示談後に後遺症が悪化・判明したら|追加請求できる場合とは |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|弁護士法人ひょうご支所神戸みらい法律会計事務所

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示談後に後遺症が悪化・判明したら|追加請求できる場合とは

交通事故の示談が成立した後になって、痛みやしびれが強くなった、あるいは示談の時点では分からなかった後遺障害が明らかになった、というご相談は少なくありません。「示談書に署名してしまったが、もう何も請求できないのか」「保険会社に問い合わせたところ、追加の請求はできないと言われた」と、不安を抱えて情報を探している方も多いと思います。

結論から申し上げると、示談が成立した後の追加請求は、原則として難しいのが実情です。もっとも、示談の当時に予測できなかった後遺障害が後から判明した場合など、例外的に追加請求を検討できる余地が残る場面もあります。どちらに当たるかは、示談書にどのような文言が入っているか、症状がどのように経過したか、医学的な資料がそろっているかによって変わってきます。

この記事では、示談書の効力の範囲と清算条項の意味、追加請求を検討できる可能性がある場面と難しくなりやすい場面、そして相談の前に確認しておきたい資料を、神戸市須磨区の神戸みらい法律会計事務所が整理します。

示談書に署名した後でも、後遺障害が判明した、症状が悪化したという場合は、示談書と診断書などの資料を確認することで、追加請求を検討できるかどうかの見通しを整理できることがあります。

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この記事の結論の方向性

  • 示談は民法上の和解契約(民法695条)にあたり、成立後は原則として蒸し返しができません(民法696条)。
  • ただし、最高裁判所は、全損害を正確に把握しにくい状況で少額の賠償金による示談がされた場合、示談の当時に予想できなかった後遺症や再手術による損害までは、権利放棄の対象に含まれないと解する余地を認めています(最高裁昭和43年3月15日判決)。
  • そのため、示談後でも、例外的に追加請求を検討できる場合があります。
  • 結論は、示談書の文言・症状の経過・医学資料によって変わります。まずは示談書と医学資料を確認することが出発点になります。

示談書の効力と清算条項の基本

示談は民法上の「和解契約」

交通事故の示談は、法律上は民法の「和解契約」(民法695条)にあたります。和解は、当事者がお互いに譲歩して、その間の争いをやめることを約束する契約です。示談書に署名・押印すると、その内容に沿って権利義務が確定します。

清算条項・権利放棄条項の意味

示談書には、多くの場合「本件に関し、本示談書に定めるほかに当事者間に債権債務がないことを相互に確認する」といった清算条項や、「今後一切請求しない」という権利放棄条項が入っています。これらの条項は、示談で決めた金額のほかには請求できるものが残っていないことを確認する趣旨のものです。民法も、和解によって権利関係が確定する効力(確定効)を定めています(民法696条)。そのため、示談が成立した後は、原則として同じ事故について改めて請求することはできません。

ただし、清算条項や権利放棄条項があるからといって、あらゆる損害について一律に請求できなくなるわけではありません。どの範囲の損害が示談の対象になっていたかは、示談書の文言や、示談をした当時の状況によって変わります。

示談後に追加請求できる可能性がある場合

最高裁判所は、示談の当時に全損害を正確に把握することが難しい状況のもとで、早い段階で少額の賠償金による示談がされた場合について、示談によって被害者が放棄した損害賠償請求権は示談の当時に予想していた損害に限られ、その当時予想できなかった不測の再手術や後遺症による損害までは放棄したものとはいえない、という趣旨の判断を示しています(最高裁昭和43年3月15日判決)。この考え方を前提にすると、次のような場面では、示談後でも追加請求を検討できる余地が残る場合があります。

場面 検討のポイント
示談の当時、損害の全体を把握しにくい状況だった 治療の途中や症状固定の前など、最終的な損害が確定していない段階で、早期に少額で示談していた場合。
予想できなかった後遺障害・再手術が後から生じた 示談の時点では想定されていなかった重い後遺障害が判明した、または不測の再手術が必要になった場合。
示談金が軽微な損害のみを前提としていると読める 示談金の額や資料から、傷害部分の一部だけを対象にしていたと解釈できる場合。
物損だけの示談だった 車の修理費など物的損害のみを対象とした示談で、人身の損害が対象外と読める場合。
後遺障害部分を留保していた 示談書に、後遺障害が生じた場合は別途協議する、といった留保条項が入っている場合。

