頸椎椎間板ヘルニアと交通事故|既往症・素因減額が争われる場面 |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|

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頸椎椎間板ヘルニアと交通事故|既往症・素因減額が争われる場面

交通事故のあと、首や肩、腕、手指の痛みやしびれが続き、MRI検査で「頸椎椎間板ヘルニア」と説明された。ところが保険会社からは「事故前からあった加齢性の変化ではないか」「既往症があるので減額になる」と言われた。──このような相談は少なくありません。

この記事では、事故との因果関係、治療の必要性、後遺障害等級、既存障害・加重、民事上の素因減額という別々の問題を、どの順序で、どの資料を使って切り分けるのかを整理します。

先に結論の方向性をお伝えします。ヘルニア又は加齢性変化があるだけで、事故との因果関係が当然に否定されるわけでも、事故原因が当然に認められるわけでも、後遺障害又は素因減額の結論が決まるわけでもありません。事故前の状態、事故態様、症状の発現・継続、画像所見と症状・神経学的所見の対応等を、資料に基づいて分けて検討する必要があります。

保険会社から既往症や加齢性変化を理由とする説明を受けた段階でも、どの損害項目について、どの資料を根拠に、どのような割合が主張されているのかを整理すると、争点と対応方針を検討しやすくなります。

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結論|ヘルニアの画像だけで事故との関係も後遺障害も素因減額も決まらない

「頸椎椎間板ヘルニアがある」という一つの事実から、賠償に関するすべての結論が導かれるわけではありません。実務上は次のように判断場面が分かれており、それぞれ判断の目的、根拠となる基準、対象となる損害が異なります。

判断場面 何を判断するか 主な根拠・基準
1 医学的な病名・病態 どの椎間に病変があり、どの神経が圧迫され得るか 主治医の診断、画像検査報告書
2 事故との因果関係 事故により症状が生じ、又は悪化したといえるか 事故態様、事故前後の症状経過、所見の整合性
3 治療の必要性・期間・症状固定 どこまでの治療が事故と相当因果関係のある損害か 診療経過、症状の推移
4 自賠責保険上の後遺障害等級 症状固定後に残った症状が、どの等級の文言に当たるか 自動車損害賠償保障法施行令別表第二
5 既存障害・加重の取扱い 事故前に既に後遺障害があり、同一部位について程度が加重されたか 施行令第2条第2項
6 自賠責支払基準上の減額 既往症等により、受傷と後遺障害との因果関係の判断が困難か 自賠責の支払基準
7 民事上の素因減額 因果関係を認めたうえで、公平の見地から減額すべきか 民法第722条第2項の類推適用

まず確認したい事項

  • 保険会社の主張は、右のどの場面についてのものか(治療費の打切りか、等級か、減額か)
  • その主張の根拠として、どの資料が挙げられているか
  • 減額の対象は、どの損害項目か(治療費、休業損害、慰謝料、逸失利益のいずれか、又は全部か)
  • 事故前に、同じ部位・同じ症状での通院歴や画像検査があったか

頸椎椎間板ヘルニアとは

主な病態と症状

日本整形外科学会は、頚椎椎間板ヘルニアについて、頸椎の骨と骨の間にある椎間板が突出して脊髄や神経根を圧迫して症状を出すものと説明しています。首や肩甲骨、腕の痛みが代表的で、進行すると手足のしびれが生じ、手や足の動きも悪くなることがあるとされ、頚部を斜め後方へ反らすと腕や手に痛みが走ることが特徴的で、診断はX線やMRIなどによるとされています。なお、公的資料では「頚椎」、診断書等では「頸椎」と表記されることがありますが、同じ部位を指します。

神経根症状と脊髄症状

区分 圧迫される部位 代表的な症状(学会資料の説明)
神経根症状 脊髄から分かれて上肢へ向かう神経根 肩から腕にかけての痛み、腕や手指のしびれ。頚椎を後ろへそらせると増強する。
脊髄症状 頚椎の脊柱管の中にある脊髄 ボタンのはめ外し、箸の使用、字を書くことが不器用になる。歩行で脚がもつれる。

学会資料は、頚椎症性脊髄症について、軽微な外傷で四肢麻痺になる可能性があるため転倒に注意するよう説明しています。手足の動かしにくさ、歩きにくさ、急速に進む脱力等がある場合は、賠償の検討より先に医療機関にご相談ください。検査や治療の要否は主治医が医学的に判断する事項です。

