「公務員だと自己破産や個人再生はできないのではないか」「債務整理をすると職場に知られてしまうのではないか」——神戸市の職員や公立学校の教員として働く方から、こうしたご不安をうかがうことがあります。給与や賞与から共済組合貸付の返済が引き去られている場合や、督促・支払督促が届いている場合は、とくに気がかりだと思います。
結論から申し上げると、公務員の方でも債務整理を検討することはできます。もっとも、職場への影響や、どの手続が適しているかは、借入先・保証人・住宅ローン・退職金見込額・共済組合貸付や給与差押えの有無など、個別事情により結論が変わります。この記事では、神戸市職員・教員の方を念頭に、職場に知られる可能性がある場面、共済組合貸付や給与天引きの扱い、任意整理・個人再生・自己破産の選び方、相談前にそろえておきたい資料を整理します。
なお、以下は一般的な整理であり、個別の見通しは資料を確認したうえで判断する必要があります。共済組合貸付や給与差押えが関係する場合は、差押えに至る前の早い段階でご相談いただくと、選択肢を整理しやすくなります。
共済組合貸付や給与天引きがある場合は、借入先と返済方法を確認したうえで手続を検討する必要があります。まずは状況を整理するところから始められます。
Contents
公務員でも債務整理はできる?まず押さえたい結論
公務員の方が債務整理を検討する場合、はじめに押さえておきたい点は次のとおりです。いずれも一般的な整理であり、個別事情により結論は異なります。
要点
- 借金や債務整理そのものは、地方公務員法第16条の欠格事由には含まれていません。債務整理を理由に当然に懲戒や免職となるものではありません。
- ただし、給与差押えや共済組合貸付の給与引去りなど、勤務先が関与する場面では、結果として職場に知られる可能性があります。
- 任意整理・個人再生・自己破産のどれが適するかは、収入・財産・住宅ローン・保証人・退職金見込額などにより変わります。
- 共済組合貸付や給与天引きは、制度主体ごとに扱いが異なるため、早めに借入先と返済方法を確認する必要があります。
「当然通知される手続」と「知られる可能性がある場面」は別
「債務整理をすると職場に通知される」と考える方は少なくありませんが、手続そのものが当然に勤務先へ通知されるわけではありません。一方で、次のような場面では勤務先が関与したり、結果的に知られたりする可能性があります。どの経路に該当するかは事案により異なります。
| 場面 | 勤務先の関与 | 知られる可能性 |
|---|---|---|
| 裁判所を使わない任意整理のみ | 原則として関与しない | 比較的低い(ただし下記の事情があれば別) |
| 給与差押え(強制執行)を受けた | 第三債務者として関与する | 高くなりやすい |
| 共済組合貸付などを給与・賞与から引き去りで返済している | 給与事務・所属所を経由する場合がある | 返済停止や手続の内容により生じ得る |
| 勤務先や職員団体が保証人・貸付元になっている | 関与し得る | 生じ得る |
| 自己破産・個人再生の官報公告 | 関与しない | 閲覧されれば生じ得る(一般には低い) |
任意整理・個人再生・自己破産の違い(概要)
債務整理には主に次の三つの手続があります。ここでは公務員の方が気にされやすい観点にしぼって概要を示します。詳しい要件・費用は個別に確認が必要で、どれを選ぶべきかは事案により異なります。
| 観点 | 任意整理 | 個人再生 | 自己破産 |
|---|---|---|---|
| 裁判所の利用 | 利用しない(債権者との交渉) | 利用する | 利用する |
| 対象とする債権者 | 原則として選べる | 原則としてすべての債権者 | 原則としてすべての債権者 |
| 住宅を残す余地 | 住宅ローン以外を対象にすれば残せる場合がある | 住宅ローン特則を使える場合がある | 原則として維持は難しい |
| 退職金見込額の影響 | 直接の評価対象にはなりにくい | 清算価値として影響し得る | 財産評価に影響し得る |
| 主な留意点 | 減額幅は交渉次第 | 継続的な収入・清算価値・可処分所得の確認が必要 | 免責不許可事由・非免責債権・資格制限の確認が必要 |
共済組合貸付や給与天引きがある場合、どの手続でも「その借入をどう扱うか」が論点になります。受任通知後の支払停止の可否、任意整理の対象に含めるか、個人再生・自己破産で債権者一覧にどう記載するか、特定の債権者だけへの返済(偏頗弁済)にあたらないかなどは、資料を確認したうえで判断する必要があります。
