交通事故の将来介護費とは|近親者介護・職業介護の違いと計算方法 |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|

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交通事故の将来介護費とは|近親者介護・職業介護の違いと計算方法

交通事故で遷延性意識障害や高次脳機能障害、脊髄損傷などの重い後遺障害が残り、「この先ずっと介護が必要になるのに、その費用は賠償してもらえるのか」「家族が無償で介護していても請求できるのか」という不安に直面されているご家族は少なくありません。食事や排泄の介助だけでなく、危険防止のための見守りや声かけ、夜間の対応まで含めると、介護の負担は長期間に及びます。

症状固定後の介護・見守りに要する費用は、「将来介護費」(将来付添費・将来介護料と呼ばれることもあります)として損害賠償の対象になり得ます。もっとも、法律で決まった固定額はなく、介護の必要性、誰がどのような体制で介護するのか、費用の相当性、期間、そしてそれらを裏付ける証拠によって、事案ごとに結論が変わります。家族による無償の介護でも請求できる可能性がある一方で、保険会社との間で最も金額差が生じやすい損害項目の一つでもあります。

この記事では、交通事故を取り扱う弁護士の視点から、症状固定前の付添費との違い、近親者介護と職業介護の評価の違い、両者の併用や将来の移行、施設介護、計算の仕組み(介護日額・期間・ライプニッツ係数)、必要な証拠、保険会社から指摘されやすいポイント、示談前の確認事項を整理します。

将来介護費は、示談の前に「介護体制」と「算定の前提」をどれだけ具体的に整理できるかで、検討の精度が大きく変わります。神戸みらい法律会計事務所では、介護日誌、医師意見書、ケアプラン、介護事業者の見積書、保険会社の損害計算書などの資料を確認したうえで、介護体制の整理と法律上の見通しの検討をお手伝いしています。資料がそろっていない段階でも、何から記録を始めるべきかからご相談いただけます。

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まず全体像:将来介護費は五つの要素で決まる

将来介護費が認められるかどうか、いくら認められるかは、自賠責保険の後遺障害等級だけで自動的に決まるものではありません。裁判実務では、おおむね次の五つの要素を、証拠に基づいて個別に検討します。

将来介護費の検討要素と主な資料
検討要素 検討する内容 主な資料
介護の必要性と事故との因果関係 後遺障害の内容から、どのような介護・介助・見守りが必要か。事故前の状態との差はどうか。 診断書、後遺障害診断書、診療録、看護記録、日常生活状況報告
将来も介護が必要となる蓋然性 症状固定後も介護の必要性が続く見込みがあるか。回復や増悪の見通しはどうか。 主治医意見書、リハビリ記録、退院支援計画
予定する介護体制が実施される蓋然性 誰が、どこで(在宅か施設か)、どの時間帯に介護するのか。その体制が現実に続けられるか、将来の変更(職業介護・施設への移行)は見込まれるか。 介護日誌、ケアプラン、家族の年齢・健康・就労の資料、事業者・施設の資料
介護内容・費用の相当性 介護の時間・人数・単価が、必要な介護の内容に照らして過大でないか。 事業者の料金表、複数の見積書、契約書、請求書・領収書
介護期間 いつからいつまでの介護を前提とするか(平均余命、医学的予後)。 簡易生命表、医師の意見、症状固定時の年齢・性別

「誰が、どこで、どの介護を、1日何時間・どの頻度で、いつまで行うのか」という将来の介護計画を具体的に描けているかどうかが、将来介護費を検討する出発点です。この軸に沿って資料を集めると、請求の根拠も、保険会社の提示の問題点も見えやすくなります。介護の内容は、食事、排泄、入浴、更衣、移乗、体位交換、移動・外出、服薬管理、医療的ケア、危険防止の見守り・声かけ、夜間対応などに分けて整理すると具体化しやすくなります。

将来介護費とは|症状固定前の付添費との違い

症状固定前の付添費(入院付添費・通院付添費・自宅付添費)

交通事故の損害賠償では、「付添費」という言葉が、治療中(症状固定前)の入院・通院・自宅療養への付添いの費用と、症状固定後の介護の費用の両方の意味で使われることがあります。この記事では、症状固定前のものを「付添費」、症状固定後のものを「将来介護費」と呼び分けます。

症状固定前の付添費は、医師の指示があった場合や、受傷の程度、被害者の年齢(幼児など)、症状から付添いの必要性が認められる場合に、入院付添費・通院付添費・自宅付添費として賠償の対象になり得ます。実際に認められるかどうかや金額は、病院の看護体制、実際に行った付添いの内容、事故との因果関係などにより個別に判断されます。症状固定の意味や、症状固定と言われたときの対応は、症状固定と言われた場合の示談前の確認事項を解説した記事をご覧ください。

