自社株を第三者に譲りたいと会社に申し入れたが、承認されないまま話が止まっている。株式を譲り受けたのに名義書換に応じてもらえない。逆に、株主から「承認しないなら会社で買い取れ」という書面が届き、社内で対応を決めかねている。譲渡制限株式をめぐる相談は、こうした行き詰まりの場面で持ち込まれます。
会社法は、この場面のために、譲渡等承認請求から買取り、売買価格の確定までの手続を用意しています。もっとも、そこには二週間、四十日、十日、一週間、二十日という短い期間が連続し、期限を過ぎると結論が法律上自動的に決まる仕組みになっています。価格も、会社の提示額や税務上の評価額がそのまま通るわけではなく、最終的には裁判所が「一切の事情」を考慮して決めます。
この記事では、譲渡しようとする株主、株式を取得した譲受人、請求を受けた会社の担当者に向けて、入口の判定から価格の確定までを順に整理し、申立て後の審理の進み方、評価方法の選択、加重割合、非流動性ディスカウントの限界まで扱います。個別の結論は定款、請求書、通知書、算定書等により変わりますので、実際の判断は資料を確認したうえで行う必要があります。
書面を受け取った日から期限が動き始めます。譲渡等承認請求書、承認・不承認の通知、買取りの通知のいずれかを受け取っている場合は、その日付と到達を示す資料をそろえたうえで、早い段階で確認することをおすすめします。相談により、どの手続のどの段階にいるのかを整理できます。
まず判定する|あなたの事案に会社法第144条の手続が使えるか
「株式を買い取ってほしい」という相談は、法律上は複数の別々の制度に分かれます。入口を誤ると、期限のない交渉を続けるうちに、使えたはずの手続の期限が過ぎてしまいます。まず次の表で、自分がどこにいるかを確認してください。
| 現在の状況 | 対応する制度 | この記事での扱い |
|---|---|---|
| 譲渡先が決まっているのに、会社が譲渡を承認しない | 会社法第136条以下の譲渡等承認請求と、第144条の売買価格の決定 | 中心として扱う |
| すでに株式を譲り受けたが、名義書換に応じてもらえない | 会社法第137条第1項の取得者からの請求(第134条、施行規則第24条) | 中心として扱う |
| 譲渡先はいないが、会社に買い取ってほしい | 自己株式の取得(会社法第156条以下)等の協議。会社に買取義務は生じない | 違いのみ説明する |
| 退職時に、株主間契約や割当時の合意による買戻しを求められた | 契約の解釈と有効性の問題。第144条の手続とは別 | 違いのみ説明する |
| 相続で株式を取得した、または相続人に売渡しを求められた | 一般承継(第134条第4号)と相続人等に対する売渡請求(第174条以下)。自社株の相続・事業承継の記事も参照 | 違いのみ説明する |
| 合併、株式交換、株式併合などに反対している | 反対株主の株式買取請求。裁判所が定めるのは「公正な価格」で制度が異なる。反対株主の株式買取請求の記事を参照 | 扱わない |
| 役員報酬として交付された「譲渡制限付株式(RS)」の扱いを知りたい | 株式報酬に関する契約と税務の問題であり、会社法上の譲渡制限株式とは別 | 扱わない |
用語の注意。「譲渡制限付株式」は、役員等に対する株式報酬(RS)を指して使われることが多い言葉です。この記事が扱うのは、定款で譲渡による取得に会社の承認を要すると定められた株式、すなわち会社法第2条第17号にいう譲渡制限株式です。
結論|協議で決まらなければ、二十日以内の申立てで裁判所が決める
- 会社が譲渡を承認しなくても、それだけで会社の買取義務が生じるわけではありません。譲渡等承認請求の際に「承認しないなら会社又は指定買取人が買い取ることを請求する」旨を明らかにしておく必要があります(会社法第138条第1号ハ、第2号ハ)。
- その記載のある請求を受けて会社が不承認としたときは、会社は対象株式を買い取らなければならず(第140条第1項)、買取り自体を拒めません。残された選択は、承認するか、自ら買い取るか、指定買取人を指定するかです。買取りの通知の後、売買価格はまず当事者の協議で決めます(第144条第1項)。
- 協議が調わないときは、買取りの通知があった日から二十日以内に、裁判所に売買価格の決定を申し立てることができます(第144条第2項、第7項)。
- この二十日以内に申立てがなく、協議も調わなかったときは、一株当たり純資産額に対象株式の数を乗じた額が売買価格になります(第144条第5項)。交渉を続けていれば期限が延びる、という規定はありません。
- 裁判所が価格を定めるときは、譲渡等承認請求の時における会社の資産状態その他一切の事情を考慮します(第144条第3項)。評価方法や加重の割合に法定の答えはなく、会社の実態と提出された資料によって変わります。
譲渡制限株式とは何か|定款の定めと、承認のない譲渡の扱い
定款で「承認を要する」と定めた株式
株主は原則としてその有する株式を自由に譲渡できます(会社法第127条)。会社は定款で、譲渡による株式の取得について会社の承認を要すると定めることができ(第107条第1項第1号、第2項第1号)、種類株式の内容として一部の株式についてのみ定めることもできます(第108条第1項第4号、第2項第4号)。この定めがある株式が譲渡制限株式です(第2条第17号)。
