外傷性頭痛の後遺障害|第12級13号・第14級9号と記録の残し方 |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|

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外傷性頭痛の後遺障害|第12級13号・第14級9号と記録の残し方

交通事故のあとから頭痛が続いている。仕事中に集中できない、光や音がつらい、市販薬を飲む回数が増えた。それなのに検査では「異常なし」と言われ、保険会社からは治療の終了時期の話が出てくる。事故後の頭痛については、こうしたご相談を多くいただきます。

結論から申し上げると、事故後に残った頭痛が後遺障害として評価される場合はあります。もっとも、「外傷性頭痛」「外傷後頭痛」という診断名に対応する後遺障害等級が用意されているわけではありません。自賠責保険の等級表は診断名ではなく、残っている神経症状の内容と程度によって区分されており、頭痛の部位、性状、強度、頻度、持続時間、日内変動といった具体像と、診療録や検査資料との整合が確認されます。

この記事では、頭部外傷による頭痛とむち打ちによる頭痛の区別、第12級13号と第14級9号を分ける考え方、因果関係で問題になりやすい事情、そして診察のたびに積み重ねておきたい記録の残し方を整理します。実際の結論は、事故態様、症状の経過、医療記録の内容その他の個別事情により異なります。

先に医療機関への相談を検討していただきたい場面があります。消防庁の「救急車を上手に使いましょう」は、ためらわずに救急車を呼んでほしい症状として、頭の症状に「突然の激しい頭痛」「突然の高熱」「支えなしで立てないぐらい急にふらつく」を挙げています。また、「意識がない(返事がない)またはおかしい(もうろうとしている)」「けいれんが止まらない」「けいれんが止まっても、意識がもどらない」「突然のしびれ」「突然、片方の腕や足に力が入らなくなる」「ろれつがまわりにくく、うまく話せない」「冷や汗を伴うような強い吐き気」も挙げられています。事故後にこうした症状がある場合は、後遺障害や示談の検討よりも先に、救急要請又は医療機関への相談をご検討ください。この記事は、症状を自己判断するための資料ではありません。

この記事で分かること

  • 「外傷性頭痛」という診断名と、自賠責保険の後遺障害等級との関係
  • 頭部外傷による頭痛と、むち打ちによる頭痛の医学的な区別
  • 第12級13号と第14級9号で確認される事情の違いと、労災保険の号数との混同を避ける方法
  • 厚生労働省の通知が挙げる、頭痛の七つの評価要素
  • 頭痛記録に何を、どのように書き残すか(記入例つき)
  • 画像に異常がない場合、頭部を打っていない場合、既往の頭痛がある場合の考え方
  • 後遺障害診断書の作成前、申請前、示談前に確認しておきたい資料と期限

治療を続けている段階や、後遺障害診断書の作成を控えている段階では、症状の記録と診療録の内容を先に整理しておくと、その後の手続の見通しを立てやすくなります。資料を拝見したうえで、確認しておくべき事項を整理いたします。

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交通事故後の頭痛で最初に確認したい結論

頭痛は、本人以外には見えにくい症状です。だからこそ単純な理解が広がりやすい分野でもあります。まず全体像を整理します。

交通事故後の頭痛と後遺障害等級の全体像
読者が知りたいこと 実際に確認されること
この頭痛は等級になるのか 自動車損害賠償保障法施行令別表第二に「外傷性頭痛」という項目はありません。残存する神経症状の内容と程度によって、該当する号が検討されます。
何を見て判断されるのか 厚生労働省の通知は、頭痛の型を問わず、疼痛の部位、性状、強度、頻度、持続時間、日内変動及び原因となる他覚的所見から、労働又は日常生活上の支障の程度を把握するとしています。
画像や通院期間で決まるのか いずれも資料の一部です。画像所見の有無だけでも、通院期間だけでも等級は決まりません。
頭痛日記は役に立つのか 補足資料としては意味があります。ただし、診療録、検査資料、勤務資料と整合していることが前提です。

この記事で繰り返し出てくる考え方は一つです。頭痛は本人にしか分からない症状であるからこそ、同時期に、同じ形式で、正確に記録された資料が意味を持ちます。後からまとめて作った記録や、診療録と食い違う記録は、かえって説明を難しくします。

外傷後頭痛とは|医学上の分類と、等級表の言葉は別です

「外傷性頭痛」という等級はありません

自賠責保険の後遺障害等級は、自動車損害賠償保障法施行令別表第二に定められています。同表に「外傷性頭痛」「外傷後頭痛」という項目はありません。頭痛が残っている場合に問題となるのは、残存する神経症状として第12級13号又は第14級9号に当たるか、症状が重い場合に第9級10号などの検討が必要になるか、という点です。

