後遺障害が複数残ったとき|併合・加重・準用の違いと確認手順 |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|

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後遺障害が複数残ったとき|併合・加重・準用の違いと確認手順

交通事故のけがで、首や腰の痛み、手足のしびれ、めまい、膝のぐらつきなど、複数の症状が同時に残ることは珍しくありません。後遺障害の申請を控えている方や、認定結果の通知を受け取った方から、「症状が二つあるのに等級が一つしか付かないのはなぜか」「第14級が二つなら第13級になるのではないか」「事故前から腰が悪かった場合はどう扱われるのか」といったご質問をいただくことがあります。

この記事では、交通事故で複数の部位・症状に後遺障害が残った場合に、自賠責保険・共済の後遺障害等級がどのように整理されるのかを、併合、加重、準用、相当という四つの考え方に分けて説明し、あわせて申請前・認定結果の受領後・示談前に確認したい資料を整理します。

結論の方向性を先にお伝えすると、症状や傷病名が複数あることだけを理由に等級が自動的に上がるわけではありません。まず個々の障害が単独で等級に該当するかを確認し、そのうえで障害の系列、派生関係、評価の重複を検討する順序になります。個別事情により結論は異なります。

複数の症状が残っている場合、認定の見通しは診断書や検査結果の内容によって変わります。後遺障害の申請前や示談前に、資料と論点を一度整理しておくことをおすすめします。

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複数の後遺障害が残ったとき、最初に確認したい結論

複数の後遺障害が残った場合の整理は、次の五点が出発点になります。

  • 傷病名や自覚症状が複数あるだけでは、複数の等級が個別に認定されるとは限りません。
  • 併合による等級の繰上げは、自動車損害賠償保障法施行令第2条第1項第3号ロからヘまでの区分に従います。
  • 同号ニにいう「第13級以上」は第1級から第13級までを指し、第14級を含みません。
  • 事故前から同じ部位に障害があった場合は、併合ではなく加重(同令第2条第2項)の問題になります。
  • 等級表に項目のない障害は、別表の備考にいう「相当」と、労災の認定基準にいう「準用」の考え方で評価されます。

実務では、次の順序で確認すると整理しやすくなります。順序を飛ばして「症状が二つあるから併合されるはずだ」と考えると、認定結果との食い違いの理由が分からなくなることがあります。

順序 確認事項 主な検討内容
個々の障害の等級該当性 それぞれの障害が単独で等級表のどの項目に当たるかを確認します。自覚症状だけでは足りず、検査所見や画像所見との整合が問われます。
障害系列が異なるか 労災の障害系列表は、身体障害を部位と障害の種類により35の系列に区分しています。系列を異にすることが、併合を検討する前提になります。
みなし系列に当たらないか 両眼球の視力・調節機能・運動・視野の各障害相互間、同一上肢の機能障害と手指の障害、同一下肢の機能障害と足指の障害は、同一系列とみなして取り扱われます。
派生関係・評価の重複・組合せ等級 一つの障害を複数の観点から評価しているにすぎない場合や、一方が他方に通常派生する関係にある場合は、上位の等級によります。両上肢・両下肢の欠損等は等級表の組合せ等級によります。
併合による繰上げの有無 施行令第2条第1項第3号ロからヘまでのいずれに当たるかを確認します。
加重に当たらないか 事故前から同一部位に等級表に定める程度の障害があったかどうかを確認します。
等級表にない障害の評価 動揺関節、めまい・平衡機能障害など、等級表に項目のない障害は、準用・相当の考え方で評価されます。

併合・加重・準用・相当は、根拠の層が異なります

この四つは並べて説明されることが多いのですが、法律上の位置づけは同じではありません。認定理由を読み解くときは、どの資料を根拠とする判断なのかを区別して整理すると見通しが立ちやすくなります。

