税金や国民健康保険料(国保料)の滞納と借金の返済が重なると、「自己破産をすれば全部なくなる」「弁護士に依頼すれば差押えも止まる」と考えられがちですが、正確ではありません。税金、国保料、国民年金保険料は自己破産の免責の対象にならず、差押えなどの滞納処分への対応も、債務整理とは別に必要です。それでも、借金を整理して家計を立て直すことは、残る税金・保険料を納めていくうえで意味を持つことがあります。どの制度を使えるかは、通知書の内容や収入・財産の状況によって異なります。
差押えや公売の通知が届いている場合は、資料がそろうのを待たずに、通知書に記載された担当部署へ連絡し、弁護士にも早めにご相談ください。当事務所へのご相談は、相談予約フォームからお申し込みいただけます。
この記事の要点
- 税金、国保料、国民年金保険料は、自己破産の免責の対象になりません。減免や猶予は、各制度で別に検討します。
- 受任通知や破産の申立てだけで、税金等の督促や差押えが当然に止まるわけではありません。
- 分納の相談と、法律に基づく猶予の許可は別のものです。国税の申請による換価の猶予は納期限から6か月以内に申請しますが、期限を過ぎても相談はできます。
- 相談先は、税務署、市、区役所、年金事務所など、通知書を出した機関ごとに異なります。
- 借金の返済と滞納分の納付を、同じ収入から無理なく続けられるかを確かめることが大切です。
税金・国保料・年金保険料は自己破産でも免責されません
自己破産で免責許可決定が確定すると、借金などの破産債権は原則として責任を免れますが、「租税等の請求権」は免責の対象から除かれています(破産法第253条第1項第1号。破産法の免責・租税等に関する規定)。税金、国保料、国民年金保険料はこれに当たるため、「免責されない可能性がある」のではなく、免責の効力が及びません。もっとも、これは自己破産の免責では消えないという意味であり、各制度の減免や猶予、滞納処分の停止を利用できるかは別に検討します。
| 債務の種類 | 免責の扱い | 別に検討する対応 |
|---|---|---|
| 国税 (所得税・消費税など) |
免責されない | 税務署で換価の猶予や納税の猶予を相談します。差し押さえることができる財産がない場合などは、滞納処分の停止が検討されることもあります。 |
| 地方税 (住民税・固定資産税など) |
免責されない | 通知書を出した市町村や都道府県の窓口で、徴収猶予、換価の猶予、減免を相談します。 |
| 国民健康保険料・ 国民健康保険税 |
免責されない | お住まいの市区町村(神戸市では区役所など)の国保の窓口で、減免、徴収猶予、換価の猶予、分納を相談します。 |
| 国民年金保険料 | 免責されない | 市区町村の国民年金の窓口や年金事務所で、免除・納付猶予を相談します。さかのぼって申請できる期間には限りがあります。 |
| 一般の借金 (カードローンなど) |
免責許可決定が確定すれば、原則として責任を免れます(免責を許可するかは裁判所が判断します)。 | 任意整理、個人再生、自己破産のどれが適しているかを検討します。 |
税金と公的保険料が免責されない理由
破産法は、国税徴収法又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権を「租税等の請求権」としています(破産法第97条第4号)。国保料は税金ではありませんが、督促を受けても納付しないときは地方税の滞納処分の例により処分でき(国民健康保険法第79条の2、地方自治法第231条の3第3項)、地方税の滞納処分は国税徴収法の例によります(地方税法第331条第6項など)。国民年金保険料も、督促を受けても納付しないときは、国税滞納処分の例によって処分できます(国民年金法第96条第4項)。このように法律で強制的な徴収の方法が定められているため、いずれも「租税等の請求権」に含まれ、単に「税金に準じて扱われることがある」というものではありません。