公務員の債務整理と職場への影響
債務整理そのものは欠格事由ではない
地方公務員法第16条は、公務員として任用されない事由(欠格条項)を定めていますが、そこに「破産したこと」や「債務整理をしたこと」は含まれていません。したがって、債務整理をしたこと自体を理由に、当然に懲戒や免職となるものではありません。実際に、在職しながら手続を進める方もいます。
自己破産の場合、破産手続開始決定から復権までの間は、一定の資格が制限されます。もっとも、免責許可の決定が確定すれば当然に復権します(破産法第255条)。一般の地方公務員としての身分そのものが、破産を理由に制限されるわけではありません。
例外的に影響し得る職種・立場
ごく一部の職や資格では、破産が地位・資格に影響する場合があります。次のような区別があります。該当するかは個別に確認が必要です。
- 人事官、公正取引委員会の委員、公安審査委員会の委員、教育委員会の委員など、法令上、破産が罷免・欠格の事由とされている特別職があります。ここでいう「教育委員会の委員」は、学校で勤務する一般の教員とは別の立場です。
- 弁護士・税理士・公認会計士・警備員・生命保険募集人など、破産手続中(復権前)に資格が制限される職業があります。これらの資格を用いる立場かどうかで影響が変わります。
- 警察官、自衛官、現金・会計を扱う部署など、職務内容によっては、債務整理とは別に、信用・服務・配置の観点が問題となる可能性があります。一般化はできません。
借金と懲戒は直結しない(服務規律違反は別問題)
債務整理を「懲戒」と結びつけて心配される方がいますが、懲戒処分の対象となり得るのは、借金それ自体ではなく、職務上の不正、横領、詐欺、虚偽申告、無断兼業、職務専念義務違反、服務規律違反といった別の事情です。借金や債務整理と、これらの服務上の問題は切り分けて考える必要があります。
職務上の現金・会計を扱う立場の方は、債務整理とは別に、内部規程・服務規律の観点から注意が必要な場合があります。ご自身の職務内容にかかわる懸念がある場合は、相談の際にあわせてお伝えください。
共済組合貸付・給与天引き・給与差押えの違い
「給与から引かれているお金」と一口にいっても、制度主体や法的な性質は異なります。混同すると手続の見通しを誤りやすいため、まず区別を整理します。
| 種類 | 主体・性質 | 返済・控除の方法 | 勤務先の関与 |
|---|---|---|---|
| 共済組合貸付 | 各共済組合による貸付 | 給与・賞与からの引去りが一般的 | 給与事務・所属所を経由する場合がある |
| 職員信用組合などのローン | 信用組合など別法人による貸付 | 口座引落し等(契約による) | 契約内容による |
| 給与天引き(給与控除) | 労使協定等に基づく控除 | あらかじめ給与から控除 | 給与事務が関与 |
| 給与差押え | 裁判手続に基づく強制執行 | 差押命令により勤務先が支払う | 第三債務者として関与する |
共済組合貸付・信用組合ローン(神戸市職員の場合)
神戸市職員共済組合の貸付事業は、平成19年10月から新規貸付を休止しています。現在、新規の借入は神戸市職員信用組合(共済組合とは別の組織)が窓口になっています。既存の共済組合貸付が残っている場合、返済は給与からの引去りで行われ、退職時に債務が残っているときは退職手当から一括で引き去られる取扱いとされています。共済組合貸付・共助組合・信用組合はそれぞれ別の主体ですので、ご自身の借入先がどこかを確認する必要があります。
公立学校共済組合の貸付(教員の場合)
公立学校の教員の方の場合、公立学校共済組合兵庫支部の貸付制度があります。申込は所属所長(勤務先)を経由して行う運用とされており、人事異動の際には所属所事務担当者への申し出や「他組合・他支部への異動」の報告、原則として即時償還(未償還元金の全額償還)が求められる場合があります。地方職員共済組合兵庫県支部へ異動する場合は、貸付金償還金の徴収嘱託が行われている取扱いとされています。制度の詳細や利率は変動するため、最新の内容は公式サイトで確認する必要があります。
給与天引きと給与差押えは別物
