バイク事故では、車体に守られている自動車の場合と異なり、身体が直接路面や相手車両に接触しやすく、骨折、脱臼、靱帯損傷、頭部外傷、脊髄損傷、神経症状など、重いけがにつながることがあります。入院や長期の通院が必要になると、治療費や休業損害にとどまらず、後遺障害が残った場合の賠償まで見据えて対応を考える必要が出てきます。
このページでは、バイク事故で重傷を負われた方や、ご家族として情報を集めている方に向けて、賠償の面で確認しておきたいポイントを整理します。けがの内容、治療の経過、事故の状況によって結論は変わりますので、まずは一般的な考え方として参考にしていただき、具体的な見通しは資料を確認したうえで検討することをおすすめします。
この記事の結論の方向性
- バイク事故は重傷化しやすく、確認すべき損害項目が多くなりやすいこと
- 後遺障害が残る可能性がある場合は、症状固定や示談の前に資料と手続を確認しておくことが重要であること
- 保険会社からの提示額や過失割合は、資料を確認したうえで内容を検討する余地があること
バイク事故で重傷を負われた場合、治療と並行して賠償の準備を進める必要があります。示談や後遺障害の申請の前に、手元の資料をもとに対応の方針を整理しておくと安心です。
Contents
バイク事故で重傷化したときに最初に押さえたい全体像
バイク事故で重傷を負った場合、賠償の検討は「人身(けが)に関する損害」と「物(バイクや装備品)に関する損害」の両面から進めることになります。とくに後遺障害が残る可能性があるケースでは、治療中の段階から、後の手続で必要になる資料をそろえておくことが結論を左右しやすくなります。
まずは、重傷事案で確認しておきたい主な観点を整理します。いずれの項目も、事故の状況や資料の内容によって取り扱いが変わりますので、当てはまるかどうかは個別に確認する必要があります。
| 観点 | 確認しておきたいこと |
|---|---|
| けがの内容 | 骨折・靱帯損傷・頭部外傷・脊髄損傷・神経症状などの診断名と治療経過 |
| 治療の段階 | 通院中か、症状固定の話が出ているか、後遺障害の申請段階か |
| 損害項目 | 治療費・休業損害・慰謝料・後遺障害に関する損害・将来の費用などに漏れがないか |
| 過失割合 | 事故態様(右直・出会い頭など)と、過失割合の見解に争いがないか |
| 証拠資料 | 診断書・画像・事故資料・ドライブレコーダーなどがそろっているか |
| 保険の確認 | 相手方の任意保険の有無、ご自身の弁護士費用特約の有無 |
上記は一般的な確認の観点であり、すべての事案で同じ取り扱いになるわけではありません。けがの程度が重くても、過失割合や損害項目の評価は個別事情によって変わります。
バイク事故の賠償が複雑になりやすい理由
同じ交通事故でも、バイク事故は自動車同士の事故に比べて、賠償の検討が複雑になりやすい傾向があります。主な理由を整理します。
身体への衝撃が大きくなりやすい
バイクは車体で身体を覆う構造ではないため、転倒や衝突の際に身体が直接ダメージを受けやすく、骨折や頭部・頸部のけが、神経症状などにつながることがあります。けがが重くなるほど、治療や後遺障害に関する損害の検討項目も増えていきます。
治療が長期化し、争点が増えやすい
重傷の場合、入院や手術、リハビリを含めて治療が長くなることがあります。治療期間が長くなると、休業損害の範囲や、症状固定の時期、後遺障害の有無といった点について、保険会社と見解が分かれやすくなります。
後遺障害の有無・程度で賠償が大きく変わりやすい
後遺障害が残るかどうか、また残った場合にどの等級に該当するかによって、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益といった損害の有無・大きさが変わります。重傷事案では、この後遺障害の評価が結論を大きく左右することがあります。
事故態様や過失割合で見解が分かれやすい
バイク事故では、右直事故や出会い頭事故など、過失割合が問題になりやすい事故態様が少なくありません。被害者が重傷であっても、過失割合は受傷の重さだけで決まるものではなく、事故の状況や証拠によって判断されます。
人身だけでなく物の損害も確認が必要
バイク本体の修理費や時価のほか、ヘルメット、プロテクター、衣類、スマートフォンなど、事故で壊れた物の損害も確認の対象になります。人身の損害に意識が向きがちですが、物の損害が漏れないよう整理しておくことが大切です。
重傷事案で確認しておきたい損害項目
重傷のバイク事故では、確認すべき損害項目が多岐にわたります。次の表は、請求できる可能性がある項目を整理したものです。すべての事案で当然に認められるわけではなく、項目ごとに資料による裏づけや個別の検討が必要です。
