刑事記録を民事賠償に使う方法|実況見分調書・供述調書の取得と限界 |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|

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刑事記録を民事賠償に使う方法|実況見分調書・供述調書の取得と限界

ご家族が交通事故で亡くなった、あるいは重い傷を負って事故当時の記憶がない——そのようなとき、事故がどう起きたのかを説明できるのは、多くの場合、加害者側だけになります。しばらくして保険会社から過失割合が提示されても、その前提となっている事故の状況が正しいのか、何を見て確かめればよいのかが分かりません。警察や検察庁が捜査していることは知っていても、そこで集められた資料を自分たちが見られるのか、いつ、どこに頼めばよいのかは、ほとんど知らされないままです。

この記事では、死亡事故・重傷事故で刑事手続に集められた資料を、保険会社との交渉や民事訴訟に使うための道筋を整理します。実況見分調書や供述調書から何が分かるのか、捜査中・不起訴後・公判中・確定後・略式手続という事件の段階ごとに請求先も取得できる範囲も条件も変わること、被害者参加と記録の取得は別の制度であること、取得した記録を使う前に確認すべき利用条件、刑事手続を待つ間の時効と示談の注意点までを扱います。結論は事案により変わりますので、資料を確認したうえで判断する必要があります。

ご自身の事件が今どの段階にあるのか、どの記録を、どこに、どのような理由で請求できるのかは、事故の内容と刑事手続の進み方によって変わります。手元の資料と事件の進行状況を確認したうえで、当面の対応方針を整理することができます。

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刑事記録は民事賠償に使えるか

この記事の結論

  • 刑事手続で集められた資料は、事故態様や過失を検討する材料になり得ます。ただし取得できる記録の種類、時期、方法、使い方の条件は、事件がどの段階にあるかによって変わります。
  • 「記録があること」「取得できること」「民事に提出できること」「内容が信用されること」「請求が認められること」は、それぞれ別の問題です。実況見分調書を手に入れれば過失割合が変わる、という関係にはありません。
  • 実況見分調書などの客観的な資料と、関係者の供述調書とでは開示の条件がまったく違います。供述調書は、民事裁判所からの文書送付嘱託を入口として、限られた要件をすべて満たす場合に開示される取扱いです。
  • 被害者参加は、記録を取得するための制度ではありません。参加しなくても民事の賠償請求はできますし、参加すれば証拠が自動的に民事訴訟へ引き継がれるわけでもありません。
  • 刑事記録を待つだけにしないでください。手元の映像の保存、刑事手続の進み方の確認、民事の期間制限の管理、示談条項の確認は並行して進める必要があります。

「記録がある」ことと「使える」ことは別です

捜査機関は、事故現場の計測、写真の撮影、車両の確認、関係者からの事情聴取などを行い、その結果を書面や写真にまとめます。これらは刑事責任を判断するために作られた資料ですが、事故の状況を後から検討するうえで有力な材料になり得ます。もっとも、資料が作られていることと、被害者側がそれを取得できることは別です。刑事訴訟法第47条は「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない」と定め、ただし書で「公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合」を例外としています。捜査中の記録が原則として非公開なのは、この規定によります。

取得できたとしても、その記録をそのまま民事に持ち込めば結論が決まるわけではありません。民事裁判所は、口頭弁論の全趣旨と証拠調べの結果をしん酌して自由な心証により事実を判断します(民事訴訟法第247条)。刑事記録は、その判断材料の一つです。

刑事記録を待つ間に進めておくこと

刑事手続の進行は被害者側で決められません。処分まで数か月かかることもあり、その間に上書きされて消える映像もあります。次の四つは記録の請求と並行して進めてください。

  • 手元にある証拠(ドライブレコーダー、防犯カメラ、写真、破損した衣類や所持品、事故直後のやり取り)の保存
  • 担当の警察署・送致先・担当検察官・事件の進み方の確認(被害者等通知制度の申出を含みます)
  • 民事の期間制限の管理(後述します。刑事手続が続いていても進行します)
  • 保険会社から示された過失割合・示談条項の内容確認

実況見分調書・供述調書で分かること

ひとくちに「刑事記録」といっても、資料の種類ごとに分かることと分からないことがあります。すべての事件にすべての資料が存在するわけではなく、存在しても開示されるとは限りません。

資料の種類と、そこから検討できること・限界
資料 分かること 民事で検討する争点 限界・補う資料
交通事故証明書 事故の発生日時、場所、当事者、車両などの基本情報 当事者の特定、事故の発生自体、保険への請求手続の前提 詳細な事故態様や過失割合を認定する書面ではありません。警察へ届出のない事故は交付されません
実況見分調書・現場見取図・写真 道路の形状、幅員、見通し、標識、信号、停止位置、擦過痕やブレーキ痕などの計測・観察結果 衝突地点、進路、視認できた時点、回避の可能性 当事者が立ち会って「ここで気づいた」と示した位置などは指示説明であり、計測された客観的事実とは性質が異なります
被疑者・被害者・目撃者の供述調書 供述者が述べた事故時の認識、速度感、行動 信号の色、速度、前方不注視、直前の行動 供述調書であることだけで内容が真実になるわけではありません。作成日、供述の変遷、他の証拠との整合を確認します
ドライブレコーダー・防犯カメラ映像 衝突前後の状況、位置関係、速度の推定材料 事故態様全般、供述との一致・不一致 存在・収集の有無、原本性、時刻のずれ、撮影範囲、解析の前提を確認します。上書きされて残っていないこともあります
車両関係資料・鑑定書 損傷の部位と程度、速度や衝突状況の分析 衝突の角度、速度、衝撃の方向 鑑定は前提となる数値の置き方で結論が変わります。前提条件の確認が必要です
診断書・検案や解剖に関する資料 受傷内容、死因、事故と結果との結び付き 因果関係、素因や既往症の主張への反論 すべてが刑事記録から取得できるわけではありません。診療録などは医療機関から別に取り寄せます
起訴状・判決書・略式命令・公判調書 起訴された事実、裁判所の判断、法廷での供述内容 刑事で認定された事実の範囲、被告人の法廷での説明 起訴状は検察官が訴追した内容であって、それ自体は裁判所の事実認定ではありません

