交通事故で腹部を強く打った後や、腹部のけがの治療で開腹手術を受けた後に、立ち上がったときやお腹に力を入れたときだけ、お腹や手術痕のあたりがぽっこりと膨らむ──。腹壁瘢痕(ふくへきはんこん)ヘルニアや腹壁ヘルニアと呼ばれる状態は、こうした形で気づかれることがあります。
もっとも、「手術で治る可能性がある」と説明されている、痛みはそれほど強くない、といった事情から、そもそも後遺障害として申請できるのか、何級に当たり得るのか、判断に迷う方が少なくありません。診断名だけで等級が決まることはなく、どのような場面で脱出・膨隆が生じるか、修復手術で完治が期待できるか、画像や手術記録で経過を示せるか、という確認が出発点になります。
この記事では、交通事故の後に腹壁瘢痕ヘルニア等が残った場合について、次の点を解説します。
- 後遺障害の対象になり得るヘルニアの種類と、用語の違い
- 第9級第11号と第11級第10号の分かれ目
- 手術で治る可能性がある場合の症状固定の考え方
- 因果関係の整理と、申請で確認したい医学資料
- 逸失利益・将来の手術費など損害項目と、示談前のチェックポイント
お腹の膨らみや違和感が残っている段階でも、資料の集め方や申請の進め方を早めに整理しておくと、その後の判断がしやすくなります。神戸みらい法律会計事務所では、交通事故に関するご相談を初回無料(事前予約制)でお受けしています。
結論と全体像|まず確認したい3つのポイント
ポイント1 腹壁瘢痕ヘルニア、腹壁ヘルニア、鼠径(そけい)ヘルニア、内ヘルニアは、自賠責保険の後遺障害として、第9級第11号又は第11級第10号に該当する可能性があります。
ポイント2 等級の分かれ目は、痛みの強さやヘルニアの大きさそのものではなく、「常時又は立位で脱出・膨隆が認められるか」「腹圧が強くかかるときに脱出・膨隆が認められるか」という状況です。
ポイント3 ヘルニアは手術で治ることが多いため、修復術を試みても完治を期待できない場合や、手術適応とならない場合に、障害を残した症状固定として評価されるかが問題になります。
全体像を表に整理すると、次のとおりです。いずれも個別事情により結論が変わるため、資料を確認したうえで判断する必要があります。
| 確認事項 | 要点 |
|---|---|
| 問題になり得る等級 | 自賠責保険では第9級第11号又は第11級第10号 |
| 等級の分かれ目 | 脱出・膨隆が「常時又は立位」で生じるか、「腹圧が強くかかるとき」に生じるか |
| 症状固定の考え方 | 修復術を試みても完治を期待できない場合、手術適応とならない場合が中心 |
| 中心となる資料 | 事故直後の記録、CT等の画像、手術記録、立位・腹圧時の診察所見、後遺障害診断書 |
| 注意点 | 労災保険の認定基準と自賠責保険では号の番号が異なる。示談後の追加請求は難しくなりやすい |
「外傷性内臓ヘルニア」という言葉の整理|対象になるヘルニアの種類
「外傷性内臓ヘルニア」という言葉は、事故がきっかけで生じたヘルニアを広く指す通俗的な表現として使われることがありますが、医学上・認定基準上の正式な用語として定着しているものではありません。後遺障害を検討するときは、どの種類のヘルニアなのかを診断名で確認することが第一歩になります。
認定基準に挙げられているヘルニアの種類
労災保険の障害認定基準(自賠責保険の等級認定でも原則として参照されます。詳細は次章で説明します。)は、「腹壁瘢痕ヘルニア、腹壁ヘルニア、鼠径ヘルニア又は内ヘルニアを残すもの」を対象に挙げています。それぞれの概要は次のとおりです。
| 名称 | 概要 |
|---|---|
| 腹壁瘢痕ヘルニア | 開腹手術の創(きず)あとの瘢痕部で腹壁の閉鎖が不十分になり、腸管などが皮膚の下へ脱出するもの。事故治療の開腹手術後に生じるケースが中心です |
| 腹壁ヘルニア | 瘢痕部以外の腹壁(へその部分など)に生じるもの。事故の外力そのもので腹壁の筋膜などが損傷して生じる外傷性の腹壁ヘルニアが問題になることもあります |
| 鼠径ヘルニア | 足の付け根(鼠径部)に生じるもの。事故との因果関係が争点になりやすい類型です |
