非上場の同族会社や中小企業で株式をお持ちの方から、「会社が決算書や帳簿を見せてくれない」「役員報酬や経費の使い方、関連会社との取引に疑問がある」「株主総会の通知が来ない、議事録を見せてもらえない」「保有する株式を会社に買い取ってほしいが、提示された価格が低い」といったご相談をいただくことがあります。
少数株主であっても、会社法上、会社に対して情報の開示を求め、株主総会に意見を反映させ、役員の責任を追及し、株式の買取を検討するための権利が認められています。もっとも、「少数株主だから何でもできる」わけではありません。権利ごとに、1株でも行使できるもの、一定割合の議決権が必要なもの、裁判所の許可が必要なものに分かれており、期限が定められている手続もあります。確認を後回しにすると、選択肢が狭まることがあります。
この記事では、中小企業・同族会社・非上場会社の少数株主の方に向けて、会社に対してできることの全体像を整理します。出発点は、ご自身の保有株式数・議決権割合と会社の機関設計を確認し、目的(情報を得たいのか、意思決定に関与したいのか、責任を追及したいのか、株式を手放したいのか)を整理することにあります。なお、個別事情により結論は異なり、実際の判断には資料の確認が必要です。
この記事で分かること
- 少数株主が会社に対してできることの全体像(4つの分類)
- 権利ごとに必要な議決権割合・保有期間・期限の目安
- 会計帳簿閲覧請求など、情報を得るための手段とその限界
- 株主提案・株主総会招集請求・株主代表訴訟などの基本
- 非上場株式の買取を求める場合に検討すること
- 権利行使の前に確認すべき資料と、相談すべきタイミング
会社から資料の開示を拒まれている方へ。帳簿閲覧請求や株主提案を行う前に、要件と手元の資料を整理することが大切です。株主名簿、定款、決算書、株主総会の通知、会社とのやり取りを確認したうえで、今後の方針を検討します。
Contents
少数株主が会社に対してできることの全体像
結論として、少数株主が会社に対して取り得る手段は、大きく次の4つに分類できます。
- 情報を得る……定款、株主名簿、株主総会議事録、計算書類、会計帳簿などの閲覧・謄写
- 会社の意思決定に関与する……議決権の行使、株主提案、株主総会の招集請求、検査役の選任申立て、決議を争う訴え
- 役員の責任を追及する……違法行為の差止請求、株主代表訴訟、役員解任の訴え
- 株式を手放す・買取を求める……譲渡承認請求、売買価格の決定申立て、組織再編等に反対する株主の買取請求
これらの権利は一律ではなく、行使に必要な持株数や議決権割合、保有期間、期限が権利ごとに異なります。下表は代表的な手段と、必要な持株・議決権のおおまかな目安です。定款で要件が緩和されている場合や、公開会社・非公開会社の別により異なるため、あくまで目安としてご覧ください。
| 分類 | 代表的な手段 | 必要な持株・議決権の目安 |
|---|---|---|
| 情報を得る | 定款・株主名簿・議事録・計算書類の閲覧 | 1株から可能(単独株主権) |
| 情報を得る | 会計帳簿の閲覧・謄写請求 | 議決権または発行済株式の100分の3以上 |
| 意思決定に関与 | 株主提案(議題提案・議案要領通知請求) | 取締役会設置会社では議決権の100分の1以上または300個以上(公開会社は6か月保有) |
| 意思決定に関与 | 株主総会の招集請求 | 議決権の100分の3以上(公開会社は6か月保有) |
| 役員責任の追及 | 株主代表訴訟 | 1株から可能(公開会社は6か月保有) |
| 役員責任の追及 | 役員解任の訴え | 議決権または発行済株式の100分の3以上(公開会社は6か月保有) |
| 株式の買取 | 譲渡承認請求・売買価格決定申立て等 | 保有株式に応じて検討 |
このように、まず「自分がどの権利を使えるのか」を見極めることが出発点です。そのためには、定款、登記事項証明書(履歴事項全部証明書)、株主名簿で、保有株式数・議決権割合・会社の機関設計(取締役会の有無、監査役の有無など)を確認する必要があります。
少数株主とは何か
「少数株主」は日常用語としては「持株が少ない株主」を指しますが、会社法上は、「少数株主」という一つの定義で権利の有無が決まるわけではありません。権利ごとに、必要な議決権割合や保有期間が個別に定められています。
単独株主権と少数株主権
株主の権利は、行使要件の観点から大きく二つに分かれます。単独株主権は、1株(または1単元)でも保有していれば行使できる権利で、議決権の行使、定款・株主名簿・株主総会議事録・計算書類の閲覧、株主代表訴訟などがこれにあたります。少数株主権は、一定割合以上の議決権や株式の保有を要する権利で、会計帳簿の閲覧請求(議決権または発行済株式の100分の3以上)、株主総会の招集請求(議決権の100分の3以上)などがこれにあたります。
