交通事故で肋骨を何本も折り、肺挫傷や気胸・血胸・血気胸の治療を受けた方から、「退院はできたが、階段を上ると息が切れる」「以前と同じ速さでは歩けない」「作業の途中で息苦しくなる」といったご相談をいただくことがあります。保険会社から示談を求められている段階で、この息苦しさが後遺障害として扱われるのか分からない、というお声も少なくありません。
結論から申し上げると、肋骨多発骨折、肺挫傷、血気胸といった傷病名や治療歴があること自体で、呼吸機能障害の後遺障害等級が決まるわけではありません。判断の中心になるのは、症状固定の時点で残っている呼吸機能の低下、それを裏付ける客観的な検査結果、事故による胸部外傷との結び付き、そして日常生活や仕事への支障です。
この記事は、治療が一段落した後の後遺障害と損害賠償を扱う法律記事です。強い息苦しさ、胸の痛み、意識のもうろうとした状態などが現在ある場合は、記事の内容でご自身の状態を判断せず、まず医療機関にご相談ください。検査の要否、治療方針、症状固定の時期に関する医学的な判断は医師が行うものです。
この記事で分かることは、次のとおりです。
- 肋骨多発骨折・肺挫傷・血気胸の後に残る息苦しさが、どう後遺障害として検討されるか
- 自動車損害賠償保障法施行令の等級表に置かれた文言と、詳しい認定基準との関係
- 動脈血ガス分析、スパイロメトリー、呼吸困難の程度が評価される順序
- 既往症や喫煙歴がある場合に、事故との因果関係をどう整理するか
- 肋骨の変形や胸部の痛みが併存する場合の考え方
- 症状固定前、申請前、示談前に確認しておきたい資料
息苦しさが残ったまま、後遺障害の申請や示談を控えている方へ
診療録、検査結果票、後遺障害診断書が、認定の判断に使われる資料と対応しているかは、内容を確認しなければ分かりません。神戸みらい法律会計事務所では、交通事故について初回相談を無料で承っています。資料を拝見したうえで、確認すべき点と今後の対応方針を整理します。
呼吸機能障害の後遺障害でまず確認したいこと
息苦しさが残っている場合、次の六つを分けて整理すると、いま何が足りないのかが見えやすくなります。
| 整理する項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 受傷名と治療経過 | 肋骨多発骨折、肺挫傷、気胸・血胸・血気胸、胸腔ドレナージ、人工呼吸管理、手術の有無。事故直後の事実であり、後遺障害そのものではありません。 |
| 症状固定時に残る症状 | 安静時・歩行時・階段昇降時・作業中のどの場面で、どの程度の息切れが生じるか。 |
| 客観的な検査結果 | 動脈血ガス分析、スパイロメトリー、画像検査などの結果と、その検査条件。 |
| 事故との因果関係 | 事故前の記録と、受傷後から症状固定までの推移の比較。 |
| 生活・就労上の支障 | 歩行距離、階段の昇降、業務内容の変更、休業や減収、周囲の配慮の有無。 |
| 手続の段階 | 治療中か、症状固定後か、申請前か、認定結果を受け取った後か、示談の提示を受けているか。 |
肋骨多発骨折・肺挫傷・血気胸と「呼吸機能障害」は別のもの
胸部に強い外力が加わると、肋骨の骨折に加えて、肺そのものが傷つく肺挫傷、胸腔内に空気がたまる気胸、血液がたまる血胸、その両方が生じる血気胸などが起こることがあります。治療では、胸腔にドレーンを入れて空気や血液を抜く処置、人工呼吸による管理、手術が行われることもあります。
もっとも、後遺障害として評価されるのは、治療が一段落し、これ以上の改善が期待しにくい状態、すなわち症状固定に至った時点でなお残っている機能の低下です。入院が長かったこと、処置が大掛かりだったこと自体が等級に直結するわけではありません。
肺挫傷や血気胸の診断があっても、症状固定時に呼吸機能の低下が客観的に確認されなければ、呼吸機能障害としては評価されません。逆に、「検査値が基準に届かないから何も残らない」と決まるわけでもありません。肋骨の変形や胸部の痛み、肋間神経の症状は、呼吸機能障害とは別の系列の後遺障害として検討される余地があります。
肺は機能の予備が大きい臓器で、片側の一部が損なわれても安静時の検査値に表れにくいことがあります。「息苦しさは続くのに、安静時の検査では大きな異常が出ない」という状況は珍しくありません。
呼吸機能障害で検討される後遺障害等級
自賠責の等級表に置かれている文言