もっとも、これらに当てはまれば必ず追加請求が認められる、というものではありません。示談の当時に損害を予想できなかったといえるか、症状と事故との間に因果関係があるかなどは、資料に基づいて個別に判断する必要があり、相手方の保険会社が争ってくることも想定されます。個別事情により結論は異なりますので、示談書と医学資料を確認したうえで判断することになります。

追加請求が難しくなりやすい場合

反対に、次のような場合には、追加請求は難しくなりやすい傾向があります。

場面 難しくなりやすい理由
後遺障害の可能性を認識したうえで清算した 後遺障害が残る可能性を分かったうえで、その分も含めて金額を決めていたと評価される場合。
後遺障害等級の認定後に示談した 等級認定の結果を踏まえ、後遺障害部分も対象にして示談したと読める場合。
示談書で全損害を明確に清算している 後遺障害を含めたすべての損害について解決済みであることが、文言上明確な場合。
事故との因果関係を示す資料が乏しい 症状の悪化が事故によるものだと、診断書や画像などの資料で説明しにくい場合。
請求できる期間が問題になる 消滅時効など、請求できる期間の問題がある場合(期間の起算点や残り期間は個別に確認が必要です)。

なお、損害賠償請求権には消滅時効があります。不法行為に基づく損害賠償請求権は、被害者が損害と加害者を知った時から一定期間で時効にかかるとされ、人の生命または身体を害する不法行為による場合は、この期間が5年とされています(民法724条、724条の2。この取扱いは2020年4月1日施行の改正民法によるものです)。ただし、時効の起算点や残っている期間は事案によって異なり、判断が難しい部分ですので、期限が心配な場合は早めに確認することをおすすめします。

「後遺症」と「後遺障害」は分けて考える

ご相談では「後遺症」という言葉がよく使われますが、損害賠償の場面では「後遺障害」という用語が用いられ、両者は区別して考える必要があります。

後遺障害とは、事故によるけがが治ったとき(症状固定)に残った、事故と相当因果関係のある障害で、その存在が医学的に認められ、自動車損害賠償保障法施行令の別表に定める等級に該当するものをいいます。自賠責保険の後遺障害等級の認定は、損害保険料率算出機構が行っています。後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益といった損害を検討することになります。

ここで注意したいのは、後遺障害等級の認定を受ける前に示談してしまうと、後遺障害の部分について改めて請求することが難しくなる場合がある、という点です。症状が残っているにもかかわらず、傷害部分だけで早期に示談してしまうと、後遺障害慰謝料や逸失利益を検討する機会を失うおそれがあります。もっとも、申請すれば必ず等級が認定されるわけではなく、認定の可否や等級も資料により異なります。

追加請求を検討する前に確認しておきたい資料

示談後の追加請求を検討できるかどうかは、示談書の文言と、症状・治療の経過を示す資料によって大きく変わります。相談の前に、次の資料をできる範囲でそろえておくと、見通しの整理がスムーズになります。

種類 主な資料
示談・合意に関するもの 示談書、免責証書、承諾書、合意書
保険会社とのやり取り 損害賠償額の提示書、損害計算書、保険会社との書面・メール、やり取りのメモ
事故・治療に関するもの 交通事故証明書、診断書、診療報酬明細書、診療録、検査画像(MRI・CT等)
後遺障害に関するもの 後遺障害診断書、後遺障害等級の認定結果通知、非該当通知、異議申立ての資料
収入・休業に関するもの 休業損害証明書、源泉徴収票、確定申告書、給与明細など
保険の内容が分かるもの 弁護士費用特約の有無が分かる保険証券、契約内容の資料

特に、通院した日や症状の経過が分かるメモは、事故と症状悪化との関係を検討するうえで役立つことがあります。

保険会社へ連絡する前に

示談後に症状が悪化すると、すぐに保険会社へ「示談を取り消したい」と連絡したくなるかもしれません。もっとも、感情的に連絡する前に、示談書と医学資料を整理しておくことをおすすめします。追加請求では、請求の根拠、事故と症状悪化との因果関係、示談の当時に損害を予想できたかどうかが問題になります。また、保険会社からの回答期限、消滅時効、後遺障害等級に関する異議申立ての期限など、期間に関わる点は個別の確認が必要です。回答の前に一度確認することで、対応方針を整理しやすくなります。

弁護士に相談するタイミング

示談書に署名した後であっても、次のような場合には、資料を確認することで対応方針を整理できることがあります。

  • 示談後に後遺障害が判明した、症状が悪化した
  • 示談の後に不測の再手術が必要になった
  • 後遺障害等級の認定を受ける前に示談してしまった
  • 物損だけを示談した後に、人身の損害が残っていることが分かった
  • 保険会社に追加請求を断られた
  • 請求できる期間(時効)が心配である