公開会社・非公開会社、取締役会設置・非設置の違い
会社の区分によっても要件が変わります。公開会社とは、発行する株式の全部または一部について譲渡制限を設けていない会社を指し、非公開会社(譲渡制限会社)はすべての株式に譲渡制限が付された会社を指します。中小企業・同族会社の多くは非公開会社です。たとえば株主総会の招集請求や株主代表訴訟では、公開会社では6か月前から株式を保有していることが要件となりますが、非公開会社ではこの保有期間の要件がありません。また、株主提案権は、取締役会非設置会社では単独株主権として行使できる一方、取締役会設置会社では持株要件が課されます。
同族会社・非上場会社で問題になりやすい場面
同族会社では、代表者やその家族が大株主かつ役員を兼ね、会社の情報が一部の人に集中しがちです。そのため、相続で株式を取得した方、共同創業者の一方、経営から離れた元役員などが、決算内容や役員報酬の妥当性に疑問を持っても、情報にアクセスしにくいという問題が生じます。こうした場面で、会社法上の権利が確認の手がかりになります。
まず確認すべき資料
どの権利を使えるか、どの手続が適切かを判断するには、前提となる資料の確認が欠かせません。権利行使の可否は、これらの資料の内容によって変わります。
| 資料 | 確認できること |
|---|---|
| 定款 | 会社の機関設計、株式の譲渡制限の有無、種類株式、権利行使要件の緩和の有無 |
| 登記事項証明書(履歴事項全部証明書) | 取締役会・監査役の有無、役員構成、発行可能株式総数など |
| 株主名簿 | 株主の構成、自分の保有株式数、名義の状況 |
| 株主総会の招集通知・議事録 | 総会の開催状況、決議内容、手続の適法性 |
| 計算書類・事業報告 | 会社の財産・損益の状況 |
| 会社とのやり取り(書面・メール・通知) | 請求や交渉の経緯、買取提示の内容 |
| 相続・譲渡関係の資料 | 株式取得の経緯、名義書換の有無 |
相続で株式を取得した場合や、株主名簿の名義書換が済んでいない場合、株券発行会社かどうか、単元株式・種類株式・議決権制限株式が関係する場合は、権利行使の前提として整理すべき点が増えます。これらは事案により扱いが異なるため、資料を確認したうえで判断する必要があります。
会社の情報を確認するための権利
役員報酬や経費処理、関連当事者との取引などに疑問がある場合、まず会社の情報を確認することが出発点になります。情報を得る権利には、1株から行使できるものと、一定割合が必要なものがあります。
定款・株主名簿・株主総会議事録・計算書類の閲覧
定款(会社法31条)、株主名簿(会社法125条)、株主総会議事録(会社法318条)、計算書類・事業報告等(会社法442条)の閲覧・謄写は、いずれも持株割合の要件がなく、原則として1株でも保有していれば、会社の営業時間内に請求できます。これらは会社の基本情報や決算の概要を把握するための入口となります。
会計帳簿閲覧請求
より詳細な経理の内容を確認したい場合に検討するのが、会計帳簿の閲覧・謄写請求(会社法433条)です。総勘定元帳や仕訳帳などの会計帳簿、およびこれに関する資料(伝票、契約書、領収証など。範囲は事案により争いがあります)が対象です。ただし、この請求には次の制約があります。
- 議決権または発行済株式の100分の3以上を保有していること(複数の株主の合算でも可。定款でこれを下回る割合に緩和できます)。
- 請求の理由を明らかにする必要があること。会社が拒絶事由の有無を判断できる程度に、具体的な理由を示すことが求められます。
- 会社が拒絶できる場合があること。権利の確保・行使に関する調査以外の目的である場合、会社業務を妨げる目的である場合、請求者が実質的に競業関係にある場合など、会社法433条2項に定める拒絶事由に該当すると、会社は請求を拒めます。
「会計帳簿を必ず見られる」わけではない点に注意が必要です。理由の具体性や対象範囲は、事案により結論が変わります。
取締役会議事録を確認できる場合
取締役会の議事録(会社法371条)については、監査役設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社では、株主は、その権利を行使するため必要があるときに、裁判所の許可を得て閲覧・謄写を請求できるとされています。これに対し、こうした機関を置かない会社では、株主は営業時間内に閲覧・謄写を請求できるのが原則です。会社の機関設計によって手続が変わるため、定款・登記の確認が前提となります。
会社が閲覧を拒む場合の対応