神戸市は国民健康保険「料」として徴収していますが、「税」として課税する自治体もあり、いずれも自己破産の免責で消えない点は共通です。他方、公的機関への支払のすべてが免責されないわけではありません。法律で滞納処分ができる債権に当たるかどうかは、通知書を出した機関や弁護士に確認してください。
なお、破産手続開始前の原因に基づく税金等のうち、開始の時点で納期限が来ていないもの又は納期限から1年を経過していないものは、「財団債権」となり得ます(破産法第148条第1項第3号)。財団債権は、免責の対象となる破産債権とは別に扱われます。開始後に新たに課される税金・保険料も、それまでの借金の免責によってなくなるものではありません。
税金が残っても債務整理を検討する意味
税金等の滞納があること自体で、自己破産や個人再生ができなくなるわけではありません。借金の負担を軽くすれば、残る税金・保険料を納める余力を生み出せる場合があります。ただし、手続によって税金等の扱いが異なります。
- 自己破産:税金等は免責されないため、手続の後も納付や猶予などの相談が続きます。
- 個人再生:税金等は再生計画による通常の減額の対象ではなく、再生手続によらずに随時支払います(一般優先債権。民事再生法第122条)。発生時期などによっては、共益債権となるものもあります。
- 任意整理:貸金業者などとの合意による整理であり、税金や国保料が減額されるものではありません。
どの手続を選ぶ場合も、その年度の税金・保険料と滞納分の納付を、個人再生や任意整理では整理後の返済とあわせて続けられるかの確認が欠かせません。
督促・差押えの通知が届いたら最初に確認すること
督促状、催告書、差押予告などが届いたら、まず次の点を確認します。
- 通知書を出した機関(税務署、市、県、区役所の国保の窓口、年金事務所など)
- 対象となる税金・保険料の種類、年度・期別、本来の納期限
- 督促の段階か、差押予告、差押え、公売などの段階か
そのうえで、通知書に記載された担当部署に連絡して猶予や減免を相談しながら、借金の整理を並行して検討します。
受任通知だけで税金や国保料の差押えは止まらない
弁護士が債務整理を引き受けると、貸金業者などの債権者に受任通知を送り、以後の連絡や交渉は弁護士を通じて行います。貸金業者による取立てには法律上の規制がありますが、税金や国保料などの徴収はそれとは別の仕組みで、法律の要件を満たせば、行政機関が裁判を経ずに差押えなどの滞納処分をすることができます。受任通知や弁護士への相談だけで、行政機関による督促や差押えが当然に止まるわけではありません。
国税では、原則として、督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないことが、差押えの要件とされています(国税徴収法第47条第1項第1号)。ただし、実際の差押えの時期は事案によって異なり、10日を過ぎれば直ちに差し押さえられるとも、差押予告が届くまでは差し押さえられないともいえません。市税、国保料、国民年金保険料の手順や日数も、国税と同じとは限りません。
破産の申立て・開始決定・免責と差押えを分ける
「破産の手続中なら差押えはされない」という理解も、「破産しても何も変わらない」という理解も正確ではありません。手続の段階ごとに分けて確認します。
- 申立ての段階:申立てをしただけで、税金等の滞納処分が当然に止まるわけではありません。
- 破産手続開始の決定後:破産財団に属する財産に対しては、新たな滞納処分をすることができません(破産法第43条第1項)。一方、開始決定の前に既にされていた滞納処分は、開始決定後も続行できます(同条第2項)。
- 免責許可決定の確定後:税金等は免責されないため、残った滞納分について滞納処分が行われることがあります。
どの財産が破産財団に属し、この禁止の対象となるかは、手続の進み方や財産の内容によって異なるため、申立てを依頼する弁護士に確認してください。破産法第43条第1項の禁止は、破産財団に属する財産についての定めです。破産手続開始後に得た給与など、破産財団に属しない財産に対する滞納処分の扱いは、税金等が財団債権か破産債権か、対象となる財産が何かによって、別に検討が必要です。
