人身事故を起こしてしまった直後は、「前科がつくのか」「刑務所に行くことになるのか」「免許はどうなるのか」「仕事を続けられるのか」といった不安が一度に押し寄せます。警察や検察からの連絡を待つ間、何を基準に見通しを立てればよいのか分からない、という方がほとんどです。
この記事では、人身事故で問われる過失運転致死傷罪について、量刑(刑の重さ)の全体像と相場の考え方、量刑を左右する事情、刑事手続の流れ、運転免許への行政処分、示談・被害弁償の進め方を、神戸市須磨区の神戸みらい法律会計事務所が整理します。令和8年6月に成立した危険運転致死傷罪の改正(数値基準の導入)にも触れます。
結論の方向性を先にお伝えすると、過失運転致死傷罪の法定刑は「7年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」ですが、統計上は不起訴で終わる事案が多数を占め、起訴される場合も略式手続による罰金が中心です。他方で、被害が重大な場合や悪質性の高い事情がある場合には、正式裁判や実刑が現実的な問題になります。結論は、事故態様や被害の程度、事故後の対応によって変わります。
取調べへの対応、示談の進め方、免許への影響など、いま何を確認すべきかを整理したい方へ。実況見分の状況、診断書、保険会社とのやり取りなどの資料を確認したうえで、見通しの検討をお手伝いできます。
まず結論――過失運転致死傷罪の量刑は何で決まるのか
過失運転致死傷罪の量刑は、被害結果の重さ(死亡・重傷・軽傷)、過失の内容・程度(飲酒、速度超過、ながら運転などの有無)、前科前歴、示談・被害弁償・宥恕(被害者の許し)の状況、事故後の対応や反省・再発防止の取組みなどを総合して判断されます。どれか一つの事情で決まるものではなく、統計上の傾向はあっても、個別事案の結論を保証するものではありません。
刑事責任・行政責任・民事責任を分けて考える
人身事故では、性質の異なる三つの責任が同時に発生します。それぞれ手続も判断主体も別であり、一つが終わっても他が免除されるわけではありません。
| 責任 | 内容 | 主な手続・判断主体 |
|---|---|---|
| 刑事責任 | 過失運転致死傷罪などによる刑罰(拘禁刑・罰金) | 警察・検察の捜査、裁判所の裁判 |
| 行政責任 | 違反点数の加算、免許停止・免許取消し | 公安委員会の行政処分 |
| 民事責任 | 治療費・休業損害・慰謝料などの損害賠償 | 被害者との示談交渉、保険会社の対応、民事訴訟 |
保険会社が対応するのは、原則としてこのうち民事責任の部分です。刑事処分と行政処分には、運転者本人が別途向き合う必要があります。
最初に確認すべき資料
- 事故の日時・場所・態様が分かるメモ(実況見分で説明した内容を含む)
- 被害者の負傷の程度が分かる情報(診断書の内容、治療期間の見込み)
- ドライブレコーダーの映像、現場写真、目撃者の連絡先
- 加入している自動車保険の保険証券(対人賠償・弁護士費用特約の有無)
- 警察・検察からの書面(出頭要請、累積点数通知書、意見の聴取通知書など)
- 保険会社とのやり取りの記録(示談の進捗状況)
過失運転致死傷罪とは
成立要件と法定刑
過失運転致死傷罪は、自動車の運転上必要な注意を怠り、人を死傷させた場合に成立します(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律〔自動車運転処罰法〕第5条)。前方不注視、安全不確認、ハンドルやブレーキの操作ミスなど、日常的な不注意による人身事故の多くがこの罪に当たります。
法定刑は「7年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」です。ただし、傷害が軽いときは、情状により刑を免除することができると定められています(同条ただし書)。
わざとではない不注意の事故でも、犯罪としては成立します。一方で、実際の処分は不起訴から実刑まで大きな幅があり、事故態様と事故後の対応によって結論が変わります。
「拘禁刑」への一本化と表記の注意
