営業損害とは?契約不履行による逸失利益の計算・請求・立証を解説 |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|弁護士法人ひょうご支所神戸みらい法律会計事務所

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営業損害とは?契約不履行による逸失利益の計算・請求・立証を解説

「取引先が契約を守らず、突然取引を打ち切られた」「納入の遅れで販売の機会を失った」——企業間の取引では、相手方の契約違反(債務不履行)により、本来得られるはずだった利益を失う場面があります。この失われた利益が「逸失利益」であり、営業損害の中心となる損害項目です。

もっとも、減少した売上高がそのまま損害賠償額になるわけではありません。契約上の責任、因果関係、損害の範囲という法律上の要件と、売上・費用・利益の構造という会計上の分析を対応させて、はじめて請求額とその根拠を組み立てることができます。

この記事では、企業間の契約不履行による営業損害・逸失利益の損害賠償請求について、法律上の確認事項、損害額の計算の考え方、準備すべき会計資料、相手方から想定される反論への備えまでを整理します。個別事情により結論は変わりますので、実際の請求や回答の前には、契約書と資料に基づく検討が必要です。

この記事で分かること

  • 営業損害・逸失利益と、売上高・粗利益・営業利益・限界利益の関係
  • 契約不履行による損害賠償請求の法律上の要件(民法第415条・第416条ほか)
  • 売上減少額がそのまま損害額にならない理由と、計算の骨組み
  • 決算書・総勘定元帳など、立証のために準備すべき会計資料
  • 相手方から想定される反論と、請求側があらかじめ確認すべきこと
  • 直近の裁判例にみる、限界利益の算定と因果関係の切り分け

請求通知の発送や和解案への回答の前に、契約書と会計資料を整理しておくと、請求可能性と対応方針を検討しやすくなります。企業間の契約トラブルでお困りの方は、ご相談ください。

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まず確認したいこと|逸失利益請求の全体像

企業間の契約不履行による逸失利益の請求では、次の8点を最初に確認します。どれか一つでも欠けると、請求額の縮小や請求自体の困難につながり得るため、着手の段階で全体を見渡しておくことが重要です。

逸失利益請求の主な確認事項
確認事項 確認する内容
契約違反(債務不履行) 契約書・個別契約・仕様書・発注書・取引の実態から、相手方の義務と違反の内容を特定できるか
帰責事由 相手方の責めに帰することができない事由(民法第415条第1項ただし書)や不可抗力の主張が想定されないか
因果関係 売上・利益の減少が契約違反によるものと説明できるか。市況・競合・自社要因など他の原因はないか
損害の範囲 通常損害か、特別事情による損害か(民法第416条)。特別事情の予見可能性を基礎付ける事情はあるか
損害額の算定 見込収益、支出を免れた費用、損害期間、代替取引を反映した計算になっているか
契約条項 責任上限、逸失利益の除外、損害賠償額の予定、通知期限などの条項がないか
時効・期限 消滅時効(民法第166条)や契約上の通知期限を過ぎていないか
証拠 計算の前提を裏付ける契約資料・会計資料・取引データが保全されているか

営業損害・逸失利益とは|用語と利益概念の整理

営業損害の中身:積極損害と逸失利益

「営業損害」は法律上の定義がある言葉ではなく、文脈により範囲が変わります。実務では、①契約違反への対応のために現実に支出した費用(代替調達費、復旧費、追加の物流費などの積極損害)と、②契約違反がなければ得られたはずの利益(逸失利益)に分けて検討します。両者は算定方法も証拠も異なるうえ、同じ経済的不利益を二重に計上しないよう、区分して整理する必要があります。

また、契約が終了した場合に限らず、履行遅滞、不完全履行、履行拒絶、供給停止などでも逸失利益は問題になり得ます。会計上の「営業損失」(損益計算書の営業利益がマイナスであること)と損害賠償における「営業損害」も別の概念であり、会社全体が黒字であっても、特定の取引について逸失利益を請求できる可能性があります。

