上肢・下肢切断の後遺障害|義肢・車いす・住宅改造費の請求 |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|

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上肢・下肢切断の後遺障害|義肢・車いす・住宅改造費の請求

交通事故で腕や脚を切断する重いけがを負われた方やご家族から、「義足の代金は誰が払うのか」「何年ごとに作り替えられるのか」「車いすは何台まで認められるのか」「玄関と浴室を直さないと家に帰れないと言われたが、工事代を請求できるのか」「運転を続けたいので車を改造したいが、費用はどう扱われるのか」といったご相談をいただきます。治療やリハビリテーションと並行して住まいと移動手段を整えなければならず、数十万円から数百万円規模の支出の判断を短い期間で迫られる場面です。

この記事では、上肢又は下肢を切断した場合を中心に、義肢・装具・車いすの費用、住宅改造費、自動車改造費を損害として請求する際の考え方、将来の買替え費用の算定方法、公的な支給・助成制度との関係、そして契約・発注・購入の前にそろえておきたい資料を整理します。これらの費用は、後遺障害等級が認定されれば自動的に全額が認められるものではなく、事故との因果関係、必要性、仕様と金額の相当性を資料で示せるかどうかで結論が変わります。個別事情により結論は異なりますので、支出の前に一度、資料をご確認ください。

「工事や購入をしてよいか」「先に保険会社へ何を出すべきか」で迷っておられる段階でも、資料を確認したうえで検討の順序を整理できます。

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四つの費目の全体像と、支出前にすべきこと

四つの費目は、いずれも「事故がなければ支出しなかった費用」を対象としますが、争われ方はそれぞれ異なります。

四つの費目と主に問題となる点
費目 請求の対象となり得るもの 主に問題となる点
義肢・装具 初回製作費、適合調整費、修理・部品交換費、将来の再製作費 標準仕様か高機能仕様か、予備の要否、交換の周期
車いす・付属品 本体、クッション・姿勢保持部品、電動機構、修理費、将来の買替費 義肢歩行との併用、屋内用・屋外用など複数台の要否、電動式の必要性
住宅改造費 段差解消、扉・廊下の拡幅、浴室・便所・寝室の改修、昇降設備等 事故による追加部分か老朽化修繕か。家族が受ける便益、資産価値の増加
自動車改造費 運転補助装置、車いすの積載・昇降・固定装置、乗降補助装置等 本人が運転するのか家族が送迎するのか、車両本体をどこまで問題にするのか

支出の前に、次の三つを整えておくと、後の交渉での説明が容易になります。

  • 必要性の裏付け 主治医、理学療法士、作業療法士、義肢装具士などが、身体の状態と生活環境に照らして、その用具・工事がなぜ必要なのかを示す資料。
  • 仕様と範囲の説明資料 どの部品・どの工事項目が、どの動作のために必要なのかが分かる仕様書、図面、カタログの該当部分。
  • 複数の見積り 同等の仕様で複数の業者から取得した、項目別の内訳が分かる見積書。

工事や購入を終えた後では、改造前の状態や、代替手段では足りなかった事情を示す資料を作りにくくなります。既に支出された後でも補える資料はありますので、後記の「争われやすい場面」の項をご確認ください。

上肢・下肢の切断と後遺障害等級

欠損障害の等級は、失った部位によって定められています

自賠責保険の後遺障害等級は、自動車損害賠償保障法施行令の別表に定められています。上肢・下肢の欠損(切断)は、失った部位を基準に区分されています。

上肢・下肢の欠損に関する等級(別表第二の文言)
等級 等級表に定められた障害の内容
第1級 両上肢をひじ関節以上で失つたもの/両下肢をひざ関節以上で失つたもの
第2級 両上肢を手関節以上で失つたもの/両下肢を足関節以上で失つたもの
第4級 一上肢をひじ関節以上で失つたもの/一下肢をひざ関節以上で失つたもの/両足をリスフラン関節以上で失つたもの
第5級 一上肢を手関節以上で失つたもの/一下肢を足関節以上で失つたもの
手指・足指 失つた指の本数と部位に応じて第3級から第9級までが定められています(両手の手指の全部=第3級、一足をリスフラン関節以上=第7級、一足の足指の全部=第8級など)

等級表の文言のとおり、欠損障害の等級は切断した部位を基準に定められており、義肢を装着した状態でどの程度歩けるか、動かせるかによって決まるものではありません。他方、断端部の痛み、隣接する関節の可動域制限、皮膚の状態、反対側の負担といった障害が残る場合には、別に評価の対象となることがあります。事故前から同一部位に障害があった場合は、加重の問題として、既にあった障害の評価が差し引かれることもあります。

