「自己破産をしたら、保険の仕事は続けられないのだろうか」「登録はどうなるのか」「会社に報告しなければならないのか」。保険募集に携わる方から、こうしたご相談をいただくことがあります。返済の見通しが立たない状況で、収入源そのものを失うかもしれないという不安は、手続を選ぶ判断そのものを鈍らせます。
結論から申し上げると、保険募集人という職名だけで、破産後の扱いが一律に決まることはありません。生命保険か損害保険か、本人の登録か法人の登録か、これから登録を受けるのか既に登録しているのかによって、適用される条文も、次に取るべき手続も変わります。他方で、「当然には失効しない」という一点だけを理由に、そのまま募集を続けてよいと判断することもできません。
この記事では、保険業法上の登録・届出の区分、自己破産が影響する時点、勤務先や所属保険会社への報告、担当業務の見直し、復権後の手続を、条文に沿って整理します。
登録区分と雇用契約・代理店委託契約を確認すれば、届出や担当業務、債務整理の進め方を具体的に整理できます。自己判断で登録の廃止や退職を決める前に、一度ご相談ください。
結論|まず三つの区別から始める
自己破産と保険募集の関係を考えるとき、次の三つを分けて確認することが出発点になります。この三つを混ぜて考えると、実際には当てはまらない結論にたどり着きます。
1 これから登録を受けるのか、既に登録しているのか
新たに登録を受けようとする場面では、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者は登録を拒否されます(保険業法第279条第1項第1号)。これに対し、既に登録している人が開始決定を受けた場合は、内閣総理大臣が登録を取り消し、又は六月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命ずることが「できる」という規定です(同法第307条第1項第1号)。当然に失効するという規定ではありません。
2 生命保険か、損害保険か
生命保険では、募集に従事する個人ごとに登録が必要です。損害保険では、登録を受けるのは代理店であり、その役員・使用人は届出の対象になります。誰の登録が問題になるのかが変わります。
3 本人の登録か、法人の登録か
法人と個人は別の主体です。もっとも、法人の役員に破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者がいることは、その法人の登録拒否事由になります(同法第279条第1項第9号ロ)。法人代理店に勤めているというだけで、本人の破産の影響がなくなるわけではありません。
あわせて、復権の時期にも注意が必要です。免責許可の決定が「確定」したときに復権します(破産法第255条第1項第1号)。決定が出た日と確定した日は別の日です。また、実際に保険業法第307条第1項による取消処分を受けた場合には、その取消しの日から3年を経過しない間は、新たな登録を受けられません(同法第279条第1項第4号)。この3年は復権の日からではなく、取消しの日から数えます。
破産による資格制限の全体像は、別の記事で整理しています。
自分はどの制度で登録・届出をしているのかを確認する
最初に確認すべきは、名刺の肩書ではなく、保険業法上の立場です。「保険会社で働いている」「保険の代理店に勤めている」という説明だけでは、適用される条文が定まりません。
生命保険は「募集する個人ごとの登録」が原則
生命保険募集人とは、生命保険会社の役員(代表権を有する役員、監査役、監査等委員及び監査委員を除きます)若しくは使用人若しくはこれらの者の使用人、又は生命保険会社の委託を受けた者若しくはその再委託を受けた者若しくはこれらの者の役員若しくは使用人で、その生命保険会社のために保険契約の締結の代理又は媒介を行うものをいいます(保険業法第2条第19項)。
そして、保険募集を行えるのは「次条の登録を受けた生命保険募集人」等に限られます(同法第275条第1項第1号)。つまり、生命保険会社に直接雇用されている使用人であっても、法人代理店の使用人であっても、その個人自身が第276条の登録を受けている必要があります。法人代理店自体も、自ら募集を行うのであれば生命保険募集人として登録を受けます。法人の登録と、そこに所属する個人の登録は、別々に存在します。
損害保険は「代理店の登録」と「役員・使用人の届出」に分かれる
損害保険では、第276条の登録を受けるのは損害保険代理店です(同法第276条)。損害保険代理店とは、損害保険会社の委託又は再委託を受けて、その損害保険会社のために保険契約の締結の代理又は媒介を行う者で、その損害保険会社の役員又は使用人でないものをいいます(同法第2条第21項)。個人代理店も法人代理店も、この登録の主体です。
これに対し、損害保険代理店の役員又は使用人に保険募集を行わせようとするときは、代理店が、その者の氏名及び生年月日を内閣総理大臣に届け出なければなりません(同法第302条)。届出書の様式は保険業法施行規則第236条が定める別紙様式第二十五号で、提出先は金融庁長官(権限が委任されている場合は財務局長等)です。この届出をするのは代理店であって、対象となる役員・使用人が第276条の登録を受けるわけではありません。
損害保険会社に直接雇用されている使用人の場合
損害保険会社の役員(代表権を有する役員、監査役、監査等委員及び監査委員を除きます)又は使用人は、その所属保険会社等のために行う保険契約の締結の代理又は媒介を行うことができるとされています(同法第275条第1項第2号)。この立場で行う募集について、本人が第276条の個人登録を受けたり、第302条の代理店使用人届出の対象になったりするわけではありません。生命保険とは構造が異なります。
