交通事故で顔や眼を強く打ったあと、片方の瞳孔が開いたままになっている、左右の瞳孔の大きさが違う、光が異常にまぶしい、近くの文字が見えにくいといった症状が残ることがあります。眼科では外傷性散瞳と説明されたものの、後遺障害等級表を見ても「外傷性散瞳」という項目が見当たらず、後遺障害として扱ってもらえるのか分からない、というご相談があります。
結論として、外傷性散瞳は自動車損害賠償保障法施行令の別表第二に名称が掲げられていません。しかし、それは評価する基準がないという意味ではありません。労災の認定基準には、一眼・両眼それぞれの具体的な準用等級が明記されています。もっとも、まぶしさを訴えれば当然に等級が認められるものでもなく、瞳孔の対光反射に関する医学的所見が要件の中心に置かれています。
この記事で分かること
- 外傷性散瞳が等級表に名称がなくても評価される仕組み
- 一眼・両眼の準用等級(第12級・第14級・第11級)と要件
- 認定基準がいう「散瞳(病的)」と「羞明」の意味
- 左右の瞳孔差だけでは外傷性散瞳といえない理由と鑑別の視点
- 視力障害・調節機能障害が併存する場合の等級の決まり方
- 後遺障害診断書の作成前・申請前・示談前に確認したい資料
眼の症状が残っている方へ
まぶしさや瞳孔の症状は、診断書に反映されないまま手続が進むことがあります。
外傷性散瞳は、瞳孔の対光反射に関する所見が資料に残っているかどうかが要点になります。神戸みらい法律会計事務所では、交通事故の後遺障害申請、保険会社対応、示談交渉についてご相談を受け付けています。診断書や検査結果を確認したうえで、今後の対応方針を整理します。
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外傷性散瞳の後遺障害でまず確認したい結論
最初に押さえておきたいのは三点です。等級表に名称がないことと評価基準がないことは別であること。要件の中心はまぶしさの訴えではなく瞳孔の対光反射に関する所見であること。視力障害や調節機能障害が併存する場合は、それぞれを別に評価したうえで等級が定められることです。
| 確認したい点 | 結論の方向性 |
|---|---|
| 等級表への直接記載 | 自賠法施行令別表第二の各号に「外傷性散瞳」という名称の記載はありません。 |
| 評価の根拠 | 別表第二の備考六が「相当」の取扱いを定め、自賠責の等級認定は原則として労災の認定基準に準じます。その認定基準が外傷性散瞳の準用等級を定めています。 |
| 一眼の場合 | 要件に応じて第12級又は第14級を準用する取扱いが示されています。 |
| 両眼の場合 | 要件に応じて第11級又は第12級を準用する取扱いが示されています。 |
| 中心となる要件 | 瞳孔の対光反射がどの程度障害されているかです。まぶしさの訴えのみで決まるものではありません。 |
| 視力・調節機能障害の併存 | 併合の方法を用いて準用等級を定めるとされています。単純に等級が上がるわけではありません。 |
| 準備する資料 | 受傷状況、初診時の記録、瞳孔径と対光反射の所見、細隙灯顕微鏡検査の所見、視力・調節力等の検査結果、就労上の支障の記録などです。 |
外傷性散瞳とは|瞳孔が開いたままになる仕組み
瞳孔と対光反射の働き
瞳孔は、茶色く見える虹彩の中心にある開口部です。虹彩には瞳孔を小さくする瞳孔括約筋と大きくする瞳孔散大筋があり、入ってくる光の量に応じて瞳孔の大きさが変わります。明るい光を当てると瞳孔が小さくなる反応を対光反射といい、診察では、光を当てた側の眼の反応(直接対光反射)と、反対側の眼の反応(間接対光反射)を分けて確認します。
外傷によって何が起きるか
眼球への鈍い外力によって虹彩や瞳孔括約筋が損傷すると、瞳孔が開いたままになったり、光に対する反応が鈍くなったりすることがあります。瞳孔が十分に縮まらず、眼に入る光の量を調整しにくくなるため、強い光のもとでのまぶしさ、かすみ、近くを見るときの見えにくさといった症状につながることがあります。
眼を打った直後の対応について
視力の低下、まぶたの垂れ下がり、ものが二重に見える、強い眼の痛みや頭痛などがある場合は、早めに眼科を受診してください。医療機関の資料では、眼球破裂や眼窩吹き抜け骨折が疑われる場合や視力低下がある場合には速やかな眼科診療が必要とされ、まぶたの腫れなどのために受傷直後には視力障害を自覚できないことがあるとされています。