| 内ヘルニア | 腹腔内のすき間や裂け目に腸管が入り込むもの。体表からは見えず、画像検査や手術で確認されます |
医療機関の解説では、腹壁瘢痕ヘルニアは手術の傷跡部分が弱くなって内臓が皮膚の下に脱出するものとされ、力を入れると膨らみが大きくなり、腹圧を抜くと戻ることが多いと説明されています。また、ヘルニアが自然に治ることはなく、治すためには手術(縫合やメッシュによる修復)が必要とされています。
混同しやすい言葉・状態
次の言葉は、上記のヘルニアと混同されやすいため注意が必要です。
- 「内臓ヘルニア」と「内ヘルニア」──前者は通俗的な表現、後者は腹腔内に腸管が入り込む医学上の分類で、意味が異なり得ます
- 横隔膜ヘルニア──横隔膜の損傷部から腹部臓器が胸腔側へ入り込むもので、呼吸機能などの別の観点からの評価が問題になり得ます
- 椎間板ヘルニア──背骨の椎間板の問題であり、本記事のヘルニアとは全く別の障害です
- 腹直筋離開、漿液腫(しょうえきしゅ)、単なる手術瘢痕や瘢痕部の痛み──外見上は似た膨らみや症状でも、ヘルニアとは区別されます。どれに当たるかは医師の診断によります
受診を優先すべき症状について 医療機関の解説では、ヘルニアの膨らみが押しても戻らなくなる嵌頓(かんとん)という状態になると、腸管の血流障害を起こすことがあり、通常は緊急手術が必要とされています。膨らみが戻らない、強い腹痛や吐き気を伴うといった場合は、賠償の検討よりも先に、速やかに医療機関へ連絡・受診してください。
後遺障害等級の判断基準|第9級第11号と第11級第10号
自賠責保険における等級と限度額
自賠責保険の後遺障害等級表(自動車損害賠償保障法施行令別表第二)には、胸腹部臓器の機能障害に関する等級として、次の定めがあります。
| 等級(別表第二) | 障害の内容 | 自賠責保険の限度額 |
|---|---|---|
| 第9級第11号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | 616万円 |
| 第11級第10号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの | 331万円 |
限度額は自賠責保険から支払われる金額の上限であり、損害の総額がこれに収まるという意味ではありません。任意保険会社との交渉や訴訟では、これとは別に損害全体を計算します。
詳細な分岐は労災の認定基準に準じて判断される
自賠責保険の支払基準(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号)は、後遺障害の等級認定を「原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う」と定めています。そして、労災保険の認定基準(平成18年1月25日基発第0125002号「胸腹部臓器の障害に関する障害等級認定基準について」)は、ヘルニアについて次の分岐を示しています。
- 常時ヘルニア内容の脱出・膨隆が認められるもの、又は立位をしたときヘルニア内容の脱出・膨隆が認められるもの──労災の第9級の7の3
- 重激な業務に従事した場合等腹圧が強くかかるとき(力仕事など、お腹に強く力がかかる場面)にヘルニア内容の脱出・膨隆が認められるもの──労災の第11級の9
ここで注意したいのは、労災保険と自賠責保険では号の番号の表記が異なることです。番号だけを見ると別の障害のように見えますが、対応関係は次のとおりです。
| 脱出・膨隆が認められる状況 | 労災の認定基準上の表記 | 自賠責保険で対応する等級 |
|---|---|---|
| 常時、又は立位をしたとき | 第9級の7の3 | 第9級第11号 |
| 重激な業務に従事した場合等、腹圧が強くかかるとき | 第11級の9 | 第11級第10号 |
診断名や痛みの強さだけでは等級は決まらない
上記のとおり、認定上重視されるのは、脱出・膨隆がどのような状況で生じるかです。腹壁瘢痕ヘルニアという診断名が付いているだけでは足りず、痛みが強いこと、ヘルニアの穴(ヘルニア門)が大きいことも、それだけで等級を決める事情ではありません。
