交通事故で熱傷(やけど)を負い、治療が一区切りついたあとに、傷あとが盛り上がったまま残る、皮膚の色が元に戻らない、皮膚がつっぱって腕や脚が伸びきらない、という状態が続くことがあります。ご本人やご家族からは、「この傷あとは後遺障害として評価されるのか」「動かしにくさもあわせて見てもらえるのか」「両方が認められれば等級は上がるのか」というご質問をいただきます。
熱傷後の後遺障害では、外見に残る変化(法令・認定基準上は「醜状障害」といいます)と、瘢痕拘縮による関節の動かしにくさ(機能障害)を、まず切り分けて検討します。そのうえで、それぞれが等級に該当するか、同じ障害を二重に評価していないか、一方が他方から通常派生する関係にないかを順に確認し、最後に併合等の取扱いを検討します。診断名が付いただけで等級が決まるものではなく、傷あとの位置・大きさ・見え方と、関節可動域の計測値を、別々に記録しておく必要があります。
この記事では、熱傷後の傷あとと瘢痕拘縮について、自賠責の後遺障害等級の枠組み、認定基準で確認できる判断要素、集めておきたい医学的資料、申請前・示談前の確認事項を整理します。事故態様、受傷部位、治療経過、既往の有無により結論は変わりますので、最終的には資料を確認したうえでの個別判断が必要です。
治療中でも、後遺障害診断書の作成前でも、認定結果を受け取った後でも、資料を確認しながら次の手順を整理することができます。示談書に署名する前に一度ご確認ください。
熱傷後の後遺障害でまず確認したい結論
傷あと(醜状障害)と、瘢痕拘縮による関節の動かしにくさ(機能障害)は、まず別々に検討します。そのうえで、二つを合算するのではなく、系列、重複評価、通常派生の関係を確認してから、併合等の取扱いを検討します。「二つ認定されれば必ず等級が上がる」という関係にはありません。
熱傷後の後遺障害を検討するときは、次の順序で整理すると、資料の過不足が把握しやすくなります。
| 段階 | 確認すること | 主に必要となる資料 |
|---|---|---|
| 1 等級の個別検討 | 傷あとと関節の機能について、それぞれ単独で該当し得る等級を検討する | 後遺障害診断書、患部の写真、関節可動域測定表 |
| 2 系列の確認 | 二つの障害が、認定基準上、別の系列に属するかを確認する | 認定基準(系列表)、部位の特定資料 |
| 3 重複評価の確認 | 同じ身体障害を、異なる観点から二重に評価していないかを確認する | 診断書の記載、認定理由 |
| 4 通常派生の確認 | 一方が他方から通常派生する関係にあるか、独立した障害かを確認する | 診療経過、他覚的所見 |
| 5 併合等の検討 | 同一系列の扱い、併合、相当(準用)、加重のいずれを検討するかを整理する | 認定結果通知、既存障害に関する資料 |
| 6 損害項目の検討 | 最終的な等級と、慰謝料・逸失利益・将来の治療費などを分けて検討する | 収入資料、業務内容の資料、治療計画 |
自賠責保険の後遺障害等級は、自動車損害賠償保障法施行令の別表第一・別表第二に定められています。保険会社が保険金等を支払う際の支払基準は、「等級の認定は、原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う」としており、実務では労災の認定基準や通達の考え方が参照されます。もっとも、等級と号数そのものは自賠責の別表によります。両者は号数の表記が一致しない部分があるため、注意が必要です。
熱傷の後に残る症状と用語を整理する
熱傷の深さと傷あとの残り方
熱傷は、皮膚のどの深さまで損傷が及んだかによって分類されます。日本創傷外科学会の一般向け解説では、大きくⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度に分類され、Ⅱ度はさらに浅達性Ⅱ度と深達性Ⅱ度に分けられると説明されています。
| 深さの区分 | 主な所見と経過 |
|---|---|
| Ⅰ度 | 皮膚に赤みが出る程度で、痛みを伴う。ほとんど後遺症を残さず治るとされる。 |
| 浅達性Ⅱ度 | 水ぶくれができ、ヒリヒリとした痛みを伴う。軟膏や創傷被覆材による治療で後遺症なく治る場合が多いとされる。 |
| 深達性Ⅱ度 | 痛みが軽度で知覚が鈍い。治るのに時間がかかり、後遺症を残すこともあるとされる。 |
| Ⅲ度 | 痛みを感じる神経まで損傷されるため、かえって痛みを感じないことがある。壊死組織のデブリードマンを行い、広範囲であれば植皮術が必要とされる。 |