頭部外傷による頭痛と、むち打ちによる頭痛は分けて整理します

国際頭痛学会の国際頭痛分類第3版(ICHD-3)は、第5章「頭頸部外傷・傷害による頭痛」で、頭部外傷によるものとむち打ちによるものを別項目として立て、それぞれを急性と持続性に分けています。

ICHD-3第5章における主な区分
区分 対象 期間の扱い
5.1 頭部外傷による急性頭痛(中等度から重度の外傷によるもの、軽度の外傷によるものに細分) 発症から3か月以内
5.2 頭部外傷による持続性頭痛 発症から3か月を超えて持続
5.3 むち打ちによる急性頭痛 発症から3か月以内
5.4 むち打ちによる持続性頭痛 発症から3か月を超えて持続

発症時期については、頭部外傷による頭痛は、外傷、外傷後の意識回復、又は頭痛を感じることを妨げていた薬剤の中止のいずれかの後、7日以内に発症したと報告されることが求められます。むち打ちによる頭痛は、むち打ちの後7日以内の発症です。そして、むち打ちは「頭部の急激で十分に制御されない加速・減速運動により、頸部の屈曲・伸展が生じるもの」と定義されています。したがって、頭部を直接打っていない場合でも、むち打ちによる頭痛として医学的な検討の対象になり得ます。この場合、受傷の時点で頸部の痛み又は頭痛を伴っていたことが要件に含まれている点にも注意が必要です。

ICHD-3の「7日」「3か月」は、医学的な診断分類のための基準です。受診の期限でも、症状固定の期限でも、後遺障害申請の期限でも、消滅時効でもありません。また、外傷から頭痛の発症までの間隔が7日を超える場合について、ICHD-3は付録に遅発性の基準を置いています。7日を過ぎたことだけで、医学的にも法律上も一律に否定されるという関係にはありません。他方で、事故後に頭痛が出たという時間的な前後関係だけで、事故との法律上の因果関係が証明されるわけでもありません。

むち打ちの後遺障害第14級9号の解説を読む

受傷したときの記録が、後になって意味を持つ理由

ICHD-3は、頭部外傷による頭痛を外傷の程度によって細分しています。程度を分ける要素は、いずれも受傷直後にしか記録できない事実です。

ICHD-3が頭部外傷の程度を分ける要素
区分 要素
中等度から重度 次のいずれかを伴うもの。30分を超える意識消失/グラスゴー・コーマ・スケール(GCS)が13未満/24時間を超えて続く外傷後健忘/24時間を超える意識水準の変化/頭蓋骨骨折、頭蓋内出血、脳挫傷など外傷性の頭部損傷を示す画像所見
軽度 上記のいずれも伴わず、かつ、次のいずれかがあるもの。一過性の錯乱、失見当識又は意識障害/頭部外傷の直前若しくは直後の出来事に関する記憶の欠損/悪心、嘔吐、視覚障害、めまい・回転感、歩行の失調、記憶又は集中の障害のうち2つ以上

外傷後健忘の持続時間は、ICHD-3において「頭部外傷から、出来事を通常どおり継続して思い出せるようになるまでの時間」と定義されています。「気がついたら救急車の中だった」「その日の夕方までの記憶があいまいである」といった状態は、記録に残すべき事実です。

この区分は医学的な診断分類のためのものであり、ご自身で当てはめて重症度や等級を判断するためのものではありません。判断は医師が行います。意識消失の有無や時間、健忘の範囲は本人の記憶だけでは正確に分からないことが多く、救急隊の記録、救急外来の記録、同乗者の記憶が手がかりになります。これらは事故直後にしか記録できないため、初期の診療録と救急記録を早い段階で確認しておく意味が大きいといえます。

事故前からの片頭痛などが悪化した場合

事故前から片頭痛や緊張型頭痛があった方について問題となるのは、頭痛があること自体ではなく、事故前と比べて何がどのように変わったかという点です。事故前の頻度、強度、服薬の状況、受診の有無を確認できる資料があるかどうかが、説明の出発点になります。整理すべき論点は、後記「既往の頭痛がある場合の三つの論点」で扱います。

頭痛以外の症状が中心の場合は、別の評価が必要です

次の症状が中心となる場合は、頭痛とは別の枠組みで評価が検討されます。後述する厚生労働省の認定基準も、脳の器質性の障害(高次脳機能障害など)、外傷性てんかん、失調・めまい及び平衡機能障害を、頭痛とは別の項目として定めています。該当する可能性があるときは、そちらの検討を先に行う必要があります。