保険会社の取締役・執行役・監査役は別の規定による
保険会社そのものの取締役・執行役・監査役については、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者はこれらの地位に就くことができないという規定が別にあります(同法第8条の2第2項)。これは会社の機関に関する規定であり、募集資格の問題とは区別して考える必要があります。一般の使用人と混同しないでください。
この記事が扱う範囲
この記事は、生命保険と損害保険の募集に関する登録・届出を対象としています。少額短期保険募集人、保険仲立人、金融サービス仲介業(金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律に基づく制度)、金融機関の職員が兼ねる別制度の資格については、要件も手続も異なります。これらに該当する可能性がある場合は、該当する制度の所管部署及び所属先に個別に確認してください。
| 保険の種類・勤務形態 | 登録・届出の対象者 | 本人の破産で確認する事項 |
|---|---|---|
| 生命保険会社の役員・使用人として募集する | 本人が生命保険募集人として第276条の登録を受ける(第275条第1項第1号、第2条第19項) | 本人の登録が第307条第1項第1号の処分対象になり得る。新たな登録は第279条第1項第1号により拒否される |
| 生命保険の個人代理店 | 本人が生命保険募集人として登録を受ける | 本人の登録について同上。あわせて委託契約の存続を確認する |
| 生命保険の法人代理店自体 | 法人が生命保険募集人として登録を受ける | 法人の登録は代表者個人の破産では失効しない。ただし役員の破産は第279条第1項第9号ロ・第307条第1項第1号の問題になる |
| 生命保険代理店の役員・使用人として募集する | 本人が生命保険募集人として登録を受ける(法人の登録とは別) | 本人の登録が処分対象になり得る。本人が役員であれば法人の登録適格性にも関係する |
| 損害保険の個人代理店 | 本人が損害保険代理店として第276条の登録を受ける | 本人の登録が第307条第1項第1号の処分対象になり得る。委託契約の終了事由も確認する |
| 損害保険の法人代理店自体 | 法人が損害保険代理店として登録を受ける | 法人の登録は役員個人の破産では失効しないが、第279条第1項第9号ロに該当する役員がいる状態は処分の対象になり得る |
| 損害保険代理店の募集に従事する役員・使用人 | 代理店が第302条の届出を行う(本人の第276条登録ではない) | 使用人の破産は第279条第1項第1号を直接適用する場面ではない。役員の場合は同項第9号ロを確認する。社内規程・委託契約上の取扱いも確認する |
| 損害保険会社の役員・使用人として募集する | 第275条第1項第2号により募集できる区分(個人登録・使用人届出の対象ではない) | 取締役・執行役・監査役であれば第8条の2第2項を確認する。使用人は雇用契約・社内規程上の取扱いを確認する |
| 募集に従事しない事務職員 | 登録・届出の対象ではない | 登録上の問題は生じにくいが、担当業務が実質的に募集に当たらないかを所属先と確認する |
生命保険と損害保険の両方を扱う代理店に勤務している場合、損害保険については第302条の届出、生命保険については本人の第276条登録というように、同じ人に二つの制度が同時に当てはまることがあります。どちらか一方だけを確認して結論を出さないでください。
自己破産が登録に影響するのはどの時点か
結論として、法律上の効果が生じるのは「破産手続開始の決定」を受けた時点です。相談、受任通知の発送、申立ての時点では、保険業法上の登録拒否事由や処分事由には該当しません。もっとも、その前の段階でも、契約や社内規程に基づく報告が問題になることはあります。
新たに登録を受ける場面は拒否される
内閣総理大臣は、登録申請者が破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当するときは、その登録を拒否しなければなりません(保険業法第279条第1項第1号)。「拒否することができる」ではなく「拒否しなければならない」と定められています。したがって、開始決定を受けてから復権するまでの間に、新規の登録申請や、転職に伴う新たな登録を進めることはできません。
債務超過の状態にあること、返済が遅れていること、弁護士に相談したこと、受任通知が発送されたこと、申立てを済ませたことは、いずれもこの号の要件ではありません。要件は開始決定です。
既に登録している場合は、当然に失効するわけではない
既に登録している特定保険募集人が第279条第1項第1号に該当することとなったときは、内閣総理大臣は、第276条の登録を取り消し、又は六月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命ずることが「できる」とされています(同法第307条第1項第1号)。これは裁量的な行政処分の根拠規定です。開始決定によって登録が自動的に効力を失うという規定ではありませんし、復権まで例外なく募集全般が法律上禁止されるという規定でもありません。
他方で、処分がされないことが保証されているわけでもありません。処分をするかどうか、するとしてどの処分を選ぶかは、行政庁の判断です。加えて、行政処分とは別に、所属保険会社や代理店が、委託契約・雇用契約・社内規程に基づいて募集業務の取扱いを決めることがあります。「当然失効ではない」ことを、報告せずにそのまま募集を続けてよい理由にすることはできません。
登録が効力を失う場合・抹消される場合との区別