弁護士に相談しても結果を保証することはできませんが、示談書の文言や症状の経過、医学資料、保険会社とのやり取りを確認することで、追加請求を検討できるかどうかの見通しや、取り得る対応を整理しやすくなります。

神戸市やその周辺で、交通事故の示談後のトラブルについて相談したい方は、交通事故の取扱業務を見るページや、弁護士紹介を見るページもあわせてご覧ください。

示談書の文言や症状の経過、保険会社とのやり取りを確認することで、追加請求を検討できるかどうかの見通しを整理しやすくなります。初回のご相談は無料です。

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よくあるご質問

示談後に後遺症が出たら、追加請求できますか。
原則として、示談の成立後に同じ事故について追加請求することは難しくなります。ただし、示談の当時に予想できなかった後遺障害が後から判明した場合など、例外的に追加請求を検討できる余地が残ることがあります。示談書の文言や症状の経過により結論は異なりますので、資料を確認したうえで判断する必要があります。
示談書に「今後一切請求しない」と書いてある場合でも請求できますか。
権利放棄条項があると、原則として追加請求は難しくなります。もっとも、最高裁判所は、示談の当時に予想できなかった損害までは放棄の対象に含まれないと解する余地を認めています(最高裁昭和43年3月15日判決)。文言だけで一律に決まるわけではなく、示談の当時の状況もあわせて検討することになります。
後遺障害等級の認定を受ける前に示談してしまった場合はどうなりますか。
後遺障害の部分について改めて請求することが難しくなる場合があります。ただし、示談が傷害部分だけを対象にしていたと読めるかなど、個別事情により結論は変わります。示談書と診断書などを確認したうえで判断する必要があります。
物損だけ示談した後に、人身の損害を請求できますか。
物的損害のみを対象とした示談であれば、人身の損害は対象外と読める場合があります。もっとも、示談書の文言や当時のやり取りによって扱いが変わりますので、資料を確認したうえで判断することになります。
示談後に症状が悪化した場合、保険会社に連絡してよいですか。
連絡すること自体は問題ありませんが、その前に示談書と医学資料を整理しておくことをおすすめします。追加請求では、事故と症状悪化との因果関係や、示談の当時に損害を予想できたかどうかが問題になります。回答の前に一度確認することで、対応方針を整理しやすくなります。
保険会社に追加請求を断られたら、どうすればよいですか。
断られた場合でも、示談書の文言や症状の経過によっては、追加請求を検討できる余地が残ることがあります。保険会社の回答をそのまま受け入れず、示談書と医学資料を確認して見通しを整理することが考えられます。
相談の前に、どの資料を準備すればよいですか。
示談書・免責証書、診断書・後遺障害診断書、診療録や検査画像、保険会社からの提示書や等級認定の結果、収入資料、弁護士費用特約の有無が分かる保険証券などがあると、見通しの整理がスムーズになります。手元にある範囲で構いません。
示談後の追加請求に期限はありますか。
損害賠償請求権には消滅時効があります。人の生命または身体を害する不法行為による損害賠償請求権については、被害者が損害と加害者を知った時から5年とされています(民法724条の2)。ただし、起算点や残っている期間は事案によって異なりますので、期限が心配な場合は早めに確認することをおすすめします。

まとめ

  • 示談は和解契約(民法695条)にあたり、成立後は原則として追加請求が難しくなります(民法696条)。
  • ただし、示談の当時に予想できなかった後遺障害や再手術による損害など、例外的に追加請求を検討できる場合があります(最高裁昭和43年3月15日判決の考え方)。
  • 「後遺症」と「後遺障害」は区別し、後遺障害等級の認定前の示談には注意が必要です。
  • 追加請求を検討できるかは、示談書の文言・症状の経過・医学資料により変わります。
  • まずは示談書と診断書などを整理し、保険会社への回答前に一度確認することが、次の一歩になります。

示談後でも、示談書や診断書、保険会社からの提示書などを確認することで、追加請求を検討できるかどうかや今後の進め方を整理できる場合があります。弁護士費用特約を利用できるかどうかもあわせて確認できます。

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監修者・執筆者

藤井 貴之(ふじい たかゆき)
弁護士・公認会計士(兵庫県弁護士会/日本公認会計士協会兵庫会)

弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所 所長弁護士。交通事故、相続、離婚、債務整理などの個人の案件から、企業法務・M&Aまで幅広く対応しています。交通事故の案件では、法律面に加え、損害額の算定など数字に関わる検討も踏まえて対応します。

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