熱傷の深さは、後遺障害の等級を直接決めるものではありません。深達性Ⅱ度やⅢ度であっても、残った傷あとの位置・大きさ・見え方や、関節可動域の計測値がどう記録されているかによって、評価は変わります。深さの分類だけから等級を推定することは避けてください。
肥厚性瘢痕・ケロイド・瘢痕拘縮は同じ意味ではありません
熱傷後の傷あとには、いくつかの用語が使われます。いずれも医師が診断する事項で、この記事は治療上の助言に代わるものではありませんが、資料を読むうえでの整理として区別しておくと有用です。
- 熱傷瘢痕……熱傷が治った後に残る傷あとの総称です。色調の変化(色素沈着・色素脱失)を伴うことがあります。
- 肥厚性瘢痕・ケロイド……傷あとが赤く盛り上がった状態です。痛みやかゆみを伴うことがあります。日本熱傷学会の一般向け解説でも、熱傷の後遺症としてケロイドが挙げられています。
- 瘢痕拘縮……瘢痕が収縮して皮膚がつっぱった状態です。日本創傷外科学会の解説では、関節に生じると関節が伸ばせなくなるようなひきつれが起こり得るとされています。
法的評価では、診断名がそのまま等級に結び付くのではありません。傷あとは「どの部位に、どの程度の大きさで、人目につく形で残っているか」、拘縮は「どの関節の、どの運動が、どの程度制限されているか」という形で、それぞれ資料化されている必要があります。
植皮痕・採皮部も検討の対象になり得ます
植皮術を受けた場合、移植を受けた部位(植皮痕)だけでなく、皮膚を採取した部位(採皮部)にも傷あとが残ります。採皮部が大腿など衣服に隠れる位置のこともあれば、前腕など露出する位置のこともあります。手術記録で採皮部の位置と範囲を確認し、後遺障害診断書に反映されているかを確かめてください。
傷あとを醜状障害として検討する基準
「醜状」は法令および認定基準で用いられている用語です。以下では、条文や基準を引用する部分に限ってこの語を用い、そのほかは「傷あと」「外見上の変化」と表記します。外見の状態そのものを評価する趣旨ではありません。
自賠責の等級と号数
自動車損害賠償保障法施行令別表第二では、傷あとに関する等級として次のものが定められています。
| 等級・号 | 別表第二の文言 |
|---|---|
| 第7級12号 | 外貌に著しい醜状を残すもの |
| 第9級16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの |
| 第12級14号 | 外貌に醜状を残すもの |
| 第14級4号 | 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
| 第14級5号 | 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
外貌(頭部・顔面部・頸部)の判断要素
厚生労働省の「外貌の醜状障害に関する障害等級認定基準について」(平成23年2月1日付け基発0201第2号)は、外貌を「頭部、顔面部、頸部のごとく、上肢及び下肢以外の日常露出する部分」と定義し、部位ごとに次の基準を示しています。自賠責の認定も、支払基準上、原則として労災の障害等級認定基準に準じて行われますが、当てはめは個別事案ごとの判断になります。
| 区分 | 頭部 | 顔面部 | 頸部 |
|---|---|---|---|
| 著しい醜状 | てのひら大以上の瘢痕、又は頭蓋骨のてのひら大以上の欠損 | 鶏卵大面以上の瘢痕、又は10円銅貨大以上の組織陥没 | てのひら大以上の瘢痕 |
| 相当程度の醜状 | ― | 長さ5センチメートル以上の線状痕 | ― |
| 醜状 | 鶏卵大面以上の瘢痕、又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損 | 10円銅貨大以上の瘢痕、又は長さ3センチメートル以上の線状痕 | 鶏卵大面以上の瘢痕 |
同基準は、いずれの区分についても「人目につく程度以上のもの」であることを要件とし、眉毛や頭髪等に隠れる部分は醜状として取り扱わないとしています。熱傷では、頭部の瘢痕が毛髪に隠れるか、頸部の瘢痕が襟で隠れるかが、記録のうえで問題になりやすい部分です。
熱傷では、線状の傷あとよりも面状の瘢痕が残ることが多く、認定基準上「相当程度の醜状」が顔面部の長さ5センチメートル以上の線状痕とされていることとの関係が問題になりやすい類型です。また、恒久的な色素沈着・色素脱失が、基準にいう「瘢痕」としてどのように評価されるかは、資料と個別事情により判断が分かれ得ます。断定的な見通しを前提にせず、記録を整えたうえで検討してください。