次の三つは、条文も効果も別のものです。混同すると、必要のない廃業届出を出してしまったり、逆に必要な手続を落としたりします。
- 効力の喪失 保険募集の業務を廃止したとき、登録を受けた法人自体について破産手続開始の決定があったとき等、第280条第1項第2号から第7号までのいずれかに該当することとなったときは、その登録は効力を失います(同条第3項)。
- 取消し・業務停止 第307条第1項による行政処分です。第1号の破産のほか、不正の手段による登録(第2号)、法令違反等(第3号)が定められています。また、事務所の所在地や所在を確知できない場合の取消しは第307条第2項の規定によります。
- 登録簿からの抹消 第307条第1項又は第2項により登録を取り消したとき、及び第280条第3項により登録が効力を失ったときに、内閣総理大臣が登録を抹消します(第308条第1項)。抹消は結果としての事務処理であって、独立の処分ではありません。抹消したときは所属保険会社等に通知され、所属保険会社等は第285条第1項の原簿の記載を消除します(第308条第2項)。
登録の抹消は第308条の規定によります。第281条は登録免許税及び手数料に関する規定、第283条は所属保険会社等及び保険募集再委託者の賠償責任に関する規定であり、いずれも破産による届出や登録の取消しの根拠にはなりません。
| 段階 | 法令上の効果 | 会社・登録先に確認すること |
|---|---|---|
| 弁護士への相談・受任通知の発送 | 保険業法上の登録拒否事由・処分事由には該当しない | 雇用契約・代理店委託契約・就業規則に、債務や信用に関する報告義務の定めがないか |
| 破産手続開始の申立て | 同上。申立ての事実自体は第279条第1項第1号の要件ではない | 社内借入れ、給与差押え、保証債務の履行請求など、会社が事実を知り得る経路の有無 |
| 破産手続開始の決定 | 新規登録は拒否される(第279条第1項第1号)。既存の登録は第307条第1項第1号により取消し又は六月以内の業務停止の対象になり得る(当然失効ではない) | 所属保険会社・代理店への報告の要否と時期、募集業務の取扱い、決定書の写しの提出要否 |
| 免責許可の決定 | 決定が出ただけでは復権しない。復権は確定によって生じる(破産法第255条第1項第1号) | 確定の見込み時期、確定証明書の取得方法、社内手続の再開時期 |
| 免責許可決定の確定・復権 | 復権により、第279条第1項第1号の登録拒否事由には該当しなくなる | 登録が維持されているか、廃業により失効しているか、取消処分を受けているかの確認 |
| 募集の再開に向けた手続 | 復権によって過去の登録や委託契約が自動的に復活するわけではない。取消処分を受けていた場合は第279条第1項第4号の3年の期間を確認する | 再登録・使用人届出の要否、試験・研修の有効性、委託契約・雇用契約の再締結、社内の募集権限の付与 |
届出と会社への報告は、誰が何を行うのか
ここは誤解が生じやすい部分です。行政に対する法定の届出と、勤務先や所属保険会社に対する報告は、根拠も義務者も異なります。
個人の破産そのものは、第280条の届出事由ではない
保険業法第280条第1項は、変更(第1号)、保険募集の業務の廃止(第2号)、個人の死亡(第3号)、登録を受けた法人についての破産手続開始の決定(第4号)、法人の合併による消滅(第5号)、合併及び破産手続開始の決定以外の理由による解散(第6号)、金融サービス仲介業の登録等(第7号)を届出事由として定めています。
第4号は「特定保険募集人である法人について破産手続開始の決定があったとき」であり、届出義務者は「その破産管財人」です。登録を受けた個人本人の破産は、この号には含まれていません。第280条は、登録を受けた個人本人の破産を、独立の届出事由として定めていないのです。個人の同時廃止事件について、条文に存在しない届出義務者を想定する必要もありません。
ただし、これは「誰にも知らせなくてよい」という意味ではありません。廃業する場合の第2号の届出、登録事項に変更が生じた場合の第1号の届出は、それぞれ該当すれば必要です。そして、勤務先・所属保険会社への報告は、次に述べるとおり別の根拠に基づく問題です。
登録を受けた法人自体が破産した場合
登録を受けた法人について破産手続開始の決定があったときは、その破産管財人が、遅滞なく内閣総理大臣に届け出なければなりません(第280条第1項第4号)。そして、この事由に該当することとなったときは、その登録は効力を失います(同条第3項)。代表者個人の破産とは扱いが異なりますので、区別してください。
損害保険代理店の役員・使用人の届出
損害保険代理店は、その役員又は使用人に保険募集を行わせようとするときは、その者の氏名及び生年月日を届け出なければならず、届け出た事項に変更が生じたとき、届出に係る役員若しくは使用人が保険募集を行わないこととなったとき、又はこれらの者が死亡したときも同様です(第302条)。届け出るのは代理店です。
金融庁「保険会社向けの総合的な監督指針」Ⅲ-2-1(4)は、この届出について「保険募集に従事する役員又は使用人を届出する場合には、使用人届出日以降でなければ当該届出の対象となる者を保険募集に従事させることが出来ないことに留意すること」としています。募集を担当させる順序が定められている点に注意が必要です。
提出先と、実際に通る経路は別のもの
法定の提出先は内閣総理大臣(権限が委任されている場合は財務局長等)ですが、特定保険募集人等は、所属保険会社等を代理人として、第277条第1項の登録の申請、第280条第1項の届出、第302条の届出をすることができます(第284条)。監督指針Ⅲ-2-1も、所属保険会社を代理人として、登録申請、変更届出、廃業等届出又は使用人届出をとりまとめのうえ行うことができるとしています。実務上は所属保険会社を経由することが多く、その場合、会社側の締切りが法定の期限より前に設定されていることがあります。