頸椎捻挫・頸椎症との違い

用語 学会資料による説明 賠償実務での注意
外傷性頸部症候群(いわゆるむちうち) 頚部の挫傷の後、長期間にわたり頚部痛、肩こり、頭痛、めまい、手のしびれなどが出る。X線での骨折や脱臼は認められない。 事故直後は頸椎捻挫と診断され、後にヘルニアが指摘されることがある。診断名の変遷は経過として残る。
頸椎椎間板ヘルニア 椎間板が突出して脊髄や神経根を圧迫する。 病変の存在と、症状が事故によるものかは別の問題。
頸椎症(神経根症・脊髄症) 加齢変化による頚椎症(椎間板の膨隆、骨のとげの形成)により神経根又は脊髄が圧迫・刺激される。 加齢変化を基盤とするため、事故との関係が争点になりやすい。
変形性脊椎症 加齢により生じる。軽症なものは無症状のことも多く、病的とはいえないこともある。 画像所見があっても無症状であり得る点が素因の評価で問題になる。

事故後に見つかったことと、事故で新たに生じたことの違い

ここが本記事の中心です。「事故後の検査でヘルニアが見つかった」ことと、「事故によってヘルニアが新たに形成された」ことは同じではありません。椎間板の変性や膨隆は加齢に伴って生じ得るもので、無症状のまま存在していることも珍しくありません。学会資料は、外傷性頚部症候群について、X線・MRIとも年齢に応じた変性変化を認めるが外傷との関係はない、と説明しています。つまり、画像上の変性所見は、それ自体では外傷の有無を示すものではありません。

もっとも、このことは逆向きにも当てはまります。画像に加齢性変化が写っているというだけでは、事故による症状の発現又は増悪を否定する根拠にもなりません。実務上争われるのは、多くの場合、「病変が事故で作られたか」ではなく、「これまで症状がなかった、あるいは軽かった状態が、事故を契機に発現し、又は悪化したといえるか」という点です。

事故による発症・増悪を検討する材料

事故前の症状・通院歴・既往画像

最初に確認するのは事故前の状態です。事故前に同じ部位・同じ症状で通院や服薬があったか、画像検査を受けていたか、就労や日常生活に支障があったかを確認します。

事故前の資料は、不利な事実を探すためだけのものではありません。事故前は通院がなく就労にも支障がなかったことを示す資料にもなり、事故前後の状態の変化を裏付ける材料にもなります。ただし、既往歴を隠したり事実と異なる説明をしたりすることは、かえって信用性を損ないます。

事故態様、初診及び症状発現の経過

事故の態様、身体の動き、受傷機転と、症状の内容・部位が整合するかを確認します。あわせて、事故から初診までの経過、初診時に何を訴え診療録にどう記載されたか、その後どの時期にどの症状が現れたかを時系列で確認します。

初診までの日数、物損額、車両損傷の程度、MRI所見の有無について、一律の数値基準はありません。車両損傷写真や修理見積書は事故態様を検討する一資料ですが、それだけで傷害の有無や因果関係が決まるものではありません。反対に、事故の後に診断されたというだけで事故が原因と断定することもできません。

症状の部位・左右と画像・神経学的所見の整合

頸椎の椎間板は複数あり、どの高位(責任椎間)の病変が、どの神経根の支配領域に対応するかという関係があります。実務上は、画像で圧迫が指摘された部位と、しびれや痛みが出ている部位・左右、感覚検査、筋力検査、腱反射等の所見が整合するかが検討されます。多椎間に画像所見がある場合、症状と対応しない箇所が含まれていることもあります。

なお、学会資料は、頚椎症性神経根症についてMRIで神経根圧迫の確認がしにくい場合もあると説明しています。検査所見の評価は医学的な判断であり、画像を法律家が独自に読影して結論を出すことはできません。画像検査報告書の記載、主治医の評価、必要に応じた専門医の意見は区別して扱う必要があります。

画像所見と神経学的検査の役割を確認する

事故前後の画像と状態変化

事故前に頸椎の画像検査を受けていた場合、事故後の画像と比較できることがあります。比較の可否や評価は医学的判断によりますが、事故前の画像が存在するかどうかの確認には意味があります。健康診断、他科の受診、別の事故や労災の際の検査など、本人が失念していることもあります。