診断、検査及び治療方針は医師が判断する事項です。本記事は法律上の評価の枠組みを説明するものであり、医学的な助言に代わるものではありません。
認定基準がいう「散瞳(病的)」と「羞明」の意味
外傷性散瞳の評価を理解するうえで重要なのは、認定基準が用語を自ら定義している点です。厚生労働省の「眼の障害に関する障害等級認定基準」は、注として次のように定めています。
認定基準における定義
散瞳(病的)とは、瞳孔の直径が開大して対光反応が消失又は減弱するものをいい、羞明とは、俗にいう「まぶしい」ことをいう。
この定義から二つのことが分かります。ひとつは、評価の対象となる散瞳は、瞳孔が開いているというだけでは足りず、対光反応が消失又は減弱していることを含む概念だということです。もうひとつは、羞明とは日常語の「まぶしい」を指すものであって、それ自体に特別な医学的定義が置かれているわけではないということです。
「まぶしい」という訴えだけでは足りません
羞明は認定基準の要件の一部ですが、羞明だけで準用等級が導かれる構造にはなっていません。瞳孔径の開大と対光反応の消失又は減弱という所見が診療録に残っているかどうかが、実務上の分かれ目になります。まぶしさを強く訴えているのに所見の記載が乏しい、という状態が最も説明に苦労する場面です。
「左右の瞳孔の大きさが違う」だけでは外傷性散瞳とはいえません
左右の瞳孔の大きさが違う状態は瞳孔不同と呼ばれますが、瞳孔不同そのものは外傷に限られません。標準的な医学情報では、瞳孔不同の原因として次のようなものが挙げられており、外傷性散瞳はそのひとつにすぎません。
| 原因 | 示唆する所見 |
|---|---|
| 生理的瞳孔不同 | 慢性的で症状や関連する所見がなく、左右の瞳孔径の差が1ミリメートル未満。対光反射は正常。およそ2割の人にみられるとされます。 |
| 外傷性散瞳 | 外傷の病歴又は外傷の所見 |
| 第三脳神経(動眼神経)麻痺 | 外眼筋の運動障害、まぶたの垂れ下がり(眼瞼下垂) |
| ホルネル症候群 | 眼瞼下垂、縮瞳、無汗症、収縮に対する拡張の遅れ |
| アディ緊張性瞳孔 | 瞳孔が光よりも調節によりよく反応する。拡張が収縮に遅れてみられる |
| 薬剤性 | 薬剤の使用歴又は曝露歴(散瞳薬、調節麻痺薬などの点眼を含む) |
| 手術後の虹彩機能障害 | 眼内手術の既往 |
| 先天性虹彩欠損 | 眼球の異常、慢性の経過 |
したがって、左右差があるという事実だけを根拠に外傷性散瞳と決めつけることはできません。事故との時間的関係、初診時の所見、既往症、手術歴、点眼・服薬歴、眼球運動やまぶたの状態などを踏まえた医師の鑑別が前提となります。また、診察の際に散瞳薬を点眼したあとに測定された瞳孔の所見は、外傷そのものによる所見とは区別して確認する必要があります。
明るいところと暗いところの両方を記録する意味
瞳孔径の記録は、明所と暗所の両方があると評価に役立ちます。標準的な医学情報では、左右の瞳孔径の差が暗いところで大きくなる場合は小さい方の瞳孔に異常があり、明るいところで大きくなる場合は大きい方の瞳孔に異常があるとされています。外傷性散瞳では、光を当てても瞳孔が十分に縮まらないことが問題となるため、明所での左右差がどうであったかが意味を持ちます。片方の明るさでの値しか記録されていない診療録では、どちらの眼に異常があるのかという基本的な点すら読み取りにくくなります。
等級表に名称がなくても評価される理由
外傷性散瞳が評価される根拠は、次の三段の関係にあります。
| 段階 | 根拠 | 内容 |
|---|---|---|
| 第一段階 | 自賠法施行令別表第二の備考六 | 「各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であつて、各等級の後遺障害に相当するものは、当該等級の後遺障害とする」と定めています。 |
| 第二段階 | 自賠責保険の支払基準 | 後遺障害による損害について「等級の認定は、原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う」と定めています。 |
