交通事故で後遺障害等級が認定されると、加害者側の保険会社から後遺障害慰謝料を含む示談案が示されることがあります。ところが、提示された金額が裁判実務で参照される基準と比べてどの程度なのかは、示談案を見ただけでは分かりません。この記事では、公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が編集する「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)の後遺障害慰謝料を第1級から第14級まで一覧にし、自賠責保険の支払基準と並べたうえで、提示額を確かめる手順を整理します。
結論からいえば、後遺障害慰謝料の目安は「認定された等級」と「どの基準で計算するか」によって大きく変わります。ただし、赤い本の金額はあくまで目安であり、事故の態様、過失の有無、事故前からの持病などの個別事情によって、最終的な金額は変わります。
この記事で分かること
- 赤い本(2026年版)による後遺障害慰謝料の等級別の金額(第1級2,800万円〜第14級110万円)
- 自賠責保険の支払基準による後遺障害慰謝料と、支払限度額との違い
- 最終的な賠償額が変わる主な事情と、判断が分かれる場面
- 示談書に署名する前に確認したい項目と期限
- 弁護士に相談するタイミングと、相談の際に用意したい資料
保険会社から示談案が届いている場合は、署名する前に、提示額がどの基準で計算されているかを確認することをおすすめします。後遺障害等級認定票(認定結果の通知)と、保険会社の示談案・損害賠償額計算書をお手元にご用意いただくと、ご相談の際に各損害項目を整理しやすくなります。
後遺障害慰謝料の目安は「等級」と「計算の基準」で変わります
後遺障害慰謝料とは、交通事故によって後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する賠償です(民法第709条・第710条)。金額の目安は、どの等級が認定されたかと、どの基準で計算するかによって変わります。保険会社の提示額を確かめるときは、次の順序で確認すると全体像をつかみやすくなります。
| 確認の順序 | 確認すること | 手元で見る資料 |
|---|---|---|
| 1 認定された等級 | 介護を要する後遺障害(別表第一)か、それ以外(別表第二)か。何級か。複数の障害がある場合(併合)や、事故前から障害があった場合(加重)は、その内訳 | 後遺障害等級認定票、自賠責保険の支払の通知 |
| 2 計算の基準 | 後遺障害慰謝料の金額が、自賠責の支払基準、保険会社の基準、赤い本のどれに近いか | 示談案、損害賠償額計算書 |
| 3 慰謝料以外の項目 | 後遺障害逸失利益、入通院慰謝料、過失相殺、既払金の差引き | 損害賠償額計算書、休業損害証明書、収入の資料 |
| 4 期限 | 自賠責保険への請求と、加害者に対する損害賠償請求権の時効 | 症状固定日が記載された後遺障害診断書 |
後遺障害慰謝料は、損害の一項目にすぎません。慰謝料の金額だけで提示が妥当かどうかを判断せず、他の項目とあわせて確認する必要があります。
【等級別一覧】赤い本の後遺障害慰謝料と自賠責の支払基準
赤い本は、公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が毎年2月に改訂版を発行している書籍です。同センターは、東京地方裁判所の実務に基づいて賠償額の基準を示したものと紹介しており、最新版は2026年版(令和8年2月6日発行)です。赤い本の基準は「裁判基準」「弁護士基準」と呼ばれることがありますが、弁護士に依頼すればこの金額になるという意味ではありません。なお、同センター本部も、通称「青本」と呼ばれる「交通事故損害額算定基準」を隔年で発行しています(最新版は令和8年2月発行の30訂版)。この記事では、赤い本の金額を掲載しています。
| 等級 | 赤い本の金額(裁判基準の目安) | 自賠責の支払基準の金額(慰謝料等) |
|---|---|---|
| 第1級 | 2,800万円 | 1,150万円 |
| 第2級 | 2,370万円 | 998万円 |
| 第3級 | 1,990万円 | 861万円 |