令和7年6月1日、刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)の施行により、従来の「懲役」と「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。過失運転致死傷罪の法定刑も、改正前は「7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」でしたが、現在は「7年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」です。古い解説記事では旧表記が残っていることがあるため、読み替えが必要です。なお、令和7年5月31日以前の行為については、従前の懲役・禁錮の規定が適用されます。
危険運転致死傷罪との違い
同じ自動車運転処罰法には、より重い危険運転致死傷罪が定められています(第2条・第3条)。アルコールや薬物の影響で正常な運転が困難な状態での走行、進行を制御することが困難な高速度での走行、殊更な赤信号無視、いわゆるあおり運転(妨害運転)などの悪質・危険な運転類型が対象です。
| 罪名(条文) | 主な対象 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 過失運転致死傷罪(第5条) | 運転上必要な注意を怠って人を死傷させた場合 | 7年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金 |
| 危険運転致死傷罪(第2条) | 正常な運転が困難な状態での走行、制御困難な高速度での走行、殊更な赤信号無視、妨害運転など | 致傷は15年以下の拘禁刑、致死は1年以上の有期拘禁刑(上限20年) |
| 危険運転致死傷罪(第3条) | アルコール・薬物・一定の病気の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で運転し、困難な状態に陥って人を死傷させた場合 | 致傷は12年以下の拘禁刑、致死は15年以下の拘禁刑 |
どちらの罪に当たるかで量刑の水準は大きく変わります。飲酒や大幅な速度超過を伴う事故では、捜査段階から、どの罪が適用されるかそのものが重要な争点になります。
アルコール等影響発覚免脱罪・無免許運転を伴う場合
飲酒運転で事故を起こした後、発覚を免れる目的でさらに酒を飲んだり、その場を離れて体内のアルコール濃度を下げたりする行為は、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪(第4条)として、12年以下の拘禁刑の対象になります。
また、無免許運転で過失運転致死傷罪を犯した場合は、10年以下の拘禁刑に加重され、罰金刑の定めがありません(第6条第4項)。この場合、起訴されれば正式裁判となります。ひき逃げ(救護義務違反)は道路交通法違反として別に処罰され、過失運転致死傷罪と併せて処理されます。
令和8年改正――危険運転致死傷罪に数値基準が導入されました
危険運転致死傷罪は、「正常な運転が困難な状態」「進行を制御することが困難な高速度」という要件が抽象的で、適用の判断が分かれると指摘されてきました。この点を明確化するため、令和8年6月25日、自動車運転処罰法と道路交通法の改正法が国会で成立しました。主な内容は次のとおりです。
- アルコールについて、血液1ミリリットルにつき1.0ミリグラム以上又は呼気1リットルにつき0.5ミリグラム以上を身体に保有する状態での死傷事故を、危険運転致死傷罪の対象として明確化する
- 高速度について、最高速度が時速60キロメートル以下の道路では時速50キロメートル以上、時速60キロメートルを超える道路では時速60キロメートル以上の超過を対象とする数値基準を導入する
- 殊更にタイヤを滑走させるなどの、いわゆるドリフト走行等の類型を追加する
- 道路交通法の酒酔い運転についても、同じアルコール数値基準を導入する
改正法は、公布の日から20日を経過した日に施行するものとされており、令和8年7月中にも施行される見通しと報じられています。刑罰法規は行為時のものが適用されるため、施行前に発生した事故に改正後の規定が適用されることはありません。