また、給与や年金には差押えが禁止・制限される範囲がありますが、その範囲は根拠となる法律や給付の種類によって異なり、口座に振り込まれた後の預金は、給与や年金を受け取る権利とは別に扱われることがあります。差押えの通知書、口座の入出金履歴、受け取っている給付の種類を確認して相談してください。
国保を滞納し、医療費の立替えも難しいとき
国保料を滞納しても、それだけで直ちに受診できなくなるわけではありません。ただし、神戸市の国民健康保険では、特別の理由がないのに1年以上滞納すると、医療機関の窓口でいったん医療費の全額を負担する取扱い(特別療養)になることがあります(18歳以下の子どもなどには例外があります)。後から支給を受けられる部分も、保険給付の一時差止めや滞納保険料への充当があり得るため、現金で戻ってくるとは限りません(国保料の納付が遅れた場合の取扱い(神戸市))。立替えが難しいときは、受診をあきらめずに、早めに区役所などの国保の窓口や医療機関に相談してください。
納税の猶予・換価の猶予と分納相談は違います
「分割で払いたい」という相談には、窓口での分納の相談と、法律に基づく猶予の許可を受ける方法があります。分納の相談をしただけでは、差押えの制限や延滞税の免除といった猶予の効果は当然には生じません。国税の猶予には、換価の猶予と納税の猶予があります。
| 制度 | 主な要件と申請期限 | 許可後の効果 |
|---|---|---|
| 換価の猶予 (申請によるもの) |
一時に納付すると事業の継続や生活の維持が困難になるおそれがあり、納税について誠実な意思があること。原則として、ほかに国税の滞納がなく、担保を提供すること。納期限から6か月以内に申請します。 | 差し押さえた財産などの換価(売却)が猶予され、猶予期間内に分割して納付します。 |
| 換価の猶予 (職権によるもの) |
同じような事情がある場合に、税務署長が職権で検討します。申請期限を過ぎた場合や、ほかの国税の滞納がある場合でも、検討されることがあります。 | 差し押さえた財産などの換価(売却)が猶予され、猶予期間内に分割して納付します。 |
| 納税の猶予 | 災害・盗難、病気・負傷、事業の休廃業、事業の著しい損失などにより、一時に納付できないこと。類型によって申請期限が定められています。 | 猶予期間中は、その国税について新たな督促や差押えなどの滞納処分が行われません。 |
猶予は、本来の税金(本税)を免除するものではありません。許可を受けたときは、許可通知で、対象の税目、猶予期間、分割して納める金額を確認してください。
国税の換価の猶予 納期限から6か月以内の申請
申請による換価の猶予(国税徴収法第151条の2)の「ほかに国税の滞納がないこと」という要件には、ほかの国税で納税の猶予や換価の猶予を申請中・適用中である場合などの例外があり、別の滞納が1件でもあれば認められないというわけではありません。猶予期間は原則として1年以内で、やむを得ない理由があるときは延長を含めて合計2年以内となる場合がありますが、自動的に2年間の分割払いになったり、希望どおりの金額で分納できたりするものではありません。
担保は、猶予を受ける金額(未確定の延滞税を含みます)が100万円以下である場合、猶予期間が3か月以内である場合、担保を提供できない特別の事情がある場合などには不要です。申請書に添付する書類は、猶予を受けようとする金額(未確定の延滞税を除きます)が100万円以下であれば「財産収支状況書」、100万円を超えるときは「財産目録」「収支の明細書」などで、担保の要否を判断する金額とは計算の範囲が異なります。提出時期や提出先は、国税庁の換価の猶予の申請手続で確認できます。
