美容室経営者の自己破産|店舗・リース・顧客の前払金はどうなる? |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|

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美容室経営者の自己破産|店舗・リース・顧客の前払金はどうなる?

「借入の返済と家賃、リース料、材料代が重なり、来月の支払の見通しが立たない」「自己破産をすると美容師免許がなくなり、もう働けないのではないか」「お客様の回数券が残っているのに、閉店してよいのだろうか」。美容室を経営される方から、こうしたご相談をうかがうことがあります。

結論から申し上げると、破産手続開始の決定を受けたことだけを理由に美容師免許が失われることはありません。美容師法に、破産を理由とする免許の欠格事由も取消事由も定められていないためです。一方で、免許が残ることと、いまの店舗・設備・雇用体制を維持できることとは別に判断する必要があります。設備、リース、店舗賃貸借、回数券などの前払金、従業員や委託美容師への支払は、それぞれ契約と資料を確認したうえで整理していくことになります。

この記事では、個人事業主として美容室を営む方と、運営法人の代表者の方を念頭に、免許と美容所の届出、設備や道具、リースと店舗賃貸借、顧客の前払金、スタッフへの支払、閉店の進め方、その後の働き方を整理します。以下は一般的な整理であり、個別の見通しは資料を確認したうえで判断する必要があります。

店舗の賃貸借契約書、リース契約書、回数券の販売条件と未利用残高、給与や委託報酬の未払額を確認することで、営業を続ける余地があるか、閉店と債務整理をどの順序で進めるかを検討できます。資料がすべてそろっていなくても、手元にあるものから相談できます。

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結論|免許は残り、店と契約は一つずつ判断します

要点

  • 美容師法第3条第2項の免許を与えないことがある事由にも、同法第10条の取消し・業務停止の事由にも、破産は含まれていません。
  • 美容所も、破産により開設の効力が自動的に失われる定めはありません。ただし営業をやめるなら廃止の届出が必要です(同法第11条第2項)。
  • 個人事業主では事業の借入も生活の借入も同じご本人に帰属します。法人では、会社の債務と代表者個人の保証債務を分けて確認します。
  • 設備は、本人所有・法人所有・リース・所有権留保付き割賦・スタッフの私物のいずれかにより扱いが変わります。
  • 回数券やチャージ残高は「すべて返金される」とも「一切返金されない」とも言えません。契約内容と資金の管理方法により結論が変わります。
  • 従業員の給与と、委託美容師(面貸しを含みます)の報酬は法的な扱いが異なります。契約書の名称ではなく実態から確認します。

美容師として働き続けられるかは免許の問題であり、いまの店舗を維持できるかは資金繰り、賃貸借、リース、雇用契約の問題です。この二つを混同すると、必要以上に悲観的な判断をしたり、逆に続けられると誤解して支払を重ねたりする原因になります。選択肢としては、いまの店舗で続ける、閉店して他店に就職する、適法な体制で面貸しを利用する、事業を譲渡する、将来あらためて開業する、といった道筋が考えられます。

個人経営か法人経営かで、整理する対象が変わります

まず確認したいのは、借入や契約の名義がご本人か法人かという点です。契約書、登記事項証明書、借入契約書の保証条項、口座名義で確認します。屋号だけでは判断できません。

経営形態による整理の対象の違い
経営形態 整理する財産・債務 代表者個人への影響 確認する資料
個人事業主 事業の借入・買掛金・リース料も、生活のための借入も、同じご本人の債務 ご本人の手続そのもの。免責許可の決定が確定すれば破産債権について責任を免れる(破産法第253条第1項本文。ただし書の債権を除く) 確定申告書、決算書、借入・リース・賃貸借の契約書、通帳、固定資産台帳
法人(株式会社・合同会社など) 会社の債務は会社の手続で整理し、会社の財産と代表者個人の財産は区別する 会社の破産で保証債務が当然になくなるわけではなく、代表者個人の手続が別途必要 登記事項証明書、決算書、総勘定元帳、金銭消費貸借契約書と保証条項
法人だが実質は個人で運営 会社名義と個人名義が混在しやすく、資産・債務・入出金の帰属を切り分ける調査が必要 会社と個人の双方の手続を、時期を合わせて検討することが多い 双方の通帳、役員貸付金・借入金の残高、契約の名義

