スクイーズアウトとは|売渡請求・株式併合・価格決定・税務 |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|

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スクイーズアウトとは|売渡請求・株式併合・価格決定・税務

株式等売渡請求の通知・公告や、株式併合を議案とする株主総会の招集通知を受け取ると、「同意しなければ株式を手放さずに済むのか」「提示された価格に納得できないときはどうすればよいのか」が問題になります。スクイーズアウトでは、会社法の要件と手続を満たしていれば、反対していても株式を失うことがありますが、少数株主には価格を争う手続が用意されています。ただし、その手続は手法ごとに異なります。売渡請求では取得日の20日前の日から前日までに裁判所へ申し立てる必要があり、株式併合では、総会前の反対の通知と総会での反対(議決権を行使できる株主の場合)、効力発生日の20日前の日から前日までの会社への買取請求、効力発生日の後の裁判所への申立てが、それぞれ別の工程です。結論は、定款、株主の立場、通知の内容などの個別事情によって異なります。

通知を受けたら最初に確認すること

  • 手法:特別支配株主による株式等売渡請求か、株式併合か
  • 日付:売渡請求は「取得日」、株式併合は「株主総会の日」と「効力発生日」
  • 期限:売渡請求は、取得日の20日前の日から前日までに裁判所へ申立て。株式併合は、総会前の反対の通知と総会での反対(議決権を行使できる株主の場合)と、効力発生日の20日前の日から前日までの会社への買取請求
  • 立場:株式を取得した時期と、株主総会で議決権を行使できるかどうか

スクイーズアウトとは何か

スクイーズアウトとは、少数株主の個別の同意を得ずに、金銭を交付してその株式を取得するなどの方法で、少数株主を会社から退出させることをいいます。非上場・同族会社の株式の集約、事業承継、上場会社の公開買付け(TOB)後の非公開化、買収後の完全子会社化などで用いられます。

少数株主の同意がなくても株式を取得できる場合

会社法は、そのための手法として、特別支配株主による株式等売渡請求(会社法第179条以下)と、株主総会の特別決議による株式併合(同法第180条以下)を定めています。いずれも、議決権の割合や決議などの要件を満たし、法定の通知や書面の備置きを経て、金銭の対価を交付する仕組みです。少数株主であることだけを理由に、手続を経ずに株式を取り上げられるわけではありません。

反対に、要件と手続を満たしていれば、反対の意思を示しただけで取得や併合が止まるわけではありません。少数株主の側には、価格の決定を求める手続や、法令違反などがある場合の差止請求があり、使える手段と期限は手法によって異なります。任意の買取りや自己株式の取得など、二つの手法以外の方法は、少数株主の株式を整理する方法で取り上げています。

売渡請求と株式併合の違い

株式等売渡請求と株式併合の比較
比較項目 株式等売渡請求 株式併合
議決権の要件 本人と特別支配株主完全子法人とで総株主の議決権の10分の9(定款でこれを上回る割合を定めた場合はその割合)以上を有する特別支配株主だけが請求できる 実施する側の保有割合の定めはなく、株主総会の特別決議が成立することが前提となる
承認・決議 対象会社の承認(取締役会設置会社では取締役会の決議)。対象会社の株主総会の決議は、一般的な要件とされていない 株主総会の特別決議。取締役は、総会で株式併合を必要とする理由を説明する
対価の受取り 取得日に特別支配株主が株式を取得し、少数株主は特別支配株主から金銭の対価を受け取る 効力発生日に1株未満の端数となった株式について、会社が売却等をした代金の交付を受ける(買取請求をした場合は会社から支払を受ける)
価格の救済 取得日の20日前の日から前日までに、裁判所へ売買価格の決定を申し立てる 要件を満たす反対株主が、効力発生日の20日前の日から前日までに会社へ買取請求をし、協議が調わなければ裁判所へ価格の決定を申し立てる

どちらの手法でも、対価が支払われるまで株主のままでいられるわけではありません。売渡請求では取得日に特別支配株主が株式を取得し(同法第179条の9第1項)、株式併合では効力発生日に併合の効力が生じて、1株未満の端数は代金を受け取る対象となります(同法第182条第1項、第235条第1項)。

特別支配株主による株式等売渡請求

特別支配株主が、他の株主の全員に対し、株式の全部を売り渡すよう請求する制度です(会社法第179条第1項)。対象会社の承認を得れば、株主総会を開かずに進められます。