定款では、一定の場合に会社が承認したものとみなす旨とその場合を定めることもできます(第107条第2項第1号ロ)。中小企業では、株主間の譲渡や親族への譲渡を承認不要とする定めが置かれていることがあります。手続に入る前に、まず定款を取り寄せ、承認機関に関する別段の定め(第139条第1項ただし書)、みなし承認の定め、期間を短縮する定めの有無を確認してください。
承認を得ないまま譲渡した場合はどうなるか
株式の譲渡は、株主名簿に取得者の氏名又は名称と住所を記載又は記録しなければ、会社その他の第三者に対抗できません(第130条第1項。株券発行会社では会社との関係につき同条第2項)。譲渡制限株式については、承認を受けるなど一定の場合を除き、取得者からの名義書換請求に関する規定が適用されません(第134条)。株券発行会社では株券の交付が譲渡の効力要件です(第128条第1項)。
もっとも会社法は、譲渡契約そのものを無効とする規定は置いていません。当事者間の契約上の効力と、会社に対して株主として扱われるかどうかは分けて考える必要があります。代金を支払った後で名義書換を断られた場合は、第137条第1項の請求に進むことを検討することになります。
株式報酬の「譲渡制限付株式」との違い。役員報酬等で用いられる譲渡制限付株式(RS)は、割当契約により一定期間の譲渡を禁じ、条件を満たさない場合に会社が無償取得するなどの仕組みを設けたものです。定款による譲渡制限とは根拠も効果も異なり、この記事の手続はそのまま当てはまりません。
譲渡等承認請求|誰が、何を書いて請求するか
株主からの請求と、取得者からの請求
- これから譲り渡そうとする株主は、会社に対し、特定の相手が譲渡制限株式を取得することについて承認するか否かの決定を請求できます(会社法第136条)。譲渡の相手方が発行会社自身である場合は、この規定の対象外です。
- すでに譲渡制限株式を取得した者は、会社に対し、取得したことについて承認するか否かの決定を請求できます(第137条第1項)。ただしこの請求は、原則として株主名簿上の株主又はその一般承継人と共同してしなければなりません(同条第2項)。共同請求が不要となるのは会社法施行規則第24条が定める場合(請求を命ずる確定判決の内容を証する書面等を提供したとき、競売により取得したことを証する書面等を提供したときなど。株券発行会社については株券を提示した場合など別の定め)に限られます。
譲渡人が協力しない、連絡が取れないという場面では、この共同請求の要否が最初の関門になります。どの資料を提供すれば単独で請求できるかは、取得の経緯によって変わります。
請求書に書く事項|「買い取れ」の意思表示を落とさない
| 請求の種類 | 明らかにすべき事項 |
|---|---|
| 株主からの請求(第136条) | 譲り渡そうとする譲渡制限株式の数(種類株式発行会社では種類及び種類ごとの数)/譲り受ける者の氏名又は名称/会社が承認しない旨の決定をする場合に、会社又は指定買取人が買い取ることを請求するときは、その旨 |
| 取得者からの請求(第137条第1項) | 取得した譲渡制限株式の数(種類株式発行会社では種類及び種類ごとの数)/株式取得者の氏名又は名称/会社が承認しない旨の決定をする場合に、会社又は指定買取人が買い取ることを請求するときは、その旨 |
最も見落とされやすい点です。三つ目の「買い取ることを請求する旨」を書かなければ、会社が不承認としても買取りの手続には進みません。会社法第140条第1項の買取義務は、第138条第1号ハ又は第2号ハの請求を受けたことを前提としているからです。承認されない可能性がある場合は、請求を出す前にこの意思表示を入れるかどうかを検討してください。提出済みの方は、その控えを確認してください。
会社の決定と通知|二週間を過ぎると承認したものとみなされる
会社が承認するか否かを決定するには、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議によらなければなりません。ただし、定款に別段の定めがある場合は、その定めによります(会社法第139条第1項)。決定をしたときは、譲渡等承認請求者に対しその内容を通知します(同条第2項)。
そして、会社が請求の日から二週間(これを下回る期間を定款で定めた場合はその期間)以内にこの通知をしなかったときは、承認する旨の決定をしたものとみなされます(第145条第1号)。会社と譲渡等承認請求者の合意により別段の定めをしたときは、この限りではありません。
会社側から見れば、請求書の放置が最も危険な対応です。株主側から見れば、通知が来ないまま二週間が過ぎたときは承認擬制を主張できないかを検討することになります。いずれの立場でも、請求書がいつ到達したかを示す資料が必要です。
不承認のあと|会社が買うか、指定買取人が買うか
会社が買い取る場合
会社は、第138条第1号ハ又は第2号ハの請求を受けて承認しない旨の決定をしたときは、対象となる譲渡制限株式(対象株式)を買い取らなければならず、買い取る旨と買い取る対象株式の数を定める必要があります(会社法第140条第1項)。この決定は株主総会の特別決議によります(同条第2項、第309条第2項第1号)。この株主総会では、譲渡等承認請求者は議決権を行使できません(第140条第3項。その者以外の株主の全部が議決権を行使できない場合を除く)。少数株主が請求した事案では、この点が決議の有効性に関わることがあります。