交通事故証明書は事故態様の証明書ではありません

交通事故証明書は自動車安全運転センターが交付する書面です。同センターの業務を定める自動車安全運転センター法第29条第1項第5号は、この書面を「交通事故に関し、その発生した日時、場所その他内閣府令で定める事項を記載した書面」と定めています。当事者や損害賠償請求権のある親族などが申請できますが、警察に届出のない事故については交付されず、人身事故は事故発生から5年、物件事故は3年を経過したものは原則として交付できないとされています。つまり「その事故があったこと」を公的に確認する書面であり、どちらにどれだけの落ち度があったかを示すものではありません。

実況見分調書は「計測された事実」と「指示説明」を分けて読みます

実況見分調書には、道路の幅や見通し距離、停止位置、痕跡の位置といった計測結果が記載されます。これらは捜査官が現場で確認した内容です。一方、事故当事者が立会人として「この地点で相手に気づいた」「ここでブレーキを踏んだ」と示した部分は、その人の説明を図面や文章に写したものにすぎません。同じ調書の中でも、証拠としての意味が異なります。供述調書についても同じで、供述者が署名しているからといって内容が客観的に正しいことにはなりません。誰が、いつ、どの立場で述べたのか、供述が変わっていないか、映像や計測結果と食い違っていないかを確認していきます。

実況見分調書に過失割合が書かれているわけではありません。警察や検察庁が民事の過失割合を決めることもありません。過失割合は、事故態様を前提に、民事上の過失相殺(民法第722条第2項)の問題として、示談交渉や訴訟で判断されるものです。過失割合の考え方については横断歩道の事故の過失割合と確認すべき資料の解説もご参照ください。

刑事記録はいつ・どこに請求するのか

ここが最も誤解の多いところです。捜査中の記録、裁判所にある公判記録、確定後に検察庁が保管する記録は、それぞれ別の制度・別の窓口・別の条件で扱われます。「被害者だから全部見られる」わけでも、「不起訴だから一切見られない」わけでもありません。

事件の段階別にみた記録の所在と取得の入口
事件の段階 最初の確認・相談先 対象となり得る資料 取得の条件・制約 次の行動
捜査中・起訴前 担当の警察署、送致後は担当検察官・被害者支援員・被害者ホットライン 原則として記録の開示はありません 刑事訴訟法第47条により、訴訟に関する書類は公判の開廷前は公にしてはならないとされています 被害者等通知制度の申出、手元の証拠の保存、映像の所在確認
不起訴処分の後 事件を処理した検察庁(記録担当・被害者支援員) 実況見分調書、写真撮影報告書などの客観的証拠。供述調書は別扱い 法務省が示す運用方針により、事件の区分と請求の目的で範囲が変わります。関係者の名誉・プライバシーへの配慮からマスキングされることがあります 閲覧の可否・範囲・写しの可否を担当検察庁に確認
起訴後・公判係属中 事件が係属している裁判所 裁判所が保管する当該被告事件の訴訟記録 犯罪被害者等保護法第3条により、第一回公判期日後から事件終結までの間に申出。検察官・被告人側の意見を聴いたうえで判断されます 公判期日を確認し、閲覧・謄写の申出時期を検討
裁判が確定した後 第一審の裁判をした裁判所に対応する検察庁の保管検察官 保管記録(裁判書とそれ以外の記録) 刑事確定訴訟記録法に基づく閲覧の制度です。同法第4条第2項各号の除外事由があります 保管記録閲覧請求書の提出、写しの可否と保管期間の確認
略式命令で終わった場合 略式命令をした簡易裁判所に対応する検察庁 捜査記録が中心。公開の公判が開かれないため証人尋問の調書などは通常ありません 確定後は上記と同じ刑事確定訴訟記録法の枠組みになります。裁判書以外の記録は保管期間が短めです 確定時期と保管期間を早めに確認

捜査中・起訴前は、原則として記録を取得できません

捜査中の記録が非公開とされているのは、開示により捜査に支障が生じたり関係者のプライバシーが害されたりするおそれがあるためです。被害者やご遺族であっても、この段階で捜査記録をすべて取得できるわけではありません。

この段階でできるのは、事件の進み方を把握することです。検察庁には、被害者や親族などに対し、事件の処理結果、公判期日と係属裁判所、刑事裁判の結果、不起訴裁定の主文と理由の骨子、身柄の状況などを通知する被害者等通知制度があります。通知を受けるには申出が必要ですので、担当の検察官・検察事務官または被害者支援員にお伝えください。各地方検察庁には被害者ホットラインという専用電話も置かれています。

神戸地方検察庁の場合、被害者ホットラインは電話078-367-6135(ファクシミリも同番号)、刑事事件関係記録の閲覧窓口は記録担当・電話078-367-6134です。受付時間は平日午前8時30分から午後5時15分までとされています(一部の窓口を除きます)。伊丹支部、尼崎支部、明石支部、柏原支部、姫路支部、社支部、龍野支部にはそれぞれ別の連絡先があります。事件がどの検察庁で処理されたかによって窓口が変わりますので、連絡前に神戸地方検察庁の各種窓口のご案内でご確認ください。

不起訴になった場合

不起訴処分となった事件の記録も原則として非公開です。ただし法務省は不起訴記録の開示に関する運用方針を公表しており、一定の範囲で閲覧を認める取扱いがとられています。重要なのは、実況見分調書などの客観的証拠と、関係者の供述調書とで扱いがまったく異なるという点です。