議決権90%以上の判定と会社の承認

特別支配株主とは、総株主の議決権の10分の9(定款でこれを上回る割合を定めた場合はその割合)以上を、本人と、本人が発行済株式の全部を有する会社など法務省令で定める法人(特別支配株主完全子法人)とで有している場合の、その本人をいいます。基準は株式数ではなく議決権であり、親族や友好的な株主の議決権を合計して90%に達しても、それだけで特別支配株主に当たるわけではありません。

請求の対象は、原則として、対象会社と特別支配株主を除く株主全員の株式の全部です(特別支配株主完全子法人には請求しないこともできます)。新株予約権なども一定の範囲で対象にできますが、本記事では普通株式を中心に説明します。特別支配株主は、金銭の対価の額又はその算定方法、割当て、取得日などを定めて対象会社の承認を受ける必要があり、取締役会設置会社では取締役会の決議で承認の可否を決めます(同法第179条の2第1項、第179条の3第1項・第3項)。

会社側の留意点:承認の前に、議決権割合の計算(特別支配株主完全子法人の範囲を含みます)と定款の定めを確認します。

通知を受けた株主が確認すること

対象会社は、承認をしたときは、取得日の20日前までに、売渡株主に対し、承認をした旨、特別支配株主の氏名又は名称と住所、対価の額、取得日などを通知します(同法第179条の4第1項)。上場会社の株式など振替株式では、個別の通知に代えて公告をしなければならないため(社債、株式等の振替に関する法律第161条第2項)、郵便が届かないことを理由に手続が始まっていないと考えないよう注意が必要です。

売渡株主は、取得日の20日前の日から取得日の前日までの間に、裁判所に売買価格の決定を申し立てることができます(会社法第179条の8第1項)。総会での反対や会社への買取請求は、この申立ての前提ではありません。取得日の当日以後はこの申立てができないため、「取得された後で申し立てればよい」という理解は正確ではありません。

また、通知又は公告がされた後に売渡株式を譲り受けた者は、この申立てをすることができません(最高裁判所第二小法廷平成29年8月30日決定(平成29年(許)第7号))。同決定は、通知又は公告の時点の株主が意思にかかわらず定められた対価で売り渡すことになるため、その株主に適正な対価を得る機会を与えるという制度の趣旨を理由としています。取得日の直前に株式を買い増した場合などは、株式を取得した時期と通知・公告の日の前後関係を確認します。なお、この決定は売渡請求についての判断で、株式併合にそのまま当てはまるものではありません。

価格の検討には、対象会社が本店に備え置く書面(対価の額やその算定方法、承認をした旨などを記載したもの)の閲覧や謄本の交付の請求を利用できます(同法第179条の5)。もっとも、算定書や事業計画などの内部資料を、株主が当然にすべて入手できるわけではありません。

株式併合によるスクイーズアウト

株式併合は、複数の株式を合わせて少ない数の株式にすることです(会社法第180条)。支配株主以外の株主の持株がすべて1株未満の端数となる割合で併合すると、少数株主は株主ではなくなり、端数に応じた金銭を受け取ります。

特別決議と1株未満の端数処理

株式併合には、併合の割合や効力発生日などを定める株主総会の特別決議が必要です(同法第180条第2項、第309条第2項第4号)。特別決議は、原則として、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で成立します。定足数は、定款で3分の1まで引き下げることができます。取締役は、総会で株式併合を必要とする理由を説明しなければなりません(同法第180条第4項)。「総議決権の3分の2を持っていれば当然に株式併合ができる」という説明は正確ではありません。会社法は実施する側の保有割合を利用の条件として定めておらず、定款で決議の要件が加重されている場合や、種類株主総会の決議が必要となる場合(同法第322条第1項第2号)もあります。招集や決議の手続に問題があれば、決議の効力が争われることもあります。

端数が生じた場合、会社は端数の合計数に相当する株式を競売し、代金を端数に応じて株主に交付します。競売に代えて、市場価格のある株式は法務省令で定める方法で算定した額で、市場価格のない株式は裁判所の許可を得て売却でき、会社が買い取ることもできます(同法第235条、第234条第2項から第5項まで)。非上場会社では、支配株主などへの売却か、会社による買取りかを区別して確認します。この売却許可の申立ては会社の手続で、反対株主の価格決定の申立てとは別のものです。

