不同意わいせつ・不同意性交等罪とは|令和5年(2023年)改正で何が変わったか |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|

弁護士法人あわじみらい法律会計事務所

初回相談無料

兵庫県神戸市須磨区中落合2丁目2−5
名谷センタービル7階

 078-797-5227

受付時間 : 9:00〜20:00

不同意わいせつ・不同意性交等罪とは|令和5年(2023年)改正で何が変わったか

「同意があったと思っていた行為について、警察から連絡が来た」「家族が性犯罪の疑いで事情を聴かれている」「被害を受けたかもしれないが、どこに相談すればよいのか分からない」——。令和5年の刑法改正で不同意わいせつ罪・不同意性交等罪が設けられて以降、立場の異なるさまざまな方から、こうしたご相談が寄せられています。
 この記事では、不同意わいせつ罪(刑法第176条)不同意性交等罪(刑法第177条)について、条文上の「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」という要件の中核的な考え方、令和5年(2023年)改正で何が変わったのか、法定刑公訴時効、そして改正前の出来事がどう扱われるのかを、条文と公的資料に沿って整理します。そのうえで、疑いを受けた方・ご家族と、被害を受けた可能性がある方とで、確認すべきことを分けて説明します。
 犯罪が成立するかどうかは、関係性、年齢、当日の言動といった一つの事情だけで決まるものではありません。条文上の要件と、具体的な証拠関係を分けて確認する必要があります。個別の事情により結論は異なります。

この記事で分かること

  • 不同意わいせつ罪・不同意性交等罪の中核要件と、原因となり得る8つの行為・事由
  • 令和5年改正で変わった点(罪名の整理、性交等の範囲、年齢、婚姻関係、公訴時効)
  • 「嫌だと言わなかった」「飲酒していた」「配偶者だった」といった場面の考え方
  • 面会要求等罪・性的姿態等撮影罪との違い
  • 法定刑と公訴時効、改正前の出来事に適用される法律
  • 疑いを受けた方・被害を受けた可能性がある方それぞれの初動と相談先

 事情聴取の前、相手方への対応の前、示談の前、被害の申告の前に、手元の資料と時系列を整理しておくと、対応の方針を検討しやすくなります。神戸市・兵庫県内等でお困りの方は、ご相談ください。

相談予約フォームへ進む

結論|令和5年改正の全体像

 不同意わいせつ罪(刑法第176条)不同意性交等罪(刑法第177条)は、条文に掲げられた行為・事由その他これらに類する行為・事由により、相手方が「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」にさせられ、又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為性交等がされた場合に成立し得る犯罪です。婚姻関係の有無を問わない旨が条文上明記されています。
 これらの罪は、令和5年法律第66号により、旧強制わいせつ罪・旧強制性交等罪旧準強制わいせつ罪・旧準強制性交等罪を統合・再構成して設けられたものです。実体法に関する規定は令和5年(2023年)7月13日から施行されており、同日より前にした行為の処罰については、なお従前の例によるものとされています(同法附則第2条第1項)。
 他方、公訴時効に関する改正は公布日である令和5年(2023年)6月23日から施行され、その時点で時効が完成していなかった罪にも適用されます(同法附則第5条)。「改正前の出来事だから関係がない」とは限りません。

令和5年改正で変わった点

令和5年(2023年)改正の前後で変わった主な事項
項目 改正前 改正後
罪名 強制わいせつ罪・強制性交等罪準強制わいせつ罪・準強制性交等罪 不同意わいせつ罪不同意性交等罪に統合・再構成(旧第178条は削除)
中核となる要件 「暴行又は脅迫を用いて」「心神喪失若しくは抗拒不能に乗じて」 「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」
原因となる行為・事由 条文上の列挙なし 8つの行為・事由を条文に列挙(第176条第1項各号)。「その他これらに類する行為又は事由」も含む
いわゆる性交同意年齢 13歳未満 16歳未満(相手方が13歳以上のときは、行為者がその相手方の生まれた日より5年以上前の日に生まれた場合に限る。)
「性交等」の範囲 性交・肛門性交・口腔性交 上記に加え、膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入する行為であってわいせつなもの
婚姻関係 条文上の明示なし 「婚姻関係の有無にかかわらず」成立し得ることを明示
面会要求等罪 規定なし 16歳未満の者に対する面会要求等罪を新設(第182条)
性的な姿態の撮影 事案により迷惑防止条例、児童買春・児童ポルノ禁止法等 別の法律(いわゆる性的姿態等撮影処罰法)により性的姿態等撮影罪等を新設
公訴時効 性交等10年・わいせつ7年・致傷15年 性交等15年・わいせつ12年・致傷20年。被害者が18歳未満の場合はさらに加算

