顔の傷の後遺障害等級と男女差|改正の経緯と過去事案への影響 |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|弁護士法人ひょうご支所神戸みらい法律会計事務所

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顔の傷の後遺障害等級と男女差|改正の経緯と過去事案への影響

交通事故で顔や首など人目につきやすい部位に傷跡が残ると、治療の見通しだけでなく、「後遺障害としてどのように扱われるのか」という不安を抱える方は少なくありません。特に、「以前は男女で等級が違ったと聞いたが、今はどうなっているのか」「過去の事故や、すでに決まった認定に影響はあるのか」という疑問を持たれる方が多くいらっしゃいます。

結論から申し上げると、現在の外貌醜状の後遺障害等級認定では、性別によって等級を分ける考え方は採られていません。かつては男女で異なる等級が定められていましたが、制度改正によって解消されています。もっとも、過去に発生した事故や、すでに認定・示談が済んでいる事案への影響は、事故がいつ発生したか、手続がどこまで進んでいるかなどによって異なり、個別の確認が必要です。

この記事では、外貌醜状の等級に男女差があった時代の制度内容、それが見直された経緯、現在の考え方、そして過去の事案への影響と確認すべき資料を、順を追って整理します。

ご自身の事故が改正前後のどちらに当たるのか、認定内容や示談の見通しに疑問がある場合は、資料を確認したうえで方針を整理することができます。

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結論|現在の外貌醜状の等級認定に男女差はありません

はじめに要点を整理します。

  • 現在の交通事故実務では、外貌醜状の後遺障害等級は性別を区別せず、傷跡の部位・大きさ・程度など障害の状態を基礎に検討されます。
  • かつては、同じ程度の傷跡でも男女で異なる等級が定められていましたが、制度改正により解消されました。
  • 改正のきっかけは、労災保険の障害等級について男女差を違憲と判断した京都地方裁判所平成22年5月27日判決です。
  • 交通事故(自賠責)の等級表への適用は、事故の発生日を基準とします。ご自身の事故がどちらの基準によるかは、事故発生日の確認が出発点になります。
  • すでに認定・示談が済んでいる場合の見直しの可否は、示談の有無・内容、時効、資料の有無などにより異なるため、断定はできません。まずは資料の確認が重要です。

醜状障害・外貌醜状とは|交通事故の後遺障害としての位置づけ

「醜状障害」とは、交通事故によるけがや手術の跡などが治療後も傷跡として残った場合の、法律上の後遺障害分類の一つです。そのうち、頭部・顔面部・頸部といった部位に関するものを「外貌醜状」と呼びます。読者ご自身の外見を評価する趣旨の言葉ではなく、あくまで後遺障害を分類するための法律上の用語です。

「外貌」とは何を指すか

ここでいう「外貌」とは、頭部・顔面部・頸部など、日常的に露出し人目につきやすい部分を指します。腕や脚(上肢・下肢)の露出面に残った傷跡は、外貌醜状とは別の区分で扱われます。また、傷跡が後遺障害として評価されるには、「人目につく程度以上のもの」であることが前提とされており、頭髪や眉毛に隠れる部分などは対象外とされる場合があります。具体的な認定基準は事案により異なるため、資料を確認したうえで判断する必要があります。

労災保険の障害等級と自賠責(交通事故)の後遺障害等級の関係

傷跡に関する等級は、もともと労働者災害補償保険(労災保険)の障害等級表に定められています。交通事故で用いられる自賠責(自動車損害賠償保障法施行令別表第二)の後遺障害等級表は、その等級表と解釈・運用に準拠する関係にあります。つまり、労災の制度が改正されると、それに準じて交通事故の等級表も見直される構造になっています。後述する男女差の解消も、まず労災で判断・改正され、それを受けて自賠責に反映されました。