上肢・下肢の露出面
自賠責の別表第二は「上肢の露出面」「下肢の露出面」という文言のみを用いています。その範囲について、上記の労災の認定基準は、上肢はひじ関節以下(手部を含む)、下肢はひざ関節以下(足背部を含む)としています。熱傷では前腕から手背、下腿から足背にかけて瘢痕が残ることがあり、この当てはめが結論を左右することがあります。境界にかかる瘢痕は、位置と範囲を寸法とともに記録しておいてください。
自賠責と労災では、同じ内容の障害でも号数の表記が一致しない部分があります。「外貌に相当程度の醜状を残すもの」は、自賠責の別表第二では第9級16号ですが、労災の認定基準では第9級の11の2と表記されています。上肢・下肢の露出面も、自賠責では第14級4号・第14級5号、労災の認定基準では第14級の3・第14級の4です。交通事故の手続で用いる等級・号数は、自賠責の別表第二を基準にしてください。
顔の傷あとの大きさや評価の考え方については、別の記事で詳しく整理しています。あわせてご確認ください。
瘢痕拘縮を機能障害として検討する基準
自賠責の等級と号数
瘢痕拘縮によって関節の可動域が制限された場合は、上肢・下肢の機能障害として検討します。自動車損害賠償保障法施行令別表第二では、次のとおり定められています。
| 等級・号(上肢/下肢) | 別表第二の文言 |
|---|---|
| 第5級6号/第5級7号 | 一上肢の用を全廃したもの/一下肢の用を全廃したもの |
| 第6級6号/第6級7号 | 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの/一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの |
| 第8級6号/第8級7号 | 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの/一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの |
| 第10級10号/第10級11号 | 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの/一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
| 第12級6号/第12級7号 | 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの/一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの |
可動域はどのように測るか
厚生労働省の「せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準について」(平成16年6月4日付け基発第0604003号)は、関節の機能障害について次の区分を示しています。
| 区分 | 認定基準上の内容 |
|---|---|
| 関節の用を廃したもの | 関節が強直したもの、関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にあるもの、人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち可動域が健側の2分の1以下に制限されているものなど |
| 機能に著しい障害を残すもの | 関節の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されているものなど |
| 機能に障害を残すもの | 関節の可動域が健側の可動域角度の4分の3以下に制限されているもの |
測定方法についても、同基準は次の点を示しています。熱傷後の瘢痕拘縮では、皮膚のつっぱりによって動きが止まるため、測定条件の記載が結論を左右しやすくなります。
- 可動域の測定値は、日本整形外科学会及び日本リハビリテーション医学会が定めた「関節可動域表示ならびに測定法」に従い、原則として他動運動による測定値によるとされています。
- 末梢神経損傷により筋が弛緩性麻痺となっている場合や、強い痛みのために自動運動ができない場合など、他動運動による測定値を採用することが適切でないものについては、自動運動による測定値を参考として認定を行う必要があるとされています。
