脊椎固定術後の後遺障害|脊柱の変形障害・運動障害と確認資料 |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|

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脊椎固定術後の後遺障害|脊柱の変形障害・運動障害と確認資料

交通事故で背骨を折り、スクリューやロッドを入れる手術を受けた方から、「金属が体に残っているのだから、後遺障害として認めてもらえるのではないか」というご質問をいただくことがあります。手術を受けた方にとっては自然な感覚だと思います。

しかし、後遺障害の等級は、体内に器具が残っているかどうかで決まるものではありません。確認されるのは、どのような手術が行われたのか、どの範囲を固定したのか、骨を移植したのか、その骨がその後どうなっているのか、首や腰がどれだけ動くのか、痛みやしびれがどの程度残っているのかといった内容です。手術の名称が同じでも、これらは一人ひとり異なります。

この記事では、脊椎固定術やインストゥルメンテーション手術を受けた後に残る障害について、脊柱の変形障害・運動障害という二つの枠組みを軸に、頸部と胸腰部の区別、確認される画像や検査、申請前・示談前にそろえておきたい資料を整理します。個別の結論は資料の内容によって変わりますので、最終的な判断には資料の確認が必要です。

後遺障害診断書を作成してもらう前に、手術記録、術前・術後の画像、可動域の測定結果、現在の症状を整理しておくと、検討すべき障害の種類と、不足している資料が見えやすくなります。相談により、必要な資料と今後の進め方を整理できます。

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脊柱の固定手術を受けた後、最初に確認したいこと

脊柱の固定手術を受けた後の後遺障害を検討するときは、次の事項から確認していきます。どれも、診断書の病名だけでは分からず、手術記録や画像を見なければ確認できない事項です。

固定手術後に最初に確認する事項
確認する事項 確認できる資料 なぜ確認するのか
実際に行われた手術の名称と内容 手術記録、手術同意書、退院時要約 固定術、除圧術、椎弓形成術のいずれであるかにより、検討する枠組みが変わります。
固定した部位と椎間の数 手術記録、術後のエックス線写真、CT 頸部と胸腰部は別の部位として扱われます。固定範囲は可動域にも影響します。
骨移植の有無と移植した骨の状態 手術記録、経過中の画像 認定の基準は、移植した骨が吸収されているかどうかを要件に組み込んでいます。
使用した器具の種類と設置部位 手術記録、使用器具の記録、術後の画像 器具の存在自体は要件ではありませんが、術式を裏づける資料になります。
頸部・胸腰部の可動域 可動域の測定結果、後遺障害診断書 運動障害を検討する際の中心的な資料です。
痛み、しびれ、筋力低下、感覚障害など 神経学的検査、リハビリテーション記録、経過記録 脊柱の変形・運動障害とは別の枠組みで評価される場合があります。
治療の見通しと再手術の予定 診療録、主治医の説明 症状固定の時期の検討に関係します。
事故前の状態 事故前の診療記録・画像 事故との因果関係や既往症の評価に関係します。

この記事で繰り返しお伝えしたいのは、体内に器具が残っていること自体は、後遺障害の等級を決める要件として定められていないという点です。確認されるのは、固定術が行われたか、移植した骨がどうなっているか、実際にどれだけ動くか、という内容です。

脊椎固定術とインストゥルメンテーションは何が違うのか

ご相談の場面では、「固定術」「インストゥルメンテーション」「除圧術」といった言葉が混ざって使われていることがよくあります。まず、それぞれが何を指すのかを整理します。医学上の呼び方は医療機関によって異なることがありますので、最終的にはご自身の手術記録の記載で確認してください。

固定術は、骨どうしをつなげて動かなくする手術

脊椎固定術は、隣り合った脊椎(背骨の骨)どうしがぐらつかないようにし、最終的には骨がつながった状態(骨癒合)をつくることを目的とする手術です。骨をつなげるために、腸骨などから採取した骨や人工の骨補填材を移植することがあります。移植した骨が周囲の骨と一体化することで、その部分は動かなくなります。