実務上は、立位での診察や腹圧をかけた際の所見が診療録に記録されているか、画像で脱出の内容や部位が確認できるかが重要になります。診察のときに「どのような場面で膨らむのか」「どのような作業がつらいのか」を具体的に伝え、記録に残してもらうことが、後の等級判断の材料になります。もっとも、症状を再現するために無理に腹圧をかけるような自己判断の行為は避け、診察や検査の方法は医師に委ねてください。
症状固定と手術の関係|手術で治る可能性がある場合の扱い
ヘルニアの後遺障害で特徴的なのは、手術との関係です。労災の認定基準は、ヘルニアについては手術を行うのが通常であり、多くは手術により脱出を認めなくなることを前提に、「修復術を試みたが完治を期待できない場合又は手術適応とならない場合に限り、障害を残したまま治ゆとなる」としています。完治を期待できない場合の例としては、腹壁欠損が大きいため直接縫合が困難で、手術後も腹帯の着用が必須である場合が挙げられています。
労災保険にいう「治ゆ」は、交通事故の損害賠償実務でいう症状固定(治療を続けても症状の大きな改善が見込めなくなった状態)に対応する考え方ですが、両制度は別のものであり、当てはめは資料を確認したうえで個別に判断する必要があります。実務的には、次のような整理になります。
- 修復術で脱出がなくなった場合──ヘルニアそのものの後遺障害は残らない方向で考えられます(痛みなど他の症状は別途の検討になります)
- 修復術を受けたが再発した場合や、腹壁欠損が大きく完治を期待できない場合──障害を残した症状固定として、等級評価の対象になり得ます
- 全身状態などから手術適応がないと判断された場合──手術をしないまま症状固定として評価される可能性があります
- 手術を予定している、治療方針を検討中の場合──症状固定の判断自体が時期尚早とされることがあります
手術を受けるかどうか、いつ受けるかは、危険性や期待できる改善を踏まえた医学的判断であり、主治医と相談して決める事項です。賠償手続の都合だけで治療の選択を決めることは適切ではありません。症状固定のタイミングについて保険会社から連絡があった場合の考え方は、症状固定と言われたときの対応の記事で解説しています。
因果関係の考え方|事故によるものか、手術によるものか
2つの発生パターンと確認の視点
交通事故に関係するヘルニアは、発生の経過により大きく2つに分かれ、確認すべき資料も異なります。
- 事故の外力で直接生じた場合──ハンドルやシートベルトによる強い圧迫などで腹壁の筋膜・筋層が損傷し、ヘルニアが生じるパターンです。事故直後の診察所見や画像に腹壁損傷の記録があるかが出発点になります
- 事故治療の開腹手術後に生じた場合──事故による腹部臓器損傷(肝臓・脾臓・腸管の損傷など)の治療として開腹手術を受け、その手術創に腹壁瘢痕ヘルニアが生じるパターンです。「事故と腹部損傷」「腹部損傷と開腹手術」「開腹手術とヘルニア」という経過ごとに、診療録・画像・手術記録で連続性を確認します
事故から時間が経ってからヘルニアと診断された場合も、直ちに因果関係が否定されるわけではありませんが、発症時期や症状経過の記録が重要になります。気になる膨らみや違和感があれば、早めに受診して記録を残しておくことをおすすめします。
既往症や生活上の要因があるとき
事故前に開腹手術を受けたことがある、もともとヘルニアがあった、創部の感染を起こした、肥満・糖尿病・喫煙などの要因がある──こうした事情は、因果関係や賠償額の調整(素因減額)に関する相手方の主張につながることがあります。
もっとも、既往や体質などの要因があるからといって、当然に因果関係が否定されたり、賠償額が減額されたりするわけではありません。事故前後の画像の比較、初診時の所見、手術記録、発症までの経過、医師の意見などを確認したうえで、個別に判断する必要があります。相手方から既往症を理由とする主張があった場合も、根拠資料を確認しないまま受け入れる必要はありません。
後遺障害申請で確認したい資料
ヘルニアの後遺障害を検討する際に役割を持ち得る資料は、次のとおりです。事案によって必要な範囲は異なり、すべてが常に必要というわけではありません。資料の集め方の全体像は、後遺障害の証拠の集め方の記事で解説しています。