換価の猶予は、差し押さえた財産の売却(換価)の猶予が中心です。必要に応じて差押えの猶予や解除が検討されますが、すべての財産の差押えが禁止されたり、自動的に解除されたりするものではありません。許可後も督促状が届くことがありますが、それだけで不許可になったと判断せず、許可通知を確認してください。また、破産手続の開始などにより猶予期間内に完納する見込みがなくなった場合には、猶予が認められなかったり、取り消されたりすることがあります。
税務署長の職権による換価の猶予(国税徴収法第151条)は、求めたとおりに認められるとは限りませんが、申請期限を過ぎたことだけを理由に相談をあきらめる必要はありません(国税庁の猶予制度FAQ)。
病気・災害・休廃業等による納税の猶予
納税の猶予(国税通則法第46条)の対象となる病気・負傷には、本人だけでなく生計を一にする親族のものも含まれます。病気や休廃業などの事由による猶予の期間は、原則として1年以内で、延長を含めて最長2年以内です。申請による換価の猶予の「納期限から6か月以内」「ほかの国税の滞納がないこと」という要件は、そのまま当てはまりません。ただし、災害による損失に関する猶予や、法定申告期限などから1年以上たってから税額が確定した場合の猶予(原則として、その国税の納期限までに申請します)のように、類型ごとに申請期限があります。いつでも申請できるとは考えないでください。
納税の猶予を受けている間は、その国税について新たな督促や差押えなどの滞納処分は行われませんが(国税通則法第48条第1項)、既にされている差押えを解除するかどうかは別に判断されます。換価の猶予・納税の猶予が認められると、延滞税の全部又は一部が免除されることがあり、その範囲は猶予の種類や事由によって異なります(同法第63条)。申請書類は、国税庁の猶予の申請の手引で確認できます。
猶予でも納付が難しい場合
猶予期間内の分割納付も難しい場合は、次の制度を検討する余地があります。
- 滞納処分の停止:差し押さえることができる財産がない場合や、滞納処分によって生活を著しく窮迫させるおそれがある場合などに、税務署長の判断で滞納処分の執行が停止されることがあります(国税徴収法第153条)。破産や無収入だけで自動的に適用されるものではなく、納付せずに放置すれば3年で納付義務が消えるという制度でもありません。
- 減免:市税や国保料には、それぞれの要件に応じた減免の制度があり、要件に当てはまるかが審査されます。
払える見込みのない金額で分割納付を約束すると、計画が続かず、かえって状況が悪化するおそれがあります。収入と生活費の資料を示し、実際に払える金額を前提に相談してください。
神戸市の市税・国保と国民年金の相談先
同じ神戸市内の手続でも、市税、国保料、国民年金保険料は、制度も相談窓口も別です。通知書の発行元を確認し、滞納処分の通知が届いている場合は、その通知書に記載された部署へ直接連絡してください。神戸市以外にお住まいの方は、お住まいの自治体の案内を確認してください。
| 支払先の区分 | 相談窓口 | 持参・確認事項 |
|---|---|---|
| 国税 | 所轄の税務署の徴収担当。滞納処分の通知が届いている場合は、通知書に記載された部署 | 通知書(納期限や督促の日付が分かるもの)、収入・支出と財産の状況が分かる資料 |
| 神戸市の市税 | 通知書に記載された担当部署。猶予の相談先は、市の案内で確認します | 通知書、収入・支出の資料。猶予の要件と申請書類は、市の手引きで確認します。 |
| 神戸市の国保料 | 住所地を担当する区役所又は北須磨支所の国民健康保険の窓口 | 督促状や催告書などの通知書、収入の減少や失業・病気などの事情が分かる資料 |
| 国民年金保険料 | 住所地の区役所の国民年金の窓口、又は年金事務所 | 通知書、本人・配偶者の所得の状況(申請免除では世帯主の所得も審査されます) |
県税(自動車税など)は市税とは窓口が異なるため、通知書に記載された窓口へ連絡します。国民年金保険料の納付は年金事務所でも相談でき、例えば須磨年金事務所の案内では、相談先として国民年金課が示されています。年金の受給に関する相談が中心の「街角の年金相談センター北須磨」とは別の窓口です。
神戸市税の徴収猶予・換価の猶予
