交通事故で首にけがを負い、治療が終わったあとも傷あとが残っている。あるいは、気管の確保や骨折の固定のために首を切開する手術を受け、その痕が消えずに残っている。そうした状況で、「首の傷は後遺障害になるのか」「襟に隠れる位置だから対象外と言われるのではないか」というご相談をいただきます。
結論から申し上げると、頸部(首)は、認定基準上、頭部・顔面部とならんで「外貌」に含まれます。首の傷あとであることを理由に、はじめから対象外となるものではありません。もっとも頸部には、顔面部について定められた線状痕の基準がそのまま当てはまらないという、見落とされやすい違いがあります。
この記事では頸部に固有の論点に絞って整理します。等級区分やサイズ基準の全体像、写真の残し方の基本は、顔の傷あと(外貌醜状)の等級とサイズの考え方に関する記事で扱っています。
この記事で分かること
- 頸部が「外貌」に含まれる根拠と、痛み・しびれとの違い
- 頸部で問題となる等級と、第9級第16号がそのまま当てはまらない理由
- 頸部に線状痕の長さの基準がなく、鶏卵大面に達しない場合の受け皿も限られること
- 襟や衣服で隠れる位置の傷あとをどう考えるか
- あごの下や胸元に及ぶ傷あとの扱い
- 気管切開・頸椎手術の痕の因果関係
- 後遺障害慰謝料と逸失利益の違い、参考となる裁判例
後遺障害診断書を作成してもらう前、認定結果を受け取った後、示談書に署名する前のいずれの段階でも、診断書と写真、認定理由を確認しながら、次に何をそろえるべきか整理できます。
頸部の傷あとが「外貌」として扱われる理由
外貌には頸部が含まれます
自賠責保険の後遺障害等級は施行令の別表に定められていますが、「外貌」の範囲は条文からは分かりません。この点、自賠責保険の支払基準は「等級の認定は、原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う。」としており、実務では労災保険の認定基準が参照されます。
厚生労働省の「外貌の醜状障害に関する障害等級認定基準について」(平成23年2月1日付け基発0201第2号)は、外貌を「頭部、顔面部、頸部のごとく、上肢及び下肢以外の日常露出する部分」と定義しています。頸部は、明文で外貌に含まれています。
「醜状」は法令および認定基準の用語です。この記事では条文や基準を引用する部分に限ってこの語を用い、そのほかは「傷あと」と表記します。外見の状態そのものを評価する趣旨ではありません。
傷あとと、首の痛み・しびれ・動かしにくさは別の問題です
首に傷あとが残る一方で、頸椎捻挫による痛みやしびれ、動かしにくさが続くこともありますが、これらは別の枠組みで検討されます。労災保険の障害等級認定基準(昭和50年9月30日付け基発第565号)の障害系列表でも、頭部・顔面部・頸部の醜状障害と、せき柱の変形・運動障害は別の系列です。系列が異なるため、それぞれが等級に該当すれば併合を検討する余地がありますが、それは出発点にすぎません。傷あとは位置・大きさ・見え方、痛みやしびれは他覚的所見として、別に記録してください。
治療のための手術痕も検討の対象になり得ます
頸部の傷あとには、事故で直接生じた創のほか、気管切開や頸椎の前方固定術など、治療のために行われた手術の痕が残る場合があります。治療として必要であった手術による傷あとであれば、事故との因果関係を検討する余地があります。もっとも、手術を受けた事実だけで因果関係が当然に認められるわけではなく、手術に至った経緯が手術記録や診療録に残っているかを確かめてください。
頸部で問題となる等級と、第9級第16号の位置付け
頸部の判断要素は瘢痕の面積です
前記の認定基準は、外貌の醜状に「著しい醜状」「相当程度の醜状」「単なる醜状」の三区分を設けています。頸部について示されている判断要素は次のとおりで、いずれも「人目につく程度以上のもの」であることが要件です。
| 区分 | 自賠責の等級・号 | 頸部について示されている判断要素 |