| 区分 | 主な損害項目 |
|---|---|
| 治療に関するもの | 治療費、入院費、付添看護費、入院雑費、通院交通費 |
| 収入に関するもの | 休業損害、後遺障害逸失利益 |
| 精神的損害 | 入通院慰謝料(傷害慰謝料)、後遺障害慰謝料 |
| 将来の費用 | 将来介護費、装具・器具・住宅改修・車両改造などの費用 |
| 近親者など | 近親者の損害 |
| 物の損害 | バイク本体、ヘルメット、プロテクター、衣類、スマートフォン等 |
| その他 | 弁護士費用、遅延損害金(訴訟上の取り扱いは個別に確認) |
上記の項目がすべての事案で認められるとは限りません。たとえば付添看護費や将来介護費は、けがの内容や必要性に応じて判断されます。どの項目を請求できるかは、診断書や資料を確認したうえで個別に検討する必要があります。
三つの基準の違いを知っておく
交通事故の損害額の考え方には、大きく分けて、自賠責保険の基準、任意保険会社の基準、裁判実務上参照される基準(いわゆる裁判基準・弁護士基準)があります。一般に、それぞれ算定の考え方が異なり、同じ事故でも前提となる金額が変わることがあります。
| 基準 | 位置づけ |
|---|---|
| 自賠責保険の基準 | 被害者への最低限の補償を確保するための基準。人身損害が対象で、費目ごとに上限が定められています。 |
| 任意保険会社の基準 | 各保険会社が用いる基準。提示額が裁判実務上の基準と一致するとは限りません。 |
| 裁判実務上参照される基準 | 裁判や交渉で参照される損害額算定の目安。事案により金額は変わります。 |
自賠責保険は人身損害を対象とするもので、バイク本体などの物の損害は対象になりません。また、費目ごとの上限額や具体的な算定基準は資料で確認する必要がありますので、本記事では金額そのものは記載していません。実際の見通しは、診断書や保険会社の提示書を確認したうえで検討します。
傷害慰謝料(入通院慰謝料)の基本的な考え方は別の記事で整理しています。あわせて交通事故の傷害慰謝料の記事を読むと、損害の全体像を把握しやすくなります。
後遺障害が残る可能性がある場合の注意点
重傷のバイク事故では、治療を続けても症状が残り、後遺障害として扱われる可能性があります。後遺障害が問題になる場合は、次の点に注意が必要です。
「症状固定」の意味を理解する
症状固定とは、治療を続けてもこれ以上の改善が見込みにくい状態に至ったことをいいます。症状固定の時期は、その後の損害の区切りや後遺障害の判断に関わるため、保険会社から症状固定を打診された場合でも、主治医の判断を踏まえて慎重に検討する必要があります。
後遺障害診断書と検査資料の重要性
後遺障害が残った場合の評価では、後遺障害診断書の記載や、画像所見(MRI・CT等)、神経学的検査、可動域測定、日常生活への支障の記録などが重要になります。必要な検査や記録が不足していると、症状の裏づけが十分に示せないことがあります。後遺障害診断書を作成する前の段階から、どのような資料が必要かを確認しておくと安心です。
申請の方法には種類がある
後遺障害の等級認定を求める手続には、相手方の任意保険会社を通じて行う方法(事前認定)と、被害者側から自賠責保険会社に直接請求する方法(被害者請求)があります。どちらの方法を選ぶかによって、資料の準備や進め方が変わります。制度の詳細や手続の選択は、公的資料や事案の内容を確認したうえで判断する必要があります。
非該当・想定より低い等級だった場合
後遺障害の申請をしても、非該当となったり、想定より低い等級にとどまることがあります。その場合に、結果をそのまま受け入れるか、異議申立てなどを検討するかは、認定の理由や資料の内容を確認したうえで判断することになります。
示談後の追加請求は難しくなることがある
いったん示談が成立し、清算条項(その事故についてそれ以上の請求をしないという趣旨の条項)が入った示談書に署名・押印すると、後から後遺障害分を追加で請求することが難しくなる場合があります。後遺障害が残る可能性があるうちは、示談の前に資料と手続を確認しておくことが重要です。
なお、治療の途中で治療費の打ち切りを打診された場合の考え方は、治療費打ち切りへの対応を確認する記事で整理しています。
過失割合と事故態様の確認
賠償額は、損害の大きさだけでなく、過失割合によっても変わります。バイク事故では、過失割合が争点になりやすい事故態様があります。
過失割合が問題になりやすい場面
右直事故(右折車と直進車の事故)、出会い頭事故、進路変更にともなう事故、追突、単独事故など、事故態様によって過失割合の考え方は異なります。同じような事故に見えても、信号の状況、速度、道路の形状などによって判断が変わることがあります。