実況見分調書などの客観的証拠

被害者参加制度の対象となる事件については、被害者等が「事件の内容を知ること」などを目的とする場合であっても、実況見分調書や写真撮影報告書等の客観的証拠について、原則として、代替性の有無にかかわらず、相当でないと認められる場合を除き閲覧を認めるとされています。死亡事故・重傷事故で問題となる過失運転致死傷や危険運転致死傷は、被害者参加の対象事件に含まれます(刑事訴訟法第316条の33第1項)。

対象とならない事件については、民事訴訟等で被害回復のための損害賠償請求権その他の権利を行使する目的である場合に、代替性に乏しくその証拠なくしては立証が困難と認められる客観的証拠が対象とされ、代替性がないとまではいえないものも、必要性が認められ弊害が少ないときは認めるとされています。いずれの場合も、関係者の名誉・プライバシーにかかわる部分などは、閲覧を認めない扱いやマスキングの対象になります。

公表されている方針の文言は、被害者参加の対象事件の項が「閲覧」、対象外の事件の項が「閲覧・謄写」と書き分けられています。「謄写」とは記録の写しを取ることです。写しの交付まで受けられるかは、事件の区分、請求の目的、記録の内容によって扱いが分かれ得るため、請求前に担当の検察庁へ確認してください。「不起訴なら一切取得できない」も「弁護士なら全部取得できる」も正確ではありません。

供述調書は入口が違います

関係者の供述調書は、被害者側が検察庁の窓口で直接請求して当然に取得できるものとしては案内されていません。公表されている方針では、民事裁判所から不起訴記録中の特定の者の供述調書について文書送付嘱託がなされた場合に、次の要件をすべて満たすときに開示するとされています。

  • その供述調書の内容が、当該民事訴訟の結論を直接左右する重要な争点に関するものであり、かつ、その争点に関するほぼ唯一の証拠であるなど、その証明に欠くことができない場合であること
  • 供述者が死亡、所在不明、心身の故障もしくは深刻な記憶喪失等により民事訴訟でその供述を顕出できない場合、または供述調書の内容が民事裁判所における証言内容と実質的に相反する場合であること
  • 開示によって、捜査・公判への具体的な支障または関係者の生命・身体の安全を侵害するおそれがなく、かつ、関係者の名誉・プライバシーを侵害するおそれがあるとは認められない場合であること

つまり供述調書を求めるには、原則として民事訴訟が係属していることと、その供述調書でなければ立証できないという事情の説明が必要です。実況見分調書の閲覧とはまったく別の話になります。なお、目撃者の氏名と連絡先についても、民事裁判所から調査の嘱託がなされた場合に、同様の厳しい要件をすべて満たすときに回答するという取扱いが示されています。

弁護士会照会という経路

弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所等に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができます(弁護士法第23条の2)。法務省は、検察庁が「従来から交通事故に関する実況見分調書等の証拠について、その事件に関連する民事訴訟の係属している裁判所からの送付嘱託や弁護士会からの照会に応じてきました」と説明しています。ただし弁護士会は申出が適当でないと認めるときは拒絶できますし、照会を受けた側に必ず報告義務があるという制度でもありません。必ず開示される手段ではない点に注意してください。

起訴されて公判が続いている間

起訴されると事件は裁判所で審理されます。この段階では、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(犯罪被害者等保護法)第3条により、裁判所が保管する当該被告事件の訴訟記録の閲覧・謄写を求めることができます。

  • 時期:第一回の公判期日後、事件の終結までの間です。起訴された直後の段階では、この規定による申出はできません
  • 申出できる人:被害者等、当該被害者の法定代理人、またはこれらの者から委託を受けた弁護士
  • 申出先:事件が係属している裁判所
  • 判断:裁判所が検察官および被告人または弁護人の意見を聴いたうえで、閲覧・謄写を求める理由が正当でないと認める場合と、犯罪の性質・審理の状況その他の事情から相当でないと認める場合を除いて、閲覧・謄写をさせるものとされています
  • 条件:裁判所は、謄写をさせる場合に、謄写した訴訟記録の使用目的を制限するなど適当と認める条件を付すことができます

「検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き」とは、裁判所が判断の前に双方の言い分を確認するという意味であり、相手方の同意が必要という意味ではありません。相手方が反対しても、裁判所が相当と認めれば閲覧・謄写は認められます。

「被害者等」の範囲は相続人の範囲と同じではありません

この法律でいう「被害者等」とは、被害者、または被害者が死亡した場合もしくはその心身に重大な故障がある場合における配偶者、直系の親族、兄弟姉妹をいいます。相続人の範囲を定める民法の規定とは基準が異なるため、ご家族であるというだけで当然に本人の権利を行使できるとは限りません。誰の名前で申し出るのか、委任状が必要かは事案ごとに確認してください。

裁判所にある記録がすべてではありません

刑事裁判で取り調べられる証拠は、原則として当事者が請求したものです(刑事訴訟法第298条第1項)。捜査機関が集めた資料のうち検察官が請求しなかったものは裁判所に提出されず、公判記録にも含まれません。公判記録の閲覧・謄写で得られる範囲と、捜査で作成された資料の全体とは一致しません。

裁判が確定した後

刑事裁判が確定すると、記録は検察庁が保管します。保管するのは、当該被告事件について第一審の裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官で、これを保管検察官といいます(刑事確定訴訟記録法第2条第1項)。神戸地方裁判所で第一審が行われた事件であれば神戸地方検察庁が、支部で行われた事件であればその支部に対応する検察庁が窓口になります。

同法第4条第1項は、請求があったときは保管記録を閲覧させなければならないと定めています。もっとも同条第2項は、次の場合には閲覧させないものとしています。ただし、訴訟関係人または閲覧につき正当な理由があると認められる者から請求があった場合はこの限りでないとされています。

  • 弁論の公開を禁止した事件のものであるとき
  • 被告事件が終結した後三年を経過したとき(終局裁判の裁判書を除きます)
  • 閲覧させることが公の秩序または善良の風俗を害することとなるおそれがあると認められるとき
  • 犯人の改善および更生を著しく妨げることとなるおそれがあると認められるとき
  • 関係人の名誉または生活の平穏を著しく害することとなるおそれがあると認められるとき
  • 裁判員等の個人を特定させることとなるおそれがあると認められるとき

