ある日突然、警察から電話がかかってきた、あるいは「呼出状」や出頭を求める書面が届いた——。逮捕されていないのに捜査の対象になっていると分かると、「これから逮捕されるのか」「取調べで何を聞かれるのか」「会社や家族に知られてしまうのか」と、強い不安を感じる方が少なくありません。
逮捕・勾留をされず、ふだんどおりの生活を続けながら捜査が進む事件を「在宅事件」といいます。この記事では、在宅事件で警察や検察庁(神戸市内であれば神戸地方検察庁など)から呼び出しを受けたときの流れ、取調べや供述調書で気をつけたいこと、そして不起訴・略式・公判といった処分の見通しの考え方を、一般の方向けに整理します。
先に結論の方向性をお伝えすると、呼び出しを受けた=有罪、検察庁に呼ばれた=起訴が決まった、というわけではありません。一方で「在宅だから何もしなくてよい」とも言い切れません。事案により結論は変わりますので、早い段階で事実関係と資料を整理し、必要に応じて弁護士に相談しておくことが、落ち着いた対応につながります。
この記事で分かること
- 在宅事件と逮捕された事件は何が違うのか
- 警察・検察庁から呼び出されたときに、まず確認すべきこと
- 取調べや供述調書で気をつけたいポイント(黙秘権・署名押印など)
- 不起訴・略式命令請求・公判請求の大まかな違い
- 神戸地方検察庁へ出頭する場合に確認しておきたいこと
- 弁護士に相談することで何を整理できるのか
出頭日や取調べが迫っていて不安がある場合は、署名や出頭の前に、一度事実関係と資料を整理しておくことをおすすめします。ご相談で、取調べ対応や処分の見通しの検討を進めやすくなります。
Contents
まず押さえたい全体像
在宅事件は、おおまかに「警察の捜査・取調べ」→「検察官への送致(いわゆる書類送検)」→「検察官の捜査・取調べ」→「起訴・不起訴の判断」という流れで進みます。呼び出しは、この各段階で行われることがあります。まずは全体像を、表で確認しておきましょう。
| 段階 | 主な内容 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 警察からの連絡・呼び出し | 電話や呼出状などで出頭を求められる | 担当部署・担当者・日時・場所・容疑・持参物を確認する |
| 警察での取調べ | 事情聴取が行われ、供述調書が作成されることがある | 事実と違う内容を曖昧に認めない。調書の内容を確認する |
| 検察官への送致(書類送検) | 警察が書類・証拠を検察官に送る | 送致されたこと自体は、起訴が決まったことを意味しない |
| 検察官の取調べ・呼び出し | 検察官が事実関係を確認し、起訴・不起訴を検討する | 反省・被害弁償・示談・生活状況などを聞かれることがある(事件により異なる) |
| 処分の判断 | 不起訴/略式命令請求/公判請求のいずれかを検討 | 結論は個別事情により異なる。断定はできない |
呼び出しを受けたら、まず確認したいこと
- どこの警察署・部署の、誰からの連絡か(担当者名・連絡先)
- いつ・どこへ出頭するのか(日時・場所)
- どのような容疑・事件についての呼び出しか
- 持参するよう言われた物はあるか
- 都合が悪い場合の連絡方法(無断欠席にしない)
「在宅事件」とは
在宅事件とは、逮捕・勾留による身柄の拘束を受けずに、日常生活を送りながら捜査が進められる事件をいいます。捜査機関は、必要があるときは被疑者に出頭を求めて取り調べることができますが、逮捕・勾留されていない場合、被疑者は出頭を拒んだり、出頭後にいつでも退去したりすることができるとされています(刑事訴訟法第198条第1項ただし書)。この意味で、在宅の取調べは「任意」のものと位置づけられています。
逮捕・勾留された事件との違い
| 項目 | 在宅事件 | 逮捕・勾留された事件 |
|---|---|---|
| 身柄 | 拘束されず、通常の生活を続けられる | 警察の留置施設などで身柄が拘束される |
| 取調べ | 呼び出しに応じて出頭する(任意) | 拘束された状態で取調べを受ける |
| 時間の枠組み | 逮捕後の法定の時間制限は基本的に働かない | 送致・勾留請求など、法定の時間制限の中で手続が進む |
| 注意点 | 「軽い事件」「必ず不起訴になる事件」という意味ではない | 早期の対応(接見など)が特に重要になりやすい |
在宅でも、後日、処分がありうる
