駅の構内やエスカレーター、商業施設や店舗などで盗撮を疑われ、警察官に呼び止められた、任意同行を求められた、スマートフォンを預けるよう言われた——。ご本人にとっても、ご家族にとっても、突然のことで頭が真っ白になりやすい場面です。
盗撮は、現在では令和5年に新設された「撮影罪」(性的姿態撮影等処罰法)により処罰の対象となることがあります。かつての「迷惑行為」というイメージとは異なり、法定刑が定められた犯罪であり、逮捕・捜索差押え・在宅での捜査・送検・起訴不起訴の判断へとつながり得ます。
本コラムでは、撮影罪の成立要件と法定刑、駅や商業施設などで問題になりやすい場面、旧条例時代との違い、検挙された後の刑事手続の流れ、初犯の処分を左右する事情、示談や不起訴に向けた弁護活動を、ご本人とご家族向けに整理します。個別の見通しは事案により異なりますので、一般的な整理としてお読みください。
検挙された後に、撮影したとされるデータを消去する、スマートフォンを初期化する、被害者とされる方へ直接連絡する、といった行動は、証拠隠滅や新たなトラブルと受け取られかねません。自己判断で動く前に、手元の資料を整理し、弁護士に相談して対応を確認することをおすすめします。
撮影罪の疑いで警察から連絡があった、ご家族が検挙された、という段階でも、資料を確認して見通しや対応方針を整理することができます。
Contents
盗撮は「撮影罪」で処罰されることがある|まず押さえたい結論
はじめに、要点を整理します。
撮影罪は、単なる迷惑行為ではなく、法定刑のある犯罪です。初犯かどうかだけで処分が決まるわけではなく、撮影の態様、被害者の年齢、余罪の有無、画像・動画の保存や拡散、認否、示談や再発防止の状況などにより、結論は変わります。検挙された後は、自己判断でデータを消したり被害者へ直接連絡したりせず、早い段階で弁護士に相談することが重要です。
| 論点 | 概要 |
|---|---|
| 撮影罪の位置づけ | 盗撮は撮影罪(性的姿態撮影等処罰法第2条)として処罰され得る。迷惑行為ではなく犯罪 |
| 法定刑 | 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金。未遂も処罰の対象 |
| 検挙後の流れ | 在宅事件と身柄事件がある。逮捕された場合は勾留や接見禁止につながることがある |
| 初犯の扱い | 初犯かどうかだけで決まらない。態様・年齢・余罪・保存拡散・認否・示談などで変わる |
| 示談・不起訴 | 撮影罪は非親告罪。示談は有利に考慮され得るが、示談イコール不起訴とは限らない |
| 避けたい対応 | データ消去・端末初期化・被害者への直接連絡は避け、弁護士に相談する |
撮影罪(性的姿態等撮影罪)の基礎知識
正式名称と対象となる4つの撮影行為
「撮影罪」は通称で、正式名称は「性的姿態等撮影罪」です。これを定めているのが、令和5年に新設された「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(通称・性的姿態撮影等処罰法)で、令和5年7月13日に施行されました。同法第2条は、次のいずれかにあたる撮影行為を処罰の対象としています。
- 正当な理由がないのに、ひそかに、性的姿態等(性的な部位、現に性的な部位を覆っている下着、わいせつな行為・性交等がされている間の人の姿態)を撮影する行為
- 刑法第176条第1項各号に掲げる行為・事由その他これらに類する行為・事由により、同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態にさせ、又はその状態に乗じて撮影する行為
- 行為の性質が性的なものではないと誤信させ、若しくは特定の者以外は閲覧しないと誤信させ、又はその誤信に乗じて撮影する行為
- 正当な理由がないのに、16歳未満の者の性的姿態等を撮影する行為(相手が13歳以上16歳未満の場合は、行為者が5歳以上年長のとき)
これらの撮影行為は、未遂であっても処罰の対象とされています(同条第2項)。同意を得た撮影であっても、その同意が暴行・脅迫などによる場合や、2・3の状態・誤信を利用した場合には、撮影罪が問題となり得ます。
「性的姿態等」「正当な理由」とは
「性的姿態等」とは、性器や臀部・胸部などの性的な部位、現に性的な部位を覆っている下着、わいせつな行為や性交等がされている間の人の姿などを指します。着衣のままの全身撮影がただちにこれにあたるわけではなく、何が「性的姿態等」にあたるかは撮影の対象・態様により判断されます。
