「会社の決算書を見ても、役員報酬や貸付金の中身がよく分からない」「同族会社の株主だが、関連会社との取引や資金の流れに疑問がある」。このようなとき、株主が会社の取引内容そのものを確認する手段として、会計帳簿の閲覧・謄写(とうしゃ。コピーを取ることをいいます。)の請求があります。
もっとも、すべての株主が当然にすべての帳簿を見られるわけではありません。会社法は、一定の持株割合や請求理由の明示を求めており、会社が請求を拒める場合も定めています。この記事では、株主が会計帳簿の閲覧・謄写を請求する際の要件、対象となる資料、請求理由の書き方、会社が拒否できる場合、そして拒否されたときの対応までを、弁護士・公認会計士の視点から整理します。
Contents
この記事で分かること
- 会計帳簿の閲覧・謄写請求とは何か、決算書(計算書類)の閲覧とどう違うのか
- 請求できる株主の持株要件(100分の3)と、複数株主による合算の可否
- 請求理由をどの程度具体的に書く必要があるのか
- 総勘定元帳や仕訳帳のほか、領収書や契約書まで対象になり得るのか
- 会計の視点から、どの帳簿・資料を見れば疑問を確認できるのか
- 会社が請求を拒否できる場合と、拒否されたときの対応
- 請求前・相談前に準備しておくとよい資料
会計帳簿の閲覧・謄写をご検討中の株主の方へ
会計帳簿の閲覧・謄写請求は、持株要件や請求理由、対象資料の整理が結論を左右します。請求理由や対象資料を整理してから請求することで、見通しを立てやすくなります。神戸みらい法律会計事務所では、企業法務や株主間の紛争、会計資料が関係するご相談について、資料を確認したうえで請求理由・対象資料・今後の方針を整理します。
結論|要件と対象資料を整理してから請求することが重要です
先に要点を整理します。
- 会計帳簿の閲覧・謄写は、株主が会社の財産や業務の状況を取引レベルで確認するための重要な手段です(会社法第433条)。
- もっとも、すべての株主が当然にすべての帳簿を見られるわけではありません。議決権または株式の100分の3以上という持株要件があり、請求理由を明らかにする必要があります。
- 会社は、法律で定められた拒絶事由に当たる場合には、請求を拒むことができます。
- 「全帳簿を全期間」ではなく、確認したい事項に対応した期間・勘定科目・資料を特定することが、請求を通しやすくする観点からも重要です。
- 会社から拒否された場合や、株主間の紛争・役員の責任・株式評価などが絡む場合は、資料を整理したうえで弁護士に相談する価値があります。
- 個別事情により結論は異なります。請求前に一度、要件と対象資料を確認することをおすすめします。
会計帳簿の閲覧・謄写請求とは(会社法第433条)
制度の趣旨と少数株主権としての位置付け
会計帳簿の閲覧・謄写請求権とは、一定の持株割合を持つ株主が、会社に対して会計帳簿またはこれに関する資料の閲覧・謄写を求めることができる権利です(会社法第433条第1項)。これは、一定割合以上の株式を持つ株主に認められる少数株主権の一つです。
株主は、取締役の責任を追及する訴え(株主代表訴訟。会社法第847条)、違法行為の差止め(同第360条)、取締役の解任の訴え(同第854条)などにより、会社経営を監督・是正することができます。これらを適切に行うには、前提として会社の業務や財産の状況を正確に把握する必要があり、そのための情報取得手段として会計帳簿の閲覧・謄写が大きな意義を持ちます。
決算書(計算書類)の閲覧とどう違うのか
会社の財務情報を確認する制度には、大きく二つがあります。一つは計算書類等(決算書)の閲覧(会社法第442条)、もう一つが会計帳簿の閲覧・謄写(同第433条)です。両者は要件も対象も異なります。
| 項目 | 計算書類等の閲覧(第442条) | 会計帳簿の閲覧・謄写(第433条) |
|---|---|---|
| 請求できる人 | 株主・債権者(持株割合の制限なし) | 議決権または株式の100分の3以上を持つ株主 |
| 請求理由 | 不要 | 必要(理由を明らかにする) |