| 第4級 | 1,670万円 | 737万円 |
| 第5級 | 1,400万円 | 618万円 |
| 第6級 | 1,180万円 | 512万円 |
| 第7級 | 1,000万円 | 419万円 |
| 第8級 | 830万円 | 331万円 |
| 第9級 | 690万円 | 249万円 |
| 第10級 | 550万円 | 190万円 |
| 第11級 | 420万円 | 136万円 |
| 第12級 | 290万円 | 94万円 |
| 第13級 | 180万円 | 57万円 |
| 第14級 | 110万円 | 32万円 |
赤い本の金額は後遺障害慰謝料の目安、自賠責の金額は支払基準が定める「慰謝料等」の額で、いずれも後遺障害逸失利益や入通院慰謝料を含みません。自賠責の支払基準の金額は、令和2年(2020年)4月1日以降に発生した事故に適用されるものです(令和元年金融庁・国土交通省告示第3号の附則)。それより前の事故には、改正前の金額が適用されます。
一覧表を読むときの注意点
- 赤い本の金額は目安です。発行元の日弁連交通事故相談センターも、損害額算定のひとつの目安であり、事件ごとの事情に応じて損害額は変わると説明しています。
- 自賠責の支払基準の金額は、保険会社が訴訟外で支払うときの基準であり、加害者に請求できる慰謝料の上限を示すものではありません。
- 任意保険会社の示談案は各社の算定方法によるもので、赤い本とも自賠責の支払基準とも一致するとは限りません。
自賠責の支払基準で金額が変わる場合(介護を要する後遺障害・被扶養者)
自賠責保険の支払基準では、介護を要する後遺障害(自動車損害賠償保障法施行令別表第一)と、別表第二の第1級から第3級について、被扶養者がいる場合の金額や初期費用等の加算が定められています。
| 区分 | 被扶養者がいない場合 | 被扶養者がいる場合 | 加算される初期費用等 |
|---|---|---|---|
| 別表第一 第1級(常に介護を要するもの) | 1,650万円 | 1,850万円 | 500万円 |
| 別表第一 第2級(随時介護を要するもの) | 1,203万円 | 1,373万円 | 205万円 |
| 別表第二 第1級 | 1,150万円 | 1,350万円 | なし |
| 別表第二 第2級 | 998万円 | 1,168万円 | なし |
| 別表第二 第3級 | 861万円 | 1,005万円 | なし |
支払基準上の項目名は「慰謝料等」で、初期費用等は別表第一に該当する場合に加算される額です(支払基準第3の2)。この表は自賠責の支払基準の金額であり、赤い本の金額ではありません。自賠責の支払基準は、後遺障害による損害を逸失利益と慰謝料等に分けて定めており、介護費用を独立の項目としていません。一方、加害者に対する損害賠償の請求では、将来の介護費用が慰謝料とは別に問題になるため、慰謝料の金額だけを比べても賠償全体の妥当性は判断できません。
赤い本・自賠責・任意保険会社の基準はどう違う?
後遺障害慰謝料の金額を考える基準には、主に次の三つがあります。示談案の金額がどの基準に近いかを確認することが、見直しの余地を検討する出発点になります。
| 基準 | 位置付け | 金額の確かめ方 |
|---|---|---|
| 自賠責保険の支払基準 | 自動車損害賠償保障法第16条の3第1項に基づいて国土交通大臣と内閣総理大臣が定める基準(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号)。自賠責保険会社は、この基準に従って支払わなければなりません | 告示の本文(国土交通省のサイトで公開されています) |
| 任意保険会社の基準 | 加害者側の任意保険会社が示談案を作成する際に用いる、各社の算定方法 | 示談案・損害賠償額計算書の記載。算定の根拠は保険会社に確認します |
| 赤い本(裁判基準) | 東京地方裁判所の実務に基づいて日弁連交通事故相談センター東京支部が示す算定基準。訴訟や交渉で参照される目安 | 赤い本の最新版(2026年版) |
自賠責の支払基準は「訴訟外の支払」のための基準です