 令和5年(2023年)改正は、要件の整理・明確化を中心とする部分と、処罰の範囲そのものを変更する部分の両方を含みます。「性交等」の定義の拡張、いわゆる性交同意年齢の引上げ、面会要求等罪の新設などは、後者にあたります。
 改正全体を「処罰範囲は変わっていない」とまとめることも、「同意がなければ直ちにすべて犯罪になる」と単純化することも、いずれも正確ではありません。
 犯罪の成否や手続の見通しは、条文上の要件と具体的な証拠関係を確認して初めて検討できます。次の点は、疑いを受けた側・被害を受けた側のいずれにも共通します。

立場を問わず、まず確認したいこと

  • いつ・どこで・どのような経緯だったのかという時系列
  • 当時のやり取り(メッセージ、通話履歴、SNSなど)が残っているか
  • 飲酒、薬物、睡眠、体調など、当時の状態に関する事情
  • 相手方との関係(交際、婚姻、職場・学校の上下関係、面識の有無など)
  • 行為の時期(令和5年7月13日より前か後か)
  • 警察や相手方から、すでに連絡が来ているか

不同意わいせつ罪と不同意性交等罪の違い

両罪は、要件の構造が共通で、対象となる行為が「わいせつな行為」か「性交等」かという点で区別されます。

不同意わいせつ罪と不同意性交等罪の比較
項目 不同意わいせつ罪 不同意性交等罪
条文 刑法第176条 刑法第177条
対象となる行為 わいせつな行為 性交、肛門性交、口腔性交のほか、膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入する行為であってわいせつなもの
中核要件 第176条第1項各号の行為・事由その他これらに類する行為・事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ、又はその状態にあることに乗じたこと
誤信・人違いの類型 第176条第2項 第177条第2項
年齢に関する類型 第176条第3項 第177条第3項
法定刑 6月以上10年以下の拘禁刑 5年以上の有期拘禁刑

 いずれの罪も未遂が処罰されます(刑法第180条)。また、これらの罪を犯して人を死傷させた場合には、不同意わいせつ等致死傷罪(同法第181条)として、より重い法定刑が定められています。

監護者わいせつ罪・監護者性交等罪(第179条)

 18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為又は性交等をした場合には、第176条第1項・第177条第1項の例により処罰されます(刑法第179条)。
 この規定は平成29年(2017年)改正で設けられたもので、第176条第1項第8号の「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力」とは別の犯罪類型です。両者を同じものとして扱わないよう注意が必要です。

中核要件と8つの行為・事由

 改正後の中核要件は、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ、又はその状態にあることに乗じて」という部分です。
 おおまかにいえば、①「嫌だ」という意思を持つこと自体が難しい状態(形成の困難)、②その意思を外に示すことが難しい状態(表明の困難)、③示した意思を貫くことが難しい状態(全うの困難)のいずれかが問題となります。
 この状態の原因となり得る行為・事由として、刑法第176条第1項各号は次の8つを掲げています。ただし、条文には「その他これらに類する行為又は事由」も含まれるため、次の8つに形式的に当てはまらない場合でも成立し得ます。

刑法第176条第1項各号に掲げられた行為・事由
条文に掲げられた行為・事由
第1号 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと
第2号 心身の障害を生じさせること又はそれがあること
第3号 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること
第4号 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること
第5号 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと
第6号 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること
第7号 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること
第8号 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること

 各号は、いずれも「その行為をして状態にさせた場合」と「既にその状態にあることに乗じた場合」の両方を含む書き方になっています。また、これらの行為・事由が存在するだけで足りるものではなく、それにより同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態となったこと、又はその状態に乗じたことが検討されます。