「正当な理由」があるかどうかも、事案ごとの判断になります。法務省の解説では、例えば医師が救急搬送された意識不明の患者の上半身裸の姿を、医療行為上のルールに従って撮影する場合などが「正当な理由」がある例として挙げられています。日常的な盗撮の場面で「正当な理由」が認められることは想定しにくいといえます。
法定刑と拘禁刑(施行時期による違い)
性的姿態等撮影罪の法定刑は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金です。ここでいう自由刑は、懲役と禁錮を一本化した「拘禁刑」で、拘禁刑は令和7年6月1日から施行されています。もっとも、拘禁刑の施行日より前の行為については、刑の変更に関する刑法第6条により、従前の懲役刑が適用され得ます。行為の時期によって条文上の表記や適用が変わる点に注意が必要です。
撮影以外に問題となり得る行為(提供・保管・送信・記録)
性的姿態撮影等処罰法は、撮影そのものだけでなく、撮影によって生じた記録を扱う行為も処罰の対象としています。撮影の場面だけを見て考えるのではなく、その後の保存・共有・送信まで含めて資料を確認する必要があります。
| 罪名(条文) | 対象となる行為 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 性的影像記録提供等罪(第3条第1項) | 撮影等により生じた性的影像記録を提供する行為 | 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金 |
| 同(第3条第2項) | 不特定・多数への提供、又は公然と陳列する行為 | 5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又は併科 |
| 性的影像記録保管罪(第4条) | 提供等の目的で性的影像記録を保管する行為 | 2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金 |
| 性的姿態等影像送信罪(第5条) | 不特定・多数への影像送信(ライブストリーミング等) | 5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又は併科 |
| 性的姿態等影像記録罪(第6条) | 送信された影像を、そのようなものと知りながら記録する行為 | 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金 |
このほか、事案によっては、児童ポルノ関連法令、不同意わいせつ罪、建造物侵入罪・住居侵入罪、迷惑防止条例違反などが問題となることもあります。どの罪が成立し得るかは資料の確認を要しますので、ここでは深く立ち入らず、別罪が問題となる可能性がある点を押さえておいてください。
旧条例(迷惑防止条例)時代との違い
盗撮は、以前は主に各都道府県の迷惑防止条例などにより取り締まられてきました。兵庫県では「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」がこれにあたります。もっとも、条例は都道府県ごとに処罰対象や罰則の範囲が異なり、撮影場所が特定できないと処罰しにくいといった課題が指摘されていました。
令和5年の性的姿態撮影等処罰法の施行により、性的姿態等の撮影・提供・保管・送信・記録が、全国共通の犯罪類型として整理されました。法定刑も、従前の条例と比べて重く定められています。ただし、これは「令和5年以降の盗撮はすべて撮影罪になる」という単純な話ではありません。
施行日(令和5年7月13日)より前の行為には、従前の条例等が適用され得ます。また、行為の時期、場所、撮影の対象、被害者の年齢、画像の保存・提供・拡散の有無などにより、成立し得る罪や見通しは変わります。過去の情報がインターネット上に残っている領域でもあるため、ご自身のケースに何があてはまるかは、資料を確認したうえで判断する必要があります。
神戸で問題になりやすい盗撮の場面
神戸市内でも、次のような場面で撮影罪や関連する罪が問題となり得ます。いずれも、その場の状況や撮影の態様によって評価が変わります。
- 駅の構内・ホーム・エスカレーター・電車内などでの撮影
- 商業施設・店舗・イベント会場などでの撮影
- トイレ・更衣室・浴場・勤務先・学校などでの撮影
- 警察官からの呼出し・職務質問・任意同行を受けた場面
- スマートフォンやカメラ、SDカードなどを押収された場面
- 自宅や勤務先に捜索差押えが入った場面
- 被害者が特定されている場合と、特定されていない場合
- 端末に保存された画像から、余罪が問題となる場合