給与天引き(給与控除)は、労使協定などに基づいてあらかじめ給与から差し引くもので、給与差押え(強制執行)とは法的な性質が異なります。給与差押えの場合、手取り給与の4分の3(一定額を超える部分は取扱いが異なります)は差し押さえてはならないとされており、勤務先が第三債務者として関与します(民事執行法第152条、同施行令第2条)。共済組合貸付の給与引去りを止められるか、任意整理の対象から外せるか、といった点は制度主体との関係で結論が変わるため、断定はできず、確認が必要です。
まず確認したいこと:ご自身の「借入先(貸付元)」と「給与から引かれている項目の引去り元」を確認しておくと、手続の見通しを立てやすくなります。給与明細・賞与明細・契約書・残高通知が手がかりになります。
手続の選び方(任意整理・個人再生・自己破産)
どの手続が適するかは、収入の安定性、財産、住宅ローン、保証人、退職金見込額、共済組合貸付や給与差押えの有無などにより変わります。以下は一般的な検討場面であり、個別事情により結論は異なります。
任意整理が向きやすい場面
返済の意思と一定の返済原資があり、対象とする債権者を選びながら負担を調整したい場合に検討されます。裁判所を使わないため、手続そのものによって勤務先へ当然通知されるものではありません。ただし、共済組合貸付や給与差押えがある場合は、その扱いを別途検討する必要があります。減額の幅は交渉により変わります。
個人再生が検討される場面
継続的で安定した収入があり、住宅ローンを抱えつつ自宅を残したい場合などに検討されます。個人再生では、保有財産の清算価値を下回らない金額を返済する必要があり(清算価値保障原則)、退職金見込額もこの清算価値に影響し得ます。退職の予定がない場合、退職金見込額の一定割合(多くの裁判所では8分の1)が清算価値に算入される運用がありますが、割合や下限の扱いは裁判所の運用・時期により異なります。給与所得者等再生では、可処分所得の2年分という基準も加わり、実務上は小規模個人再生が選ばれることが多い傾向にあります。
自己破産が検討される場面
返済の見込みが立たない場合に、免責許可により支払義務を整理する手続として検討されます。ただし、浪費や賭博などの免責不許可事由があると免責が問題になり得ます(裁量により免責される場合もあります)。また、税金や養育費など、免責されない債権(非免責債権)もあります。退職金見込額は財産評価に影響し、額によっては手続の種類(管財事件となるか)に関わる場合があります。自己破産では、復権までの資格制限にも留意が必要です。いずれも資料を確認したうえで判断します。
共済組合貸付を受任通知後にどう扱うか、退職金と借入金の相殺(労使協定等がある場合の取扱い。労働基準法第24条の賃金全額払いとの関係)をどう考えるかは、事案により結論が変わります。特定の債権者だけに返済すると偏頗弁済が問題になる場合もあるため、自己判断で返済・停止を決める前にご相談ください。
給与差押えになる前に|退職金・保証人・住宅ローンの注意点
給与差押えと第三債務者
債権者が判決や支払督促などの債務名義を得て給与差押えを申し立てると、勤務先が第三債務者として関与します。これにより職場に知られる可能性が高くなります。差押えに至る前の段階で相談することで、選択肢を整理しやすくなります。督促状・訴状・支払督促・差押命令などが届いたときは、放置せず早めに確認することをおすすめします。
退職金見込額の扱い
退職金は、まだ受け取っていなくても、個人再生や自己破産では財産・清算価値の評価に影響し得ます。公務員の退職手当見込額も同様に評価の対象となり得ますが、評価方法や割合は裁判所の運用・支給の見込み・勤務状況により異なるため、断定はできません。退職金見込額が分かる資料を用意しておくと、見通しの検討がしやすくなります。
保証人・住宅ローン・税金・奨学金
保証人がいる借入を整理すると、保証人に請求が及ぶ場合があります。保証人が家族や同僚のときは、事前の検討が特に重要です。住宅ローンがある場合は個人再生の住宅ローン特則の可否、税金・社会保険料・奨学金の滞納がある場合はその扱いを、あわせて確認する必要があります。これらの有無により、適する手続の見通しが変わります。
退職金見込額・住宅ローン・保証人・共済組合貸付の有無によって、適した手続は変わります。資料を確認することで、見通しを整理できる場合があります。
相談前に準備しておきたい資料
次の資料があると、状況の整理と見通しの検討がしやすくなります。すべてがそろっていなくても相談は可能です。まずは分かる範囲でお持ちください。
- 借入先の一覧(金融機関名・残高の分かるもの)
- 共済組合貸付の契約書・残高通知・返済予定表
- 職員信用組合などのローンの契約書・返済予定表