  • 記憶障害、注意障害、人格や行動の変化などを伴う高次脳機能障害
  • けいれん発作を繰り返す外傷性てんかん
  • めまい、ふらつき、平衡機能の障害
  • 脳脊髄液漏出症又は低髄液圧症候群として検討される病態
  • 視覚、聴覚、嗅覚などの個別の障害

もっとも、これらの症状と頭痛を、機械的に別々の障害として足し合わせられるわけではありません。同一の中枢神経の損傷から複数の症状が生じている場合には、総合的に評価されることがあります。

高次脳機能障害で必要な検査と記録を確認する

外傷後頭痛で問題になる後遺障害等級

自賠責保険の等級(別表第二)

頭痛で問題となる自賠責保険の後遺障害等級
等級・号 別表第二の文言
第9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
第12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
第14級9号 局部に神経症状を残すもの

認定は労災保険の基準に「準じて」行われます

自賠責保険の支払基準(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号)は、後遺障害による損害について「等級の認定は、原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う。」と定めています。等級そのものは施行令別表第二が定め、その認定の考え方は労災保険の行政通達に準じて運用されるという二段構えです。

頭痛については、厚生労働省「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について」(平成15年8月8日基発第0808002号)が、第2の4「その他特徴的障害」の(2)に「頭痛」の項目を置いています。同通知は、「頭痛については、頭痛の型の如何にかかわらず、疼痛による労働又は日常生活上の支障の程度を疼痛の部位、性状、強度、頻度、持続時間及び日内変動並びに疼痛の原因となる他覚的所見により把握し、障害等級を認定すること」としています。

通知が示す頭痛の基準と、自賠責保険の号との対応
通知が示す状態 労災保険の号 自賠責の別表第二
通常の労務に服することはできるが激しい頭痛により、時には労働に従事することができなくなる場合があるため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの 第9級の7の2 第9級10号
通常の労務に服することはできるが、時には労働に差し支える程度の強い頭痛がおこるもの 第12級の12 第12級13号
通常の労務に服することはできるが、頭痛が頻回に発現しやすくなったもの 第14級の9 第14級9号

労災保険の号数と、自賠責保険の号数は一致しません。頭痛の解説記事や資料の中には、労災保険の通知に書かれた「第12級の12」という号数を、そのまま自賠責保険の第12級12号として紹介しているものがあります。自賠責保険の別表第二では、局部に頑固な神経症状を残すものは第12級13号です。同じく、労災保険の第9級の7の2は、自賠責保険では第9級10号に対応します。第14級9号は、たまたま号数が一致しています。資料を読むときは、どちらの制度の号数かを必ず確認してください。

重い頭痛では、第12級より上位の等級が問題になることもあります

前記の対応表のとおり、通知は、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限される程度の頭痛について、より上位の基準を置いています。また、脳の器質性の障害、外傷性てんかん、失調・めまい及び平衡機能障害は、同じ通知の別の項に置かれています。症状が重い事案や、頭痛以外の症状を伴う事案を、第12級と第14級の枠内だけで検討してしまわないよう注意が必要です。

第12級13号と第14級9号を分ける確認ポイント

通知が挙げる七つの評価要素

通知が挙げる要素は、そのまま「診察で伝えるべきこと」「記録に残すべきこと」に対応します。

通知が挙げる評価要素と、記録で残せること
評価の要素 記録で残せること
疼痛の部位 後頭部、側頭部、前頭部、頸部から続くかなど、痛む場所と広がり方
性状 締めつけられる、脈打つ、重い、突き刺すようなど、痛み方の表現
強度 その痛みで何ができなくなったか。数値で記録する場合は同じ尺度を使い続けること
頻度 1週間又は1か月あたりの日数。症状のない日も含めて記録すること
持続時間 開始時刻と終了時刻、又はおよその持続時間
日内変動 朝方に強い、夕方から強くなるなど、1日の中での変化
疼痛の原因となる他覚的所見 診療録に記載された神経学的所見、画像検査の結果、画像診断報告書

通知は「頭痛の型の如何にかかわらず」としています。診断名によって等級が決まるのではなく、労働又は日常生活上の支障の程度を、これら七つの要素から把握するという構造です。だからこそ、症状の具体像を継続的に記録し、診察のたびに伝えることに意味があります。

診断名だけでも、画像だけでも決まりません

次のいずれも、実務上は成り立ちません。

  • 画像所見があれば必ず第12級になる
  • 画像に異常がなければ必ず第14級になる、又は必ず非該当になる
  • 6か月通院すれば第14級になる
  • 頭痛記録をつけていれば認定される