| 対象 | 計算書類・事業報告・これらの附属明細書 | 会計帳簿またはこれに関する資料 |
| 会社の拒否 | 原則として拒否できない | 法律上の拒絶事由があれば拒否できる |
計算書類(貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表)は、一事業年度の取引を集計した「結果」です。これに対し、会計帳簿(仕訳帳・総勘定元帳・補助簿など)は、個々の取引を継続的に記録したものです。決算書の数字に疑問があっても、その数字がどの取引から生じたのかは、会計帳簿や証憑(しょうひょう。請求書・領収書・契約書など取引を裏付ける資料)を見なければ分かりません。会計帳簿の閲覧・謄写は、この取引レベルの情報にアクセスするための制度といえます。
| 区分 | 主な書類 | 役割 | 主な根拠 |
|---|---|---|---|
| 計算書類(決算書) | 貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表 | 一事業年度の取引を集計した結果を示す | 会社法第435条 |
| 会計帳簿 | 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛金元帳など | 個々の取引を継続的に記録する | 会社法第432条 |
| 証憑(しょうひょう) | 請求書、領収書、契約書、通帳の写しなど | 取引の事実を裏付ける | 「会計帳簿に関する資料」として議論があります |
なお、会社法は、会社に対して適時に正確な会計帳簿を作成すること(第432条第1項)、会計帳簿の閉鎖の時から10年間その帳簿および事業に関する重要な資料を保存すること(同条第2項)を義務付けています。計算書類等についても作成と保存が義務付けられています(第435条)。
請求できる人の要件(持株割合・合算・保有期間)
会計帳簿の閲覧・謄写を請求できるのは、次のいずれかに当たる株主です(会社法第433条第1項)。
- 総株主の議決権の100分の3以上の議決権を持つ株主
- 発行済株式(自己株式を除きます。)の100分の3以上の数の株式を持つ株主
実務上、押さえておきたいポイントは次のとおりです。
- 合算は可能です。 単独では100分の3に満たない株主でも、複数の株主が共同し、合計で100分の3以上となれば、要件を満たして請求できると解されています。
- 定款で引下げが可能です。 定款で100分の3を下回る割合を定めている会社では、その割合で足ります。請求前に定款の確認が必要です。
- 保有期間の要件はありません。 会計帳簿の閲覧・謄写請求権については、公開会社であっても、株式を一定期間保有していることは要件とされていません。
- 自己株式は分母から除かれます。 発行済株式を基準とする場合、会社が保有する自己株式は除いて割合を計算します。
- 議決権を行使できない株主の扱い。 議決権を基準とする要件では、株主総会の全事項について議決権を行使できない株主は、総株主から除いて考えます。具体的な当てはめは株式の内容により異なるため、個別の確認が必要です。
請求した後に持株割合が要件を下回ると、請求権を失う場合があります。一方で、会社による新株発行など、株主に責められない事情で割合が下がった場合の扱いについては議論があり、事案により結論が異なります。なお、親会社の株主(親会社社員)が子会社の会計帳簿等を見たい場合には、裁判所の許可を得て請求できる仕組みがあります(第433条第3項)。
請求理由の書き方
どの程度具体的に書く必要があるか
会計帳簿の閲覧・謄写を請求するときは、請求の理由を明らかにする必要があります(会社法第433条第1項)。書面で行うことが法律上必須とされているわけではありませんが、後の紛争に備え、書面で請求するのが一般的です。
理由は、「不正が疑われる」「経営状況を知りたい」といった抽象的な記載では不十分とされる可能性があります。会社が、その理由を見て関連する会計帳簿を特定でき、かつ拒絶事由の有無を判断できる程度に、具体的に記載することが求められると考えられています。過去の裁判例でも、会社財産が適正に運用されているかを確認したい、という程度の一般的な記載では具体性を欠くとされたものがあります。