売上高・粗利益・営業利益・限界利益の違い

利益概念の違いと損害算定での位置付け
概念 内容 損害算定での留意点
売上高 収益の総額 減少額がそのまま損害になるわけではない。売上の減少に伴い支出を免れた費用があるため
粗利益(売上総利益) 売上高-売上原価 売上原価に労務費・減価償却費など固定的な費用が含まれる製造業などでは、限界利益と一致しない場合がある
営業利益 粗利益-販売費及び一般管理費 当該取引と関係のない共通固定費まで控除されており、損害の実態より小さくなる場合がある
限界利益 売上高-変動費 裁判実務でもよく参照される分析概念。ただし、全ての事件で一律に採用される法定の基準ではない

どの利益概念を出発点にするかは、契約の内容、業種、事業構造、対象期間、利用できる証拠によって変わります。重要なのは、「その売上が失われたことで、どの費用の支出を免れたか」を実態に即して特定することです。通常の決算書に限界利益がそのまま表示されるとは限らないため、総勘定元帳や原価資料まで遡った固変分解が必要になることがあります。

契約不履行による損害賠償請求の法律上の要件

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき、又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求できます(民法第415条第1項本文)。もっとも、条文を当てはめる前提として、次の各点を順に確認する必要があります。

債務の内容と契約違反の特定

出発点は、「相手方は何をする義務を負っていたか」の特定です。基本契約書だけでなく、個別契約、仕様書、発注書、合意された納期、変更合意、さらに継続的取引の実態も踏まえて、債務の内容を確定します。契約書の文言上は義務が明確でない場合でも、発注・受注の経過やメールのやり取りが義務の内容を裏付けることがあります。

帰責事由と免責の主張

債務不履行が、契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、損害賠償請求は認められません(民法第415条第1項ただし書)。この帰責事由がないことは、相手方(債務者)側が主張立証していくのが基本的な整理です。請求側としては、不可抗力条項の有無や、相手方から想定される免責の主張をあらかじめ検討しておきます。

損害賠償の範囲|通常損害と特別損害

賠償の範囲は、債務不履行によって通常生ずべき損害(通常損害)が基本です(民法第416条第1項)。特別の事情によって生じた損害は、当事者がその事情を予見すべきであったときに賠償の対象となります(同条第2項)。例えば、契約違反が別の大口取引の喪失に連鎖したような場合に、その分まで当然に賠償されるとは限らず、相手方が特別の事情を予見すべきであったかが問題になります。契約締結時や違反時に、取引の目的や下流の取引の存在をどこまで相手方に伝えていたかを示す資料が重要になります。

契約解除との関係

解除権の行使は損害賠償の請求を妨げません(民法第545条第4項)。他方、解除をしなければ逸失利益を請求できないという関係でもありません。解除して契約関係を清算したうえで履行に代わる損害賠償(民法第415条第2項第3号参照)を請求するのか、契約を維持して遅延による損害を請求するのかは、事業上の判断も含めた選択になります。解除した場合でも、残存期間の利益の全てが当然に賠償されるわけではなく、原状回復や既払金の清算と重複しない整理が必要です。

契約条項の確認|責任制限・損害賠償額の予定

計算に入る前に、契約書の損害賠償に関する条項を確認します。賠償額の上限、間接損害・特別損害・逸失利益の除外、損害賠償額の予定・違約金(民法第420条。違約金は賠償額の予定と推定されます)、請求の通知期限、不可抗力条項などです。これらの条項があると請求の枠組み自体が変わりますが、条項の文言だけから有効性や適用範囲が一律に決まるわけではなく、事案への当てはめの検討が必要です。契約条項の見方は解除・損害賠償条項の確認点を読むで解説しています。

消滅時効・期間制限

債権は、権利を行使することができることを知った時から5年間、又は権利を行使することができる時から10年間行使しないときは、時効によって消滅します(民法第166条第1項)。起算点の考え方、債権の発生時期、改正法の経過措置、さらに契約上の通知期限によって結論が変わり得るため、「まだ大丈夫」と思い込まず、早い段階で確認することをおすすめします。

損害額の立証が困難な場合|民事訴訟法第248条

損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができます(民事訴訟法第248条)。ただし、これは損害の発生自体の立証を不要にする規定ではなく、提出できる資料を出さなくても裁判所が金額を補ってくれる制度でもありません。むしろ、合理的な資料と計算過程を示した側の主張が認定の基礎になりやすいため、会計資料の整理が重要になります。

