交通事故で胸椎や腰椎を圧迫骨折し、治療を続けても背中の丸まりや曲がり、動かしにくさ、鈍い痛みが残ってしまうことがあります。「この変形は後遺症として残るのだろうか」「保険会社の示談提示を受けたが、これで妥当なのか」「高齢で骨粗鬆症があるから賠償が下がると言われた」——そうした不安を抱えて情報を探している方は少なくありません。
圧迫骨折の後に残る背中の症状は、交通事故の後遺障害としては、主に脊柱変形障害・脊柱運動障害・神経症状という視点から検討されます。ただし、どの等級に当たるか、そもそも後遺障害として評価されるかは、画像所見・後遺障害診断書・症状の経過・事故との因果関係・既往症などによって変わります。この記事では、その考え方と、示談前・後遺障害申請前に確認しておきたい資料を整理します。
この記事で分かること
- 圧迫骨折後の背中の後遺症が、どのような枠組みで後遺障害として検討されるか
- 脊柱変形障害と脊柱運動障害の違いと、等級の考え方(6級5号・8級相当・8級2号・11級7号)
- 後遺障害診断書・画像・可動域で確認すべきポイント
- 骨粗鬆症や高齢であることを理由とする素因減額の考え方
- 示談前・後遺障害申請前に準備しておきたい資料
圧迫骨折後の背中の症状は、画像や後遺障害診断書の内容によって、後遺障害としての評価が変わり得ます。示談書に署名する前や後遺障害を申請する前に、手元の資料を一度整理しておくことをおすすめします。当事務所では初回相談を無料で承っています。
Contents
圧迫骨折後の背中の後遺症でまず確認すべきこと
圧迫骨折の後に残る症状は、大きく次の三つの視点から検討されます。ご自身の症状がどれに当たるかを意識すると、確認すべき資料が整理しやすくなります。
| 視点 | 主に問題になる症状 | 確認の手がかり |
|---|---|---|
| 脊柱変形障害 | 椎体がつぶれたことによる背中の丸まり(後弯)・曲がり(側弯) | X線・CT・MRI、椎体前方の高さの減少、コブ法による角度 |
| 脊柱運動障害 | 背中・腰の動きにくさ、体を曲げ伸ばしできる範囲の制限 | 可動域測定、脊椎固定術の有無、器質的変化の画像所見 |
| 神経症状 | 痛み、しびれ、感覚の異常など | 神経学的検査、症状の一貫性、画像所見との整合 |
これらは重なることもありますが、後遺障害の評価では「形の異常(変形)」「動きの制限(運動)」「神経の症状」を分けて捉えます。いずれについても、最終的な医学的判断は主治医によるものであり、この記事は資料の確認の目安を示すものです。
胸腰椎圧迫骨折の一般的な経過
胸椎や腰椎の圧迫骨折は、一般的に次のような経過をたどることがあります。ただし、治療期間や症状固定の時期、装具の使用期間などは、骨折の程度や年齢、合併症などにより事案によって大きく異なります。
- 事故・受傷、救急外来などでの受診
- X線・CT・MRIなどの画像検査による骨折の確認
- コルヒットや体幹装具(コルセット)による保存療法、または手術(固定術など)
- リハビリテーション
- 症状固定(これ以上の改善が見込みにくいと判断される時点)
- 後遺障害診断書の作成
- 後遺障害等級の申請(事前認定・被害者請求)
- 示談交渉・紛争処理機関の利用・訴訟
受傷直後の画像(新鮮骨折であることが分かる所見)や、治療経過の記録は、後の後遺障害評価や、事故との因果関係の説明において重要になることがあります。特に高齢の方では、今回の事故による新しい骨折か、以前からあった古い骨折(陳旧性骨折)かが問題になりやすく、受傷直後からの画像・記録が意味を持ちます。
脊柱変形障害とは
脊柱変形障害は、圧迫骨折などによって椎体(背骨を構成する骨)がつぶれ、背骨の形に異常が残った状態を評価するものです。前提として、圧迫骨折・破裂骨折・脱臼といった「脊椎圧迫骨折等」があり、それがX線・CT・MRIなどで確認できることが手がかりになります。
変形障害の等級の考え方(6級5号・8級相当・11級7号)