- 角度計は十分な長さの柄が付いたものを使用し、通常は5度刻みで測定するとされています。
- 機能障害は原則として主要運動の可動域の制限の程度によって評価し、主要運動が複数ある肩関節・股関節については、いずれか一方の可動域が健側の2分の1以下又は4分の3以下に制限されているときに該当するとされています。
- 主要運動の制限が基準をわずかに上回るにとどまる場合に、参考運動が2分の1以下又は4分の3以下に制限されているときは、著しい機能障害又は機能障害と認定するものとされています。
| 関節 | 主要運動 | 参考運動 |
|---|---|---|
| 肩関節 | 屈曲、外転・内転 | 伸展、外旋・内旋 |
| ひじ関節 | 屈曲・伸展 | ― |
| 手関節 | 屈曲・伸展 | 橈屈、尺屈 |
| 股関節 | 屈曲・伸展、外転・内転 | 外旋・内旋 |
| ひざ関節 | 屈曲・伸展 | ― |
| 足関節 | 屈曲・伸展 | ― |
制限の原因を切り分ける
可動域が制限されている場合でも、その原因が瘢痕拘縮なのか、骨折後の変形や関節内の損傷なのか、末梢神経の損傷なのか、痛みによって動かせない状態なのかによって、必要な検査も記載すべき所見も変わります。熱傷と骨折を同時に受傷している場合は、どちらが制限に寄与しているのかを、画像所見や神経学的所見とあわせて整理してください。
関節ごとの可動域制限については、次の記事もあわせてご確認ください。
醜状障害と機能障害の併合等をどう検討するか
系列が異なるかを確認する
労災の「障害等級認定基準について」(昭和50年9月30日付け基発第565号)は、身体障害を部位ごと・障害群ごとに整理した障害系列表を示しています。同表では、頭部・顔面部・頸部の醜状障害が独立した系列とされ、上肢についても欠損障害・機能障害、変形障害、醜状障害がそれぞれ別の系列として掲げられています。下肢も同様に、欠損障害・機能障害、変形障害、短縮障害、醜状障害が別系列とされています。
同基準は、同一系列とみなして取り扱うものとして、両眼球の各種障害相互間、同一上肢の機能障害と手指の欠損又は機能障害、同一下肢の機能障害と足指の欠損又は機能障害の三つを挙げており、傷あとと関節の機能障害の組合せは含まれていません。
顔の傷あとと腕の動かしにくさのように、部位も系列も明らかに異なる場合だけでなく、同じ腕に露出面の傷あとと関節の可動域制限が残った場合も、認定基準上は醜状障害と機能障害が別の系列とされています。したがって、併合を検討する余地はあります。もっとも、系列が異なることは併合を検討する出発点にすぎず、これだけで併合が確定するものではありません。
重複評価と通常派生の関係を確認する
同基準は、次の二つの考え方も示しています。いずれも、複数の障害があるように見える場合に、等級を積み上げないための調整です。
- 重複評価の禁止……一つの身体障害が、観察の方法によっては障害等級表上の二以上の等級に該当すると考えられる場合は、一つの身体障害を複数の観点から評価しているにすぎないため、いずれか上位の等級によるとされています。
- 通常派生する関係……一つの身体障害に他の身体障害が通常派生する関係にある場合には、いずれか上位の等級によるとされています。
熱傷後の事案では、関節の機能障害が認定された部位について、同じ瘢痕による痛みやしびれを神経症状として別に評価できるか、という場面でこの視点が問題になります。「傷あと」「動かしにくさ」「痛み」を並べて主張すれば等級が積み上がる関係ではなく、それぞれ他覚的所見と基準該当性を確認する必要があります。
自賠責の併合は施行令に定めがあります
自賠責保険において複数の後遺障害がある場合の取扱いは、自動車損害賠償保障法施行令第2条第1項第3号に、保険金額の定め方として規定されています。第5級以上に該当する後遺障害が二以上あるときは重い方の等級の3級上位、第8級以上が二以上あるときは2級上位、第13級以上が二以上あるときは1級上位の等級に応ずる金額によるとされています。第13級以上が二以上の場合には、繰り上げた等級の金額が各等級の金額を合算した額を超えるときはその合算額による、という定めも置かれています。
| 組合せ(一般例) | 施行令第2条第1項第3号の区分 | 用いられる等級 |
|---|---|---|
| 第7級と第8級 | 第8級以上が二以上ある場合 | 重い方の2級上位(第5級) |
| 第9級と第12級 | 第13級以上が二以上ある場合 | 重い方の1級上位(第8級) |