なお、条文が「遅滞なく」と定めている場合、これを自分の判断で日数に置き換えることはできません。会社が独自に定める提出期限も、法定の期限とは別のものとして確認してください。
勤務先・所属保険会社への報告は、契約と社内規程の問題
報告の要否は、雇用契約書、代理店委託契約書、就業規則、代理店規程などの定めによります。信用状態や訴訟・法的手続に関する報告義務が定められていることがあり、その場合は、報告しないこと自体が契約上の問題になり得ます。誰が、誰に、いつまでに、どの資料を添えて報告するのかを、条項に即して確認してください。
また、会社が事実を知る経路は報告だけではありません。給与の差押え、社内借入れの返済停止、保証債務の履行請求、破産管財人からの照会、提出書類の記載などが考えられます。「絶対に知られない」という前提で手続を進めることは避けてください。他方、破産したことが取引先や顧客の全員に通知されるわけでもありません。
不祥事件の届出とは区別する
保険業法施行規則第85条第1項第25号は、保険会社等において不祥事件が発生したことを知った場合の届出を定め、同条第8項は、不祥事件を「保険会社の業務を遂行するに際しての詐欺、横領、背任その他の犯罪行為」等に該当する行為を行ったこととしています。個人が自己破産をしたという事実そのものが、当然にこの不祥事件に当たるわけではありません。もっとも、顧客から預かった保険料の流用など別の事実がある場合は、そちらが問題になります。この二つを混同しないでください。
| 発生した事由 | 法定の届出義務者 | 提出先・実際の経路 | 期限の根拠 | 確認資料 |
|---|---|---|---|---|
| 登録を受けた個人本人の破産手続開始 | 第280条は個人本人の破産を独立の届出事由として定めていない(同条第1項第4号は法人の破産に限られる) | 行政への法定届出としては該当する号がない。所属保険会社・代理店への報告は契約・社内規程による | 法定の届出事由がないため、法令上の期限はない | 雇用契約書、代理店委託契約書、就業規則、代理店規程の報告条項 |
| 登録を受けた法人自体の破産手続開始 | その破産管財人(第280条第1項第4号) | 内閣総理大臣(権限が委任されている場合は財務局長等)。所属保険会社等を代理人とすることができる(第284条) | 「遅滞なく」(第280条第1項柱書き) | 破産手続開始決定書、登記事項証明書、登録番号が分かる資料 |
| 第277条第1項各号の登録事項の変更 | 当該変更に係る特定保険募集人(第280条第1項第1号) | 同上。監督指針Ⅲ-2-1は所属保険会社によるとりまとめを認めている | 「遅滞なく」(同項柱書き) | 変更後の内容が分かる資料、現行様式、会社が定める提出締切り |
| 保険募集の業務の廃止 | 特定保険募集人であった個人、又は特定保険募集人であった法人を代表する役員(第280条第1項第2号) | 同上。届出により登録は効力を失う(同条第3項) | 「遅滞なく」(同項柱書き) | 廃業の意思決定が分かる資料、委託契約の終了に関する書面 |
| 損害保険代理店の役員・使用人に募集を行わせる | 当該損害保険代理店(第302条前段) | 金融庁長官又は財務局長等。別紙様式第二十五号(施行規則第236条)。所属保険会社等を代理人とすることができる | 届出日以降でなければ募集に従事させられない(監督指針Ⅲ-2-1(4)) | 届出書の控え、募集開始日が分かる資料 |
| 届出事項の変更、募集を行わないこととなった場合等 | 当該損害保険代理店(第302条後段) | 同上 | 条文に「遅滞なく」の文言はないため、実際の提出時期は所属保険会社の運用と社内期限を確認する | 担当変更・退職の決定資料、届出書の控え |
| 勤務先・所属保険会社・代理店への報告 | 契約・社内規程が定める者(法令上の届出義務ではない) | 契約・社内規程が定める窓口(人事、コンプライアンス部門、代理店の管理部門等) | 契約・社内規程が定める期限。法定期限ではない | 報告義務条項、解除・解約条項、休職規程、報告書の様式 |
担当業務と、雇用・委託関係を分けて考える
「募集はできないが、事務なら続けられる」という整理は、しばしば実態と合いません。何が保険募集に当たるのかを先に確認する必要があります。
保険募集に当たる行為の範囲
保険業法上、保険募集とは保険契約の締結の代理又は媒介を行うことをいいます(第2条第26項)。金融庁「保険会社向けの総合的な監督指針」Ⅱ-4-2-1は、保険募集に該当する行為として、保険契約の締結の勧誘、保険契約の締結の勧誘を目的とした保険商品の内容説明、保険契約の申込みの受領、その他の保険契約の締結の代理又は媒介を挙げています。
同指針は、契約見込客の発掘から契約成立に至るまでの広い意味での保険募集のプロセスのうち、保険募集に該当しない行為を「募集関連行為」とし、保険商品の推奨・説明を行わず契約見込客の情報を保険会社又は保険募集人に提供するだけの行為などを例として挙げています。したがって、行為は「保険募集」「募集関連行為」「いずれにも当たらない行為」に分かれます。名称ではなく、実際に何をしているかで判断されます。
「事務だから大丈夫」と決めない
顧客への電話、既契約の更改・変更の案内、商品の比較、加入の提案、申込書の取扱いは、いずれも内容によって評価が変わります。担当業務を見直す場合は、業務の名称ではなく、具体的な行為を書き出して所属先と確認してください。
| 業務内容 | 募集に当たり得る理由 | 所属先と区切るべき範囲 |