|---|---|---|
| 著しい醜状 | 第7級第12号 | てのひら大以上の瘢痕 |
| 相当程度の醜状 | 第9級第16号 | 頸部についての定めなし |
| 醜状 | 第12級第14号 | 鶏卵大面以上の瘢痕 |
同基準は「てのひら大」について指の部分は含まないとしています。また「鶏卵大面」を平方センチメートルに換算した数値は、公開されている基準に示されていません。傷あとの大きさは、換算値ではなく実際の計測値と写真で確認されます。三部位の一覧は顔の傷あと(外貌醜状)の記事に整理しています。
現在の等級は平成22年の政令改正によるものです。国土交通省の資料では、改正後の等級は平成22年6月10日以後に発生した事故に適用されるとされ、それより前の事故には男女で等級が異なる旧規定が適用されます。経緯は外貌醜状の等級と男女差に関する記事で整理しています。
頸部に第9級第16号がそのまま当てはまらない理由
表のとおり、「相当程度の醜状」の欄に頸部の記載がありません。認定基準が「相当程度の醜状」を「顔面部の長さ5センチメートル以上の線状痕で、人目につく程度以上のもの」と定義し、頸部にこの区分の基準を置いていないためです。
したがって、頸部の傷あとに顔面部の線状痕の基準をそのまま当てはめて第9級第16号を検討することは、通常できません。頸部で問題となるのは、てのひら大以上の瘢痕による第7級第12号と、鶏卵大面以上の瘢痕による第12級第14号の二つです。
この区分の新設を検討した専門検討会の報告書は、医療技術の進歩により醜状を相当程度軽減できるようになった障害を適切に評価する観点から、長い線状痕を対象としたとしています。頸部に同じ基準が置かれなかった理由は報告書から明らかではありません。
頸部には線状痕の基準がありません 顔面部には「長さ3センチメートル以上」「長さ5センチメートル以上」という線状痕の基準がありますが、頸部については長さによる基準が公開資料上示されていません。首の手術痕は線状に残ることが多いため、この点は結論を大きく左右します。線状の傷あとでも、幅や周囲の瘢痕を含めた面としての広がりの計測により評価が変わり得ますので、長さだけでなく幅と面積を記録してください。
鶏卵大面に達しない場合と、別表第二の備考
もうひとつ押さえておきたい点があります。施行令別表第二が外貌の醜状について定めているのは、第7級第12号、第9級第16号、第12級第14号の三つだけです。第13級と第14級には外貌の醜状に関する定めがありません(第14級第4号・第5号は上肢・下肢の露出面の定めです)。そのため、頸部の傷あとが鶏卵大面に達しないと判断された場合、その下の等級で受け止める規定がありません。
もっとも、同別表の備考六は、「各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であつて、各等級の後遺障害に相当するものは、当該等級の後遺障害とする」と定めています。頸部に「相当程度の醜状」の基準がないことも、鶏卵大面に達しないことも、この備考による検討の余地まで当然に否定するものではありません。他方、この定めがあるからといって、いずれかの等級が当然に認められるわけでもありません。いずれにせよ、傷あとの位置と大きさが数値として記録されていることが出発点です。
自賠責と労災では号数の表記が一致しない部分があります。「外貌に相当程度の醜状を残すもの」は、自賠責の別表第二では第9級第16号ですが、労災の認定基準では第9級の11の2です。交通事故の手続で用いる号数は、自賠責の別表第二を基準にしてください。
襟や衣服で隠れる位置の傷あとはどう評価されるか
「外貌に含まれること」と「人目につく程度以上であること」は別の要件です
ここが最も誤解の生じやすい部分です。頸部は認定基準が定める「日常露出する部分」として明文で外貌に含まれる一方、個別の傷あとが「人目につく程度以上のもの」といえるかは別途判断されます。首という部位を理由に、はじめから対象外とされるものではありません。
