お子さまが18歳・19歳のときに事件を起こしてしまった、あるいは警察から呼出しや連絡があった――そのようなとき、ご家族の多くが「成人と同じ刑事裁判になるのか」「名前や顔が報道されるのか」「大学や専門学校、アルバイト先や内定先に知られてしまうのか」といった不安を一度に抱えます。
令和4年に施行された改正少年法では、18歳・19歳を「特定少年」と位置づけ、17歳以下の少年とは異なる特例が設けられました。もっとも、そこでよくある誤解が「特定少年は必ず逆送される」「必ず実名報道される」というものです。実際には、いずれも一定の場合に問題になり得るものであり、事案により結論は異なります。
この記事では、特定少年の基本的な位置づけ、逆送(検察官送致)と実名報道・推知報道のリスク、就学・就職への影響、そして本人・保護者が早めに確認しておきたい資料と相談のタイミングを整理します。
ご本人やご家族が今どの手続段階にあるか、次に何を確認すべきかを整理したい場合は、早めのご相談が有効です。神戸みらい法律会計事務所では、刑事事件・少年事件について初回相談を無料でお受けしています。
Contents
この記事の結論と全体像
先に要点を整理します。特定少年をめぐる論点は、いずれも「原則」と「例外」「個別事情」がセットになっている点が特徴です。
| 論点 | おさえておきたいポイント |
|---|---|
| 少年法の適用 | 18歳・19歳も少年法が適用されます。ただし「特定少年」として、17歳以下とは異なる特例があります。 |
| 逆送(検察官送致) | 特定少年は原則逆送の対象事件が拡大されています。逆送が問題になる場面は増えていますが、必ず逆送されるわけではありません。 |
| 実名報道・推知報道 | 公判請求(正式起訴)された場合に、実名等の報道を禁じる規定の適用が解除され得ます。必ず実名報道されるわけではありません。 |
| 就学・就職への影響 | 学校の規程、就業規則、資格ごとの法令、報道の有無などにより異なり、一律には決まりません。 |
| 保護者の初動 | まず手続段階・身柄拘束の有無・届いた書類・本人の供述状況を確認することが出発点になります。 |
| 相談のタイミング | 逮捕直後、呼出しを受けたとき、家庭裁判所送致や逆送が見込まれるときなど、早い段階が望ましいといえます。 |
特定少年とは|18歳・19歳の位置づけ
民法上の成年と少年法上の少年の違い
令和4年4月1日、改正民法により成年年齢が18歳に引き下げられ、18歳・19歳は民法上「成年」として扱われるようになりました。同じ日に施行された改正少年法では、18歳・19歳を「特定少年」と定め、これらの者も引き続き少年法の対象としつつ、17歳以下とは異なる取扱いを設けています。
つまり、「成人年齢が18歳になったから18歳・19歳はすべて成人と同じ刑事手続になる」という理解は正確ではありません。特定少年の事件も、原則として家庭裁判所が関与する枠組みの中で扱われます。
17歳以下の少年・特定少年・成人の違い
特定少年が「どの点で17歳以下と違い、どの点で成人に近いのか」を整理すると、次のようになります。数字や制度は改正により変わり得るため、実際の事件では最新の条文と個別事情の確認が必要です。
| 項目 | 17歳以下の少年 | 特定少年(18歳・19歳) | 成人(20歳以上) |
|---|---|---|---|
| 少年法の適用 | 適用される | 適用される(特例あり) | 適用されない |
| 逆送(検察官送致)の範囲 | 死刑・拘禁刑に当たる罪などが中心 | 罪の種類を限定せず対象となり得る(少年法第62条第1項) | ― |
| 原則逆送の対象事件 | 16歳以上のとき故意に被害者を死亡させた罪 | 左に加え、死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑に当たる罪など(少年法第62条第2項) | ― |
| ぐ犯(将来罪を犯すおそれ) | 対象になり得る | 対象外(少年法第65条) | 対象外 |
| 保護処分の種類 | 保護観察・児童自立支援施設等送致・少年院送致 | 6月の保護観察・2年の保護観察・少年院送致(少年法第64条) | ― |
| 逆送後の刑事裁判での刑 | 不定期刑(長期・短期を定める) | 定期刑(成人と同様の枠組み)(少年法第67条) | 定期刑 |
| 資格制限をゆるめる特例 | 特例あり | 特例が適用されず、成人と同様の扱い | 通常どおり |