確認しておきたい証拠資料
過失割合の検討では、交通事故証明書、実況見分調書や物件事故報告書など取得できる資料、ドライブレコーダーの映像、現場や車両の損傷の写真、信号サイクル、目撃者の有無などが手がかりになります。これらの資料は、時間の経過とともに入手が難しくなることがあるため、早めの確認が望まれます。
ヘルメットや速度などと減額の可能性
ヘルメットの着用状況、速度、灯火、車間距離、走行車線、道路状況などが、過失割合の検討で問題になることがあります。ただし、これらが賠償額の減額につながるかどうか、またどの程度かは、事故の状況や証拠によって異なり、一律に決まるものではありません。
被害者が重傷であることと、過失割合がどう評価されるかは別の問題です。重傷であっても過失割合が争われることはあり、逆に、過失割合の主張に対しては資料に基づく反論を検討できる場合があります。
保険会社の提示・治療費打ち切り・示談前の確認
重傷事案では、保険会社とのやり取りの中で、治療費の打ち切りや示談金の提示を受けることがあります。署名や回答の前に確認しておきたい点を整理します。
治療費の打ち切りを打診されたとき
治療の途中で治療費の支払いを打ち切る意向を伝えられることがあります。打ち切りの打診があった場合でも、治療の必要性や症状の経過を踏まえて対応を検討する必要があります。打ち切り後の治療費の取り扱いについては、資料を確認したうえで判断します。
症状固定の前に示談を急がない
症状固定の前の段階では、後遺障害が残るかどうか、どの程度の損害になるかが確定していないことがあります。この段階で示談を成立させてしまうと、後から判明した損害を反映できなくなるおそれがあります。重傷事案では、示談の時期にも注意が必要です。
示談書に署名する前の確認点
示談書に署名・押印する前には、損害項目に漏れがないか、後遺障害や物の損害が適切に反映されているか、人身と物の損害が整理されているか、清算条項の範囲はどうかなどを確認することが大切です。提示された金額が裁判実務上参照される基準と一致するとは限らないため、内容を資料に基づいて確認する余地があります。
弁護士に相談したからといって、必ず増額するわけではありません。もっとも、診断書や提示書などの資料を確認することで、提示内容の妥当性や、検討すべき損害項目を整理しやすくなります。
手続前に確認しておきたい資料のチェックリスト
示談の前、症状固定の前、後遺障害の申請の前、保険会社への回答や支払いの前には、次のような資料がそろっているかを確認しておくと、対応の方針を整理しやすくなります。
- 交通事故証明書
- 診断書、診療報酬明細書
- 後遺障害診断書(作成段階の場合は記載予定の内容)
- 検査画像や画像所見
- 通院日が分かる資料
- 休業損害証明書、源泉徴収票、給与明細、確定申告書
- 家事に従事している状況が分かる資料
- 保険会社からの示談金提示書、損害額計算書
- 事故現場の写真、ドライブレコーダーの映像
- 実況見分調書、物件事故報告書など取得できる資料
- バイクの修理見積書や査定資料
- ヘルメット、プロテクター、衣類、スマートフォン等の損傷写真
- 自動車保険の証券、弁護士費用特約の有無が分かる資料
弁護士費用特約を確認しておく
ご自身やご家族が加入している自動車保険に、弁護士費用特約が付いていることがあります。弁護士費用特約は、一定の範囲で弁護士に依頼する際の費用を保険でまかなえる仕組みです。バイク事故で利用できるかどうか、補償の範囲や条件は、保険契約の内容によって異なりますので、保険証券や契約内容を確認することをおすすめします。
弁護士費用特約は、ご自身の契約だけでなく、同居のご家族の契約で使える場合があります。利用の可否や範囲は契約により異なるため、加入状況を早めに確認しておくとよいでしょう。
弁護士に相談するタイミング
バイク事故で重傷を負った場合、次のような場面が、相談を検討するひとつの目安になります。相談によって、必ず結果が良くなるというものではありませんが、資料の整理や損害項目の確認、後遺障害の申請や保険会社対応の方針を整理しやすくなります。
- 事故の直後や、入院中・退院直後
- 治療費の打ち切りを打診されたとき
- 症状固定の話が出たとき
- 後遺障害診断書を作成する前
- 後遺障害等級の認定結果が出たとき
- 保険会社から示談金の提示を受けたとき
- 過失割合に納得できないとき
- 重度の後遺障害や将来介護が問題になりうる重篤な事案のとき
バイク事故で重傷を負われた場合、損害項目の確認や後遺障害の申請、保険会社への対応など、検討すべき点が多くなりがちです。資料を確認することで、対応の方針や見通しを整理しやすくなります。