実際の認定では、切断の高位、断端の長さ、他の部位の障害の有無が確認されます。また、自賠責保険の等級・保険金額と、加害者や任意保険会社に対して請求する民事上の損害賠償額とは、別のものとして検討する必要があります。

等級が付いても、費用が自動的に認められるわけではありません

義肢の費用や住宅改造費は、後遺障害慰謝料や逸失利益とは別の損害項目です。等級が高いから当然に全額が認められる、等級が低いから一切認められない、という関係にはありません。それぞれの費用について、事故との相当因果関係、必要性、仕様と金額の相当性を個別に検討します。切断による就労への影響と逸失利益の考え方は、後遺障害逸失利益の計算方法と喪失率・喪失期間を確認するで扱っています。

費用が認められるための共通の判断枠組み

因果関係・必要性・相当性の三段階で検討します

民法第709条は、故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う旨を定めています。出発点は、その費用が事故による障害の結果として必要になったといえるかです。切断という事実だけで一律に決まるものではなく、障害の内容、残存機能、生活環境、就労・通院・通学・介助の状況に照らして、その用具や工事が必要といえるかが問われます。

必要性が認められる場合でも、選んだ仕様や工事の範囲が相当かが検討されます。より安価な標準品で足りるのではないか、工事の範囲が広すぎるのではないか、という指摘は実務上よく出てきます。なぜその仕様・範囲でなければ目的を果たせないのかを、医学的・生活上の理由と結びつけて説明する必要があります。

どの損害項目として計上するかも整理しておきます

症状固定前に作った初回の義肢は治療関係費として扱われることがあり、症状固定後の交換費用は将来の費用として別に立てるのが通例です。衛生用品などの継続的な消耗品費や介助のための費用は、装具費とは別の項目として整理されます。同じ支出を将来介護費と将来装具費の両方に計上すると、二重計上として指摘を受けます。費目の建て方は、示談案や損害計算書の内訳を確認しながら決めることになります。

家族の便益、資産価値の増加、老朽化修繕との切り分け

住宅改造や自動車の買替えでは、ご本人以外の家族も利益を受ける部分、事故がなくてもいずれ必要だった修繕・買替えに当たる部分、不動産の価値が増加したとみられる部分が含まれることがあります。「家族も使うから一切認められない」「工事費の全額が当然に認められる」といった一律の説明はいずれも正確ではなく、工事項目ごとに目的と受益の実態を資料で示して検討します。過失相殺や既存障害が問題となる事案では、これらの影響も受けます。

自賠責保険の支払基準と、民事上の損害賠償は別のものです

自賠責保険の支払基準(金融庁・国土交通省告示。最終改正は令和元年告示、令和2年4月1日施行)は、治療関係費の一項目として、医師が身体の機能を補完するために必要と認めた義肢、歯科補てつ、義眼、眼鏡、補聴器、松葉杖等の用具の製作等に必要かつ妥当な実費を支払う旨を定めています。もっとも、これは自賠責保険という制度の中での支払の基準であり、傷害による損害の支払限度額は被害者一人につき120万円とされています。

支払基準にいう「義肢等の費用」と、民法上の損害として請求を検討する将来の装具・車いす費、住宅改造費、自動車改造費とは、対象の範囲も算定の方法も同じではありません。自賠責保険の枠内で支払われたことをもって民事上の賠償が済んだとはいえず、逆に、支払基準に項目がないことをもって民事上も請求できないということにもなりません。

義肢・装具・車いすの購入費、修理費、交換費

用語の整理

国立障害者リハビリテーションセンターの支援機器用語集では、義肢は「欠失した四肢の一部の形態又は機能を代償するために装着,使用する人工の手足」(上肢は義手、下肢は義足)、装具は「四肢・体幹の機能障害の軽減を目的として体表に装着して,機能を補助する器具」とされ、両者は区別されます。

切断された方が常に車いすを必要とするとは限りません。義肢による歩行が中心の方、義肢と車いすを場面に応じて併用する方、車いすが移動手段の中心になる方があり、屋内用と屋外用の使い分け、手動式と電動式の選択も、身体の状態、断端の状況、住環境、通勤・通学・通院の実態によって異なります。どの組合せが必要かは、主治医やリハビリテーションに携わる職種の評価を踏まえて判断される事柄です。