認定基準が挙げているのは眉毛・頭髪等に隠れる部分です
認定基準は、隠れる部分について次のとおり定めています。「障害補償の対象となる外貌の醜状とは、人目につく程度以上のものでなければならないから、瘢痕、線状痕及び組織陥没であって眉毛、頭髪等にかくれる部分については、醜状として取り扱わないこと。」
この文言が挙げているのは、眉毛や頭髪という、身体自体に備わるものによって覆われる部分です。公開されている認定基準の本文には、衣服や襟によって覆われる部分をどのように扱うかについての定めは置かれていません。したがって、「襟に隠れる位置だから当然に対象外になる」とも、「頸部であれば衣服に隠れていても当然に対象になる」とも、公開資料から断定することはできません。
個別の傷あとが「人目につく程度以上」といえるかは、位置、大きさ、色や隆起・陥凹の状態、通常の姿勢や首の動きによる見え方を含め、資料を確認したうえで判断されます。記録の残し方によって説明できる範囲が大きく変わります。
なお、認定基準は眉毛に隠れた部分を計測から除く例を示しています。前提にあるのは、隠れる部分があると傷あと全体が対象外になるのではなく、隠れる部分を除いて残りの大きさを計測するという考え方です。頸部についても、傷あと全体の大きさと、常時覆われている部分の有無・範囲を分けて記録しておくと、後の検討がしやすくなります。
あごの下や胸元に及ぶ傷あと
頸部の傷あとは、あごの下から顔面部に及ぶことも、鎖骨のあたりまで胸部にかかることもあります。境界の位置について公開されている認定基準に定めは見当たりませんが、どの部位に属するかで当てはまる基準が変わります。
顔面部にかかる部分があれば、顔面部の基準(鶏卵大面以上の瘢痕、長さ5センチメートル以上または3センチメートル以上の線状痕など)が問題になり得ます。他方、胸部にかかる部分は「露出面以外」の醜状として検討されます。労災の認定基準は、胸部又は腹部について、各々の全域をこえるものは第12級を、各部の2分の1程度をこえるものは第14級を準用するとしており、自賠責ではこれに対応する取扱いとして前記の備考六による検討が問題になります。境界にかかる傷あとは、どこまでが頸部なのかを寸法とともに記録してください。
腕や脚(上肢・下肢)の露出面に残った傷あとは、外貌とはさらに別の枠組みで判断されます。詳しくは上肢・下肢の醜状障害と露出面の考え方に関する記事をご確認ください。
傷あとの位置や大きさが認定基準との関係でどう評価され得るのか、いま手元にある診断書と写真で何が説明でき、何が不足しているのかは、資料を確認したうえで整理できます。
頸部の傷あとで記録しておきたいこと
診断書には面積が分かる形で記載してもらう
頸部の基準はいずれも瘢痕の面積を問題としています。他方、首の傷あと、とくに手術痕は線状に残ることが多く、長さだけでは評価に結び付きにくい場合があります。次の項目を数値として診断書に残してもらえるか確認してください。
- 傷あとの部位(あごの下、前頸部、側頸部、後頸部などの別)
- 縦横の寸法、線状痕の長さと幅、面としての範囲
- 隆起、陥凹、周囲組織との癒着の有無、色調、色素沈着・色素脱失の有無
- つっぱり感や動かしにくさを伴う場合は、その内容
なお認定基準は、二個以上の瘢痕又は線状痕が相隣接し、又は相まって一個の瘢痕等と同程度以上の醜状を呈する場合に、面積や長さを合算して認定するとしています。複数の切開があるときは、個々の寸法と相互の位置関係が分かる記録を残してください。また同基準は、火傷が治ったあとの黒褐色の変色や色素脱失による白斑等で永久的に残り、かつ人目につく程度以上のものを、単なる「醜状」として取り扱うとしています。
写真は首の見え方が分かるように残す
写真の撮影方法は法令上の要件ではありません。基本的な撮り方は後遺障害の証拠の集め方に関する記事のとおりですが、頸部では次の点を意識すると説明しやすくなります。
- 正面と左右の側面に加えて後面も撮影する(後頸部は漏れやすい)