この「終結後三年」は、記録が廃棄されるまでの保存期間でも、被害者側の請求期限でも、民事の消滅時効でもありません。一般の閲覧に対する制限であり、正当な理由が認められる場合の例外が定められています。三つを混同しないでください。

写しの交付は制度上の当然の権利ではありません

刑事確定訴訟記録法が定めているのは「閲覧」です。同法にも施行規則にも謄写に関する規定はなく、施行規則が定める様式も「保管記録閲覧請求書」です。閲覧が認められることと写しの交付を受けられることは別ですので、写しが必要な場合はその可否を保管検察官に確認してください。

手続としては、保管記録閲覧請求書を保管検察官に提出します。保管検察官は、訴訟関係人であることまたは閲覧につき正当な理由があることを明らかにする資料の提出を求めることができ、閲覧させないときはその旨と理由を書面で通知するものとされています。閲覧の日時・場所は指定され、手数料は実費を勘案して政令で定める額を納付します。閲覧に関する処分に不服があるときは、保管検察官が所属する検察庁に対応する裁判所に、処分の取消しまたは変更を請求することができます(同法第8条)。

記録には保管期間があります

保管記録には区分ごとの保管期間が法律の別表で定められています。裁判書以外の保管記録でいえば、五年未満の拘禁刑に処する裁判により終結した事件は五年、罰金・拘留・科料に処する裁判により終結した事件は三年です(施行規則で別に定めるものを除きます)。裁判書は有期拘禁刑に処する確定裁判で五十年、罰金等の確定裁判で二十年です。時間が経つほど選択肢は狭くなります。

略式命令で終わった場合

略式手続とは、簡易裁判所が、検察官の請求により、公判を開かずに書面審理で100万円以下の罰金または科料を科す手続です(刑事訴訟法第461条)。略式命令は、正式裁判の請求期間(告知を受けた日から14日)の経過または請求の取下げにより、確定判決と同一の効力を生じます(同法第470条)。

公開の法廷で証人尋問が行われないため、公判調書や証人尋問調書は通常残りません。他方で、捜査で作成された実況見分調書などが記録として残っている場合はあります。「罰金で終わったから記録はない」というのは正確ではありません。他方、略式命令に記載されるのは、罪となるべき事実、適用した法令、科すべき刑と附随の処分、正式裁判の請求ができる旨です(同法第464条)。事故態様の詳細な認定が書かれているわけではなく、「略式命令を見れば過失の判断がすべて分かる」ということにもなりません。

略式命令で罰金となった事件は、裁判書以外の保管記録の保管期間が短くなります。刑事手続が終わったことを知ったら、確定の時期と保管期間、閲覧の可否を早めに確認しておくことをおすすめします。

加害者が少年の場合

加害者が少年である場合は家庭裁判所の少年保護事件として扱われ、成人の刑事事件とは別の制度になります。被害者等または委託を受けた弁護士は、少年法第5条の2により家庭裁判所に記録の閲覧・謄写を申し出ることができますが、対象から除かれる記録があり、申出は保護事件を終局させる決定が確定した後三年を経過するとできません。成人の事件と同じ窓口・同じ方法を前提にしないでください。

どの段階でどの記録を請求できるかは、起訴・不起訴の別、罪名、第一審の裁判所、確定の時期によって変わります。処分通知や公判期日の連絡、これまでに受け取った書面をご用意いただければ、請求先と請求できる範囲、優先して進めるべき手続を整理することができます。

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被害者参加でできることと記録取得との違い

被害者参加制度は、一定の事件の被害者やご遺族等が刑事裁判に参加できる制度です。記録の取得とは目的も根拠も異なりますので、混同しないよう整理します。

対象となる事件と申出の方法

対象は、刑事訴訟法第316条の33第1項が定める罪に係る被告事件です。故意の犯罪行為により人を死傷させた罪(危険運転致死傷はここに含まれると説明されています)のほか、刑法第211条(業務上過失致死傷等)、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第4条・第5条・第6条第3項および第4項の罪などが挙げられています。過失運転致死傷は同項第4号に含まれます。

申出は、あらかじめ検察官に行います。検察官が意見を付して裁判所に通知し、裁判所が被告人または弁護人の意見を聴き、犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮して相当と認めるときに、決定で参加を許します。希望すれば必ず参加できるわけではなく、参加が許可された後も、個々の手続について許可されない場合があります。

なお、この記事が死亡事故・重傷事故を対象としていることと、法律上の参加対象が死亡・重傷の事件に限られていることとは別です。対象かどうかは、実際の起訴罪名と適用条文に照らして確認してください。

参加してできることと、その限界

被害者参加人ができることと根拠条文
できること 根拠 確認しておきたい制約
公判期日に出席する 刑事訴訟法第316条の34 人数が多い場合に代表者の選定を求められることや、審理の状況により出席が許されないことがあります
検察官の権限行使に関して意見を述べる 同法第316条の35 検察官は必要に応じて理由を説明しますが、意見に拘束されるわけではありません
証人を尋問する 同法第316条の36 情状に関する事項(犯罪事実に関するものを除く)についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項に限られます。事故態様そのものを自由に尋問できる制度ではありません
被告人に質問する 同法第316条の37 意見の陳述をするために必要と認められる場合であることが要件です。証人尋問とは要件が異なります
事実または法律の適用について意見を述べる 同法第316条の38 訴因として特定された事実の範囲内に限られます。この陳述は証拠とはならないものとされています

参加にあたっては弁護士に委託することができ、資力が200万円に満たない場合には国選の被害者参加弁護士の選定を求める制度があります(日本司法支援センターに申し出ます)。公判期日等に出席した場合には旅費・日当等が支給される制度もあります。