売上減少額がそのまま損害額にならない理由

逸失利益は、「契約違反がなかった場合に得られたであろう損益」と「実際の損益」を、同じ対象範囲・同じ期間・同じ計算基準で比較して検討します。収益の差額から出発する場合、考え方の骨組みは次のとおりです。

  • 契約違反がなければ合理的に見込まれた対象収益を出発点とする
  • 契約違反後も同じ対象から実際に得た収益を差し引く
  • 収益の減少に伴い支出を免れた費用(変動費を中心とする増分費用)を差し引く
  • 代替取引などにより現実に得た利益を、損害との対応関係に応じて反映する

これは法律で定められた単一の算式ではありません。契約、業種、事業構造、対象期間、証拠によって具体的な算定方法は変わります。また、代替調達費や復旧費などの追加費用は、逸失利益とは区分して損害項目ごとに検討し、既に計算へ反映した部分を重ねて加算しないようにします。

固定費・変動費は勘定科目名では決まらない

人件費、外注費、広告費、賃料、減価償却費、支払手数料などを、勘定科目の名前だけで固定費・変動費に振り分けることはできません。同じ人件費でも、売上に連動するインセンティブ部分は変動費に近い性質を持ちますし、生産量に応じて段階的に増減する費用や、固定部分と変動部分が混在する費用もあります。損害算定では、対象期間において実際にどの費用の支出を免れたか(免れることができたか)を、元帳や原価資料に基づいて実態に即して判断します。

損害期間と代替取引

損害期間(始期・終期)は、契約の残存期間、更新の可能性、復旧までの期間、合理的に代替先を確保できるまでの期間、実際の回復状況などから検討します。契約期間が長く残っていても、その全期間の利益が当然に認められるわけではありません。また、代替販売・別チャネルへの振替・振替受注などにより現実に得た利益は、損害との対応関係に応じて考慮されます。他方、固定費や余剰能力を「転用できたはずだ」という抽象的な可能性だけで控除が認められるものでもなく、現実にどのような利益を得たか、合理的に何を回避できたかを具体的に確認します。

重複計上と将来利益の扱い

逸失利益と追加費用・復旧費・固定費相当額を重ねて請求すると、同一の経済的不利益の二重評価として争われます。また、将来の期間について取得すべき利益を現在時点で一括して賠償額に定める場合には、中間利息の控除(民法第417条の2)の要否と、適用される法定利率(損害賠償請求権が生じた時点のもの)の確認も必要になります。

「どの利益を基礎に、どの費用を控除すべきか」は、事業構造と資料の状況によって変わります。計算の前提に不安がある場合は、請求額を相手方へ示す前の確認をおすすめします。

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逸失利益の算定・立証の実務フロー

実務では、おおむね次の流れで算定と立証の準備を進めます。

  1. 契約書・個別発注・仕様書・変更合意から、相手方の義務と違反内容を特定する
  2. 違反の発生日、停止期間、解除日、復旧日、重要な連絡を時系列に整理する
  3. 損害の対象となる顧客・契約・商品・店舗・部門・プロジェクトを特定する
  4. 違反がなかった場合の売上・収益を裏付ける資料(前年同期、複数期平均、受注残、紛争前の予算など)を選び、その選択理由を説明できるようにする
  5. 実際の売上・収益との差額を確認する
  6. 総勘定元帳・補助元帳・原価資料・取引データから、支出を免れた費用を洗い出す
  7. 固定費・変動費・混合費と追加費用を、実態に即して整理する
  8. 代替取引、他の原因、損害期間、重複計上を調整する
  9. 決算書・試算表・元帳・請求書・銀行入出金・販売管理データと計算表を照合する
  10. 前提、抽出条件、計算式、参照資料、修正履歴を記録し、第三者が再計算できる計算表に仕上げる

紛争前に作成された予算・事業計画と、紛争後に作成された予測とでは、信用性の評価が異なり得ます。また、会計データや販売管理データの元データを上書き・加工・廃棄せず保全しておくことは、計算の信頼性を支える土台になります。相手方や裁判所へ資料を開示する際には、顧客情報・個人情報・営業秘密の範囲と開示方法の検討も必要です。