用語 直接の根拠 内容 注意したい点
併合 自動車損害賠償保障法施行令第2条第1項第3号ロからヘまで 別表第二に定める等級に該当する後遺障害が二以上ある場合に、保険金額をどの等級に応ずる金額とするかを定めています。 同号は保険金額を定める規定であり、条文が「併合等級認定制度」を直接定義しているわけではありません。「併合」は認定実務上の呼称です。
加重 同令第2条第2項 既に後遺障害のある者が、同一部位について後遺障害の程度を加重した場合に、既存障害の等級に応ずる金額を控除する旨を定めています。 自賠責の保険金額の計算に関する規定であり、民事上の損害賠償額からの控除や素因減額とは別の問題です。
相当 同令別表第一備考、別表第二備考六 各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であって、各等級の後遺障害に相当するものは、当該等級の後遺障害とする旨を定めています。 備考が定めているのはこの一文であり、施行令が「相当等級」という用語を定義しているわけではありません。
準用 労災の障害等級認定基準 等級表に掲げるもの以外の身体障害について、その障害の程度に応じ、等級表に掲げる身体障害に準じて等級(準用等級)を定める考え方です。 法令上の制度ではなく認定基準上の取扱いです。自賠責でこれが参照されるのは、支払基準告示が労災の等級認定の基準に準じて認定する旨を定めているためです。

自賠責が労災の基準を参照する根拠は、金融庁・国土交通省告示第1号「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」にあります。同告示の「後遺障害による損害」の項は、後遺障害による損害を逸失利益及び慰謝料等とし、施行令第2条並びに別表第一及び別表第二に定める等級に該当する場合に認めるとしたうえで、等級の認定は原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行うとしています。

「併合・加重・準用・相当」を同格の四つの法定制度として説明する例を見かけますが、以上のとおり根拠の層は異なります。認定理由に不服がある場合、どの層の判断を争うのかによって、必要な資料も主張の組み立ても変わります。

併合を検討する前に確認する三つのこと

1 それぞれの障害が単独で等級に該当するか

複数の傷病名がある、受傷部位が複数ある、自覚症状が複数あるというだけでは、複数の等級がそれぞれ認定されるとは限りません。まず、個々の障害が単独で等級表のいずれかの項目に該当するかが判断されます。

たとえば頸部と腰部に痛みが残っている場合でも、それぞれについて画像所見、神経学的検査所見、治療経過、症状の一貫性などから障害として評価できるかが検討され、一方だけが等級に該当することもあります。

2 障害系列が異なるか

労災の障害系列表は、身体障害を部位と障害の種類により区分し、35の系列を掲げています。眼は視力障害、調節機能障害、運動障害、視野障害に分かれ、上肢・下肢は左右別に、欠損障害・機能障害、変形障害、短縮障害(下肢)、醜状障害の系列に分かれます。

併合は、系列を異にする身体障害が二以上ある場合の処理です。したがって、二つの症状が同じ系列に属するのか、異なる系列に属するのかが最初の分岐点になります。

3 みなし系列・派生関係・評価の重複・組合せ等級がないか

系列が異なっていても、そのまま併合の方法によらない場合があります。労災の障害等級認定基準は、次の取扱いを示しています。

  • みなし系列 両眼球の視力障害、運動障害、調節機能障害、視野障害の各相互間、同一上肢の機能障害と手指の欠損又は機能障害、同一下肢の機能障害と足指の欠損又は機能障害は、同一系列とみなして取り扱われます。
  • 組合せ等級 両上肢の欠損障害及び両下肢の欠損障害は、本来は系列を異にする複数の障害ですが、等級表に組合せ等級が定められているため、併合の方法を用いず、当該等級により認定されます。
  • 複数の観点からの評価 一つの障害が、観察の方法によっては二以上の等級に該当すると考えられる場合は、その一つの障害を複数の観点で評価しているにすぎないため、いずれか上位の等級によります。
  • 派生関係 一つの障害に他の障害が通常派生する関係にある場合も、いずれか上位の等級によります。

他方、同一系列に属する二以上の障害があり、等級表に該当する項目がない場合には、労災の認定基準に従い、それぞれの障害が該当する等級を定めたうえで、併合の方法を用いて準用等級を定める取扱いがあります。序列を乱すときは、直近上位又は直近下位の等級により認定するとされています。「同一系列ならすべて併合する」「同一系列なら常に上位一つだけで評価する」と一律に理解すると、認定結果と食い違うことがあります。