| 資料 | 確認できること | 主な取得先・作成者 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 事故直後の診断書・救急記録 | 事故当時の腹部外傷や臓器損傷の有無 | 搬送先・初診の医療機関 | 因果関係の出発点になります |
| CT・超音波などの画像と読影レポート | ヘルニアの部位、ヘルニア門、脱出している内容 | 検査を受けた医療機関 | 撮影時期・体位により見え方が変わることがあります |
| 診療録(カルテ) | 立位・腹圧時の膨隆など、診察時の所見 | 通院先の医療機関 | 診察時に症状を具体的に伝えているかが記録を左右します |
| 手術記録・退院時要約 | 開腹手術や修復術の内容、術後の経過 | 手術を受けた病院 | 手術後に生じたヘルニアでは特に重要です |
| 再手術の適応に関する主治医の判断 | 完治を期待できるか、手術適応の有無 | 主治医 | 記載を強要したり、結論を誘導したりしてはいけません |
| 腹帯など装具に関する記録・領収書 | 装具の必要性と使用状況 | 処方・購入先 | 費用の請求を検討する際の裏付けになります |
| 後遺障害診断書 | 症状固定時の自覚症状・他覚所見 | 主治医 | 作成前に伝えるべき症状を整理しておきます |
| 勤務先の資料・収入資料 | 業務内容、腹圧のかかる作業、配置転換、減収 | 勤務先など | 逸失利益の検討に影響します |
後遺障害診断書に何をどのように書いてもらうかは、等級判断に直結します。作成前の確認事項は、後遺障害診断書の作成前に確認したい資料の記事にまとめています。
患部の写真・動画についての注意 立位時の膨らみを写真や動画で残しておくことが参考になる場合はありますが、これらは診療録や画像検査などの医療記録に代わるものではありません。症状を再現するために無理な動作をすることは避け、撮影の要否や方法は医師や代理人に確認してください。身体の画像はプライバシー性が高いため、保存方法や送信先にも注意が必要です。
併存する障害と損害賠償の項目
ヘルニア以外の障害が残った場合
腹部に強い外傷を受けた事案では、ヘルニアのほかに、腸管の癒着・狭窄によるイレウス様症状(腹痛・腹部膨満感・吐き気など)、臓器の切除や摘出、人工肛門、痛みなどが残ることがあります。労災の認定基準には、小腸・大腸の狭窄について第11級の9とする基準や、人工肛門に関する基準など、症状ごとの定めがあり、胸腹部臓器に複数の障害がある場合には併合の方法を用いて等級を定めること、通常派生する関係にある障害はいずれか上位の等級で認定することとされています。
どの症状がどの障害として評価されるか、複数の障害をどうまとめるかは、認定基準の当てはめと個別事情により結論が変わる部分です。脾臓摘出など臓器の損傷そのものの後遺障害は、内臓損傷の後遺障害等級の記事で解説しています。
損害項目の全体像
後遺障害の等級は、損害額を計算する際の重要な前提ですが、等級が決まれば賠償額が自動的に決まるわけではありません。主な損害項目は次のとおりです。
| 損害項目 | 内容 | ヘルニア事案での留意点 |
|---|---|---|
| 治療関係費 | 治療費、通院交通費など | 原則として症状固定までの分が対象になります |
| 休業損害 | 事故による欠勤・休業に伴う減収 | 腹圧制限による業務制限の記録を残しておきます |
| 傷害慰謝料 | 入通院に伴う精神的損害 | 後遺障害慰謝料とは別の項目です |
| 後遺障害慰謝料 | 後遺障害が残ったことによる精神的損害 | 等級を踏まえ、裁判実務上参照される基準を前提に検討します |
| 後遺障害逸失利益 | 労働能力の低下による将来の収入減少 | 喪失率・喪失期間は職務内容などにより争われ得ます |
| 将来の手術費・装具費など | 再手術の費用、腹帯などの費用 | 必要性・相当性・実施の見込みの立証が問題になります |
逸失利益と将来の費用は「等級どおり」に決まらない