骨がつながるまでには一定の期間がかかり、その間はコルセットなどの装用を指示されることがあります。骨癒合が得られたかどうかは、経過中のエックス線写真やCTで確認されます。

インストゥルメンテーションは、固定を助ける器具を用いる方法

インストゥルメンテーションは、スクリュー、ロッド、プレート、ケージなどの器具を用いて、脊椎を内側から支える方法を指します。椎弓根スクリューを用いる方法が代表的です。器具は、骨がつながるまでの間、その部分が動かないように支える役割を担います。

ここで大切なのは、器具そのものと、骨がつながることとは別の事柄であるという点です。器具は骨癒合を助けるために用いられるもので、器具が入っていることと、骨が実際につながったこととは、同じではありません。器具は、大きな問題がなければ体内に残したままにすることが多いとされていますが、残っていること自体が後遺障害の要件になるわけではありません。

除圧術、椎弓切除術、椎弓形成術は固定術とは別の手術

除圧術は、神経の通り道が狭くなっている部分を広げ、神経への圧迫を取り除くための手術です。椎弓の一部又は全部を切除する椎弓切除術、椎弓を広げて形を作り直す椎弓形成術などがあります。公益社団法人日本整形外科学会も、腰椎変性すべり症の手術について、神経の圧迫を取るだけの場合と、固定術を行う場合があると説明しています。

除圧術と固定術が同時に行われることもあれば、除圧術だけが行われることもあります。後述するとおり、除圧術や椎弓形成術は、固定術とは別の要件で検討されます。

器具が残っているだけでは等級が決まらない理由

後述するとおり、脊柱の変形障害について実務上参照される認定の基準は、「せき椎固定術が行われたもの(移植した骨がいずれかのせき椎に吸収されたものを除く。)」という定め方をしています。要件として書かれているのは固定術が行われたこと移植した骨が吸収されていないことであり、金属製の器具が残っていることではありません。

そのため、画像に器具が写っていることだけでは足りません。行われた手術が固定術であること、骨移植の有無と部位を手術記録で示し、移植した骨の状態を経過中の画像で示す必要があります。

自賠責の後遺障害等級と、認定の考え方の根拠

交通事故による後遺障害の等級は、自動車損害賠償保障法施行令の別表第一及び別表第二に定められています。脊柱に関する等級は、別表第二に次のとおり定められています。

脊柱に関する後遺障害等級(自動車損害賠償保障法施行令別表第二)
等級・号 等級表の文言 労災保険の障害等級表の対応する号
第6級5号 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの 第6級の4
第8級2号 脊柱に運動障害を残すもの 第8級の2
第11級7号 脊柱に変形を残すもの 第11級の5

号数の違いにご注意ください。自賠責と労災保険では、等級は同じでも号数が一致しない項目があります。脊柱の変形障害は、自賠責では第11級7号、労災保険では第11級の5です。インターネット上の記事や古い資料には、労災保険の号数がそのまま自賠責の号数として書かれていることがあります。書類や記事の記載を確認するときは、どちらの制度の話かを区別してください。

では、この短い文言をどのように当てはめるのでしょうか。自賠責保険の支払基準(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号。最終改正は令和元年の同告示第3号)は、後遺障害による損害について、「等級の認定は、原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う。」と定めています。国土交通省も、自賠責の後遺障害等級表は労働者災害補償保険制度の等級表に準拠していると説明しています。

そのため、実務では、厚生労働省が示している労災保険の障害等級認定基準(平成16年6月4日付け基発第604003号「せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準について」)の考え方が参照されます。もっとも、これは労災保険の基準であり、自賠責の法令そのものではありません。支払基準も「準じて行う」と定めており、常に完全に同じ結論になると決まっているわけではない点にご留意ください。なお、この認定基準では「せき柱」「せき椎」という表記が用いられています。この記事では読みやすさのため「脊柱」「脊椎」と表記しますが、同じものを指しています。