第12級を検討する場面では、症状の具体像、神経学的所見、画像所見、診療経過が相互に整合しているかが確認されます。他方で、他覚的所見があることだけを必要条件とも十分条件とも整理できません。第14級も、頭痛の訴えがあるだけで認定されるものではなく、事故態様、発症時期、治療経過、症状の一貫性、医学的な説明可能性が資料で確認されます。

むちうちの画像所見と神経学的検査の考え方を確認する

「証明できる」「説明できる」という言い回しについて

実務解説では、第12級を「医学的に証明できるもの」、第14級を「医学的に説明できるもの」と対比して説明することがあります。理解の助けになる面はありますが、施行令別表第二の文言でも、前記通知の文言でもありません。法令の条文のように引用することは適切ではなく、この言い回しから自分の等級を逆算することもできません。実際に確認されるのは、七つの評価要素と、それを裏付ける資料の内容です。

外傷後頭痛の記録の残し方

事故直後と初診時に確認しておきたいこと

次の事項を、記憶が新しいうちにメモに残し、診察の際に医師へ伝えてください。

  • 事故の日時、事故態様、衝撃の方向、座席の位置、シートベルトとエアバッグの状況
  • 頭部を打ったかどうか、頭部に傷や腫れがあったかどうか
  • 意識を失った時間があったか、事故前後の記憶がない部分はどこからどこまでか、見当識の混乱、悪心、嘔吐、めまいの有無
  • 頭痛が初めて現れた日時と、事故又は意識回復からどれくらい経っていたか
  • 救急搬送の有無、救急隊の記録の有無、初診日、受診した診療科、初診時に医師へ伝えた症状
  • 初期の神経学的所見、CTやMRIなどの画像検査の有無、画像診断報告書の有無
  • 事故前の頭痛の有無、診断歴、服薬歴、事故前の頻度と程度

頭痛記録に書く項目

頭痛記録は、診察時間内に症状を正確に伝えるための補助資料です。毎日長文を書くことが目的ではありません。同じ形式で簡潔に、症状が軽い日やない日も含めて記録してください。次の項目を1行ずつ埋める形で足ります。

頭痛記録の項目と書き方
項目 記録の仕方 注意点
日付・開始時刻・終了時刻 その日のうちに記入する。時刻はそのまま書く 思い出せない場合は空欄にし、後から推測で埋めない
部位 後頭部、側頭部、前頭部、頸部からの連続など 毎回同じ言葉を使うと、変化が分かりやすくなる
性状 締めつけられる、脈打つ、重い、突き刺すなど、自分の言葉で 医学用語に置き換える必要はない
強度 0から10などの数値尺度を使う場合は、常に同じ尺度を使う 数値は主観的な評価で、他人と比較できるものではない。自分の中での変化を追う目安として用いる
頻度・症状のない日 1週間又は1か月に何日あったかが分かるように書く 症状のない日を書かないと、頻度が実際より多く見える記録になる
日内変動 朝方に強い、夕方から強くなるなど、1日の中での変化 変化がない日は「変化なし」で足りる
姿勢との関係 起き上がると強くなる、横になると軽くなるなどの変化 この変化から病態を自己判断することはできない。観察した事実として医師に伝える
誘因・増悪因子 頸の動き、光、音、画面作業、運動、天候などとの関係 はっきりしない場合は、無理に原因を書かない
随伴症状 悪心、嘔吐、光や音への過敏、めまい、視覚症状、しびれ、集中しにくさ 別の障害の評価につながることがあるため必ず記録する
服薬 薬の名称、量、時刻、効いたかどうか、副作用 用法や増減の判断は医師又は薬剤師に相談する。市販薬も書く
具体的な支障 休憩、横臥、作業の中断、早退、欠勤、運転の中止、家事の代替など 「つらかった」ではなく、何をやめたか、誰が代わったかを書く
受診と伝えた内容 受診日、診療科、医師へ伝えた内容の要点 診療録と食い違わないよう、伝えた内容をそのまま書く

1日分の記録は、次の程度で足ります。「14時ごろから17時30分ごろまで。後頭部から首の付け根にかけて、締めつけられる感じ。0から10の目安で6。午前中はなし、午後から強くなった。画面作業を2時間続けた後。軽い吐き気があり、蛍光灯がまぶしく感じた。15時に市販の鎮痛薬を1錠、1時間ほどで少し軽くなった。15時から30分横になり、打合せを1件、翌日に延期してもらった。前日は症状なし。」

これだけの情報でも、部位、性状、強度、頻度、持続時間、日内変動と、生活上の支障が読み取れます。長さよりも、毎回同じ形式で続けることに意味があります。

記録を作るうえで、してはいけないこと

次のような記録の作り方は、資料としての信用性を損ないます。結果として、症状の説明をかえって難しくします。

  • 過去の分をまとめて後から作成すること
  • 症状が軽い日やない日を書かず、重い日だけを残すこと
  • 等級を意識して、毎回同じ症状を同じ強さで訴えること
  • 診療録、服薬の状況、勤務の記録と食い違う内容を書くこと
  • 医師に対し、医学的な裏付けのない記載や誇張した記載を求めること