|---|---|---|
| 顧客への電話・訪問 | 会話の中で加入を勧める、商品の内容を説明する場面が生じ得るため | 誰が話すか、話す内容の範囲、勧誘に及んだ場合の引継ぎ手順 |
| 既契約の更改・条件変更の案内 | 更改は新たな契約の締結を伴うことがあり、勧誘・内容説明に当たり得るため | 案内文の送付にとどめるのか、内容の説明まで行うのか、応答者を誰にするのか |
| 商品の比較・提案資料の作成 | 作成にとどまるか、顧客への説明・推奨に及ぶかで評価が変わるため | 資料作成と顧客対応の分離、対外的な名義 |
| 申込書・告知書の受領・確認 | 申込みの受領は保険募集に該当するとされているため | 受領の主体、書類の保管・回付の経路 |
| 見込客情報の取次ぎ | 推奨・説明を伴わなければ募集関連行為にとどまり得るが、内容次第で評価が変わるため | 推奨・説明を行わない範囲の明確化、記録の残し方 |
| 保険料の収納・精算、証券の発送等の内部事務 | それ自体は募集に当たらないことが多いが、顧客対応を伴うと評価が変わるため | 顧客と直接応対する場面の有無、預り金の管理主体 |
配置転換・休職は、会社と協議する事項
一時的な担当変更、内勤への異動、募集に当たらない業務への配置、休職は、いずれも選択肢として検討できます。もっとも、必ず配置転換が認められるわけではなく、収入が維持されるとも限りません。就業規則の異動・休職に関する定めと、給与体系のうち歩合部分の取扱いを確認したうえで、会社と協議することになります。
雇用と委託は別の契約
雇用されている人については、解雇、休職、配置転換が問題になります。破産手続開始の決定を受けたことだけで当然に解雇となるわけではありませんが、解雇が常に許されないわけでもありません。就業規則の定め、実際の理由、手続の経過によって評価が分かれますので、退職勧奨を受けた場合や退職届への署名を求められた場合は、署名前に確認することをおすすめします。
独立した代理店の委託契約については、契約の法的性質に応じて、委任の終了事由(民法第653条第2号は、委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたことを終了事由としています。同法第656条により準委任にも準用されます)と、契約書に定められた終了・解除条項の双方を確認する必要があります。個人受託者本人の破産と、受託者である法人の役員個人の破産とでは、この条文の当てはまりが異なります。
登録が維持されている場合でも、委託契約が別に問題となることがあります。第307条第1項の処分が裁量的であることは、委託契約が継続することを意味しません。会社法上の役員の地位をどうするかも、委託契約の帰すうとは別の論点です。
法人代理店の役員・使用人で迷いやすい場面
募集に従事しない役員の破産も、法人の登録適格性に関係する
保険業法第279条第1項第9号は、法人でその役員のうちに同項第1号から第4号まで又は第6号のいずれかに該当する者があるものを、登録拒否事由としています(同号ロ)。第1号は破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者ですから、役員の破産は法人の登録拒否事由に当たります。既に登録している法人についても、第307条第1項第1号により処分の対象になり得ます。
ここでいう「役員」は、実際に募集に従事する役員に限られません。第277条第2項第2号は、この編における役員について、法人でない社団又は財団における代表者又は管理人を含むものとしたうえで、第283条及び第302条を除いて同じとしています。第2条第19項や第275条第1項第2号で募集を行える者について用いられる「代表権を有する役員並びに監査役、監査等委員及び監査委員を除く」という限定は、第279条第1項第9号にはそのまま当てはまりません。代表取締役や監査役の個人破産も、法人の登録適格性に関係し得ると考えて確認してください。
一般の募集使用人の破産は、そのまま法人の登録拒否事由にはならない
第279条第1項第10号及び第11号は、使用人等に関する事由を定めていますが、その内容は同項第7号(保険仲立人及びその役員・使用人、金融サービス仲介業者の役員等)又は第11号ロ(金融サービス仲介業者)に該当する者がある場合です。第1号の破産を、これらの号に読み込むことはできません。
したがって、損害保険代理店の一般の募集使用人については、本人が第276条登録の主体ではないことも踏まえると、「自己破産をした使用人は一律に法定の募集資格を失う」「その使用人の破産だけで法人の登録が取消しの対象になる」と説明することはできません。ただし、次の三つは別に評価してください。
- 本人が生命保険の個人登録も受けている場合は、その登録について第307条第1項第1号の問題が生じ得ます。
- 本人が代理店の役員を兼ねている場合は、第279条第1項第9号ロの問題になります。
- 所属保険会社・代理店の内部規程や委託契約に、募集従事者の要件が定められていることがあります。
募集担当から外すだけでは、役員の問題は解消しない
役員としての地位を維持したまま募集の担当から外れても、第279条第1項第9号は役員であること自体を問題にしていますので、それだけでは解消しません。退任等を検討する場合も、実態を伴う変更であること、必要な決議・登記・届出が行われること、代理店全体の登録や委託契約に与える影響を、順に確認する必要があります。会社法上の役員の地位と保険業法上の登録適格性は別の問題ですから、退任の可否や時期は会社法・定款の定めに沿って検討してください。