自賠責の後遺障害では、脊柱の変形の程度に応じて、おおむね次の三段階で検討されます。実際の該当性は画像所見と後遺障害診断書によって判断され、見た目に背中が曲がっているというだけで等級が認定されるわけではありません。
| 程度 | 自賠責の等級 | 評価の方向性 |
|---|---|---|
| 著しい変形 | 6級5号(著しい変形又は運動障害) | 椎体前方高の大きな減少や、後弯とコブ法による側弯度など、重い変形が客観的に確認できる場合 |
| 中程度の変形 | 8級相当 | 著しい変形には至らないが、一定以上の変形が確認できる場合 |
| 変形を残すもの | 11級7号 | 圧迫骨折等がX線等で確認できる、脊椎固定術を受けた、複数の椎体で椎弓形成術を受けた、などの場合 |
具体的な角度や椎体高の割合などの数値基準は、公的資料に基づいて画像を精査したうえで判断されます。数値の当てはめは専門的であり、後遺障害診断書と画像を確認したうえでの検討が必要です。
変形をどう測るか(椎体前方高・コブ法)
変形の評価では、主に次の二つの視点が用いられます。難しい測定論に入り込むよりも、「どの資料に、どの数値が記載されているか」を確認することが実務上は重要です。
- 椎体前方高の減少(後弯):つぶれた椎体の前側の高さが、後ろ側の高さと比べてどれだけ低くなっているかを、X線等で確認します。
- コブ法による側弯度:背骨の曲がり(側弯)の角度を、X線上で一定の方法により測定します。
これらの所見が後遺障害診断書や画像読影レポートにどう記載されているかによって、評価の見通しは変わります。記載が不足している場合、必要な検査や測定を主治医に相談することが考えられます。
脊柱運動障害とは
脊柱運動障害は、背中や腰の「動き」が制限された状態を評価するものです。ここで重要なのは、単なる痛みによる動かしにくさと、器質的な原因(骨折後の変形や固定術など)に基づく可動域制限とを区別するという点です。痛みが理由の制限は、運動障害としてではなく神経症状として検討されることがあります。
運動障害の等級の考え方(6級5号・8級2号)
| 程度 | 自賠責の等級 | 評価の方向性 |
|---|---|---|
| 著しい運動障害 | 6級5号(著しい変形又は運動障害) | 脊椎圧迫骨折等や固定術などにより、頸部および胸腰部が強直した(ほとんど動かない)と評価される場合 |
| 運動障害を残すもの | 8級2号 | 圧迫骨折等や固定術により、可動域が参考可動域角度の2分の1以下に制限されたと評価される場合 |
可動域は、参考可動域角度と比較してどの程度制限されているかを測定します。あわせて、その制限の原因となる圧迫骨折等が画像で確認できるか、脊椎固定術が行われているか、といった器質的な裏づけが確認されます。なお、頸椎(首)と胸腰椎(背中・腰)は主な機能が異なるため、原則として別の部位として評価されます。
変形障害と運動障害の違い
| 比較項目 | 脊柱変形障害 | 脊柱運動障害 |
|---|---|---|
| 評価の対象 | 背骨の形(変形) | 背骨の動き(可動域・強直) |
| 主な手がかり | 椎体前方高の減少、コブ法による側弯度 | 可動域測定、固定術・器質的変化の有無 |
| 前提 | 圧迫骨折等が画像で確認できること | 制限の器質的原因が確認できること |
| 混同しやすい点 | 見た目の曲がりだけでは判断されない | 痛みによる制限とは区別される |
画像・可動域・後遺障害診断書の確認ポイント
変形障害・運動障害のいずれについても、評価の土台になるのは客観的な資料です。示談や申請の前に、次の点が資料に反映されているかを確認しておくと、見通しを検討しやすくなります。
- 受傷直後の画像で、今回の事故による骨折であること(新鮮骨折)が確認できるか
- X線・CT・MRIに、椎体の圧潰や変形の程度が記録されているか
- 後遺障害診断書に、椎体前方高の減少・側弯度・可動域の数値が具体的に記載されているか
- 可動域の測定が、参考可動域角度と比較できる形で記載されているか
- 固定術・椎弓形成術など、手術の内容と範囲が記載されているか