誤信・人違いの類型

 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせた場合、行為をする者について人違いをさせた場合、及びそれらの誤信・人違いをしていることに乗じた場合も、それぞれ処罰の対象とされています(刑法第176条第2項・第177条第2項)。これは第1項の8つの行為・事由とは別の類型であり、混同しないよう整理して検討する必要があります。

よく誤解される場面

 実際のご相談では、次のような場面で判断に迷われることが多くあります。いずれも一般的な整理であり、個別の事情により結論は異なります。

  • 「嫌だ」と言わなかった、抵抗しなかった:明示的な拒絶がなかったという事情だけで、同意があったと扱われるわけではありません。他方で、同意がなかったという一事によって、条文上の要件がすべて満たされると断定することもできません。どの行為・事由により、どのような状態にあったのかを分けて検討します。
  • 飲酒していた:アルコールの影響は第3号に掲げられていますが、飲酒があれば一律に成立するという関係にはありません。飲酒の量と時間経過、当時の言動、やり取りの内容などから、意思の形成・表明・全うが困難な状態であったかが検討されます。
  • 眠っていた、体が動かなかった睡眠その他の意識が明瞭でない状態第4号予想と異なる事態に直面して恐怖・驚愕した状態(いわゆるフリーズ)第6号に、それぞれ掲げられています。
  • 配偶者・交際相手だった婚姻関係の有無を問わず成立し得ることが条文に明記されています。改正前から配偶者間でも成立し得ると解されており、令和5年(2023年)改正は、この点を条文上明確にしたものです。もっとも、関係があることだけで犯罪が成立するわけでもありません。
  • 職場・学校の上下関係があった第8号は、経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させ、又は憂慮していることを掲げています。単に立場の差があれば直ちに成立するというものではなく、その影響力により、どのような不利益をどの程度憂慮していたのかが検討されます。
  • 「相手も同意していると思った」:そのように述べれば当然に責任を免れるわけではなく、逆に、そう述べたことをもって直ちに犯罪の成立が認められるわけでもありません。当時の相手方の状態、言動、関係性、メッセージその他の客観的な事情から、故意の有無が検討されます。
  • 時間が経ってから申告があった:申告までに時間が空いたという事情だけで、同意の有無供述の信用性が決まるものではありません。他方、公訴時効の期間は経過とともに問題となります。

 刑事裁判で有罪と認定するためには、構成要件に該当する事実と故意について、検察官が合理的な疑いを超える程度立証する必要があります。これは、逮捕、捜査、起訴のそれぞれの段階で同じ判断がされるという意味ではありません。また、「通常であれば同意があるとは思わないはずだ」という評価だけで故意が当然に認定されるものでもありません。日本の法律には、これを踏めば犯罪にならないという一律の手順や確認方法は定められていません。

年齢に関する規定(いわゆる性交同意年齢)

刑法第176条第3項・第177条第3項は、相手方が16歳未満である場合について、第1項の行為・事由がなくても処罰の対象となる類型を定めています。整理すると次のとおりです。

相手方の年齢による区別(刑法第176条第3項・第177条第3項)
相手方の年齢 条文上の扱い
13歳未満 年齢差を問わず、第3項の対象となります。
13歳以上16歳未満 行為者が、その相手方の生まれた日より5年以上前の日に生まれた者である場合に限り、第3項の対象となります。
16歳以上 第3項の対象ではありません。第1項・第2項の要件を満たすかどうかが問題となります。

 年齢差が5年に満たない場合であっても、あらゆる法令上適法であるという意味ではありません。第1項・第2項の要件を満たす場合があるほか、事案により児童福祉法児童買春・児童ポルノ禁止法、各都道府県の青少年保護育成条例などが問題となり得ます。
 また、これらの規定も故意犯であり、相手方の年齢に関する行為者の認識が検討の対象となります。「年齢を知らなかった」と述べれば当然に責任を免れるものでも、年齢の認識を問わず当然に成立するものでもなく、具体的な認識の内容と、それを裏付ける事情が確認されます。
 なお、ここでの年齢は被害を受けた側の年齢に関する要件です。行為者側の刑事責任年齢は別の問題で、14歳に満たない者の行為は罰しないものとされ(刑法第41条)、20歳に満たない者については少年法上の取扱いが別途問題となります。
 「性交同意年齢」は法律上の正式な用語ではなく、条文上の年齢要件を説明するために便宜的に用いられている言葉です。