また、令和8年9月1日には、一定の生活道路の最高速度を時速30キロメートルとする道路交通法施行令の改正(令和6年政令第248号)が施行される予定です。こうした道路では、時速80キロメートル以上での死傷事故が高速度の数値基準に該当し得ることになります。
数値基準は「これ未満なら危険運転にならない」という趣旨ではありません。基準値未満でも、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態と認められる場合などには、危険運転致死傷罪が適用される可能性があります。飲酒や大幅な速度超過を伴う事故では、適用される罪名自体が流動的であることを前提に、対応を検討する必要があります。
量刑相場の考え方――統計と個別事情を分けて見る
不起訴・罰金・正式裁判の違い
人身事故の刑事処分は、大きく次の段階に分かれます。
| 処分の区分 | 内容 | 前科 |
|---|---|---|
| 不起訴(起訴猶予など) | 検察官が裁判にかけない判断をするもので、刑罰は科されません | 前科はつきません |
| 略式手続(罰金) | 簡易裁判所が書面審理で100万円以下の罰金などを命じる手続で、被疑者の同意が必要です(刑事訴訟法第461条以下) | 罰金でも前科がつきます |
| 正式裁判(公判請求)で執行猶予 | 公開の法廷で審理され、拘禁刑に執行猶予が付けば直ちに収容はされません | 前科がつきます |
| 正式裁判(公判請求)で実刑 | 執行猶予が付かず、刑事施設に収容されます | 前科がつきます |
「罰金で済んだ」という場合でも、法律上は有罪であり、前科として扱われる点に注意が必要です。
統計から見る全体の傾向
法務省の令和7年版犯罪白書によると、令和6年における過失運転致死傷等の起訴率は15.3%、起訴猶予率は84.2%でした。処理区分別の構成比では、不起訴が約82.6%を占め、正式裁判を求める公判請求は約1.4%にとどまります。起訴される場合も、その多くは略式手続による罰金です。
正式裁判となった場合でも、初犯で示談が成立しているような事案では執行猶予が付く例が多く見られます。他方、死亡事故や悪質性の高い事案では、初犯でも実刑となる例があります。
罰金の額は、法律上1万円以上100万円以下の範囲で、被害の程度、過失の内容、前科前歴などを踏まえて決められます。具体的な水準は事案により異なります。
統計を見るときの注意点
上記の統計は、致死と致傷、無免許などの加重類型を区別しない「過失運転致死傷等」全体の傾向であり、個別事案の処分を保証するものではありません。死亡事故・重傷事故では公判請求の割合が高くなり、軽傷で示談が成立した事案では不起訴の割合が高くなるなど、内訳には大きな偏りがあります。統計は出発点にとどめ、見通しは事故態様と被害の程度を踏まえて個別に検討する必要があります。
量刑を左右する主な事情
重く見られやすい事情
- 被害者が死亡した、又は重い後遺障害が残った
- 被害者が複数いる
- 飲酒・薬物、大幅な速度超過、無免許、スマートフォン操作などのながら運転、信号無視、ひき逃げを伴う
- 同種の前科前歴がある
- 事故後の対応が不誠実である(虚偽の説明、証拠の隠匿など)
軽く見られやすい事情
- 被害の程度が比較的軽い
- 被害者側にも過失(落ち度)がある
- 示談が成立し、被害弁償がされている
- 被害者・遺族が処罰を望まない意思(宥恕)を示している
- 真摯な反省と再発防止の取組み(運転を控える、安全講習の受講など)がある
- 任意保険により賠償の見込みが立っている
示談・被害弁償・宥恕文言の位置づけ
示談の成立、被害弁償の実施、示談書中の宥恕文言(加害者を許し処罰を望まない旨の記載)や嘆願書は、起訴・不起訴の判断や量刑において重要な事情として考慮されます。もっとも、示談が成立すれば必ず不起訴になるわけではなく、特に死亡事故・重傷事故では、示談があっても起訴される例があります。
逆に、処分までに示談がまとまらない場合でも、交渉の経過や賠償の見込みを検察官に説明することが考慮されることもあります。示談の位置づけは事案により異なるため、進め方は資料を確認したうえで検討することをおすすめします。
刑事手続の流れ
捜査と取調べ
人身事故の多くは、逮捕されないまま在宅で捜査が進みます(在宅事件)。事故直後の実況見分、後日の警察での取調べ、検察庁への呼出しという流れが一般的です。他方、ひき逃げや飲酒運転が疑われる場合、被害が重大な場合などには、逮捕・勾留される可能性があります。