費目を分けて整理する

用具に関する費用の区分
区分 内容 検討のポイント
初回の製作・購入費 義肢・装具の製作費、車いす本体・付属品の購入費 処方・適合判定の資料と見積書で仕様と金額を示せるか
適合調整・修理費 断端の変化に伴う調整、ソケットの作り直し、部品交換、バッテリー等 履歴を残しているか。将来分を買替費に含めるか別項目とするか
将来の再製作・買替費 一定期間ごとの作り直し、車いすの買替え 一回当たりの費用、交換の周期、いつまで必要かを立てられるか
複数台・予備 屋内用と屋外用、通勤・通学用、入浴用、主用と予備 使用する場面と、一台では足りない理由を具体的に示せるか
レンタルと購入 短期間の使用、成長・症状の変化が見込まれる場合 購入を前提とする主張が相当か、期間で区切るべきか

標準仕様と高機能仕様、成長期のお子さん

高機能の膝継手や電動機構は価格が大きく異なるため、相当性が争われやすい部分です。製品名や価格帯を弁護士が推奨することはできませんが、その機能によって何ができるようになるのかを、日常生活動作や就労内容と結びつけて示すことが重要です。転倒歴、通勤経路の勾配や階段、職務上必要な動作、介助者の有無といった事情が裏付けになります。成長期のお子さんについては、成長に伴う交換と通常の耐用に伴う交換とを分けて整理することが考えられます。

将来の買替え・交換費用をどう計算するか

計算に必要な要素

将来費用の算定に必要な要素
要素 確認すること
一回当たりの費用 どの仕様を前提とするか。付属品・調整費を含めるか(見積書・仕様書)
最初の交換時期 現在使用中の用具をいつまで使えるか(製作時期・使用状況・点検記録)
交換の周期 本体・部品ごとに周期が異なる(過去の交換・修理履歴、製作事業者の説明)
いつまで必要か その方の性別・年齢に対応する平均余命(厚生労働省の生命表)
中間利息控除 各交換時点までの利息相当額を差し引く(事故日と適用される法定利率)
他項目との重複 将来介護費・将来治療費・雑費に同じ費用が入っていないか(損害計算書)

中間利息控除と法定利率

民法第417条の2第2項は、将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において、その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率による旨を定めています。同条は民法第722条第1項により不法行為に準用されますので、将来の装具費や改造費についても、事故時(請求権発生時点)の法定利率によることになります。

法定利率は、民法第404条第2項により年3パーセントとされ、同条第3項以下により3年を一期として変動する仕組みがとられています。法務省の公表によれば、令和8年4月1日から令和11年3月31日までの期間についても、基準割合が年0.4パーセントであり変動の要件を満たさないため、法定利率は年3パーセントのまま変動しないとされています。

現在の利率をすべての事故に当てはめることはできません。令和2年3月31日以前に生じた請求権については年5パーセントとされていた期間があり、どの利率によるかは請求権が生じた時点によって決まります。事故日と適用される条文・利率は、必ず個別にご確認ください。

平均余命の使い方

「いつまで必要か」は、その方の性別と年齢に対応する平均余命を用いるのが一般的です。厚生労働省の令和7年簡易生命表では、男の平均寿命(0歳の平均余命)は81.35年、女は87.33年ですが、これは0歳の平均余命であり、症状固定時に40歳の方の余命がおよそ41年である、といった読み方はできません。同表の40歳の平均余命は男42.29年・女48.05年、65歳では男19.68年・女24.52年です。

説明のための仮定例

以下は計算の仕組みを説明するための仮定であり、実在の事案でも、相場を示すものでもありません。

  • 症状固定時に40歳の男性(令和7年簡易生命表の40歳男性の平均余命は42.29年)。
  • 義足の一回当たりの費用を、仮に100万円と置く。
  • 交換の周期を、仮に5年と置く。
  • 請求権が生じた時点の法定利率を、仮に年3パーセントと置く。

この仮定では、交換は5年後から平均余命の範囲内である40年後まで合計8回生じます。各時点の100万円を年3パーセントで現在価値に直すと、5年後は約86万円、10年後は約74万円、20年後は約55万円、40年後は約31万円となり、8回分の合計はおよそ435万円です。

確認していただきたいのは金額ではなく、年額に係数を掛けるのではなく、各交換時点の金額をそれぞれ現在価値に直して合計するという考え方です。交換の周期、最初の交換時期、いつまで必要とみるかが変われば、結論は大きく動きます。