「募集から外せば役員の問題も解消する」「使用人全員の破産が法人の登録拒否事由になる」「法人名義で登録しているから本人は募集を続けられる」といった整理は、いずれも条文と一致しません。誰の登録・適格性が問題になっているのかを、その都度確認してください。
転職・移籍・所属会社の変更
転職、所属保険会社の変更、代理店の移籍、生命保険から損害保険への変更などが、既存の登録の変更手続で足りるのか、廃業と新たな登録・届出を要するのかは、一律には決まりません。既存の登録を維持できるかどうかと、新たに登録を受けられるかどうかは別の問題であり、開始決定を受けて復権を得ない間は、後者は第279条第1項第1号により拒否されます。
先に廃業届出を出して登録を失効させてしまうと、復権するまで新たな登録を受けられず、戻る場所を失うことがあります。自己判断で登録の廃止や転職を先行させず、順序を確認してください。なお、生命保険募集人については、他の生命保険会社の役員・使用人を兼ねること等が制限されています(第282条第2項。政令で定める場合の例外があります)。
復権の時期と、募集を再開するまでの手順
免責許可決定・確定・復権は、別の段階
破産者は、免責許可の決定が確定したときに復権します(破産法第255条第1項第1号)。免責許可の決定が出た日と、その決定が確定した日は別の日です。復権の効果は、人の資格に関する法令の定めるところによるとされています(同条第2項)。
同項は、このほか、破産債権者の同意による破産手続廃止の決定が確定したとき(第2号。破産法第218条第1項の決定です)、再生計画認可の決定が確定したとき(第3号)、破産手続開始の決定後、破産法第265条の罪について有罪の確定判決を受けることなく10年を経過したとき(第4号)を挙げています。また、破産債権者に対する債務の全部について責任を免れたときは、申立てにより復権の決定を受けることができます(同法第256条第1項)。
ここで注意が必要なのは、破産手続開始の決定と同時にする破産手続廃止の決定(同法第216条第1項。いわゆる同時廃止)は、第255条第1項第2号が挙げる第218条第1項の決定とは別のものだという点です。同時廃止の決定を受けたことだけで復権するわけではありません。同時廃止の事件でも、復権は免責許可の決定の確定によることになります。
「必ず3か月で戻れる」「免責の決定が出た当日から募集を再開できる」「必ず復権の申立てが必要になる」といった説明は、いずれも正確ではありません。実際の確定日と、確定を証明する資料の取得方法を、申立てを担当した弁護士又は裁判所に確認してください。
取消処分を受けた場合の「取消しの日から3年」
第307条第1項の規定により第276条の登録を取り消された者は、その取消しの日から3年を経過しない間は、新たな登録を拒否されます(第279条第1項第4号)。この号には、破産を理由とする取消しを除外する文言はありません。したがって、破産のみを理由とする取消処分であっても、復権すれば直ちにこの拒否事由も消えると考えることはできません。起算日は復権の日ではなく、取消しの日です。期間は3年であり、5年ではありません。
もっとも、個人が破産をしたという事実だけで、必ず3年間登録できなくなるわけではありません。第307条第1項による取消処分を受けた場合と、第280条に基づく廃業により登録が効力を失った場合、業務停止命令にとどまった場合、第307条第2項による所在不明等を理由とする取消しを受けた場合、第308条により登録簿から抹消された場合とでは、扱いが異なります。廃業により登録が失効した、あるいは登録簿から抹消されたというだけで、同じ3年の拒否事由が生じるわけではありません。
また、法人の登録が第307条第1項により取り消された場合には、その取消しの日前30日以内に当該法人の役員であった者で取消しの日から3年を経過しないものも、第279条第1項第4号の拒否事由に含まれます。退任していれば影響をすべて避けられるという整理はできません。処分書に記載された根拠条項と処分の日は、再登録を検討する際の必須資料です。
復権後に確認する四つの場合分け
復権によって、過去の登録や代理店委託契約が自動的に復活するわけではありません。次のどれに当たるかによって、必要な手続が変わります。
- 個人の登録が維持されている場合 登録の現況、所属保険会社等の原簿の記載、社内の募集権限が回復されているかを確認します。
- 損害保険代理店の使用人届出が変更されていた場合 募集に従事させるためには、代理店による第302条の届出が必要です。監督指針Ⅲ-2-1(4)により、届出日以降でなければ募集に従事させることができません。
- 廃業により登録が効力を失っていた場合 新たに第277条第1項の登録申請を行うことになります。所属保険会社との委託契約や雇用契約も、改めて確認が必要です。
- 行政処分により登録を取り消されていた場合 第279条第1項第4号の3年の期間を、処分書に記載された取消しの日から確認します。
試験・研修についても確認が必要です。損害保険については、日本損害保険協会が、損保一般試験は基礎単位と商品単位があり「5年の更新制となります」と説明しています。生命保険の試験・研修の有効期間や再受験の要否は、所属予定の生命保険会社及び生命保険協会の公式案内で確認してください。試験に合格していることと、登録を受けていること、委託・雇用関係があること、社内で募集権限が付与されていることは、それぞれ別の事柄です。
任意整理・個人再生を含む手続の選び方と、収入・手数料の確認
手続によって、登録への当てはまりが異なる
保険業法第279条第1項第1号が定める要件は「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」です。任意整理や個人再生を選んだことは、それ自体ではこの要件に当たりません。個人再生については、再生計画認可の決定が確定したときが破産法第255条第1項第3号の復権事由として挙げられていますが、これは既に破産手続開始の決定を受けている場合の規定です。