自賠責保険の後遺障害等級は、自動車損害賠償保障法施行令の別表第一及び別表第二に定められています。呼吸機能の障害は、この等級表では「胸腹部臓器の機能」に関する項目として扱われます。
| 自賠責の等級・号 | 労災の項目番号 | 自動車損害賠償保障法施行令の文言 |
|---|---|---|
| 別表第一 第1級2号 | 第1級の4 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
| 別表第一 第2級2号 | 第2級の2の3 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
| 別表第二 第3級4号 | 第3級の4 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
| 別表第二 第5級3号 | 第5級の1の3 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
| 別表第二 第7級5号 | 第7級の5 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
| 別表第二 第9級11号 | 第9級の7の3 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
| 別表第二 第11級10号 | 第11級の9 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの |
| 別表第二 第13級11号 | 第13級の3の3 | 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの |
出典:自動車損害賠償保障法施行令別表第一・別表第二。自賠責と労災では項目番号の付け方が異なるため、労災の番号をそのまま自賠責の号数として用いることはできません。この表は等級表の文言を示したものであり、ご自身の症状から等級を判定するための表ではありません。
詳しい判断は労災の認定基準に準じて行われる
等級表の文言は「著しい障害」「相当な程度に制限される」といった抽象的なものです。国土交通省の支払基準では、後遺障害の等級の認定は原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行うとされています。呼吸器の障害についての詳しい基準は、厚生労働省の「胸腹部臓器の障害に関する障害等級認定基準について」(平成18年1月25日基発第0125002号)に置かれています。
ただし、「準じて行う」ことと、労災の詳細な基準がそのまま自賠責に条文として適用されることとは同じではありません。業務中や通勤中の事故では両制度が関係し得ますが、認定手続も不服申立ての方法も別のものです。労災側については、労災の後遺障害等級に納得できない場合の進め方を確認するをご覧ください。
第13級11号をどう考えるか
等級表には、第13級11号として「胸腹部臓器の機能に障害を残すもの」という一般的な規定が置かれています。しかし、厚生労働省の認定基準が呼吸機能の障害について示している判定の道筋から導かれる等級は、後述するとおり第11級までであり、第13級に至る数値評価の経路は示されていません。
したがって、「息苦しさが軽いから第13級11号になるはずだ」という理解は正確ではありません。この号は、脾臓の摘出など他の胸腹部臓器の障害で問題になることが多い規定です(脾臓摘出など内臓損傷の後遺障害等級を確認する)。呼吸機能障害としての評価に届かない場合は、肋骨の変形や神経症状といった別の系列で評価できるかを検討することになります。
等級の判断で確認される検査
厚生労働省の認定基準は、呼吸機能の障害について三つの判定方法と適用の順序を定めています。原則は動脈血ガス分析による判定ですが、その等級が、スパイロメトリー及び呼吸困難の程度による判定又は運動負荷試験による判定で得られる等級より低い場合には、そちらの等級によることとされています。また、動脈血ガス分析による判定が第3級以上に当たる場合は他の判定を要せず、スパイロメトリーを適切に行えない場合はその判定を行わないこととされています。
原則となる動脈血ガス分析