労災保険の等級と自賠責(交通事故)の等級は、等級番号は共通する部分が多いものの、号数や露出面の範囲など細部が異なります。ご自身の事案がどちらの制度によるものかを取り違えないことが重要です。

改正前は等級に男女差があった|歴史的な制度内容として

制度改正の前、外貌醜状の後遺障害等級は、同じ程度の傷跡であっても男女で異なる等級が定められていました。以下は、交通事故で用いられる自賠責の等級表(自動車損害賠償保障法施行令別表第二)における、改正前の区分を歴史的な制度内容として整理したものです。現在の評価と混同しないようご注意ください。

傷跡の程度 女性(改正前) 男性(改正前)
外貌に著しい醜状を残すもの 第7級12号 第12級14号
外貌に醜状を残すもの 第12級15号 第14級10号

このように、「著しい醜状」では女性が第7級・男性が第12級と、五つの等級差がありました。この差は、同じ傷跡でも男女で受ける精神的苦痛や就労への影響が異なるという当時の考え方を前提としたものとされていますが、後にその合理性が問われることになります。

なぜ見直されたのか|京都地裁判決から制度改正までの経緯

男女差の解消は、一つの裁判をきっかけに、厚生労働省での検討を経て、労災・自賠責の順に制度へ反映されました。時系列で整理します。

きっかけとなった京都地裁平成22年5月27日判決

この事案は、労災保険に関するものでした。顔面などに大きな傷を負った男性が、労災保険の障害等級について、著しい外貌醜状を女性は第7級、男性は第12級とする定めが法の下の平等に反すると主張し、国の給付処分の取消しを求めたものです。

京都地方裁判所は、著しい外貌醜状についてのみ男女間に五つの等級もの差を設けていることは、合理的な理由のない性別による差別的取扱いであり、憲法第14条第1項に違反すると判断しました。ここで重要なのは、判決は男女で差を設けること自体を直ちに違憲としたのではなく、「五等級もの差」が大きすぎて合理的に説明できない点をとらえて違憲としたことです。「差別したこと」ではなく「差が大きすぎたこと」が問題とされた、という射程の理解が正確です。この判決は、その後確定しました。

厚生労働省の専門検討会と労災保険制度の改正

この判決を受けて、厚生労働省は「外ぼう障害に係る障害等級の見直しに関する専門検討会」を設けて検討を行いました。その報告書に基づき、労災保険制度の障害等級規定を見直すことが決定されます。見直しの内容は、大きく二つです。一つは、外貌の醜状に関する男性の等級を女性の等級にそろえて男女差を解消すること。もう一つは、医療技術の進歩などを踏まえ、従来はなかった中間の等級(相当程度の醜状)を新たに設けることでした。労災保険制度の等級表は平成23年2月1日に改正され、違憲判決の確定日である平成22年6月10日にさかのぼって適用されました。

自賠責制度への反映と適用時点

自賠責の等級表は労災の等級表に準拠しているため、厚生労働省での検討結果を踏まえ、自賠責の等級表(政令)も改正されました。改正後の施行令の公布は平成23年5月2日で、労災と同様に平成22年6月10日以後に発生した事故について適用されます。つまり、交通事故については「事故の発生日」が平成22年6月10日以後かどうかが、新しい(男女差のない)等級表によるかの分かれ目になります。

現行制度の考え方|性別ではなく障害の状態を基礎に検討

現在の外貌醜状の等級は、性別を区別せず、傷跡の部位・大きさ・程度・人目につく程度など、障害の状態を基礎に検討されます。区分は、程度に応じて「著しい醜状」「相当程度の醜状」「醜状」の三段階に整理されており、自賠責では順に第7級12号・第9級16号・第12級14号が対応します。中間の第9級は、前記の改正で新設された等級です。

各等級に該当するかどうかは、傷跡の大きさや長さ、人目につく程度などを、資料や面接調査に基づいて個別に判断します。どの区分に当たるかは事案により異なり、確定的な結論を事前に述べることはできません。現行の各等級区分の詳しい認定基準は、別の関連コラムで整理する予定です(下記「弁護士に相談するタイミング」もあわせてご覧ください)。