後遺障害診断書は、その記載内容によって評価が左右されることがあります。記載が不足している場合には、どのような検査結果や所見が必要かを主治医に確認することが考えられます。もっとも、どの検査を行い、どう診断するかは医学的判断であり、医師にご相談ください。
「後遺障害診断書に何を書いてもらえばよいか分からない」「画像はあるが評価につながる所見が記載されているか不安」という段階でも、資料を確認することで対応方針を整理しやすくなります。交通事故を取り扱う弁護士に、症状固定や申請の前にご相談いただくことができます。
骨粗鬆症と素因減額の考え方
高齢の方の圧迫骨折では、骨粗鬆症や既往症、事故前からの背骨の変形、既存の骨折、事故後の圧潰の進行などが争点になることがあります。保険会社から「骨粗鬆症があるため賠償額を減額する」と主張される場面もありますが、この点は次のように整理できます。
素因減額について(断定を避けるべき理由)
被害者の体質や既往症といった素因が損害の発生・拡大に寄与した場合に、損害の公平な分担の観点から、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して賠償額を調整する考え方を、実務上「素因減額」と呼びます。もっとも、身体的な素因のうち「疾患」に当たる場合に問題となり得る一方、単なる加齢による変化にとどまる場合には、原則として減額の対象とはされない傾向があります。
したがって、「骨粗鬆症があれば必ず減額される」わけでも、「骨粗鬆症があっても必ず全額請求できる」わけでもありません。骨粗鬆症が疾患として評価されるか、事故と骨折・圧潰進行との因果関係、事故態様、受傷直後の画像、事故前後の医療記録、医師の意見、日常生活への支障などを確認したうえで、個別に判断する必要があります。減額の可否や割合は事案により異なり、一律の結論を出せるものではありません。
後遺障害申請前・示談前のチェックリスト
後遺障害診断書の作成前、後遺障害の申請前、示談書への署名前に、次の資料がそろっているか、内容が適切かを確認しておくと安心です。
- 後遺障害診断書(椎体前方高・側弯度・可動域の記載の有無)
- X線・CT・MRIなどの画像と、その読影レポート
- 診療録(カルテ)、診療報酬明細書、リハビリの記録
- 交通事故証明書、事故状況が分かる資料(ドライブレコーダー映像など)
- 受傷直後の画像(新鮮骨折であることの確認)
- 事故前の医療記録・既往症に関する資料(素因減額が問題になり得る場合)
- 保険会社からの示談提示書・示談書案(金額の内訳と後遺障害の扱い)
これらは、後遺障害の評価や、事故との因果関係、素因減額の主張への対応を検討する際の基礎資料になります。示談書に署名すると、原則として後から内容を覆すことは容易ではないため、署名前に内容を確認しておくことが重要です。
弁護士に相談するタイミング
弁護士への相談は、結果を保証するためのものではなく、手元の資料をもとに、対応方針や法律上の見通しを整理するためのものです。特に、次のような段階でのご相談が考えられます。
- 症状固定・後遺障害診断書の作成前(記載してもらう所見を検討したいとき)
- 後遺障害の申請前(事前認定か被害者請求かを含めて検討したいとき)
- 非該当・想定より低い等級となり、異議申立てを検討するとき
- 保険会社から示談提示を受け、金額や後遺障害の扱いを確認したいとき
- 骨粗鬆症・既往症を理由に減額を主張され、対応を整理したいとき
当事務所は、神戸市須磨区・垂水区・西区・北区をはじめ、兵庫県内および周辺地域の交通事故のご相談に対応しています。初回相談は無料で承っており、交通事故については電話相談・オンライン相談・出張相談(出張費用が必要となる場合があります)にも対応しています。
よくある質問(FAQ)
胸腰椎圧迫骨折は後遺障害になりますか?
後遺障害として評価される可能性がありますが、必ず認定されるわけではありません。椎体の圧潰・変形が画像で確認できるか、可動域制限や神経症状の有無、症状固定時の所見などによって結論は変わります。画像と後遺障害診断書を確認したうえで判断する必要があります。
脊柱変形障害と脊柱運動障害は何が違いますか?