動脈血ガス分析は、動脈から採血して血液中の酸素と二酸化炭素の状態を調べる検査です。認定基準では、動脈血酸素分圧の区分、動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲(37Torr以上43Torr以下)にあるかどうか、介護の要否を組み合わせて判定します。
| 動脈血酸素分圧 | 判定の枠組み |
|---|---|
| 50Torr以下 | 常時介護が必要なものは第1級、随時介護が必要なものは第2級、いずれにも当たらないものは第3級。 |
| 50Torrを超え60Torr以下 | 動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲にないものは、介護の要否により第1級から第3級まで。これらに当たらないものは第5級。 |
| 60Torrを超え70Torr以下 | 動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲にないものは第7級、これに当たらないものは第9級。 |
| 70Torrを超えるもの | 動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲にないものは第11級。 |
出典:厚生労働省「胸腹部臓器の障害に関する障害等級認定基準について」(平成18年1月25日基発第0125002号)。実際の判定は、検査条件、介護の要否、他の判定方法との比較を含めて行われます。
注意していただきたいのは、動脈血酸素分圧と、指先などで測る経皮的動脈血酸素飽和度は別の指標であるという点です。飽和度が正常に近い数値でも、それだけで動脈血ガス分析の結果を代替することはできません。
スパイロメトリーと呼吸困難の程度
スパイロメトリーは、息を吸ったり吐いたりする量と速さを測る検査です。認定基準では、%1秒量又は%肺活量の区分と、呼吸困難の程度を組み合わせて判定します。
%1秒量は、実測の1秒量を予測1秒量で割って百分率で表した指標であり、努力性肺活量に対する1秒量の割合である「1秒率」とは別の指標です。%肺活量も、実測の肺活量を予測肺活量で割ったものです。
| 検査結果の区分 | 呼吸困難の程度と問題になる等級 |
|---|---|
| %1秒量が35以下、又は%肺活量が40以下 | 高度の呼吸困難があり常時介護が必要なものは第1級、随時介護が必要なものは第2級、いずれにも当たらないものは第3級。中等度は第7級、軽度は第11級。 |
| %1秒量が35を超え55以下、又は%肺活量が40を超え60以下 | 高度又は中等度の呼吸困難があるものは第7級。軽度は第11級。 |
| %1秒量が55を超え70以下、又は%肺活量が60を超え80以下 | 高度・中等度・軽度いずれかの呼吸困難があるものは第11級。 |
出典:前掲基発第0125002号。この判定方法から直接導かれるのは第1級、第2級、第3級、第7級及び第11級です。第5級及び第9級は、動脈血ガス分析による判定で問題になります。
呼吸困難の程度は、認定基準上、次のように定義されています。高度の呼吸困難とは、呼吸困難のため、連続しておおむね100メートル以上歩けないものをいいます。中等度の呼吸困難とは、呼吸困難のため、平地でさえ健常者と同様には歩けないが、自分のペースでなら1キロメートル程度の歩行が可能であるものをいいます。軽度の呼吸困難とは、呼吸困難のため、健常者と同様には階段の昇降ができないものをいいます。いずれも「呼吸困難のため」という原因の限定が置かれています。
運動負荷試験が問題になる場面
動脈血ガス分析による判定でも、スパイロメトリー及び呼吸困難の程度による判定でも等級に該当しない場合であっても、呼吸機能の低下による呼吸困難が認められ、運動負荷試験の結果から明らかに呼吸機能に障害があると認められるものについては、第11級が問題になるとされています。ただし、これは安静時の検査で拾いきれない障害を補う位置付けの判定方法であり、歩行の試験を一度受ければ第11級になるという趣旨ではありません。どのような負荷試験をどの条件で行うかは医師の判断によります。
検査の条件と結果票を残しておく
呼吸機能の検査結果は、測定時の状態によって変わり得ます。安静時か、室内の空気を吸っている状態か、酸素を投与していないか、採血時の体位はどうかといった条件が異なると、数値をそのまま比較できません。検査の実施日と症状固定日の前後関係、酸素投与の有無、複数回検査している場合はそのすべての結果票、そして検査条件が記載された報告書を確保しておいてください。