会社の租税や賃金、顧客への前払金の返還債務が、代表者であるというだけで当然に個人の債務になるわけではなく、個人保証をしている場合や代表者自身に別途の法的責任が生じる場合に限って個人の問題になります。また、法人には個人のような免責許可の制度はなく、破産手続の終了により法人格が消滅するのが通常です。事業性の債務と手続の選び方は、個人事業主の借入と手続選択の記事を読むもご確認ください。

美容師免許と美容所の届出はどうなるか

美容師法に破産を理由とする欠格事由・取消事由はありません

美容師の免許は、美容師試験に合格した者が厚生労働大臣の免許を受けて取得します(美容師法第3条第1項)。免許を与えないことがある事由として同条第2項が挙げるのは、心身の障害により業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの、同法第6条に違反した者、同法第10条第3項による免許の取消処分を受けた者の三つで、破産は含まれていません。免許の取消し・業務の停止を定める同法第10条も、心身の障害に関する事由、同法第7条・第8条違反、伝染性の疾病により就業が公衆衛生上不適当と認められる場合、業務停止処分違反を挙げるにとどまります。

破産手続開始の決定を受けて復権を得ない間は就くことができない資格や職はありますが、それは個々の資格に関する法令が欠格事由として定めている場合に限られ、美容師法にその定めはありません(破産による資格制限と復権の記事を読む)。会社の役員や他の資格も併せてお持ちの場合は、その資格・役職ごとに個別の確認が必要です。

美容所の開設が破産で自動的に失効することはありません

美容所を開設しようとする者は、位置、構造設備、管理美容師その他の従業者の氏名などをあらかじめ都道府県知事(保健所を設置する市では市長)に届け出なければならず(美容師法第11条第1項)、構造設備について検査を受け、衛生措置を講ずるに適する旨の確認を受けた後でなければ使用できません(同法第12条)。この仕組みは届出と確認によるもので、破産により当然に効力を失う定めはありません。他方、届出事項に変更が生じたときや美容所を廃止したときは、すみやかに届け出る必要があります(同法第11条第2項)。神戸市では各衛生監視事務所が窓口とされ、開設・変更・廃止・承継で手続と申請方法が異なります。

あわせて確認したいのが、開設者と管理美容師の区別です。「開設者」は届出を行い衛生措置を講ずる義務を負う立場で、美容師であることは要件とされていません(同法第13条)。「管理美容師」は、美容師である従業者が常時2人以上の美容所ごとに置く管理者で、免許を受けた後3年以上美容の業務に従事し、かつ、厚生労働大臣の定める基準に従い都道府県知事が指定した講習会の課程を修了した者である必要があります(同法第12条の3)。人員を縮小する場合は、要件を満たす方が在籍し続けるかを確認してください。

事業譲渡があったときの開設者の地位の承継

届出をした美容所の開設者が営業を譲渡し、又は開設者について相続・合併・分割(営業を承継させるものに限ります)があったときは、営業を譲り受けた者や相続人などが開設者の地位を承継し、遅滞なく、その事実を証する書面を添えて都道府県知事に届け出なければなりません(美容師法第12条の2)。もっとも、この承継は美容所の開設者という行政上の地位についてのものです。店舗の賃貸借、リース契約、借入、顧客との契約、雇用契約が承継届によって当然に移るわけではなく、契約上の地位の移転には相手方の承諾や個別の合意が必要です。「承継届さえ出せば店ごと引き継げる」という理解も、「経営者が変われば必ず新規の開設手続になる」という理解も、正確ではありません。

自宅や出張での施術に切り替えられるか

美容師は、美容所以外の場所で美容の業をしてはならないとされています(美容師法第7条本文)。例外は政令で定める特別の事情がある場合に限られ、疾病その他の理由により美容所に来ることができない者に美容を行う場合、婚礼その他の儀式に参列する者にその儀式の直前に美容を行う場合、これらのほか都道府県(保健所を設置する市又は特別区にあっては市又は特別区)が条例で定める場合とされています(美容師法施行令第4条)。店舗を閉じたあと、自宅や出張での施術に自由に切り替えられるわけではなく、自宅の一部を美容所として使う場合も、あらためて開設の届出と構造設備の確認が必要です。