併合による等級の繰上げ

自動車損害賠償保障法施行令第2条第1項第3号は、別表第二に定める等級に該当する後遺障害が二以上ある場合の保険金額を、次のように区分して定めています。

区分 要件 保険金額
別表第二に定める第5級以上の等級に該当する後遺障害が二以上存する場合 重い後遺障害の該当する等級の三級上位の等級に応ずる金額
第8級以上の等級に該当する後遺障害が二以上存する場合(ロに掲げる場合を除く) 重い後遺障害の該当する等級の二級上位の等級に応ずる金額
第13級以上の等級に該当する後遺障害が二以上存する場合(ロ及びハに掲げる場合を除く) 重い後遺障害の該当する等級の一級上位の等級に応ずる金額。ただし、その金額がそれぞれの後遺障害の該当する等級に応ずる金額を合算した金額を超えるときは、その合算した金額
別表第二に定める等級に該当する後遺障害が二以上存する場合(ロからニまでに掲げる場合を除く) 重い後遺障害の該当する等級に応ずる金額
別表第二に定める等級に該当する後遺障害が存する場合(ロからホまでに掲げる場合を除く) 当該後遺障害の該当する等級に応ずる金額

第14級は繰上げの対象に含まれません

ニにいう「第13級以上」は、第1級から第13級までを意味し、第14級を含みません。そのため、異なる系列であることを前提としても、第14級と第14級の組合せ、第12級と第14級の組合せは、いずれもロからニまでに当たらず、ホにより重い方の等級に応ずる金額によることになります。

つまり、第14級が二つ残ったからといって第13級になるわけではなく、第12級と第14級が残ったからといって第11級になるわけでもありません。もっとも、各症状が第14級にとどまるのか第12級に該当し得るのかという評価自体が争点になる事案もあり、個別事情により結論は異なります。

一級上位の金額が合算額を上回る場合

ニにはただし書が置かれ、一級上位の等級に応ずる金額が、それぞれの後遺障害の等級に応ずる金額を合算した金額を超えるときは、その合算した金額とするとされています。単に「保険金額の合算が上限になる」という説明では足りず、比較の対象が「一級上位の等級の金額」と「個々の等級の金額の合算額」である点に注意が必要です。

制度説明用の仮定例として、別表第二第2級に該当する後遺障害と第13級に該当する後遺障害が、それぞれ別の系列に残った場合を考えます。この場合はニに当たり、重い方である第2級の一級上位は第1級ですから、第1級に応ずる金額(3,000万円)が出発点になります。他方、第2級に応ずる金額(2,590万円)と第13級に応ずる金額(139万円)の合算額は2,729万円です。一級上位の金額が合算額を超えていますので、この場合の保険金額は合算額の2,729万円となります。

ここに掲げた金額は、施行令別表第二に定める保険金額です。実際に受け取ることのできる金額は、後遺障害以外の損害の有無、過失割合、既払金、任意保険や訴訟における評価などによって変わります。

繰り上げても第1級を超えることはありません

併合により等級が繰り上げられた結果、計算上は第1級を超えることになる場合であっても、等級表に第1級より上位の等級は存在しないため、第1級にとどめる取扱いがされています。これは施行令第2条本文に明文で置かれた規定ではなく、労災の障害等級認定基準に示された取扱いであり、自賠責の等級認定が原則として同基準に準じて行われることとの関係で説明されるものです。

別表第一(介護を要する後遺障害)の場合

ここまでの繰上げの規定は、別表第二を対象とするものです。介護を要する後遺障害を定める別表第一については、施行令第2条第1項第2号イが、別表第一に定める等級に該当する介護を要する後遺障害が存する場合について、同一の等級に該当する介護を要する後遺障害が二つ存する場合を含めて規定しており、当該等級に応ずる金額によるとしています。

したがって、別表第二を対象とする第3号ロからホまでの繰上げの規定を、そのまま別表第一に当てはめることはできません。重度の後遺障害が問題となる事案では、別表第一と別表第二のいずれに該当するのか、介護の要否と程度をどのように立証するのかが中心的な論点になります。

事故前から障害があった場合の加重

加重の要件と効果

施行令第2条第2項は、既に後遺障害のある者が傷害を受けたことによって同一部位について後遺障害の程度を加重した場合について、当該後遺障害の該当する別表第一又は別表第二に定める等級に応ずる金額から、既にあった後遺障害の該当する等級に応ずる金額を控除した金額とする旨を定めています。