後遺障害の認定は、提出された書面をもとに行われます。損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所が請求書類に基づいて調査を行い、判断が難しい事案は地区本部や本部で審査されます。面談で症状を説明する機会が当然にあるわけではないため、書面から読み取れる内容がそのまま判断材料になるという前提で資料を整えてください。
事故との因果関係、既往症、喫煙歴
呼吸機能は、事故以外の要因によっても低下します。慢性閉塞性肺疾患、喘息、間質性肺疾患、心疾患、貧血、加齢、体格、喫煙歴などが影響し得るため、既往症や喫煙歴があると、事故による胸部外傷との因果関係が問題になることがあります。
ただし、既往症があれば直ちに因果関係が否定されるわけではありません。事故前の健康診断や既往症の診療記録、受傷直後の画像所見と入院中の検査値の推移、受傷機転、治療経過と症状固定時点の検査結果を時系列で並べ、事故の前後で何がどう変わったのかを示せるかどうかが実質的な分かれ目になります。
後遺障害の認定における加重障害の扱いと、民事上の損害賠償における素因減額は別の論点です。前者は等級と保険金額の計算の問題、後者は賠償額を定めるにあたって被害者側の要因をどこまで考慮するかという問題です。いずれも個別事情により結論が変わります。
なお、客観的な所見が乏しいことをもって症状を気持ちの問題として扱うべきではありません。不安や過換気、長期の安静による体力低下が関与しているかどうかの鑑別は、医師が行う医学的な判断です。
肋骨の変形や胸部の痛みが残っている場合
胸部外傷では、呼吸機能の低下以外の後遺障害も問題になり得ます。
- 肋骨に著しい変形が残る場合は、別表第二第12級5号(鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの)が問題になり得ます。骨折した本数ではなく、変形の程度と画像所見が検討の対象になります(骨折後に残る変形障害の等級の考え方を見る)。
- 胸部の痛みや肋間神経の症状が残る場合は、別表第二第12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)又は第14級9号(局部に神経症状を残すもの)が問題になり得ます。
複数の後遺障害が残った場合、施行令上は、第13級以上に当たる後遺障害が二以上あるときは重い等級を一級、第8級以上が二以上あるときは二級、第5級以上が二以上あるときは三級繰り上げる形で保険金額が定められています。ただし、「該当しそうな等級を足し合わせれば必ず上がる」という意味ではありません。障害等級の認定基準では、一つの障害に他の障害が通常派生する関係にある場合には、いずれか上位の等級をもって認定するという取扱いが示されています。肋骨の変形、胸部の痛み、呼吸機能の低下が併存する場合の評価は、個別の判断になります。
症状固定から後遺障害の申請まで
| 段階 | 確認したいこと |
|---|---|
| 治療中 | 息切れがどの場面で生じるか、仕事や家事のどの動作が難しいかを診療の際に具体的に伝え、記録に残す。 |
| 症状固定の前後 | 症状固定は保険会社が一方的に決めるものではなく、医学的には医師の判断が中心です。呼吸機能の検査の有無を医師に確認する。 |
| 後遺障害診断書の作成時 | 自覚症状、検査結果、治療経過、生活や就労への支障が正確に反映されているか確認する。 |
| 申請 | 相手方保険会社を通じて進める方法(事前認定)と、自賠責保険会社へ直接請求する方法(被害者請求)があります。提出資料を自分で確認したい場合は後者が選択肢です。 |
| 認定結果の受領後 | 認定理由、提出済み資料、検査条件、既往症の評価がどう扱われたかを確認し、次の手続を検討する。 |
医師に等級の認定を求めたり、事実と異なる記載を依頼したりすることは適切ではありません。行うべきは、いつ・どの動作で・どの程度息切れが生じるのかを正確に伝え、実施済みの検査結果が漏れなく反映されているかを確認することです。準備の進め方は後遺障害診断書の作成前に確認したい資料を見ると後遺障害の証拠の集め方を確認する、症状固定を告げられた段階の確認事項は症状固定と言われたときの確認事項を見るをご覧ください。