| 第三段階 | 労災則第14条第4項と眼の認定基準 | 同項は「別表第一に掲げるもの以外の身体障害については、その障害の程度に応じ、同表に掲げる身体障害に準じてその障害等級を定める」と定めます。これを受けた眼の認定基準が、外傷性散瞳の準用等級を具体的に示しています。 |
眼の認定基準は、準用の類型を二つに分けています。ひとつは「いずれの系列にも属さないもの」で、ここに掲げられているのが外傷性散瞳です。もうひとつは「併合の方法を用いて準用等級を定めるもの」で、同一の眼球に系列の異なる二以上の障害が存する場合がこれに当たります。
なお、「相当」は自賠法施行令の備考に由来する用語、「準用」は労災の認定基準に由来する用語であり、複数の障害をまとめる「併合」や既存障害がある場合の「加重」とも別の概念です。これらの一般的な違いと確認手順については、併合・加重・準用の違いと確認手順を確認するをご覧ください。
一眼・両眼の準用等級|第12級・第14級・第11級
眼の認定基準は、外傷性散瞳について次のとおり定めています。要件は、対光反射の障害の程度、羞明の程度、労働への支障の程度という三つの要素の組合せです。
| 区分 | 認定基準が定める要件 | 準用等級 |
|---|---|---|
| 一眼(ア) | 1眼の瞳孔の対光反射が著しく障害され、著明な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすもの | 第12級を準用 |
| 一眼(イ) | 1眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすもの | 第14級を準用 |
| 両眼(ウ) | 両眼ともアに該当する場合 | 第11級を準用 |
| 両眼(ウ) | 両眼ともイに該当する場合 | 第12級を準用 |
存在しない号数を付けないこと
外傷性散瞳には、等級表上の固有の号数がありません。したがって、外傷性散瞳について「第12級第1号」「第14級第9号」と表記することは誤りです。別表第二の第12級第1号は「一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの」であって調節機能障害等のための号であり、第14級第9号は「局部に神経症状を残すもの」であって眼の障害の号ではありません。そもそも第14級には眼球の障害に関する号が置かれていません。
書面や照会文でこれらの号数を用いると、争点が別の障害にすり替わるおそれがあります。自賠責の手続では「第12級相当」「第14級相当」、労災の認定基準を説明する場面では「準用第12級」「準用第14級」と書き分けるのが正確です。
第12級と第14級を分ける確認ポイント
認定基準は、対光反射について「著しく障害され」と「あるが不十分」、羞明について「著明な羞明」と「羞明」、労働への支障について「著しく支障をきたす」と「支障をきたす」という段階を設けています。もっとも、これらを区別するための公表された数値基準は確認できません。したがって、次の各点について、診療録及び検査結果と整合する事実を積み上げて説明することが実際上の課題となります。
| 確認項目 | 確認すること | 注意点 |
|---|---|---|
| 対光反射の程度 | 直接・間接の対光反射が、消失しているのか、減弱しているのか、保たれているのかが記載されているか | 散瞳薬点眼後の所見と区別して確認する必要があります。 |
| 瞳孔径と形状 | 明所・暗所の左右の瞳孔径、瞳孔の形の変化が記録されているか | 数値の記録は有用ですが、法令や認定基準が数値の閾値を定めているわけではありません。 |
| 羞明の内容 | どのような環境で、どの程度のまぶしさが生じ、どのように対処しているか | 「まぶしい」の一語ではなく、場面と対処が分かる記載が必要です。 |
| 労働・生活上の支障 | 職務内容のどの部分に、どのような制限が生じているか | 日常生活上の不便と、基準にいう「労働への支障」は同一ではありません。 |
| 因果関係と既往 | 受傷直後から症状固定までの所見の推移が追えるか。事故前の眼科受診歴・手術歴・点眼歴が確認できるか | 事故後しばらくしてからの初診は説明の負担が増します。既存障害がある場合は加重の問題が生じます。 |
労働への支障をどう記録するか