押収された端末は解析され、保存データが確認されるのが一般的です。保存画像が余罪発覚の端緒になることもあるため、端末や記録媒体をどう扱うかも含めて、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
検挙された後の刑事手続の流れ
在宅事件と身柄事件
捜査には、身柄を拘束しないまま進める「在宅事件」と、逮捕とこれに続く勾留により身柄を拘束して進める「身柄事件」があります。いずれによるかは、犯罪の重大性・悪質性、逃亡のおそれ、証拠隠滅のおそれなどの事情を総合して判断されます。在宅事件であっても捜査は進みますので、呼出しを受けた段階から準備をしておく意味があります。
逮捕・送致・勾留・接見禁止
逮捕された場合、長くても72時間以内に、検察官による勾留請求・起訴・釈放のいずれかの手続がとられます。勾留が認められると身柄拘束が続き、一部の罪を除き、最も長い場合で勾留請求後20日以内に、検察官が起訴するか釈放するかを判断します。接見禁止の決定がされると、弁護人以外の人との面会ができなくなります。逮捕後は、いつでも弁護人を選任することができ、勾留状が発せられた被疑者が資力等の要件を満たす場合には、被疑者国選弁護人の選任を請求できる制度もあります。
起訴・不起訴・略式起訴・正式裁判
捜査の結果を踏まえ、検察官が起訴・不起訴を判断します。不起訴となるのは、訴訟条件を欠く場合、罪とならない場合、嫌疑がない場合、嫌疑が不十分な場合のほか、罪を犯したことが証拠上明らかでも、性格・年齢・境遇・犯罪の軽重と情状・犯罪後の情況などから訴追の必要がないと判断される「起訴猶予」の場合があります。起訴される場合には、公開の法廷で審理される正式裁判のほか、一定の要件のもとで書面審理により罰金・科料を科す略式起訴という手続もあります。いずれになるかは事案により異なります。
初犯の場合でも処分を左右する事情
「初犯だから不起訴になる」と断定することはできません。初犯であっても、次のような事情により、処分の見通しは変わります。
| 事情 | 見方の一例 |
|---|---|
| 前科・前歴の有無 | 過去の処分歴があるかどうかは重要な要素になり得る |
| 撮影の態様 | 方法・執拗さ・計画性などの悪質性が考慮され得る |
| 被害者の年齢 | 被害者が年少である場合は、より慎重な判断がされ得る |
| 対象・場所・方法 | 撮影の対象や場所、使用機器なども評価の対象になり得る |
| 画像・動画の扱い | 保存・共有・送信・販売・公開・クラウド保存の有無が影響し得る |
| 余罪の有無 | 端末解析等で余罪が問題となることがある |
| 認否・供述状況 | 事実関係についての説明の状況が考慮され得る |
| 示談・被害弁償・宥恕 | 謝罪・被害弁償・宥恕の有無が有利に考慮されることがある |
| 再発防止・監督 | 通院・カウンセリングや家族の監督体制なども資料になり得る |
これらは相互に関連し、総合的に判断されます。ご自身のケースでどの事情がどう働くかは、資料を確認したうえで検討する必要があります。
示談・不起訴に向けた弁護活動
撮影罪は非親告罪のため、被害者の告訴がなくても起訴されることがあり、示談が成立すれば必ず不起訴になるというものではありません。もっとも、被害者との示談や被害弁償、宥恕の有無は、処分の判断において有利に考慮されることがあります。弁護士に依頼した場合、一般に次のような活動が考えられます。
- 被害者対応の窓口となり、弁護士を通じて連絡・調整を行うこと
- 謝罪文の作成、被害弁償、示談条件の調整を行うこと
- 捜査機関を通じるなどして、被害者の意向を確認すること
- 再発防止策や身元引受、環境調整に関する資料を整えること
- 不起訴や適切な処分を求める意見書を提出すること
- 取調べへの対応について助言すること
- 早期の釈放、勾留の回避、接見禁止の解除などに向けた活動を行うこと
被害者の方への連絡は、弁護士を通じて行うのが基本です。ご本人やご家族が直接連絡を取ろうとすると、被害者の心情を害し、かえって不利に働くおそれがあります。被害者のプライバシーと意向を尊重しながら進める必要があります。
手続前に確認したいことと、避けたい対応
相談前に、手元で次のような情報を整理しておくと、見通しの検討がスムーズになります。
- 警察から渡された書類・名刺、呼出しの日時
- 事件とされる日時・場所・経緯のメモ
- 押収された物の一覧(端末・カメラ・SDカード等)
- スマートフォンやクラウドの利用状況
- 取調べで話した内容、署名・押印した書類の有無
- 逮捕・勾留・在宅事件のいずれかという現在の状況
- ご家族が受けた連絡の内容
- 勤務先・学校への連絡の有無
- 被害者とされる方との関係や連絡の有無
- 示談についての希望