面会要求等罪・性的姿態等撮影罪との区別

令和5年(2023年)には、刑法の改正とあわせて、性的な姿態の撮影等を処罰する別の法律も設けられました。それぞれ根拠となる法令が異なります。

面会要求等罪(刑法第182条)

刑法第182条は、16歳未満の者に対する面会要求等を処罰する規定です。相手方が13歳以上16歳未満の場合は、行為者がその相手方の生まれた日より5年以上前の日に生まれた者であることが必要です。

  • 第1項:わいせつの目的で、①威迫し、偽計を用い又は誘惑して面会を要求すること、②拒まれたにもかかわらず反復して面会を要求すること、③金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をして面会を要求すること。単に面会を求めただけで成立するものではありません。
  • 第2項:第1項の罪を犯し、よってわいせつの目的で実際に面会した場合です。面会したこと自体を独立に処罰するものではありません。
  • 第3項:性的な姿態をとってその映像を送信することを要求する行為です。第1項・第2項と異なり「わいせつの目的」は要件とされていません。もっとも、同項第2号に掲げる姿態については、その姿態をとらせることがわいせつなものである場合に限られます。

性的姿態等撮影罪(性的姿態等撮影処罰法第2条)

いわゆる盗撮を含む性的な姿態の撮影は、「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(令和5年法律第67号)により処罰されます。同法第2条第1項は、対象性的姿態等の撮影について、次の類型を掲げています。

  • 正当な理由がないのに、ひそかに撮影する行為
  • 同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ、又はその状態に乗じて撮影する行為
  • 行為が性的な部位等を撮影するものではないとの誤信、又は特定の少数の者だけが影像を閲覧するとの誤信をさせ、若しくはその誤信に乗じて撮影する行為
  • 正当な理由がないのに、13歳未満の者を撮影する行為、及び13歳以上16歳未満の者を、その者の生まれた日より5年以上前の日に生まれた者が撮影する行為

 同法の処罰規定は令和5年(2023年)7月13日から施行されており、施行前の行為に遡って適用されるものではありません。もっとも、施行前の撮影行為についても、事案により各都道府県の迷惑防止条例のほか、児童買春・児童ポルノ禁止法その他の法令が問題となり得ました。「改正前は条例でしか処罰できなかった」と一律にいえるものではありません。
 なお、撮影に関する具体的な手続の流れは盗撮の撮影罪に問われた場合の解説、電車内の痴漢で問題となる罪名の違いは痴漢における迷惑防止条例と不同意わいせつの違いの解説で説明しています。

法定刑・公訴時効と、改正前の出来事の扱い

法定刑

関係する罪の法定刑
罪名 法定刑
不同意わいせつ罪(刑法第176条) 6月以上10年以下の拘禁刑
不同意性交等罪(刑法第177条) 5年以上の有期拘禁刑
監護者わいせつ罪(刑法第179条第1項) 第176条第1項の例による(6月以上10年以下の拘禁刑)
監護者性交等罪(刑法第179条第2項) 第177条第1項の例による(5年以上の有期拘禁刑)
不同意わいせつ等致死傷罪(刑法第181条第1項) 無期又は3年以上の拘禁刑
不同意性交等致死傷罪(刑法第181条第2項) 無期又は6年以上の拘禁刑
面会要求等罪(刑法第182条) 第1項1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金/第2項2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金/第3項1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
性的姿態等撮影罪(性的姿態等撮影処罰法第2条) 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金

 「拘禁刑」は、懲役と禁錮を一本化した刑で、令和7年(2025年)6月1日から施行されています。同日より前にした行為に対する刑については、従前の例によるものとされています。

公訴時効

 公訴時効は、刑事事件について検察官が公訴を提起できる期間の制限です。民事上の消滅時効とは別の制度で、期間も起算点も異なります。令和5年改正により、次のとおり延長されました(刑事訴訟法第250条第3項)。