後遺障害の申請では複数の資料が突き合わされます。記録どうしの矛盾は表に出ます。

就労と日常生活への影響をどう残すか

頭痛の程度は、「つらい」という言葉ではなく、実際に生じた支障で示すほうが伝わります。次の資料が残っていないか確認してください。

  • 勤務(被用者) 勤怠記録、欠勤・遅刻・早退・有給休暇の記録、休業損害証明書、業務内容の変更に関する記録、上司や同僚への連絡メール、予定表、会議や運転の中断に関する記録
  • 勤務(自営業・自由業) 業務日誌、予約の取消し記録、納期の変更に関する連絡、請求書、売上資料
  • 日常生活 睡眠、食事、入浴、買物、家事、育児、読書、画面の閲覧、運転、外出の状況の変化
  • 家族の観察 家族が付けた記録、援助した内容(家事の分担、送迎、通院の付添いなど)

自営業の方の減収は、頭痛との関係と減収の額の双方が個別に判断されます。売上の減少がそのまま損害として認められるとは限りません。家族の記録は補助的な資料であり、本人の診療録と矛盾しないことが前提です。

むちうちの通院記録・診療記録の残し方を確認する

診察のときに医師へ伝えること

診察の時間は限られています。次の点を短くまとめて伝えてください。

  • 頭痛が始まった時期と、事故からの時間関係
  • 前回の受診から今日までの頻度、強度、持続時間、日内変動
  • 随伴症状の有無と変化
  • 服薬の状況と効果
  • 仕事や家事で、実際にできなくなったこと
  • 改善した点と、悪化した点の両方
  • 事故前の頭痛歴、他の病気、服用中の薬

診療録に何を記載するかは、医師の医学的判断によります。特定の記載を求めることや、症状を誇張して伝えることは、資料全体の信用性を損ないます。弁護士が関与する場合も、医学的に不正確な記載を求めるものではありません。

症状固定から後遺障害の申請までの時系列

場面ごとの確認事項
場面 確認しておきたいこと
事故直後 頭部を打ったか、意識の変化や記憶の欠落があったか、初診がいつか。頭痛の発症時期を記録に残す
治療中 症状の経過を継続的に伝えているか。頭痛記録と診療録に矛盾がないか
治療費対応の打切りを打診されたとき 症状固定の時期は医師の判断であること。打切りの日が当然に症状固定日になるわけではないこと
症状固定の前後 残っている症状、検査資料、通院経過、就労と生活上の支障を整理する
後遺障害診断書の作成前 伝えるべき症状の要点を整理する。作成後の修正は容易ではない
申請前 提出する資料に不足がないか。申請の方法をどちらにするか
認定結果を受け取った後 認定理由の記載を確認し、どの資料が評価され、何が不足していたかを整理する
示談の前 等級、慰謝料、逸失利益、休業損害、過失割合、既払金を含む損害項目の全体と、請求の期限を確認する

症状固定は医学的な判断です

症状固定は、頭痛が3か月続けば自動的に成立するものではなく、治療経過などを踏まえて医師が判断する医学的な事項です。ICHD-3が急性と持続性を分ける3か月の区分と、賠償実務上の症状固定とは別の概念です。また、保険会社による治療費対応の打切りの日が、当然に症状固定日となるわけでもありません。症状固定の医学的判断、保険会社の治療費の支払、後遺障害の申請、民事上の損害の評価は、それぞれ別の問題です。

治療費の打切りを打診されたときの考え方を確認する

症状固定と言われたときの考え方を確認する

申請の方法と、判断の主体を区別します

後遺障害の申請には、相手方の任意保険会社を通じて行う方法と、自賠責保険会社へ被害者から直接請求する方法があります。国土交通省の案内によれば、必ず提出する書類には後遺障害診断書が含まれ、事案によってはレントゲン、CT、MRIなどの画像資料も必要です。

提出された資料の損害調査は損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所が行い、その結果の報告を受けた保険会社が支払額を決定します。医師が等級を決めるわけではなく、任意保険会社の担当者だけが等級を決めるわけでもありません。認定結果に不服がある場合は損害保険会社に対して異議申立てを行うことができ、その事案は、同機構に設置された自賠責保険(共済)審査会において審査されます。このほか、第三者機関である一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構による紛争処理の手続もあります。