- 前科・前歴、過去の警察対応の有無
- 通院・カウンセリングなど再発防止の検討状況
一方で、撮影したとされるデータを消去する、スマートフォンを初期化する、クラウド上のデータを隠す、被害者とされる方へ直接連絡する、関係者と口裏を合わせる、事実と異なる説明をする、といった対応は避けてください。証拠隠滅や新たな問題と受け取られ、かえって不利になるおそれがあります。端末や記録の扱いに迷う場合も、自己判断で動かず、弁護士に相談して対応を確認してください。
弁護士に相談するタイミング
次のような場面では、早い段階で相談することで、判断材料や対応方針を整理できます。相談は結果を保証するものではありませんが、見通しを検討し、避けるべき対応を確認するうえで役立ちます。
- 警察から連絡・呼出しがあったとき
- ご家族が逮捕されたとき
- 自宅や勤務先に捜索差押えを受けたとき
- 検察庁から呼出しがあったとき
- 示談を検討したいとき
- 勤務先・学校への説明が必要になりそうなとき
ご本人が動きにくい状況でも、ご家族から相談の準備を進めることができます。取調べ前・示談前・検察庁の呼出し前など、手続の節目の前に一度ご確認ください。
よくある質問(FAQ)
盗撮は現在、撮影罪になるのですか。
令和5年に施行された性的姿態撮影等処罰法により、盗撮は撮影罪(性的姿態等撮影罪)として処罰の対象となることがあります。ただし、成立するかどうかは撮影の対象・態様や行為の時期などにより異なります。
撮影罪の法定刑はどの程度ですか。
性的姿態等撮影罪の法定刑は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金で、未遂も処罰の対象です。提供・送信など関連する罪では法定刑が異なります。
初犯なら不起訴になりますか。
初犯かどうかだけで決まるものではありません。撮影の態様、被害者の年齢、余罪、画像の保存・拡散、認否、示談や再発防止の状況などにより見通しは変わります。個別事情により結論は異なります。
警察から呼出しを受けたら何を準備すべきですか。
警察から渡された書類や日時、経緯のメモ、押収された物の一覧、取調べで話した内容などを整理しておくと役立ちます。データの消去や被害者への直接連絡は避け、対応は弁護士に相談して確認することをおすすめします。
スマートフォンを押収された場合はどうなりますか。
押収された端末は解析され、保存データが確認されるのが一般的です。保存画像が余罪の端緒になることもあります。端末や記録媒体の扱いに迷う場合も、自己判断で動かさず、弁護士に相談してください。
被害者と示談できれば不起訴になりますか。
撮影罪は非親告罪のため、示談が成立しても必ず不起訴になるとは限りません。もっとも、示談や被害弁償、宥恕の有無は処分の判断で有利に考慮されることがあります。被害者への連絡は弁護士を通じて行うのが基本です。
家族が逮捕された場合、すぐに何をすべきですか。
逮捕後は長くても72時間以内に勾留請求・起訴・釈放のいずれかの手続がとられ、勾留されると身柄拘束が続くことがあります。まずは状況を整理し、早い段階で弁護士に相談して対応方針を確認することが考えられます。
駅や商業施設での盗撮は、迷惑防止条例ではなく撮影罪ですか。
施行日以降の行為については、性的姿態撮影等処罰法が適用されるのが原則です。ただし、行為の時期や態様によって適用され得る法令は変わり得ます。ご自身のケースについては資料を確認したうえで判断する必要があります。
まとめ
- 盗撮は、撮影罪(性的姿態撮影等処罰法第2条)として処罰され得る、法定刑のある犯罪です。
- 法定刑は3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金で、未遂も処罰の対象です。
- 初犯かどうかだけで処分は決まらず、態様・年齢・余罪・保存拡散・認否・示談などにより変わります。
- 撮影罪は非親告罪で、示談イコール不起訴ではありませんが、示談等が有利に考慮されることがあります。
- データ消去・端末初期化・被害者への直接連絡は避け、資料を整理して早めに弁護士へ相談することが重要です。
撮影罪の疑いについて、資料を確認して見通しや対応方針を整理したい方は、お問い合わせください。ご本人・ご家族いずれからのご相談にも対応します。費用の目安は費用ページをご確認ください。
監修・執筆
本コラムは、神戸みらい法律会計事務所に所属する弁護士が内容を確認しています。担当する弁護士の経歴や取扱分野は、弁護士紹介ページをご覧ください。
参考にした主な公的資料

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