神戸市税にも換価の猶予と徴収猶予があり、要件や申請先、必要書類は市の制度に従います。国税の制度をそのまま当てはめず、神戸市の市税の猶予・減免制度で確認してください。
- 申請による換価の猶予(地方税法第15条の6):一時に納付することによる生活や事業への支障、納税についての誠実な意思、原則としてほかに市税の滞納がないこと(ほかの市税で猶予を申請中・適用中の場合などは除かれます)、納期限から6か月以内の申請、原則として担保の提供などが審査されます。
- 徴収猶予(地方税法第15条):災害、病気、事業の休廃業、事業の著しい損失などにより一時に納付できない場合が対象です。法定納期限から1年以上たってから税額が確定した場合に、その納期限までの申請を求める類型もあります。
いずれも猶予期間は原則1年以内で、理由によっては延長を含めて合計2年以内となる場合があります。許可を受けても、本来の納期限が変わったり、納税証明書の未納の記載が消えたりするわけではありません。様式や添付書類は、神戸市の猶予の申請の手引きで確認できます。
神戸市の国保料は減免と猶予を別に検討
神戸市の国保料には、保険料そのものを減らす「減免」と、納付を待ってもらう「猶予」が、別の制度として設けられています。
- 減免:所得の急減などの条件に当てはまるかが審査されます。世帯主が年度ごとに申請し、市の案内では、原則として、減免を受けようとする保険料のうち最初の納期の納期限の7日前までの申請が求められています。期限を過ぎた場合は、対象となる期間や例外の有無を早めに窓口へ確認してください。破産や失業によって過去の滞納分の全額が免除される制度ではありません。なお、申請しなくても適用される法定の減額もあります(神戸市の国保料の減免・減額)。
- 徴収猶予:災害、病気、事業の休廃業などにより一時に納付できない場合に、原則6か月以内、最長1年の猶予が認められることがあります。市税の徴収猶予(原則1年以内)とは期間が異なります。
- 換価の猶予:一時に納付すると生活や事業の継続に支障が生じる場合に、原則1年以内、最長2年の猶予が認められることがあります。納付の意思や、納期限から6か月以内の申請などが審査され、市の案内には、猶予を受ける保険料以外に滞納がないことも要件として挙げられています。ほかの滞納がある場合の扱いは、窓口で確認してください。
猶予には原則として担保が必要ですが、猶予を受ける金額が100万円以下の場合、猶予期間が3か月以内の場合、担保を取ることができない特別の事情がある場合は不要とされています(神戸市の国民健康保険料の猶予制度)。窓口の連絡先は、区役所・北須磨支所の国保窓口で確認できます。
分納の相談では、生活や収入の状況などを確認したうえで、納付の計画を話し合います。分割で納めていても、本来の納期に未納があれば督促状や催告書が届くことがあります。分納の相談、一部の入金、窓口での口頭の合意だけで、猶予や延滞金の免除、差押えの禁止が当然に認められるわけではありません。合意した納付計画の内容と、猶予の許可の有無・範囲を確認してください。
国民年金の免除・納付猶予は所得要件も違う
国民年金保険料の「申請免除」と「納付猶予」は、所得を審査される人の範囲が異なります(国民年金保険料の免除・納付猶予(日本年金機構))。
- 申請免除(全額又は一部):本人、配偶者、世帯主の所得などが審査されます。一部免除では、免除されない残りの保険料を納める必要があります。
- 納付猶予:原則として20歳以上50歳未満の方が対象で、本人と配偶者の所得などが審査されます。世帯主の所得は審査の対象になりません。
学生納付特例、法定免除、産前産後期間の免除などは別の制度であり、この所得の審査がそのまま当てはまるわけではありません。また、納付猶予の期間は、免除の期間と異なり、後から保険料を納める(追納する)までは老齢基礎年金の額に反映されません。