- 給与明細・賞与明細(直近数か月分)
- 退職金見込額が分かる資料(退職手当の規程・見込額の通知など)
- 源泉徴収票・課税証明書
- 家計の収支が分かるメモ
- 預金通帳
- 督促状・訴状・支払督促・差押命令などの通知
- 保証人の有無が分かる資料
- 住宅ローンの契約書・残高証明
- 税金・社会保険料・奨学金の滞納が分かる資料
- 職場・共済組合・金融機関から届いた通知
弁護士に相談するタイミング
次のような場面では、早めに相談することで選択肢や対応方針を整理しやすくなります。相談は結果を保証するものではありませんが、判断材料をそろえるうえで役立ちます。
| 場面 | 相談で整理できること |
|---|---|
| 共済組合貸付や給与天引きがあると分かったとき | 借入先・返済方法・手続への影響の整理 |
| 返済のために新たな借入を重ねているとき | 現状の負担と手続選択の見通し |
| 督促状・訴状・支払督促が届いたとき | 差押えに至る前の対応方針 |
| 退職金や住宅ローンがあるとき | 財産評価・住宅維持の可否の検討 |
| 個人再生と自己破産で迷うとき | 各手続の要件・影響の比較 |
| 職場への影響を整理したいとき | 知られ得る経路と留意点の確認 |
よくある質問
- 公務員でも債務整理はできますか?
- できます。借金や債務整理そのものは地方公務員法第16条の欠格事由には含まれていません。ただし、適した手続や職場への影響は個別事情により異なります。
- 債務整理をすると必ず職場に知られますか?
- 手続そのものが当然に勤務先へ通知されるわけではありません。もっとも、給与差押えや共済組合貸付の給与引去りなど、勤務先が関与する場面では知られる可能性があります。
- 共済組合貸付を給与天引きで返済している場合はどうなりますか?
- 制度主体や契約により扱いが異なります。受任通知後の引去りの停止、任意整理の対象に含めるか、債権者一覧への記載、偏頗弁済の問題などを、資料を確認したうえで判断する必要があります。
- 任意整理なら職場に知られにくいですか?
- 任意整理は裁判所を使わないため、手続そのものによって勤務先へ当然通知されるものではありません。ただし、給与差押えや共済組合貸付がある場合は、その扱いを別途検討する必要があります。
- 公務員は個人再生を選びやすいですか?
- 継続的で安定した収入がある場合、個人再生が選択肢になり得ます。もっとも、退職金見込額や住宅ローン、清算価値、可処分所得などにより結論は変わるため、一律には言えません。
- 自己破産すると公務員を辞めなければなりませんか?
- 一般の地方公務員は、破産を理由に当然に職を失うわけではありません。ただし、一部の特別職や、資格を用いる立場では影響し得るため、確認が必要です。
- 給与差押えになると職場に分かりますか?
- 給与差押えでは勤務先が第三債務者として関与するため、知られる可能性が高くなります。差押えに至る前に相談すると、選択肢を整理しやすくなります。
- 相談前に何を準備すればよいですか?
- 借入先の一覧、給与明細、共済組合貸付や住宅ローンの資料、退職金見込額の分かる資料などがあると検討しやすくなります。すべてそろっていなくても相談は可能です。
まとめ
- 公務員でも債務整理は検討できます。借金・債務整理そのものは地方公務員法第16条の欠格事由ではありません。
- 手続そのものが当然に職場へ通知されるわけではありませんが、給与差押えや共済組合貸付の給与引去りなど、知られ得る場面があります。
- 共済組合貸付・信用組合ローン・給与天引き・給与差押えは性質が異なります。まず借入先と引去り元を確認しましょう。
- 任意整理・個人再生・自己破産のどれが適するかは、退職金見込額・住宅ローン・保証人などにより変わります。
- 督促状・支払督促・差押命令が届いたときや、共済組合貸付・退職金・住宅ローンが関係するときは、早めの相談が選択肢の整理に役立ちます。
公務員の方の債務整理は、共済組合貸付・給与天引き・退職金見込額など、確認しておきたい点が複数あります。資料を確認することで、職場への影響も含めて見通しを整理しやすくなります。
監修・執筆
神戸みらい法律会計事務所(弁護士法人ひょうご支所)/兵庫県弁護士会所属。弁護士・公認会計士 藤井貴之。
参考資料(公的機関・公式資料)

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