重要なのは、新しい症状が加わったというだけでは加重にならない点です。労災の認定基準は、加重とは、新たに障害が加わった結果、等級表上、現存する障害が既存の障害より重くなった場合をいうとしています。同一部位に新たな障害が加わっても、等級表上の障害が重くならなければ加重には当たりません。また、自然的経過や既存の障害の原因となった疾病の再発など、新たな事故以外の事由により障害の程度が重くなった場合も、加重には当たらないとされています。

「同一部位」とは

労災の認定基準は、加重にいう「同一の部位」を、原則として同一系列の範囲内としています。ただし、「欠損」又は「機能の全部そう失」はその部位における最上位の等級であることから、障害が存する部位に欠損又は機能の全部喪失が後に加わった場合には、系列を異にする障害であっても同一部位の加重として取り扱うとされています。

切断や欠損が問題となる事案では、この例外の当てはめが結論を大きく左右することがあります。関連する論点は、上肢・下肢切断の後遺障害と義肢・住宅改修費の考え方を確認するでも整理しています。

「既存障害」の範囲

労災の認定基準上、既存障害は、過去に自賠責や労災で等級認定や給付を受けた障害に限られません。先天性のものか後天性のものか、業務上の事由によるものかどうか、現実に給付を受けたかどうかを問わないとされています。ただし、事故前に等級表に定められた程度の障害が存していたことが必要です。

したがって、既往歴がある、過去に同じ部位を治療した、傷病名が付いていたというだけで、当然に既存障害があったことになるわけではありません。事故前の診療録、画像、診断書、過去の認定資料などにより、事故前の障害の内容と程度を確認する必要があります。

加重・既往症・素因減額・因果関係は別の問題です

相手方保険会社との交渉では、「既往症があるから減額される」という説明を受けることがあります。しかし、自賠責における加重の処理と、民事上の損害賠償における素因減額や因果関係の判断は別の問題であり、根拠も判断枠組みも異なります。詳しくは既往症・素因減額を主張されたときの整理のポイントを確認するをご覧ください。

また、同一部位の加重と、他の部位に新たに残った障害とが併存する事案では、等級認定の順序と保険金額の控除計算の関係が問題になります。「加重後の等級に応ずる金額から既存障害の等級に応ずる金額を引く」という説明だけでは足りない場合があり、労災の認定基準と自賠責実務の適用関係を確認したうえで判断する必要があります。

等級表に明記されていない障害の評価(準用・相当)

準用等級の定め方

労災の障害等級認定基準は、「等級表に掲げるもの以外の身体障害」を、ある障害が等級表上のいかなる系列にも属さない場合と、属する系列はあるが該当する障害がない場合の二つに分けています。

前者は、その障害によって生ずる労働能力の喪失の程度を医学的検査結果等に基づいて判断し、最も近似している系列の障害における喪失の程度に相当する等級を準用等級とします。後者は、同一系列に属する二以上の障害が該当するそれぞれの等級を定め、併合の方法を用いて準用等級を定め、序列を乱すときは直近上位又は直近下位の等級により認定するとされています。

他方、自賠責の側では、施行令別表第一の備考及び別表第二の備考六が、各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であって各等級の後遺障害に相当するものは当該等級の後遺障害とする旨を定めています。「準用」と「相当」は関係する概念ですが、完全な同義語でも同格の二つの制度でもありません。根拠が法令か、告示か、認定基準かを分けて理解しておくことが有用です。

動揺関節(関節のぐらつき)

動揺関節は、等級表に項目がなく、労災の認定基準において関節の機能障害に準ずるものとして取り扱われる代表例です。上肢と下肢では取扱いが異なります。

部位 状態 労災の認定基準上の取扱い
上肢 常に硬性補装具を必要とするもの 第10級に準ずる関節の機能障害
上肢 時々硬性補装具を必要とするもの 第12級に準ずる関節の機能障害
上肢 習慣性脱臼 第12級に準ずる関節の機能障害
下肢 常に硬性補装具を必要とするもの 第8級に準ずる関節の機能障害
下肢 時々硬性補装具を必要とするもの 第10級に準ずる関節の機能障害
下肢 重激な労働等の際以外には硬性補装具を必要としないもの 第12級に準ずる関節の機能障害
下肢 習慣性脱臼及び弾発ひざ 第12級に準ずる関節の機能障害