自賠責保険の支払基準の労働能力喪失率表では、第9級は35%、第11級は20%とされています。もっとも、これは出発点であり、実際の交渉や訴訟では、腹圧のかかる業務に従事しているか、配置転換や業務制限があったか、実際に減収が生じているか、医師の就業上の意見があるかなどの具体的事情を踏まえて、喪失率や喪失期間が争われることがあります。デスクワーク中心か、重量物を扱う仕事かによって、主張・立証の組み立ては大きく変わります。計算の仕組みは、後遺障害逸失利益の計算方法の記事で解説しています。
また、将来の再手術費用や腹帯などの装具費用を賠償に含めるためには、その必要性・相当性や、実際に支出する見込み(時期・金額を含みます)の立証が問題になります。主治医の見解や治療計画に関する資料を、示談の前に整理しておくことが重要です。
なお、賠償請求には期間制限があります。加害者に対する損害賠償請求権は、人の生命又は身体を害する不法行為については損害及び加害者を知った時から5年(民法第724条・第724条の2)、自賠責保険への被害者請求は損害及び保有者を知った時から3年(自動車損害賠償保障法第19条)が原則であり、国土交通省の案内では、後遺障害に関する被害者請求は症状固定日の翌日から3年以内とされています。起算点は事案により異なるため、時間が経っている場合は早めに確認してください。示談の後にヘルニアが判明した場合に追加請求できるかは、示談書の内容や判明の時期などによって結論が変わる難しい問題であり、個別の確認が必要です。
申請・示談の前に確認したいチェックリスト
ヘルニアの事案では、後遺障害診断書の作成、症状固定の判断、申請方法の選択、示談のそれぞれの場面で、確認しておきたいことがあります。
後遺障害診断書の作成前
- 立位や腹圧をかけたときの症状を、診察で具体的に伝えているか
- CTなどの画像、手術記録がそろっているか
- 再手術の適応や改善見込みについて、主治医の見解を確認したか
- 腹帯などの装具の使用状況が記録されているか
症状固定を提案されたとき
- 手術や治療により改善する見込みがあるか、主治医に確認したか
- 治療を続けたい場合に、その医学的な理由が記録に残っているか
- 症状固定の時期が早すぎないか、検討する材料があるか
後遺障害の申請をするとき
- 相手方保険会社に任せる方法(事前認定)と、自分で資料をそろえて請求する方法(被害者請求)のどちらによるか検討したか
- 提出される資料の内容を自分で確認したいか
- 結果に納得できない場合の異議申立てなどの手段があることを知っているか(後遺障害が非該当だった場合の記事)
示談案に署名する前
- 後遺障害の等級・逸失利益・将来の手術費や装具費が検討されているか
- 示談書の清算条項の範囲を確認したか
- 署名後は原則としてやり直しが難しいことを前提に、疑問点を解消したか(交通事故の示談案で確認すべき項目の記事)
後遺障害診断書の作成前と示談案への署名前は、後からやり直すことが難しくなりやすい場面です。手元の資料で何が確認でき、何が不足しているかを、弁護士が資料を確認したうえで整理できます。示談前・申請前に一度確認することをおすすめします。
弁護士に相談するタイミング
ヘルニアの後遺障害は、用語の区別、等級の分かれ目、症状固定と手術の関係、因果関係の立証、逸失利益の主張と、確認すべき事項が多い分野です。弁護士に相談することで結果が保証されるわけではありませんが、診断名と症状の経過を前提に、どの資料を集め、どの時期に申請・示談の判断をするか、方針を整理しやすくなります。
特に、症状固定や後遺障害申請を提案されたとき、示談案が提示されたときは、判断の前にご相談いただくと選択肢を残しやすくなります。当事務所の対応分野は交通事故の取扱業務のページを、費用は弁護士費用のページをご覧ください。
よくある質問
- お腹の手術痕が膨らんでいれば、必ず腹壁瘢痕ヘルニアの後遺障害になりますか。
- なりません。膨らみには漿液腫や腹直筋離開など、ヘルニア以外の原因もあり、まず医師の診断が前提になります。そのうえで、脱出・膨隆が生じる状況、手術の見込み、症状固定時の状態などの資料を確認して判断されます。
- 立っているだけで膨らみが出る場合は、何級に当たりますか。