自賠責保険の支払基準は、保険会社に対して支払の基準を定めたものです。最高裁判所第一小法廷平成18年3月30日判決(平成17年(受)第1628号・民集60巻3号1242頁)は、交通事故で亡くなった被害者の相続人(子)が自賠責保険会社に損害賠償額の支払を求めた訴訟(自動車損害賠償保障法第16条第1項)で、支払基準は保険会社が訴訟外で保険金等を支払う場合に従うべき基準にすぎないとし、裁判所は支払基準によることなく損害賠償額を算定して支払を命じることができると判断しました。この判断は、死亡・後遺障害・傷害の別に定められた支払基準そのものについてのものです。
したがって、「自賠責の支払基準の金額が後遺障害慰謝料の正式な金額である」という説明は正確ではありません。もっとも、自賠責保険から支払われる金額には、等級ごとの保険金額(支払限度額)という上限があります。
「支払限度額」と「後遺障害慰謝料」は別の数字です
自賠責保険には、後遺障害による損害について等級ごとの保険金額(支払限度額)が定められています。たとえば、別表第二の第1級は3,000万円、第12級は224万円、第14級は75万円です。この限度額は、逸失利益と慰謝料等を合わせた後遺障害による損害全体に対する上限であり、後遺障害慰謝料の金額ではありません。第14級でいえば、支払限度額は75万円ですが、支払基準による後遺障害慰謝料は32万円です。
また、自賠責保険では、被害者の過失が7割未満であれば過失を理由とする減額は行われず、7割以上の重大な過失がある場合に限って、後遺障害については2割から5割の範囲で減額されます(支払基準第6の1)。これに対して、加害者に対する損害賠償の請求では、被害者に過失があれば、裁判所はこれを考慮して損害賠償の額を定めることができます(民法第722条第2項)。慰謝料を含む損害額全体が過失の程度に応じて減額されることがある点で、自賠責保険とは考え方が異なります。
後遺障害慰謝料を考える前提(損害項目と等級認定)
入通院慰謝料・逸失利益とは別の損害項目です
| 損害項目 | 何に対する賠償か | 金額を左右する主な事情 |
|---|---|---|
| 入通院慰謝料(傷害慰謝料) | 治療期間中の精神的苦痛 | 入院・通院の期間、治療の経過 |
| 後遺障害慰謝料 | 後遺障害が残ったことによる精神的苦痛 | 認定された等級、計算の基準、個別事情 |
| 後遺障害逸失利益 | 労働能力が低下し、将来の収入が減ること | 基礎収入、労働能力喪失率、喪失期間 |
| 将来の介護費用など | 介護を要する後遺障害が残った場合の将来の費用 | 介護の必要性と程度、介護を担う人 |
入通院慰謝料の算定基準は「傷害慰謝料の算定基準と計算方法(3つの基準)」、逸失利益の計算は「後遺障害逸失利益の計算方法(喪失率・喪失期間とライプニッツ係数)」で解説しています。
等級は自賠責保険の手続の中で認定されます
被害者請求では、自賠責保険会社が請求書類を損害保険料率算出機構の調査事務所に送付し、調査事務所が事故の状況や損害額などを調査します。等級の認定を受ける方法には、被害者が自賠責保険会社に直接請求する「被害者請求」のほか、加害者側の任意保険会社を通じて認定を受ける「事前認定」があります。自賠責保険の支払基準は、後遺障害による損害(逸失利益と慰謝料等)を施行令の別表に定める等級に該当する場合に認めるとし、等級の認定は原則として労働者災害補償保険の障害等級認定の基準に準じて行うと定めています。
被害者請求に対して支払をしたとき、自賠責保険会社は、支払った金額、後遺障害の該当する等級、その等級に該当すると判断した理由などを記載した書面を、請求した被害者に交付しなければなりません(自動車損害賠償保障法第16条の4第2項)。支払をしないこととしたときも、その理由を記載した書面を交付しなければなりません(同条第3項)。認定結果に疑問があるときは、これらの書面で判断の理由を確認することが出発点になります。申請方法の選び方は「事前認定と被害者請求の違い」、診断書の準備は「後遺障害診断書の作成前に確認したい資料と画像検査の注意点」をご覧ください。
複数の後遺障害や、事故前からの障害がある場合