この取扱いは、他動的なものであるか自動的なものであるかを問わないとされています。もっとも、硬性補装具を使用しているという事実だけで自賠責上の等級が認定されるという意味ではありません。関節の不安定性に関する医学的所見、ストレス撮影を含む画像所見、装具の処方の有無と時期、必要性、実際の使用状況などが確認されます。膝の不安定性が問題となる事案については、前十字靭帯損傷と膝の後遺障害・将来リスクの考え方を確認するもあわせてご覧ください。

めまい・平衡機能障害

めまいを、無条件に「等級表にない障害」あるいは「準用・相当の代表例」と分類することは適切ではありません。労災の認定基準は、失調、めまい及び平衡機能障害について、その原因となる障害部位ごとに区分することが困難であるため総合的に認定するとしたうえで、次の判断要素を示しています。

等級 労災の認定基準が示す判断要素
第3級 生命の維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高度の失調又は平衡機能障害のために労務に服することができないもの
第5級 著しい失調又は平衡機能障害のために、労働能力がきわめて低下し一般平均人の4分の1程度しか残されていないもの
第7級 中等度の失調又は平衡機能障害のために、労働能力が一般平均人の2分の1以下程度に明らかに低下しているもの
第9級 通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状が強く、かつ、眼振その他平衡機能検査に明らかな異常所見が認められ、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの
第12級 通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状があり、かつ、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められるもの
第14級 めまいの自覚症状はあるが、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められないものの、めまいのあることが医学的にみて合理的に推測できるもの

めまいの評価では、自覚症状の程度、眼振その他の平衡機能検査の結果、就労への影響が判断要素とされています。検査を受けていない、結果が記録に残っていないという状態では、評価の前提となる資料がそろいません。耳鳴りを伴う場合の整理も含め、交通事故の耳鳴り・めまいと平衡機能障害の考え方を確認するで詳しく説明しています。

労災の認定基準に記載された等級の号数は、現行の自賠責の後遺障害等級表の号数と一致しない場合があります。号数まで特定して主張するときは、施行令別表第二の現行の項目と一つずつ照合する必要があります。

よく問題になる組合せ

場面 考え方
第14級が二つ残った 異なる系列であることを前提としても、ニの「第13級以上」に当たらないため繰上げは生じません。ホにより、重い方の等級(同一等級であればその等級)に応ずる金額によります。
第12級と第14級が残った 同じくニに当たらず、繰上げは生じません。もっとも、第14級とされた症状が第12級に該当し得るかどうかは、画像所見や神経学的検査所見の評価により結論が変わることがあります。
同じ部位に複数の症状がある 同一系列に属する場合は、異なる系列を前提とする併合の対象になりません。等級表に組合せ等級があるときはその等級により、該当する障害がないときは準用等級の考え方によります。派生関係や評価の重複の有無も確認します。
事故前から同じ部位に障害があった 事故前に等級表に定められた程度の障害が存し、事故により等級表上重くなった場合は加重の問題になります。既往歴や傷病名があるだけでは既存障害とは扱われません。
脳や脊髄の損傷により複数の症状がある 労災の認定基準は、脳又は脊髄の損傷による障害が複数認められる場合には、末梢神経による障害も含めて総合的に評価し、神経系統の機能又は精神の障害の等級によるとしています。症状ごとに当然に併合されるわけではありません。他方、生じた障害が単一で、その障害について等級表上該当する等級(準用等級を含む)がある場合は、その等級によるとされています。

自賠責の等級認定と民事上の賠償額の関係

後遺障害の等級は、自賠責の保険金額に直結します。支払基準告示は、後遺障害による損害を逸失利益及び慰謝料等とし、逸失利益は年間収入額又は年相当額に該当等級の労働能力喪失率と就労可能年数のライプニッツ係数を乗じて算出するとし、慰謝料等についても等級ごとの金額を定めています。逸失利益、慰謝料、労働能力喪失率は、民事上の損害賠償だけの概念ではありません。