次の例は、種類株式・自己株式がなく単元株式数の定めもない会社(発行済株式1,000株、全員が1株につき1議決権、株主A・B・Cの間に資本関係なし)が、200株を1株に併合し、端数の合計に相当する1株を200万円で適法に売却できたと仮定したものです。

株式併合の仮定例(200株を1株に併合する場合)
株主 併合前 併合後 端数の売却代金の受取額
A 800株 4株 なし(株主として残る)
B 120株 0.6株(端数のみ) 120万円
C 80株 0.4株(端数のみ) 80万円
合計 1,000株 4株と端数の合計1株 200万円

BとCは株主ではなくなり、売却代金を端数の割合で受け取ります。Aの議決権は80%で90%に達しないため、この例では売渡請求は使えません。計算の説明のための仮定であり、併合の割合や価格が適法・公正であることを示すものではありません。

反対株主の買取請求

株式併合で1株に満たない端数が生じる場合、反対株主は、会社に対し、端数となる株式の全部を公正な価格で買い取るよう請求できます(会社法第182条の4第1項)。単元株式数を定款で定めている会社で、単元未満株式についてのみ端数が生じる株式併合は、この買取請求の制度の対象外です(同法第182条の2第1項)。反対株主の要件は、総会で議決権を行使できるかどうかで異なります(同法第182条の4第2項)。

  • 議決権を行使できる株主:総会に先立って反対する旨を会社に通知し、かつ総会で反対することの両方が必要です。欠席や棄権だけでは要件を満たしません。
  • 議決権を行使できない株主:事前の通知や総会での反対を要しない類型として定められていますが、株式を取得した時期などにより請求の可否が問題となることがあり、個別の確認が必要です。

買取請求は、効力発生日の20日前の日から前日までの間に、株式の数を明らかにして行い、株券が発行されている株式については、原則として株券の提出も必要です(同条第4項・第5項)。会社による株主への通知は効力発生日の20日前までとされ(同条第3項、同法第181条第1項)、公告で代えることもでき、振替株式では公告によります(同条第2項、社債、株式等の振替に関する法律第161条第2項)。

価格に納得できないときの申立てと期限

価格を争うには、手法ごとに、何を、誰に、いつまでに行うかを確認します。

2つの制度で異なる期限

価格を争う手続の相手方と期限
対象となる行為 相手方・提出先 期間・起算点
売渡請求:
売買価格の決定の申立て
裁判所(対象会社の本店所在地を管轄する地方裁判所) 取得日の20日前の日から取得日の前日まで
株式併合:
反対の通知
会社(議決権を行使できる株主が行う) 株主総会に先立って
株式併合:
総会での反対
株主総会(議決権を行使できる株主が行う) 株主総会において
株式併合:
株式買取請求
会社 効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日まで(買取りを求める株式の数を明らかにする)
株式併合:
価格の決定の申立て
裁判所(対象会社の本店所在地を管轄する地方裁判所)。株主・会社のいずれも申立てができる 効力発生日から30日以内に価格の協議が調わない場合に、その期間の満了の日の後30日以内

株式併合の裁判所への申立ては、期間内の適法な買取請求が前提です(会社法第182条の5第2項)。「効力発生日から60日以内ならいつでも」と省略して理解するのは正確ではありません。会社へ異議を伝えたり、資料の請求や価格の交渉を続けたりしていても、いずれの期限も止まりません。売渡請求の通知・公告の後に株式を譲り受けた者が申立てをできない点(最高裁判所第二小法廷平成29年8月30日決定)にも注意します。

決定された価格には、売渡請求では取得日の後の、株式併合では効力発生日から60日の期間が満了した日の後の、法定利率による利息が加わります(同法第179条の8第2項、第182条の5第1項・第4項)。特別支配株主や会社は、価格の決定前でも、自らが公正と認める額を支払うことができます(同法第179条の8第3項、第182条の5第5項)。