どの手段を選ぶかは、認定理由の記載内容、提出済みの資料、不足している資料によって変わります。異議申立てをすれば結果が変わるという関係にはありません。まず認定理由書を読み、何が評価され、何が確認できないとされたのかを整理することが出発点です。

事前認定と被害者請求の違いを確認する

後遺障害診断書の準備について確認する

頭痛記録、診療録、画像や検査の資料、保険会社から届いた書類を突き合わせると、申請の前に補っておくべき資料や、確認しておくべき事項が見えてきます。認定結果を受け取った後であれば、認定理由の記載と提出済みの資料を照らし合わせて、次に検討できる手続を整理することができます。

交通事故の取扱業務を見る

よく問題になるケース

相手方から指摘されやすい事情と、確認しておきたい資料を整理します。いずれも、それだけで結論が決まるものではありません。

争点になりやすい事情と確認したい資料
場面 指摘され得る点 確認したい資料
発症又は初診まで間隔がある 事故との関係が明らかでない 事故直後の状況の記録、救急搬送の記録、間隔が生じた理由(意識障害、他の傷病の治療が優先されたなど)
頭部を直接打っていない 頭部外傷がないのに頭痛が続く理由が説明できない 事故態様、衝撃の方向、受傷時の頸部の症状、初期の神経学的所見
車両の損傷が軽微である 受傷するような衝撃ではなかった 修理見積書、車両の写真、事故状況報告書、双方の車種と速度
画像に異常がない 他覚的所見がない 撮影時期と条件、画像診断報告書、神経学的所見、症状の経過の一貫性
事故前から片頭痛などがあった 事故前からの症状にすぎない 事故前の受診歴、服薬歴、頻度と程度、事故後の変化を示す記録
診療録に頭痛の記載がない時期がある その時期は症状がなかった 受診時に訴えた内容、他の症状の治療が中心だった経緯、同時期の頭痛記録
通院が不規則である、医療機関を何度も変えている 症状が軽微であった、症状の経過が一貫していない 中断や転院の理由(仕事、家庭の事情、転居、医師の指示など)、紹介状、各医療機関の診療録の記載
治療により改善している時期がある 症状は治癒している 改善と再燃の経過、その時期の服薬と就労の状況
鎮痛薬の使用が多い 薬剤の使用過多など、事故以外の要因がある 服薬記録、処方の内容と経過、医師の評価
通常どおり勤務を続けている 申告する支障と実際の就労状況が合わない 勤務内容の変更、休憩や中断の実態、周囲の配慮、家庭での支障
頭痛以外の症状もある 症状の整理ができていない めまい、認知面の症状、けいれんなどの有無と検査結果

既往の頭痛がある場合の三つの論点

事故前から頭痛があった方の相談では、「既往があるから減額される」と一括りにされがちです。しかし、実際には根拠も要件も効果も異なる複数の問題が含まれています。相手方の主張がどれに当たるのかを整理してから検討してください。

一 事故との因果関係

事故によって頭痛が新たに生じたのか、事故前の頭痛が悪化したのかという問題です。事故前から頭痛があったという事実だけで、因果関係が当然に否定されるわけではありません。事故前の頻度、強度、持続時間、服薬の状況、受診の有無と、事故後の状態とを対比できる資料が判断の材料になります。

二 自賠責保険の支払基準による減額

自賠責保険の支払基準は、「第6 減額」の「2 受傷と死亡又は後遺障害との間の因果関係の有無の判断が困難な場合の減額」として、次のとおり定めています。

「被害者が既往症等を有していたため、死因又は後遺障害発生原因が明らかでない場合等受傷と死亡との間及び受傷と後遺障害との間の因果関係の有無の判断が困難な場合は、死亡による損害及び後遺障害による損害について、積算した損害額が保険金額に満たない場合には積算した損害額から、保険金額以上となる場合には保険金額から5割の減額を行う。」

読み方の要点は三つです。第一に、これは「既往症があれば減額する」という規定ではなく、因果関係の有無の判断が困難な場合の規定です。第二に、対象は死亡による損害と後遺障害による損害であり、傷害による損害はこの条項の対象外とされています。第三に、減額の割合は5割です。事故前後の状態を対比できる資料を残しておくことは、この条項が問題になる場面でも意味を持ちます。

三 民事上の賠償で、被害者側の事情が考慮されるかという問題

民事上の損害賠償では、相手方から、被害者側の事情を損害額の算定において考慮すべきであるという主張がされることがあります(実務上「素因減額」と呼ばれることがあります)。自賠責保険の支払基準による前記の減額とは、根拠も判断の枠組みも異なります。事故前に同じ症状が現実に生じていたか、事故によって何が新たに生じ、又は悪化したかによって評価は分かれ、結論は事案ごとに変わります。