他方で、民事上の損害賠償では、慰謝料の額、労働能力喪失率、基礎収入、労働能力喪失期間、事故と後遺障害との因果関係、素因減額などが、個別事情に応じて判断されます。自賠責では施行令に定める保険金額を限度として支払基準により算定されるのに対し、民事上の賠償額は必ずしも併合等級だけで機械的に決まるものではありません。自賠責上の認定と民事訴訟上の判断は、区別して検討する必要があります。

金額の考え方については、後遺障害慰謝料が等級でどう変わるかを確認する後遺障害逸失利益の計算方法を確認するで整理しています。

医師は、症状、検査所見及び医学的事実を診断書等に記載します。等級そのものを医師が決めるわけではなく、認定は提出された資料に基づいて判断されるため、症状の内容と程度が資料に表れているかが重要になります。

複数の障害が残った事案では、どの障害がどの系列に属するのか、加重や準用の問題が含まれていないのかによって、確認すべき資料が変わります。申請前、認定結果の受領後、示談前のいずれの段階でも、資料と論点を整理したうえで見通しを検討できます。

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申請前・認定結果の受領後・示談前に確認したいこと

後遺障害の申請前に確認したい資料

  • 後遺障害診断書に、残っている症状が部位ごとに漏れなく記載されているか。
  • 画像資料(レントゲン、CT、MRI等)が、症状のある部位について撮影され、所見が記載されているか。
  • 関節の可動域測定が、患側と健側の双方について測定方法とともに記録されているか。
  • 神経学的検査(腱反射、徒手筋力テスト、知覚検査等)の結果が記録されているか。
  • めまいや平衡機能の症状がある場合、眼振検査その他の平衡機能検査を受け、結果が記録されているか。
  • 関節の不安定性がある場合、ストレス撮影等の所見、硬性補装具の処方の有無、処方時期、使用状況の記録があるか。
  • 事故前の既往歴について、診療録、画像、診断書など事故前の状態を示す資料を確認できるか。
  • 過去に後遺障害の認定を受けたことがある場合、その認定資料(等級、認定理由)が手元にあるか。

資料の集め方については、後遺障害診断書の作成前に確認したい資料と画像検査の注意点を見るで詳しく説明しています。

認定結果を受け取った後に確認したいこと

  • 認定された等級だけでなく、どの障害をどの系列として、どの理由で判断したのかが認定理由に記載されているか。
  • 申請した症状のうち評価されなかったものがあるか。あるとすればその理由は何か。
  • 併合の判断がされている場合、どの障害とどの障害を組み合わせているか。
  • 加重として処理されている場合、既存障害としてどの障害がどの程度で認定されているか。
  • 準用・相当として処理されている場合、どの等級に準じたとされているか。

結果に疑問がある場合の進め方は、後遺障害が非該当となった場合の異議申立ての判断材料を確認するで整理しています。

示談の前に確認したいこと

  • 提示された賠償額が、どの等級を前提にどの基準で算定されているか。
  • 後遺障害慰謝料と逸失利益が、それぞれ別項目として計上されているか。
  • 労働能力喪失率と喪失期間が、どのように設定されているか。
  • 既往症や素因を理由とする減額が主張されている場合、その根拠資料は何か。
  • 示談書の文言に、将来の再手術や症状悪化に関する留保が必要ではないか。

弁護士に相談するタイミング

複数の後遺障害が残った事案では、次の三つの時期が相談の区切りになります。いずれの段階でも、結果を保証するものではありませんが、資料、論点及び対応方針を整理しやすくなります。

  • 後遺障害の申請前 どの症状についてどの検査結果や画像所見が必要かを整理し、診断書の記載内容と資料の過不足を確認できます。
  • 認定結果を受け取った後 認定理由を読み解き、評価されなかった症状の有無や、併合・加重・準用の判断内容を確認したうえで、異議申立てその他の手続を検討するかを判断できます。
  • 示談の前 提示額の前提となる等級と算定基準を確認し、自賠責上の取扱いと民事上の賠償額の違いを踏まえて、見直す余地があるかを検討できます。

よくある質問(FAQ)