取調べで作成される供述調書は、後の処分や裁判で重要な資料になります。事故状況の認識(信号の色、速度、被害者を発見した時点など)について、記憶と異なる内容の調書に署名しないことが大切です。
起訴・不起訴の判断
捜査の結果を踏まえ、検察官が起訴するかどうかを判断します。被害の程度、過失の内容、示談・被害弁償の状況、前科前歴、反省の状況などが考慮されます。示談や被害弁償に取り組むのであれば、この判断の前に状況を整えておくことが一つの目安になります。
略式手続と正式裁判
起訴には、書面審理で罰金を命じる略式手続と、公開の法廷で審理する正式裁判(公判請求)があります。略式手続は100万円以下の罰金・科料に相当する事件が対象で、被疑者の同意が必要です。略式命令の内容に不服がある場合には、正式裁判を請求することもできます。
判決と前科
正式裁判では、拘禁刑(執行猶予付きを含む)や罰金の判決が言い渡されます。罰金を含め、有罪が確定すれば前科となります。前科は戸籍や住民票に記載されるものではありませんが、一定の資格や職業では欠格事由などとして影響する場合があります。影響の有無は資格ごとの法令の定めによるため、必要に応じて個別に確認してください。
運転免許への影響
刑事処分と行政処分は別手続
運転免許の停止・取消しは、公安委員会が行う行政処分であり、検察官・裁判所が行う刑事処分とは別の手続です。不起訴になっても点数による行政処分は行われますし、行政処分が先に済んでいても、刑事処分がなくなるわけではありません。
付加点数と免許停止・取消し
人身事故では、事故の原因となった違反の基礎点数(安全運転義務違反であれば2点など)に、被害の程度と責任の程度に応じた付加点数が加算されます(道路交通法施行令別表第2)。
| 被害の程度 | 専ら加害者の不注意による場合 | それ以外の場合 |
|---|---|---|
| 死亡 | 20点 | 13点 |
| 治療期間3か月以上又は後遺障害 | 13点 | 9点 |
| 治療期間30日以上3か月未満 | 9点 | 6点 |
| 治療期間15日以上30日未満 | 6点 | 4点 |
| 治療期間15日未満(建造物損壊を含む) | 3点 | 2点 |
行政処分の前歴がない場合、累積6点以上で免許停止(6〜8点は30日)、15点以上で免許取消しが基準とされています。たとえば、専ら加害者の不注意による死亡事故では、安全運転義務違反2点に付加点数20点が加わり22点となるため、免許取消しの水準に達します。酒気帯び運転・酒酔い運転や救護義務違反(ひき逃げ)を伴う場合には、さらに重い点数が定められており、一度で取消しの基準を大きく超えることになります。
実際の点数と処分は、違反内容・前歴・累積点数によって異なります。累積点数通知書や運転記録証明書で、ご自身の点数を確認してください。
意見の聴取で確認される事情
免許の取消しや長期の免許停止が見込まれる場合には、処分の前に、公安委員会による「意見の聴取」の機会が設けられます(道路交通法第104条)。事故の状況、被害者側の過失、事故後の対応、生活や仕事への影響などについて意見を述べ、資料を提出することができます。処分の軽減が保証されるものではありませんが、事情を伝える正式な機会ですので、準備して臨むことをおすすめします。
示談・被害弁償を進める際の注意点
保険会社の示談と刑事処分への対応は別に考える
任意保険に加入している場合、治療費や慰謝料などの損害賠償の交渉は、保険会社が進めるのが通常です。ただし、保険会社の示談交渉は民事上の賠償に関するものであり、刑事処分に向けた活動(謝罪の伝達、宥恕文言の取得、嘆願書の依頼、検察官への事情説明など)まで行うものではありません。「保険会社に任せているから大丈夫」とは限らない点に注意が必要です。
示談書に署名する前に確認したいこと
- 示談の対象範囲(物損のみか、人損を含むか、後遺障害部分の扱い)
- 清算条項の内容(示談後に追加の請求ができなくなる範囲)
- 宥恕文言(処罰を望まない旨)の有無と表現
- 支払方法・時期(保険会社経由か、自己負担部分があるか)