在宅事件は身柄が拘束されていないぶん、逮捕された事件よりも負担が軽く感じられることがあります。もっとも、これは結論が決まっていることを意味しません。事案によっては、捜査の進み方により、後日、逮捕や、起訴(略式命令請求・公判請求)に至ることもあります。逆に、不起訴となることもあります。いずれになるかは個別事情により異なり、資料を確認したうえで判断する必要があります。
警察から呼び出しを受けたときの初動
まず確認する5つのこと
連絡を受けたら、あわてて出向く前に、次の点を控えておきましょう。後で弁護士に相談する際にも役立ちます。担当部署、担当者名、出頭の日時と場所、疑われている事件の内容、持参するよう言われた物です。持参物については、後で困らないよう、呼び出し元にあらためて確認しておくと安心です。
都合が悪いときは、無断欠席にしない
指定された日時にどうしても都合がつかない場合は、無断で行かないのではなく、早めに担当者へ連絡し、日程の調整を相談してください。任意の取調べであっても、正当な理由なく連絡もせずに応じない状態が続くと、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると受け取られ、その後の捜査機関の判断に影響する可能性があります(事案により異なります)。まずは連絡を絶やさないことが大切です。
やってはいけないこと
- 関係者との口裏合わせや、被害者への直接の連絡(かえって不利に働くことがあります)
- スマートフォンやパソコンの記録、メール、SNS投稿などの削除・改変
- 事実と違う説明や、その場しのぎの供述
- 呼び出しの無断欠席
取調べと供述調書で気をつけたいこと
黙秘権と「答え方」
憲法は、何人も自己に不利益な供述を強要されないと定めています(憲法第38条第1項)。これを受けて、取調べの前には、自己の意思に反して供述をする必要がない旨が告げられることになっています(刑事訴訟法第198条第2項)。つまり、答えたくないことに無理に答える必要はありません。
取調べでは、記憶があいまいなことや、はっきりしないことを、その場の流れで認めてしまわないことが大切です。事実と違うと感じたら、「覚えていません」「分かりません」「弁護士に相談してから答えたいです」と述べることも考えられます。どの範囲で話し、どの範囲で答えを控えるかは、事案により判断が変わりますので、迷う場合は早めに弁護士に相談することをおすすめします。
供述調書の確認と署名押印
取調べで話した内容は、供述調書という書面にまとめられることがあります(刑事訴訟法第198条第3項)。作成された調書は、閲覧させてもらうか、読み聞かせを受けることができ、内容に誤りがあれば、訂正(増減変更)の申立てをすることができます(同条第4項)。自分の認識と違う部分があれば、その場で訂正を求めることが重要です。
調書に誤りがないと申し立てたときは、署名押印を求められることがありますが、これを拒むこともできます(同条第5項ただし書)。署名押印は義務ではありません。供述調書は、後の処分の判断や裁判で重要な資料になり得ます(同法第322条第1項)。内容に納得できないまま署名押印してしまうと、後から覆すのが難しくなることがあるため、慎重に判断してください。もっとも、「署名押印を拒否すれば必ず有利になる」といった単純なものではなく、対応は事案により異なります。
取調べにおいて、虚偽の供述をすることや、証拠を隠す・作り替えるといった行為は、絶対に避けてください。かえって不利な結果につながるおそれがあります。
神戸地検(検察庁)から呼び出しを受けた場合
検察官取調べの位置づけ
警察の捜査が終わると、事件は検察官に送られ(送致)、検察官が、証拠に基づいて起訴・不起訴を判断します。その過程で、検察官から呼び出しを受け、あらためて事実関係や生活状況、反省・被害弁償・示談の状況などを確認されることがあります(確認される内容は事件の種類により異なります)。ここで大切なのは、検察庁から呼び出されたこと自体は、起訴が決まったことを意味しないという点です。
神戸地方検察庁へ出頭する前に確認したいこと
神戸市内の事件で本庁に出頭する場合、出頭先は神戸地方検察庁本庁(神戸市中央区橘通1丁目4番1号)となることがあります。所在地・電話番号・交通案内は変更されることもあるため、出頭前に呼び出しの書面や神戸地方検察庁の公式サイトで確認しておくと安心です。当日は時間に余裕をもって移動し、身分証や印鑑などの持参物は、事前に呼び出し元へ確認しておきましょう。