差止めと価格決定は別の手続

価格決定の申立てをしても、取得や株式併合の効力は止まりません。取得や併合そのものを止めたい場合は差止請求を検討しますが、要件は手法によって異なります。

  • 売渡請求:売渡請求の法令違反、売渡株主への通知や書面の備置きに関する違反、対価の額や割当てが対象会社の財産の状況その他の事情に照らして著しく不当であることのいずれかに当たり、売渡株主が不利益を受けるおそれがあるときに、特別支配株主に対して請求します(会社法第179条の7第1項)。
  • 株式併合:併合が法令又は定款に違反し、株主が不利益を受けるおそれがあるときに、会社に対して請求します(同法第182条の3)。「対価が著しく不当」という類型は定められていません。

いずれも、価格が低いと感じるだけで当然に止められるものではありません。相手方が応じなければ裁判所の手続が必要となり、効力が生じる前に求める必要があるため、検討できる期間は限られます。効力が生じた後の争い方は別です。売渡株式等の取得の無効の訴えは取得日から6か月以内(対象会社が公開会社でない場合は1年以内)に(同法第846条の2第1項)、株式併合の決議の取消しの訴えは決議の日から3か月以内に(同法第831条第1項)提起する必要があり、訴えの理由や原告となれる者にも要件があります。「公開会社でない会社」とは全部の株式に譲渡制限がある会社のことで、「上場していない会社」と同じ意味ではありません(同法第2条第5号)。

価格を検討する資料と裁判例

提示価格の検討では、金額だけでなく、価格がどのような手続で決められたか(利益相反への対応や交渉の経緯)と、どのような前提で算定されたか(事業計画、評価方法、割引率など)を確認します。出発点は、会社が本店に備え置く書面(売渡請求では会社法第179条の5、株式併合では同法第182条の2)と、公開買付けがあった場合の開示資料です。

最高裁判所第一小法廷平成28年7月1日決定(平成28年(許)第4号ないし第20号。いわゆるJCOM事件)は、多数株主による公開買付けの後に全部取得条項付種類株式で残りの株式を取得した取引について、「独立した第三者委員会や専門家の意見を聴くなど多数株主等と少数株主との間の利益相反関係の存在により意思決定過程が恣意的になることを排除するための措置」が講じられ、応募しなかった株主の株式も同額で取得する旨が明示されているなど「一般に公正と認められる手続」で公開買付けが行われ、その後に同額で取得した場合には、「取引の基礎となった事情に予期しない変動が生じたと認めるに足りる特段の事情」がない限り、取得価格を公開買付けの価格と同額とするのが相当と判断しました。もっとも、平成26年改正前の会社法第172条第1項による取得価格の決定の事案であり、現行の株式併合や売渡請求、非上場会社の取引を直接判断したものではありません。「公開買付けの価格なら常に公正」「第三者委員会を置けば足りる」という趣旨でもありません。

上場会社のMBO(経営陣による買収)や、支配株主などが関わる公開買付け・株式併合・株式等売渡請求の承認など(上場廃止が見込まれるもの)では、東京証券取引所の規則により、独立した特別委員会から一般株主にとって公正なものであることに関する意見を入手し、必要かつ十分な適時開示を行うことが求められます(上場規程第441条)。もっとも、もともと独立した第三者が公開買付けで新たに支配株主となった後の二段階目の手続は対象外とされるなど、対象には範囲があります。また、緊急性が極めて高いと同取引所が認める再生局面などでは、特別委員会に代えて、独立性のある者の意見で足りるとされています(東京証券取引所「MBO等に係る企業行動規範に関する実務上の留意事項等」)。制度の対象かどうかにかかわらず、算定機関の独立性、交渉の経緯、事業計画、DCF法(将来期待されるキャッシュ・フローを一定の割引率で割り引いて現在の価値を算定する方法)の割引率や継続価値、開示の内容を確認する意味があり、市場価格への上乗せがあることだけで公正さが保証されるわけではありません。非上場会社でも、会社側は、算定の根拠、承認・決議に至る検討の経過、交渉の経過を記録に残しておくことが、価格決定や差止めの場面への備えになります。

非上場株式については、最高裁判所第三小法廷令和5年5月24日決定(令和4年(許)第8号)が、譲渡制限株式の譲渡を会社が承認しなかった場合の売買価格の決定(会社法第144条第2項)で、市場性がないことによる減価(非流動性ディスカウント)が相当と認められるときはDCF法による評価額からも減価できる一方、評価の過程ですでに市場性の欠如が十分に考慮されていれば重ねて減価するのは相当でないと判断しました。ただし、同決定は、譲渡を希望する株主に投下資本の回収手段を保障する手続であることを理由としており、意思にかかわらず株式を取得されるスクイーズアウトにそのまま当てはまるとは限らず、一定の割合で当然に減額できるわけでもありません。少数株主であることによる減価と、市場で売却しにくいことによる減価も区別して検討します。