就労を継続していることだけで著しい支障が当然に否定されるわけではなく、休職や退職をしていることだけで重い等級になるわけでもありません。問題となるのは、職務内容との関係で具体的にどのような制限が生じているかです。屋外作業、強い照明下での作業、画面作業の継続時間、書類や細かい部品の確認、接客、運転などについて、どの場面でどのような支障が生じ、休憩、照明の調整、遮光眼鏡などの対処をどの程度必要としているかを、日付・環境・支障の内容とともに記録しておくことが考えられます。なお、認定を目的として症状を強調した記録は、診療録や検査結果との不整合を生み、かえって説明を困難にします。証拠の残し方については後遺障害の証拠の集め方を確認するもご覧ください。
申請前に確認したい検査・診療記録
どの検査を行うかは医師が判断する事項です。ここでは、後遺障害の資料としてどのような意味を持ち得るかという観点から整理します。眼外傷の診察では、一般に、視力検査、瞳孔の外観と反応の確認、眼球運動の範囲、対面視野検査、細隙灯顕微鏡検査、眼底検査、眼圧測定などが行われ、必要に応じて画像検査が実施されるとされています。
| 資料・検査 | 資料としての意味 |
|---|---|
| 初診時の診療録・救急記録 | 受傷機転と眼部への外力、受傷直後の所見を示します。因果関係の出発点となる資料です。 |
| 瞳孔径・瞳孔形状の記録 | 明所・暗所での左右差を示します。経時的な記録があると症状の推移を説明しやすくなります。 |
| 対光反射(直接・間接)の記録 | 準用基準の中心的要件に直接対応する所見です。 |
| 細隙灯顕微鏡検査の所見 | 虹彩や前眼部の状態を示します。強膜と前眼部の詳細な検査には細隙灯が最も適しているとされています。 |
| 視力検査(裸眼・矯正) | 視力障害が併存するかどうかの判断資料です。 |
| 調節力の検査 | 調節機能障害が併存するかどうかの判断資料です。 |
| 視野・眼球運動・複視の検査、眼圧・眼底の所見 | 他の眼の障害や、外傷後に生じ得る病態が併存するかどうかの判断資料です。 |
| 後遺障害診断書 | 症状固定時点の所見と残存症状をまとめる中心的な書面です。 |
| 就労状況が分かる資料 | 業務内容、配置転換、休業、職場の配慮などを示します。 |
外傷後には、前房出血、外傷性虹彩炎、隅角後退、外傷性白内障、続発緑内障、網膜や硝子体の病態など、時間をおいて問題となり得るものがあるとされています。有無や経過観察の要否は医師の判断によりますが、併存する障害があれば、それぞれ別の評価軸で検討されることになります。診断書に何を記載してもらうかの準備については、後遺障害診断書の作成前に確認したい資料を見るもご参照ください。
視力障害・調節機能障害が併存する場合
調節機能障害の要件
外傷性散瞳とあわせて問題になりやすいのが、ピント調節の機能の障害です。認定基準は、「眼球に著しい調節機能障害を残すもの」とは調節力が通常の場合の2分の1以下に減じたものをいうとし、両眼について第11級の1、一眼について第12級の1としています。判定の方法は、被災した眼が一眼のみで他眼の調節力に異常がない場合は他眼との比較により、両眼が被災した場合などは年齢別の調節力表との比較により行うとされています。
対象とならない場合が定められています
他眼との比較による場合、被災していない眼の調節力が1.5ジオプトリー以下であるときは、実質的な調節の機能は失われていると認められるとして、障害補償の対象とならないとされています。また、年齢別の調節力表との比較による場合、55歳以上であるときは障害補償の対象とならないとされています。年齢は治ゆ時における年齢とされています。
併合の方法により準用等級を定めます
認定基準は、外傷性散瞳と視力障害又は調節機能障害が存する場合について、「併合の方法を用いて準用等級を定めること」としています。ここでいう併合の方法とは、重い方の等級を基礎として、一定の要件を満たす場合に等級を繰り上げる取扱いです。
第14級は繰上げの対象になりません
自賠法施行令第2条第1項第3号は、繰上げの対象を「第13級以上の等級に該当する後遺障害が二以上存する場合」などと定めています。第14級はここに含まれません。したがって、外傷性散瞳が準用第14級、別の障害が第12級という場合、繰上げは生じず、重い方の第12級が結論となります。「第14級と第12級を併せて第11級になる」という理解は誤りです。
厚生労働省の公開決定事案にみる評価の実例