なお、自賠責の等級認定に関する損害調査は、損害保険料率算出機構が行っています。同機構の説明によれば、自賠責損害調査事務所で調査を行い、判断が難しい事案は地区本部や本部で審査し、特定の事案は自賠責保険(共済)審査会で審査されるとされています。

固定術後に検討される脊柱の後遺障害

脊柱の障害は、大きく「変形障害」と「運動障害」に分かれます。このほか、体を支える機能に着目した荷重機能障害という枠組みもあります。痛みやしびれは、これらとは別に検討されることがあります。

脊柱の変形障害

変形障害は、脊柱の形が変わって戻らなくなった状態を評価する枠組みです。認定の基準は、著しい変形、中程度の変形、変形を残すものの三段階で整理しています。

脊柱の変形障害の区分と主な要件
区分 認定の基準が挙げる主な要件 対応する等級
著しい変形を残すもの エックス線写真等により脊椎圧迫骨折等を確認できる場合で、2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少して後彎が生じているもの、又は1個以上の椎体の前方椎体高が減少して後彎が生じ、あわせてコブ法による側彎度が50度以上であるもの 第6級
中程度の変形を残すもの 上記の後彎が生じているもの、コブ法による側彎度が50度以上であるもの、又は環椎若しくは軸椎の変形・固定(環椎と軸椎との固定術が行われた場合を含む。)により一定の肢位になっているもの 第8級に準ずる(自賠責では第8級に相当するものとして扱われます。)
変形を残すもの 脊椎圧迫骨折等を残し、そのことがエックス線写真等により確認できるもの、脊椎固定術が行われたもの(移植した骨がいずれかの脊椎に吸収されたものを除く。)、又は3個以上の脊椎について椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたもの 第11級7号

固定術を受けた方にとって重要なのは、二つの点です。

一つは、外見上の変形が目立たなくても、変形障害の検討対象になり得るという点です。「変形」という言葉から、背中が曲がって見える状態を思い浮かべる方が多いのですが、認定の基準は、脊椎固定術が行われたことを、それ自体独立した要件として挙げています。したがって、姿勢に大きな変化がなくても、固定術が行われていれば検討の対象になります。

もう一つは、移植した骨が吸収されている場合は除かれているという点です。骨移植を伴わずに器具だけで固定した場合や、移植した骨が吸収されてしまった場合の扱いは、手術記録と経過中の画像を確認しなければ判断できません。この点は、固定術を受けた方の事案で実際に問題となりやすい部分です。

また、除圧のための手術であっても、3個以上の脊椎について椎弓切除術等の椎弓形成術を受けている場合は、変形を残すものとして検討される余地があります。逆にいえば、1個又は2個であれば、この要件には当たりません。手術記録で対象となった椎弓の数を確認する必要があります。

なお、椎体の圧潰や後彎・側彎の程度に関する詳しい説明は、脊柱の変形障害・運動障害に関する記事で扱っています。あわせてご覧ください。

脊柱の運動障害

運動障害は、脊柱が動かせる範囲が狭くなった状態を評価する枠組みです。認定の基準は、著しい運動障害と運動障害の二段階で整理しています。

脊柱の運動障害の区分と主な要件
区分 認定の基準が挙げる主な要件 対応する等級
著しい運動障害を残すもの 頸部及び胸腰部のいずれもが強直したもの。その原因が、頸椎及び胸腰椎のそれぞれの脊椎圧迫骨折等(エックス線写真等で確認できるもの)、それぞれに行われた脊椎固定術、又は項背腰部軟部組織の明らかな器質的変化であるもの 第6級5号
運動障害を残すもの 脊椎圧迫骨折等、脊椎固定術、又は項背腰部軟部組織の明らかな器質的変化により、頸部又は胸腰部の可動域が参考可動域角度の2分の1以下に制限されたもの。このほか、頭蓋・上位頸椎間に著しい異常可動性が生じたもの 第8級2号