会社が買主になる場合の財源規制。会社自身が買い取るときは自己株式の取得に当たり、株主に交付する金銭等の帳簿価額の総額は、効力発生日における分配可能額を超えてはなりません(会社法第461条第1項第1号、第155条第2号)。分配可能額が乏しい会社では、決議の前に確認が必要です。売主側のみなし配当と源泉徴収については後述します。
指定買取人が買い取る場合
会社は、対象株式の全部又は一部を買い取る者(指定買取人)を指定することもできます(会社法第140条第4項)。指定は株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議によりますが、定款に別段の定めがあればその定めによります(同条第5項)。取締役会設置会社が取締役会で指定する場合、株主総会の特別決議は要りません。
指定買取人は、指定を受けたときは、譲渡等承認請求者に対し、指定を受けた旨と買い取る対象株式の数を通知します(第142条第1項)。会社が一部を買い取り、残りを指定買取人が買い取る組み方もできます。この場合は通知や期限が別々に進むため、書面の宛先と日付の管理が重要になります。
供託と株券の取扱い
- 会社は、買取りの通知をしようとするときは、一株当たり純資産額に対象株式の数を乗じて得た額を本店の所在地の供託所に供託し、供託を証する書面を譲渡等承認請求者に交付しなければなりません(会社法第141条第2項)。指定買取人も同様です(第142条第2項)。
- 対象株式が株券発行会社の株式である場合、供託を証する書面の交付を受けた譲渡等承認請求者は、交付を受けた日から一週間以内に、対象株式に係る株券を本店の所在地の供託所に供託し、遅滞なくその旨を通知しなければなりません(第141条第3項、第142条第3項)。
- この一週間以内に株券の供託をしなかったときは、株券発行会社又は指定買取人は、対象株式の売買契約を解除することができます(第141条第4項、第142条第4項)。
一株当たり純資産額は、会社法施行規則第25条により、資本金・資本準備金・利益準備金・剰余金の額、評価・換算差額等に係る額、株式引受権及び新株予約権の帳簿価額の合計から、自己株式及び自己新株予約権の帳簿価額を減じた額を基礎に算定されます。会計上の帳簿価額を基礎とする計算であり、不動産の含み益や事業の収益力を反映しません。供託額が売買価格の目安になるとは限らない点に注意が必要です。
撤回できる場面と、できない場面
買取りを求める請求をした譲渡等承認請求者は、会社からの買取りの通知を受けた後は会社の承諾を得た場合に限り、指定買取人からの通知を受けた後は指定買取人の承諾を得た場合に限り、請求を撤回できます(会社法第143条)。買取りの通知を受けた段階で、株主側は原則として引き返せなくなります。「価格が折り合わなければ持ち続ける」という選択を残したい場合は、請求を出す前に方針を決めておく必要があります。
期限の一覧
| 行為者と行為(根拠) | 起算点 | 期間(定款による短縮の可否) | 期限を過ぎた場合 |
|---|---|---|---|
| 会社が承認・不承認を通知する(第139条第2項、第145条第1号) | 譲渡等承認請求の日 | 二週間(定款でこれを下回る期間を定められる) | 承認する旨の決定をしたものとみなされる(会社と請求者の合意による別段の定めがある場合を除く) |
| 会社が買取りの通知をする(第141条第1項、第145条第2号) | 第139条第2項の通知の日 | 四十日(定款でこれを下回る期間を定められる) | 承認する旨の決定をしたものとみなされる。ただし指定買取人が十日以内に通知をした場合を除く |
| 指定買取人が買取りの通知をする(第142条第1項、第145条第2号) | 第139条第2項の通知の日 | 十日(定款でこれを下回る期間を定められる) | 会社が四十日以内に通知をしていなければ、承認する旨の決定をしたものとみなされる |
| 会社・指定買取人が供託を証する書面を交付する(第141条第2項、第142条第2項、施行規則第26条第1号・第2号) | 第139条第2項の通知の日 | 上記の四十日又は十日と同じ期間内 | 承認する旨の決定をしたものとみなされる |
| 譲渡等承認請求者が株券を供託する(株券発行会社。第141条第3項・第4項、第142条第3項・第4項) | 供託を証する書面の交付を受けた日 | 一週間(短縮の規定はない) | 会社又は指定買取人が売買契約を解除することができる |
| 当事者が売買価格の決定を申し立てる(第144条第2項、第7項) | 第141条第1項(指定買取人の場合は第142条第1項)の通知があった日 | 二十日(短縮・延長の規定はない) | 協議が調っていなければ、一株当たり純資産額に対象株式の数を乗じた額が売買価格になる(第144条第5項) |
| 当事者が即時抗告をする(会社法第872条第5号、非訟事件手続法第67条) | 裁判の告知を受けた日 | 二週間の不変期間 | 決定が確定する |
起算点を取り違えないでください。四十日と十日は、いずれも会社が承認しない旨を通知した日(会社法第139条第2項の通知の日)を基準とします。指定買取人が指定を受けた日ではありません。二十日は、買取りの通知があった日(第141条第1項、指定買取人の場合は第144条第7項により読み替えられた第142条第1項の通知があった日)を基準とし、不承認の通知の日でも、供託の日でも、協議が決裂した日でもありません。期間の計算では初日を算入しないのが原則ですが(民法第140条)、具体的な起算日と満了日は通知の到達状況等により変わります。封筒、送付記録、受領印、電子メールの送受信記録を保存してください。