- 普段の衣服を着た状態と、傷あと全体が確認できる状態の双方を残す
- 正面を向いた姿勢のほか、首を動かした状態も残す
- 尺度を写し込み日付を記録する。見え方を強調する加工はしない
首や顔の写真は機微性の高い情報です。認定手続のために提出することと、それ以外の目的で共有することは別の問題です。提出先、保存方法、利用目的を確認したうえで扱ってください。
症状固定と申請の進め方
傷あとの状態は時間とともに変化します。事故から何か月で症状固定という一律の基準はなく、瘢痕の成熟の程度は治療医の医学的判断を前提に検討されます。瘢痕修正術などの追加治療が予定されている場合は、症状固定の時期や将来の治療費の扱いが個別の問題になります。
自賠責への請求には、被害者が加害者側の損害保険会社に直接請求する方法(自動車損害賠償保障法第16条第1項に基づく被害者請求)と、加害者側の任意保険会社を通じて進める方法があります。傷あとの事案では、どの写真をどう提出するかが評価に影響し得るため、提出資料を自分で確認できるかという観点も方法選択の判断材料になります。いずれの場合も損害調査は損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所が行います。評価には計測と見え方の確認が必要になるため、実物の確認や計測のために面接調査等を求められることがあります。案内があった場合はその内容に従ってください。
認定結果に納得できない場合には、損害保険会社への異議申立てのほか、自賠責保険・共済紛争処理機構への紛争処理(調停)の申請、国土交通大臣への申出という手段があるとされています。重要なのは同じ資料の再提出ではなく、認定理由のどこが分かれ目かを特定し、それに対応する新たな診断所見、計測資料、写真を検討することです。
自賠責保険(共済)に対する後遺障害の請求権は、症状固定日の翌日から3年で時効となるとされています。示談交渉が長引いている場合でも、この点は別に確認しておいてください。
後遺障害慰謝料と逸失利益は分けて検討します
基準が異なることを前提に確認します
等級が認定されても、それだけで賠償額が決まるわけではありません。自賠責保険から支払われる金額は施行令の別表に定められた上限の範囲内で、後遺障害慰謝料の額にも自賠責保険の支払基準に定めがあります。他方、裁判実務ではこれとは異なる基準が参照されます。提示額がどの基準によるものかを確認しないまま示談すると、比較の対象が分からないまま結論だけを受け入れることになります。
逸失利益は個別の立証によります
自賠責保険の支払基準は、逸失利益について、年間収入額または年相当額に、該当等級の労働能力喪失率と就労可能年数に対応するライプニッツ係数を乗じて算出するとしています。国土交通省の労働能力喪失率表では、第7級が56パーセント、第12級が14パーセントとされています。
もっとも、傷あとの等級が認定されたことをもって、この喪失率が当然にそのまま、かつ全期間について認められるわけではありません。傷あとが労働能力にどう影響するかは、職種、業務内容、対人・接客業務の有無、配置転換、昇進や転職への影響、現実の減収、就労上の具体的な支障、将来の不利益の蓋然性などを、資料に基づいて個別に検討する問題です。
他方、現実の減収がないという一事をもって常に逸失利益が否定されるものでもありません。逸失利益が認められない、または制限される場合に、その事情を慰謝料の算定で考慮した裁判例もあります。
参考となる裁判例
奈良地方裁判所葛城支部の判決(平成13年(ワ)第168号・損害賠償請求事件、裁判所ウェブサイト掲載)は、交通事故で左頬、上唇上、下唇の下から頸部にかけて線状の瘢痕が残った事案につき、施行令別表第7級第12号に相当する後遺障害を認めたうえ、逸失利益について次のように判示しました。