因果関係の否定と素因減額は別の問題

素因減額の法的な位置付け

民法第722条第2項は、「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」と定めています。素因減額は、この過失相殺の規定を類推適用する形で認められてきた考え方です。

最高裁判所第一小法廷平成4年6月25日判決(民集46巻4号400頁)は、被害者に対する加害行為と被害者の罹患していた疾患とがともに原因となって損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法第722条第2項の過失相殺の規定を類推適用して、被害者の当該疾患をしんしゃくすることができる、と判示しました。心因的要因についても、最高裁判所第一小法廷昭和63年4月21日判決(民集42巻4号243頁)が、同項の類推適用による調整を認めています。

ここで重要なのは、素因減額が、事故と損害との因果関係を認めたうえで賠償額の調整を行う場面の問題であるという点です。「事故が原因ではない」という否認と、「事故が原因ではあるが公平の見地から減額すべきである」という主張は法律上の位置付けが異なります。保険会社の説明がどちらかを最初に確認してください。

疾患・身体的特徴・加齢性変化の整理

最高裁判所第三小法廷平成8年10月29日判決(民集50巻9号2474頁)は、被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても、それが疾患に当たらない場合には、特段の事情がない限り、これを損害賠償の額を定めるに当たりしんしゃくすることはできないとしました。同判決は、首が長くこれに伴う多少の頸椎不安定症があるという事情について、疾患に当たらないことを指摘し、個々人の個体差の範囲として当然にその存在が予定されているものと述べています。

整理の視点

  • 問題となっている所見が「疾患」として評価されるものか、個体差の範囲の身体的特徴か
  • 加齢性変化があるというだけで、当然に「疾患」として扱われるわけではない
  • 学会資料も、変形性脊椎症について軽症なものは無症状のことも多く病的とはいえないこともあると説明している
  • MRI上の変性所見の存在から直ちに減額の結論を導くことはできない

減額率に固定的な相場がない理由

素因減額は、事故態様、事故前の症状の有無と程度、既往疾患の態様と程度、画像所見、治療経過、後遺障害の内容、既往が損害の発生・拡大にどの程度寄与したかという認定事実に基づいて個別に判断されます。したがって、「この病名ならこの割合」といった固定的な相場はありません。裁判例を参照する場合も、前提となる事故態様、事故前の症状、既往疾患、画像、治療経過、後遺障害及び寄与の認定を併せて確認しなければ、別の事案にそのまま当てはめることはできません。

既往症・素因減額の基本的な考え方を確認する

同じ既往事情の評価範囲と重複控除を点検する

一つの既往事情は、治療期間の限定、後遺障害等級(既存障害・加重)、自賠責支払基準上の減額、民事上の素因減額という複数の場面で考慮され得ます。それ自体はあり得ますが、各場面は判断の目的、対象となる損害及び効果が異なります。保険会社の提示を確認する際は、次の点を計算過程に沿って点検すると争点が明確になります。

  • 既往症を理由に治療期間を短く区切ったうえで、さらに同じ既往症を理由に、同じ損害項目から割合的な減額をしていないか
  • 既存障害の控除(加重の処理)と素因減額が、同じ寄与を重ねて控除する結果になっていないか
  • 減額の対象が、傷害部分(治療費・休業損害・傷害慰謝料)なのか、後遺障害部分(後遺障害慰謝料・逸失利益)なのか、その両方なのか

重複控除に当たるかどうかは事案により異なります。まずは対象損害項目と計算過程を書面で確認することが出発点になります。

自賠責支払基準上の減額と民事上の素因減額の違い

比較項目 自賠責支払基準上の減額 民事上の素因減額
根拠 国土交通省・金融庁告示の支払基準「第6 減額」 民法第722条第2項の類推適用(最高裁判例)
要件 被害者が既往症等を有していたため、受傷と死亡との間及び受傷と後遺障害との間の因果関係の有無の判断が困難な場合 加害行為と被害者の疾患等がともに原因となって損害が発生し、加害者に全部を賠償させるのが公平を失するとき
対象となる損害 死亡による損害及び後遺障害による損害 事案により異なる(対象損害項目の特定が必要)
効果 積算した損害額(保険金額以上となる場合は保険金額)から5割の減額 割合は固定されておらず、認定事実に基づき個別に判断される
判断の場 自賠責保険(共済)の支払手続 示談交渉、調停、訴訟