他方で、請求理由を裏付ける事実が客観的に存在することまで株主の側で立証する必要はない、と判断した最高裁判例があります(最高裁平成16年7月1日判決・民集58巻5号1214頁)。つまり、理由は具体的に書く必要がありますが、その理由を基礎づける事実の証明まで初めから求められるわけではない、と整理されています。もっとも、この点の評価は事案により異なり得るため、個別の検討が必要です。
請求理由の記載例(事案ごとの調整が前提)
請求理由は、確認したい事項・対象期間・対象勘定科目・対象資料を対応させて記載すると、対象帳簿が特定しやすくなります。たとえば、次のような方向性が考えられます。
- 役員報酬や役員への貸付けの相当性を確認し、取締役の責任追及の要否を検討するため、特定の事業年度の役員報酬・役員貸付金・仮払金に関する帳簿および関連資料を確認したい。
- 特定の関連会社との取引が適正な条件で行われているかを確認するため、当該取引に関する売上・仕入・外注費などの帳簿および関連資料を確認したい。
ただし、どのような理由をどこまで記載するかは、確認したい疑問の内容、保有資料、相手方との関係などにより変わります。記載の仕方が拒絶事由の判断にも影響し得るため、文例はあくまで方向性であり、事案ごとの調整が必要です。「不正がある」と決めつける表現ではなく、「不自然な点がないか確認し、説明を受けるための前提資料を整理する」という観点で組み立てることが穏当です。
閲覧・謄写の対象になり得る資料の範囲
対象は「会計帳簿又はこれに関する資料」です(会社法第433条第1項)。一般に、次のように整理されています。
- 会計帳簿の例 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、預金出納帳(当座預金出納帳など)、売掛金元帳、買掛金元帳、貸付金元帳、借入金元帳、固定資産台帳、有価証券台帳、商品有高帳などの補助元帳。
- これに関する資料の例 請求書、領収書、契約書、納品書、伝票、通帳の写し、銀行取引明細、振込記録、棚卸資料などが含まれ得ると考えられています。
もっとも、どこまでが「これに関する資料」に含まれるかは、事案により争いになり得ます。たとえば、法人税の確定申告書の控えが対象に含まれるかについては、これを否定した裁判例がある一方、含まれるとする学説も有力で、見解が固まっていません。また、業務上のメール、議事録、内部メモ、会計ソフトのデータやクラウド会計のログなどが対象になるかも、一律には決まりません。これらについては、対象性を個別に検討する必要があり、事案により結論が異なります。
なお、会計帳簿が電磁的記録(電子データ)で作成されている場合は、その記録された事項を法務省令で定める方法で表示したものについて、閲覧・謄写を請求することになります(第433条第1項第2号)。具体的な表示・出力の方法は確認が必要です。
会計の視点から見た確認ポイント(疑問別・対応資料)
決算書の数字に疑問があるとき、やみくもに全帳簿を求めるのではなく、「どの疑問を、どの勘定科目・帳簿・証憑で確認するか」を整理すると、請求理由と対象資料の対応が明確になります。問題になりやすい項目の例を整理します。
| 確認したい点 | 主に確認する勘定科目・帳簿 | 関連する証憑・資料の例 |
|---|---|---|
| 役員報酬が不相応に高くないか | 役員報酬、販売費及び一般管理費の内訳 | 株主総会・取締役会議事録、報酬に関する資料 |
| 会社から役員への貸付けがないか | 役員貸付金、短期貸付金、仮払金 | 金銭消費貸借契約書、振込記録、通帳の写し |
| 関連会社・関連当事者との取引が適正か | 売上、仕入、外注費、貸付金、未収入金 | 取引契約書、請求書、納品書 |
| 交際費・外注費に私的な支出が含まれていないか | 交際費、外注費、支払手数料 | 領収書、請求書、稟議書 |