買取りの通知や供託関係の書類が届いたら。その時点で、株券の供託の要否と二十日の申立期間の管理が同時に始まります。通知書、供託を証する書面、株主名簿、定款を確認したうえで、協議で進めるか申立てを準備するかを検討する必要があります。相談により、残された期間と必要な資料を整理できます。
価格が決まるまで|協議、二十日の申立期間、裁判所の決定
まず当事者の協議
買取りの通知があった場合、対象株式の売買価格は、まず会社又は指定買取人と譲渡等承認請求者との協議によって定めます(会社法第144条第1項、第7項)。協議で提示された金額、算定の根拠、やり取りの経緯は、後に申立てをする場合の資料にもなりますので、書面やメールの形で残してください。
二十日の申立期間
会社又は指定買取人と譲渡等承認請求者は、買取りの通知があった日から二十日以内に、裁判所に対し売買価格の決定の申立てをすることができます(会社法第144条第2項、第7項)。申立権は双方にあり、株主側だけの権利ではありません。
期間内に申立てがあれば、裁判所が定めた額が売買価格になります(同条第4項)。期間内に申立てがなく、かつその期間内に協議も調わなかったときは、一株当たり純資産額に対象株式の数を乗じて得た額が売買価格になります(同条第5項)。帳簿価額を基礎とした金額がそのまま結論になるということです。協議中であることを理由に期間が停止したり延長されたりする規定はありません。
申立先、手数料、手続の性質
この申立ては会社非訟事件として扱われ、会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属します(会社法第868条第1項)。裁判所は、審問の期日を開いて申立人及び相手方の陳述を聴かなければなりません(第870条第2項第3号)。申立てがあったときは相手方に申立書の写しが送付され、裁判をするときは相当の猶予期間を置いて審理を終結する日が定められ、当事者に告知されます(第870条の2)。裁判には理由を付さなければなりません(第871条)。
申立ての手数料は民事訴訟費用等に関する法律の別表第一により定まり、会社非訟事件の申立ては同表一六の項に当たるものとして千円とされています。予納郵券の額と内訳、必要部数、書式は裁判所や時期によって異なりますので、申立先の裁判所の案内で確認してください。申立書の記載事項と添付書類は会社非訟事件等手続規則によります。
申立ての後、審理はどう進むか
会社非訟事件を専門に扱う東京地方裁判所民事第8部は、審理の進み方について次のような考え方を公表しています。全国一律の基準ではありませんが、手続のイメージをつかむ手がかりになります。
| 段階 | 内容 | 当事者が判断すること |
|---|---|---|
| 主張整理 | 株式価値の算定について当事者の主張を整理する | どの評価方法を、どの資料で裏づけて主張するか |
| 専門委員の関与 | 非訟事件手続法第33条第1項により、的確かつ円滑な審理の実現のため、又は和解を試みるに当たり必要と認めるときに、当事者の意見を聴いて関与させる。日当等は国庫の負担 | 専門委員の関与を希望するかどうか |
| 和解 | 中立的な専門委員の意見により当事者の理解が深まり、合意に至って終了する事案がある | 和解と、費用をかけて裁判所の判断を求めることの利害得失 |
| 鑑定 | 当事者の鑑定の申出と費用の予納がなければ、裁判所は鑑定人を選任できない。鑑定人には株式評価の知識と実績のある者(多くは公認会計士)が選任される | 鑑定を申し出るか、予納金を負担するか |
| 決定 | 和解が成立せず鑑定の申出もない場合は、提出された資料をもとに価格が決定される | 提出資料でどこまで説明できているか |
費用と期間の見通し。同資料は、鑑定の予納金について、対象会社の規模や評価作業の分量・複雑性により様々であるとしたうえで、近年の例では数百万円程度が多く、規模が大きく複雑な事案では数千万円を要することもあるとし、鑑定申出の採用から鑑定意見書提出までは概ね数か月としています。小規模な同族会社の事案では費用面で鑑定になじまないことがあり、その場合は専門委員を関与させるかどうかが重要な協議事項になるとも述べられています。金額と期間は事案により大きく異なりますので、目安として理解してください。
価格が確定した後の精算
会社が第141条第2項の供託をしていた場合に売買価格が確定したときは、会社は、供託した金銭に相当する額を限度として売買代金の全部又は一部を支払ったものとみなされます(会社法第144条第6項。指定買取人につき同条第7項)。確定した価格が供託額を上回れば差額の支払が必要になり、下回れば供託金の還付をめぐる処理が問題になります。
決定に対する不服申立て
決定に対しては、申立人及び売買価格の決定の申立てをすることができる者に限り、即時抗告ができます(会社法第872条第5号、第870条第2項第3号)。即時抗告は裁判の告知を受けた日から二週間の不変期間内にしなければならず(非訟事件手続法第67条第1項、第2項)、執行停止の効力を有します(会社法第873条)。抗告の手数料は申立ての手数料の一・五倍です(民事訴訟費用等に関する法律別表第一の一八の項)。通常の民事訴訟の控訴・上告とは手続の枠組みが異なります。