- 認定基準では、常時又は立位でヘルニア内容の脱出・膨隆が認められるものは労災の第9級の7の3とされており、自賠責保険では第9級第11号に対応します。この基準に当たる可能性がありますが、診療録や画像などの資料を確認したうえで判断する必要があります。
- 重い物を持ったときだけ膨らむ場合は、何級に当たりますか。
- 腹圧が強くかかるときに脱出・膨隆が認められるものは労災の第11級の9とされており、自賠責保険では第11級第10号に対応します。こちらも、どのような場面で症状が出るかの記録が判断材料になります。
- 手術をすれば治る可能性があると言われています。それでも後遺障害の申請はできますか。
- 認定基準は、修復術を試みても完治を期待できない場合や、手術適応とならない場合に、障害を残した状態で治ゆ(症状固定)として扱うとしています。手術を予定している段階では症状固定の判断が難しいことがあるため、治療方針は主治医と、申請の時期は資料を踏まえて検討することをおすすめします。
- 痛みが強ければ、上の等級になりますか。
- ヘルニアの等級の分かれ目は、脱出・膨隆が生じる状況であり、痛みの強さだけで上位の等級になるものではありません。痛みなどの症状が別の観点から評価される余地があるかは、個別事情によります。
- 腸閉塞や癒着、臓器の切除がある場合は、別の後遺障害になりますか。
- 認定基準には、小腸・大腸の狭窄や人工肛門、臓器の障害などに関する定めが別にあり、複数の障害がある場合の併合や、通常派生する関係の扱いも定められています。どの障害として評価されるかは、治療経過と資料により個別に判断されます。
- 将来の再手術の費用や腹帯の費用は請求できますか。
- 請求できる可能性はありますが、必要性・相当性や実施の見込み、時期・金額の立証が問題になります。主治医の見解や費用の資料を示談前に整理しておくことが重要です。
まとめ|次に確認したいこと
- 腹壁瘢痕ヘルニアなどの後遺障害は、常時・立位の脱出・膨隆なら第9級第11号、腹圧が強くかかるときの脱出・膨隆なら第11級第10号に当たる可能性があります
- 修復術を試みても完治を期待できない場合や手術適応がない場合に、障害を残した症状固定として評価され得ます
- 事故→腹部損傷→開腹手術→ヘルニアという経過の連続性を、画像・手術記録・診療録で確認します
- 逸失利益は等級だけで決まらず、業務内容・減収・就業制限の資料が重要です
- 示談の前に、等級の当否と将来の手術費・装具費の扱いを確認します
神戸みらい法律会計事務所では、交通事故による後遺障害のご相談を初回無料(事前予約制)でお受けしています。腹部の膨らみや違和感が残っている方、症状固定や示談を提案されている方は、資料を拝見したうえで、等級の見通しと進め方を一緒に整理いたします。
ご予約は、お電話(078-797-5227)又は相談予約フォームで受け付けています。
監修者
弁護士法人ひょうご支所神戸みらい法律会計事務所
代表弁護士・公認会計士 藤井 貴之(兵庫県弁護士会所属・日本公認会計士協会兵庫会所属)
交通事故の損害賠償・後遺障害等級に関する相談に対応しています。経歴・取扱分野は弁護士紹介ページをご覧ください。
参考資料
- e-Gov法令検索「自動車損害賠償保障法」(昭和30年法律第97号)
- e-Gov法令検索「自動車損害賠償保障法施行令」(昭和30年政令第286号)別表第二
- 厚生労働省「胸腹部臓器の障害に関する障害等級認定基準について」(平成18年1月25日基発第0125002号)
- 金融庁・国土交通省「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」(損害保険料率算出機構掲載)
- 国土交通省「自賠責保険・共済の限度額と補償内容」
- 国土交通省「支払までの流れと請求方法」
- 聖路加国際病院ヘルニアセンター「腹壁瘢痕ヘルニア」
- 東京科学大学消化管外科学分野「腹壁ヘルニア」
いずれも2026年7月29日閲覧。法令・基準は今後改正される可能性があります。

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