ここで注意していただきたいのは、脊椎固定術が行われたことは、可動域が制限された原因として挙げられているにとどまるという点です。固定術を受けたというだけでは足りず、実際に可動域が参考可動域角度の2分の1以下に制限されていることが必要です。

参考可動域角度は、次のとおりとされています。

脊柱の参考可動域角度
部位 屈曲(前屈) 伸展(後屈) 回旋(左・右それぞれ) 側屈(左・右それぞれ)
頸部 60度 50度 60度 50度
胸腰部 45度 30度 40度 50度

可動域の評価には、いくつか実務上の約束事があります。まず、屈曲と伸展のように同一の面にある運動については、両方の角度を合計した値で制限の程度を評価します。次に、評価の中心となる主要運動は、頸部については屈曲・伸展と回旋、胸腰部については屈曲・伸展とされ、側屈は参考運動として扱われます。また、測定は原則として他動運動(検者が動かして測る方法)によることとされ、他動運動による測定値を採用することが適切でない場合に、自動運動による測定値が参考とされます。

可動域は、測定の方法や姿勢、代償動作の有無によって数値が変わり得ます。ご自身で角度を測って等級を判断することはお控えください。測定は医療機関で行われるものであり、後遺障害診断書に記載された数値がどのように測定されたのかが問題になることもあります。

荷重機能障害

認定の基準は、頭部や体幹を支えること自体が難しくなった場合について、荷重機能障害という枠組みを設けています。頸部及び腰部の両方の保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とするものは第6級に準ずるもの、頸部又は腰部のいずれかの保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とするものは第8級に準ずるものとして整理されています。

ここでいう硬性補装具は、常に必要とされるものを指しており、手術後の一定期間だけ装用するコルセットとは位置づけが異なります。装具の処方の記録や使用状況が分かる資料が確認されることになります。

痛み、しびれ、脊髄や神経根の症状

手術後に残る痛みやしびれについては、脊柱の変形・運動障害とは別に検討が必要です。認定の基準は、単に疼痛のために動かしにくいものは、局部の神経症状として等級を認定するとしています。動かしにくさの原因が器質的なものか、痛みによるものかが区別されるということです。また、圧迫骨折等による脊柱の変形に伴う受傷部位の疼痛については、いずれか上位の等級により認定するものとされています。

公益社団法人日本整形外科学会は、脊椎の手術によって圧迫を取り除いても、しびれが残る場合が少なくないと説明しています。長期間圧迫されていた神経に変化が生じている場合があること、手術の操作自体も神経に圧迫や牽引をもたらすことが理由として挙げられています。手術後にしびれが残ること自体は、直ちに手術の失敗や医療上の誤りを意味するものではありません。

脊髄の損傷を伴う場合は、脊柱の障害とは別の枠組みで、麻痺の範囲や程度、日常生活への影響を含めて評価されます。詳しくは、脊髄損傷の後遺障害等級に関する記事及び不全脊髄損傷に関する記事をご覧ください。

手術の内容、固定した範囲、骨癒合の状態、可動域、残っている症状のどれか一つでも資料で確認できていないと、どの枠組みで検討すべきかが定まりません。お手元の手術記録、画像、診断書を確認したうえで、検討すべき障害の種類と不足している資料を整理できます。

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固定術後の等級を検討する順序

実際に検討するときは、次の順序で確認していくと整理しやすくなります。ただし、これは考え方の順序であり、この記事だけでご自身の等級を判定していただくためのものではありません。

  • 事故によるけがのために手術が行われたのか、事故前からの疾患に対する手術だったのかを、事故前後の診療記録と画像で確認する。
  • 手術記録により、行われた手術が固定術か、除圧術か、椎弓形成術か、これらの組合せかを確認する。
  • 固定した部位が頸部か胸腰部か、固定した椎間の数はいくつかを確認する。
  • 骨移植が行われたか、移植した骨が吸収されていないかを、手術記録と経過中の画像で確認する。
  • 椎体の圧潰、後彎、側彎の有無と程度を、画像と読影報告書で確認する。
  • 頸部・胸腰部の可動域の測定結果を確認し、参考可動域角度と比較する。
  • 可動域の制限の原因が器質的なものか、痛みによるものかを、画像や神経学的検査とあわせて確認する。
  • 痛み、しびれ、筋力低下、感覚障害、膀胱直腸障害などが残っていないかを確認する。
  • 治療が終わっているか、再手術の予定がないかを確認し、症状固定の時期を主治医と検討する。