厚生労働省が公開している労災保険の決定事案の中に、外傷性散瞳と調節機能障害の評価が示されたものがあります。左眼の外傷性散瞳及び左眼の外傷性白内障が問題となった事案で、外傷性散瞳については「瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすもの」として準用第14級に、調節機能障害については「一眼の眼球に著しい調節機能障害を残すもの」すなわち第12級の1に相当するとされ、併合の方法により、最終的に準用第12級に該当するとされています。労働基準監督署長が準用第14級として行った処分は妥当でないとして取り消されました。
この資料は、労働者災害補償保険審査官による行政上の決定であって、裁判例ではなく、一般的な拘束力を持つ先例でもありません。事案固有の判断です。また、この事案に現れる瞳孔径や調節力の数値は、法令や認定基準が定めた認定の閾値ではありません。参考になるのは、外傷性散瞳と調節機能障害を別々の評価軸で確認したうえで併合の方法により準用等級を定めるという枠組みと、当初の等級が資料の評価によって変わり得るという点です。
事故前から眼に障害があった場合
認定基準は、眼については両眼球を同一の部位として取り扱うとしています。そのため、事故前から一方の眼に障害があった方が事故により他方の眼にも障害を負った場合などには、加重の問題が生じ、現在の障害の等級に応ずる額から既存の障害の等級に応ずる額を差し引いて算定されます。事故前の眼科の受診歴や診断内容の確認が必要になる場面です。
視野障害・複視などが併存する場合
視野障害、複視、眼球運動障害には、それぞれ別の認定基準が定められています。視力の低下が問題になる場合は交通事故で視力が低下したときの検査と等級の整理を見るを、ものが二重に見える症状がある場合は複視の後遺障害と眼球運動障害の等級を確認するをご覧ください。
申請前・示談前に確認したい方へ
どの所見がどの要件に対応するのかを、資料に即して整理できます。
外傷性散瞳は、併存する障害の有無によって結論が変わることがあります。診断書、検査結果、認定結果の理由書などをもとに、認定基準との対応関係と今後の方針を確認しましょう。
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よく問題になるケース
- 矯正視力は保たれているが、まぶしさと対光反射の異常が残っている。 外傷性散瞳の評価軸は矯正視力の低下ではありません。視力が保たれていても、対光反射、羞明、労働への支障という別の枠組みで検討されます。
- 診療録に「まぶしい」との訴えはあるが、対光反射の所見が乏しい。 準用基準の中心は対光反射の所見です。症状固定前であれば、実施済みの検査結果が診断書に反映されているかを確認することが考えられます。
- 事故後しばらくしてから眼科を受診した。 受傷から初診までの間隔は因果関係の説明に影響します。他科の診療録や救急記録に眼の症状の記載がないかを確認します。
- 事故前から瞳孔不同、眼疾患、手術歴、点眼歴がある。 既存の状態と事故による変化を区別する必要があり、加重の問題が生じることもあります。
- 遮光眼鏡などで一部軽減するが、業務上の支障は残っている。 補助具の使用状況と、それでも残る制限の内容を整理する必要があります。
- 視力低下、調節力の低下、複視などを伴っている。 それぞれ別の評価軸で確認したうえで、併合の方法による整理が必要です。
- 非該当、又は想定より低い等級となった。 認定結果の理由書を読み、どの要件についてどの資料が不足していると判断されたのかを特定することが出発点です。非該当となった場合の異議申立ての判断材料を見るもご参照ください。
- 保険会社から症状固定や示談を促されている。 示談が成立すると、原則として後から追加請求することは困難になります。症状固定と言われたときの確認点を見るもあわせてご確認ください。
後遺障害診断書・申請・示談前のチェックリスト
署名・提出の前に確認したい項目
- 事故態様と、眼部・顔面・頭部への外力の内容が分かる資料がそろっているか
- 初診時の診療録・救急記録に、眼の症状や所見の記載があるか
- 明所・暗所それぞれの瞳孔径と、対光反射の所見(消失・減弱・正常の別)が記載されているか
- 視力、調節力、視野、眼球運動、複視の検査結果を取得しているか
- 受傷直後から症状固定までの経過が、資料上たどれるか