改正は過去の事故・認定にどう影響するか|適用時点の確認が必要

「過去の事故でも新しい等級が使えるのか」という点は、多くの方が気になるところです。ここは断定を避け、確認すべきポイントを整理します。

適用の基準は「事故発生日」

前記のとおり、交通事故(自賠責)については、事故の発生日が基準です。平成22年6月10日以後に発生した事故であれば、男女差のない現行の等級表が適用されます。それより前に発生した事故については、当時の取扱いとの関係を個別に確認する必要があります。まずは交通事故証明書などで事故発生日を確認することが出発点になります。

状況別の考え方(これから申請/認定済み・示談前/示談済み)

状況 考え方の方向性 まず確認したいこと
これから後遺障害申請をする 事故発生日が平成22年6月10日以後であれば、性別で等級が分かれることはありません。傷跡の程度に応じた区分で検討されます。 事故発生日、症状固定の有無、後遺障害診断書、傷跡の画像・写真
認定は受けたが示談はこれから 認定内容に疑問がある場合、資料を確認したうえで、等級や賠償の見通しを検討する余地があります。結論は個別事情により異なります。 後遺障害等級認定票、保険会社からの通知、示談書案、認定日
すでに示談が済んでいる 示談後の見直しは、示談の有無・内容、時効、資料の有無などにより結論が変わります。必ず見直せるとは限りません。まず資料の確認が必要です。 示談書、支払決定の内容、示談成立日、事故発生日

いずれの場合も、「制度が改正されたから必ず等級が上がる・必ず見直せる」というものではありません。適用時点や手続の進み具合、資料の内容によって結論は変わるため、まずは事実関係を確認することが大切です。

手続の前に確認しておきたい資料と進め方

後遺障害の申請、異議申立て、示談のいずれの場面でも、事前に資料を整理しておくことが、見通しを検討するうえで役立ちます。

後遺障害の申請前に確認したいこと

  • 交通事故証明書(事故発生日の確認)
  • 診断書・診療報酬明細書
  • 後遺障害診断書(症状固定後に作成されたもの)
  • 傷跡の部位・大きさが分かる画像資料・写真
  • 症状固定日が分かる資料

異議申立てを検討する前に

  • 後遺障害等級認定票(認定結果と理由)
  • 認定日が分かる資料
  • 追加で提出できる画像・写真・医証
  • 異議申立ての準備資料や期限に関する案内

示談の前に

  • 保険会社から提示された示談書案・損害計算の内訳
  • 後遺障害等級認定の結果
  • 事故発生日・症状固定日・認定日が分かる資料

過去の認定を確認したい場合

  • 示談書(示談が成立しているか、内容はどうか)
  • 支払決定の内容が分かる資料
  • 事故発生日・示談成立日

示談の前に資料を整理しておくことは重要です。一度示談が成立すると、後からの見直しが難しくなる場合があります。判断に迷う場合は、署名の前に一度確認することをおすすめします。

弁護士に相談するタイミング

弁護士への相談は、結果を保証するためのものではなく、資料を確認したうえで、等級や賠償の見通し、取り得る手続を整理するためのものです。次のような場面では、手続を進める前に一度確認しておくと、方針を整理しやすくなります。

  • 提示された内容が妥当か、資料を確認して検討したいとき
  • 後遺障害の等級認定に疑問があり、異議申立てを検討しているとき
  • ご自身の事故が改正前後のどちらの基準によるか整理したいとき
  • 示談の前に、確認すべき資料や見通しを把握しておきたいとき

これらはいずれも、資料を確認したうえで判断する必要がある事柄です。個別事情により結論は異なります。

後遺障害の等級や示談の見通しに疑問がある場合は、資料を確認したうえで対応方針を整理することができます。当事務所では交通事故に関するご相談を承っています。

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よくある質問(FAQ)