症状固定後の将来介護費の法的な位置づけ

将来介護費は、後遺障害により症状固定後も介護・介助・見守りが必要になる場合の費用であり、不法行為に基づく損害賠償(民法第709条)や運行供用者責任(自動車損害賠償保障法第3条)に基づく損害の一項目として請求します。逸失利益や後遺障害慰謝料とは別の損害項目であり、併せて請求できますが、同じ時間・行為・支出を複数の項目で二重に計上することはできません。

また、介護費は原則として被害者本人の損害として整理されます。家族が介護のために仕事を休んだ・退職した場合の休業損害等と、同じ時間帯の介護費とを単純に両方積み上げることはできず、どのような構成で請求するかは事案ごとの検討が必要です。

自賠責の「介護を要する後遺障害」(別表第一)との関係

自賠責保険の後遺障害等級は、自動車損害賠償保障法施行令の別表で定められています。このうち別表第一は「介護を要する後遺障害」の等級で、神経系統の機能又は精神(各級の第1号)、胸腹部臓器の機能(各級の第2号)に著しい障害を残し、常に介護を要するものが第1級、随時介護を要するものが第2級とされています。自賠責保険の限度額は次のとおりです。

自賠責保険の後遺障害等級と保険金額(限度額)
区分 内容 保険金額(限度額)
別表第一 第1級 神経系統の機能又は精神(第1号)又は胸腹部臓器の機能(第2号)に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 4,000万円
別表第一 第2級 同上の障害を残し、随時介護を要するもの 3,000万円
別表第二 第1級〜第14級 介護を要する後遺障害以外の後遺障害 3,000万円〜75万円

ここで注意が必要なのは、自賠責の等級認定と、民事の損害賠償における将来介護費の判断は、別の判断だということです。別表第一の等級は将来介護費を検討するうえで重要な資料ですが、自賠責の認定が裁判所の判断を機械的に拘束するわけではありません。別表第一の第1級・第2級に該当しなければ一切認められないというものではなく、たとえば高次脳機能障害で別表第二の等級となった場合でも、危険防止のための見守りや声かけの必要性を具体的に立証して、将来の介護・見守り費用が認められる可能性があります。逆に、等級が認定されていても、介護の内容や体制の裏付けが乏しければ、金額を大きく争われることがあります。

遷延性意識障害(植物状態)の後遺障害等級、療護施設と在宅介護、成年後見の全体像は植物状態(遷延性意識障害)の等級・介護・成年後見を解説した記事を、脊髄損傷の等級と「常に介護」「随時介護」を検討する資料は脊髄損傷の後遺障害を解説した記事をご覧ください。また、高齢の方で事故前から介護を受けていた場合の、事故前後の介護状態の比較や既往症の影響については、高齢者の交通事故の介護費・付添費を解説した記事で扱っています。

誰が介護するか|近親者介護・職業介護・併用・施設介護

将来介護費の検討では、介護の担い手によって、費用の考え方と必要な立証が変わります。この記事では、配偶者・親・子などの家族が行う介護を「近親者介護」(家族介護と同じ意味で使います)、介護事業者のヘルパーや付添業者など報酬を得て介護を行う者(職業介護人・職業付添人)による介護を「職業介護」と呼びます。

近親者介護(家族介護)の評価

家族が無償で介護している場合、「実際にお金を払っていないのだから損害はないのではないか」と思われるかもしれません。しかし、最高裁は、交通事故の被害者が近親者の付添看護を受けた事案で、現実に看護料を支払っていなくても、被害者は近親者の付添看護料相当額を自己の損害として賠償請求できると判断しています(最高裁昭和46年6月29日判決)。介護という労働には経済的な価値があり、家族だから無償で行っているという事情による利益を加害者側に及ぼすべきではない、という考え方です。

この判例は受傷後の付添看護に関するものですが、無償であることだけを理由に損害性が否定されないという考え方は、症状固定後の近親者介護の評価においても実務上参照されています。もっとも、この判例から、将来の介護期間・日額や、職業介護への移行、施設介護費まで当然に導かれるわけではありません。近親者介護の金額に固定の日額はなく、裁判実務で参照される算定基準の目安を出発点に、介護の内容(身体介助か見守り中心か)、1日の介護時間、夜間対応の有無、介護者の負担の程度などによって増減が検討されます。介護日誌などで実際の介護内容を記録しておくことが、評価の裏付けになります。