裁判所が決める「売買価格」とは何か
「請求の時における資産状態その他一切の事情」
裁判所が売買価格を定めるときは、譲渡等承認請求の時における株式会社の資産状態その他一切の事情を考慮しなければなりません(会社法第144条第3項)。基準となる時点は譲渡等承認請求の時であり、請求後に生じた事情をどこまで考慮できるかは事案と資料により分かれ得ます。考慮する事情は資産状態に限られず、事業の継続性、収益力、配当の実績、過去の株式取引、対象株式の割合といった事情も含まれ得ます。算定方法を法律が指定しているわけではなく、どの評価方法を用いてどう組み合わせるかは、提出された資料を踏まえた裁判所の判断に委ねられています。
最高裁判所第三小法廷令和5年5月24日決定(令和4年(許)第8号、集民第270号113頁)は、この手続の趣旨について、会社が譲渡を承認しない場合に「譲渡を希望する株主に当該譲渡に代わる投下資本の回収の手段を保障する」ものであると述べています。価格の考え方を検討する出発点になる判示です。
税務上の評価額、簿価、M&A価格との違い
- 税務上の評価額(財産評価基本通達等)は、相続税・贈与税等の課税価格を算定するための画一的な評価であり、裁判所が売買価格を定める際の基準として法律上位置づけられたものではありません。会計上の簿価純資産も含み損益や収益力を反映しません。
- M&A等の任意の取引価格は、取引事例として考慮され得ますが、当事者の事情等を含むため、そのまま用いられるとは限りません(M&A・事業承継の取扱業務)。
- 組織再編等における「公正な価格」(会社法第785条等)は、制度趣旨と価格概念が異なります。判例も事案の相違として区別しており、同じ基準として扱うことはできません。
会社が「相続税評価額です」「帳簿上の純資産はこの金額です」として提示してきた場合でも、それが第144条の売買価格として相当かは別の検討を要します。逆に、株主側が高い評価額を主張する場合も、その前提資料の信頼性が問われます。
価格概念には議論があります。売買価格を株式の交換価値として捉える考え方と、会社全体の企業価値に持株割合を乗じた価値(プロ・ラタ価値)として捉える考え方があり、この点が判例によって全面的に決着しているとはいえません。どちらに立つかで、後述する少数株主性の扱いも変わり得ます。対象会社の実態と提出資料に即した検討が必要です。
株式評価方法の選択|会社の実態と資料の質で決まる
非上場株式の評価方法は、貸借対照表の純資産に着目するネットアセット・アプローチ(簿価純資産方式、時価純資産方式)、将来の利益やキャッシュフローに着目するインカム・アプローチ(DCF法、収益還元法、配当還元法)、類似する会社や取引と比較するマーケット・アプローチ(類似会社比較法、取引事例法)の三つに大別されます。各方式の内容は、非上場株式の評価方法と買取価格の記事で整理しています。
どれか一つが常に正しいというものではありません。会社非訟事件を専門に扱う東京地方裁判所民事第8部は、評価手法の選択について次の趣旨を公表しています。非上場会社では株式市場の評価を参照できないため評価手法は限定されるのが通常であること、事業会社では株主価値の源泉が事業の生み出す利益やキャッシュフローであることが多いためインカム・アプローチが採用されることが多いこと、ただし事業価値に比べて保有資産の価値が大きい場合(例えば非常に価値の高い不動産を収益性の低い事業に使用している場合)や、事業が振るわず恒常的に損失を計上し成長も見込まれない場合はネットアセット・アプローチが採用され、又は併用されることもあること、投資(資産保有)会社ではネットアセット・アプローチによることが原則であることなどです。同資料自身が、この選択はあくまで一般論であり、実際の事案ではこれに沿わずに当該事案に適した手法が選択される場合もあると注記しています。
つまり、どの方式が用いられるかは、会社の業種、資産の構成、継続企業性、収益力、将来計画の合理性と検証可能性、配当政策、過去の株式取引、そして利用できる資料の質によって変わります。「自社にはこの方式が有利だ」と決めてかかるのではなく、会社の実態を説明できる資料が手元にあるかどうかから考えることになります。
複数の方式を併用する場合|加重割合は「折半」ではなく理由で決める
- 法令が加重割合を定めているわけではありません。どの事案にも当てはまる標準的な配分というものもありません。
- 裁判例で具体的な割合が採用されたことがあっても、それはその事件の会社の実態と提出された証拠を前提とする判断です。他の事案の相場として用いることはできません。
- 割合を先に決めて数字を当てはめるのではなく、各方式の信頼性、前提の違い、資料の質、会社の実態との適合性を評価したうえで、その理由から割合を説明する順序になります。双方の主張額の中間を取るための機械的な平均は、理由の説明になりません。
二重評価を避ける。同じ経済的要因を、複数の方式、加重割合、個別調整、ディスカウントの各段階で重ねて控除又は加算すると、実質的に同じ理由で二度減価又は増価したことになります。非事業用資産を純資産方式で加算しながらDCF法の側でも同じ資産の収益を織り込んでいないか、少数株主であることを理由とする減価と市場性がないことを理由とする減価を重ねていないか。算定書は、どの調整がどの理由に対応しているかを一つずつ確認することが有効です。
非流動性ディスカウント|最高裁令和5年5月24日決定の意味
決定が示した枠組み