頸部と胸腰部、変形・運動・神経の障害が重なる場合

脊柱の障害は、重なり合って生じることがあります。この場合の扱いは単純ではありません。

まず、頸部と胸腰部の区別です。認定の基準は、脊柱のうち頸椎と胸腰椎とでは主たる機能が異なっているとして、原則として頸椎と胸腰椎を異なる部位として取り扱い、それぞれの部位ごとに等級を認定するものとしています。そのうえで、頸部と胸腰部のそれぞれに障害がある場合には、併合の方法を用いて準用等級を定めるものとされています。

「併合の方法を用いて」と書かれているとおり、二つの等級を単純に足し合わせるわけではありません。自動車損害賠償保障法施行令は、別表第二に掲げる後遺障害が二以上ある場合について、重い方の等級を、第5級以上に該当するものが二以上あるときは3級、第8級以上に該当するものが二以上あるときは2級、第13級以上に該当するものが二以上あるときは1級繰り上げると定めています。もっとも、実際にどのように扱われるかは、障害の部位、系列、派生の関係によって変わります。

次に、同じ部位に変形障害と運動障害の双方がある場合や、脊柱の障害と神経系統の障害が併存する場合です。これらは、単純に加算されるわけではなく、二重に評価しない形で整理されます。脊髄損傷を伴う場合には、脊柱の障害を含めて総合的に評価されることもあります。

併合、準用、加重の考え方については、後遺障害の併合・準用・加重に関する記事で詳しく扱っています。

頸椎と腰椎の両方を固定している場合、それぞれについて要件を満たすかどうかが別々に検討されます。「両方を手術したから重い等級になる」と単純に考えることはできません。逆に、片方だけの手術であっても、要件を満たせば検討の対象になります。

器具の残存・抜去・再手術が予定されている場合

体内の器具をめぐっては、次のような場面でご相談をいただきます。いずれも一律の結論にはなりません。

器具が残っている場合。前述のとおり、器具が残っていること自体は要件として定められていません。確認されるのは、固定術が行われたか、移植した骨が吸収されていないか、可動域がどうかという点です。

器具を既に抜去した場合、又は抜去の予定がある場合。抜去したことによって、行われた固定術がなかったことになるわけではありません。手術記録は残りますし、骨癒合の状態は画像で確認できます。他方で、抜去後に可動域が変化することもあります。抜去の前後の資料を残しておくことが重要です。抜去手術の費用や、そのための入通院をどう扱うかも、別途検討が必要です。

骨癒合が完成していない場合、骨癒合不全や偽関節が疑われる場合。認定の基準が「移植した骨がいずれかの脊椎に吸収されたものを除く」としている以上、移植した骨の状態は要件に直結します。経過中の画像で、いつの時点でどう評価されているのかを確認する必要があります。

スクリューの緩みや破損、ケージの沈下、隣接椎間障害、感染などがある場合。これらは治療の継続や再手術の要否に関わる事柄であり、症状固定の時期の判断にも影響します。合併症が生じたこと自体が、直ちに医療上の誤りを意味するものではありません。

再手術が予定されている場合。治療が続いている段階では、症状固定に至っていないと判断されることがあります。もっとも、経過観察のための通院が続いているだけの場合と、症状の改善を目的とした治療が続いている場合とでは意味が異なります。症状固定の時期は主治医の医学的な判断によりますが、その時期は後遺障害の申請時期や、自賠責保険への請求期限(後遺障害についての請求は、症状固定日の翌日から3年)にも関係します。