公的制度の耐用年数を、そのまま交換の周期にできるか

障害者総合支援法に基づく補装具費支給制度では、厚生労働省の告示(補装具の種目、購入等に要する費用の額の算定等に関する基準。平成18年厚生労働省告示第528号、最終改正は令和8年8月31日こども家庭庁・厚生労働省告示第9号)が、種目ごとに耐用年数を定めています。義肢についても、次のように細かく分かれています。

義肢の耐用年数の例(告示の定めによるもので、民事賠償の交換周期を決める基準ではありません)
区分 種類と耐用年数
義足(殻構造) 股義足4年/大腿義足(差込式・ライナー式)3年/大腿義足(吸着式)5年/下腿義足2年
義手(殻構造) 上腕義手(装飾用以外)3年/上腕義手(装飾用)4年/前腕義手3年/手指義手(装飾用)1年
骨格構造義肢の部品 パイプ(チューブアダプター)5年/継手類3年/手袋・足部1.5年/その他小部品1年

この表から分かるとおり、「義足は何年で作り替える」と一律に決まっているわけではなく、構造と部品ごとに1年から5年まで分かれています。しかも同じ告示は、「耐用年数とは、通常の使用状態において当該補装具が修理不能となるまでの予想年数を示しているものであるため、耐用年数を一律に適用しないこと。」と注記しています。厚生労働省の補装具費支給事務取扱指針も、身体状況や使用状況によって実際の耐用年数は異なるとして、再支給や修理の際に耐用年数を一律に適用することなく、個々の実情に沿った対応を行うよう求めています。

公的制度上の耐用年数は、その制度の中で再支給を検討する際の目安であり、民事の損害賠償において交換の周期を当然に決める基準ではありません。税務上の法定耐用年数も、賠償上の買替えの周期とは別のものです。実際の使用頻度、修理の履歴、身体状況の変化を示す資料の方が、周期を説明する材料として重要になります。

住宅改造費・家屋改造費

問題になりやすい工事の範囲

車いすを使う生活に切り替える場合、玄関のスロープや式台、屋外の通路、廊下・出入口の幅、扉の形式(開き戸から引戸へ)、浴室の出入りと洗い場、便所の広さと手すり、寝室の配置、階段昇降機の設置などが対象になります。車いすの寸法と旋回に必要な広さ、移乗の動作、介助者の動線が基準です。義肢による歩行が中心の場合でも、断端の状態や転倒の危険から手すりや段差解消が必要になることがあります。必要な工事は障害の内容と住まいの構造によって異なり、一律の答えはありません。

事故による追加部分と、それ以外の部分を分ける

最も争われるのは、支出のうちどこまでが事故による追加の負担といえるかです。実務上、次の区分が問題になります。

  • バリアフリー化のための追加費用と、事故がなくてもいずれ必要だった老朽化修繕(給排水管の更新、外壁・屋根の補修など)との区別
  • ご本人の生活動作のために必要な部分と、家族の生活の便益にもなる部分
  • 工事によって建物の資産価値が増加したとみられる部分の扱い
  • 建物の残存耐用期間と、将来の建替え・再改造の要否

これらは、見積りを「一式」でまとめてしまうと説明が難しくなります。項目別・数量別の内訳が分かる見積書を、同等の仕様で複数取得しておくことが説明の基礎になります。あわせて、改造前の写真・平面図・動線図、退院前訪問や住環境評価の記録、医療・リハビリテーション職の意見、工事を行う権限を示す資料(登記事項証明書、賃貸借契約書、所有者の承諾書、管理規約)、完了後の写真と請求書・領収書を残してください。

新築・建替え・転居・賃貸住宅の場合

新築、建替え、転居によって対応する場合は、通常の建築費用・住居費用と、障害に対応するための追加費用との切分けが問題になります。もともと新築を予定していたのか、既存住宅の構造上、改修では対応できなかったのかといった事情が確認されます。賃貸住宅では賃貸人の承諾、原状回復の負担、退去時の扱いが、分譲マンションでは管理規約や共用部分の制約が問題になります。

なお、脊髄損傷による麻痺があり、常時の介助を前提とした住環境を検討される場合は、必要な設備も介護体制も異なります。麻痺の程度と将来介護費を中心とした整理は脊髄損傷の後遺障害と介護を要する等級の考え方を確認するを、遷延性意識障害など常時の介護が必要な状態や成年後見を含む整理は植物状態の場合の将来介護費と成年後見の考え方を確認するをご覧ください。