会社が正当な理由なく閲覧・謄写の請求に応じない場合、まずは書面(内容証明郵便など)で請求し、それでも応じないときは、仮処分、訴訟、非訟事件の申立てなどを検討することになります。どの手続が適切かは、対象資料、緊急性、立証の見通しなどにより異なります。手続選択そのものが結論を左右するため、請求書を出す前に、要件と資料を整理しておくことが重要です。
会計帳簿の閲覧請求を検討している方へ。請求の理由をどう具体化するか、対象範囲をどう設定するか、拒絶された場合にどう進めるかは、事案によって異なります。決算書や会社とのやり取りを確認したうえで、請求書を出す前に方針を整理することをおすすめします。
株主総会に関与するための権利
会社の方針に異議があるとき、株主は株主総会を通じて意思決定に関与できます。これらの手続には期限が定められているものがあり、期限を過ぎると選択肢が狭まります。
議決権を行使する
株主は、保有する株式(議決権制限株式などを除く)に応じて株主総会で議決権を行使できます。少数株主が単独で決議を左右することは難しい場合もありますが、議決権の行使は意思を示す基本的な手段であり、後述の決議取消しなどを検討する際の前提にもなります。
株主提案権を使う
株主提案権は、一定の事項を株主総会の目的(議題)とするよう請求する議題提案権(会社法303条)、提案する議案の要領を他の株主に通知するよう請求する議案要領通知請求権(会社法305条)などからなります。取締役会設置会社では、これらの行使に、議決権の100分の1以上または300個以上の保有が必要で、公開会社では6か月前からの継続保有も要件となります。請求は原則として株主総会の日の8週間前までに行う必要があります。また、一人の株主が提案できる議案の数は10個までに制限されています(令和元年改正・令和3年施行)。なお、取締役会非設置会社では、これらは単独株主権として行使できます。
株主総会の招集を請求する
会社が株主総会を開かない場合などに、株主は取締役に対して総会の招集を請求できます(会社法297条)。要件は、議決権の100分の3以上の保有で、公開会社では6か月前からの継続保有も必要です(非公開会社では保有期間の要件はありません)。請求しても、遅滞なく招集手続が行われない場合や、請求の日から8週間以内の日を総会日とする招集通知が発せられない場合には、請求した株主は裁判所の許可を得て、自ら株主総会を招集できます。招集請求は、後日の紛争を避けるため、内容証明郵便で行うのが一般的です。
株主総会検査役を申し立てる
総会の招集手続や決議方法を調査させるため、株主は裁判所に対して株主総会検査役の選任を申し立てることができます(会社法306条)。総会が紛糾しそうな場合などに、手続の適正を確保し、後の証拠を残す手段として検討されます。
株主総会決議を争う
株主総会の決議に手続的・内容的な問題がある場合、決議を争う訴えがあります。代表的なのが株主総会決議取消しの訴え(会社法831条)で、招集手続や決議方法が法令・定款に違反する場合などに、決議の日から3か月以内に提起する必要があります。この3か月という期間は短く、経過すると原則として取消しを主張できなくなります。なお、決議の内容が法令に違反する場合の決議無効確認の訴え、決議が存在しない場合の決議不存在確認の訴え(いずれも会社法830条)には、このような期間制限はありません。どの訴えにあたるかは事案により異なります。
役員の責任を追及するための権利
役員の不正や使い込みが疑われる場合、株主には役員の責任を追及する手段があります。ここで特に誤解されやすいのが、これらは「自分が直接お金を回収する手続」ではない、という点です。
違法行為差止請求
取締役が法令・定款に違反する行為をし、またはそのおそれがあり、会社に損害が生ずるおそれがある場合、株主は、その行為をやめるよう請求できます(会社法360条)。公開会社では6か月前からの継続保有が要件となります。なお、会社の機関設計により、求められる損害の程度(回復することができない損害か、著しい損害か)が異なります。損害が現実化する前の予防的な手段である点が特徴です。
株主代表訴訟
役員が会社に損害を与えたにもかかわらず会社が責任追及をしない場合、株主が会社に代わって役員の責任を追及するのが、株主代表訴訟(株主による責任追及等の訴え。会社法847条)です。重要なポイントは次のとおりです。
- まず会社に提訴を請求する(提訴請求)必要があり、請求の日から60日以内に会社が訴えを提起しないとき、はじめて株主が訴訟を提起できます(回復できない損害が生ずるおそれがある場合は直ちに提起できます)。
- 原則として1株から提起でき、公開会社では6か月前からの継続保有が要件です(非公開会社では保有期間の要件はありません)。
- 勝訴して役員に賠償が命じられても、その賠償金は会社に帰属します。株主本人が直接受け取る手続ではありません。