職業介護(職業付添人・ヘルパー等)の評価

職業介護は、実際に支払う(支払う予定の)費用を基礎に検討されます。ただし、契約書や見積書の金額がそのまま全額認められるわけではありません。必要な介護の内容・時間に対して利用時間や人数が過大でないか、単価や夜間・休日等の加算が地域の水準に照らして相当か、公的サービスで賄われる部分と重複していないかが検討されます。「24時間×時給」という単純な計算は、実際に必要な介護・見守りの内容と対応していなければ、そのままでは認められにくいと考えられます。

職業介護を前提に請求する場合は、契約書、利用票、請求書・領収書、料金表に加え、複数の事業者の見積書で必要時間・時間帯・加算を明示しておくと、相当性の説明がしやすくなります。必要な時間帯(特に夜間・休日)のサービスを地域で実際に確保できるのかも、体制の実現性として確認されます。

併用型・移行型の介護計画

実際の介護は、近親者介護か職業介護かの二択ではありません。次のような併用・移行の計画が重要な検討類型になります。

  • 平日の日中は職業介護(ヘルパー等)、夜間や休日は近親者介護という役割分担
  • 訪問介護などの公的サービスを利用しながら、残りの時間を近親者が介護する併用
  • 当面は近親者介護とし、介護者の高齢化などを見据えて、将来の一定時期から職業介護へ移行
  • 在宅介護から、将来の施設介護へ移行

介護者である家族が高齢になれば、いつまでも同じ介護を続けられるとは限りません。将来の職業介護への移行を前提とする請求では、介護者の年齢、健康状態、就労、同居の状況、交替できる家族の有無、地域のサービス供給などの資料で、移行の蓋然性を具体的に示すことがポイントです。介護者が特定の年齢に達したら自動的に切り替わるという決まりはなく、事案ごとの立証の問題です。

在宅介護と施設介護

在宅か施設かは、後遺障害の内容と医療的ケアの必要性、住宅の状況(改修の要否)、家族の介護力、地域の施設の受入れ状況、本人・家族の意向などから、将来その体制が実際に実施される見込みがあるかという観点で検討されます。施設介護では、利用料のうち事故がなくても必要だった食費などの生活費に当たる部分の扱いという論点もあり、費目の整理が必要です。住宅改修費や福祉用具の費用は、将来介護費とは別の費目として検討します(後述)。

近親者介護と職業介護の比較
比較項目 近親者介護(家族介護) 職業介護(職業付添人・ヘルパー等)
介護の担い手 配偶者・親・子などの家族 介護事業者のヘルパー、付添業者などの職業介護人
想定する介護内容・時間帯 身体介助に加え、見守り・声かけ・夜間対応など生活全体に及びやすい 契約で定めた時間・内容(身体介護・生活援助・夜間巡回など)
費用算定の基礎 介護の対価としての日額評価(固定額の定めはなく、内容・負担により増減) 実費(契約単価×必要時間)を基礎に、必要かつ相当な範囲
必要性・相当性の主な資料 介護日誌、タイムスタディ、医師意見書、日常生活状況報告 契約書、利用票、請求書、料金表、複数の見積書、ケアプラン
将来実施される蓋然性 介護者の継続可能性(年齢・健康・就労・同居)が問われる 地域での供給可能性、必要時間帯の確保、費用負担の現実性が問われる
介護者の年齢・健康・就労の影響 大きい(高齢化・体調・仕事との両立が争点になりやすい) 直接は小さい(ただし費用の相当性は争点になる)
夜間・休日・交替への対応 家族の負担が集中しやすく、休息・交替の確保が課題 夜間・休日は加算や人員確保が課題。サービス提供体制の確認が必要
併用の可能性 平日は職業介護・休日は近親者介護、公的サービスとの併用、将来の移行など、組合せを介護計画として示すことができる
主な争点 日額の評価、介護時間・内容の裏付け、継続可能性 時間・人数・単価の相当性、公的給付との重複、体制の実現性

将来介護費の計算方法

基本の計算式

将来介護費を一時金で受け取る場合の基本的な考え方は、次の式で説明できます。

将来介護費=介護日額×年間の介護日数×介護期間に対応するライプニッツ係数

これは一時金方式をわかりやすく説明するための概念式です。実際には、いつを基準に計算するか(算定基準時)、介護がいつ始まるか、年間何日の介護を見込むか、介護体制が期間の途中で変わるか、公的サービスをどこまで前提にするか、どの費目に何を含めるかによって計算は変わります。

介護日額の考え方

近親者介護の日額に、法律で決まった固定額はありません。実務では、公刊の算定基準に示された目安を出発点に、介護の内容や負担の程度に応じた増減が検討されます。職業介護の日額(又は年額)は、契約単価と必要時間から積み上げた実費相当額を基礎に、必要かつ相当な範囲で検討されます。併用型では、職業介護の利用分と近親者介護の分担分を分けて積算します。