症状が二つ残れば、必ず等級は一つ上がりますか。
上がるとは限りません。個々の障害が単独で等級に該当するかを確認し、系列が異なるか、派生関係や評価の重複がないかを検討したうえで、施行令第2条第1項第3号のどの区分に当たるかが判断されます。
第14級が二つ認定されたら、第13級になりますか。
なりません。施行令第2条第1項第3号ニの「第13級以上」は第1級から第13級までを指し、第14級を含まないためです。この場合はホにより、重い方の等級に応ずる金額によります。
第12級と第14級が残った場合はどうなりますか。
第14級が「第13級以上」に含まれないため、繰上げは生じません。もっとも、第14級とされた症状について、画像所見や神経学的検査所見の内容によっては評価を見直す余地があることもあります。
同じ部位に複数の症状がある場合も併合されますか。
同一系列に属する障害は、異なる系列を前提とする併合の対象にはなりません。等級表に組合せ等級があるときはその等級により、該当する障害がないときは、それぞれの等級を定めたうえで併合の方法を用いて準用等級を定める取扱いがあります。
事故前から腰痛がありました。加重になりますか。
既往歴や傷病名があるだけでは加重にはなりません。事故前に等級表に定められた程度の障害が存し、事故により等級表上の障害が重くなったことが必要で、事故前の診療録、画像、診断書などによる確認を要します。
膝のぐらつきが残りました。等級表に項目がないようですが、評価されますか。
動揺関節は、労災の認定基準において関節の機能障害に準ずるものとして取り扱われています。下肢では、常に硬性補装具を必要とするものは第8級に、時々必要とするものは第10級に、重激な労働等の際以外には必要としないものは第12級に準ずるものとされています。ただし、装具を使用している事実だけで等級が認定されるわけではありません。
脳を損傷し、記憶障害と麻痺と頭痛が残りました。三つとも別々に等級が付きますか。
労災の認定基準は、脳や脊髄の損傷による障害が複数認められる場合には、末梢神経による障害も含めて総合的に評価し、神経系統の機能又は精神の障害の等級によるとしています。症状ごとに当然に併合されるわけではありません。
併合等級が上がれば、裁判での賠償額も自動的に上がりますか。
自賠責では、認定等級が保険金額、慰謝料等の額及び労働能力喪失率に直接関係します。他方、民事上の慰謝料や逸失利益は、基礎収入、労働能力喪失率、喪失期間、因果関係、素因減額などの個別事情を踏まえて判断されるため、併合等級だけで機械的に決まるものではありません。

まとめ

  • 症状や傷病名が複数あるだけでは、複数の等級が個別に認定されるとは限りません。まず個々の障害の等級該当性を確認します。
  • 併合を検討する前に、障害系列の異同、みなし系列、派生関係、評価の重複、組合せ等級の有無を確認します。
  • 繰上げの区分は施行令第2条第1項第3号ロからヘまでに定められており、第14級は繰上げの対象に含まれません。
  • 事故前から同一部位に等級表に定める程度の障害があり、事故により重くなった場合は、加重の問題になります。
  • 等級表に項目のない障害は、別表の備考にいう「相当」と、労災の認定基準にいう「準用」の考え方で評価されます。
  • 自賠責上の等級・保険金額と、民事上の損害賠償額は、区別して検討する必要があります。
  • 次の行動として、後遺障害診断書、画像資料、可動域測定、神経学的検査、平衡機能検査、装具の記録、事故前の資料、過去の認定資料の有無を確認することをおすすめします。

複数の後遺障害が残った事案では、資料の内容によって確認すべき論点が変わります。当事務所では、交通事故について初回相談を無料で承っています(事前予約が必要です)。申請前、認定結果の受領後、示談書に署名する前のいずれの段階でも、資料と論点を整理したうえで見通しを検討できます。

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監修者・執筆者

弁護士・公認会計士 藤井貴之

弁護士法人ひょうご支所神戸みらい法律会計事務所(通称 神戸みらい法律会計事務所)代表弁護士・公認会計士。兵庫県弁護士会所属、日本公認会計士協会兵庫会所属。交通事故、相続、企業法務、労働問題、損害賠償など、個人・法人双方の法律相談に対応しています。

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参考資料

本記事は、交通事故で複数の後遺障害が残った場合の等級の考え方に関する一般的な解説です。実際の等級、保険金額及び賠償額は、受傷内容、治療経過、検査所見、既往症の有無、過失割合、証拠関係などにより異なり、個別事情により結論は異なります。具体的な事案については、資料を確認したうえで弁護士にご相談ください。

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