公訴時効の期間(刑事訴訟法第250条第3項)
対象となる罪 改正前 改正後
刑法第181条の罪(人を負傷させたときに限る。) 15年 20年
刑法第177条・第179条第2項の罪及びこれらの未遂罪 10年 15年
刑法第176条・第179条第1項の罪及びこれらの未遂罪 7年 12年

 さらに、これらの罪の被害者が犯罪行為が終わった時に18歳未満であった場合には、上記の期間に、犯罪行為が終わった時からその被害者が18歳に達する日までの期間に相当する期間が加算されます(同条第4項)。法務省の解説では、12歳のときに不同意性交等の被害を受けた場合、時効の完成が被害者の33歳に達する日まで延びる例が示されています。
 なお、人を死亡させた罪については、別の区分(同条第1項)により時効期間が定められます。また、公訴時効の起算点や、犯人が国外にいる場合などの停止事由によっても、完成の時期は変わります。個別の事件で時効が完成しているかどうかは、この記事の記載だけで判断できません。

改正前の行為はどう扱われるか

改正前の行為については、罪名と公訴時効とで扱いが異なります。

  • 罪名・要件:令和5年7月13日より前にした行為の処罰については、なお従前の例によるものとされています(令和5年法律第66号附則第2条第1項)。したがって、旧強制わいせつ罪・旧強制性交等罪などの当時の規定により判断されます。
  • 公訴時効:公訴時効に関する改正は令和5年6月23日から施行され、その施行の際に既に時効が完成している罪には適用されません(同法附則第5条第1項)。他方、その時点で時効が完成していない罪については、延長後の期間が適用されます(同条第2項)。

そのため、改正前の出来事であっても、延長後の期間や18歳未満の被害者に関する加算により、なお捜査・起訴の対象となり得る場合があります。

疑いを受けた方・ご家族の初動

 「こうすれば逮捕されない」「こうすれば不起訴になる」といった結果をお約束することはできません。もっとも、早い段階で相談することにより、取調べへの対応方針や、手元の資料の整理の仕方を検討しやすくなります。

  • 連絡の内容を記録する:警察から連絡があった場合は、日時、担当部署、担当者名、求められている内容、任意の出頭を求められているのか身柄事件なのかを控えてください。
  • 黙秘権と弁護人選任権:取調べに際しては、自己の意思に反して供述をする必要がない旨があらかじめ告げられます(刑事訴訟法第198条第2項)。また、弁護人を選任することができます。
  • 供述調書の確認:供述を録取した調書は、閲覧させ、又は読み聞かせて、誤りがないかを問われます。増減変更の申立てをしたときは、その供述が調書に記載されます(同条第4項)。誤りがないことを申し立てた場合に署名押印を求められますが、これを拒絶することもできます(同条第5項)。申立てをしても、調書の本文が申立てのとおりに修正されるとは限らないため、内容の確認は慎重に行ってください。
  • 資料を削除・改変しない:スマートフォンのメッセージ、写真、位置情報などは、後に事実関係を確認する手掛かりとなります。取扱いは弁護士と相談してください。
  • 相手方へ直接連絡しない:謝罪の意図であっても、働きかけと受け取られるおそれがあり、避けるべき場合が多いといえます。ご家族や第三者を介する場合も同様です。
  • SNSに書き込まない:事件に関する反論、相手方の特定につながる投稿は避けてください。

 事件に事件に関する資料を削除、改変、作出することや、関係者と説明を合わせること、第三者を通じて相手方へ働きかけることは、身柄に関する判断、供述の信用性の評価、処分の判断に影響し得るほか、行為の内容によっては別の法的問題を生じることがあります。刑法第104条の証拠隠滅等の罪は「他人の刑事事件に関する証拠」を対象とするなど、条文ごとに要件が異なり、個別の行為の評価は一律ではありません。自己判断で対応する前に、弁護士にご相談ください。
 示談や被害弁償の状況は、検察官の処分や裁判所の量刑の判断において考慮され得る事情です。もっとも、不同意わいせつ罪・不同意性交等罪や監護者わいせつ罪・監護者性交等罪は、平成29年の刑法改正により、告訴がなくても公訴を提起できる罪とされています。示談が成立すれば当然に手続が終了するという関係にはありません。示談の要否、時期、進め方は、弁護士を通じて検討することをおすすめします。
 逮捕された場合の時間の制限とご家族ができることは逮捕から勾留までの72時間の解説、逮捕直後の面会・差入れなどは家族が逮捕された直後に確認すべきことの解説、逮捕されずに呼出しを受けた場合の流れと取調べ対応は警察・検察庁から呼出しを受けた場合の解説で説明しています。