店舗設備・道具・在庫・売掛金はどうなるか

破産手続では、破産手続開始の時に破産者が有する一切の財産が破産財団となります(破産法第34条第1項)。まず確認すべきは、店内にある物が誰の所有物かという点です。固定資産台帳に載っていることや、減価償却が終わって帳簿価額がないことは、所有関係や換価の可否を決める根拠にはなりません。

美容室の資産・契約ごとに確認する事項
対象 所有・契約の確認 破産時の主な論点 処分等の前に確認する事項
シャンプー台・セット椅子・鏡・ボイラー・空調 購入・リース・割賦の別、所有権留保の有無、法人名義か個人名義か 破産財団に属するか、リース会社等の権利が及ぶか、撤去費用の負担 購入資料、契約書、支払履歴、型式、設置状況の写真、中古査定、撤去見積り
はさみ・コーム・ドライヤーなどの手道具 ご本人の私物か、店の備品か、スタッフの私物か 差押禁止動産に当たるか、自由財産の拡張の対象とするか(個人の場合) 購入時期と価格、使用状況、中古相場、誰が使用しているか
薬剤・カラー剤・店販商品の在庫 仕入先、支払済みか買掛か、返品条件の有無 商品としての換価。差押禁止動産の規定は商品に及ばない 在庫表、仕入伝票、使用期限、返品・引取りの可否
カード・QR決済の未入金分、予約サイトの未精算金 決済代行会社・予約サイトとの契約、精算サイクル、留保金の有無 債権の発生原因と時期、相殺・留保の扱い 加盟店契約書、精算明細、入金予定日、手数料と控除項目
店舗の敷金・保証金 賃貸借契約書の敷金・保証金・償却(敷引き)条項 返還請求権がいつ発生するか、滞納賃料や原状回復費との関係 契約書、入金時の領収書、滞納額、原状回復の見積り

仕事道具の扱いと自由財産の拡張は、別々の仕組みです

個人の破産では、民事執行法第131条第3号に規定する額に2分の3を乗じた額の金銭(現在は99万円)と、差し押さえることができない財産は破産財団に属しません(破産法第34条第3項第1号・第2号)。差押えが禁止される動産には、「技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者……のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)」が含まれます(民事執行法第131条第6号)。これとは別に、裁判所は、破産手続開始の決定があった時から決定が確定した日以後1月を経過する日までの間、破産者の申立て又は職権により、生活の状況などを考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を拡張することができます(破産法第34条第4項)。

この二つはしばしば混同されます。次の点にご注意ください。

  • 差押禁止動産に当たるかは、その物が業務に欠くことができないかによって判断されるもので、「仕事に使う設備はすべて残せる」という趣旨ではありません。手道具と据付けの大型設備とで判断が同じになるとは限らず、条文が「商品を除く」としているため店販商品や在庫は対象になりません。
  • いずれも個人の生活と就労を保障する仕組みで、法人が所有する設備には当てはまりません。
  • 99万円は金銭についての基準で、預貯金は含まれません。現金と預貯金は分けて確認してください。
  • 自由財産の拡張は裁判所が個別の事情を考慮して判断するもので、一定額以下なら当然に認められるものではありません。

破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権も、破産財団に属します(破産法第34条第2項)。入金日が破産手続開始後であるというだけで手続開始後に得た財産だと判断することはできず、施術がいつ行われ、債権がいつどのような原因で発生したかを確認します。委託美容師の売上をいったん店の口座で受け取り後日精算している場合も、屋号や口座名義だけで店側の財産と決めることはできません(自己破産で手元に残せる財産の記事を読む)。

リース設備は返せば支払が終わるのか

まず契約の類型を確認します。ファイナンス・リースか、オペレーティング・リースか、レンタルか、所有権留保付きの割賦販売かによって、所有者も、返還義務も、金銭の債務も変わります。契約書の表題ではなく内容から確認します。