弁護士による出頭前の助言や、事実関係・資料の整理は、出頭の前に行っておくことが考えられます。もっとも、取調べへの立会いや出頭への同行が可能かどうか、その範囲は、事案・日程・捜査機関の運用により異なります。ご希望がある場合は、あらかじめ弁護士に確認してください。
在宅事件の処分の見通し
不起訴・略式命令請求・公判請求の違い
検察官の判断は、大きく分けて「起訴」と「不起訴」に分かれます。起訴には、法廷で裁判が開かれる公判請求と、被疑者に異議がない場合に、法廷を開かず簡易裁判所が書面審理で罰金・科料を科す略式命令請求があります。
| 区分 | 内容 | 押さえておきたい点 |
|---|---|---|
| 不起訴 | 起訴しない判断。嫌疑なし、嫌疑不十分、起訴猶予などの類型がある | 裁判にはならない。ただし、どの類型になるかは事案による |
| 略式命令請求 | 被疑者に異議がない場合に、簡易裁判所が書面審理で100万円以下の罰金・科料を科す手続 | あらかじめ検察官の説明を受け、異議がない旨を書面で示す。告知の日から14日以内であれば正式裁判を請求できる |
| 公判請求 | 法廷で審理が行われる正式な刑事裁判 | 争いのある事件や、罰金では済まない事件などで選択されることがある |
略式手続は簡易・迅速に終わる一方、内容に納得できないまま同意すると、その後の対応が限られることがあります。求められた場合には、その意味をよく理解し、必要に応じて弁護士に相談してから判断することが考えられます。
前科・前歴と生活への影響
略式命令であっても、罰金や科料という刑罰が科される以上、前科として扱われます。一方、不起訴となった場合は、前科はつきません(捜査の対象となった記録=前歴が残ることはあります)。会社・学校・資格などへの影響は、事件の内容や適用される法令により大きく異なり、一律には言えません。心配な点は、資料を確認したうえで個別に検討する必要があります。
なお、示談、被害弁償、謝罪、再発防止に向けた取組み、家族や勤務先の支援体制などは、処分の判断に関係し得る事情とされることがあります。ただし、これらを行えば必ず特定の結果になる、というものではありません。
よく問題になるケース
- 呼び出しの日時に行けない:無断欠席にせず、早めに連絡して日程を相談する。
- 何を話してよいか分からない:あいまいなことを無理に認めない。答え方に迷えば、弁護士への相談を検討する。
- 調書の内容が自分の認識と違う:訂正(増減変更)を求める。納得できなければ署名押印を慎重に判断する。
- 被害者と示談したい:直接の連絡が不適切となる場合がある。弁護士を通じて進める必要がある場合が多い。
- 否認している・記憶があいまい・共犯者がいる:対応方針の整理が特に重要になりやすい。早めの相談を検討する。
- 家族や勤務先に知られたくない:知られる可能性の有無は事案により異なる。取り得る配慮を含め、個別に確認する。
- 検察庁から呼び出された・略式手続への同意を求められた:手続の意味を理解したうえで判断する。署名前の相談を検討する。
出頭前チェックリスト
- 呼出状、電話でのやり取りのメモ、担当部署・担当者名
- 事件の日時・場所・関係者など、分かっている事実
- 自分の記憶を落ち着いて整理したメモ
- 被害者対応の状況(連絡の有無・経緯)
- 示談・謝罪・被害弁償に関する資料
- 事件の種類に応じた資料(車両・保険・診断書・領収書・通信履歴・防犯カメラ・メールなど)
- 身分証・印鑑・筆記用具など(持参物は呼び出し元に要確認)
- 証拠を削除・改変しないこと
- 不安な点は、出頭の前に弁護士へ相談すること
弁護士に相談するタイミング
弁護士に相談しても、結果が保証されるわけではありません。もっとも、資料を確認したうえで、取調べ対応、供述調書を確認する際の注意点、被害者対応や示談の進め方、処分の見通し、検察庁への出頭前の準備などを整理することができます。特に次のような段階では、早めの相談を検討する価値があります。警察・検察庁から呼び出しを受けたとき、供述調書の内容に不安があるとき、被害者対応や示談が必要なとき、否認している・記憶があいまい・共犯者がいるとき、略式手続への同意を求められたとき、会社・学校・家族への説明が問題になるときなどです。
「何をどう準備すればよいか分からない」という段階でも、事実関係と資料を一緒に整理することで、次の一歩が見えやすくなります。出頭前・署名前に、一度ご相談ください。