なお、公認会計士の意見書や弁護士による会計分析があっても、裁判所を当然に拘束するものではありません。基礎資料との整合性と計算過程の検証可能性を示せるかが重要です。弁護士と公認会計士の視点の違いは弁護士と公認会計士の役割に関する解説を読むで説明しています。

準備すべき会計・取引資料と対応する反論

決算書だけでは、会社全体・年度単位の損益しか分からず、特定の取引・期間の損害を裏付けるには足りないことが通常です。次の表のように、「何を立証する資料か」「どの反論に対応するか」を意識して準備します。

主な準備資料と確認目的・対応する反論
資料 確認できること 対応する主な反論
契約書・発注書・仕様書・変更合意 相手方の義務の内容、納期・数量・単価 「契約違反はない」「そのような義務はない」
解除通知・催告・メール・議事録 違反の経緯と時系列、協議の経過 「契約上認められた解除・取引停止だ」
売上台帳・請求書・顧客別取引履歴 対象取引の売上実績と紛争前からの推移 「見込売上が楽観的にすぎる」
決算書・月次試算表・総勘定元帳・部門別損益 費用構造、固変分解の基礎、対象部門の損益 「支出を免れた費用が控除されていない」
受注残・予約・商談管理・在庫・生産能力資料 売上を実現できた能力・具体性 「そもそもその売上は実現できなかった」
紛争前の予算・事業計画・稟議・取締役会資料 紛争前からの見込みの合理性 「紛争後に作られた恣意的な数字だ」

直近の裁判例|限界利益を計算できても因果関係の切り分けが問題になる

大阪地方裁判所令和8年7月9日判決(令和6年(ワ)第8646号損害賠償等請求事件)は、美容外科クリニックを運営する医療法人が、元理事兼分院院長であった医師に対し、競業避止義務違反を理由として約1億6121万円の損害賠償を求めた事案の一審判決です。企業間の売買・供給契約の事案ではありませんが、契約上の義務違反による逸失利益の算定過程が具体的に示されており、費用の分類と因果関係の考え方を知るうえで参考になります。

裁判所は、競業避止の合意を有効と認めたうえで、売上減少額約1億7912万円について、売上原価(売上高の10%)と、販売費及び一般管理費のうち変動費に当たる部分(売上高の約10%)を控除し、限界利益率を80%として、限界利益の減少額を約1億4329万円と算定しました。費用の分類では、旅費交通費・消耗品費・支払手数料・雑費や、人件費のうち売上に連動するインセンティブ部分が変動費とされる一方、広告宣伝費は計画的な支出として固定費側に整理されるなど、勘定科目の名前ではなく実態に即した判断がされています。

他方で、裁判所は、退職前からの当該分院の売上の下降傾向、近隣での競合クリニックの相次ぐ開院、法人グループ全体の業績悪化や評判の低下、院長交代などの事情を踏まえ、競業行為と因果関係のある損害は限界利益減少額の2割に満たないとして、認容額を2200万円にとどめました。

この裁判例から読み取れること

  • 固定費・変動費の分類は、勘定科目名ではなく、事業の実態と証拠に即して判断されること
  • 限界利益を計算できても、市況・競合・自社要因など他の原因との切り分けを乗り越えなければ、認容額が大きく縮小し得ること

本判決は個別の事案に対する一審の判断であり、限界利益率や減額の割合を他の事件にそのまま当てはめられるものではありません。判決全文は裁判所ウェブサイト掲載の判決PDFで確認できます。

よくある場面別の考え方

継続的取引の突然の打切り

長年の継続的取引が予告なく打ち切られた場合、まず基本契約の解約条項・予告期間の定めと、取引の継続性・更新の実績を確認します。契約上の解約権があっても、予告期間や態様によっては損害賠償が問題になる場合があります。損害期間は、契約の残存期間や、合理的に代替先を確保できるまでの期間が検討の目安になりますが、個別事情により異なります。

納入遅延・不完全履行

部材や商品の納入遅延・品質不良では、販売機会の喪失(逸失利益)のほか、代替調達費、下流顧客への違約金・値引き、追加の物流費などの積極損害が併存しがちです。損害項目ごとに証拠を対応させ、重複計上を避ける整理が特に重要になります。