よくある質問(FAQ)
バイク事故は車の事故より賠償額が高くなりますか。
一律に高くなるとは限りません。ただ、バイク事故は重傷化しやすく、後遺障害が問題になりやすいため、確認すべき損害項目が多くなる傾向があります。実際の金額は、けがの内容や過失割合、資料の内容によって変わります。
後遺障害が残る可能性があるときは何を確認すべきですか。
症状固定の時期、後遺障害診断書の記載、画像や検査などの資料がそろっているかを確認することが大切です。示談の前に資料と手続を確認しておくと、対応の方針を整理しやすくなります。
保険会社から示談金の提示を受けました。すぐ示談してよいですか。
後遺障害が残る可能性がある場合や、症状固定の前の段階では、示談を急がず内容を確認することをおすすめします。損害項目や過失割合、清算条項の範囲を確認したうえで判断する余地があります。
過失割合に納得できない場合はどうすればよいですか。
交通事故証明書やドライブレコーダー、現場写真などの資料を確認し、事故態様に照らして検討します。過失割合は受傷の重さだけで決まるものではないため、資料に基づく反論を検討できる場合があります。
休業損害や逸失利益はどのように確認しますか。
休業損害は、収入の減少を示す資料(給与明細、源泉徴収票、確定申告書など)をもとに確認します。後遺障害逸失利益は、後遺障害の等級や収入などをもとに検討します。具体的な算定は資料を確認したうえで行います。
ヘルメットやバイク本体の損害も請求できますか。
バイク本体や装備品、衣類などの物の損害も確認の対象になります。請求できるかどうかや金額は、損傷の状況や資料によって変わりますので、修理見積書や写真などを残しておくとよいでしょう。
弁護士費用特約はバイク事故でも使えますか。
使える場合がありますが、利用の可否や補償の範囲は保険契約の内容によって異なります。ご自身や同居のご家族の自動車保険の契約内容を確認することをおすすめします。
家族が本人の代わりに相談の準備をしてもよいですか。
入院中などで本人が動けない場合、ご家族が資料を集めて相談の準備を進めることは可能です。状況に応じて、どのような資料が必要かを確認しながら進めるとよいでしょう。
まとめ
バイク事故で重傷を負った場合のポイントを整理します。
- バイク事故は重傷化しやすく、確認すべき損害項目が多くなりやすい
- 後遺障害が残る可能性がある場合は、症状固定や示談の前に資料と手続を確認しておく
- 過失割合は受傷の重さだけで決まらず、事故態様や証拠によって判断される
- 保険会社の提示額や過失割合は、資料を確認したうえで内容を検討する余地がある
- バイク本体や装備品などの物の損害も漏れなく確認する
- 弁護士費用特約の有無を早めに確認しておく
けがの内容や事故の状況によって結論は変わります。示談の前、症状固定の前、後遺障害の申請の前に、一度資料を確認しておくことをおすすめします。
バイク事故の重傷事案では、資料の整理や損害項目の確認を通じて、対応の方針や見通しを検討できます。示談前や後遺障害の申請前のご相談も承っています。費用や手続については、あわせてご確認ください。
監修者・執筆者
弁護士法人ひょうごあわじみらい法律会計事務所 神戸みらい法律会計事務所(神戸市須磨区)
弁護士・公認会計士 藤井 貴之(兵庫県弁護士会所属)
交通事故をはじめとする民事事件に対応しています。弁護士の紹介は弁護士紹介を見るからご確認いただけます。
参考資料
- 国土交通省「自賠責保険・共済の限度額と補償内容」https://www.mlit.go.jp/jidosha/jibaiseki/about/payment/index.html
- 国土交通省「障害が残ったときは?」https://www.mlit.go.jp/jidosha/jibaiseki/accident/aftereffect/index.html
- 自賠責保険・共済紛争処理機構https://www.jibai-adr.or.jp/
- 警察庁「二輪車の安全利用の促進」https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/nirinsha-anzenriyou.html
- 公益財団法人日弁連交通事故相談センター「青本・赤い本のご紹介」https://n-tacc.or.jp/book
- e-Gov法令検索「自動車損害賠償保障法」https://laws.e-gov.go.jp/law/330AC0000000097

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