免除や納付猶予は、原則として保険料の納付期限から2年を経過していない期間について、申請時点からおおむね2年1か月前の月分までさかのぼって申請できます。月ごとの申請期限(休日の扱いを含みます)は、免除等を申請できる期間(日本年金機構)の一覧で確認できます。ただし、さかのぼれる期間には限りがあり、申請が遅れている間に病気やけがで障害が残ったり、亡くなったりした場合などには、障害基礎年金や遺族基礎年金を受けられないことがあるため、早めに申請してください。
借金の返済と滞納分の納付を両立できるか
方針を考える際は、毎月の収入から、生活費、その年度の税金・保険料(当期分)、滞納分の納付、借金の返済を区別し、それぞれにいくら充てれば無理なく続けられるかを確認します。手続の一般的な違いは、任意整理・個人再生・自己破産の違いで解説しています。個人事業主の方は、消費税などの事業の税金や事業の収支も含めて確認します。事業を続けながら手続を進める場合は、個人事業主の個人再生と事業継続も参考にしてください。
税金の納付と通常の偏頗弁済を混同しない
破産手続の開始前に一部の債権者にだけ返済すると、偏頗行為として破産管財人に否認されることがあります。しかし、租税等の請求権について、徴収の権限を持つ機関に対してした納付などには、この偏頗行為否認の規定は適用されません(破産法第163条第3項)。税金や保険料の納付を、特定の貸主への返済と同じように考える必要はありません。
他方、破産手続開始の決定があると、破産財団に属する財産を管理・処分する権利は、裁判所が選任した破産管財人に専属します(破産法第78条第1項)。開始決定の後は、破産財団に属する財産を自分の判断で税金の納付などに使わず、破産管財人や代理人の弁護士に相談してください。
また、手続の前後を問わず、生活費や医療費まで使い切って一括で納める、高い金利で借り入れて納めるといった方法は避けてください。財産を他人の名義に移すなどして、徴収や破産の手続を免れようとすることは、してはいけません。こうした注意は、法律で定められた支払の順番を示すものではなく、生活を維持しながら手続を進めるための考え方です。手元の資金の使い方は、債務整理の方針とあわせて決めることが大切です。
家計の設例と相談前にそろえる資料
| 項目 | 月額 | 考え方 |
|---|---|---|
| 手取り月収 | 28万円 | 給与から天引きされる税金・保険料を差し引いた後の金額 |
| 必要な生活費 | -22万円 | 住居費、食費、光熱費、医療費など |
| 天引き以外の当期の 税金・保険料等(月割り) |
-3万円 | 自分で納めるその年度の住民税、国保料などの月割額 |
| 臨時支出への備え | -1万円 | 急な出費に備えて残しておく金額 |
| 滞納分と借金の返済の 双方に充てられる額 |
2万円 | 滞納分の納付と借金の返済を合わせて、この範囲に収めます |
天引きされている税金・保険料は、手取りの計算で既に差し引かれているため、重ねて差し引きません。この2万円は、「滞納分の納付に2万円」と「個人再生などの返済に2万円」の両方には使えず、合計で2万円の範囲に収める必要があります。臨時支出への備えの1万円は、法律や行政が定めた控除額ではなく、この設例での仮定です。猶予で認められる納付額や手続の選択は、この計算だけでは決まりません。
相談の前に、次の資料をそろえておくと、状況を正確に確認できます。期限が迫っている場合は、資料がそろうのを待たずに連絡してください。
- 督促状、催告書、差押えに関する書類などの通知書:誰からの請求か、年度・期別、本税や保険料と延滞税・延滞金の内訳、納期限、手続の段階を確認するため
- 給与明細、預金通帳、事業の収支が分かる資料:実際の収入と支出を確認するため
- 家賃、医療費、扶養している家族の状況が分かる資料:生活の維持に必要な費用を確認するため
- 失業、病気、災害などの事情を示す資料:減免や猶予の事由に当たるかを確認するため。必要な証明書は制度ごとに異なり、離職票だけで足りるとは限りません
- 借入れの一覧(借入先、残高、毎月の返済額):債務整理後の返済の負担を確認するため