中途解約・更新拒絶

期間の定めのある契約の中途解約や更新拒絶では、解約・不更新が契約上許容されているかが出発点です。許容されない中途解約であれば残存期間の利益が問題になりますが、更新への期待は、更新実績や取引経緯による裏付けの程度によって評価が変わります。

新規事業・正式受注前の商談

過去の実績がない新規事業や、正式受注前の商談段階の利益も、一律に請求できないわけではありません。ただし、紛争前に作成された事業計画、商談の具体的な経過、事業を遂行できる能力・資金、比較可能な同種の実績など、見込みの合理性を裏付ける資料の有無によって、立証の難易度が大きく変わります。

相手方から想定される反論と請求側の備え

逸失利益の請求では、相手方から次のような反論が想定されます。請求前に、対応する資料をそろえておくことが交渉力につながります。

想定される反論と請求側で準備する資料
想定される反論 請求側で確認・準備する資料
契約違反ではない(契約上認められた解除・停止だ) 契約書の解除・解約条項、催告や協議の経過、義務の内容を示す発注書・仕様書・メール
売上減少は市況・季節性・競合によるものだ 対象取引に限定した売上推移、同時期の他取引・他部門との比較、紛争前からのトレンド資料
そもそもその売上は実現できなかった 生産能力・人員・在庫・許認可・資金の資料、受注残・予約・商談管理データ
免れた費用が控除されていない 総勘定元帳・原価資料に基づく固変分解と、控除計算を明示した計算表
代替取引の利益が考慮されていない 代替販売・振替受注の実績と、対象損害との対応関係の整理
計算が恣意的だ(紛争後に作った数字だ) 紛争前に作成された予算・事業計画・稟議、データの抽出条件・作成日・変更履歴
責任制限条項・時効の適用がある 契約条項の適用範囲の検討結果、時効の起算点・契約上の通知期限の確認結果

請求・交渉・訴訟の前のチェックリスト

請求通知の発送、交渉の開始、訴訟の提起の前に、次の点を確認してください。

  • 契約書・個別契約・約款の損害賠償関連条項(上限・除外・賠償額の予定・通知期限)を確認したか
  • 違反の経緯を示す通知・メール・議事録を時系列で保全したか
  • 会計データ・販売管理データの元データを、上書き・加工せず保全したか
  • 計算表は、前提と計算式を明示し、第三者が再計算できる形になっているか
  • 代替取引、他の原因、損害期間、重複計上を検討したか
  • 消滅時効と契約上の期限を確認したか
  • 開示する資料に含まれる営業秘密・個人情報の範囲を確認したか
  • 相手方の資力・回収可能性と費用対効果を検討したか(回収の手立ては債権回収の取扱業務を見る

弁護士に相談するタイミング

次のような場面では、対応の前にご相談いただくことで、法律上の要件と会計資料を対応させた検討がしやすくなります。

  • 解除通知・請求通知を発送する前
  • 請求額とその計算根拠を相手方へ示す前
  • 会計データ・販売管理データなど重要な資料が失われる前
  • 相手方から反論や和解案が届き、回答する前
  • 訴訟の提起を検討するとき、訴状を受け取った直後

ご相談により結果が保証されるものではありませんが、契約書と会計資料を確認したうえで、請求可能性、算定の前提、立証上の課題、交渉・調停・訴訟といった手続の選択肢を整理できます。逆に、高額な営業損害の請求を受けた側についても、同じ枠組みで反論の検討が可能です。

まとめ

  • 営業損害は、積極損害と逸失利益に分けて検討する。契約の終了は逸失利益発生の必須条件ではない
  • 売上減少額がそのまま損害額になるわけではなく、免れた費用・損害期間・代替取引・他の原因を反映して算定する
  • 固定費・変動費は勘定科目名ではなく実態で判断する。粗利益・営業利益・限界利益は同じではない
  • 民法第416条の損害の範囲、責任制限条項、消滅時効(民法第166条)を早い段階で確認する
  • 決算書だけでは足りないことが多く、元帳・販売管理データ・紛争前の計画まで含めた資料の保全が立証を支える
  • 直近の裁判例でも、限界利益の算定と因果関係の切り分けは別の問題として扱われており、他の原因の検討を省略できない