被害者参加は記録取得の制度ではありません

被害者参加、心情等の意見陳述、公判記録の閲覧・謄写、被害者等通知制度は、いずれも別の制度です。それぞれ目的も、申出先も、要件も違います。

混同しやすい四つの制度の整理
制度 目的 申出先 記録との関係
被害者参加 刑事裁判の手続に参加する あらかじめ検察官(許可は裁判所) 参加それ自体は記録を取得する制度ではありません
心情等の意見陳述 被害に関する心情その他の意見を法廷で述べる あらかじめ検察官 この陳述は犯罪事実の認定のための証拠とすることができません(刑事訴訟法第292条の2第9項)
公判記録の閲覧・謄写 裁判所が保管する訴訟記録を見る・写しを取る 係属している裁判所 第一回公判期日後から事件終結までの間の制度です
被害者等通知制度 処分結果・公判期日・裁判結果等の通知を受ける 検察官・検察事務官・被害者支援員 記録そのものの交付ではなく、情報の通知です

したがって、参加しなければ記録を使えないということはありませんし、参加すれば刑事の証拠が自動的に民事訴訟へ引き継がれるわけでもありません。参加しなかったことを理由に民事の賠償請求ができなくなることもありません。参加には期日への出席という負担が伴いますので、ご本人やご遺族の意向、刑事手続の支援と民事の代理とで委任の範囲や費用がどうなるかを分けて確認しておくことをおすすめします。

取得した記録を保険交渉・民事訴訟に使う手順

取得経路ごとに、使ってよい範囲が違います

記録は、手に入れた経路によって、認められている使い方が異なります。保険会社への写しの提供、民事裁判所への提出、ご家族以外の第三者への提供、SNSでの公開を、同じものとして扱わないでください。

取得経路と、使う前に確認すること
取得経路 利用に関する定め 民事で使う前に確認すること
公判記録の閲覧・謄写(犯罪被害者等保護法第3条) 裁判所は謄写した訴訟記録の使用目的を制限し、その他適当と認める条件を付すことができます。閲覧・謄写により知り得た事項を用いるにあたり、不当に関係人の名誉・生活の平穏を害し、または捜査・公判に支障を生じさせないよう注意する義務があります 付された条件の有無と内容、提出先・提供範囲、マスキングの要否
不起訴記録の閲覧(検察庁の運用) 請求の目的が前提になっています。関係者の名誉・プライバシーへの配慮からマスキングされる場合があります 申請時に述べた目的との整合、写しの可否、提供先の範囲
確定記録の閲覧(刑事確定訴訟記録法) 閲覧により知り得た事項をみだりに用いて、公の秩序・善良の風俗を害し、犯人の改善更生を妨げ、または関係人の名誉・生活の平穏を害する行為をしてはならないとされています(同法第6条) 閲覧時の説明内容、写しの可否、第三者提供の要否
民事裁判所からの文書送付嘱託・調査嘱託 民事訴訟の証拠として扱われます 書証としての提出方法、証拠説明書での立証事項の特定

刑事訴訟法第281条の4が定める目的外使用の禁止は、被告人・弁護人およびこれらであった者を対象とする規定です。被害者側が取得した記録にそのまま適用されるものではありません。もっとも、被害者側が取得したというだけで利用に制限がなくなるわけでもありません。許可された被害回復のための利用と、必要のない第三者への公開とは区別が必要です。利用目的、提供先、提供範囲、マスキング、保管方法を整理したうえで、条件が付されている場合は再確認が必要かどうかを検討してください。すべての場合に再許可が必要とも、常に不要とも言えません。

また、閲覧・謄写して得た記録を、外部に送信される形の生成人工知能(AI)サービスへそのまま入力することは、関係者の情報を意図せず外部に出すことになりかねません。安易な利用は避けてください。

争点を特定してから、記録と突き合わせます

記録を丸ごと保険会社に送っても、交渉は進みません。次の手順で、争点と証拠を対応させていきます。

  1. 争点を特定します。信号、速度、進路、衝突地点、見通し、回避可能性のうち、その事件で実際に争いになっている点を絞り込みます。
  2. 取得資料の一覧を作ります。文書名、作成日、作成者、ページ、図面や写真の番号、取得経路、付された利用条件を記録しておきます。
  3. 主張と証拠の対応表を作ります。客観的な計測と供述、当初の供述と後の供述、映像との一致・不一致を並べて確認します。
  4. 不利な記載も含めて検討します。こちらに不利な記載があるときは、追加資料、照会、必要に応じた専門的な解析の要否を検討します。
  5. 根拠を特定して説明します。保険会社には、どの資料のどの部分を根拠にどう考えるのかを示します。訴訟では、書証と証拠説明書で立証事項を明確にします。
争点と記録の対応(整理の例)
争点 確認する記録 照合する独立の資料 注意点
信号の表示 実況見分調書、各人の供述調書 映像、信号のサイクル資料 供述が分かれている場合、供述だけでは決まりません
速度 供述調書、車両の損傷状況、鑑定書 映像、痕跡の計測結果 「体感」の速度と計測・解析による速度は別です
衝突地点 現場見取図、写真、実況見分調書 路面の痕跡、破片の位置、映像 指示説明に基づく位置か、計測結果かを区別します
回避の可能性 見通し距離の計測、供述調書 現場の写真、映像、道路構造の資料 前提となる速度・視認位置が変われば結論も変わります

この表は整理の枠組みを示したものであり、当事務所の受任例や結果を示すものではありません。矛盾が一つ見つかったからといって、その人の供述全体が虚偽になるわけでもありません。矛盾の意味は、その点が結論にどう影響するかによって変わります。