年間の介護日数は、在宅で毎日介護する前提であれば365日とされることが多い一方、施設や通所サービスの利用日、職業介護の利用予定日数によっては、実際の日数・予定日数で計算します。機械的に365日とするのではなく、介護計画との整合を確認してください。

介護期間と平均余命

介護期間は、原則として、症状固定時(又は算定基準時)の被害者の年齢・性別に対応する「平均余命」までの期間を基礎に検討されます。平均余命は、厚生労働省が公表する簡易生命表・完全生命表で確認でき、この記事の確認時点(2026年9月)では令和7年簡易生命表が最新です。「平均寿命」は0歳の平均余命のことであり、症状固定時の年齢の平均余命とは異なる点に注意してください。

保険会社側から、後遺障害の内容や合併症を理由に、平均余命より短い期間を主張されることがあります。期間短縮の主張にも、その反論にも医学的な資料(主治医の意見等)が必要であり、介護期間は将来介護費の主要な争点の一つです。

なお、事実審の口頭弁論終結前に、被害者が交通事故とは別の原因で死亡した場合について、死亡後の期間の介護費用は損害として請求できないとした最高裁判例があります(最高裁平成11年12月20日判決)。介護費用の賠償は現実に支出すべき費用を補うものであり、死亡後の分まで加害者に負担させることは衡平に反する、という理由によるものです。将来の逸失利益の扱いとは異なる整理がされており、この判例は当該事案の局面に関する判断ですので、一般化には注意が必要です。

中間利息控除とライプニッツ係数

将来の介護費を一時金でまとめて受け取ると、本来は将来支出するはずのお金を先に運用できることになります。そこで、その利息に相当する分をあらかじめ差し引く「中間利息控除」を行います。このときに使う係数がライプニッツ係数(年金現価係数)です。中間利息控除は、損害賠償請求権が生じた時点(交通事故の場合は事故時)における法定利率で行うと定められています(民法第417条の2、第722条第1項)。

法定利率は、令和2年4月1日施行の民法改正により年3%となり、3年ごとに見直されます(民法第404条)。法務省の告示により、令和8年4月1日から令和11年3月31日までの期間も年3%に据え置かれています(2026年9月確認)。令和2年4月1日以降に発生した交通事故には年3%を、令和2年3月31日以前の事故には改正前の年5%を適用するため、事故日の確認が出発点になります。

たとえば、介護期間30年・年3%の場合のライプニッツ係数は約19.600です。年額100万円の介護費を前提にすると、単純に30倍した3,000万円ではなく、約1,960万円が一時金の目安になります(説明用の計算例です。実際の金額は事案により異なります)。

介護体制が変わる場合の段階別計算

「当面は近親者介護、将来は職業介護へ移行」という介護計画を前提とする場合は、期間を分けて計算します。考え方を式で示すと、次のようになります。

将来介護費=当初期間の年間介護費×当初期間の係数+移行後の年間介護費×(全期間の係数-当初期間の係数)

【説明用の計算例】症状固定時の年齢に対応する平均余命までの介護期間を40年とし、当初20年間は近親者介護(年額A円)、その後の20年間は職業介護(年額B円)を予定する場合(適用される法定利率を年3%とします)、将来介護費=A円×14.878+B円×(23.115-14.878)=A円×14.878+B円×8.237となります。14.878は20年、23.115は40年に対応するライプニッツ係数です(小数第4位を四捨五入)。

この係数の差を使う計算は、同じ算定基準時・同じ法定利率・同じ生命表に基づく連続した期間が前提です。介護の開始が算定基準時より後になる場合や年の途中から始まる場合、支払の時期・頻度が期間によって異なる場合は、期間ごとに個別の計算が必要です。また、症状固定後でも、示談や判決の基準時までに既に行われた介護は実際の内容・支出に基づき中間利息控除をせずに計算し、基準時より後の分だけを将来介護費として現在価値に引き直すのが一般的な整理です。示談と訴訟で基準時の取り方が異なることもあるため、どの時点を基準にした計算かを確認してください。

賠償金の受取り方には、一時金のほか、毎月・毎年など定期的に支払を受ける「定期金賠償」があります。最高裁は、後遺障害逸失利益について定期金による賠償を命じ得ることを認めましたが(最高裁令和2年7月9日判決)、この判決は将来介護費そのものを判断したものではありません。将来介護費の定期金賠償は、請求の内容や事案により判断が分かれ得る領域です。定期金賠償を命じた確定判決は、後遺障害の程度など算定の基礎事情に著しい変更が生じた場合に変更の訴えの対象となる制度があります(民事訴訟法第117条)。なお、中間利息控除は将来分を一時金で先に受け取る場合の計算であり、定期金賠償にこの控除の計算式をそのまま当てはめることはできません。定期金には実態に応じた支払という利点がある一方、長期の回収可能性や紛争の終局性などの考慮も必要であり、一時金とどちらを選ぶかは慎重な検討が必要です。