よくある質問

売上が減少した額を、そのまま損害として請求できますか。

売上減少額がそのまま損害額になるとは限りません。売上の減少に伴い支出を免れた費用(変動費など)を差し引き、代替取引による利益や他の原因も考慮して検討します。契約内容と会計資料を確認したうえで判断する必要があります。

固定費は逸失利益の計算で控除されますか。

売上が減少しても支出が続く固定費は、控除されない扱いとなる場合があります。ただし、固定費か変動費かは勘定科目名ではなく実態で判断され、実際には削減・転用できた費用の扱いが争われることもあります。個別事情により結論は異なります。

粗利益と限界利益のどちらを使うのですか。

一律の決まりはありません。売上原価が変動費中心の業種では粗利益が限界利益に近くなる一方、売上原価に固定的な費用が含まれる製造業などでは両者が乖離します。事業構造と証拠に応じて、免れた費用を実態に即して特定することが重要です。

決算書だけで逸失利益を立証できますか。

決算書は会社全体・年度単位の情報であるため、特定の取引・期間の損害の立証には足りないことが通常です。総勘定元帳、売上台帳、販売管理データ、受注残、紛争前の予算・事業計画などを組み合わせ、第三者が再計算できる計算表を作ることが望ましいといえます。

損害額を正確に証明できない場合、裁判所が金額を認定することはありますか。

損害が生じたことが認められ、損害の性質上その額の立証が極めて困難であるときは、裁判所が口頭弁論の全趣旨と証拠調べの結果に基づいて相当な損害額を認定することがあります(民事訴訟法第248条)。ただし、損害の発生自体の立証は必要であり、提出できる資料を出さなくてもよいという制度ではありません。

契約書に損害賠償の上限や逸失利益を除外する条項がある場合はどうなりますか。

条項の内容により請求の枠組みが変わるため、最初に確認すべき事項です。もっとも、条項の文言だけで有効性や適用範囲が一律に決まるわけではなく、事案への当てはめを検討する余地があります。契約書を確認したうえでの判断が必要です。

契約を解除しなければ逸失利益を請求できませんか。

解除は必須ではありません。解除権の行使は損害賠償請求を妨げず(民法第545条第4項)、解除せずに遅延による損害を請求する選択もあり得ます。取引継続の要否も含め、事業上の判断とあわせて方針を検討します。

逸失利益の請求に期限はありますか。

債権の消滅時効(民法第166条第1項)として、権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年という期間が基本になりますが、起算点、契約の時期、経過措置、契約上の通知期限により結論が異なります。早めの確認をおすすめします。

企業間の契約違反による営業損害・逸失利益のご相談では、契約書と会計資料を確認したうえで、請求可能性、損害額の前提、立証上の課題、対応方針の検討をお手伝いします。請求を受けた側のご相談にも対応しています。初回のご相談は無料でお受けしています(受付条件など最新の内容は、弁護士費用のページ又はお問い合わせの際にご確認ください)。

法人・事業者の方からのお問い合わせでは、利益相反の確認のため、最初のご連絡では契約書や会計資料などの資料はお送りいただかず、会社名、ご相談者名、相手方の名称、ご相談の概要、期限の有無をお知らせください。資料は、当事務所からのご案内後にご提出をお願いしています。

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監修者・執筆者

藤井 貴之(ふじい たかゆき)
弁護士・公認会計士/兵庫県弁護士会所属・日本公認会計士協会兵庫会所属
弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所 代表弁護士

企業法務、契約トラブル・損害賠償請求、債権回収などのご相談に、法律と会計・財務の双方の視点から対応しています。営業損害・逸失利益の検討では、契約書の確認と、決算書・元帳・販売管理データに基づく損害算定の整理を組み合わせて行います。税務申告・税務代理は行っておらず、税務の個別判断には税理士等への確認が必要です。

所在地:兵庫県神戸市須磨区中落合2丁目2-5 名谷センタービル7階

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参考資料(本文で参照した公的資料)

本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。損害賠償請求の可否と金額は、契約内容、違反の態様、因果関係、会計資料その他の個別事情により異なります。実際のご対応にあたっては、最新の法令・公式情報をご確認のうえ、弁護士にご相談ください。記載の内容は2026年7月時点の情報に基づきます。

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