工事の見積りや保険会社からの回答をお持ちであれば、どの項目が争点になり得るか、どの資料を補うべきかを、契約の前に整理できます。

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自動車改造費・福祉車両

改造装置、仕様の差額、車両本体を分けて考える

自動車に関する費用は性質の異なるものが混在しています。まとめて「車の費用」として請求すると、争点が整理できません。

自動車に関する費用の区分
区分 内容 主に確認される事柄
運転操作のための改造 手動運転装置、左足用アクセル、旋回ノブ、ペダル延長など 本人が運転すること、免許の条件、装置の必要性
乗降・積載のための装置 回転・昇降シート、車いす用リフト・スロープ、車いす固定装置 車いすの寸法・重量との適合、介助者の有無
通常車両との仕様差 福祉車両として販売される車種と、同等の通常車両との価格差 比較対象とする車両が適切か、差額の算定根拠
車両本体 車両そのものの取得費用 事故前の保有・利用状況、下取り・残存価値、通常の買替え時期
将来の再取得 車両の買替えに伴う装置の再設置・再取得 周期、いつまで必要か、中間利息控除

車両本体の価格まで含めて請求する主張は、事故前から自動車を保有していたか、その残存価値や下取り額はどうか、事故がなくてもいずれ買い替えていたのではないか、といった点から争われやすい部分です。事故前の車検証、購入時期、走行距離、利用状況の記録をご準備ください。

本人が運転する場合と、家族が送迎する場合

ご本人が運転を続ける場合は、運転操作のための改造の必要性と免許上の条件が中心になります。家族が送迎する場合は、乗降と車いすの積載を補助する装置が中心となり、公共交通機関、福祉タクシー、介護タクシー等では足りない事情(地域の交通事情、通院の頻度と時間帯、待ち時間、費用)の説明が必要になります。通勤・通院・通学・通所・介護のいずれの目的で、どの程度の頻度で自動車が必要かを記録しておいてください。

運転の可否は、医師と公安委員会の手続によって確認されます

身体の障害がある場合、運転免許には条件が付されることがあり、道路交通法上、身体の障害の状態によって免許の拒否・保留・取消し・停止が問題となる場面もあります。運転を再開できるかどうか、どのような条件が付くかは、弁護士が判断できる事柄ではありません。主治医にご相談のうえ、各都道府県警察の安全運転相談窓口(全国統一の専用ダイヤル#8080)をご利用ください。兵庫県警察の受付時間は、月曜日から金曜日の9時から12時まで及び13時から16時まで(土曜日・日曜日・祝日、12月29日から1月3日までを除く。)とされています。

改造の契約や車両の発注を、免許の条件が確定する前に進めてしまうと、装置の仕様が結果と合わなくなることがあります。相談・手続の記録は、改造の必要性を説明する資料にもなりますので、日付が分かる形で残しておいてください。

公的な支給制度・助成制度との関係

補装具費支給制度

障害者総合支援法第76条第1項は、市町村は、障害者又は障害児の保護者から申請があり、障害の状態からみて補装具の購入、借受け又は修理を必要とする者であると認めるときは、その費用について補装具費を支給する旨を定めています(世帯の一定の者の所得が政令で定める基準以上の場合を除きます)。厚生労働省の説明によれば、利用者負担は原則として定率1割で、所得区分に応じた負担上限月額が設けられ、市町村民税所得割の最多納税者の納税額が46万円以上の場合は支給対象外とされています。

支給の流れは、市町村への申請、身体障害者更生相談所等の判定又は意見に基づく決定、支給券の交付、事業者との契約、購入という順序です。制度を利用する場合は、契約・購入の前に市町村へ相談することが前提となります。なお、成長に伴い短期間での交換が必要な場合、障害の進行により短期間の利用が想定される場合、購入に先立ち複数の補装具の比較検討が必要な場合は、借受けの対象となる旨が定められています。

制度ごとに、賠償との調整の仕組みは異なります

公的な給付を受けた場合に、その分が損害賠償額から差し引かれるのか(損益相殺)、給付を行った主体が加害者に請求できるのか(代位・求償)は、制度ごとに定めが異なり、一律の結論はありません。例えば労働者災害補償保険法第12条の4は、第三者の行為による事故について保険給付をしたときは、政府がその価額の限度で被害者の損害賠償請求権を取得し、被害者が同一の事由について賠償を受けたときは、その価額の限度で保険給付をしないことができる旨を定めています。他方、障害者総合支援法第7条は他の法令に基づく給付等との調整を定めるもので、損害賠償との関係を直接定めた規定ではありません。