介護日額・期間・係数のどれか一つが変わるだけで、将来介護費の計算結果は大きく変わります。保険会社の損害計算書に将来介護費が入っていない、入っていても日額や期間の前提がわからないという場合は、示談の前に計算の前提を確認することをおすすめします。当事務所では、交通事故の後遺障害に関するご相談で、介護体制と算定の前提を資料に基づいて整理しています。

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将来介護費の立証に必要な証拠

将来介護費は、「どの資料で何を証明するか」を意識して準備することが重要です。主な証拠と証明の対象を整理します。

主な証拠と証明の対象
資料 何を証明するか
診断書、診療録、看護記録、リハビリ記録、退院支援計画 傷病・後遺障害の内容、ADL(日常生活動作)の状況、介護・見守り・夜間対応・医療的ケアの必要性と継続性
後遺障害診断書、等級認定資料、日常生活状況報告、FIM・Barthel Indexなどの評価表 後遺障害の状態と、具体的な生活上の制限の程度
主治医意見書 介護の必要性・内容・頻度、将来の見通しについての医学的裏付け
介護日誌、タイムスタディ(時間帯ごとの介護記録)、事故前後の生活記録、必要に応じた写真・動画 実際の介護内容、頻度、所要時間、見守り・声かけ、夜間対応、家族の負担
要介護認定の認定調査票、ケアプラン、サービス利用票 現在の介護状態、利用中のサービスの種類・量、支援の必要性
介護事業者との契約書、請求書・領収書、料金表、複数の見積書 職業介護の実績と将来費用、必要時間、地域での提供可能性
家族の年齢・健康状態・通院状況・勤務状況・同居関係がわかる資料 近親者介護の継続可能性、職業介護・施設介護へ移行する必要性
住宅の図面・写真、家屋評価、福祉用具の仕様・見積書 在宅介護の実現可能性と、住宅改修費・福祉用具費など別費目の必要性
公的給付の決定通知・支給明細、第三者行為届の控え 受けている給付の性質・対象・自己負担額と、賠償との調整関係
保険会社の損害計算書・示談案 将来介護費が計上されているか、日額・期間・係数・控除の前提が何か

要介護認定の結果やFIM・Barthel Indexなどの評価点、自賠責の等級は、それぞれ制度の目的と評価対象が異なり、単独で将来介護費を決める資料ではありません。特に高次脳機能障害の見守り・声かけ、危険行動や夜間の対応は数値評価に表れにくいため、介護日誌に日付・時間帯・介護内容・本人の様子・夜間対応の回数を簡潔に記録しておくだけでも、立証資料として意味があります。喀痰吸引などの医療的ケアが必要な場合は、誰がどの行為を行えるのか(資格・研修、医師の指示)と、看護費用と介護費用の区分も確認してください。後遺障害診断書を作成してもらう前の準備は、後遺障害診断書の作成前に確認したい資料を解説した記事もご参照ください。

保険会社から指摘されやすいポイント

将来介護費について、保険会社側からは次のような指摘がされることがあります。いずれも、あらかじめ対応する資料を意識しておくと、示談交渉での検討がしやすくなります。

想定される指摘と対応の視点
想定される指摘 対応の視点・資料
医学的に介護の必要性が乏しい。ADLは自立している 主治医意見書、看護・リハビリ記録、日常生活状況報告で、介助・見守りが必要な場面を具体的に示す
家族による通常の家事・援助の範囲であり、介護とはいえない 介護日誌・タイムスタディで、事故前にはなかった介護・見守りの内容と時間を事故前と対比して示す
介護時間・人数・単価が過大である ケアプラン、複数の見積書、料金表で、必要時間と単価の相当性を裏付ける
同じ時間帯の介護が重複計上されている 時間帯ごとの分担表を作り、近親者介護・職業介護・公的サービスの重複がないことを整理する
公的サービスや施設で代替でき、費用はそちらで賄われる 公的給付の対象・支給量・自己負担・将来の継続性を決定通知等で確認し、賄われない部分を特定する
既往症や事故前からの介護状態の影響がある 事故前の診療記録・介護記録と対比し、事故により新たに必要となった介護の範囲を示す
近親者介護の継続や職業介護への移行が現実的でない 介護者の年齢・健康・就労の資料、事業者の見積り・受入れ見込みで、体制の実現性を示す
介護期間(余命)や係数・利率の前提が不適切である 簡易生命表と症状固定時年齢、事故日に適用される法定利率を確認し、医学的予後の主張には医証で対応する
過失相殺や素因減額により減額されるべきである 過失割合・素因の主張の根拠を確認し、将来介護費への影響を計算のうえで検討する