刑事の判断と民事の責任は、目的も要件も違います

刑事責任、民事の損害賠償責任、行政処分は、それぞれ目的と要件が異なります。

  • 不起訴になった、あるいは無罪になったというだけで、民事の損害賠償請求ができなくなるわけではありません。自動車の人身事故については、運行供用者の責任を定める自動車損害賠償保障法第3条があり、同条ただし書の三つの事情を運行供用者側が証明しない限り責任を免れないという構造になっています。
  • 有罪になった、罰金が科されたというだけで、民事の過失割合や賠償額が自動的に決まるわけでもありません。過失割合は、事故態様を前提とする過失相殺(民法第722条第2項)の問題です。
  • 刑事判決で認定された事実は、民事でも重要な資料になり得ますが、民事裁判所は提出された証拠全体から判断します(民事訴訟法第247条)。
  • 刑事訴訟で証拠として採用されなかった資料が、民事でも一切使えないということはありません。刑事の伝聞法則と、民事における書証の提出・信用性の判断は別の枠組みです。

被害者本人が亡くなっている、意識障害がある、事故前後の記憶がないという場合、こちら側から事故状況を語ることができません。しかし、本人の説明がないからといって不利な結論が決まるわけではなく、客観的な資料の積み重ねで検討することになります。また、損害額は刑事記録だけでは立証できません。診療記録、収入資料、介護に関する資料などを別に整える必要があります。重い後遺障害が残った場合の損害項目については、脊髄損傷の後遺障害と介護を要する等級の解説高次脳機能障害の逸失利益の解説もあわせてご覧ください。

記録が取得できないときに検討する方法

請求しても認められなかった場合、次の対応を順に検討します。

  • 対象を絞り込む(記録全部ではなく、実況見分調書と現場見取図に限定するなど)
  • 利用目的と必要性を具体化する(どの争点の立証に、なぜその資料が必要かを説明する)
  • 担当の窓口に、認められなかった理由と、認められ得る範囲を確認する
  • 時期を改めて申し出る(捜査中と処分後、公判前と公判後では判断が変わり得ます)
  • 別の適法な取得方法を検討する
  • 刑事記録に頼らない証拠を独自に集める

民事の証拠収集手続は、それぞれ性質が異なります

民事の証拠収集手続と、その限界
手続 根拠・使う場面 限界
弁護士会照会 弁護士法第23条の2。受任している事件について、公務所等に必要な事項の報告を求める 弁護士会が申出を適当でないと認めれば拒絶されます。照会先が必ず回答するとも限りません
調査の嘱託 民事訴訟法第186条。官庁・公署等に必要な調査を嘱託する 裁判所が必要と認めることが前提です。回答内容は嘱託先の判断によります
文書送付の嘱託 民事訴訟法第226条。文書の所持者に文書の送付を嘱託するよう申し立てる 強制的な開示命令ではありません。不起訴記録中の供述調書については、前述の厳格な要件が示されています
文書提出命令 民事訴訟法第220条 同条第4号ホは「刑事事件に係る訴訟に関する書類若しくは少年の保護事件の記録又はこれらの事件において押収されている文書」を一般的な提出義務から除いています。もっとも、同条第1号から第3号までに基づく提出義務の検討は別の問題です
証拠保全 民事訴訟法第234条。あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があるとき その事情の疎明が必要です。相手方に対して用いる手続であり、捜査記録の取り寄せの代わりにはなりません

「民事裁判所に申し立てれば捜査資料を必ず全部取り寄せられる」という説明は正確ではありません。他方で、刑事記録だからおよそ文書提出命令の対象にならないと決めつけることもできません。どの手続を選ぶかは、必要な資料の種類、所持者、争点との関係によって変わります。

映像は、上書きされる前に動きます

ドライブレコーダーや防犯カメラの映像は、機器や設定によって保存の仕組みが違い、一定期間で上書きされることがあります。保存日数を一律に決めつけることはできませんので、心当たりのある店舗、施設、道路管理者、目撃者に、早い段階で保存の協力をお願いすることが大切です。

  • 所有者・管理者に、適法な方法で保存を依頼する(無断で取得しない)
  • 入手した日時、入手先、担当者、受け渡しの方法を記録に残す
  • 原データはそのまま保管し、確認や編集は作業用のコピーで行う
  • 都合の悪い部分の削除、改変、関係者間での供述の合わせ込みはしない

死亡事故の記録には、ご遺族にとってつらい資料が含まれることがあります

死亡事故の記録には、事故現場やご遺体の写真、検案に関する資料が含まれていることがあります。ご遺族が記録のすべてをご自身で確認しなければならない、というものではありません。どの資料を、どこまでご覧になるかは、ご遺族のお気持ちを確認したうえで決めることができ、弁護士が先に内容を確認して必要な範囲を整理してご説明する、という進め方も可能です。

刑事手続を待つ間の時効と示談の注意点

刑事手続が終わるまで待つ必要はありません

刑事事件の終結や確定を待たなければ民事の交渉や提訴ができない、ということはありません。むしろ、刑事手続の進行、記録の請求、被害者参加の申出をしただけでは、民事の消滅時効は止まりません

民事の期間制限

不法行為による損害賠償請求権は、被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時から三年、不法行為の時から二十年で時効消滅します(民法第724条)。ただし、人の生命または身体を害する不法行為による損害賠償請求権については、第724条第1号の「三年間」が「五年間」と読み替えられます(同法第724条の2)。

この五年の特則は、平成29年の民法改正で設けられ、令和2年(2020年)4月1日から施行されています。法務省の説明によれば、施行日の時点で改正前の民法による消滅時効が完成していない場合には改正後の規定が適用されます。具体的には、2017年4月1日以降に「損害及び加害者を知った」場合には、施行日の時点で改正前の三年が経過していないため、五年が適用されることになります。

期間の管理では、次の点を混同しないでください。

  • 対象となる請求が、人の生命・身体を害する不法行為によるものか(物損は別の期間です)
  • 起算点が「損害及び加害者を知った時」であり、事故日と一致するとは限らないこと
  • 自賠責保険への被害者請求(自動車損害賠償保障法第16条第1項)の期間は、同法第19条により、被害者またはその法定代理人が損害および保有者を知った時から三年とされており、加害者本人に対する請求とは別に管理が必要であること
  • 完成猶予・更新の事由に当たる出来事があったかどうか