また、会社法上の「公正な価格」と、相続税・贈与税のための株式の評価(国税庁「No.4638 取引相場のない株式の評価」)は目的が異なります。相続税評価額、額面、帳簿上の純資産額のいずれかが、それだけで強制的な取得の価格として正しいことにはなりません。評価方法の違いは、非上場株式の評価方法と買取価格で整理しています。

スクイーズアウトの税務

受け取る金銭の課税は、受け取るのが個人か法人か、誰から何の根拠で支払われるかによって異なり、対象会社の側に課税が生じることもあります。価格を争うという民事上の問題とは分けて考え、申告の要否や税額は税理士又は税務署にご確認ください。

個人株主の譲渡所得と取得費

日本に住む個人(居住者)が株式の対価として受け取る場合、課税の対象は、原則として受取額の全額ではなく、受取額から取得費や譲渡のための費用を差し引いた利益(譲渡所得)です。令和8年(2026年)分の基本的な税率は、所得税15%、復興特別所得税0.315%(所得税額の2.1%)、住民税5%の合計20.315%です(国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」)。他の株式の取引や特例・控除によって変わり、極めて高い水準の所得には追加の負担が生じることもあります(国税庁「No.2270 特定の基準所得金額の課税の特例」)。

取得費は、原則として購入代金や手数料です。相続や贈与で取得した株式は、原則として被相続人や贈与者の取得費を引き継ぎ、相続税の評価額がそのまま取得費になるわけではありません。取得費が分からない場合に売却代金の5%相当額とする取扱いもありますが、まず購入時の記録や相続関係の資料を探します(国税庁「No.1464 譲渡した株式等の取得費」)。

次の表は、令和8年(2026年)分、日本に住む個人、通常の株式の譲渡の対価、取得費が判明、譲渡のための費用なし、所得控除・損益通算・特例・高所得者の特例の影響なしと仮定した概算で、実際の申告税額を示すものではありません。

個人株主の税額の仮定例(概算)
項目 金額 計算
受取額 1,000万円 スクイーズアウトの対価
取得費 200万円 購入時の代金など(過去の支出)
譲渡所得 800万円 1,000万円-200万円
税額 162万5,200円 800万円×20.315%
受取額から
税額を引いた額
837万4,800円 1,000万円-162万5,200円

取得費は過去に支払済みの金額です。手元に残る額の目安は「受取額-納める税額」であり、「受取額-取得費-税額」と計算すると、取得費を二重に差し引くことになります。

上場廃止後の現金交付と確定申告

上場会社のスクイーズアウトでは、公開買付けに応募して売却した場合と、上場廃止後に残りの株式を買い取られた場合とで、扱いが異なることがあります。国税庁は、公開買付けの成立後に上場廃止となった株式を買付者などに買い取られた場合、証券会社を通さない相対取引となるため、特定口座内での損益の計算はされず、他の上場株式の譲渡所得との損益通算や繰越控除もできないとして、譲渡益が生じたときの申告を案内しています(国税庁「株式公開買付(TOB)成立後、上場廃止となった株式の買取りに係る所得税(株式等譲渡所得)の申告漏れ等について」)。

特定口座で保有していたことだけで申告不要と判断せず、会社からの通知、上場廃止日、税務上の譲渡の時期、口座からの払出しの記録を確認してください。株式併合の端数代金など、手続によって口座の扱いや確認すべき事項が異なることもあります。

みなし配当が生じる場合との区別

会社が自社の株式を取得して金銭を交付する場合、その一部が配当とみなされる(みなし配当)ことがあります(所得税法第25条第1項第5号)。しかし、スクイーズアウトの対価が当然にみなし配当になるわけではありません。

  • 売渡請求の対価は、特別支配株主に株式を売り渡した対価であり、発行会社による自己株式の取得とは区別されます。
  • 株式併合で、反対株主の買取請求により会社が買い取る場合(会社法第182条の4第1項)や、端数の合計に相当する株式を会社が買い取る場合(同法第235条第2項で準用する第234条第4項)は、みなし配当の原因となる自己株式の取得から除かれています(所得税法施行令第61条第1項第9号、法人税法施行令第23条第4項第9号)。