疑いを受けた方の手続前チェックリスト

  • 事情聴取の前:求められている内容、日時、担当部署、任意か身柄事件かの確認
  • 供述調書に署名押印する前:記載が自分の認識と一致しているかの確認
  • 相手方へ連絡する前:連絡してよい状況かどうかの確認(避けるべき場合があります)
  • 示談を検討する前:誰を通じて進めるか、書面の内容、清算条項の範囲
  • SNSへの投稿・第三者への説明の前:内容と範囲の確認
  • 資料の整理:時系列のメモ、メッセージ、通話履歴、位置情報、交通系ICカードの利用履歴、防犯カメラの設置場所に関する情報

 疑いを受けた方・ご家族からのご相談では、事実関係と手元の資料を整理したうえで、取調べへの対応方針や今後の手続の見通しを検討します。取調べの前、相手方への対応の前にご相談ください。

刑事事件・少年事件の取扱業務を見る

相談予約フォームへ進む

被害を受けた可能性がある方の初動

 まず、ご自身の安全と体調を最優先にしてください。証拠の保全よりも、安全の確保と医療機関の受診が先です。以下は一般的な整理であり、無理のない範囲でご検討いただくものです。

  • 安全の確保:安全な場所へ移動し、信頼できる方に連絡することをご検討ください。身の危険があるときは110番、けがや体調の異変があるときは119番へ連絡してください。
  • 医療機関の受診:体調の確認や必要な処置のため、早めの受診が検討されます。どの医療機関を受診すればよいか分からない場合は、下記の支援窓口で案内を受けられます。
  • 資料の保全:当時の衣類、メッセージ、写真、位置情報、体調や気持ちの記録などは、可能な範囲で残しておいてください。
  • 相談窓口への連絡:警察に届け出るかどうかを決めていない段階でも相談できます。匿名での相談を受け付けている窓口もあります。
  • 手続の区別:被害届、告訴、示談、損害賠償請求は、それぞれ別の手続です。どこから検討するかは、状況により異なります。

 入浴や洗濯をした、メッセージを消してしまった、時間が経ってから相談することにした、事件の後も相手方と連絡を取っていた、交際関係にあった——こうした事情があっても、相談や届出を諦める必要はありません。これらの事情だけで同意の有無や供述の信用性が決まるわけでもありません。まずは支援窓口へ連絡し、医療や資料の保全について案内を受けることをご検討ください。証拠を得る目的で、相手方へ連絡を取ったり会ったりすることはおすすめできません。

性被害に関する主な相談窓口(令和8年7月時点)
窓口 連絡先・受付 内容
警察の性犯罪被害相談電話 全国共通番号 #8103(ハートさん)/兵庫県警察「性犯罪被害110番」 0120-57-8103、078-341-7441 発信した地域を管轄する都道府県警察の窓口につながります。土日祝日及び執務時間外は当直が対応します。IP電話からは#8103につながらない場合があるため、各警察の番号へ直接おかけください。
ワンストップ支援センター 全国共通番号 #8891(通話料無料) 最寄りのワンストップ支援センターにつながります。相談のほか、医療機関や警察への付添いなどの支援が案内されています。
ひょうご性被害ケアセンター「よりそい」 078-367-7874/月曜日から金曜日の午前9時から午後5時まで(祝日、12月29日から1月3日までを除く。) 兵庫県のワンストップ支援センターです。性別を問わず無料で相談できます。受付時間外は、国が設置する夜間休日対応コールセンターへ自動的に転送されます。
弁護士 各法律事務所 被害届・告訴の検討、事情聴取への同席の可否、示談の申入れを受けた場合の対応、損害賠償請求などを整理して検討できます。