破産手続では、双務契約について破産者と相手方が破産手続開始の時において共にまだその履行を完了していないときは、破産管財人が、契約を解除するか、破産者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求するかを選択できます(破産法第53条第1項)。管財人が履行を選択した場合、相手方の請求権は財団債権となります(同法第148条第1項第7号)。もっとも、リース契約がすべてこの枠組みで処理されるわけではありません。リース期間中に取得価額のほぼ全額を回収する設計のファイナンス・リース(いわゆるフルペイアウト型)については、その経済的な実質を金融取引に近いものとみる考え方があり、双方未履行の双務契約として扱うべきかについて議論があります。取戻権だけで説明できるものでもなく、民事再生や会社更生についての裁判例の判断を、そのまま破産手続に持ち込むこともできません。

設備を返却すれば残りのリース料や規定損害金の支払義務が当然に消える、という理解は正確ではありません。物件を返す義務と、金銭を支払う義務は別のものです。契約類型、所有者、残期間、残リース料と規定損害金の計算方法、保守義務、中途解約と返還の条項、個人保証の有無、撤去・搬出費用の負担を確認してください。設備の返還、売却、解約、残額の精算に合意する前に、申立ての代理人にご相談ください。破産手続開始後の財団に属する財産の処分は、破産管財人の権限と裁判所の手続に沿って進めることになります。

店舗賃貸借・敷金・原状回復

賃借人と連帯保証人の名義、滞納賃料の額、解約予告の期間、敷金・保証金と償却(敷引き)の条項、原状回復の範囲、造作や残置物の扱いを確認します。あわせて、閉店日、賃貸借の終了日、明渡日、破産の申立日、破産手続開始決定日を、それぞれ別の日付として整理してください。同じ日として考えると、費用や債権の区分を誤る原因になります。

賃借人について破産手続が開始しても、賃貸借契約が当然に即時終了するわけではなく、賃貸借も双方未履行の双務契約として、破産管財人が解除するか履行するかを選択する枠組みで整理されます(破産法第53条第1項)。契約書に置かれた破産を理由とする解除条項の効力については議論があり、契約内容と事案により判断が分かれます。

敷金は、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の債務を担保する目的で交付される金銭で、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときに、受け取った額から賃借人の債務の額を控除した残額を返還すべきものとされています(民法第622条の2第1項第1号)。賃貸人は賃借人の債務の弁済に敷金を充てることができますが、賃借人の側から充当を請求することはできません(同条第2項)。「敷金があるから最後の数か月の家賃は払わなくてよい」と自己判断することはできません。

国土交通省の原状回復のガイドラインは民間賃貸住宅を対象とするもので、美容室のような事業用の賃貸借にそのまま当てはまるものではありません。事業用では、スケルトンでの返還を求める特約が置かれていることが少なくありません。原状回復費用が破産手続の中でどのように扱われるかは、その債務がいつ、どのような原因で発生したかにより変わり、支払義務が必ずなくなると考えることはできません。明渡しの合意、敷金の放棄、造作の譲渡、原状回復工事の発注を進める前に、契約書と見積書を確認してください。

予約金・回数券・チャージ残高|顧客への対応

美容室では、次回予約の前払金、施術の回数券、会員券、チャージ残高、ギフト券、月額制の契約、無料ポイントなど、性質の異なるものが同じ「前受金」「預り金」として処理されていることがあります。会計上の科目や店内での呼び方だけで法的な性質は決まりません。契約の当事者と発行者、販売経路、対価の受領の有無、サービスの内容・金額・回数、購入日、有効期限、未使用残高、利用履歴、返金条項、決済方法、発行残高、保全措置を確認し、顧客ごとの台帳と利用・返金の履歴を確保してください。

顧客の請求は破産手続の中でどう扱われるか

顧客が代金を支払済みで、店側だけが施術を提供する義務を負っている場合、その契約は「共にまだ履行を完了していない」状態ではありませんので、破産法第53条の双方未履行の双務契約としては扱われないのが通常です。この場合、未提供のサービスに対応する顧客の請求は、破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権として破産手続の中で扱われ(破産法第2条第5項)、金銭の支払を目的としない債権は破産手続開始の時における評価額をもって破産債権の額とするとされています(同法第103条第2項第1号イ)。