「事故から一律に五年」「刑事裁判の確定から五年」という理解は正しくありません。個別の事情によって結論が変わりますので、資料を確認したうえで判断する必要があります。

示談の前に確認すること

示談書に署名すると、原則としてやり直しがききません。刑事記録の取得を待っている途中で示談を求められた場合は、次の点を確認してください。

  • 取得済みの記録と、まだ取得していない記録は何か。取得の見込みと時期はどうか
  • 提示された過失割合が、どの事故態様を前提にしているか。その前提に裏付けとなる資料があるか
  • 損害項目ごとの資料(診療記録、収入資料、介護に関する資料、葬儀関係の資料など)がそろっているか
  • 清算条項の書き方はどうなっているか。どの範囲の請求権が清算の対象とされているか
  • 将来の損害や未確定の項目について、請求権を留保する定めがあるか
  • 既払金(治療費、内払い、自賠責保険金、労災給付など)がどのように控除されているか

示談の後に新しい記録が見つかったとしても、当然にやり直せるわけではありません。追加請求ができるかどうかは、合意の内容、清算条項の範囲、対象とされた損害の種類などによって検討が必要です。この点は示談後に後遺症が悪化・判明した場合の追加請求の解説、示談案の確認項目は交通事故の示談案で確認すべき項目の解説もご参照ください。当面の費用が必要な場合の対応については、内払いと自賠責の仮渡金請求の解説があります。

損害賠償命令・刑事和解との区別

刑事裁判で刑が言い渡されることと、賠償金が支払われることは別です。刑事手続に付随する賠償の仕組みとして、次の二つがありますが、対象も効果も異なります。

刑事和解と損害賠償命令の違い
項目 刑事和解 損害賠償命令
根拠 犯罪被害者等保護法第19条 同法第24条以下
前提 被告人と被害者等の間で民事上の争いについて合意が成立していること 合意は不要。裁判所が審理して決定します
対象事件 刑事被告事件一般(合意が成立していること) 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪またはその未遂罪など、法律が列挙する罪に限られます
手続 弁論の終結までに、被告人と共同して公判調書への記載を求める申立てをします 地方裁判所に係属する被告事件について、弁論の終結までに申立てをします
効果 公判調書への記載は、裁判上の和解と同一の効力を有します 有罪の言渡し後に刑事の訴訟記録が取り調べられ、特別の事情がある場合を除き四回以内の審理期日で審理を終結します

損害賠償命令の対象は、犯罪被害者等保護法第24条第1項が列挙する罪に限られています。過失運転致死傷や業務上過失致死傷は、この列挙に含まれていません。被害者参加の対象事件(刑事訴訟法第316条の33第1項)にはこれらが含まれていますので、「被害者参加ができる事件=損害賠償命令が使える事件」ではありません。他方、危険運転致死傷は故意の犯罪行為により人を死傷させた罪として扱われると説明されており、この場合は対象になり得ます。実際に利用できるかは、起訴された罪名と適用条文に照らして確認する必要があります。

損害賠償命令の決定に対して当事者から異議の申立てがあったときは、通常の民事訴訟の手続に移り、審理に必要な刑事の訴訟記録が民事の裁判所に送付されます。この場合、送付された記録についての書証の申出は、書証とすべきものを特定することによりすることができるとされています(犯罪被害者等保護法第41条)。

相談前・示談前に確認する資料

次の資料がお手元にあれば、現時点で確認できる点と、これから確保すべき記録を整理しやすくなります。すべてがそろってから相談していただく必要はありません。分かる範囲でお持ちいただければ十分です。

  • 事故の日時と場所、当事者の氏名が分かるもの
  • 交通事故証明書
  • 担当した警察署の名称、送致先の検察庁、担当検察官の氏名が分かるもの
  • 分かる範囲での事件番号、処分結果の通知、公判期日の連絡
  • すでに取得した記録(実況見分調書の写し、判決書、略式命令など)と、その取得経路が分かるもの
  • 保険会社からの提示書(過失割合、損害額の内訳、示談案)
  • ドライブレコーダー、防犯カメラ、現場や車両の写真
  • 診断書、後遺障害診断書、死亡診断書または死体検案書
  • 示談書の案、署名を求められている書面
  • ご相談される方と被害者との関係が分かるもの(戸籍関係の書類、委任状など)

弁護士に相談するタイミング

次のような場面では、早めに資料を確認しておくことで、対応の方針を整理しやすくなります。

  • 事故の状況について、相手方の説明とご家族の認識が食い違っている
  • 保険会社から過失割合を提示されたが、何を根拠に反論すればよいか分からない
  • 事件がどの段階にあり、記録がどこにあるのかが分からない。被害者参加をするか判断したい
  • 示談を打診されているが、記録を確認しないまま署名してよいか迷っている
  • 刑事手続が終わってから時間が経っており、記録が残っているか心配である

弁護士に依頼したからといって、記録が必ず取得できるわけでも、過失割合が変わるわけでもありません。できるのは、その事件でどの記録を、どの制度により、どこに、どのような理由で請求できるのかを整理し、取得できた資料を争点と対応させて主張を組み立てること、そして期間制限と示談条項を管理することです。刑事の支援と民事の代理では委任の範囲が異なりますので、費用も含めて事前にご確認ください(弁護士費用と費用倒れの見極め方の解説)。

交通事故証明書、処分結果の通知、保険会社からの提示書、示談書の案などをご用意いただければ、事件がどの段階にあり、どの記録をどこに請求できるのか、示談の前に確認すべき点は何かを整理することができます。当事務所では、交通事故に関する初回のご相談を無料でお受けしています(事前予約制)。無料相談の対象・条件は「初めての方へ」でご確認いただけます。