非流動性ディスカウントとは、非上場会社の株式には市場性がなく容易に換金できないことを理由とする減価をいいます。会社法第144条第2項の手続でこれを行えるかについて、最高裁判所第三小法廷令和5年5月24日決定(令和4年(許)第8号、集民第270号113頁)が判断を示しました。
同決定は、この手続が譲渡に代わる投下資本の回収の手段を保障する趣旨であることを踏まえ、市場性がないことを理由に減価を行うことが相当と認められるときは、当該譲渡制限株式が任意に譲渡される場合と同様に非流動性ディスカウントを行うことができるとしました。そのうえで、「評価額の算定過程において当該譲渡制限株式に市場性がないことが既に十分に考慮されている場合には、当該評価額から更に非流動性ディスカウントを行うことは、市場性がないことを理由とする二重の減価を行うこととなるから、相当ではない」と述べています。本件では、原審(広島高等裁判所令和3年12月21日決定・平成30年(ラ)第103号)がDCF法による評価額から減価を行っており、その算定過程で類似上場会社の数値が用いられる一方、対象株式に市場性がないことが考慮されていることはうかがわれないとして、原審の判断が是認されました。
「一律で何割」という基準はありません。この決定は、減価の可否を採用された評価方法の算定過程と結びつけて判断したものです。事件ごとに認定された割合は、その事案の評価方法と証拠を前提とするものであり、相場でも標準値でもありません。算定書に減価が入っている場合は、割合の大小よりも先に、その評価方法の算定過程で市場性の欠如が既に考慮されていないかを確認してください。
組織再編の場面の決定との違い
これと対比されるのが、最高裁判所第一小法廷平成27年3月26日決定(平成26年(許)第39号、民集69巻2号365頁)です。同決定は、反対株主の株式買取請求(会社法第785条第1項)について裁判所が「公正な価格」を定める場面に関するもので、収益還元法によって算定された価格について、その評価手法に要素として含まれていない市場における取引価格との比較により更に減価を行うことは相当でないとしました。
令和5年決定はこれを「事案を異にし、本件に適切でない」として区別しています。判例が変更されたわけでも、二つの判断が矛盾しているわけでもなく、制度の趣旨と価格概念が異なるために扱いが分かれているという理解になります。組織再編の「公正な価格」に関する裁判例を、会社法第144条の売買価格の根拠として引用することはできません。
非流動性ディスカウント、少数株主ディスカウント、支配権プレミアムの区別
| 概念 | 理由 | 主に問題になる場面 | 適用上の注意 |
|---|---|---|---|
| 非流動性ディスカウント | 市場性がなく、容易に換金できないこと | 非上場株式の評価一般 | 評価方法の算定過程で市場性が既に十分考慮されていれば、更に控除すると二重の減価になる |
| 少数株主ディスカウント | 持株割合が小さく、会社の意思決定を左右できないこと | 支配株主と少数株主で株式の価値が異なると考える場合 | 非流動性とは理由が異なる。前提とする価格概念によって、そもそも考慮できるかが分かれ得る |
| 支配権プレミアム | 会社の意思決定を左右できること | 支配権を伴う株式の取引 | 少数株主ディスカウントの裏返しであり、両方を重ねて計上しない |
株価算定書のどこを確認するか
算定書が示されたときは、結論の金額だけでなくその前提を確認することが重要です。詳細な検証は評価実務に通じた者が行うことになりますが、当事者としても次の点を手がかりに読むことができます。
- 基準日は譲渡等承認請求の時と一致しているか。発行済株式総数、対象株式の数、自己株式の有無は正しいか。
- 純資産方式なら、どの資産をどう時価に修正したか。修正していない資産、非事業用資産や余剰資金の扱いはどうか。
- DCF法なら、事業計画は誰がいつ作成したものか。過去の予算と実績の差はどうか。割引率と永久成長率の根拠は示されているか。
- 複数の方式を併用しているなら、加重割合の理由が書かれているか。「実務慣行による」だけになっていないか。
- ディスカウントを行っているなら、その理由と、採用した評価方法との重複の有無が説明されているか。
よく問題になる場面
次の二つは、他の解説では扱われにくい一方、実際の相談では繰り返し問題になります。
退職時の買戻条項が争われる場面
従業員持株会や株主間契約で、退職時に取得価格と同額で買い戻す旨の合意が置かれていることがあります。この種の合意について、最高裁判所第一小法廷平成21年2月17日判決(平成20年(受)第1207号、集民第230号117頁)は、株式譲渡ルールの目的、非公開会社である当該会社の株式にもともと市場性がないこと、従業員が内容を認識したうえで自由意思により同額で取得していたこと、会社が多額の利益を計上しながら特段の事情もないのに一切配当を行っていないというような事情がないことなどの事情の下では、会社法第107条及び第127条の規定に反せず、公序良俗にも反しないとして、その合意を有効としました。
これは、そこで挙げられた事情の下での事例判断です。合意の目的、取得時と買戻時の条件の対称性、配当の有無といった事情が異なれば、結論も変わり得ます。買戻しを求められた場合は、合意書の文言だけでなく、株式を取得したときの経緯と条件、その後の配当や利益の状況もあわせて確認してください。