なお、被害者の過失を考慮する過失相殺は、民法第722条第2項が「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」と定めるものであり、これらとはさらに別の問題です。

申請前・示談前に確認したい資料

  • 事故日から現在までの診療録(初診時の記載を含む)、救急搬送があった場合の救急記録
  • 診断書、診療報酬明細書
  • 後遺障害診断書(作成前であれば、伝えるべき症状の整理)
  • CT、MRIなどの画像そのものと、画像診断報告書
  • 神経学的検査その他の検査結果
  • 頭痛記録(同時期に作成したもの)
  • 服薬記録、お薬手帳
  • 勤怠記録、休業損害証明書、業務内容の変更が分かる資料
  • 事故証明書、事故発生状況報告書、事故車両の損傷が分かる資料
  • 保険会社から届いた書類(治療費対応に関する連絡、認定結果の通知、認定理由書、示談案)
  • 事故前の受診歴、服薬歴が分かる資料(既往の頭痛がある場合)

等級、金額、期限の関係

等級が認定されても、金額は自動的に決まりません

等級が認定されても、それだけで賠償額が決まるわけではありません。後遺障害慰謝料と逸失利益は別の項目であり、過失相殺や既払金の控除によっても最終的な金額は変わります。

自賠責保険の支払基準は、別表第二に係る後遺障害慰謝料を第9級249万円、第12級94万円、第14級32万円と定め、逸失利益の算定に用いる労働能力喪失率(別表Ⅰ)を第9級35/100、第12級14/100、第14級5/100と定めています。

これらは自賠責保険の支払基準による数値であり、自賠責保険の限度額とも、裁判実務上参照される基準による金額とも異なります。民事上の賠償では、基礎収入、労働能力の喪失の程度と期間、現実の支障が個別に判断され、神経症状の事案では喪失期間が争点になりやすいという特徴があります。また、自賠責保険の等級認定と民事訴訟における認定は同一ではありません。裁判所は自賠責保険の認定に法的に拘束されない一方で、その認定内容や医学資料は実務上重要な検討資料として扱われます。自賠責保険で非該当となっても裁判であれば認められる、という関係にはありません。

自賠責保険への請求期限と、民事上の消滅時効は別です

自賠責保険への被害者請求について、国土交通省の案内は、後遺障害の場合は症状固定日の翌日から3年以内としています(平成22年3月31日以前に発生した事故については2年以内)。傷害の場合は事故発生の翌日から3年以内です。

これとは別に、加害者に対する民事上の損害賠償請求権には消滅時効があります。民法第724条は、不法行為による損害賠償の請求権が「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき」及び「不法行為の時から二十年間行使しないとき」に時効によって消滅すると定め、民法第724条の2は、人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権については、同条第一号の規定の適用上、「三年間」とあるのは「五年間」とすると定めています。

自賠責保険への請求期限と、加害者に対する民事上の消滅時効は、別の制度です。民事上の起算点は「損害及び加害者を知った時」であり、後遺障害が問題となる場合にこれをいつと見るかは、事案によって判断が分かれ得ます。また、事故の時期によっては改正前の規定の適用が問題になることもあります。期限が近いと感じられる場合は、事故日と症状固定日を確認できる資料をお持ちのうえで、早めにご相談ください。

弁護士への相談を検討したいタイミング

相談によって認定や増額が保証されるわけではありません。もっとも、次の場面では、資料を確認したうえで、検討すべき事項と手続の選択肢を整理できます。

  • 後遺障害診断書の作成を控えているとき(作成後の修正は容易ではありません)
  • 保険会社から治療費対応の打切りを打診されたとき、症状固定の時期が話題になっているとき
  • 申請の方法を選ぶとき
  • 非該当又は想定より低い等級の通知を受け取ったとき
  • 既往の頭痛を理由に減額を主張されたとき
  • 示談案を提示され、内容を検討しているとき