「公的制度で賄えるから賠償は不要」「交通事故の賠償が常に公的制度に優先する」という説明は、いずれも一般化しすぎています。給付の法的性質、対象となる損害との同一性、代位・求償の規定の有無、支給の時期、自己負担額を、制度ごとに確認する必要があります。勤務中・通勤中の事故では労災保険との調整と第三者行為災害の届出が問題になり、治療用装具では健康保険の療養費の扱いが問題になります。具体的な控除・代位の結論は、資料を確認したうえでの検討が必要です。

神戸市の主な制度

神戸市の助成制度の概要(各ページの公表内容による)
制度 主な内容 申請時期の注意
補装具費の支給 手帳又は医師の意見書による判定を経て支給。原則1割負担、負担上限月額あり。18歳以上は、本人又は配偶者の判定用市民税所得割額が46万円以上の場合は対象外 契約済・購入済・支払済のものは支給されないため、区役所保健福祉課への事前相談が必要
住宅改修助成事業 自宅のバリアフリー工事が対象。限度額100万円(介護保険の住宅改修費等と併用する場合は20万円を控除)。生計中心者の前年分の所得金額が600万円(給与のみは800万円)以下。助成率は課税状況により異なる。新築・建替え・増改築、老朽化による取替えは対象外 申請は必ず工事着工前。事前に着工した場合は対象外
身体障害者用自動車改造費の助成 手帳(肢体不自由)1級又は2級の方が、自ら所有し運転する自動車の操向装置・駆動装置等を改造する場合に、経費の2分の1以内、1台につき10万円を限度として助成。所得要件あり。過去5年間に助成を受けていないこと これから改造するもの又は6か月以内に行った改造が対象。区の保健福祉部が窓口

助成制度を利用できることと、民事上の損害としていくらが認められるかは別の問題です。要件、限度額、所得基準、申請の時期は変更されることがありますので、必ず神戸市の各制度のページで最新の内容をご確認ください。

保険会社から争われやすい場面と、対応する資料

想定される指摘と、準備しておきたい資料
想定される指摘 準備しておきたい資料
仕様が高機能・高額にすぎる/標準品やレンタルで足りる 医師・義肢装具士・理学療法士等の意見、生活動作の記録、同等仕様の比較見積り、適合調整の履歴
複数台・予備は重複である 屋内外の生活動線、通勤・通学の経路、修理時の代替手段の記録
交換の周期が短すぎる 修理・部品交換の履歴、使用頻度の記録、製作事業者の説明、写真
平均余命まで使用する前提が不合理である 年齢に対応する生命表の該当箇所、生活状況の見通しに関する資料
工事に一般的なリフォーム・老朽化修繕が含まれる 項目別内訳の見積書、改造前の写真、事故と関係のない部分を区分した一覧
家族も便益を受ける/転居や別の間取りで対応できた 動線図、使用状況の記録、リハビリ職の評価、住宅の構造資料、転居費用の試算
車両本体まで買い替える必要はない 車検証、購入時期・走行距離、既存車両の改造可否に関する事業者の回答
公共交通・タクシー・家族送迎で足りる 通院・通所の頻度の記録、地域の交通事情、代替手段の費用と所要時間の比較
公的給付で賄われる 支給決定通知、自己負担額の明細、制度の根拠資料
既存の障害・事故前からの必要性である 事故前の診療録、以前の手帳・支給歴、事故前の生活状況に関する資料
将来介護費等と二重計上である 損害計算書、介護費の積算根拠、費目ごとの内訳
支出後に作成された意見書で信用性が低い 支出前の診療録・リハビリ記録・退院前訪問記録などの同時期資料

既に工事や購入を終えている場合でも、当時の診療録、リハビリ記録、退院前訪問の記録、業者とのやり取り、改造前の写真が残っていれば、後から補える部分があります。手元の資料を時系列に並べて確認しておくことをおすすめします。