後遺障害が複数残った場合の「併合」、事故前から障害があった場合の「加重」、等級表に定めのない障害の評価(自賠責では、各等級の後遺障害に相当するものを当該等級の後遺障害とします)によって、認定される等級が決まります。事故前から同じ部位に障害があった場合(加重)、自賠責保険の保険金額は、加重後の等級の金額から既にあった障害の等級の金額を控除した額とされています(自動車損害賠償保障法施行令第2条第2項)。慰謝料を検討する際も、認定された等級だけでなく、併合の内訳や既存の障害の等級を確認します。詳しくは「後遺障害が複数残ったとき(併合・加重・準用の違いと確認手順)」で解説しています。
最終的な賠償額が変わる場面(判断が分かれる場面)
次の表は、最終的な賠償額が変わりやすい場面を一般的に整理したものです。当事務所の取扱事例や解決結果を示すものではなく、実際の結論は資料と個別事情によって異なります。
| 場面 | 出発点となる考え方 | 判断を左右する事情 | 見落とされやすい点 |
|---|---|---|---|
| 等級が非該当、又は想定より低い | 自賠責保険では、施行令の別表に定める等級に該当する場合に後遺障害による損害が支払われます | 画像検査や神経学的検査の所見、症状の一貫性、後遺障害診断書の記載 | 最高裁判所は、時効の起算点が争われた事案で、自賠責の等級認定を保険金額の算定を目的とする損害の査定にすぎないと述べています(後述の平成16年12月24日判決)。認定結果を争う手続として、異議申立てや紛争処理の申請があります |
| 被害者にも過失がある | 慰謝料を含む損害額全体が、過失を考慮して減額されることがあります(民法第722条第2項) | 事故状況の客観的な資料(実況見分調書、ドライブレコーダーの映像など) | 自賠責保険の重大な過失による減額(被害者の過失が7割以上の場合)とは基準が異なります |
| 事故前からの持病や既往症がある | 加害者側から、損害の拡大に持病が影響したとして減額(素因減額)が主張されることがあります | 事故前の通院歴、画像の経時的な変化、主治医の意見 | 自賠責保険では、既往症等のため受傷と後遺障害との因果関係の有無の判断が困難な場合に5割を減額する定めがあり(支払基準第6の2)、素因減額とは仕組みが異なります |
| 家族(近親者)も精神的苦痛を受けた | 民法第711条は生命を侵害した場合の近親者への賠償を定めていますが、最高裁判所第三小法廷昭和33年8月5日判決(昭和31年(オ)第215号・民集12巻12号1901頁)は、顔面に除去できない著明な瘢痕が残った娘の母について、「その子の死亡したときにも比肩しうべき精神上の苦痛」を受けたと認められる場合には、民法第709条・第710条に基づき自己の権利として慰謝料を請求できるとして、母の請求を認めた原審の判断を是認しました | 後遺障害の内容と程度、家族の介護の負担、生活の変化 | 本人の後遺障害慰謝料とは別の請求として検討します。どの程度の障害で認められるかは、事案ごとの判断です |
認定結果を争う手続は「後遺障害が非該当のときの異議申立ての判断材料」と「自賠責保険・共済紛争処理機構への申請」、持病を理由とする減額は「既往症・素因減額を主張されたら」で解説しています。
示談書に署名する前に確認したいこと
示談書や免責証書に署名すると、記載された内容で合意したことになります。署名の前に、次の点を確認することをおすすめします。
- 後遺障害等級認定票で、認定された等級(別表第一・第二の区別、併合の有無、事故前からの障害による加重の有無)を確認した
- 損害賠償額計算書で、後遺障害慰謝料の金額と、それがどの基準による金額かを確認した
- 後遺障害慰謝料と入通院慰謝料が、別々の項目として計上されているかを確認した
- 後遺障害逸失利益の基礎収入、労働能力喪失率、喪失期間の根拠を確認した
- 過失相殺の割合と、その根拠となる事故状況の資料を確認した
- 既往症や素因を理由とする減額の有無と、その理由を確認した
- 既払金(自賠責保険からの支払、内払金、治療費の支払など)の差引きの内訳を確認した
- 介護を要する後遺障害の場合、将来の介護費用などが計上されているかを確認した
- 示談書・免責証書の清算条項(今後一切の請求をしないといった文言)の範囲を確認した
- 症状固定日と、自賠責保険への請求・損害賠償請求権の時効を確認した
示談案全体の確認項目は「交通事故の示談案で確認すべき項目」でも整理しています。