よくある質問(FAQ)
警察から呼び出されたら、必ず行かなければなりませんか。
逮捕・勾留されていない在宅の取調べは任意とされ、出頭を拒んだり、出頭後に退去したりできるとされています(刑事訴訟法第198条第1項ただし書)。もっとも、無断で放置することはおすすめしません。都合が悪い場合は、早めに連絡して日程を相談してください。対応は事案により異なります。
警察の呼び出しを断ると、逮捕されますか。
断ったことだけで直ちに逮捕されるとは限りません。ただし、正当な理由なく連絡もせず応じない状態が続くと、逃亡・証拠隠滅のおそれがあると評価され、身柄拘束の判断に影響する可能性があります(事案により異なります)。まずは連絡を絶やさないことが大切です。
在宅事件でも、後から逮捕されることはありますか。
可能性はありますが、必ず逮捕されるわけではありません。捜査の進み方や事案の内容により結論は変わります。逆に不起訴となることもあります。資料を確認したうえで見通しを検討する必要があります。
取調べで黙秘してもよいですか。
自己の意思に反して供述をする必要はないとされています(憲法第38条第1項、刑事訴訟法第198条第2項)。どこまで話し、どこから答えを控えるかは、事案により有利・不利が変わり得ます。判断に迷う場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
供述調書に署名押印してよいですか。
調書は閲覧・読み聞かせを受け、誤りがあれば訂正を求められます(刑事訴訟法第198条第4項)。署名押印は義務ではなく、拒むこともできます(同条第5項ただし書)。調書は後の判断や裁判で重要な資料になり得るため(同法第322条第1項)、内容に納得できないまま署名押印しないよう、慎重に判断してください。
検察庁から呼び出されたら、起訴されるということですか。
そうとは限りません。検察官は、送致された事件について起訴・不起訴を判断するために取調べを行います。呼び出されたこと自体が、起訴の決定を意味するものではありません。
神戸地検に呼び出された場合、何を準備すべきですか。
呼出しの書面で日時・場所・担当を確認し、時間に余裕をもって出頭できるよう準備します。持参物は呼び出し元に確認してください。所在地や交通案内は神戸地方検察庁の公式サイトで確認できます。不安な点は、出頭前に弁護士へ相談しておくとよいでしょう。
弁護士は、警察署や検察庁への出頭に同行できますか。
出頭前の助言や、事実関係・資料の整理は行うことができます。もっとも、取調べへの立会いや出頭への同行が可能かどうか、その範囲は、事案・日程・捜査機関の運用により異なります。ご希望がある場合は、あらかじめ弁護士に確認してください。
まとめ
- 在宅事件は身柄拘束なく捜査が進む事件だが、「軽い」「必ず不起訴」という意味ではない。
- 呼び出しを受けたら、担当・日時・場所・容疑・持参物を確認し、無断欠席にしない。
- 取調べでは、あいまいなことを無理に認めない。黙秘権があり、署名押印は義務ではない。
- 検察庁から呼び出されても、起訴が決まったわけではない。神戸地検の情報は公式サイトで確認する。
- 処分は不起訴・略式・公判に分かれ、結論は個別事情により異なる。略式でも前科はつく。
- 出頭前・署名前・略式同意前に、事実関係と資料を整理し、必要に応じて弁護士に相談する。
呼び出しへの対応や処分の見通しは、事案により大きく変わります。当事務所では、資料を確認したうえで、取調べ対応や出頭前の準備、今後の方針の整理をお手伝いします。費用や相談の流れは、あわせてご確認ください。
監修者・執筆者
神戸みらい法律会計事務所(弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所)所属弁護士 藤井 貴之(兵庫県弁護士会所属)が監修しています。刑事事件・少年事件を含む各分野に対応しています。弁護士の詳細は、弁護士紹介を見るからご確認ください。
本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案についての法的判断を保証するものではありません。具体的なご事情については、弁護士にご相談ください。
参考資料

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