非該当や想定より低い等級であった場合には、異議申立て、自賠責保険・共済紛争処理機構への申請、訴訟といった選択肢があります。ただし、異議申立てをすれば等級が変わるものではありません。何が足りなかったのかを認定理由から読み取り、追加できる資料があるかを検討することが先になります(非該当となった場合の異議申立ての判断材料を見る)。
認定後に検討する損害項目
後遺障害等級が認定されることと、損害賠償として何がいくら認められるかは別の問題です。呼吸機能障害が残る場合、次の項目が検討の対象になり得ます。
- 後遺障害慰謝料/等級に応じて検討します。自賠責の支払基準による金額と、裁判実務上参照される基準による金額は異なります。
- 後遺障害逸失利益/等級ごとの労働能力喪失率だけで機械的に決まりません。基礎収入、職務内容、息切れで難しくなった作業、配置転換や周囲の配慮、減収の有無、将来の不利益を検討します(後遺障害逸失利益の計算方法を確認する)。
- 将来の治療費・器具費・介護費など/在宅酸素療法や呼吸リハビリテーションが継続する場合、医学的必要性、相当性、継続の見込み、因果関係、金額を資料で示す必要があります。
呼吸機能の低下が仕事に与える影響は職種によって異なり、重量物を扱う作業、長時間の歩行や階段の移動を伴う業務、声を出し続ける業務では、検査値の低下が小さくても支障が大きいことがあります。
なお、自賠責保険から支払われる金額には等級ごとの限度額が定められており、介護を要する後遺障害(別表第一)は第1級4,000万円・第2級3,000万円、別表第二は第1級3,000万円から第14級75万円までとされています(国土交通省の公表資料による。2026年7月26日確認)。これは自賠責保険の限度額であり、加害者に対して民事上請求できる損害賠償額の上限ではありません。
呼吸機能障害でよく問題になるケース
- 息苦しさは続くが、安静時の検査では異常が乏しい/検査の実施状況と条件、運動負荷試験の要否を医師に確認します。
- 事故前から呼吸器の疾患や喫煙歴がある/事故前の記録と事故後の推移を並べられるかが分かれ目です。
- 整形外科中心の治療で、呼吸機能の検査が行われていない/症状固定の前に検査の有無を確認する必要があります。
- 肋骨の変形、胸部の痛み、呼吸機能の低下が重なっている/別の系列として検討し、併合や通常派生の関係を踏まえて評価されます。
- 復職して減収はないが、業務の軽減や同僚の援助が続いている/減収がないことだけを理由に逸失利益が否定されるわけではありません。業務内容の変更や配慮を記録に残してください。
- 非該当、又は想定より低い等級となった/認定理由の根拠と提出済み資料との対応関係を確認します。
申請前・示談前に確認したい資料
- 交通事故証明書
- 診断書、後遺障害診断書
- 診療録(カルテ)、診療報酬明細書
- 退院サマリー、手術記録、胸腔ドレーンや人工呼吸管理の記録
- 胸部エックス線、CT等の画像と読影結果
- 動脈血ガス分析、スパイロメトリー、その他の検査結果票(検査条件の記載を含む)
- 事故前の健康診断の結果、既往症の診療記録
- 症状と生活上の支障の時系列メモ
- 職務内容、配置転換、業務上の配慮、休業・減収に関する資料
- 後遺障害等級の認定票と認定理由
- 保険会社からの示談金提示書
- 自動車保険の証券(弁護士費用特約の有無を含む)
示談の内容を確認する際の視点は、示談案で確認すべき項目を見るで整理しています。期限もあらかじめ確認してください。自賠責保険への被害者請求のうち後遺障害に関する部分は、国土交通省の公表資料によれば、症状固定日の翌日から3年以内とされています。加害者に対する損害賠償請求権については、人の生命又は身体を害する不法行為の場合、民法第724条第1号及び第724条の2により、損害及び加害者を知った時から5年間、不法行為の時から20年間とされています。ただし、事故日と改正法の施行日との関係、請求の相手方、請求権の種類により適用される規定が異なることがあります。異議申立てや紛争処理の申請をしたことで当然に時効が止まるわけではありませんので、具体的な期限は個別に確認してください。
弁護士に相談するタイミング
相談によって等級が認定されるわけではありません。整理できるのは、資料と認定基準の対応関係、立証上の不足、手続の選択肢、検討すべき損害項目です。次の場面が、確認しておく意味の大きいタイミングです。