会社が自己株式として取得する場合の源泉徴収
会社が自ら買い取る場合、取得の対価のうち資本金等の額に対応する部分を超える金額はみなし配当となり得ます。供託がされた事案の源泉所得税の納期限について、東京国税局の文書回答事例(令和3年4月28日回答)があります。同事例は、売買価格が確定したときに供託した金銭に相当する額を限度として代金を支払ったものとみなされること(会社法第144条第6項)を踏まえ、供託金の額に係る部分は売買価格が確定したときの属する月の翌月10日、確定額が供託金を超える部分は差額を支払う日の属する月の翌月10日とする取扱いを、照会に係る事実関係を前提として差し支えないとしています。
文書回答事例の位置づけ。これは特定の照会の事実関係を前提とする回答であり、通達でも一般的なルールでもありません。同事例にも、事実関係が異なる場合には異なる課税関係が生ずることがある旨、及び東京国税局としての見解であり申告内容等を拘束するものではない旨が明記されています。個人か法人か、取得主体、取得の原因、資本等の額、価格の確定と支払の時期によって結論は変わりますので、税理士等による個別の確認が必要です。
手続前チェックリスト
株主・譲受人側
- 定款を取り寄せ、譲渡制限の定め、承認機関の別段の定め、みなし承認の定め、期間の短縮の定めを確認した。
- 履歴事項全部証明書で取締役会設置会社か株券発行会社かを、株主名簿で持株数と種類を、株券があればその所在を確認した。
- 譲渡等承認請求書に、買取りを請求する旨(会社法第138条第1号ハ又は第2号ハ)を記載したか、控えで確認した。
- 請求書の発送日と会社への到達日を示す資料(送付記録、受領印、電子メール等)を保存している。
- 会社からの通知書の通知の日と受領日を記録し、原本と封筒を保存している。供託を証する書面を受け取った場合は株券の供託期限(一週間)を確認した。
- 買取りの通知を受けた日から二十日の申立期限を記録し、提示額の算定根拠資料の有無を確認した。
会社・指定買取人側
- 請求書に、買取りを請求する旨の記載があるかを確認した。
- 請求の受領日を記録し、二週間の通知期限を管理している。
- 承認・不承認の決定を定款に沿った機関で決議し、議事録を作成した。
- 会社が買い取る場合は株主総会の特別決議を経ており、譲渡等承認請求者の議決権行使の制限(会社法第140条第3項)に対応した。指定買取人を指定する場合は定款に沿った機関で決議し、十日の通知期限を管理している。
- 供託額を会社法施行規則第25条の方法により算定して供託し、供託を証する書面を四十日又は十日の期間内に交付した。
- 会社が買主となる場合、分配可能額の範囲内であることを確認し、みなし配当と源泉徴収の要否を税理士等に確認する体制をとった。
- 協議の記録と、価格の算定根拠を示す資料を整理している。
なお、株主が会社の資料をどこまで見られるかは別の問題であり、会計帳簿の閲覧謄写請求などにはそれぞれ要件があります。資料が当然に開示される前提で進めず、必要な資料をどの手続で得るかを検討してください。
弁護士に相談するタイミング
この手続は、書面の記載事項と短い期間が結論を左右します。次の時点で確認しておくと、選択肢を残したまま進めやすくなります。
- 譲渡等承認請求を出す前。買取りを請求する旨を入れるか、譲渡先をどうするか、撤回できなくなる時点はいつかを整理できます。
- 請求を受け取った直後(会社側)、又は承認・不承認の通知を受け取った直後(株主側)。二週間、四十日、十日の期限管理と決議機関の確認を行えます。
- 買取りの通知、供託を証する書面、株価算定書を受け取ったとき。株券の供託の要否、二十日の申立期限、算定書の前提の検討に入れます。
- 価格の協議中で、申立期限が近づいているとき。協議を続けるか申立てを行うかを、期限との関係で判断できます。
- 会社が自己株式として取得する方針を決める前。分配可能額、決議、税務の検討順序を整理できます。
相談によって結果が保証されるわけではありませんが、どの手続のどの段階にいるのか、次に何をいつまでに行う必要があるのかを整理したうえで方針を検討することができます。
よくある質問
会社が譲渡を承認しなければ、必ず会社が買い取ってくれるのですか。
いいえ。会社法第140条第1項の買取義務は、請求の際に「承認しない場合には会社又は指定買取人が買い取ることを請求する」旨(第138条第1号ハ又は第2号ハ)が示されていることを前提としています。この記載がなければ、不承認となっても買取りの手続には進みません。まず提出した請求書の控えを確認してください。
買取りを請求されたとき、会社は買取りを拒否できますか。
できません。その記載のある請求を受けて不承認とした以上、会社は対象株式を買い取らなければなりません(第140条第1項)。残された選択は、承認するか、自ら買い取るか、指定買取人を指定するかです。期限内に通知や供託を証する書面の交付をしなければ、承認したものとみなされます(第145条、会社法施行規則第26条)。
売買価格の決定は、いつまでに申し立てる必要がありますか。協議中でも期限は進みますか。
買取りの通知があった日から二十日以内です(会社法第144条第2項。指定買取人の場合は同条第7項による読替え後の第142条第1項の通知があった日から)。協議中でも期間は進み、停止や延長の規定はありません。申立てがなく協議も調わなければ、一株当たり純資産額に対象株式の数を乗じた額が売買価格になります(同条第5項)。