契約・購入・示談の前に確認したいこと

契約・発注・購入の前に

  • その用具・工事が必要な理由を、医師やリハビリテーションに携わる職種の資料で示せるか
  • 仕様・工事範囲・台数の根拠が、生活動作や就労内容と結びついているか
  • 同等の仕様で複数の見積りを取り、項目別の内訳を確認したか
  • 改造前の状態を、写真・図面で記録したか
  • 公的な支給・助成制度の対象になるか、事前申請が必要かを窓口に確認したか
  • 賃貸住宅・分譲マンションの場合、所有者の承諾や管理規約上の制約を確認したか
  • 自動車の場合、免許の条件や安全運転相談の結果を踏まえた仕様になっているか
  • 保険会社へ、支出の予定と根拠資料を事前に伝えたか(事前の承認が法律上の請求の要件になるわけではありませんが、後の説明が容易になります)

後遺障害の申請の前に

  • 切断の高位、断端の状態、他の部位の障害が、後遺障害診断書に漏れなく記載される見込みか
  • 義肢・装具・車いすの処方や使用状況が、診療録・リハビリテーション記録に残っているか
  • 日常生活動作の評価が記録されているか
  • 事故前から同一部位に障害があった場合、その資料を確認したか

申請に向けた医療資料の整え方は、後遺障害診断書の作成前に確認したい資料と画像検査の注意点を見るで扱っています。

示談書に署名する前に

  • 示談案に、装具・車いす・住宅改造・自動車改造の各費目が計上されているか
  • 将来の交換費・再取得費が含まれているか。含まれている場合、一回当たりの費用、周期、期間、利率の前提は何か
  • 公的給付の控除がされている場合、その根拠と金額が示されているか
  • 将来介護費・将来治療費・将来雑費と重複していないか
  • 清算条項の内容と、その効果を確認したか
  • 勤務中・通勤中の事故の場合、労災保険との調整を確認したか

示談書には、示談金のほかに互いに請求しないという清算条項が置かれるのが一般的です。示談が成立した後で、将来の交換費用や改造費を追加して請求することは、難しくなることがあります。署名の前に、費目と算定の前提を確認しておいてください。

受け取った賠償金の税務上の扱いを気にされる方もおられます。所得税法第9条第1項第18号及び所得税法施行令第30条は、心身に加えられた損害に基因して支払を受ける損害賠償金等を非課税とする旨を定めていますが、何を補てんする金銭かによって扱いが変わります。損害項目ごとの整理は、賠償金・示談金の課税関係と損害項目ごとの考え方を確認するをご覧ください。

弁護士に相談するタイミング

ご相談によって結果が保証されるものではありませんが、資料を確認することで、検討すべき費目に漏れがないか、必要性・相当性を示すためにどの資料が不足しているか、将来費用の算定の前提(一回当たりの費用、周期、期間、事故日に対応する法定利率)をどう組み立てるか、公的制度の利用と賠償請求との関係をどう整理するか、示談案の費目がどのような前提で計上されているかを整理できます。

時期としては、大きな支出をする前、後遺障害の申請の前、示談案を受け取った後が、特に検討の余地が大きい場面です。ご本人が入院中で動けない時期でも、ご家族が診療の経過、住まいの状況、事故前の生活の資料を整理しておくことで、その後の手続を進めやすくなります。

よくある質問

車いすを屋内用と屋外用の2台請求できますか。

請求できる可能性はありますが、台数分が当然に認められるわけではありません。それぞれをどの場面で使うのか、一台では対応できない事情は何かを、住まいの構造、外出の頻度、介助の状況とあわせて示す必要があります。使用状況の記録やリハビリ職の評価が資料になります。

義足は何年ごとに作り替える前提で請求できますか。

一律の年数は決まっていません。補装具費支給制度の告示は、義肢の耐用年数を構造や種類ごとに1年から5年まで分けて定めていますが、同時に「耐用年数を一律に適用しないこと」と注記しています。民事の損害賠償では、実際の使用頻度、修理・部品交換の履歴、断端や体格の変化を示す資料をもとに周期を検討することになります。

将来の交換費用は、いつまで請求できますか。

一般には、その方の性別・年齢に対応する平均余命を前提に検討されます。もっとも、交換の周期、最初の交換の時期、加齢に伴う使用状況の変化をどうみるかで結論は変わり、中間利息控除も行われます。前提の置き方で金額が大きく動くため、資料を確認したうえでの検討が必要です。

住宅改造費は全額認められますか。

全額が当然に認められるとは限りません。事故による追加の負担といえる部分と、老朽化修繕や仕様の向上に当たる部分、家族も便益を受ける部分の切分けが問題になります。逆に「家族も使うから認められない」という一律の説明も正確ではありません。項目別の内訳が分かる見積書と改造前の状態を示す資料をもとに、工事項目ごとに検討することになります。

