、出来高・施工記録の保存ができているか。
  • 保証人がいる借入れについて、保証人に説明する時期を検討したか。
  • 税・社会保険料について、納付相談や猶予の申請を別途検討したか。

弁護士に相談するタイミング

相談で行うのは、契約書・売掛金一覧・工具や車の資料を確認したうえで、支払い、現場対応、仕事の継続について取り得る方針を整理することです。とくに次の場面では、動く前に確認しておく意味があります。

  • 元請から入金の予定を聞かれている、あるいは相殺や控除を通告された。
  • 材料業者や外注先から、支払いを迫られている。
  • 工事の途中で、続けるかどうかの判断を求められている。
  • 建設業許可の更新時期が近い、あるいは届出の要否が分からない。
  • 税や社会保険料の督促が来ている、差押えの予告がある。
  • 保証人が付いている借入れの返済が滞りそうである。

よくある質問

自己破産をすると、職人として働けなくなりますか。

職人として働くこと自体が禁止されるわけではなく、雇用されて働くこともできます。ただし、これまでどおりの形で個人事業を続けられるかは別の問題で、工具・車・売掛金・契約・許可のそれぞれについて確認が必要です。

使っている工具や電動工具は残せますか。

民事執行法第131条第6号は、主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者の、その業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)を差押禁止動産とし、破産法第34条第3項第2号によりこれは破産財団に属しない財産とされています。もっとも、電動工具であることだけで一律に決まるわけではなく、職種・用途・数量・代替性・所有関係から個別に判断されます。転売用の在庫やリース品は別の扱いです。

軽トラックは残せますか。ローンが残っている場合はどうなりますか。

仕事に使っているという事実だけで当然に残せるわけではなく、工具と同じ扱いにもなりません。完済済みか、所有権留保付きのローン車か、リース車か、他人名義かで出発点が変わります。自動車検査証、ローン契約書、残債証明、査定書を確認したうえで、時価と担保の有無から検討します。家族名義への変更や低額での譲渡は、財産を守る方法にはなりません。

破産手続が始まった後に振り込まれた工事代金は、自由に使ってよいですか。

振込日ではなく、その請求権の原因がいつ生じたかで判断されます。破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は破産財団に属します(破産法第34条第2項)。開始の前後にまたがる工事を、日割りや入金日だけで切り分けることはできません。請求書の日付を後にずらす対応もしないでください。

付き合いの長い材料屋や外注先にだけ、先に払ってもよいですか。

おすすめできません。既存の債務についてされた債務の消滅に関する行為は否認の対象になり得ますし(破産法第162条第1項)、特定の債権者に特別の利益を与える目的等でされた場合は免責不許可事由に掲げられています(同法第252条第1項第3号)。もっとも、その場合でも裁判所が事情を考慮して免責を許可することがあり(同条第2項)、「必ず免責されない」と断定することもできません。支払う前にご相談ください。

いま施工している現場は、最後まで仕上げられますか。

契約ごとに異なります。双方がまだ履行を完了していない契約では、破産管財人が解除するか履行を選ぶかを決めます(破産法第53条第1項)。許可業者が許可を取り消された場合は、取消し前に締結された契約に係る工事に限り施工でき、2週間以内に注文者への通知が必要です(建設業法第29条の3第1項)。無断で現場を放置することも、確認前に完成を約束することも避けてください。

元請に知られずに手続を進められますか。

「知られない」とお約束することはできません。元請が債権者でもある場合の受任通知、売掛金がある場合の破産管財人からの連絡、官報による公告、契約上の通知義務、許可に関する手続など、事情を知り得る経路が複数あります。誰にいつ何を伝えるかは資料を確認したうえで調整します。

建設業許可はどうなりますか。復権すれば元に戻りますか。

破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者は許可の欠格要件に当たり(建設業法第8条第1号)、該当するに至ったときは2週間以内の届出が必要で(同法第11条第5項)、許可行政庁は許可を取り消さなければならないとされています(同法第29条第1項第2号)。免責許可の決定が確定すれば復権しますが(破産法第255条第1項第1号)、取り消された許可が自動的に戻るという規定は建設業法に置かれていません。改めて許可を受ける必要があり、要件を満たすかが別に判断されます。なお、この取消しは、5年間の欠格期間を定める同法第8条第2号の対象として掲げられているものではありません。

まとめ

  • 職人として働くこと自体は禁止されません。「働くこと」と「従前の事業をそのまま続けること」は別の問題です。
  • 工具は、民事執行法第131条第6号の差押禁止動産に当たるかを、職種・用途・数量・代替性・所有関係から個別に確認します。商品・在庫・リース品は別の扱いです。
  • 車は、完済済みか、所有権留保付きか、リースか、他人名義かで出発点が変わり、工具と同じ扱いにはなりません。
  • 売掛金は、入金日ではなく請求権の原因がいつ生じたかで判断されます。元請の相殺や控除も根拠と時期を確認します。
  • 付き合いのある業者にだけ先に払うことは、否認と免責の両面から問題になり得ます。税・社会保険料は免責の対象になりません。
  • 工事契約は、自動的に全部終了するわけでも、必ず続けられるわけでもありません。請負人の立場か注文者の立場かを分けます。
  • 建設業許可と、職人として働くための資格は別です。復権しても取り消された許可は自動的には戻らず、再取得の手続が必要です。
  • まず、許可の有無を確認し、工具・車・売掛金・契約・未払金の資料を集め、支払い・処分・契約変更の前に相談してください。

工具や車の資料、工事ごとの契約書と請求書、売掛金・未払金の一覧をお持ちいただければ、残せる可能性のある財産、支払いを止めるべき範囲、現場の進め方、手続の見通しを整理してご説明できます。資料が一部しかそろっていない段階でも差し支えありません。

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本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の事案では、契約の内容、資料の有無、申立先の裁判所や許可行政庁の運用により結論が変わります。実際のご判断にあたっては、資料をご確認のうえ個別にご相談ください。

参考資料

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