そもそも現実に減収が生じておらず、本件の醜状痕が将来の労働能力に影響を与えるものであるかどうか判然としないうえ、将来の労働能力に多少の影響を与えることがあるとしても、それが従前の醜状痕によるものか、本件事故による醜状痕によるものかの区別も判然としないというべきであって、結局のところ、独立の逸失利益を認める足りる的確な証拠はない。
そのうえで同判決は、後遺障害慰謝料を1,100万円とし、入通院慰謝料と合わせて1,250万円が相当と認め、算定にあたり原告に事故前から顔面の傷あとが残っていたことを減額要素として考慮するのは相当でないとしています。事故前の傷あとという固有の事情を含む事案で一般化はできませんが、逸失利益が争われる場面で検討される事情が分かります。
示談前・申請前に確認したいこと
示談が成立すると、原則としてその内容に拘束されます。清算条項の文言や示談当時に予想できなかった事情により例外が問題となる場合もありますが、示談後に争うのは容易ではありません。署名の前にご確認ください。
- 傷あとが事故によるけが、または治療のための手術によるものであることが、初診記録・手術記録・診療録から説明できるか
- 後遺障害診断書に、頸部のどの位置に縦横どれだけの大きさで残っているかが、面積の分かる形で記載されているか
- 常時覆われている部分の範囲、複数の傷あとの位置関係、あごの下や胸元に及ぶ場合の部位ごとの範囲が、記録上区別できるか
- 正面・側面・後面の写真が、尺度と日付を添えて残されているか
- 示談案の内訳が慰謝料と逸失利益に分けて示され、提示額がどの基準によるものかを確認したか
- 弁護士費用特約の有無と、症状固定日の翌日から3年という時効を確認したか
弁護士への相談で等級や賠償額が保証されるわけではありません。もっとも、診断書の作成前、面接等の案内を受け取ったとき、認定結果が出た後、示談案の提示を受けた段階では、資料の不足や分かれ目を整理しやすくなります。
よくある質問
服や襟に隠れる位置の傷あとは、後遺障害の対象外になりますか。
当然に対象外になるものではありません。認定基準は頸部を「日常露出する部分」として外貌に含めており、醜状として取り扱わない部分としては「眉毛、頭髪等にかくれる部分」を挙げています。衣服で覆われる部分の扱いについて、公開されている基準に明示の定めはありません。個別の傷あとが「人目につく程度以上」といえるかは、位置と実際の見え方を含め、資料を確認したうえで判断されます。
首の傷あとでも、第9級第16号は認定されますか。
認定基準は「相当程度の醜状」を顔面部の長さ5センチメートル以上の線状痕と定義しており、頸部にこの区分の基準を置いていません。そのため、顔面部の線状痕の基準をそのまま当てはめて第9級第16号を検討することは通常できません。頸部で問題となるのは、てのひら大以上の瘢痕による第7級第12号と、鶏卵大面以上の瘢痕による第12級第14号です。
傷あとが小さい場合、第14級にはなりませんか。
別表第二には、外貌の醜状について第13級・第14級の定めがありません(第14級第4号・第5号は上肢・下肢の露出面の定めです)。そのため、鶏卵大面に達しないと判断された場合、その下の等級で受け止める規定がありません。もっとも同別表の備考六は、各等級の後遺障害に相当するものは当該等級の後遺障害とする旨を定めており、この備考による検討の余地まで当然に否定されるわけではありません。
首の手術痕は何センチメートル以上で認定されますか。
頸部については、線状痕の長さによる基準が公開されている認定基準に示されていません。頸部の判断要素は、てのひら大以上または鶏卵大面以上という瘢痕の面積です。細い線状の手術痕でも、幅や周囲の瘢痕を含めた面としての広がりの計測によって評価が変わり得ますので、長さだけでなく幅と面積を記録しておいてください。
気管切開や頸椎手術の痕も、対象になりますか。
事故の治療として必要であった手術による傷あとであれば、事故との因果関係を検討する余地があります。もっとも、手術を受けた事実だけで因果関係が当然に認められるわけではなく、手術記録や診療録から経緯が説明できるかを確認したうえ、傷あとの大きさと見え方が基準を満たすかが判断されます。