福祉車両の車両本体の価格も請求できますか。

改造費や通常車両との仕様の差額に比べると、車両本体の価格は争われやすい部分です。事故前に自動車を保有していたか、その残存価値はどうか、事故がなくてもいずれ買い替えていたのではないか、といった点が確認されます。既存の車両を改造して対応できないかも検討されますので、事業者の回答を書面で残しておいてください。

公的な助成を受けると、賠償を請求できなくなりますか。

請求できなくなるとは限りません。もっとも、給付の性質、対象となる損害との同一性、代位・求償の規定の有無は制度ごとに異なるため、調整の要否は個別に確認する必要があります。労働者災害補償保険法のように代位を定める規定がある制度もあります。支給決定通知や自己負担額の明細を残しておいてください。

もう工事や購入をしてしまいました。今からでも請求できますか。

請求を検討すること自体は可能です。ただし、改造前の状態や代替手段では足りなかった事情を示す資料が作りにくくなるため、当時の診療録、リハビリ記録、退院前訪問の記録、業者とのやり取り、写真など、支出の時期に作成された資料を集めることが重要になります。手元の資料を時系列に整理したうえでご相談ください。

示談案に将来の交換費用が入っていません。どうすればよいですか。

示談書に署名する前であれば、費目の追加や算定の前提について協議する余地があります。清算条項のある示談が成立した後は追加の請求が難しくなることがありますので、署名の前に、示談案の内訳と、計上されていない費目の有無をご確認ください。

まとめ

  • 義肢・装具・車いすの費用、住宅改造費、自動車改造費は、等級が付けば自動的に全額が認められるものではなく、事故との相当因果関係、必要性、仕様と金額の相当性を資料で示せるかが分かれ目になります。
  • 切断された方が常に車いすを必要とするとは限らず、義肢歩行との併用、屋内用と屋外用、手動式と電動式の選択は、身体の状態と生活環境によって異なります。将来の交換費用は、一回当たりの費用、交換の周期、いつまで必要かを立てたうえで、各交換時点の金額を現在価値に直して合計し、請求権が生じた時点の法定利率で中間利息を控除します。
  • 補装具費支給制度の耐用年数は種類・部品ごとに1年から5年まで分かれており、告示自体が一律に適用しないよう求めています。制度上の耐用年数が、賠償上の交換の周期を当然に決めるものではありません。
  • 住宅改造費では老朽化修繕・仕様の向上・家族の便益・資産価値の増加との切り分けが、自動車では改造装置・仕様差・車両本体の区別が争点になります。公的給付と賠償の調整は制度ごとに異なります。
  • 次の行動として、契約・発注・購入の前に、必要性の意見、仕様書、複数見積り、改造前の写真をそろえてください。示談書に署名する前に、費目と算定の前提をご確認ください。

装具・車いす・住宅改造・自動車改造の費用は、支出の前に資料を整えておくことで、後の交渉での説明がしやすくなります。見積書、医療資料、保険会社からの回答や示談案をご確認のうえ、請求の対象となり得る費目、不足している資料、将来費用の算定の前提、手続の進め方を整理することができます。当事務所では、交通事故について初回のご相談を無料で承っています(事前のご予約が必要です。法テラスの扶助相談をご利用の場合や弁護士費用特約をご利用の場合は、取扱いが異なります。)。契約・購入・示談の前に、一度ご確認いただくことをおすすめします。

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監修者・執筆者

藤井 貴之(ふじい たかゆき)
弁護士・公認会計士/兵庫県弁護士会所属・日本公認会計士協会兵庫会所属
弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所 代表弁護士・公認会計士

交通事故、相続、離婚、債務整理、企業法務等に対応しています。重い後遺障害が残った事案では、後遺障害の申請に必要な資料の整理、装具・住宅改造・自動車改造の費用の損害項目としての整理、将来費用の算定の前提の検討、示談案の確認まで、資料に基づく方針の検討をお手伝いします。

所在地:〒654-0154 兵庫県神戸市須磨区中落合2丁目2-5 名谷センタービル7階

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参考資料(本文で参照した法令・公的資料)

本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言を行うものではありません。請求できる費目や金額は、障害の内容、生活環境、事故日、既払金、公的給付の有無その他の個別事情により異なります。医学的な必要性、製品の選定、建築の設計、運転の可否は、それぞれ主治医、義肢装具士、建築の担当者、公安委員会等の判断による事柄です。記載の内容は令和8年9月時点の情報に基づきます。

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