もっとも、手続の選択は登録への影響だけで決まるものではありません。返済の原資となる継続的な収入があるか、住宅をどうするか、保証人がいるか、債権者の構成はどうか、といった条件を踏まえて検討する必要があります。「保険募集人には個人再生が適している」と一律に結論づけることはできません。返済を継続できる見込みがないまま個人再生を選べば、途中で行き詰まることもあります。
手続の違いそのものは、別の記事で整理しています。
自己破産と任意整理の違いを確認する/個人再生の清算価値の考え方を読む
歩合給・募集手数料・継続手数料の確認
保険募集に携わる方の家計は、固定給のほかに、募集手数料、継続手数料、歩合給などで構成されていることが多く、この点が資料の整理に影響します。次のような項目を確認してください。
- 給与のうち固定部分と歩合部分の区別、直近の変動
- 継続手数料の発生原因と、支払の時期・条件
- 契約が早期に解約された場合等の手数料返還請求の有無と、その根拠となる契約条項
- 所属保険会社・代理店からの借入れ、前渡金、立替金
- 代理店の債務についての保証、事業用の借入れ
- 事務所賃料、システム利用料、車両費などの事業経費
将来支払われる手数料であっても、発生原因、権利の帰属、契約の内容によって扱いが異なります。入金日が到来したからといって、当然に自由に使える資金だと判断することはできません。手数料返還請求が成立するかどうか、会社側からの相殺が認められるかどうかも、契約条項と事実関係によって結論が変わりますので、一律に断定しないでください。
顧客の資金と自分の資金を分ける
代理店名義の資金、顧客から預かった保険料、所属保険会社に精算すべき資金、本人の生活資金は、それぞれ区別して整理してください。顧客から預かった保険料を他の用途に充てることは、これまで述べた登録の問題とは次元の異なる問題を生じさせます。
また、特定の債権者だけに返済する、財産を隠す、名義だけを変更する、家族に事業を無償又は著しく低い価額で移すといった対応は避けてください。破産手続の中で問題になるだけでなく、免責の判断にも影響し得ます。所属保険会社への返済や手数料の精算についても、自己判断で先に進めず、契約書と精算書を示して弁護士に相談してください。
なお、自分自身が契約者となっている生命保険の解約返戻金の扱いは、募集人としての登録の問題とは別の論点です。
自己破産で手元に残せる財産の考え方を読む/個人事業主の自己破産で事業用財産がどう扱われるかを読む
申立て前・手続中・再開前に確認する資料
相談の段階では、次の資料のうち手元にあるものを整理していただけると、検討が早く進みます。すべてがそろっていなくても構いません。
- 登録番号・登録状況が分かる資料(登録通知、社内の登録一覧、原簿の記載事項が分かる書面)
- 損害保険代理店の使用人届出の控え、届出日が分かる資料
- 所属保険会社・乗合先の一覧、委託の範囲が分かる資料
- 雇用契約書又は代理店委託契約書、就業規則、代理店規程
- 報告義務条項、解除・解約条項、休職規程の該当部分
- 実際の担当業務の一覧、募集権限・社内承認の範囲が分かる資料
- 予定されている移籍・異動・組織変更に関する情報
- 破産手続開始決定書、免責許可決定書、確定が確認できる資料
- 登録関係で受け取った通知、行政処分を受けた場合はその処分書
- 給与明細、歩合・募集手数料・継続手数料の明細
- 手数料返還請求に関する通知、精算書
- 借入れ・保証債務の一覧、所属先からの借入れが分かる資料
- 家計の収支と事業経費が分かる資料
- 法人代理店の役員である場合は、登記事項証明書、職務分担が分かる資料
顧客名簿や、顧客の保険契約の内容が分かる資料を、最初の問い合わせの段階でまとめて送信する必要はありません。まずはご自身の立場、手続の段階、担当業務の概要をお伝えください。そのうえで、必要な資料の範囲と共有の方法をご相談します。
弁護士に相談するタイミング
次の場面では、判断の前に一度確認しておくことをおすすめします。いずれも、後から取り消すことが難しい選択が含まれます。
- 破産手続開始の申立てを検討し始めたとき 手続の選択によって登録への当てはまりが変わりますので、収入・手数料の構造を踏まえて検討できます。
- 届出や社内報告が必要になりそうなとき 法定の届出と契約上の報告を切り分け、誰が何をいつまでに行うのかを整理できます。
- 退職届・廃業届・委託契約の終了に関する書面に署名する前 登録を失効させる意味と、その後の再登録の見通しを確認できます。
- 移籍・転職・再登録を検討する前 既存の登録を維持できるか、新たな登録を受けられるかを分けて確認できます。
- 復権後、募集を再開する前 登録の現況、処分の有無、届出・試験・委託契約の要否を整理できます。
結論は、登録の区分、契約書の定め、手続の段階によって変わります。資料を確認したうえで判断する必要がありますので、断定的な見通しをお伝えすることはできませんが、確認すべき順序と、避けるべき対応は整理できます。
よくある質問
Q 自己破産を申し立てた時点で、募集ができなくなりますか。
A 保険業法第279条第1項第1号が定める要件は「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」であり、申立ての時点ではこの要件に当たりません。ただし、雇用契約や代理店委託契約、社内規程に基づく報告が必要になる場合がありますので、契約書と規程を確認してください。
Q 既に登録していれば、自動的に取消しになるのですか。