したがって、「株式併合で会社が買い取れば当然にみなし配当になる」という説明は正確ではありません。ただし、この除外は法令が定める取得の根拠によるもので、株主との合意による通常の自己株式の取得などには広げられません。

法人株主と対象会社の課税

法人株主の場合:原則として、譲渡により通常得べき対価の額と帳簿価額(譲渡原価)との差額を譲渡損益として計上し(法人税法第61条の2第1項)、個人向けの20.315%は当てはまりません。みなし配当の有無や、グループ会社間の取引に当たるかなども個別に判定します。

対象会社の場合:法人である買収者との間に完全支配関係を生じさせる一定の株式併合や株式売渡請求は、法人税法上の「株式交換等」に含まれます(同法第2条第12号の16)。税制上の適格要件を満たさない(非適格)場合、対象会社が保有する一定の資産(時価評価資産)の評価損益を計上する制度があり(同法第62条の9、法人税法施行令第123条の11)、すべての資産が時価評価されるわけではありません。適格かどうかは、支配関係とその継続の見込み、従業者のおおむね80%以上の継続従事の見込み、主要な事業の継続の見込みなどを、該当する類型に即して判定します(法人税法第2条第12号の17、法人税法施行令第4条の3第19項)。端数の代金や売渡請求の対価などは、判定上、株式以外の資産の交付から除かれていますが、「現金を対価とするから当然に非適格」「会社法上の要件を満たしたから当然に適格」とはいえません。適格性は対象会社側の問題であり、退出する株主の譲渡益の課税とは別です。また、オーナー個人が取得する場合には、この法人間の説明をそのまま当てはめることはできません。

完全支配関係が生じた日にも注意が必要です。国税庁の質疑応答事例は、スクイーズアウトを目的とする株式併合で少数株主の全員が買取請求をした事例について、価格が未確定・未払でも、効力発生日に完全支配関係を有することとなると回答しています(国税庁質疑応答事例「スクイーズアウトを目的とした株式併合に反対する株主から株式買取請求があった場合の『完全支配関係を有することとなった日』について」)。端数を売却し又は会社が買い取る通常の場合は、その売却や買取りの日が基準とされており、場面が異なります。この回答は照会の事実関係を前提とするもので、株主側の課税の時期を示すものではありません。

相談前に確認したい資料と費用

期限が迫っている場合は、資料がそろうのを待たず、まず手法と日付を確認します。そのうえで、確認の目的ごとに資料を整理します。

株主側と会社側で準備する資料

確認の目的と準備する資料
確認の目的 株主側で確認する資料 会社側で整える資料
手法と日付
(期限の特定)
通知書と封筒(消印)、電子メールなどの送信記録、公告の記録、株主総会の招集通知 通知・公告の控えと発送の記録、承認・決議の記録、手続の日程表
申立て・
買取請求の資格
株式を取得した時期が分かる記録、定款(株式の種類・単元株式数・決議要件)、反対通知の控えと会社に届いた記録、議決権行使の記録 定款、株主名簿、議決権の計算資料、反対通知の受付記録
価格の形成と
利益相反
会社が備え置く書面(閲覧・謄本の交付を請求できる範囲)、公開買付けの開示資料 算定書、事業計画、特別委員会の答申、交渉の経過の記録
税務 購入時の記録、相続・贈与の資料、入金の明細、証券口座の払出しの記録 支配関係の推移、従業者と主要な事業の継続の見込みに関する資料、保有資産の時価に関する資料

次の点は、資料の多少にかかわらず早めに対応します。

  • 通知書・封筒・公告の記録を、受け取った状態のまま保管する
  • 取得日・効力発生日・株主総会の日から、申立てや買取請求の期限を書き出す
  • 反対の通知や買取請求は、内容と会社に届いた日が記録に残る方法(配達証明付きの内容証明郵便など)で行う
  • 申立書や買取請求書の控えと、会社とのやり取りの記録を保存する