後遺障害の申請前・示談前にそろえたい資料

固定術を受けた事案では、通常の後遺障害の申請に必要な資料に加えて、手術の内容が分かる資料が重要になります。医師に特定の記載を求めるということではなく、実際に行われた手術の内容と現在の状態が、診療記録と診断書に正確に反映されているかを確認する、という趣旨です。

後遺障害の申請前・示談前に確認したい資料
資料 何を確認するための資料か
後遺障害診断書 傷病名、自覚症状、他覚所見、可動域、神経学的所見、症状固定日の記載
手術記録 術式、固定した椎間、使用した器具、骨移植の有無と採取部位
手術同意書・手術説明書 手術の目的、予定していた術式、説明された内容
退院時要約 入院中の経過、手術内容の要約、退院時の状態
使用した器具(インプラント)の記録 器具の種類、規格、設置部位
術前・術後のエックス線写真、CT、MRIと読影報告書 受傷した部位、椎体の圧潰、後彎・側彎、固定範囲、移植骨の状態、骨癒合の進み具合
可動域の測定結果 頸部・胸腰部の屈曲、伸展、回旋、側屈の角度と測定方法
神経学的検査の結果 筋力、感覚、反射、膀胱直腸機能
リハビリテーション記録 術後の経過、残っている動作の制限
装具の処方・購入の記録 硬性補装具の必要性と使用状況
事故前の診療記録・画像 既往症の有無、事故前後の変化
交通事故証明書、事故状況が分かる資料 事故と受傷の対応関係
仕事の内容、休業、配置転換、収入が分かる資料 就労への具体的な影響
後遺障害の認定結果と認定理由 どの資料がどう評価されたか、何が不足しているか
保険会社からの示談提示書、示談書案 前提とされた等級、損害項目、金額、清算条項

後遺障害診断書そのものの確認事項は、後遺障害診断書に関する記事で、申請のための資料の集め方は後遺障害申請の証拠収集に関する記事で扱っています。申請の方法については、事前認定と被害者請求の違いに関する記事もご覧ください。

事故との因果関係と既往症で確認されること

固定術が、今回の事故によるけがのために行われたのか、事故の前からあった変性疾患、脊柱管狭窄症、すべり症、側弯症などに対する治療として行われたのかは、しばしば争点になります。事故前から症状があった方や、事故前に画像上の異常を指摘されていた方の場合は、特に問題になりやすい部分です。

確認されるのは、事故前の画像と診療記録、事故直後の画像と診断、手術の適応をどのように判断したかが記載された診療録、手術同意書と手術記録、事故から手術までの症状と治療の経過、主治医の意見などです。事故と手術や残った障害との相当因果関係、治療の必要性と相当性、既往症や素因を理由とする減額は、それぞれ別の判断であり、いずれも個別の事情によって結論が変わります。

非該当・想定より低い等級だった場合に確認すること

認定の結果に納得がいかない場合、まず確認していただきたいのは、認定理由に何が書かれているかです。どの資料に基づいてどう判断されたのかが分かれば、不足していた資料が見えてくることがあります。

  • 認定理由に、行われた手術の内容や固定範囲が正確に反映されているか。
  • 提出した画像が、固定範囲や移植骨の状態を確認できるものであったか。
  • 骨癒合の状態を判断できる時期の画像が提出されているか。
  • 可動域の測定結果が記載されているか。測定の方法や測定した運動の種類は適切か。
  • 痛みやしびれについて、神経学的検査の結果が提出されているか。
  • 変形障害と運動障害のどちらの枠組みで検討されたのかが分かるか。
  • 頸部と胸腰部の双方に障害がある場合、その双方が評価されているか。

そのうえで、異議申立て、一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構の紛争処理手続、訴訟などの選択肢を検討することになります。もっとも、手続を行えば結果が変わるというものではありません。追加できる資料があるかどうか、その資料が認定理由で問題とされた点に答えるものかどうかが重要です。異議申立てを検討する際の考え方は、後遺障害が非該当となった場合の異議申立てに関する記事をご覧ください。