被害を受けた可能性がある方の手続前チェックリスト

  • 安全な場所にいるか、体調に不安がないか
  • 受診した医療機関、診断書、受診日の記録
  • いつ・どこで・誰との間で何があったかの時系列のメモ
  • メッセージ、通話履歴、SNSのやり取り、写真、位置情報(削除せずに保存)
  • 当時の衣類など、状況を示す物
  • 相手方やその関係者から連絡が来ているか、その内容

 被害届と告訴の違い、加害者側から示談の連絡が来た場合の考え方は被害届・告訴の違いと示談への対応の解説、賠償や被害回復の方法は犯罪被害者が弁償・被害回復を求める方法の解説で説明しています。

 被害を受けた可能性がある方のご相談では、体調とご意向を確認しながら、届出や示談への対応、損害賠償請求の見通しを整理します。被害の申告の前、示談の回答の前にご相談ください。

相談予約フォームへ進む

弁護士に相談するタイミング

 次のような場面では、早めにご相談いただくことで、判断材料と対応方針を整理しやすくなります。結果をお約束するものではありませんが、選択肢を確認するうえで有用です。

  • 警察から連絡があったとき、事情聴取や出頭を求められたとき
  • ご家族が逮捕されたとの連絡を受けたとき
  • 相手方やその代理人から連絡・請求を受けたとき
  • 被害届や告訴を検討するとき、示談の申入れを受けたとき
  • 供述調書に署名押印を求められる場面が近いとき
  • SNSへの投稿や、勤務先・学校への説明を検討しているとき

 弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所は、神戸市須磨区(名谷駅前)を拠点に、性犯罪を含む刑事事件・少年事件のご相談に対応しています。疑いを受けた方・ご家族からのご相談と、被害を受けた可能性がある方からのご相談は、それぞれ別に承ります。なお、同一の事件について、双方のご依頼をお受けすることはできません。

まとめ

  • 不同意わいせつ罪・不同意性交等罪は、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」を中核要件とし、その原因となり得る8つの行為・事由が条文に掲げられています。「その他これらに類する行為又は事由」も含まれます。
  • 明示的な拒絶がなかったことは同意と同じではありません。他方、同意がなかったという一事で要件がすべて満たされると断定することもできず、故意を含めて証拠から検討されます。
  • 相手方が16歳未満の場合には別の類型が定められ、13歳以上のときは5年以上年長かどうかが要件となります。年齢差が5年未満でも、他の規定が問題となることがあります。
  • 実体法に関する改正は令和5年7月13日施行で、それより前の行為の処罰は従前の例によります。公訴時効の改正は令和5年6月23日施行で、その時点で時効が完成していない罪にも適用されます。
  • 疑いを受けた方は、連絡の記録、供述調書の確認、資料を削除しないこと、相手方への直接連絡を避けることが基本になります。
  • 被害を受けた可能性がある方は、安全と医療を優先し、#8103、#8891、ひょうご性被害ケアセンター「よりそい」などの窓口へご相談ください。時間が経っていても諦める必要はありません。

よくある質問

不同意性交等罪と不同意わいせつ罪の違いは何ですか。

要件の構造は共通で、対象となる行為が異なります。性交、肛門性交、口腔性交のほか、膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入する行為であってわいせつなものが「性交等」とされ、これに当たる場合が不同意性交等罪(刑法第177条)、それ以外のわいせつな行為が不同意わいせつ罪(同法第176条)です。法定刑も異なります。

暴行や脅迫がなくても成立しますか。

暴行・脅迫は、条文に掲げられた8つの行為・事由のうちの一つです。心身の障害、アルコールや薬物の影響、睡眠、恐怖・驚愕、地位に基づく影響力による不利益の憂慮などによっても成立し得ます。他方、これらの事由があれば直ちに成立するわけではなく、それにより同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態にあったかが検討されます。

「嫌だ」と言わなかった場合でも成立しますか。

明示的な拒絶がなかったという事情だけで同意があったと扱われるわけではありません。逆に、それだけで犯罪の成立が決まるものでもありません。どの行為・事由により、意思の形成・表明・全うのどれが困難な状態にあったのかを、当時の状況とやり取りを踏まえて検討します。