株式を保有している間の情報収集などの権利は、少数株主が行使できる権利で整理しています。

申立先と費用の考え方

価格決定の申立先は、対象会社の本店所在地を管轄する地方裁判所です(会社法第868条第1項・第3項)。株主が神戸市内に住んでいても、対象会社の本店が兵庫県外にあれば、神戸地方裁判所ではなく、本店所在地を管轄する地方裁判所になります。窓口、書式、予納金などは、申立先の裁判所に確認します。

費用としては、申立ての手数料や郵便切手などの実費、弁護士費用、株式の評価や鑑定の費用がかかることがあり、総額や期間は資料の量、争点、評価の方法などで異なります。申立てができること、価格が増額されること、増額分が実際に支払われることは、それぞれ別の問題です。想定される増額の幅、持株数、相手方の支払能力と費用を比べて、進め方を判断します。会社側も、利息の負担や評価への対応を、日程と資金計画に織り込んでおくことが考えられます。

よくある質問

公開買付け(TOB)に応募しなければ、株式を持ち続けられますか。

応募しなくても、その後に買付者などが特別支配株主となって売渡請求をし、又は株主総会の特別決議で株式併合が行われると、反対していても株式を失うことがあります。その場合は、手法ごとの手続と期限に従って価格を争います。公開買付けそのものの規制は別の制度であり、別途確認が必要です。

株式併合の株主総会を欠席しても、価格を争えますか。

議決権を行使できる株主は、総会に先立つ反対の通知と総会での反対が買取請求の前提であり、欠席や棄権だけでは足りません。出席できない場合の議決権の行使方法は、招集通知で確認してください。議決権を行使できない株主は要件が異なりますが、株式を取得した時期などの確認が必要です。

価格決定を申し立てれば、価格は増額されますか。

増額されるとは限りません。裁判所は、価格が決められた手続の公正さや算定の前提などを踏まえて判断します。一般に公正と認められる手続による公開買付けの後に同額で取得した場合について、取引の基礎となった事情に予期しない変動が生じたと認めるに足りる特段の事情がない限り、公開買付けの価格と同額とするのが相当とした最高裁判所の決定もあります(平成26年改正前の全部取得条項付種類株式の事案)。費用と見込まれる増額の幅を比べて判断します。

以前は特定口座で保有していた株式でも、確定申告が必要ですか。

必要となる場合があります。公開買付けの成立後に上場廃止となった株式を買付者などに買い取られた場合は、特定口座内での損益の計算はされず、譲渡益が生じていれば申告が必要であると国税庁は案内しています。会社からの通知や口座の払出しの記録を確認し、税理士又は税務署にご確認ください。

スクイーズアウトに関するご相談

通知・公告や招集通知を受け取った方は、まず手法と、取得日又は効力発生日・株主総会の日を確認してください。期限が近い場合は、資料がそろうのを待たずにご相談ください。通知書、株式を取得した時期が分かる記録、手元の開示資料があれば、期限と手続の見通しを確認しやすくなります。実施を検討している会社の方も、手法の選択、日程、算定根拠や開示書類の準備について、相談により方針を整理できます。

ご予約の際は、お名前、ご連絡先、ご相談の概要(相手方となる会社・支配株主の名称など)と期限をお知らせください。利益相反の確認が済むまでは、資料をお送りにならないでください。同じ案件で利害が対立する複数の当事者を同時に支援することはできません。予約フォームの送信やご予約の受付はご依頼(委任契約)の成立ではなく、ご相談やお問い合わせによって申立てや買取請求の期限が止まることもありません。相談方法と費用は、ご予約の前にご確認ください。

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所属弁護士会:兵庫県弁護士会

〒654-0154 兵庫県神戸市須磨区中落合2丁目2-5 名谷センタービル7階

在籍する弁護士の資格や経歴は、事務所の弁護士紹介でご確認いただけます。初めてご相談される方への案内は、相談の流れと条件(初めての方へ)をご覧ください。

参考資料と情報基準日

本記事は、令和8年(2026年)10月14日時点の法令及び公表資料に基づいています。

本記事は、スクイーズアウトに関する一般的な情報を提供するもので、個別の事案についての法的助言や税務上の助言ではありません。利用できる手続、期限の数え方、価格の見通し、課税関係は、対象会社の定款、株主の立場、通知・公告の内容、取引の経緯などによって異なります。法令、税制、取引所の規則は改正されることがあるため、最新の内容をご確認ください。

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