| 在庫や固定資産の処分が適正か | 棚卸資産、固定資産、固定資産売却損益 | 棚卸資料、売買契約書、固定資産台帳 |
| 配当の前提となる利益が適正か | 繰越利益剰余金、純資産の部 | 計算書類、附属明細書 |
| 株式評価の前提資料を得たい | 各資産・負債の内訳、純資産 | 計算書類、補助元帳、評価に関する資料 |
これらはあくまで検討の出発点です。実際にどの帳簿・資料が対象になるか、また閲覧によって疑問が解消するかは、会社の規模や記帳方法、事案により異なります。計算書類はその事業年度の会計帳簿に基づいて作成されるため(会社計算規則第59条第3項)、決算書の数字から関連する勘定科目をたどり、補助元帳・証憑へと絞り込んでいく流れが、会計の視点からは合理的です。
請求理由と対象資料の整理にお悩みの方へ
「どの帳簿を、どの期間について求めればよいか分からない」というご相談は少なくありません。請求理由と対象資料の対応を整理することで、請求の見通しを検討しやすくなります。会計資料の読み解きが関係する企業法務のご相談について、弁護士・公認会計士の視点から方針を整理します。
請求の進め方(事前確認から閲覧実施まで)
読者が実際に動けるよう、一般的な流れを整理します。
- ① 株主としての地位と要件を確認する 株主名簿、株券(発行会社の場合)、議決権割合、発行済株式数、定款を確認し、100分の3以上の要件(または定款で引き下げられた割合)を満たすかを確認します。
- ② 何を確認したいかを整理する 決算書のどの数字・項目に疑問があるのかを言語化します。
- ③ 対象を絞る 疑問に対応する対象期間・対象勘定科目・対象資料を特定します。
- ④ 請求理由を具体化する 確認したい事項と対象資料が対応するように、請求理由を記載します。
- ⑤ 会社に書面で請求する 請求理由を明らかにした書面で請求します。送付方法は記録の残る方法が一般的です。
- ⑥ 閲覧の方法を調整する 閲覧の日時・場所、謄写(コピー)の方法、電子データの取扱い、写真撮影やデータ出力の可否などを会社と調整します。
- ⑦ 秘密情報への配慮 取引先情報や個人情報、営業秘密に関する配慮が必要になる場面があります。
- ⑧ 拒否された場合の検討 会社が拒否した場合は、拒否理由を確認し、請求理由・対象資料の補充や限定、交渉、法的手続を検討します。
会社が正当な理由なく請求に応じない場合、株主は会社を相手方として閲覧・謄写を求める訴えを提起することが考えられます。急ぐ場合には、仮処分を申し立てる方法が用いられることもあります。もっとも、いずれの手続が適切か、要件を満たすかは事案により異なるため、個別の確認が必要です。
会社が拒否できる場合(会社法第433条第2項の拒絶事由)
株主が要件を満たして請求した場合でも、会社は、次のいずれかに当たると認められるときは請求を拒むことができます(会社法第433条第2項)。これらは限定的に列挙された事由であり、会社が定款で拒絶事由を追加することはできないと解されています。
| 号 | 会社が拒否できる場合(要約) | 補足 |
|---|---|---|
| 第1号 | 株主の権利の確保・行使に関する調査以外の目的で請求したとき | 純粋な嫌がらせなど、権利行使と関係のない目的が想定されます |
| 第2号 | 会社の業務遂行を妨げ、株主共同の利益を害する目的で請求したとき | 不必要に大量の帳簿を求める場合などが議論されます |
| 第3号 | 請求者が会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、または従事するとき | 競争関係という客観的事実があれば足り、競業に利用する意図までは必要ないとした最高裁判例があります(最高裁平成21年1月15日判決) |
| 第4号 | 知り得た事実を、利益を得て第三者に通報するために請求したとき | 情報を売る目的などが想定されます |
| 第5号 | 過去2年以内に、第4号のような通報をしたことがあるとき | 過去の行為を理由とする拒絶事由です |