A 既に登録している人が破産手続開始の決定を受けた場合、内閣総理大臣は登録を取り消し、又は六月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命ずることが「できる」とされています(同法第307条第1項第1号)。当然に失効する規定ではありません。もっとも、処分がされないことが保証されているわけでもなく、所属先の取扱いも別に確認する必要があります。
Q 生命保険と損害保険では、何が違いますか。
A 生命保険では、募集に従事する個人ごとに第276条の登録が必要です(同法第275条第1項第1号、第2条第19項)。損害保険では、登録の主体は代理店であり、その役員・使用人については代理店が第302条の届出を行います。誰の登録が問題になるのかが異なります。
Q 生命保険代理店の使用人と、損害保険代理店の使用人とで、破産の影響は違いますか。
A 異なります。生命保険代理店の使用人として募集を行う人は本人が生命保険募集人として登録を受けているため、本人の登録が第307条第1項第1号の処分対象になり得ます。損害保険代理店の一般の使用人は第276条登録の主体ではなく、第279条第1項第10号・第11号も破産を事由としていません。ただし、その人が役員を兼ねている場合や、生命保険の個人登録も受けている場合は別に評価が必要です。
Q 会社への報告と、行政上の届出は誰が行うのですか。
A 行政上の届出は保険業法第280条・第302条が義務者を定めています。登録を受けた法人自体の破産はその破産管財人、登録事項の変更は当該変更に係る特定保険募集人、損害保険代理店の役員・使用人の届出は代理店です。登録を受けた個人本人の破産は、第280条が独立の届出事由として定めていません。勤務先・所属保険会社への報告は、雇用契約・委託契約・社内規程に基づく別の問題です。
Q 募集以外の業務や内勤を続けることはできますか。
A 業務の名称ではなく、実際の行為が保険募集に当たるかどうかで判断されます。金融庁の監督指針は、勧誘、勧誘を目的とした商品内容の説明、申込みの受領等を保険募集に該当する行為として挙げています。担当変更や内勤への異動は選択肢として検討できますが、認められるかどうか、収入が維持されるかどうかは、就業規則と会社との協議によります。
Q 復権すれば、すぐに募集を再開できますか。取消処分を受けた場合の3年間は、いつから数えますか。
A 復権によって過去の登録や委託契約が自動的に復活するわけではありません。登録が維持されているか、廃業により失効しているか、処分により取り消されているかによって、必要な手続が変わります。第307条第1項により登録を取り消された場合の3年は、復権の日ではなく取消しの日から数えます(第279条第1項第4号)。5年ではありません。
Q 個人再生や任意整理を選ぶときは、何を確認すればよいですか。
A これらの手続を選んだこと自体は、第279条第1項第1号の要件には当たりません。もっとも、返済の原資となる継続的な収入、住宅の扱い、保証人の有無、債権者の構成によって適否が変わります。歩合給や継続手数料の変動、手数料返還請求の有無、所属先からの借入れを含めて確認する必要があります。
まとめ
- 新たに登録を受ける場面と、既に登録している場面とを分けて確認する。新規登録は拒否され(第279条第1項第1号)、既存の登録は取消し又は業務停止の対象になり得る(第307条第1項第1号)。当然失効ではない。
- 生命保険は個人ごとの登録、損害保険は代理店の登録と役員・使用人の届出。自分がどちらに当たるかを最初に確認する。
- 登録を受けた個人本人の破産は、第280条の独立の届出事由ではない。ただし、勤務先・所属保険会社への報告は契約と社内規程に基づく別の義務であり、確認が必要である。
- 法人代理店では、募集に従事しない役員の破産も登録適格性に関係する(第279条第1項第9号ロ)。一方、一般の募集使用人の破産をそのまま同項第1号に当てはめることはできない。
- 復権は免責許可の決定の確定によって生じる(破産法第255条第1項第1号)。決定日と確定日は別である。
- 第307条第1項による取消処分を受けた場合は、取消しの日から3年を経過するまで新たな登録を受けられない。廃業による失効や登録簿からの抹消と同じには扱わない。
- 次の行動は、登録番号・契約書・担当業務の一覧・収入資料をそろえ、届出と報告の切り分けを確認することである。
保険募集に携わる方の債務整理では、登録の区分、届出の要否、担当業務の範囲、手数料の扱いを同時に整理する必要があります。当事務所では、登録関係の資料と契約書、収入資料を確認したうえで、手続の選び方と会社への報告の進め方を整理します。
初回の法律相談は無料です(予約制)。借金問題(債務整理)については、可能な範囲でお電話での無料相談にも対応しています。無料相談の対象・条件は、初めての方へのページでご確認ください。
ご予約のお電話 078-797-5227(受付時間 9:00〜20:00)
執筆事務所・弁護士のご紹介
弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所
代表弁護士・公認会計士 藤井 貴之(兵庫県弁護士会所属、日本公認会計士協会兵庫会所属)
取扱分野 遺産相続、交通事故、労働法務、債務整理、企業法務、M&A、事業承継、契約書作成・レビュー
〒654-0154 神戸市須磨区中落合2丁目2−5 名谷センタービル7階(神戸市営地下鉄西神・山手線 名谷駅から徒歩1分)
この記事は、記載した法令・公的資料を確認したうえで作成しています。個別の事案における結論は、登録の区分、契約内容、手続の段階によって異なります。実際の対応にあたっては、資料を確認したうえでご相談ください。

24時間365日受付