等級が認定された後に検討する損害

後遺障害の等級が認定されても、それだけで賠償額が決まるわけではありません。等級は、損害を検討するための出発点です。

等級の認定後に検討する主な損害項目
損害項目 検討する際に確認する点
後遺障害慰謝料 自賠責保険の支払基準による金額と、裁判実務で参照される基準による金額とは異なります。
後遺障害逸失利益 国土交通省が示す労働能力喪失率表では、別表第二の第6級は67%、第8級は45%、第11級は20%とされています。もっとも、これは目安であり、脊柱の変形障害の事案では、実際の仕事にどのような支障が生じているかが争われることがあります。
将来の治療費・手術費 器具の抜去や再固定の予定があるか、その必要性と相当性を示す資料があるか。
装具・器具の費用 硬性補装具の処方と使用状況の記録。
休業損害 症状固定までの休業と、収入の減少を示す資料。

特に逸失利益については、等級が付いたことだけでは足りず、職種、具体的な業務の制限、収入への影響を示す必要があります。重い物を持てない、長時間同じ姿勢を保てない、上を向く動作ができないといった支障を、業務内容と結びつけて説明できるかどうかが問題になります。あわせて、後遺障害慰謝料に関する記事と、労災保険からの給付を受けている場合の労災と自賠責の給付調整に関する記事もご確認ください。

弁護士に相談を検討したいタイミング

相談によってできるのは、資料を確認し、検討すべき障害の枠組みと不足している資料を整理し、申請や示談の進め方についての方針を立てることです。等級の認定や賠償額をお約束するものではありません。次のような時期は、資料を確認する意味が大きい場面です。

  • 後遺障害診断書を作成してもらう前。手術の内容や可動域の測定結果が、資料に反映されているかを確認できます。
  • 後遺障害の申請を行う前。提出する画像や資料が、確認されるべき点に答えるものになっているかを検討できます。
  • 器具の抜去や再手術の方針が示されたとき。症状固定の時期と申請の順序を整理できます。
  • 非該当、又は想定より低い等級の通知を受けたとき。認定理由を確認し、追加できる資料があるかを検討できます。
  • 保険会社から示談の提示を受けたとき。署名する前であれば、前提とされた等級と損害項目を確認できます。

よくある質問

スクリューやロッドが体内に残っていれば、第11級7号になりますか。

器具が残っていることは、要件として定められていません。実務上参照される認定の基準は、脊椎固定術が行われたこと、そして移植した骨が吸収されていないことを要件としています。手術記録と経過中の画像を確認したうえで判断する必要があり、個別の事情により結論は異なります。

脊椎固定術とインストゥルメンテーションは同じものですか。

厳密には異なります。固定術は骨どうしをつなげて動かなくすることを目的とする手術で、インストゥルメンテーションはスクリューやロッドなどの器具を用いて脊椎を支える方法を指します。器具を用いて固定術が行われることが多いため、実際には重なりますが、器具の有無と、骨がつながったかどうかは別の事柄です。呼び方は医療機関により異なることがありますので、手術記録の記載でご確認ください。

除圧術や椎弓形成術だけでも、脊柱の変形障害として検討されますか。

認定の基準は、3個以上の脊椎について椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたものを、変形を残すものの要件の一つとして挙げています。したがって、対象となった脊椎の数によっては検討の対象になります。1個又は2個の場合は、この要件には当たりません。手術記録で対象となった椎弓の数を確認する必要があります。

可動域が半分以下なら、第8級2号になりますか。

可動域が参考可動域角度の2分の1以下であることは要件の一つですが、それだけでは足りません。制限の原因が、脊椎圧迫骨折等、脊椎固定術、又は項背腰部軟部組織の明らかな器質的変化であることが求められます。単に痛みのために動かしにくい場合は、局部の神経症状として検討されます。また、測定の方法や対象とする運動によって数値の評価が変わり得ます。