自賠責で5割の減額がされたという事実は、民事上の素因減額の割合を決めるものではありません。逆に、自賠責で減額がされなかったことが、民事上の減額主張を封じるものでもありません。それぞれ別の判断として扱う必要があります。

後遺障害申請で既往症が問題になる場面

第12級13号・第14級9号・非該当の位置付け

自賠責保険の後遺障害等級は、自動車損害賠償保障法施行令別表第二に定められています。神経症状に関する等級の文言は、第12級13号が「局部に頑固な神経症状を残すもの」、第14級9号が「局部に神経症状を残すもの」です。

頸椎椎間板ヘルニアがあるというだけで等級が認定されるわけではありません。事故との関係、症状固定後に残っている症状の内容、経過、画像所見、神経学的検査所見等を資料に基づいて検討する必要があり、MRIがあれば第12級、なければ第14級、といった機械的な分岐ではありません。

後遺障害等級の認定と、民事訴訟における事故との因果関係・損害額の認定は、関連しますが同一ではありません。また、労災保険の障害等級表は自賠責の別表第二と号数の表記が異なる場合があるため、資料を読む際はどちらの制度の等級表かを確認してください。

後遺障害、既存障害・加重及び素因減額の違い

「悪化した」という言葉は、医学的な意味と制度上の意味で内容が異なります。ここを混同すると議論がかみ合わなくなります。

概念 意味 前提
医学的・事実的な増悪 病変又は症状が事故を契機に悪化したという事実の評価 事故前後の症状・所見の比較
制度上の加重(施行令第2条第2項) 既に後遺障害のある者が傷害を受けたことによって同一部位について後遺障害の程度を加重した場合に、加重後の等級に応ずる金額から既にあった後遺障害の等級に応ずる金額を差し引いた額が支払われる 事故前に既に「後遺障害」があること、及び「同一部位」であること
既存障害 事故前から存在していた障害 無症候性の画像上の変性所見が、当然に既存障害として扱われるわけではない
素因減額 因果関係を認めたうえで賠償額を公平の見地から調整する民事上の問題 民法第722条第2項の類推適用の要件

申請前に比較したい事故前後の資料

後遺障害の申請で既往症が問題になりやすいのは、事故前の状態を示す資料が手元にないまま、事故後の資料だけで申請が進む場合です。症状の有無、画像所見、神経学的所見、就労・日常生活の状況について、事故前の資料と事故後の資料が対になっているかを申請前に確認しておくと、後の争点整理が容易になります。事故前に別事故や労災で等級認定を受けていた場合は、その資料も確認の対象です。

後遺障害診断書の作成前に確認したい資料を見る

典型場面別の確認事項

次の表は、結論が分かれ得る典型場面を整理したものです。実在の解決事例ではなく検討の枠組みを示すための仮定的な場面であり、一律の結論や減額率が決まっているわけではありません。

場面 確認すべき事実 主な資料 相手方から想定される指摘 検討上の注意
事故前にヘルニアの診断があったが無症状だった 診断の時期と契機、症状・通院・服薬の有無、就労状況 事故前の診療録、処方履歴、勤務記録 既往疾患があるため素因減額の対象になる 診断名の存在と症状・支障の存在は別。事故前の無症状を示す資料を確認する
事故前に画像所見だけがあり治療歴はなかった 画像がいつ、何の目的で撮影されたか、その後の受診の有無 事故前の画像データ、画像検査報告書 事故前から病変が存在したので因果関係がない 無症候性の変性所見が当然に既存障害として扱われるわけではない
事故前から同じ部位・同じ症状で治療中だった 治療の内容と頻度、症状の程度、事故後の変化の有無と内容 事故前後の診療録、処方履歴、リハビリ記録 症状は従前からのもので事故と関係がない 事故前後の水準を比較できる資料を時系列でそろえる
以前の症状が寛解していたが事故後に再燃・悪化した 寛解していた期間の長さ、その間の受診・服薬・就労状況 受診歴の空白を示す資料、勤務記録 再燃は自然経過であり事故によるものではない 寛解期間の生活状況を示す資料が、変化の検討材料になる
事故後に初めて画像検査を受け加齢性変化を指摘された 症状の発現時期、初診時の訴え、検査の実施時期と理由 初診時診療録、画像検査報告書 加齢性変化であって外傷性ではない 事故前の画像がないことは双方の主張に影響する。断定を避け経過で検討する
多椎間に画像所見があるが症状と一致しない箇所がある 症状の部位・左右、感覚・筋力・反射の所見、責任椎間の評価 画像検査報告書、神経学的検査記録、主治医の評価 画像所見と症状が対応しない 読影は医学的判断。画像検査報告書、主治医の評価、専門医の意見を区別する
事故後の初診又は症状記録までに間隔がある 受診が遅れた事情、その間の症状、勤務・生活の状況 初診時診療録、勤務記録、当時の連絡記録 初診が遅いので事故との因果関係がない 初診までの日数に一律の基準はない。空白期間の事情を客観資料で説明できるか