これらの指摘には、根拠のあるものも、前提を確認すべきものもあります。指摘されたから諦めるのではなく、また請求すれば必ず認められると考えるのでもなく、資料に基づいて一つずつ検討することが大切です。

介護保険・NASVA介護料など公的給付・他の費目との関係

公的給付との関係は制度ごとに確認する

介護に関する公的な給付・支援には、介護保険、障害福祉サービス(障害者総合支援法)、労災保険の介護(補償)等給付、NASVA(独立行政法人自動車事故対策機構)の介護料などがあります。これらと損害賠償の関係は、「必ず控除される」「一切控除されない」と一律に決まるものではなく、制度ごとに、給付の法的性質、賠償と同一の費目・期間に対応するか、既に支給された分か将来の給付か、自己負担がいくらか、市町村等が加害者側へ求償する仕組みかを確認して整理します。

介護保険は、65歳以上の方(第1号被保険者)は原因を問わず要介護認定を受けて利用できますが、40歳以上65歳未満の方(医療保険に加入する第2号被保険者)は、要介護状態の原因が加齢に伴う特定疾病による場合に限られるため(介護保険法第7条第3項・第9条)、交通事故による外傷を原因とする場合は利用できないのが原則です。40歳未満の方は介護保険の被保険者ではなく、障害福祉サービスの利用を検討することになります。交通事故が原因で介護保険サービスを利用する場合は、市町村へ第三者行為による届出が必要とされており(介護保険法施行規則第33条の2)、神戸市でも案内と様式が公開されています(2026年9月確認)。市町村が保険給付を行ったときは、その価額の限度で被害者の損害賠償請求権を取得する(加害者側に求償する)仕組みがあり(介護保険法第21条)、賠償と給付の調整が行われます。

NASVAの介護料は、自動車事故により脳・脊髄・胸腹部臓器を損傷し、重度の後遺障害のため日常生活動作に常時又は随時の介護が必要な方を対象とする支援制度で、在宅で介護を受ける方のヘルパー利用料や介護用品購入費などの介護費用を対象に、障害の程度に応じた種別ごとの月額の範囲内で支給されます(2026年9月確認時点で月額42,700円〜226,330円の範囲。金額・要件は変更されることがあります)。親族が行う介護は支給対象外とされている点に注意してください。通勤中・仕事中の事故では、労災保険の介護(補償)等給付が問題になることもあります。このほか、障害年金や、被害者側が契約する人身傷害保険・傷害保険などの給付についても、定額で支給されるものか、実際の損害を埋め合わせるものかといった性質により、賠償との調整の要否・範囲が異なります。いずれの制度も、損害賠償との調整(どの費目から、いつの分を差し引くか)は個別の確認が必要であり、示談の前に受給の有無・金額・期間の資料をそろえて整理することをおすすめします。

また、職業介護の見積額を全額請求しながら、同じサービスを公的給付で賄う前提を重ねると、二重計上の指摘を受けます。公的給付を前提にする場合は、給付で賄われる部分と自己負担・自費部分を分け、将来も同じ給付水準が続くかを含めて計算の前提を明示することが重要です。

介護費とは別に検討する費目

次の費用は、将来介護費(介護の人件費・労働の評価)とは別の費目として、それぞれ必要性・金額・期間・更新の要否を検討します。

  • 介護雑費(おむつなどの消耗品)
  • 将来の治療費、訪問看護・リハビリの費用
  • 通院・通所の交通費、介護のための車両関係費
  • 福祉用具(介護ベッド・車いす等)の購入・修理・更新の費用
  • 住宅改修費(バリアフリー化等)
  • 施設介護の場合の施設利用料(生活費に当たる部分との区分が必要)
  • 成年後見の申立てや財産管理に関する費用

これらは将来介護費と併せて請求し得ますが、同じ支出を複数の費目で重ねて計上しないよう、費目の対応関係を整理しておく必要があります。逸失利益・後遺障害慰謝料と将来介護費は別の損害項目として併存し得ます。