| 第12級と第12級 | 第13級以上が二以上ある場合 | 重い方の1級上位(第11級) |
| 第14級と第14級 | 上記のいずれにも当たらない場合 | 重い方の等級(第14級) |
上の表は、法令上の計算ルールを説明するための一般例であり、特定の事案で示した組合せの等級が認定されることを示すものではありません。また、繰り上げた等級の金額に上限が働く場合もあります。併合、相当(準用)、加重といった取扱いの違いそのものについては、別の記事で整理しています。
二つ認定されれば必ず等級が上がるとは限りません
次のような場合には、傷あとと動かしにくさの両方があっても、想定した併合の結論にならないことがあります。
- いずれか一方が、そもそも等級の基準に該当しないと判断された場合
- 瘢痕拘縮による制限が、認定基準上の可動域の目安に届かないと判断された場合
- 同じ障害を二つの観点から評価しているにすぎないと判断された場合
- 一方が他方から通常派生する関係にあると判断された場合
- 事故前から存在した傷あとや可動域制限があり、加重の問題として整理される場合
なお、「相当」と「準用」は、制度や場面によって用いられ方が異なります。認定結果の通知に用語が記載されている場合は、どの制度の、どの取扱いを指しているのかを確認したうえで、次の対応を検討してください。
最終等級と損害項目は分けて検討します
併合後の等級が決まっても、それだけで賠償額が決まるわけではありません。自賠責保険の保険金額は施行令の別表に定められた上限であり、後遺障害慰謝料や逸失利益などの民事上の損害は、別途、資料に基づいて検討します。
とくに傷あとに関する逸失利益は、職業名だけで一律に判断されるものではありません。具体的な業務への影響、配置や収入の変化、対人業務の有無、年齢、症状の内容などを資料に基づいて個別に検討します。将来の形成手術費等を請求する場合も、必要性、相当性、実施の見込み、時期、金額を個別に確認します。
認定結果の通知や後遺障害診断書をお持ちであれば、どの障害がどの等級で評価され、どの点が判断の分かれ目になっているのかを、資料に沿って整理することができます。示談の提示を受けている場合は、署名の前にご相談ください。
よく問題になる場面と確認事項
以下は、判断のポイントを示すための一般的な場面です。実際の解決事例ではありません。ご自身の状況に近いものがあれば、資料の有無を確認するところから始めてください。
| 場面 | 確認したい事項 | 結論が変わり得る要素 |
|---|---|---|
| 顔や首の傷あとと、首や肩の動かしにくさがある | 傷あとが外貌の基準に当たるか、制限の原因が瘢痕拘縮かを記録できているか | 瘢痕の位置と範囲、毛髪や襟に隠れる部分の有無、計測条件 |
| 腕や脚の露出面の傷あとと、同じ肢の関節可動域制限がある | 瘢痕が露出面にあるか、てのひらの大きさに当たるか、二つが別系列として整理されているか | ひじ関節・ひざ関節を基準とした位置、瘢痕の面積、制限の程度 |
| 複数の部位に瘢痕が残っている | 部位ごとに基準該当性を検討し、全身の分布が資料に残っているか | 隣接する瘢痕の評価方法、露出面に当たる部分の範囲 |
| 植皮痕や採皮部の傷あとがある | 手術記録の採皮部の位置と範囲が診断書に反映されているか | 採皮部が露出面にあるか、その範囲と色調 |
| 痛み、かゆみ、知覚異常、皮膚潰瘍が続く | 診察所見と治療経過の記録、通常派生する関係に当たらないか | 他覚的所見の有無、事故との因果関係、基準該当性 |
| 骨折、神経損傷、関節損傷も併存している | 制限の原因を切り分ける所見が残っているか | 画像所見、神経学的所見、リハビリ経過 |
| 事故前から傷あとや可動域制限がある | 既存障害の内容と程度を示す資料があるか | 加重として整理されるか、事故前の記録の有無 |
| 非該当、想定外の等級、一方のみの評価だった | 認定理由のどこが判断の分かれ目か | 追加資料により補える範囲、再検討の余地 |
症状固定前・申請前・示談前に整理したい資料
次に挙げるものは、すべてが法律上必要とされる資料という意味ではありません。認定の判断や示談前の確認に役立つ資料の候補として、ご自身の段階に合わせて整理してください。
治療の初期から症状固定までの記録
- 初診記録、救急・入院の記録、熱傷の深さ・面積・部位図
- デブリードマン、植皮術、皮弁形成術、瘢痕形成術などの手術記録(採皮部の記載を含む)
- 感染、潰瘍、皮膚炎などの合併症に関する記録