保険会社から既往症・加齢性変化を指摘されたときの確認順序

口頭の説明だけでは、何がどこまで争われているのかが分かりません。次の順序で書面により確認することをおすすめします。

  1. 対象の特定 治療費の打切りか、因果関係の否認か、後遺障害等級に関する意見か、賠償額の減額かを区別する。
  2. 根拠資料の特定 どの診療録、どの画像検査報告書、どの医師の意見に基づく主張かを確認する。医療照会の回答書がある場合は写しの交付を求める。
  3. 対象損害項目の特定 減額の対象が、治療費、休業損害、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益のいずれか、又はその一部かを確認する。
  4. 割合と計算過程の確認 割合が示されている場合、どの金額に、どの順序で適用されているかを確認する。既存障害の控除と素因減額が併存していないかも点検する。
  5. 期限と書面の確認 回答期限、示談書の文言(清算条項、後遺障害が生じた場合の留保の有無)を確認し、署名前に内容を確認する。

治療費打切りを告げられたときの確認事項を見る

減額の理由、根拠資料、対象損害項目及び計算過程を整理すると、どこが医学的な評価の問題で、どこが法的評価の問題かを切り分けて検討できます。示談書に署名する前、後遺障害の申請前であれば、確認できる事項が多く残っています。

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示談前・後遺障害申請前の資料チェックリスト

次の資料は、事故との関係、後遺障害、素因減額のいずれの検討でも用いられます。すべてを一度にそろえる必要はありませんが、どれが手元にあり、どれがないかを把握しておくと方針を検討しやすくなります。

  • 交通事故証明書、事故発生状況報告書、実況見分に関する資料
  • 事故現場、車両損傷及び着座状況が分かる写真、ドライブレコーダー映像、修理見積書
  • 事故直後の診断書、救急記録、初診時の診療録
  • 事故後の診療録、診療報酬明細書、リハビリ記録、処方履歴
  • MRI、X線、CT等の画像データ及び画像検査報告書
  • 神経学的検査その他の検査記録
  • 事故前の診療録、画像データ、処方履歴、健康保険の受診歴、別事故・労災の資料
  • 事故前後の勤務記録、休業に関する資料、業務配慮の記録、日常生活上の支障が分かる資料
  • 症状の経過に関する記録、保険会社とのメール・書面・通話に関する記録
  • 後遺障害診断書、等級認定の結果、認定理由、異議申立てに関する資料
  • 保険会社の示談提示書、減額の理由・割合・対象損害項目が分かる資料

症状の経過を記録する場合は、その時点の症状と生活上の支障を実際のとおりに記録してください。後から辻褄を合わせるための記録は、かえって信用性を損ないます。診療録に客観的な誤記や伝達漏れがあると思われる場合は、事実に沿った訂正を主治医に相談する範囲にとどめ、事実と異なる記載を求めることは避けてください。

通院記録と症状の一貫性の考え方を確認する

弁護士に相談するタイミング

時期 検討できること
治療中に既往症・加齢性変化を指摘されたとき 主張の対象と根拠資料を整理し、治療の継続と資料の確保の方針を検討できる
治療費の打切りを告げられたとき 打切りの理由と、症状固定の時期に関する考え方を整理できる
後遺障害の申請前 事故前後の資料の対応関係を確認し、資料の不足を検討できる
等級認定の結果が出たとき 認定理由を確認し、異議申立てを含む選択肢を検討できる
示談の提示を受けたとき、示談書に署名する前 減額の対象、根拠、計算過程を確認し、対応方針を検討できる