- 症状固定を打診されたが、呼吸機能の検査の有無が分からないとき
- 後遺障害診断書の作成前で、何を伝えればよいか整理したいとき
- 申請の方法を選ぶとき、提出資料の不足を確認したいとき
- 非該当、又は想定より低い等級の認定を受けたとき
- 示談金の提示を受け、署名前に損害項目を確認したいとき
よくある質問
- 肺挫傷や血気胸と診断されれば、必ず後遺障害が認定されますか。
- 診断名や治療歴だけで等級が決まるものではありません。症状固定時に残る呼吸機能の低下、客観的な検査結果、事故との因果関係が検討されます。個別事情により結論は異なります。
- 息苦しさが残っていますが、どの検査が必要ですか。
- 認定基準では動脈血ガス分析による判定が原則とされ、スパイロメトリー及び呼吸困難の程度による判定、運動負荷試験による判定も定められています。どの検査をいつ行うかは医師が判断します。
- 経皮的動脈血酸素飽和度が正常でも、後遺障害は認定されますか。
- 経皮的動脈血酸素飽和度と動脈血酸素分圧は別の指標です。飽和度が正常に近くても、それだけで結論は決まりません。実施された検査の内容と条件の確認が必要です。
- 呼吸器の既往症や喫煙歴があると、認定されませんか。
- 直ちに因果関係が否定されるわけではありません。事故前の記録と、受傷後から症状固定までの検査値・画像の推移を比較して検討します。
- 肋骨の変形と呼吸機能障害は、両方認定されますか。
- 別の系列の後遺障害として検討されますが、単純に加算されるわけではありません。認定基準では、一つの障害に他の障害が通常派生する関係にある場合は上位の等級によるものとされています。
- 後遺障害診断書を作成してもらう前に、何を確認すべきですか。
- 自覚症状が具体的に記載されているか、実施済みの検査結果が反映されているか、生活や就労への支障が伝わっているかを確認します。医師に等級の判断や事実と異なる記載を求めることは適切ではありません。
- 非該当、又は想定より低い等級の認定を受けた場合、何を確認すべきですか。
- まず認定理由を読み、どの資料がどう評価されたかを確認します。検査の実施状況、検査条件、既往症の評価を整理し、追加できる資料があるかを検討します。異議申立てをすれば等級が変わるとは限りません。
- 復職して収入が減っていなくても、逸失利益を請求できますか。
- 減収がないことだけを理由に否定されるわけではありません。業務内容の変更、周囲の配慮、将来の昇進や転職への影響を踏まえて検討します。個別事情により結論は異なります。
まとめ
- 傷病名だけでは呼吸機能障害の等級は決まりません。症状固定時の呼吸機能と、事故との因果関係が中心になります。
- 認定基準は、動脈血ガス分析を原則とし、スパイロメトリー及び呼吸困難の程度、運動負荷試験による判定を組み合わせます。数値だけでなく検査条件も確認してください。
- 呼吸機能障害としての評価が難しい場合でも、肋骨の変形や胸部の神経症状という別の後遺障害を検討する余地があります。
- 症状固定の前、申請の前、非該当の通知を受けた後、示談の署名の前が、資料を確認しておきたい場面です。
検査結果と後遺障害診断書の内容を、申請前・示談前に確認しませんか
神戸みらい法律会計事務所では、交通事故について初回相談を無料で承っています。診療記録、検査結果票、後遺障害診断書、認定理由、示談金の提示書などをもとに、認定基準との対応関係、立証上の課題、検討すべき損害項目を整理します。事案により結論は異なりますので、お手元の資料をご用意ください。
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監修者
弁護士・公認会計士 藤井 貴之
兵庫県弁護士会所属。日本公認会計士協会兵庫会所属。神戸みらい法律会計事務所の代表弁護士・公認会計士として、交通事故、相続、企業法務、労働問題、損害賠償などのご相談に対応しています。
参考資料
本記事は、交通事故後に残る呼吸機能の障害と後遺障害に関する一般的な解説です。等級の認定や損害賠償の可否・金額は、受傷内容、治療経過、検査結果、既往症、就労状況、証拠関係により異なります。具体的な事案については、資料を確認したうえで弁護士にご相談ください。

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