| 実名報道・推知報道 | 禁止(少年法第61条) | 原則禁止だが、公判請求された場合は解除され得る(少年法第68条) | 報道の規制はない |
少年事件の流れ|警察から家庭裁判所、逆送まで
少年事件は、成人の刑事事件とは異なる流れをたどります。事件は警察・検察官による捜査を経て、原則としてすべて家庭裁判所に送られます(全件送致)。家庭裁判所は、家庭裁判所調査官による調査や、必要に応じた少年鑑別所での鑑別を踏まえ、少年審判で処分を決めます。
家庭裁判所の処分には、保護観察、少年院送致などの「保護処分」のほか、審判不開始や不処分などがあります。これらは、少年の立ち直り(更生)を目的とするもので、刑罰とは性質が異なります。
もっとも、家庭裁判所が「保護処分ではなく刑罰を科すのが相当」と判断した場合には、事件を検察官に送り返します。これが逆送(検察官送致)です。逆送され、検察官が起訴すると、事件は刑事裁判へ移ります。特定少年は、この逆送が問題になりやすい類型が拡大している点に注意が必要です。
特定少年と逆送(検察官送致)
逆送とは何か
逆送とは、家庭裁判所が、少年に対して保護処分ではなく刑事処分(刑罰)を科すのが相当と判断した場合に、事件を検察官へ送り返す手続です。逆送された事件は、検察官が刑事裁判所に起訴し、有罪となれば刑罰が科されます。
原則逆送対象事件の拡大(少年法第62条)
「原則逆送対象事件」とは、家庭裁判所が原則として逆送しなければならないとされている事件です。特定少年については、この対象が次のように広がっています。
特定少年の原則逆送対象事件(少年法第62条第2項)
① 16歳以上のとき、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件
② 死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪の事件(特定少年のとき犯したもの) など
②が特定少年で新たに加わった類型です。ここに含まれ得る罪の例としては、強盗罪、不同意性交等罪、現住建造物等放火罪、建造物等以外放火罪などが挙げられます。「短期1年以上の拘禁刑に当たる罪」という基準のため、一般に想像されるよりも幅広い罪が対象になり得る点に注意が必要です。
また、特定少年については、原則逆送の対象事件以外でも、罪の種類を限定せずに逆送の可能性が生じています(少年法第62条第1項)。なお、逆送の対象になるかどうかは、原則として犯行時の年齢を基準に判断されます。
「原則」でも個別事情が検討される
ここで重要なのは、「原則逆送」であっても、必ず逆送されるわけではないという点です。少年法第62条第2項のただし書は、調査の結果、犯行の動機・態様・結果、犯行後の事情、本人の性格・年齢・環境などを考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、逆送しないことができるとしています。
そのため、事件の内容や本人の状況、被害者対応、環境調整などの事情をどのように整理し、家庭裁判所に伝えるかによって、結論が変わり得ます。どの罪名で家庭裁判所に送致されるかという見立ても、対象事件に当たるかどうかを左右する重要な要素です。いずれも事案により異なるため、資料を確認したうえでの検討が必要になります。
逆送後の刑事裁判で注意すること
特定少年が逆送されて起訴された場合、刑事裁判では原則として20歳以上に近い形で扱われます。例えば、判決で言い渡される刑は不定期刑ではなく定期刑となり、資格制限をゆるめる特例も適用されません(少年法第67条)。
他方で、逆送されて刑事裁判になったとしても、裁判所が「保護処分に付するのが相当」と認めるときは、事件を家庭裁判所に移送する仕組みがあります(少年法第55条)。逆送後であっても、弁護活動の内容によって進み方が変わる場面があるため、早い段階から方針を整理しておくことが重要です。
特定少年と実名報道・推知報道
推知報道とは(少年法第61条)
少年法第61条は、少年のとき犯した罪について、氏名・年齢・職業・住居・容ぼうなどによって本人が誰であるかを推知できるような記事や写真の報道(推知報道)を禁止しています。これは、少年の立ち直りに配慮した規定です。
特定少年の特例(少年法第68条)|公判請求後に解除され得る
特定少年については、この推知報道の禁止に例外が設けられました(少年法第68条)。具体的には、特定少年のときに犯した罪により公訴を提起された(起訴された)場合には、第61条の適用が除外され、実名等の報道が可能になり得ます。逆送されて公判請求された場面が典型です。