- リハビリテーションの記録、装具・スプリント、圧迫療法などの実施状況
- 形成外科・皮膚科による傷あとの状態、予後、今後の治療予定
傷あとの記録
- 傷あとの位置、縦横の寸法、線状痕の長さ、面積、隆起・陥没の有無
- 色調、色素沈着・色素脱失、周囲組織との癒着の有無
- 事故直後から症状固定までの経時的な患部写真
- 定規などの尺度を添え、正面・側面・斜位を同じ照明条件で撮影した写真
- 毛髪や襟などで隠れる部分の有無が分かる撮影
関節可動域の記録
- 自動運動・他動運動の別を明記した関節可動域測定表
- 患側と健側の双方の計測値、測定した姿勢、測定時の疼痛の有無
- 測定日、測定者、複数回測定した場合はその経過
- 日常生活や就労で具体的にどの動作が制限されているかの記載
申請前・示談前に確認したい書類
- 後遺障害診断書(傷あとと可動域制限の双方が記載されているか)
- 認定結果の通知および認定理由が分かる資料
- 事故前からの傷あと・可動域制限がある場合の既往に関する資料
- 示談書案、損害計算書、支払明細
認定手続のために医療機関を通じて写真を提出することと、写真をインターネット上に公開することは、まったく別の問題です。提出用の写真は、必要な範囲で、管理方法を確認したうえで扱ってください。
後遺障害診断書の記載事項と、そろえておきたい資料の全体像については、別の記事で整理しています。
症状固定の考え方と申請の流れ
熱傷後の症状固定の時期を、事故から何か月というかたちで一律に決めることはできません。瘢痕は時間の経過とともに変化し、形成手術やリハビリテーションが予定されていることもあります。主治医の医学的意見は、治療経過や今後の見込みを把握するうえで重要な資料ですが、自賠責、保険会社、裁判所における法的評価と必ず一致するとは限りません。手続や示談の都合だけで時期を決めず、治療経過と医学的意見を踏まえて個別に検討してください。
自賠責への請求方法には、被害者が保険会社に直接請求する方法(自動車損害賠償保障法第16条第1項)と、加害者側の任意保険会社を通じて手続を進める方法があります。いずれの場合も、損害調査は損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所が行います。どちらを選ぶかは、資料の整い方や治療の段階に応じて検討します。
認定結果を受け取った後の確認手順
認定結果が想定と異なる場合でも、通知を受け取った時点で確認できることがあります。次の順序で整理してください。
- 認定結果の通知を読み、傷あとと可動域制限のそれぞれについて、どのように判断されたのかを確認します。
- 認定理由に挙げられた事情が、提出した資料のどこに対応しているのかを照合します。
- 後遺障害診断書に、傷あとの寸法、位置、可動域の計測値、測定条件が記載されているかを確認します。
- 記載が不十分な項目について、追加の資料や補充の記載を求めることができるかを検討します。
- そのうえで、異議申立てを行うか、他の手続を検討するか、示談交渉に進むかを判断します。
同じ資料を再提出するだけでは判断が変わりにくいのが実情です。何が不足しているのかを特定してから進めるほうが、結果的に負担が小さくなることがあります。
弁護士に相談を検討したい場面
弁護士に相談しても、認定される等級や賠償額が保証されるわけではありません。もっとも、次の場面では、資料の不足や判断の分かれ目を早い段階で整理しやすくなります。
- 傷あとと動かしにくさの両方が残っており、どちらをどのように記録すべきか分からない
- 後遺障害診断書の作成を控えており、記載してもらう項目を確認したい
- 認定結果が非該当、または想定と異なる等級だった
- 併合の結論や、認定理由の意味が分からない
- 示談の提示を受けており、慰謝料や逸失利益の組み立てを確認したい
- 形成手術やリハビリテーションが今後も必要で、症状固定の時期に迷いがある
よくある質問
熱傷の傷あとと関節の動かしにくさは、必ず併合されますか。
必ず併合されるという関係にはありません。認定基準上は醜状障害と機能障害が別系列とされているため併合を検討する余地はありますが、それぞれが等級に該当するか、同じ障害を二重に評価していないか、一方が他方から通常派生する関係にないかを確認したうえで判断されます。個別事情により結論は異なります。
「熱傷後瘢痕拘縮」という診断名があれば、等級は認定されますか。