実際に拒絶事由に当たるかどうかは、個別事情により異なります。拒絶事由があることは、原則として会社側が主張・立証する必要があるとされています。また、請求理由との関連性がない部分や、すでに必要な資料の開示を受けたと認められる部分について、閲覧・謄写の範囲が制限された裁判例もあります。請求側としては、対象を請求理由と関連する範囲に整理しておくことが、無用な争点を避ける観点から有用です。
会社側が請求を受けた場合の注意点
株主から会計帳簿閲覧謄写請求を受けた会社(取締役・管理部門)としては、感情的に拒否する前に、次の点を確認することが考えられます。
- 請求者が持株要件(議決権または株式の100分の3以上、または定款で引き下げられた割合)を満たしているか。
- 請求理由が明らかにされているか、対象資料が特定されているか。
- 拒絶事由(第433条第2項各号)に当たり得る事情があるか。
- 営業秘密、個人情報、取引先情報をどのように保護するか。
- 閲覧の日時・場所、謄写の方法、立会いや記録化をどう設計するか。
正当な理由なく拒否すると、訴訟や仮処分に発展し、紛争が深刻化する可能性があります。一方で、拒絶事由に当たり得る場合や、対象範囲が過大な場合には、全面開示・一部開示・範囲調整のいずれを選ぶかを慎重に検討する必要があります。会社側の対応方針は、株主間の関係や背景事情によっても変わるため、対応を決める前に弁護士に確認する価値があります。
拒否された場合の対応(交渉・法的手続)
会社から拒否された場合に検討し得る対応を整理します。
- 拒否理由を書面で確認する どの拒絶事由を理由とするのか、対象のどの部分を拒否するのかを明確にします。
- 請求理由・対象資料を補充・限定する 関連性が問題とされた場合は、請求理由と対象資料の対応を整理し直します。
- 任意交渉を行う 閲覧の範囲や方法について調整の余地がないかを検討します。
- 法的手続を検討する 閲覧・謄写を求める訴え、急ぐ場合には仮処分の申立てなどが考えられます。
会計帳簿の閲覧・謄写は、それ自体が目的というより、取締役の責任追及、株主代表訴訟、株式の評価、相続や事業承継、会社支配権をめぐる争いなど、別の論点につながることが少なくありません。これらには、時効や期間制限、株主総会の日程など、期限が関係する場合があります。期限の有無や見通しは事案により異なるため、早めの個別確認が必要です。
相談前に準備すべき資料
弁護士に相談する際、次の資料があると、要件の充足や請求理由・対象資料の検討がスムーズになります。すべてが揃っていなくても相談は可能です。
| 区分 | 資料の例 |
|---|---|
| 株主としての地位を示すもの | 株主名簿、株券(発行会社の場合)、定款、登記事項証明書 |
| 会社の状況を示すもの | 過去の決算書(計算書類)、事業報告、株主総会の招集通知・議事録 |
| 疑問の内容を示すもの | 確認したい取引の一覧、関連するメールや通知、振込記録 |
| 会社とのやり取り | 請求書(案)、会社からの回答書・拒否通知 |
| その他 | 株主間契約、これまで会社から受けた説明資料 |
弁護士に相談するタイミング
次のような場面では、弁護士に相談することで、請求理由・対象資料・今後の方針を整理できます。結果を保証するものではありませんが、判断材料を整理する観点から有用です。
- 請求理由の書き方に迷うとき
- 対象資料の範囲が分からないとき
- 会社から閲覧・謄写を拒否されたとき
- 会社側として、請求を受けて対応方針を決めたいとき
- 株主間の紛争、役員の責任、相続、事業承継、M&A、株式評価、会計上の疑問の調査が関係するとき
- 示談書、合意書、株式譲渡契約、退任の合意などに署名する前
株主なら誰でも会計帳簿を見られますか?
いいえ。会計帳簿の閲覧・謄写を請求できるのは、議決権または株式の100分の3以上を持つ株主です(定款で割合が引き下げられている場合はその割合)。一方、決算書(計算書類)の閲覧は持株割合の制限なく株主・債権者が請求できます(会社法第442条)。両者は別の制度です。
100分の3未満の株主は請求できませんか?