ここでも基準時は原則として犯行時です。起訴の時点で18歳・19歳であっても、犯行時に17歳であれば、この特例の対象にはなりません。
略式命令請求・家庭裁判所の審判段階での扱い
もっとも、「起訴されれば必ず実名報道される」わけではありません。少年法第68条のただし書により、略式命令の請求がされた場合には、原則としてこの特例は適用されず、推知報道の禁止が維持されます(略式の手続が通常の審判に移行した場合を除きます)。また、家庭裁判所の審判段階(逆送前)では、第61条の禁止が及びます。
整理すると、①「法律上、実名等の報道が可能になる場合がある」ことと、②「必ず実名報道される」ことは異なります。実際にどう報道されるかは、事件の性質や各報道機関の判断にもよります。検察庁による氏名の公表と、報道機関の報道は、それぞれ別に判断される点にも注意が必要です。SNSでの拡散や検索結果への残存といった事実上の影響についても、過度に一般化せず、個別の状況に応じて考える必要があります。
神戸で多い相談場面|就学・就職・アルバイト・内定への影響
神戸市内や近隣には、大学・専門学校に通い、アルバイトや就職活動、内定先を抱える若年層の生活圏が広がっています。特定少年の事件では、こうした就学・就職への影響について相談が寄せられます。名谷・須磨・垂水・西神・北神方面など、神戸市内からアクセスしやすい体制でご相談をお受けしています。
もっとも、学校の処分(停学・退学など)、進級・実習・資格取得、アルバイトや内定・就職への影響は、事件の内容、学校の規程や就業規則、職種や資格ごとの法令、報道の有無、本人の反省や再発防止の取組み、被害者対応などにより異なり、一律には決まりません。「特定少年だから必ず退学になる」「必ず内定が取り消される」といった一般化はできません。
また、学校や勤務先・内定先への説明をどう行うかは、守秘、本人の意思、証拠関係、弁護方針、被害者対応にも影響し得ます。よかれと思って独断で連絡した結果、かえって状況が難しくなることもあります。連絡の要否やタイミングは、事案に応じて方針を整理したうえで判断することをおすすめします。資格制限についても、資格・職種ごとに根拠となる法令が異なるため、個別の確認が必要です。
本人・保護者が早めに確認すべきこと
相談や今後の対応をスムーズに進めるために、次の点を早めに確認・保管しておくと役立ちます。
- 逮捕・勾留の有無、呼出しを受けているかどうか(在宅か身柄事件か)
- 警察署・検察庁・家庭裁判所から届いた書類(連絡先・日付を含む)
- 事件名・容疑の内容、被害者がいるかどうか
- 本人がどのような供述をしているか、取調べの状況
- 通学先・アルバイト先・内定先の規程や就業規則
- スマートフォン、SNS、メッセージ、写真、動画、位置情報など、事件に関係し得る記録の状況
- 本人の生活状況・通学/就労状況、家庭での見守り体制、再発防止に向けた取組み
なお、本人の供述内容や黙秘権の行使、取調べへの対応は、その後の手続に影響します。ここは自己判断で進めるより、早めに弁護士に相談して方針を整理することが望ましい部分です。被害者への謝罪や被害弁償についても、相手方へ直接接触することが適切でない場合があるため、進め方を含めて検討が必要です。
「どの資料を、どの順番で確認すればよいか」「学校や勤務先にどう対応すべきか」を整理したい場合、状況の聞き取りを通じて、取り得る選択肢と当面の手順を検討することができます。
弁護士に相談するタイミング
特定少年の事件は、時間の使い方が結果に影響しやすい分野です。弁護士に相談することで、結果を保証できるわけではありませんが、現状を整理し、取り得る対応方針や見通しを検討しやすくなります。次のような場面は、早めの相談が特に有効です。
- 逮捕された、または家族が逮捕されたとき
- 警察から呼出しや連絡を受けたとき
- 家庭裁判所への送致が見込まれるとき、観護措置(少年鑑別所への収容)が問題になるとき
- 逆送が問題になり得る罪名のとき
- 被害者対応や被害弁償、示談を検討する必要があるとき
- 学校・勤務先・内定先への説明で迷うとき
- 報道やSNSでの拡散が心配なとき
- 環境調整、審判準備、逆送後の刑事裁判への対応が必要なとき
弁護士費用の目安や、弁護士のプロフィールについては、次のページもあわせてご確認ください。
よくある質問(FAQ)
特定少年とは何ですか?