期限を確認する(自賠責保険への請求と損害賠償請求権の時効)
| 対象 | 期限と起算点 | 根拠 |
|---|---|---|
| 自賠責保険会社への被害者請求(後遺障害) | 3年で時効により消滅します。後遺障害の部分は、症状固定日の翌日から数えると案内されています(時効の更新の制度があります) | 自動車損害賠償保障法第19条(損害及び保有者を知った時から3年)、国土交通省「支払までの流れと請求方法」(起算点と時効の更新の案内) |
| 加害者に対する損害賠償請求権(人の身体を害する不法行為) | 損害及び加害者を知った時から5年、不法行為の時から20年 | 民法第724条・第724条の2 |
最高裁判所第二小法廷平成16年12月24日判決(平成14年(受)第1355号・集民215号1109頁)は、症状固定の診断を受けて事前認定を申請した被害者について、認定結果が非該当で、その後の異議申立てによって等級が認定されたという事情があっても、後遺障害に基づく損害賠償請求権の消滅時効は遅くとも症状固定の診断を受けた時から進行すると判断しました。この判決は時効期間が3年であった改正前の民法の事案ですが、現行の民法第724条第1号も、同じく「損害及び加害者を知った時」を起算点としています。等級の認定手続が続いている間も時効期間は進むことに注意が必要です。時効の完成を防ぐ手続は「交通事故の損害賠償請求権の時効(人身5年・物損3年と起算点)」と「自賠責保険の時効更新手続」で解説しています。
弁護士に相談するタイミング
次のような場面では、示談や申請の前に一度相談し、提示額の計算の前提や今後の手続を整理しておくことをおすすめします。相談によって結果が保証されるものではありませんが、資料をもとに見通しや対応方針を検討できます。
- 後遺障害診断書を医師に作成してもらう前
- 後遺障害等級の認定結果(非該当を含みます)が届いたとき
- 保険会社から示談案が届き、後遺障害慰謝料が赤い本の金額と大きく異なるとき
- 過失相殺や、持病を理由とする減額を主張されたとき
- 介護を要する後遺障害が残り、将来の費用の見通しが立たないとき
- 症状固定から時間がたち、期限が気になるとき
交渉で合意できない場合の手続(裁判外の紛争解決手続(ADR)、調停、訴訟)の選び方は「交通事故の示談交渉が行き詰まったら(ADRと調停と訴訟の選び方)」で解説しています。また、弁護士費用特約を利用できる場合があるため、自動車保険の証券も確認しておくことをおすすめします(補償の範囲や利用の手続は、保険契約によって異なります)。
示談案の内容を確認したい方へ
後遺障害等級認定票、後遺障害診断書、保険会社の示談案と損害賠償額計算書、交通事故証明書など事故状況が分かる資料、自動車保険の証券をご用意いただくと、赤い本の基準と照らし合わせながら各項目を確認できます。
よくある質問
後遺障害14級の慰謝料はいくらですか。
赤い本(2026年版)では110万円、自賠責の支払基準では32万円です。第14級は、むちうちの後に痛みやしびれが残る場合(局部に神経症状を残すもの。第14級第9号)などで問題になる等級です。赤い本の金額は目安で、過失相殺や既往症などの事情によって最終的な金額は変わります。自賠責の金額は支払基準に従って支払われる額で、被害者の過失が7割以上の場合などには減額されます。
後遺障害12級の慰謝料はいくらですか。
赤い本では290万円、自賠責の支払基準では94万円です。第12級には、局部に頑固な神経症状を残すもの(第12級第13号)のほか、関節の機能障害や外貌の醜状など、さまざまな障害が含まれます。
赤い本の金額どおりに慰謝料が認められますか。
赤い本の金額は裁判実務で参照される目安で、事件ごとの事情に応じて損害額は変わります。保険会社の示談案が赤い本の金額を下回る場合は、資料をもとに見直す余地があるかを検討します。
自賠責保険から後遺障害の支払を受けた後でも、加害者側に請求できますか。
被害者請求で自賠責保険から支払われるのは、加害者側(自動車の保有者)が負う損害賠償の額です(自動車損害賠償保障法第16条第1項)。加害者側には、赤い本などを参照して損害額全体を計算し、既に支払を受けた金額を差し引いた残りを請求します。自賠責保険からの支払には逸失利益も含まれるため、慰謝料の差額だけでは比べられません。