醜状障害の等級は、現在も男女で違いますか。

現在の外貌醜状の等級認定では、性別によって等級を分ける取扱いはありません。傷跡の部位・大きさ・程度など障害の状態を基礎に検討されます。

なぜ外貌醜状の等級表は改正されたのですか。

労災保険の障害等級について、著しい外貌醜状に男女間で五等級もの差を設けていた部分が憲法第14条第1項に反すると判断された京都地裁判決を契機に、厚生労働省での検討を経て、労災・自賠責の等級表が見直されたためです。

改正前は、どのような男女差があったのですか。

交通事故で用いられる自賠責の等級表では、「著しい醜状」が女性は第7級・男性は第12級、「醜状」が女性は第12級・男性は第14級とされ、同じ程度の傷跡でも男女で等級が異なっていました。号数の詳細は資料の確認が必要です。

京都地裁の判決は、交通事故の後遺障害にも関係しますか。

判決自体は労災保険に関するものですが、自賠責の等級表は労災の等級表に準拠しているため、その後の自賠責の改正につながりました。もっとも、裁判における損害の評価は等級認定と別に判断される場面もあり、個別事情により結論は異なります。

過去の事故でも、改正後の等級が使われますか。

交通事故(自賠責)については、事故の発生日が平成22年6月10日以後であれば、男女差のない現行の等級表が適用されます。それより前の事故は、当時の取扱いとの関係を個別に確認する必要があります。

すでに示談した後でも、見直せますか。

示談後の見直しが可能かどうかは、示談の有無・内容、時効、資料の有無などにより異なり、必ず見直せるとは限りません。まずは示談書や関係資料を確認したうえで判断する必要があります。

等級認定に納得できない場合は、何を確認すべきですか。

後遺障害等級認定票の認定理由、認定日、追加で提出できる画像・写真・医証、異議申立ての準備資料や期限などを確認することが出発点になります。資料を確認したうえで、見直しの余地があるかを検討します。

弁護士に相談するときは、どの資料を持参すべきですか。

交通事故証明書、後遺障害診断書、後遺障害等級認定票、保険会社からの通知、示談書案、そして事故発生日・症状固定日・認定日が分かる資料があると、見通しの検討がしやすくなります。

まとめ

  • 現在の外貌醜状の後遺障害等級認定では、性別で等級を分ける考え方は採られていません。
  • 改正の契機は、著しい外貌醜状の男女差を違憲とした京都地裁平成22年5月27日判決です。判決は「差を設けること自体」ではなく「差が大きすぎること」を問題としました。
  • 厚生労働省の検討を経て労災の等級表が改正され、これに準じて自賠責の等級表も見直されました。改正では中間等級(相当程度の醜状)も新設されています。
  • 交通事故については、事故の発生日が平成22年6月10日以後かどうかが適用の分かれ目です。
  • 過去の認定や示談済み事案への影響は、適用時点・手続状況・資料により異なります。まずは事故発生日、症状固定日、認定日、示談の有無を確認しましょう。

ご自身の事案が改正前後のどちらに当たるか、認定や示談の見通しに疑問がある場合は、資料を確認したうえで方針を整理することができます。費用の目安や担当弁護士についても、あわせてご確認いただけます。

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参考資料(公的機関・公式資料)

  • 国土交通省「外貌醜状に関する後遺障害等級の改正」
  • 厚生労働省「外ぼう障害に係る障害等級の見直しに関する専門検討会報告書」
  • 裁判所ウェブサイト掲載 京都地方裁判所平成22年5月27日判決
  • 自動車損害賠償保障法施行令(別表第二 後遺障害等級表)(e-Gov法令検索)
  • 労働者災害補償保険法施行規則(別表第一 障害等級表)(e-Gov法令検索)

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