変形障害は背骨の「形の異常」を、運動障害は背骨の「動きの制限」を評価する点が異なります。変形障害は椎体前方高の減少やコブ法による側弯度、運動障害は可動域や固定術の有無などが手がかりになります。
背中が曲がって見えるだけで等級が認定されますか?
見た目の曲がりだけで認定されるものではありません。圧迫骨折等が画像で確認でき、椎体前方高の減少や側弯度などの客観的所見が一定の程度に達しているかが検討されます。後遺障害診断書と画像の内容が重要になります。
可動域制限がある場合、何を確認すべきですか?
可動域が参考可動域角度と比較してどの程度制限されているか、その制限の原因となる圧迫骨折等や固定術が画像で確認できるかを確認します。痛みによる制限か、器質的な制限かで扱いが異なる点にも注意が必要です。
骨粗鬆症があると賠償額は必ず減額されますか?
必ず減額されるとは限りません。素因減額は、身体的素因のうち疾患に当たる場合などに問題となり得ますが、単なる加齢性の変化は原則として対象とされない傾向があります。事故との因果関係や医療記録を確認したうえで、個別に判断されます。
後遺障害診断書を作成してもらう前に何を準備すべきですか?
これまでのX線・CT・MRIなどの画像、診療録、リハビリの記録、症状の経過をまとめておくとよいでしょう。椎体前方高の減少・側弯度・可動域などの所見が記載されるよう、必要な検査について主治医に相談することも考えられます。
保険会社から示談提示を受けた後でも相談できますか?
署名前であれば、提示内容を確認する余地があります。後遺障害の扱いや金額の内訳を確認することで、見直す余地があるかを検討できます。署名後は覆すことが容易でないため、署名前のご相談をおすすめします。
神戸市周辺で相談するときは何を持参すべきですか?
交通事故証明書、後遺障害診断書、画像や読影レポート、診療録、保険会社からの提示書・示談書案などをお持ちいただくと、状況を整理しやすくなります。お手元にあるものからで構いません。
まとめ
- 圧迫骨折後の背中の後遺症は、脊柱変形障害・脊柱運動障害・神経症状の視点から検討されます。
- 変形障害は「形」、運動障害は「動き」を評価し、いずれも画像・後遺障害診断書が土台になります。
- 見た目の曲がりや痛みだけで等級が決まるわけではなく、客観的所見が重要です。
- 骨粗鬆症を理由とする減額は、必ず認められるものでも必ず否定されるものでもなく、事案により異なります。
- 示談前・申請前・署名前に、画像・後遺障害診断書・示談書案などの資料を確認しておくことが大切です。
- 医学的な診断・治療方針は医師に、後遺障害や賠償の見通しの整理は弁護士にご相談ください。
圧迫骨折後の背中の症状について、後遺障害の見通しや保険会社の提示内容を整理したい方は、示談や申請の前に一度ご相談ください。当事務所では初回相談を無料で承り、資料を確認したうえで対応方針をご説明します。弁護士費用や弁護士費用特約の利用についても、あわせてご確認いただけます。
監修・執筆
弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所
代表弁護士・公認会計士 藤井 貴之(兵庫県弁護士会所属/日本公認会計士協会兵庫会所属)
神戸市須磨区中落合2丁目2−5 名谷センタービル7階(名谷駅から徒歩1分)
受付時間:9時〜20時 電話:078-797-5227
本記事は、交通事故を取り扱う弁護士が一般的な情報として作成したものです。個別の事案の結論は、画像・医療記録・事故態様などにより異なります。弁護士紹介を見る
参考資料
- 国土交通省「後遺障害等級表」https://www.mlit.go.jp/jidosha/jibaiseki/common/data/toukyu.pdf
- 厚生労働省「せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準」https://www.mhlw.go.jp/topics/2004/06/tp0625-2.html
- 損害保険料率算出機構「当機構で行う損害調査」https://www.giroj.or.jp/cali_survey/survey_system.html
- 公益財団法人日弁連交通事故相談センターhttps://n-tacc.or.jp/
- e-Gov法令検索(自動車損害賠償保障法・同施行令、民法)https://laws.e-gov.go.jp/

24時間365日受付