後遺障害が非該当でも慰謝料を請求できますか。
非該当のままでは、自賠責保険から後遺障害の部分は支払われません。まずは認定の理由を確認し、異議申立てや紛争処理の申請を検討します。加害者に対する損害賠償の請求は、自賠責の等級認定とは別に行うことができますが、後遺障害が残ったことを医療記録などで立証する必要があり、認められるかどうかは事案によります。
後遺障害慰謝料の請求に期限はありますか。
自賠責保険への被害者請求は3年で時効により消滅し(自動車損害賠償保障法第19条)、後遺障害の部分は症状固定日の翌日から数えると国土交通省が案内しています。加害者に対する損害賠償請求権は、損害及び加害者を知った時から5年で時効により消滅します(民法第724条・第724条の2)。最高裁判所は、改正前の民法の事案で、事前認定で非該当とされ、異議申立てを経て等級が認定されたという経過があっても、加害者に対する後遺障害に基づく損害賠償請求権の時効は、遅くとも症状固定の診断を受けた時から進行すると判断しています。
家族も慰謝料を請求できますか。
民法第711条は、生命を侵害した場合の近親者への賠償を定めています。生命を侵害された場合でなくても、最高裁判所は、顔面に除去できない著明な瘢痕が残った娘の母が、子の死亡にも比肩するような精神上の苦痛を受けた事案で、民法第709条・第710条に基づく母自身の慰謝料請求を認めています。認められるかどうかは、障害の内容や程度、家族の状況によるため、事案ごとの検討が必要です。
弁護士に依頼すれば赤い本の金額で示談できますか。
結果を約束することはできません。認定等級、医療記録、事故状況などの資料をもとに損害額全体を計算し、赤い本などの基準を前提に交渉します。合意できない場合は、裁判外の紛争解決手続(ADR)や訴訟を含めて手続を検討します。弁護士費用特約を利用できるかは、保険契約の内容によります。
まとめ
- 後遺障害慰謝料の目安は、認定された等級と計算の基準によって決まります。
- 赤い本(2026年版)の金額は第1級2,800万円から第14級110万円で、自賠責の支払基準(別表第二の場合、第1級1,150万円から第14級32万円)とは水準が異なります。
- 自賠責の支払基準は訴訟外の支払のための基準であり、支払限度額も後遺障害慰謝料の金額とは別の数字です。
- 等級の認定、過失相殺、持病を理由とする減額によって最終的な賠償額は変わります。家族(近親者)の慰謝料は、本人とは別の請求として検討します。
- 示談書に署名する前に計算書の内訳と期限を確認し、判断に迷う場合は資料をそろえて相談することをおすすめします。
後遺障害慰謝料のご相談
弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所では、交通事故の被害に遭われた方からのご相談をお受けしています。初回のご相談は無料です(ご予約制です。オンライン・出張相談は無料相談の対象外です。弁護士費用特約を利用でき、ご本人のご負担がない場合には相談料をいただきます)。
ご予約の際は、相手方の氏名と保険会社名をお知らせください。ご相談の際は、保険会社の示談案、後遺障害等級認定票、後遺障害診断書をお持ちください。お電話の受付時間は9:00〜20:00です。
この記事の監修者
代表弁護士・公認会計士 藤井 貴之
兵庫県弁護士会所属・日本公認会計士協会兵庫会所属
弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所
交通事故の被害に遭われた方の損害賠償請求(後遺障害の等級認定の申請、示談交渉、訴訟)を取り扱っています。
〒654-0154 兵庫県神戸市須磨区中落合2丁目2-5 名谷センタービル7階
参考資料
この記事は、後遺障害慰謝料についての一般的な情報を提供するものであり、個別の事案についての法的助言ではありません。赤い本の金額は目安であり、実際の賠償額は、事故の態様、後遺障害の内容、過失の有無などの個別事情によって異なります。記載の内容は令和8年(2026年)10月時点の情報に基づきます。

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