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よくある質問

交通事故後のMRIでヘルニアが見つかれば、事故が原因と認められますか。

画像所見が見つかったことと、事故によって生じ又は悪化したことは別の問題です。事故前の症状の有無、事故態様、症状の発現時期、画像所見と神経学的所見の整合性等を資料に基づいて検討する必要があります。

事故前は無症状でしたが、既往症として素因減額されますか。

事故前が無症状であったことは重要な事情ですが、それだけで減額されないと決まるものではありません。逆に、既往があるというだけで当然に減額されるものでもなく、疾患の態様・程度や損害への寄与を踏まえて個別に判断されます。

医師から加齢性変化と言われました。賠償請求はできませんか。

加齢性変化があることと、事故による症状の発現・増悪がないことは同じではありません。学会資料も、変形性脊椎症について軽症なものは無症状のことも多いと説明しています。事故前後で症状や生活上の支障がどう変化したかの確認が出発点になります。

事故前からあったヘルニアが悪化した場合も対象になりますか。

事故を契機とする症状の発現又は増悪が認められれば、その部分が損害として検討されます。ただし、医学的・事実的な「増悪」と、施行令第2条第2項にいう制度上の「加重」は別の概念です。加重は、事故前に既に後遺障害があり、同一部位について程度が加重された場合の取扱いを指します。

MRIで神経の圧迫が写っていれば、第12級13号になりますか。

画像所見のみで等級が決まるものではありません。症状固定後に残っている症状の内容、経過、画像所見と神経学的所見の対応関係等を踏まえて検討されるため、圧迫所見があっても非該当と判断されることも、その逆もあります。

保険会社から一定割合の素因減額を提示されました。応じる必要がありますか。

提示された割合が当然に確定するものではありません。まず、減額の根拠資料、対象となる損害項目、計算過程を書面で確認してください。個別事情により結論は異なりますので、示談書に署名する前の確認をおすすめします。

事故前の診療録や画像は取得した方がよいですか。

事故前の資料は、不利な事実だけを示すものではなく、事故前の無症状や寛解、就労状況を示す資料にもなります。どの範囲をどの時期に取得するかは方針に関わるため、事前に検討することが望ましいといえます。なお、既往歴を秘したり事実と異なる説明をしたりすることは避けてください。

どの時点で弁護士に相談するのがよいですか。

既往症や加齢性変化を指摘された時点、治療費の打切りを告げられた時点、後遺障害の申請前、示談書に署名する前が、確認できる事項が多い時期です。資料の保全や争点の整理は、早い段階の方が選択肢が残りやすい傾向があります。

まとめ|次に行うこと

  • ヘルニアや加齢性変化があるという一つの事実で、因果関係、後遺障害、素因減額のすべてが決まるわけではありません。
  • 「事故後に見つかった」ことと「事故で生じた」ことを区別し、事故前の状態と事故後の経過を比較してください。
  • 因果関係の否認と、因果関係を認めたうえでの素因減額は法律上の位置付けが異なります。保険会社の主張がどちらかを確認してください。
  • 自賠責支払基準上の減額と民事上の素因減額、医学的な「増悪」と施行令上の「加重」は、それぞれ別の概念です。
  • 減額の対象、根拠資料、対象損害項目、割合と計算過程を書面で確認してください。
  • 事故前後の診療録、画像データ、画像検査報告書、就労状況が分かる資料を時系列に整理してください。

事故前後の診療録、画像検査報告書、主治医の評価及び後遺障害の認定資料を照合すると、どこが医学的な評価の問題で、どこが法的評価の問題かを切り分けて検討できます。示談、治療費打切りへの回答又は後遺障害の申請の前に、確認事項を整理しておくことができます。

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執筆・監修

弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所

代表弁護士・公認会計士 藤井貴之(兵庫県弁護士会所属・日本公認会計士協会兵庫会所属)

取扱分野その他の詳細は、弁護士紹介ページをご確認ください。

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参考資料

本記事は一般的な情報を提供するものであり、個別の事案について結論を保証するものではありません。医学的な判断は主治医にご確認ください。法的な結論は、事故態様、診療経過、資料の内容等の個別事情により異なります。

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