- 刑事手続との関係(示談書を検察官・裁判所へ提出することの了解)
被害者・遺族への対応で注意すべきこと
謝罪やお見舞いは重要ですが、被害者・遺族の心情や治療の状況によっては、直接の接触がかえって負担になることがあります。連絡の方法・頻度・時期は慎重に判断する必要があり、弁護士を介して連絡することが適切な場合もあります。特に死亡事故では、ご遺族の処罰感情が厳しいことも少なくなく、対応を誤ると量刑のうえでも不利に働きかねません。
示談書への署名、取調べでの供述、意見の聴取への対応は、いずれも後からやり直すことが難しい場面です。署名前・出頭前に、示談書案や警察・検察からの書面を確認したうえで、対応方針を整理しておくと安心です。
よく問題になるケース
物損事故から人身事故に切り替わった場合
当初は物損事故として処理されていても、後日、被害者が診断書を警察に提出すると人身事故に切り替わり、過失運転致死傷罪の捜査が始まります。切り替え後は、実況見分や取調べへの対応、点数の加算が問題になります。切り替えの連絡を受けた段階で、事故状況の記録やドライブレコーダーの映像を整理しておくことをおすすめします。
被害者が軽傷の場合
傷害が軽く、過失の程度も大きくなく、示談が成立しているような事案では、不起訴となる例が多く見られます。法律上も、傷害が軽いときは情状により刑を免除できる旨の定めがあります(第5条ただし書)。もっとも、飲酒や無免許などの違反を伴う場合には、傷害が軽くても厳しい処分となる可能性があります。
被害者が死亡した場合
死亡事故では、公判請求される割合が高くなり、ご遺族への対応や示談の難易度も上がります。初犯で過失の程度が大きくない事案では執行猶予が付く例もありますが、悪質な事情が重なる場合には実刑が現実的な問題になります。危険運転致死傷罪への切り替えが検討される事案もあり、早い段階から、適用される罪名の見通しを含めて検討する必要があります。
被害者側にも過失がある場合
被害者側の信号無視や飛び出しなど、被害者側にも過失がある場合、その事情は刑事処分・行政処分・民事賠償のいずれにおいても考慮され得ます。もっとも、被害者側に過失があっても加害者の過失が否定されるとは限らず、評価は事故態様の立証(実況見分調書、ドライブレコーダーの映像など)に左右されます。
免許が仕事に必要な場合
運送業、営業職、建設業など、運転免許が仕事に直結する場合、免許停止・取消しは生活に大きく影響します。仕事上の必要性そのものは点数制度の結論を左右しませんが、意見の聴取で事情を説明する意味はあります。あわせて、刑事処分の見通しと行政処分の時期を整理し、勤務先への報告や業務調整の準備を早めに進めることが現実的な対応になります。勤務先への報告義務の有無は就業規則などの定めによるため、個別に確認してください。
手続前チェックリスト
取調べ、示談、意見の聴取などの前に、次の資料と事実関係を整理しておくと、対応方針を検討しやすくなります。
- 事故状況の記録(日時、場所、天候、速度、信号、相手の動きについての記憶のメモ)
- ドライブレコーダーの映像、現場写真、目撃者の情報
- 被害者の負傷に関する情報(診断書の内容、治療期間、後遺障害の見込み)
- 保険証券(対人・対物賠償、弁護士費用特約の有無)と保険会社の担当者・交渉の進捗
- 示談書案、支払の記録など被害弁償に関する書類
- 警察・検察からの書面(出頭要請、略式手続についての説明書面など)
- 累積点数通知書、意見の聴取通知書、運転記録証明書
- 過去の交通違反・行政処分・前科前歴の有無が分かる資料
弁護士に相談するタイミング
弁護士に相談しても、不起訴や執行猶予といった結果が保証されるわけではありません。相談の意味は、事故態様と資料を踏まえて、適用される可能性のある罪名と処分の見通し、示談・被害弁償の進め方、取調べや意見の聴取への対応方針を整理できる点にあります。
特に、次のようなタイミングでは、対応の前に一度確認することをおすすめします。
- 警察・検察から取調べや出頭の連絡を受けたとき
- 示談書に署名する前
- 死亡事故・重傷事故など、重大な結果が生じたとき
- 飲酒、大幅な速度超過、ながら運転、ひき逃げなどが問題とされているとき
- 意見の聴取通知書など、行政処分に関する書面が届いたとき