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よくあるご質問

本人や遺族だけで刑事記録を取り寄せられますか。

段階によります。公判係属中の訴訟記録は、被害者等またはその法定代理人が裁判所に申し出ることができ、委託を受けた弁護士も申出できます。不起訴記録や確定記録も、被害者等ご本人からの請求が想定されています。ただし、犯罪被害者等保護法上の「被害者等」の範囲は相続人の範囲とは異なり、ご家族であるというだけで当然に申出できるとは限りません。誰の名前で請求するか、どの資料の提出を求められるかは、事案により異なります。

不起訴になった事故でも記録を取得し、賠償請求できますか。

不起訴になったからといって、民事の損害賠償請求ができなくなるわけではありません。記録についても、被害者参加の対象事件であれば、実況見分調書や写真撮影報告書等の客観的証拠について原則として閲覧を認めるという運用方針が公表されています。ただし、関係者の名誉・プライバシー等への配慮から、閲覧が認められない部分やマスキングされる部分があります。取得できる範囲は事案により異なります。

実況見分調書や供述調書は必ず開示されますか。

必ず開示されるわけではありませんし、両者は扱いが異なります。実況見分調書などの客観的証拠は、事件の区分と目的に応じて閲覧が認められる運用があります。これに対し供述調書は、公表されている方針では、民事裁判所からの文書送付嘱託があった場合に、その争点に関するほぼ唯一の証拠であることなど複数の要件をすべて満たすときに開示するとされています。同じ条件で取得できるものとして考えないでください。

被害者参加をしなければ民事で記録を使えませんか。

そのようなことはありません。被害者参加は刑事裁判の手続に参加する制度であり、記録を取得する制度ではありません。公判記録の閲覧・謄写は犯罪被害者等保護法第3条による別の制度で、参加していなくても申し出ることができます。参加しなかったことを理由に民事の賠償請求ができなくなることもありません。ただし、不起訴記録の閲覧の運用では、その事件が被害者参加の「対象事件」に当たるかどうかで範囲が変わります。参加したかどうかではなく、事件の区分の問題です。

刑事裁判の結果で過失割合は決まりますか。

決まりません。刑事責任と民事の損害賠償責任は目的も要件も異なります。有罪判決や罰金があっても、民事の過失割合や賠償額が自動的に定まるわけではなく、不起訴や無罪であっても賠償請求ができなくなるわけではありません。刑事判決で認定された事実は民事でも重要な資料になり得ますが、民事裁判所は提出された証拠全体から判断します(民事訴訟法第247条)。

取得した記録を保険会社や民事裁判所へ提出できますか。

取得した経路によります。裁判所から謄写の許可を受ける際に使用目的の制限などの条件が付されることがありますし、確定記録の閲覧には、知り得た事項をみだりに用いてはならないという法律上の義務があります。閲覧が認められたことは、写しの交付、第三者への提供、公開まで認められたことを意味しません。提出先、提供範囲、マスキングの要否を整理し、条件が付されている場合はその内容を確認してから使ってください。

刑事裁判が終わるまで示談を待った方がよいですか。

一律には決められません。刑事手続の終結を待たなければ民事の交渉や提訴ができないわけではなく、刑事手続が進んでいることや記録を請求したことだけでは民事の消滅時効は止まりません。他方で、記録を確認しないまま過失割合に同意すると、後から見直すことが難しくなります。取得できる見込みのある記録とその時期、期間制限までの残り、示談条項の内容を並べて判断することになります。

示談後に記録が見つかった場合、追加請求できますか。

当然にできるとは限りません。示談書に清算条項があり、その範囲に含まれる請求であれば、原則としてやり直しは難しくなります。追加請求ができるかどうかは、合意の内容、清算条項の書き方、対象とされた損害の種類、留保の有無などにより検討が必要です。署名の前に、清算条項と留保の定めを確認しておくことが大切です。

まとめ

  • 記録の存在、取得、民事への提出、内容の信用性、請求の認容は、それぞれ別の問題です。
  • 取得の入口は段階ごとに違います。捜査中は原則非公開、不起訴後は検察庁の運用、公判中は裁判所への申出(犯罪被害者等保護法第3条)、確定後は保管検察官への閲覧請求(刑事確定訴訟記録法)です。
  • 実況見分調書などの客観的証拠と関係者の供述調書とでは開示の条件が大きく異なります。供述調書は民事裁判所からの文書送付嘱託が入口とされ、要件も限定的です。
  • 閲覧が認められることは、写しの交付や第三者への提供、公開まで認められることを意味しません。取得経路ごとの利用条件を確認してください。
  • 被害者参加は記録取得の制度ではなく、証人尋問も情状に関する事項に限られます。損害賠償命令の対象は法律が列挙する罪に限られ、過失運転致死傷は含まれていません。
  • 刑事手続の進行や記録の請求だけでは民事の消滅時効は止まりません。人の生命・身体を害する不法行為の期間(民法第724条の2)と、自賠責への被害者請求の期間(自動車損害賠償保障法第19条)は別に管理してください。
  • 確定記録には保管期間があり、罰金で終わった事件では裁判書以外の記録の保管期間が短くなります。刑事手続が終わったことを知ったら、早めに確認することをおすすめします。

監修者・執筆者

弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所 代表弁護士・公認会計士 藤井 貴之(ふじい たかゆき)

兵庫県弁護士会所属/日本公認会計士協会兵庫会所属

交通事故の被害者側の損害賠償について、事故態様に関する資料の確認、刑事記録の取得方法の検討、保険会社との交渉、示談条項の確認に対応しています。休業損害や逸失利益で収入資料の分析が必要な場合には、公認会計士としての実務も踏まえて検討します。

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参考資料

この記事は一般的な解説です。実際の結論は、事故の態様、起訴・不起訴の別、罪名、第一審の裁判所、確定の時期、記録の内容、ご相談される方と被害者との関係、そろえられた資料によって異なります。制度の運用や窓口の取扱いは変更されることがありますので、手続の前に担当の官公署へご確認ください。

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