ただし、月額制の契約のように顧客の側にも支払の義務が残っているもの、第三者が代金を受け取っているもの、決済代行会社を経由しているものでは、整理の仕方が変わります。「すべて一般の破産債権になる」とも、「必ず全額返金される」とも、「返金は一切受けられない」とも一括りにはできません。前受金を別の口座に移していたというだけで、そのお金が破産財団の外にあるものと扱われるわけでもありません。

資金決済法の前払式支払手段に当たるかを確認する

回数券やチャージ残高は、資金決済に関する法律にいう前払式支払手段に当たる場合があります。同法第3条第1項は、証票等に記録される金額に応ずる対価を得て発行され代価の弁済のために使用できるもの(第1号)と、物品等又は役務の数量に応ずる対価を得て発行され発行者等にその給付又は提供を請求できるもの(第2号)を前払式支払手段としており、チャージ方式は第1号に、施術の回数を単位とする回数券は第2号に当たり得ます。

もっとも、同法第2章の規定は、発行の日から政令で定める一定の期間内に限り使用できるものには適用されず(同法第4条第2号)、この期間は6月とされています(同法施行令第4条第2項)。また、自家型の前払式支払手段のみを発行する者に届出の義務が生じるのは、基準日における未使用残高が、発行開始後はじめて基準額を超えたときで(同法第5条第1項)、基準額は1,000万円です(同法第14条第1項、同法施行令第6条)。この届出をした者が「自家型発行者」とされ(同法第3条第6項)、供託や払戻しに関する規制の対象となります。

次のような整理は、いずれも正確ではありません。

  • 「美容室の回数券はすべて資金決済法の対象になる」「小規模な店だから同法とはまったく関係がない」——いずれも、有効期限の設定や未使用残高によって第2章の適用の有無が変わります。
  • 「有効期限が過ぎていれば、お客様に対する責任も一切ない」——同法の適用の有無と、顧客との契約上の責任とは別の問題です。
  • 「供託があるから全額が保護される」——供託の義務が生じるのは基準額を超える場合で、供託額も基準日未使用残高の2分の1の額以上とされています(同法第14条第1項)。発行保証金について保有者が優先して弁済を受ける権利があるとしても(同法第31条第1項)、全額の保護を意味しません。なお、業務の全部又は一部の廃止に伴う払戻しは、公告と60日を下らない申出期間などの手続によります(同法第20条)。
  • 「通常のカットやカラーの回数券は特定商取引法の特定継続的役務提供に当たる」——特定継続的役務として政令に定められているのは、エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービスで、通常の理容・美容の施術は含まれていません。エステティックを併設している場合は、その内容・期間・金額から別途確認が必要です。

返金と顧客への案内で気をつけること

顧客からの前払金の種類ごとの確認事項
種類 確認する契約・残高 返金等を検討する視点 案内するうえでの注意
次回予約の前払金・予約金 予約時の説明、金額、キャンセル規定、決済方法、予約サイト経由か 施術の予定日、代金の受領者、予約サイトの精算方法 日程が決まらないうちに、施術や返金の時期を約束しない
施術の回数券・会員券 販売日、券面の回数と金額、有効期限、未使用回数、返金条項 資金決済法第2章の適用の有無、未使用残高の総額と顧客別残高 顧客ごとの残高を確定させ、案内の文面を統一する
アプリ・カードのチャージ残高 有効期限、決済代行会社等との契約、残高データの管理者 残高データの保存と復元の可否、第三者が資金を保有しているか サービスの停止前に、残高の一覧を出力して保存する
ギフト券・商品券 発行の目的、対価を受け取っているか、有効期限 対価を得て発行したかで、前払式支払手段に当たるかの判断が変わる 贈答を受けた方の来店を想定し、店頭掲示の内容を検討する
月額制・サブスクリプション契約 契約期間、解約条項、支払方法、次回の引落日 顧客側にも支払義務が残るため、契約の構造から個別に検討する 引落しを止める手続を、決済代行会社との契約に沿って進める
無料で付与したポイント 付与の条件、対価の有無、利用規約、失効の条件 対価を得ずに付与したものは前払式支払手段に当たらないのが通常 有償のチャージ残高と区別して集計する