改正少年法で定められた、18歳・19歳の少年をいいます。少年法は適用されますが、17歳以下とは異なる特例(逆送対象の拡大、推知報道の特例など)が設けられています。
18歳・19歳でも少年法は適用されますか?
適用されます。民法上は成年でも、少年法上は「特定少年」として引き続き対象になります。事件は原則として家庭裁判所が関与する枠組みで扱われます。
特定少年は必ず逆送されますか?
必ず逆送されるわけではありません。原則逆送の対象事件は拡大していますが、個別事情を考慮して刑事処分以外の措置が相当と認められれば、逆送されないこともあります。結論は事案により異なります。
特定少年は必ず実名報道されますか?
必ず実名報道されるわけではありません。公判請求(正式起訴)された場合に、実名等の報道を禁じる規定の適用が解除され得るという仕組みです。実際にどう報道されるかは、事件の性質や報道機関の判断にもよります。
略式命令の場合でも実名報道されますか?
略式命令の請求がされた場合は、原則として推知報道の禁止が維持されます。ただし、略式の手続が通常の審判に移行した場合など、扱いが変わる場面もあります。
大学や専門学校、アルバイト先・内定先に知られる可能性はありますか?
事件の内容や報道の有無、手続の進み方などによって異なり、一律には決まりません。学校や勤務先への説明の要否・方法も、事案に応じた方針整理が必要です。独断で連絡する前に確認することをおすすめします。
保護者はまず何を準備すればよいですか?
身柄拘束の有無、届いた書類、事件名や容疑の内容、本人の供述状況、通学・就労先の規程、スマートフォンやSNSの記録などの確認が出発点になります。詳しくは本文のチェックリストをご覧ください。
弁護士にはいつ相談すればよいですか?
逮捕直後や呼出しを受けたとき、家庭裁判所送致や逆送が見込まれるとき、被害者対応が必要なときなど、早い段階での相談が有効です。早めに動くことで、対応方針を整理しやすくなります。
まとめ
- 18歳・19歳は「特定少年」として少年法が適用されるが、17歳以下とは異なる特例がある。
- 逆送(検察官送致)の原則対象は拡大しているが、個別事情により逆送されないこともある。
- 公判請求されると実名等の報道が可能になり得るが、必ず実名報道されるわけではなく、略式命令の場合は原則として禁止が維持される。
- 就学・就職への影響は、学校規程・就業規則・資格・報道の有無などにより異なり、一律には決まらない。
- まずは手続段階・身柄拘束の有無・書類・供述状況を確認し、学校や勤務先への説明は慎重に方針を立てる。
- 逆送や推知報道のリスクがある場合は、早めに刑事事件・少年事件を取り扱う弁護士に相談し、対応方針を整理する。
特定少年の事件では、初動の整理が今後の見通しに影響します。神戸みらい法律会計事務所では、刑事事件・少年事件について初回相談を無料でお受けし、現状の整理と取り得る選択肢、当面の手順をご説明します。ご事情により、夜間・休日・オンラインでのご相談に対応できる場合があります。お電話・お問い合わせフォーム・LINEからご予約ください。
監修・執筆
藤井 貴之(弁護士・公認会計士)
神戸みらい法律会計事務所(弁護士法人ひょうご支所)
兵庫県弁護士会所属
刑事事件・少年事件、交通事故、相続、離婚、債務整理、企業法務などに対応しています。詳しいプロフィールは弁護士紹介を見るをご覧ください。

24時間365日受付