- 責任追及には、役員の任務懈怠、会社の損害、両者の因果関係などを立証する必要があり、そのための証拠の確保が重要です。
「代表訴訟をすれば自分にお金が入る」というのは誤解です。会社の損害を回復し、役員の責任を明らかにする制度である点を理解しておく必要があります。
役員解任の訴え
役員の職務執行に関し不正の行為、または法令・定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、その役員を解任する議案が株主総会で否決された場合、一定の株主は、その総会の日から30日以内に、訴えをもって解任を請求できます(会社法854条)。要件は、議決権または発行済株式の100分の3以上の保有で、公開会社では6か月前からの継続保有も必要です。まず総会に解任議案を諮ることが前提となる点に注意が必要です。
株式を売却・買取してもらいたい場合に検討すること
「会社との関係を整理したい」「保有する株式を現金化したい」という場合、非上場株式には特有の難しさがあります。
第一に、非上場株式は市場で売却しにくいという問題があります。多くの非公開会社では株式に譲渡制限が付されており、第三者への譲渡には会社の承認が必要です。第二に、会社に当然に買い取らせられるわけではありません。買取を実現する手段は場面ごとに異なり、主に次のものがあります。
- 会社や他の株主との任意交渉による買取
- 譲渡制限株式について、譲渡を承認するか、会社または指定買取人による買取を求める譲渡承認請求(会社法136条以下)と、価格が折り合わない場合の売買価格の決定の申立て(会社法144条等)
- 合併・株式交換などの組織再編や事業譲渡に反対する場合の反対株主の株式買取請求(会社法785条、469条等)
これらは要件も手続も異なります。買取交渉では、価格の妥当性が中心的な争点になり、決算書、純資産、収益性、配当状況、役員報酬、関連当事者取引、過去の取引事例などの確認が重要です。非上場株式の評価は、法務だけでなく会計・税務の視点も関係し、評価方法によって金額が大きく変わることがあります。提示された価格に納得できないまま合意書に署名すると、後から覆すのは容易ではありません。署名の前に、価格の根拠となる資料を確認することをおすすめします。
非上場株式の評価や買取に伴う課税関係は、弁護士による法的検討に加えて、税理士・公認会計士による確認が必要になる場合があります。評価方法や前提により結論が異なるため、個別の資料に基づく検討が必要です。
少数株主が権利行使をする前のチェックリスト
請求書や内容証明、訴訟・申立ての前に、次の点を確認しておくと、手続選択の誤りや期限の徒過を防ぎやすくなります。
- 自分が株主であることを資料で証明できるか(株主名簿、名義書換の状況)
- 保有株式数と議決権割合を確認したか(100分の3、100分の1などの要件との関係)
- 定款で権利行使の要件が緩和されていないか
- 公開会社・非公開会社、取締役会設置・非設置、監査役設置の別を確認したか
- 会計帳簿閲覧請求などで、請求の理由を具体化できるか
- 期限のある手続(決議取消し3か月、役員解任30日、提訴請求後60日など)ではないか
- 主張を裏づける証拠を確保したか(無断持ち出しは避ける)
- 会社との今後の関係や、株式の出口(買取・継続保有など)を検討したか
- 非上場株式の評価など、税務・会計の確認が必要か
- 内容証明や訴訟の前に、弁護士に要件と方針を確認したか
権利行使にあたって避けたい行為があります。会社資料の無断持ち出し、従業員への過度な接触、SNS等での一方的な発信は、名誉毀損・信用毀損や守秘義務・営業秘密に関する問題を招くおそれがあります。また、感情的な内容証明や、株主権の濫用と受け取られかねない請求は、かえって不利に働くことがあります。冷静に、資料と要件を整理して進めることが大切です。
弁護士に相談するタイミング
次のような場面では、早めに弁護士へ相談することで、判断材料や対応方針を整理しやすくなります。相談は、結果を保証するものではなく、要件と資料を確認したうえで、取り得る選択肢とリスクを整理するためのものです。
- 会社が決算書や帳簿などの資料を出してくれない
- 会計帳簿の閲覧請求を拒否された
- 株主総会の通知が来ない、議事録を見せてもらえない
- 株主提案や株主総会の招集請求を検討している
- 役員の不正や使い込み、不当な役員報酬が疑われる
- 株式の買取価格を提示されたが、妥当か判断できない
- 決議取消しなど、期限のある手続を検討している
- 親族間・共同創業者間で感情的な対立がある
特に、請求書・内容証明・合意書を出す前・署名する前に確認することには意味があります。いったん出した書面や署名した合意は、後から修正が難しい場合があるためです。
よくある質問
1株しか持っていなくても会社に資料を請求できますか?