- 略式手続への同意を求められたとき
神戸みらい法律会計事務所では、交通事故について、刑事処分・行政処分・損害賠償の各面から、対応方針の整理をお手伝いしています。
よくある質問
Q.人身事故を起こすと必ず前科がつきますか。
A.必ずではありません。不起訴となれば前科はつきません。統計上、過失運転致死傷等は不起訴となる割合が高い罪名ですが、被害の程度や過失の内容によっては起訴され、罰金であっても前科がつきます。結論は事案により異なります。
Q.過失運転致死傷罪の罰金はいくらくらいですか。
A.法律上は1万円以上100万円以下の範囲で、被害の程度、過失の内容、前科前歴などにより決まります。多くは略式手続で命じられますが、具体的な金額の見通しは、事案の内容を確認しなければ判断できません。
Q.初犯でも実刑になることはありますか。
A.あり得ます。死亡事故や、飲酒・大幅な速度超過など悪質性の高い事情がある場合には、初犯でも実刑となる例があります。他方、初犯で示談が成立している事案では、執行猶予が付く例が多く見られます。
Q.被害者と示談すれば不起訴になりますか。
A.示談は重要な事情ですが、示談が成立すれば必ず不起訴になるわけではありません。特に死亡事故や重傷事故では、示談があっても起訴される例があります。
Q.免許停止や免許取消しになりますか。
A.事故の点数(基礎点数と付加点数の合計)と過去の累積・前歴によります。前歴がない場合、6点以上で免許停止、15点以上で免許取消しが基準です。専ら加害者の不注意による死亡事故では、取消しの水準に達するのが通常です。
Q.保険会社に任せておけば刑事処分にも対応してもらえますか。
A.いいえ。保険会社が対応するのは原則として民事上の損害賠償であり、刑事処分・行政処分への対応は、運転者本人が別途行う必要があります。
Q.死亡事故の場合、必ず正式裁判になりますか。
A.必ずではありません。死亡事故では公判請求の割合が高くなりますが、過失の程度や被害者側の事情によっては、略式手続や不起訴となる例もあります。見通しは事案により異なります。
Q.取調べの前に弁護士へ相談した方がよいですか。
A.供述調書は後の処分や裁判で重要な資料になるため、取調べの前に、事故状況の整理と受け答えの注意点を確認しておく意味は大きいといえます。記憶と異なる調書への署名を避けるためにも、事前の準備をおすすめします。
まとめ
- 過失運転致死傷罪の法定刑は、7年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です(自動車運転処罰法第5条)
- 統計上は不起訴が多数を占め、起訴の場合も略式手続による罰金が中心です。ただし、死亡・重傷事故や悪質な事案では、正式裁判や実刑が問題になります
- 量刑は、被害結果、過失態様、前科前歴、示談・被害弁償の状況などの総合判断であり、統計は個別事案の結論を保証しません
- 刑事処分・行政処分(免許)・民事賠償は別の手続です。保険会社の対応は原則として民事のみです
- 令和8年6月、危険運転致死傷罪にアルコール・速度の数値基準を導入する改正法が成立しました。飲酒や高速度の事故では、適用される罪名の見通しにも注意が必要です
- 取調べ、示談書への署名、意見の聴取の前が、対応方針を整理する重要なタイミングです
人身事故を起こしてしまった方、ご家族が事故を起こしてお困りの方へ。神戸みらい法律会計事務所では、実況見分の状況、診断書、示談書案、警察・検察からの書面などの資料を確認したうえで、刑事処分・免許・損害賠償の各面から対応方針の整理をお手伝いします。取調べや示談書への署名の前に、一度ご相談ください。
お電話:078-797-5227(受付9:00〜20:00/時間外・土日祝は予約制)
監修者
藤井 貴之(弁護士・公認会計士)
神戸みらい法律会計事務所(弁護士法人ひょうご支所)。弁護士として兵庫県弁護士会に、公認会計士として日本公認会計士協会兵庫会に所属。弁護士と公認会計士の双方の資格を有し、交通事故については、刑事処分への対応に加え、休業損害・逸失利益など損害賠償額の検討にも対応しています。

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