非上場株式なので一律に何割かは減額される、と聞きました。
そのような一律の基準はありません。最高裁判所第三小法廷令和5年5月24日決定は、減価が相当と認められる場合には非流動性ディスカウントを行えるとする一方、評価額の算定過程で市場性がないことが既に十分考慮されているときは、更に減価することは二重の減価となり相当でないとしています。減価の可否と程度は、採用された評価方法とその算定過程によって変わります。
裁判所に申し立てると、鑑定は必ず行われますか。費用はどのくらいかかりますか。
鑑定人の選任には当事者の鑑定の申出と費用の予納が必要で、申出がなければ裁判所は鑑定人を選任できません。東京地方裁判所民事第8部の公表資料は、予納額は事案により様々であるとしたうえで、近年の例では数百万円程度が多いとし、小規模な同族会社の事案では費用面で鑑定になじまないことがあるとも述べています。運用は裁判所と事案により異なります。
承認を得ずに株式を買い受けてしまいました。契約は無効になりますか。
会社法は、承認のない譲渡について会社との関係で名義書換を請求できないことを定めていますが(第130条、第134条)、譲渡契約そのものを無効とする規定は置いていません。当事者間の効力と会社に対する関係は分けて考える必要があります。会社に対して権利を行使するには、第137条第1項の請求に進むことを検討します。
相続で取得した株式や、退職時の買戻しにも会社法第144条の手続は使えますか。
いずれも別の枠組みです。相続その他の一般承継による取得は譲渡による取得と扱いが異なり(会社法第134条第4号)、会社側からの相続人等に対する売渡請求という制度があります(第174条以下)。退職時の買戻しは、株主間契約や割当時の合意の解釈と有効性の問題です。根拠となる書面を確認して入口を判定してください。
まとめ
- 手続に進むには、譲渡等承認請求の段階で、承認しない場合に買い取ることを請求する旨を明らかにしておく必要があります。その記載のある請求を不承認とした会社は、買取り自体を拒めません。
- 二週間、四十日、十日、一週間、二十日という期限が連続します。四十日と十日は不承認の通知の日から、二十日は買取りの通知の日から起算します。
- 二十日以内に申し立てず協議も調わなければ、一株当たり純資産額に対象株式の数を乗じた額が売買価格になります。
- 裁判所は、譲渡等承認請求の時における会社の資産状態その他一切の事情を考慮して価格を定めます。税務上の評価額や簿価がそのまま結論になるとは限りません。
- 評価方法と加重割合に法定の答えはなく、会社の実態と資料の質から理由づけられるかが問われます。非流動性ディスカウントも、算定過程で市場性が既に十分考慮されていれば重ねて行うことは相当でないとされています。
- 次の行動として、定款、履歴事項全部証明書、請求書と通知書の控え、到達を示す資料、直近の計算書類を一か所にそろえ、受領日から残りの日数を数えてください。
譲渡制限株式の売買価格について検討したい方へ。株主の側でも会社の側でも、定款、請求書、通知書、供託関係の書面、算定書を確認することで、現在の段階と残された期間、次に準備すべき資料を整理できます。当事務所では弁護士・公認会計士が、会社法上の手続と株価算定の前提の双方から検討します。合意書に署名する前、申立期限が到来する前に一度ご確認ください。
神戸みらい法律会計事務所では初回の法律相談を無料としており、オンライン面談にも対応しています。ご予約いただいた場合は、お電話でご相談内容を確認のうえ、夜間・土日にも対応しています。営業時間は9時から20時、電話番号は078-797-5227です。
監修者・執筆者
本記事は、弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所(神戸市須磨区中落合)の代表弁護士・公認会計士 藤井貴之(兵庫県弁護士会所属、日本公認会計士協会兵庫会所属)が監修しています。所属・資格・取扱分野の詳細は弁護士紹介ページをご覧ください。
参考資料
- e-Gov法令検索「会社法」
- e-Gov法令検索「会社法施行規則」
- e-Gov法令検索「非訟事件手続法」
- e-Gov法令検索「民事訴訟費用等に関する法律」
- 裁判所「会社非訟事件等手続規則」
- 裁判所 裁判例検索「最高裁判所第三小法廷令和5年5月24日決定」
- 裁判所「最高裁判所第一小法廷平成27年3月26日決定」
- 裁判所 裁判例検索「最高裁判所第一小法廷平成21年2月17日判決」
- 東京地方裁判所民事第8部「非訟・過料係からのお知らせ(株式買取価格決定申立事件等における審理イメージ・評価手法の選択イメージ)」
- 裁判所「申立ての手数料」
- 東京国税局 文書回答事例「譲渡制限株式(自己株式)の取得対価を会社法第141条の規定に基づき供託した場合のみなし配当に係る源泉所得税の納期限について」
- 日本公認会計士協会「企業価値評価ガイドライン」
この記事は一般的な情報提供であり、個別の法律相談に代わるものではありません。実際の結論は、定款、株主名簿、請求書、通知書、供託関係の書面、計算書類、株価算定書などの資料と、事案の経緯によって異なります。手続を進める前に、資料を確認したうえで個別に検討してください。

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