- 窓口での相談の記録、提出した書類の控え、許可通知、領収書:相談や納付の経過を確認するため。受け取った書類は保管しておきます
よくある質問
税金だけが払えない場合も、自己破産をすればよいですか。
税金や保険料の滞納があること自体で自己破産ができなくなるわけではありませんが、税金や保険料は免責の対象にならないため、ほかに借金がない場合は、自己破産によって支払義務がなくなることはありません。税務署や市区町村などの窓口で、猶予、減免、滞納処分の停止などを利用できるかを相談することが中心になります。民間からの借金もある場合は、債務整理を併せて検討します。
分割で納めていても、督促や差押えを受けることはありますか。
あり得ます。分割で納めていても、本来の納期に未納があれば督促状や催告書が届くことがあります。分納の相談、一部の納付、窓口での口頭の合意だけでは、法律上の猶予の効果は当然には生じません。合意した納付計画の内容と、猶予の許可の有無・対象・範囲を確認してください。
納期限から6か月を過ぎたら、猶予の相談はできませんか。
相談はできます。国税の申請による換価の猶予は納期限から6か月以内の申請が必要ですが、期限を過ぎても、事情によっては税務署長の職権による換価の猶予が検討されることがあり、病気や事業の休廃業などによる納税の猶予に当たる場合もあります(類型によっては申請期限があります)。求めたとおりに認められるとは限りませんが、早めに税務署へ連絡してください。市税や国保料についても、期限を過ぎた場合の扱いを、通知書に記載された窓口で確認してください。
税金・保険料と借金が重なった場合のご相談
ご相談では、借入れの状況に加えて、税金・保険料の滞納の内訳、収入と生活費、資産の状況を伺い、考えられる手続、手続の後に残る税金・保険料の納付の見通し、手続に伴う不利益を整理してご説明します。税務署や市・区役所などの窓口への相談は、弁護士への依頼の前提条件ではなく、並行して進めることができます。
相談の予約と費用の確認
通知書や督促状がお手元にある場合は、相談の際にお持ちください。
予約フォームの送信は相談のお申込みです。送信しただけで法律相談が行われたことにはならず、事件の依頼(受任)が成立するものでもありません。債務整理の受任に当たっては、原則として受任する弁護士との面談が必要です。受任の可否や範囲、弁護士費用は、相談の際にご説明します。
事務所案内
弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所は、弁護士法人ひょうご(兵庫県弁護士会所属)が神戸市須磨区に設けている事務所です。借金問題(債務整理)などのご相談を取り扱っています。
参考資料と情報基準日
本記事の法令と制度の説明は、令和8年(2026年)10月16日時点で確認した内容に基づいています(情報基準日)。
法令(e-Gov法令検索)
- 破産法(平成16年法律第75号)
- 民事再生法(平成11年法律第225号)
- 国税徴収法(昭和34年法律第147号)
- 国税通則法(昭和37年法律第66号)
- 地方税法(昭和25年法律第226号)
- 国民健康保険法(昭和33年法律第192号)
- 地方自治法(昭和22年法律第67号)
- 国民年金法(昭和34年法律第141号)
国税庁
神戸市
- 市税の猶予・減免制度
- 猶予の申請の手引き(神戸市市税事務所・PDF)
- 国民健康保険料の納付の猶予制度
- 保険料の減免・減額(申請が必要なもの)
- 保険料の納付が遅れたとき
- 各区役所・北須磨支所のお問い合わせ先(国民健康保険)
- よくある質問:国民健康保険料の納付相談
- よくある質問:国民健康保険料の督促状(催告書)
日本年金機構
本記事は一般的な情報の提供を目的とするもので、個別の事案についての法的な助言ではありません。情報基準日の後に、制度の内容、申請期限、必要書類、窓口が変更されることがあるため、手続の前に各機関の最新の案内を確認してください。具体的な事案での判断は、事情や資料によって異なります。

24時間365日受付