単独で100分の3未満でも、複数の株主が共同し、合計で100分の3以上となれば請求できると解されています。また、定款でより低い割合が定められている会社もあります。まず定款と持株割合の確認が必要です。
会社に請求理由をどこまで説明する必要がありますか?
請求理由は明らかにする必要があります。会社が関連する帳簿を特定でき、拒絶事由の有無を判断できる程度に具体的であることが求められると考えられています。抽象的すぎると不十分とされる可能性があります。なお、理由を裏付ける事実の証明まで初めから求められるわけではないとした最高裁判例があります。記載の程度は事案により異なります。
総勘定元帳や仕訳帳だけでなく、領収書や契約書も見られますか?
「会計帳簿又はこれに関する資料」が対象とされ、請求書・領収書・契約書・伝票などが含まれ得ると考えられています。もっとも、どこまで含まれるかは事案により争いになり得ます。たとえば法人税の確定申告書の控えについては見解が分かれています。対象になるかは個別の検討が必要です。
会社から閲覧を拒否された場合はどうすればよいですか?
まず拒否理由を書面で確認し、請求理由や対象資料を整理し直すことが考えられます。任意の交渉で調整できない場合、閲覧・謄写を求める訴えや、急ぐ場合には仮処分の申立てを検討することになります。要件や手続の選択は事案により異なるため、個別の確認をおすすめします。
会社側はどのような場合に請求を拒否できますか?
会社法第433条第2項に定められた拒絶事由(権利行使と関係のない目的、業務妨害・株主共同の利益を害する目的、実質的な競争関係、利益を得ての通報目的、過去2年以内の通報歴)に当たると認められる場合です。これらに当たることは原則として会社側が立証する必要があるとされています。実際の当てはめは個別事情によります。
保有期間の要件はありますか?
会計帳簿の閲覧・謄写請求権については、公開会社であっても、株式を一定期間保有していることは要件とされていません。ただし、請求の時点で持株割合の要件を満たしている必要があります。
弁護士に相談するときは何を準備すればよいですか?
株主名簿、定款、登記事項証明書、過去の決算書、確認したい取引の一覧、会社とのやり取り(請求書案・拒否通知など)があると検討が進みやすくなります。すべて揃っていなくてもご相談は可能です。
まとめ
- 会計帳簿の閲覧・謄写は、株主が取引レベルで会社の状況を確認するための重要な手段です(会社法第433条)。決算書の閲覧(第442条)とは要件・対象が異なります。
- 請求できるのは、議決権または株式の100分の3以上を持つ株主です。複数株主の合算が可能で、定款で割合が引き下げられている場合もあります。保有期間の要件はありません。
- 請求理由は具体的に明らかにする必要があります。確認したい事項・対象期間・対象勘定科目・対象資料を対応させることが重要です。
- 会社は、法律上の拒絶事由に当たる場合には請求を拒めます。会計の視点から対象を絞り込み、関連性のある範囲で請求することが、無用な争いを避ける観点からも有用です。
- 拒否された場合や、役員の責任・株式評価・相続・事業承継などが絡む場合は、資料を整理して早めに弁護士へ相談しましょう。個別事情により結論は異なります。
会計帳簿の閲覧・謄写や株主間の紛争でお悩みの方へ
会計帳簿の閲覧・謄写請求は、請求理由と対象資料の整理が結論を左右します。会社から拒否された場合は拒否理由と資料を、会社側として請求を受けた場合は要件と拒絶事由を、それぞれ確認したうえで方針を整理することが重要です。神戸みらい法律会計事務所では、企業法務、株主間の紛争、会計資料が関係するご相談について、資料を確認したうえで請求理由・対象資料・今後の方針を整理します。
監修・執筆
弁護士・公認会計士 藤井 貴之(兵庫県弁護士会所属)
神戸みらい法律会計事務所 弁護士法人ひょうご支所
企業法務、株主間の紛争、会計資料の読み解きが関係するご相談に対応しています。弁護士・公認会計士の視点から、法律面と会計面の双方を踏まえてご相談をお受けします。
参考資料

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