診断名だけで等級が決まるものではありません。傷あとは位置・大きさ・見え方、拘縮は関節ごとの可動域の計測値と測定条件が、それぞれ資料として残っている必要があります。診断書に一方しか記載されないこともあるため、作成前に記載事項を確認しておくことをおすすめします。
傷あとの写真は、どのように撮っておけばよいですか。
定規などの尺度を写し込み、正面・側面・斜位を、できるだけ同じ照明条件で撮影しておくと、位置と大きさが伝わりやすくなります。事故直後から症状固定までの経過が分かるよう、時期ごとに撮っておくことも有用です。提出方法は医療機関や手続により異なります。
上肢・下肢の「露出面」とは、どこまでを指しますか。
自賠責の別表第二は「上肢の露出面」「下肢の露出面」という文言のみを置いています。労災の認定基準では、上肢についてはひじ関節以下(手部を含む)、下肢についてはひざ関節以下(足背部を含む)とされています。境界にかかる瘢痕については、位置と範囲を寸法とともに記録しておくことが重要です。
植皮を受けた場合、皮膚を採取した部位の傷あとも評価されますか。
採皮部の傷あとも、部位と範囲によっては検討の対象になり得ます。手術記録から採皮部の位置と範囲を確認し、後遺障害診断書に記載されているかを確かめてください。露出面に当たるかどうかで扱いが変わり、個別事情により結論は異なります。
痛みやかゆみが残っている場合、傷あととは別に評価されますか。
別に評価されるとは限りません。事故との因果関係、診察所見、他覚的な裏付け、基準該当性を検討したうえ、通常派生する関係に当たらないかもあわせて確認されます。症状が続く場合は、治療経過と診察所見を継続的に記録しておいてください。
症状固定はいつになりますか。形成手術の予定がある場合はどうなりますか。
事故から何か月という一律の基準はありません。瘢痕は時間とともに変化することがあり、形成手術やリハビリテーションの予定がある場合はなおさらです。主治医の医学的意見を踏まえつつ、手続の都合だけで時期を決めない形で検討する必要があります。
併合の等級が決まれば、賠償額も決まりますか。
等級が決まっても、それだけで賠償額が確定するわけではありません。自賠責保険の保険金額は施行令に定められた上限であり、後遺障害慰謝料、逸失利益、将来の治療費などの民事上の損害は別途検討します。傷あとに関する逸失利益は、職業名だけで一律に判断されるものではありません。
まとめ
- 熱傷後の後遺障害は、傷あと(醜状障害)と瘢痕拘縮による関節の動かしにくさ(機能障害)を、まず別々に検討します。
- 自賠責の等級・号数は自動車損害賠償保障法施行令別表第二によります。労災の認定基準とは号数の表記が一致しない部分があるため、交通事故の手続では自賠責の別表を基準にしてください。
- 認定基準上、醜状障害と機能障害は別の系列とされていますが、系列が異なることは併合を検討する出発点にすぎず、重複評価や通常派生の関係も確認されます。
- 複数の後遺障害がある場合の等級の繰上げは、自動車損害賠償保障法施行令第2条第1項第3号に定めがあります。二つ認定されれば必ず等級が上がるという関係ではありません。
- 診断名だけでは等級は決まりません。傷あとの位置・寸法・写真と、関節可動域の計測値・測定条件を、それぞれ資料として残しておく必要があります。
- 次の行動は、後遺障害診断書の記載事項の確認、患部の写真と可動域測定表の準備、認定結果を受け取っている場合は認定理由と提出資料の照合です。
神戸みらい法律会計事務所では、初回相談を無料でお受けしています。交通事故の分野では、可能な範囲でお電話での無料相談にも対応しています。営業時間外・土日祝のご相談にも対応しています。
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監修者・執筆者
弁護士・公認会計士 藤井 貴之(兵庫県弁護士会所属)
弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所 代表弁護士・公認会計士。交通事故、相続、企業法務、労働問題、損害賠償などを取り扱っています。
参考資料
本記事は、交通事故による熱傷後の傷あとと瘢痕拘縮に関する一般的な解説です。実際の等級認定や賠償額は、事故態様、受傷部位、熱傷の深さと範囲、治療経過、手術の内容、既往の有無、資料の内容などにより異なります。具体的な事案については、資料を確認したうえで弁護士にご相談ください。

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