よくある質問

交通事故後の頭痛は後遺障害になりますか。
評価される場合はあります。ただし、「外傷性頭痛」という診断名に対応する等級はなく、残存する神経症状の内容と程度によって第12級13号又は第14級9号などの該当性が検討されます。事故態様、発症時期、治療経過、症状の一貫性が資料で確認されるため、個別事情により結論は異なります。
第12級13号と第14級9号は何が違いますか。
第12級13号は「局部に頑固な神経症状を残すもの」、第14級9号は「局部に神経症状を残すもの」と定められています。厚生労働省の通知は、頭痛の型を問わず、労働又は日常生活上の支障の程度を、疼痛の部位、性状、強度、頻度、持続時間、日内変動及び原因となる他覚的所見から把握するとしています。診断名や通院期間だけで分かれるものではありません。
頭を打っていなくても、むち打ちによる頭痛は対象になりますか。
国際頭痛分類第3版は、むち打ちを、頭部の急激で十分に制御されない加速・減速運動により頸部の屈曲・伸展が生じるものと定義し、むち打ちによる頭痛を分類しています。頭部を直接打っていない場合でも医学的な検討の対象になり得ますが、これは医学的な分類であり、法律上の因果関係が当然に認められるということではありません。
CTやMRIで異常なしと言われましたが、後遺障害を申請できますか。
申請すること自体はできます。画像上の異常が認められないことだけで、頭痛の存在や事故との関係が当然に否定されるわけではありません。他方で、症状の経過、神経学的所見、診療録の記載、就労と生活上の支障といった他の資料による説明が必要になります。撮影の時期や条件も確認事項です。
頭痛日記だけで後遺障害は認定されますか。
記録だけで等級が認定されるわけではありません。記録は症状の具体像を医師に正確に伝えるための補助資料であり、診療録、服薬の状況、勤務の記録と整合していることが前提です。後からまとめて作成した記録は、かえって説明を難しくします。
事故から数日後に頭痛が出た場合はどうなりますか。
国際頭痛分類第3版は、外傷等の後7日以内に発症したと報告されることを原則とし、それを超える場合は付録に遅発性の基準を置いています。間隔があること自体が結論を決めるわけではありませんが、なぜ間隔が生じたのかを説明できる資料(事故直後の状況、他の傷病の治療経過など)の確認が必要です。
事故前から片頭痛がある場合は認定されませんか。
既往があること自体で当然に否定されるわけではありません。問題となるのは、事故前と比べて頻度、強度、持続時間、支障の程度がどのように変わったかであり、事故前の受診歴や服薬歴が分かる資料が出発点になります。なお、自賠責保険の支払基準には、既往症等があるため因果関係の有無の判断が困難な場合の減額の定めがあり、民事上の賠償における主張とは区別して検討する必要があります。
非該当になった後に異議申立てはできますか。
損害保険会社に対して異議申立てを行うことができ、その事案は損害保険料率算出機構に設置された自賠責保険(共済)審査会において審査されます。第三者機関である自賠責保険・共済紛争処理機構による紛争処理の手続もあります。もっとも、申立てにより結果が変わるという関係にはありません。まず認定理由の記載を確認し、不足していた資料を整理する必要があります。

まとめ

  • 「外傷性頭痛」という診断名に対応する後遺障害等級はありません。残存する神経症状の内容と程度により、第12級13号又は第14級9号などの該当性が検討されます。
  • 厚生労働省の通知は、頭痛の型を問わず、疼痛の部位、性状、強度、頻度、持続時間、日内変動及び原因となる他覚的所見から、労働又は日常生活上の支障の程度を把握するとしています。画像所見の有無だけでも、通院期間だけでも決まりません。
  • 労災保険の号数と自賠責保険の号数は一致しません。自賠責保険では第12級13号、第14級9号です。
  • 意識消失、記憶の欠落、初期の画像所見は事故直後にしか記録できません。救急記録と初診時の診療録は早い段階で確認してください。
  • 頭痛記録は補助資料です。同時期に、同じ形式で、症状のない日も含めて記録してください。程度は「つらい」ではなく、実際にできなくなったことで示します。
  • 症状固定は医師の医学的判断であり、3か月の分類基準や治療費対応の打切りとは別の問題です。
  • 既往の頭痛については、事故との因果関係、自賠責保険の支払基準による減額、民事上の主張を分けて整理してください。
  • 自賠責保険への請求期限と、加害者に対する民事上の消滅時効は別の制度です。
  • 意識の変化、麻痺、言語障害、けいれん、繰り返す嘔吐、突然の激しい頭痛などがある場合は、まず医療機関への相談を優先してください。

後遺障害診断書の作成前、認定結果を受け取った後、示談の前は、いずれも資料を整理しておきたい場面です。頭痛の記録、診療録、検査資料、保険会社からの書類を拝見したうえで、法律上の見通しと選択肢を整理いたします。弁護士費用については、費用のご案内をご確認ください。

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監修者・執筆者

神戸みらい法律会計事務所
弁護士・公認会計士 藤井貴之(兵庫県弁護士会所属)

交通事故、相続、企業法務などを取り扱っています。弁護士紹介ページを見る

本記事は、法令、告示、行政通達及び公的機関等の公開資料に基づき、法律面から整理したものです。医師による医学的監修は受けていません。診断、検査、治療の内容及び症状固定の時期についての判断は、主治医にご確認ください。

参考資料

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