示談前チェックリスト

保険会社から損害計算書や示談案の提示を受けたら、署名の前に次の点を確認してください。すべてがそろっていなくても、確認の過程そのものが交渉の材料になります。

  • 症状固定の時期と、後遺障害等級の認定資料(別表第一か別表第二か)を確認したか
  • 事故前と事故後のADL・生活状況の違いを資料で示せるか
  • 現在の介護について、誰が・どこで・何を・週何日・1日何時間行っているか、夜間対応を含めて整理したか
  • 将来の介護計画(在宅か施設か、近親者か職業介護か、併用・移行の時期)を具体的に描いたか
  • 主治医意見書・介護日誌・ケアプラン・サービス利用票をそろえたか
  • 職業介護の料金表・複数の見積書・契約書・領収書を集めたか
  • 介護者(家族)の年齢・健康・就労と、交替できる人の有無を整理したか
  • 介護期間の前提(平均余命・症状固定時年齢)と、使われている生命表を確認したか
  • 事故日に適用される法定利率と、ライプニッツ係数・期間分割の計算を確認したか
  • 公的給付(介護保険・障害福祉・労災・NASVA介護料等)の受給状況・自己負担・第三者行為届を確認したか
  • 介護雑費・住宅改修・福祉用具など別費目との重複計上がないか確認したか
  • 保険会社の損害計算書に将来介護費が計上されているか、日額・日数・期間・係数の前提を確認したか
  • 示談書の清算条項の範囲と、将来の追加請求の可否を確認したか

被害者本人の意思能力に疑いがある場合(遷延性意識障害や重度の高次脳機能障害など)は、家族であっても当然に本人を代理して示談できるわけではありません。示談書への署名、賠償金の受領、訴訟の前に、成年後見制度の利用など適法な代理の確認が必要になることがあります。本人と家族の双方が請求権を持つ場合の利益相反にも注意が必要です。成年後見と賠償金の管理については、植物状態(遷延性意識障害)の後遺障害と成年後見を解説した記事で概要を説明しています。

請求の期限(消滅時効)にも注意

請求権の種類と期間制限の目安
請求権の種類 期間の目安と根拠
加害者側に対する損害賠償請求(不法行為) 人の生命・身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、損害及び加害者を知った時から5年(民法第724条第1号・第724条の2)、不法行為の時から20年(同条第2号)。後遺障害部分は症状固定時が起算の目安とされることが多いものの、個別の確認が必要
自賠責保険への被害者請求(自動車損害賠償保障法第16条第1項) 損害及び保有者を知った時から3年(同法第19条)。後遺障害部分は症状固定日の翌日から3年以内とされる(国土交通省の案内・2026年9月確認)
任意保険に関する請求(自身の契約の特約・無保険車傷害等) 契約・約款により異なるため、証券・約款で個別に確認

令和2年4月1日より前の事故には、時効に関する改正前の規定と経過措置の確認が必要です。自賠責の被害者請求も、平成22年3月31日以前の事故では請求できる期間が3年ではなく2年とされるなど、事故日により扱いが異なります(国土交通省の案内)。示談交渉が続いていても時効は当然には止まらないため、期限が近い場合は、完成猶予・更新の手当て(協議の合意、裁判上の請求等)を検討してください。

弁護士に相談するタイミングと持参資料

将来介護費の相談に適したタイミングは、①後遺障害の申請(被害者請求・事前認定)の前、②退院・在宅移行や介護体制を決める前、③保険会社から損害計算書・示談案を受け取った直後、④示談書に署名する前です。介護体制が固まる前にご相談いただくと、どの記録を残すか、どの資料を集めるかから整理でき、選択肢が広がります。

ご相談の際は、交通事故証明書、診断書・後遺障害診断書、等級認定の通知、介護日誌(なければ最近の介護内容のメモ)、ケアプラン・サービス利用票、介護事業者の契約書・見積書・領収書、公的給付の決定通知、保険会社からの損害計算書・示談案など、手元にある資料をお持ちください。すべてそろっていなくても差し支えありません。相談により、介護体制の整理、証拠の集め方、日額・期間・係数といった算定の前提、公的給付との調整、示談案の検討点を整理できます。結論は資料と個別事情によって変わるため、相談の時点で結果をお約束することはできませんが、何を確認すれば見通しを検討できるかを明確にできます。

なお、ご自身やご家族の自動車保険に弁護士費用特約が付いている場合は、相談料や弁護士費用が特約から支払われることがあります。補償の対象者・限度額・利用の流れは、弁護士費用特約を使う前に確認すべき事項を解説した記事をご覧ください。