- 事故前の眼科受診歴、既往症、手術歴、点眼・服薬歴を確認したか
- 羞明について、場面・時間帯・環境・対処が具体的に分かる記録があるか
- 職務内容と、生じている具体的な制限、職場の配慮の内容が分かる資料があるか
- 後遺障害診断書の記載が、診療録及び検査結果と整合しているか
- 認定結果を受け取っている場合、理由書のどの部分が争点となるかを特定したか
- 示談案・損害計算書の内容と、後遺障害の取扱いを確認したか
後遺障害診断書は、症状固定時点の医学的所見を医師が記載する書面です。医師に法的な結論を書いてもらう、希望どおりの所見を記載してもらうといった対応は適切ではありません。確認すべきなのは、実際に行われた検査の結果と診療録上の所見が、漏れなく正確に反映されているかという点です。
認定された後に問題となる損害
後遺障害の等級が認定されると、後遺障害慰謝料や逸失利益が問題となります。もっとも、等級が決まればこれらの金額が自動的に決まるわけではありません。特に逸失利益については、職種と業務内容、片眼か両眼か、残存する症状の内容、遮光眼鏡等による軽減の可能性、実際の就労状況、収入への影響など、個別の事情を踏まえた検討が必要であり、労働能力の喪失の程度や喪失期間も資料に基づいて判断されます。なお、自賠責保険の等級ごとの支払限度額は支払の上限を画するものであって、受け取ることのできる額をあらかじめ示すものではありません。
自賠責・労災・民事賠償の関係
この記事では、自賠責の等級認定の物差しとして労災の認定基準を説明しました。もっとも、自賠責保険・共済における後遺障害等級の認定、労災保険における障害等級認定と不服申立て、加害者や任意保険会社に対する民事損害賠償は、それぞれ別の制度であり、判断主体も手続も異なります。民事上の損害額の判断は、自賠責や労災の認定結果に事実上影響を受けますが、それに拘束されるものではありません。
通勤中や業務中の交通事故では、労災保険と自賠責保険の双方が問題となることがあります。労災の認定に不服がある場合の手続については、労災の後遺障害等級に納得できない場合の進め方を見るをご覧ください。
弁護士に相談するタイミング
次のような場面では、資料を確認したうえで方針を整理しておくことが有用です。相談によって等級認定や増額が保証されるものではありませんが、資料の不足、評価の枠組み、併存障害の整理、申請方法の選択、示談の可否といった判断材料を整理しやすくなります。
- 後遺障害診断書の作成を依頼する前。どの所見・検査結果が資料として必要かを整理する段階です。
- 申請方法を決める前。事前認定と被害者請求の違いを確認するもご参照ください。
- 非該当、又は想定より低い等級の通知を受け取った後。理由書の分析が出発点になります。
- 保険会社から示談案の提示を受け、署名を求められている段階。
- 労災保険と自賠責保険の双方が関係する事故の場合。
よくある質問
外傷性散瞳は後遺障害等級表に載っていますか。
自賠法施行令別表第二の各号に「外傷性散瞳」という名称の記載はありません。もっとも、別表第二の備考六には各等級の後遺障害に相当するものを当該等級の後遺障害とする旨の定めがあり、労災の認定基準には外傷性散瞳の準用等級が明記されています。名称がないことと評価基準がないことは別の問題です。
片目の外傷性散瞳は何級になりますか。
認定基準では、瞳孔の対光反射が著しく障害され、著明な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすものについて第12級を、対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすものについて第14級を準用するとされています。どちらに当たるかは、対光反射の所見、羞明の内容、労働への支障の程度その他の資料により判断されるため、個別事情により結論は異なります。
両目に外傷性散瞳が残った場合はどうなりますか。
両眼がいずれも重い方の要件に当たる場合は第11級を、いずれも軽い方の要件に当たる場合は第12級を準用するとされています。片眼ずつ程度が異なる場合の取扱いは、資料を確認したうえで判断する必要があります。
視力が下がっていなくても後遺障害になることがありますか。