定款、株主名簿、株主総会議事録、計算書類などの閲覧・謄写は、持株割合の要件がなく、原則として1株でも請求できます。一方、会計帳簿の閲覧請求には議決権または発行済株式の100分の3以上の保有が必要です。どの資料を求めるかにより要件が異なるため、目的に応じた確認が必要です。
少数株主は会計帳簿を必ず見られますか?
必ず見られるわけではありません。100分の3以上の保有と、請求理由の具体的な明示が必要で、会社法が定める拒絶事由に該当する場合は会社が拒めます。対象範囲についても争いがあり、事案により結論が変わります。
会社が帳簿閲覧を拒否した場合はどうすればよいですか?
まずは理由を明示した書面で請求し、それでも応じない場合は、仮処分や訴訟、非訟事件の申立てなどを検討します。どの手続が適切かは緊急性や立証の見通しにより異なります。請求書を出す前に、要件と資料を整理しておくことをおすすめします。
株主提案はどのくらい前までに出す必要がありますか?
取締役会設置会社では、原則として株主総会の日の8週間前までに行う必要があります。また、議決権の100分の1以上または300個以上の保有(公開会社では6か月前からの保有)や、議案数10個までといった制限もあります。定款で要件が異なる場合があるため、確認が必要です。
株主総会の通知が来ない場合、決議を争えますか?
招集手続に法令・定款違反がある場合、決議取消しの訴え(決議の日から3か月以内)を検討できる場合があります。期間が短いため、早めの確認が重要です。実際に争えるかは、手続の瑕疵の有無や程度など個別事情により異なります。
株主代表訴訟をすると自分にお金が入りますか?
いいえ。株主代表訴訟で役員に賠償が命じられても、その賠償金は会社に帰属し、株主本人が直接受け取る手続ではありません。会社の損害を回復し、役員の責任を明らかにする制度です。提起にあたっては、まず会社への提訴請求が必要です。
非上場株式を会社に買い取ってもらうことはできますか?
会社に当然に買い取らせられるわけではありません。任意交渉、譲渡承認請求と売買価格の決定の申立て、組織再編等に反対する場合の買取請求など、場面ごとに手段が異なります。価格の妥当性が争点になりやすく、評価には会計・税務の確認も関係します。
親族会社で大株主と対立している場合、まず何を準備すべきですか?
まず、定款、登記事項証明書、株主名簿で、ご自身の議決権割合と会社の機関設計を確認し、株主総会の通知・議事録、決算書、会社とのやり取りを整理することをおすすめします。そのうえで、情報の確認・意思決定への関与・責任追及・株式の出口のいずれを目指すのかを整理すると、取り得る手段が見えやすくなります。
まとめ
少数株主が会社に対してできることは、次のように整理できます。
- 情報を得る権利……定款・株主名簿・議事録・計算書類の閲覧(1株から)、会計帳簿閲覧請求(100分の3以上)
- 意思決定に関与する権利……議決権の行使、株主提案、株主総会の招集請求、検査役の選任申立て、決議を争う訴え
- 役員の責任を追及する権利……違法行為差止請求、株主代表訴訟(賠償金は会社に帰属)、役員解任の訴え
- 株式を手放す・買取を検討する手段……任意交渉、譲渡承認請求、売買価格決定申立て、反対株主の買取請求
いずれの権利も、定款、登記、株主名簿、議決権割合、そして期限の確認が出発点です。権利ごとに要件が異なり、公開会社・非公開会社や機関設計によっても結論が変わります。請求書や合意書を出す前・署名する前に、資料を整理したうえで相談することをおすすめします。なお、本記事は一般的な整理であり、個別事情により結論は異なります。実際の判断には資料の確認が必要です。
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監修者・執筆者
弁護士・公認会計士 藤井貴之
兵庫県弁護士会所属。会社法、企業法務、株主総会・取締役会に関する紛争、M&A、事業承継、会計・財務が関係する法律相談に対応しています。会社と株主の間のトラブルでは、法律面に加えて、決算書や会計帳簿の読み解き、非上場株式の評価など会計・財務の視点が必要になる場面があり、弁護士と公認会計士の双方の観点から検討します。

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