首の傷あとが胸元まで続いている場合、まとめて評価されますか。
頸部は外貌に含まれますが、胸部は「露出面以外」の醜状として別の枠組みで検討されます。まとめて一つの基準で評価されるとは限りませんので、頸部の部分と胸部の部分それぞれの範囲を寸法とともに記録してください。境界の位置について公開された認定基準に定めは見当たらず、個別事情により結論は異なります。
等級が認定されれば、労働能力喪失率どおりの逸失利益が認められますか。
当然に認められるものではありません。傷あとの逸失利益は、職種、業務内容、対人業務の有無、配置や収入の変化、就労上の具体的な支障、将来の不利益が生じる蓋然性などを個別に検討する問題です。他方、現実の減収がないという一事で常に否定されるものでもなく、慰謝料の算定で事情が考慮された裁判例もあります。
まとめ
- 頸部は「外貌」に含まれます。首の傷あとであることを理由に、はじめから対象外とされるものではありません。
- 頸部で問題となるのは、てのひら大以上の瘢痕による第7級第12号と、鶏卵大面以上の瘢痕による第12級第14号です。「相当程度の醜状」(第9級第16号)の基準は顔面部の線状痕を対象としており、頸部には当てはまりません。
- 頸部には線状痕の長さの基準がなく、外貌に第13級・第14級の定めもありません。他方、別表第二の備考六による検討の余地まで当然に否定されるものではありません。
- 認定基準が醜状として取り扱わないとするのは「眉毛、頭髪等にかくれる部分」であり、衣服についての定めはありません。一律に該当するとも非該当とも断定できません。
- 次の行動は、診断書に面積の分かる記載があるかの確認と、正面・側面・後面の写真の準備です。認定結果を受け取っている場合は、認定理由と提出資料を照合してください。
神戸みらい法律会計事務所では、初回相談を無料でお受けしています。交通事故の分野では、可能な範囲でお電話での無料相談にも対応しています。ご予約のうえご相談内容を確認させていただいたうえで、夜間・土日のご相談にも対応しています。オンライン面談にも対応しています。
ご相談の際は、後遺障害診断書、傷あとの写真、手術記録、認定結果の通知、示談の提示書面など、お手元の資料をお持ちいただくと確認が進みやすくなります。神戸市須磨区・垂水区・西区・北区をはじめ、兵庫県内・関西圏からのご相談に対応しています。
監修者・執筆者情報
神戸みらい法律会計事務所(弁護士法人ひょうご支所)
弁護士・公認会計士 藤井 貴之
所属:兵庫県弁護士会/日本公認会計士協会兵庫会
取扱分野:交通事故、相続、離婚、債務整理、刑事事件、企業法務ほか
参考資料
- 自動車損害賠償保障法施行令(e-Gov法令検索)
- 国土交通省「外貌醜状に関する後遺障害等級の改正について」
- 国土交通省・金融庁「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」(PDF)
- 国土交通省「労働能力喪失率表」(PDF)
- 厚生労働省「外貌の醜状障害に関する障害等級認定基準について」
- 厚生労働省「障害等級認定基準について」
- 厚生労働省「外ぼう障害に係る障害等級の見直しに関する専門検討会報告書」(PDF)
- 国土交通省「支払までの流れと請求方法」
- 国土交通省「支払に疑問、不服がある場合には」
- 損害保険料率算出機構「当機構で行う損害調査」
- 裁判所「奈良地方裁判所葛城支部 平成13年(ワ)第168号 損害賠償請求事件 判決」(PDF)
本記事は、交通事故により頸部に傷あとが残った場合の後遺障害に関する一般的な解説です。実際の等級認定や賠償額は、事故態様、傷あとの状態、治療経過、既往の有無、資料の内容などにより異なります。具体的な事案については、資料を確認したうえで弁護士にご相談ください。

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