よくある質問

将来介護費は、自賠責の後遺障害等級だけで決まりますか。
決まりません。自賠責の等級(特に別表第一)は重要な資料ですが、民事の損害賠償では、介護の必要性、介護体制、費用の相当性、期間を証拠に基づいて個別に判断します。等級が同じでも、立証の内容によって金額は変わります。
別表第一の第1級・第2級に該当しない場合でも、将来介護費を請求できますか。
請求できる可能性があります。たとえば高次脳機能障害で別表第二の等級となった場合でも、危険防止のための見守りや声かけの必要性を具体的に立証して、将来の介護・見守り費用が認められることがあります。認められるかどうかは個別事情により異なります。
家族が無償で介護している場合も、将来介護費は認められますか。
認められる可能性があります。最高裁判例は、現実に看護料を支払っていなくても、近親者の付添看護料相当額を被害者の損害として請求できるとしています。ただし、金額・期間は介護の内容や負担の立証によって変わるため、介護日誌などの記録が重要です。
職業介護人(ヘルパー等)の見積額や実費は、すべて認められますか。
当然に全額が認められるわけではありません。必要な介護内容に対して時間・人数・単価が過大でないか、公的サービスと重複していないかが検討されます。複数の見積書や料金表で相当性を裏付けることが重要です。
将来介護費は、何歳まで・いつまでの分を計算しますか。
原則として、症状固定時(又は算定基準時)の年齢・性別に対応する平均余命までの期間を基礎に検討されます。平均寿命(0歳の平均余命)とは異なります。医学的な予後を理由に短い期間が主張されることもあり、期間は主要な争点の一つです。
現在は家族が介護していますが、将来は職業介護へ切り替える前提で計算できますか。
可能な場合があります。介護者の年齢・健康・就労などの資料から、将来の一定時期以降は職業介護に移行する蓋然性を示せれば、期間を分けた計算が検討されます。特定の年齢で自動的に切り替わる決まりはなく、具体的な資料に基づく立証が必要です。
家族が介護のために退職した場合、介護費と休業損害の両方を請求できますか。
介護費と休業損害は別の損害項目ですが、同じ時間帯の介護について両方を単純に重ねて請求することはできないと考えられています。退職の経緯や介護の内容によって適切な構成が異なるため、資料を確認したうえでの検討が必要です。
在宅介護と施設介護では、将来介護費の考え方はどう変わりますか。
在宅介護では、介護日額×年間日数×係数を基本に、近親者・職業介護・公的サービスの分担を積み上げます。施設介護では、施設の利用料を基礎としつつ、事故がなくても必要だった食費など生活費に当たる部分の扱いが論点になります。将来の施設移行を前提とする場合は期間を分けて計算し、どちらを前提にできるかは障害の内容や受入れ状況などの個別事情によります。

まとめ

  • 症状固定前の付添費と、症状固定後の将来介護費は区別して検討します。将来介護費は、介護の必要性、体制の蓋然性、費用の相当性、期間、証拠によって個別に判断されます。
  • 自賠責の別表第一(第1級・第2級)の等級は重要な資料ですが、民事賠償の金額を機械的に決めるものではありません。別表第二の等級でも、見守り・声かけの必要性の立証により認められる可能性があります。
  • 近親者介護は無償でも損害と評価され得ますが、固定の日額はなく、介護日誌などの記録が評価を左右します。職業介護は実費が基礎になりますが、時間・単価の相当性が検討されます。
  • 併用型・移行型(将来は職業介護・施設介護へ)の介護計画は、介護者の年齢・健康・就労などの資料で蓋然性を示すことがポイントです。
  • 計算は「日額×年間日数×ライプニッツ係数」が基本ですが、事故日に適用される法定利率、平均余命、期間分割、公的給付との調整、別費目との区分によって結果が大きく変わります。
  • 示談書に署名する前に、損害計算書の将来介護費の有無と前提(日額・日数・期間・係数・控除)を確認し、疑問があれば署名前にご相談ください。

神戸みらい法律会計事務所では、交通事故で重い後遺障害が残った方のご家族から、将来介護費を含む損害賠償のご相談をお受けしています。介護日誌や医師意見書、ケアプラン、見積書、保険会社の損害計算書などの資料を確認したうえで、介護体制の整理、算定の前提、示談案への対応方針を検討できます。後遺障害の申請前、介護体制の決定前、示談書への署名前に、一度ご相談いただくことをおすすめします。

初回のご相談は無料です(事前予約制。弁護士費用特約や法テラスをご利用の場合は、相談料をご請求する場合があります)。お電話(078-797-5227・受付時間9:00〜20:00)または相談予約フォームからご予約ください。

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本記事は一般的な法情報の提供を目的とするものであり、個別の事件についての法的助言ではありません。将来介護費の認否・金額は、後遺障害の内容、介護体制、費用、期間、証拠、過失割合などの個別事情により異なります。記載した法令・制度・金額・利率は、2026年(令和8年)9月時点で確認した法令及び公的機関の公表情報に基づいています。最新の情報は各機関の案内でご確認ください。

監修者

藤井 貴之(ふじい たかゆき)
弁護士・公認会計士/兵庫県弁護士会所属・日本公認会計士協会兵庫会所属
弁護士法人ひょうご支所神戸みらい法律会計事務所 代表弁護士

交通事故の後遺障害・逸失利益・将来介護費など、法律と数値の両面からの検討を要する損害賠償案件に対応しています。

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参考資料(いずれも2026年9月確認)

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