配偶者や交際相手との間でも成立しますか。

婚姻関係の有無にかかわらず成立し得ることが条文に明記されています。改正前から配偶者間でも成立し得ると解されており、令和5年改正はこれを条文上明確にしたものです。もっとも、関係があることだけで成立するわけでもなく、具体的な事情により結論は異なります。

飲酒していた場合はどう判断されますか。

アルコールの影響は条文の第3号に掲げられていますが、飲酒があれば一律に成立するという関係にはありません。飲酒の量、時間の経過、当時の言動、やり取りの内容などから、意思の形成・表明・全うが困難な状態であったか、行為者にその認識があったかが検討されます。

16歳未満の相手が同意していた場合はどうなりますか。

相手方が13歳未満であれば年齢差を問わず、13歳以上16歳未満であれば行為者がその相手方の生まれた日より5年以上前の日に生まれた場合に、刑法第176条第3項・第177条第3項の対象となります。これらも故意犯であり、年齢に関する認識が検討されます。年齢差が5年未満でも、他の規定が問題となることがあります。

改正前の出来事について、いま問題になることはありますか。

あり得ます。令和5年7月13日より前の行為の処罰は従前の例によりますが、公訴時効の延長は令和5年6月23日の時点で時効が完成していない罪にも適用されます。被害者が犯罪行為の終わった時に18歳未満であった場合は、さらに期間が加算されます。個別の事件で時効が完成しているかは、資料を確認して検討する必要があります。

警察から呼出しを受けた場合、何を確認すべきですか。

日時、担当部署、担当者名、求められている内容、任意の出頭か身柄事件かを控えてください。取調べでは、自己の意思に反して供述をする必要がない旨が告げられ、弁護人を選任することができます。供述調書は内容を確認し、誤りがあれば増減変更の申立てができ、署名押印を拒絶することもできます。対応する前にご相談ください。

被害を受けた可能性がある場合、どこへ相談できますか。

警察の性犯罪被害相談電話「#8103」、ワンストップ支援センターの全国共通番号「#8891」、兵庫県ではひょうご性被害ケアセンター「よりそい」(078-367-7874、月曜日から金曜日の午前9時から午後5時まで。受付時間外は夜間休日対応コールセンターへ転送されます。)があります。警察に届け出るかを決めていない段階でも相談できます。

性犯罪に関する事件では、疑いを受けた方にとっても、被害を受けた方にとっても、初動での確認事項がその後の手続に影響することがあります。当事務所では、刑事事件・少年事件についても初回のご相談を無料でお受けしています(事前のご予約をお願いしています。夜間・休日のご相談もご予約により承ります。)。

ご予約のお電話 078-797-5227(電話受付 9:00〜20:00)

相談予約フォームへ進む弁護士費用を確認する刑事事件・少年事件の関連コラムを見る

監修者・執筆者

藤井 貴之(ふじい たかゆき)
弁護士・公認会計士/兵庫県弁護士会所属・日本公認会計士協会兵庫会所属
弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所 代表弁護士

刑事事件・少年事件、交通事故、相続、離婚、債務整理、企業法務等のご相談に対応しています。性犯罪に関する事件では、疑いを受けた方・ご家族からのご相談と、被害を受けた可能性がある方からのご相談を、それぞれ別に承っています。

所在地:兵庫県神戸市須磨区中落合2丁目2-5 名谷センタービル7階

弁護士紹介を見る事務所案内・アクセスを確認する

参考資料

本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言を行うものではありません。犯罪の成否、処分の見通し、公訴時効の計算は、行為の時期、証拠関係その他の個別事情により異なります。実際のご対応にあたっては、最新の法令・公式情報をご確認のうえ、弁護士にご相談ください。記載の内容は令和8年7月時点の情報に基づきます。

まずはご予約ください。夜間/休日はご予約で相談可能

法律のお悩みは、 相談しやすい
神戸みらい法律会計事務所
にお任せください。

(初回相談無料 / 交通事故 債務整理は電話での無料相談が可能)

初回相談無料

ご予約フォームはこちら

お電話でもご予約いただけます

 078-797-5227

受付時間 : 9:00〜20:00

LINEからの
ご予約はこちら