外傷性散瞳の評価軸は矯正視力の低下ではありません。視力が保たれていても、瞳孔の対光反射の障害、羞明、労働への支障という要件に照らして検討されます。ただし、これらを裏付ける医学的所見が資料上確認できることが前提です。
「まぶしい」と訴えていれば認められますか。
羞明は要件の一部にすぎません。認定基準は、散瞳(病的)を瞳孔の直径が開大して対光反応が消失又は減弱するものと定義しており、瞳孔径と対光反応に関する所見が確認できることが前提となります。まぶしさの訴えのみで準用等級が導かれる構造にはなっていません。
調節機能障害や視力障害もある場合は併合されますか。
認定基準は、外傷性散瞳と視力障害又は調節機能障害が存する場合は併合の方法を用いて準用等級を定めるとしています。ただし、第14級は繰上げの対象とならないため、準用第14級と第12級であれば繰上げは生じず、第12級が結論となります。機械的に等級が上がるものではありません。
まぶしさや涙目だけでも同じ等級になりますか。
同じではありません。外傷性散瞳の準用基準は、瞳孔径の開大と対光反応の消失又は減弱を前提とするものです。対光反射の異常が確認されていない一般的な羞明や、流涙(涙目)に、この基準をそのまま当てはめることはできません。原因や所見に応じて、別の枠組みで検討する必要があります。
まとめ
- 外傷性散瞳は別表第二の各号に名称の記載がありませんが、備考六の「相当」の定めと、自賠責が労災の認定基準に準じることを通じて、評価の枠組みがあります。
- 認定基準は、一眼について第12級・第14級、両眼について第11級・第12級の準用を定めています。
- 認定基準は散瞳(病的)を「瞳孔の直径が開大して対光反応が消失又は減弱するもの」と定義しており、まぶしさの訴えだけで等級が決まる構造にはなっていません。
- 左右の瞳孔差は外傷以外でも生じます。明所・暗所の瞳孔径、対光反射、虹彩の所見、既往歴の確認が前提となります。
- 視力障害・調節機能障害が併存する場合は併合の方法により準用等級が定められます。第14級は繰上げの対象になりません。
- 次の行動は、対光反射と瞳孔所見の記載の確認、併存障害の検査結果の取得、就労上の支障の記録、診断書の記載内容の確認、申請方法の検討です。診断、検査及び治療方針は医師が判断する事項であり、法的評価と医学的判断は切り分けて検討する必要があります。
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監修者・執筆者
弁護士・公認会計士 藤井貴之
兵庫県弁護士会所属。神戸みらい法律会計事務所の代表弁護士・公認会計士として、交通事故、相続、企業法務、労働問題、損害賠償など、個人・法人双方の法律相談に対応しています。
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参考資料
- e-GOV法令検索「自動車損害賠償保障法施行令」(第2条、別表第二及び同備考)
- e-GOV法令検索「労働者災害補償保険法施行規則」(第14条)
- 国土交通省「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」
- 国土交通省「自賠責保険・共済の限度額と補償内容」
- 厚生労働省「眼の障害に関する障害等級認定基準について」(平成16年6月4日基発第0604004号)
- 厚生労働省「障害等級認定基準について」(昭和50年9月30日基発第565号)
- 厚生労働省 公開決定事案(外傷性散瞳及び調節機能障害に関する労働者災害補償保険審査官の決定)
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「瞳孔不同」
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「眼外傷の概要」
- 神戸みらい法律会計事務所「交通事故」
- 神戸みらい法律会計事務所「事務所案内・アクセス」
本記事は、外傷性散瞳の後遺障害に関する一般的な解説です。実際の等級該当性や請求の可否は、受傷内容、診療録及び検査結果、症状の経過、就労状況、事故との因果関係、証拠関係などにより異なります。診断、検査及び治療方針は医師が判断する事項です。具体的な事案については、資料を確認したうえで弁護士にご相談ください。

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