脊柱の変形障害と運動障害は、両方認められて併合されますか。

同じ部位に生じた障害は、二重に評価されない形で整理されます。他方、頸部と胸腰部は原則として異なる部位として扱われ、双方に障害がある場合には、併合の方法を用いて準用等級を定めるものとされています。単純に足し合わせるわけではなく、系列や派生の関係によって扱いが変わりますので、個別の検討が必要です。

器具を抜去すると、後遺障害として扱われなくなるのでしょうか。

抜去したことによって、行われた固定術がなかったことになるわけではありません。手術記録は残り、骨癒合の状態は画像で確認できます。他方で、抜去の前後で可動域や症状が変わることもありますので、抜去の前後の資料を残しておくことが大切です。抜去の時期と症状固定の時期の関係についても、主治医と確認したうえで検討する必要があります。

頸椎と腰椎の両方を固定している場合は、どのように評価されますか。

認定の基準は、頸椎と胸腰椎とでは主たる機能が異なるとして、原則として異なる部位として取り扱い、部位ごとに等級を認定するものとしています。そのうえで、双方に障害がある場合には、併合の方法を用いて準用等級を定めるものとされています。それぞれの部位について要件を満たすかどうかを、手術記録と画像、可動域の測定結果で確認することになります。

手術後に残った痛みやしびれは、別に評価されますか。

脊柱の変形障害・運動障害とは別の枠組みで検討される場合があります。認定の基準は、単に痛みのために動かしにくいものは局部の神経症状として等級を認定するとし、圧迫骨折等による変形に伴う受傷部位の痛みについては、いずれか上位の等級によるものとしています。脊髄の損傷を伴う場合は、麻痺の範囲や程度を含めて評価されます。神経学的検査の結果と画像を確認したうえで判断する必要があります。

まとめ

  • 体内に固定器具が残っていること自体は、後遺障害の等級を決める要件として定められていません。
  • 実務上参照される認定の基準は、脊椎固定術が行われたこと、移植した骨が吸収されていないことを要件としています。手術記録と経過中の画像の確認が出発点になります。
  • 脊柱の障害は、変形障害、運動障害、荷重機能障害という枠組みで検討され、痛みやしびれは別に検討されることがあります。
  • 運動障害では、固定術を受けたことに加えて、可動域が参考可動域角度の2分の1以下に制限されていることが求められます。
  • 頸部と胸腰部は原則として異なる部位として扱われ、双方に障害がある場合の扱いは単純な加算ではありません。
  • 自賠責と労災保険では等級表の号数が一致しない項目があります。資料を読むときは、どちらの制度の話かを区別してください。
  • 器具の抜去、骨癒合の状態、再手術の予定は、いずれも一律の結論にはなりません。主治医の判断と資料の確認が必要です。
  • 後遺障害の申請前と、示談書に署名する前に、手術記録、画像、可動域の測定結果、認定理由を確認しておくことをおすすめします。

神戸みらい法律会計事務所では、交通事故による後遺障害についてのご相談をお受けしています。初回のご相談は無料です。交通事故については、可能な範囲でお電話による無料相談にも対応しています。営業時間外や土日祝のご相談は予約制です。

手術記録、術前・術後の画像、後遺障害診断書、保険会社からの提示資料を確認したうえで、検討すべき障害の枠組み、不足している資料、申請や示談の進め方を整理します。

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監修者・執筆者

弁護士・公認会計士 藤井貴之(兵庫県弁護士会所属)

神戸みらい法律会計事務所 代表弁護士・公認会計士。交通事故、相続、企業法務、労働問題、損害賠償など、個人・法人双方の法律相談に対応しています。

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この記事は、調査時点で確認できた法令、告示、行政機関の公表資料及び専門学会の公表資料に基づく一般的な説明です。後遺障害の等級認定の結果や請求できる損害の範囲は、事故の態様、受傷の内容、手術の内容、治療の経過、画像所見、検査所見、就労の状況、既往症、証拠関係などにより異なります。医学的な診断、検査及び治療の方針は医師が判断します。具体的な事案については、資料を確認したうえでご相談ください。

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