顧客への対応で特にご注意いただきたい点です。

  • 親しい常連の方にだけ先に返金することは避けてください。特定の債権者に対する弁済は、否認の対象となったり(破産法第162条第1項)、免責不許可事由として問題になったりする可能性があります(同法第252条第1項第3号)。
  • 返金と引換えに口外しないことや今後の請求をしないことを求めること、新しい店舗での利用を無条件に保証することは避けてください。
  • 提供の見込みが立たない状況で回数券の販売や前払を伴う予約の受付を続けることは、被害を広げるだけでなく別の責任の問題にもなり得ます。受付を止めるべきかを含め、早めにご相談ください。他方で、返金ができないことだけを理由に直ちに詐欺に当たると決めつけられるものでもありません。
  • 案内では、提供できるサービスと日程、予約の取扱い、未利用残高の確認方法、連絡の窓口、今後お知らせする手続を整理して伝えます。返金の額や時期、新しい店舗での利用は確定していない限り約束せず、やり取りの記録は保存し、顧客の一覧や個別の残高は公開しないでください。

回数券やチャージ残高が残っている段階では、販売条件、未利用残高の一覧、決済方法を確認したうえで、受付を止める必要があるか、顧客にどのように案内するかを検討する必要があります。返金や告知を始める前に、一度ご確認ください。

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従業員の給与と、委託美容師への報酬

美容室では、正社員、パート、歩合給の美容師、業務委託契約の美容師、面貸し(シェアサロン)の利用者が同じ店内で働いていることがあります。法的な扱いは契約書の名称ではなく実態から判断されます。厚生労働省が示す労働基準法上の労働者性の判断では、仕事の依頼や指示に対する諾否の自由の有無、指揮監督の有無、勤務時間・場所の拘束性、代替性の有無、報酬が労務の対価といえるかを踏まえ、事業者性や専属性の程度も考慮して、個別の事案ごとに総合的に判断するものとされています。「業務委託契約書を交わしているから労働者ではない」とも、「同じ店で働いているから全員が従業員だ」とも限りません。

スタッフへの支払の種類ごとの確認事項
関係・支払の種類 法的な取扱いとして確認すること 必要となる資料 手続上の注意
未払給与(開始前3月間) 破産手続開始前3月間の使用人の給料の請求権は財団債権(破産法第149条第1項) 雇用契約書、賃金台帳、勤怠記録、給与明細、未払額の計算書 財団債権でも、支払の時期と方法は手続に沿って決まる
未払給与(それより前の期間) 雇用関係に基づく債権には一般の先取特権があり(民法第306条第2号、第308条)、優先的破産債権となる(破産法第98条第1項) 同上(対象期間が分かるもの) 優先するとされていても、破産手続の中で扱われる債権であることに変わりはない
従業員の退職手当 退職前3月間の給料の総額(開始前3月間の総額を下回る場合はその額)に相当する額が財団債権(同法第149条第2項) 退職金規程、勤続年数の分かる資料、算定の根拠 規程の有無と内容により、請求権が生じるかが変わる
個人が雇用主である場合の免責 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権は非免責債権(同法第253条第1項第5号) 雇用契約書、預り金の有無が分かる資料 「破産すれば未払はすべて消える」という理解は誤り
解雇・退職に伴う手続 解雇には少なくとも30日前の予告又は30日分以上の平均賃金の支払が必要(労働基準法第20条第1項)。ただし書の事由による場合は行政官庁の認定が必要(同条第3項、第19条第2項) 解雇通知書、離職票の作成資料、社会保険の資格喪失の書類 倒産したから当然に予告が不要になるわけではない
委託美容師・面貸し利用者への報酬 労働者性の有無を実態から判断する。真正な業務委託であれば賃金としては扱われない 業務委託・面貸しの契約書、精算書、売上の記録、席料や材料費の負担の記録 未精算の売上、預り金、席料・材料費との相殺、機材の所有権、解除の条件を確認する

財団債権や優先的破産債権に当たるからといって、その分だけ自由に先払いできるわけではありません。他方で、支払をすれば必ず偏頗弁済になるというものでもありません。誰に、いつ、どの原資から支払うかは、代理人と方針を整理したうえで決めてください。

解雇・退職の手続と未払賃金立替払制度

閉店に伴い従業員が退職する場合、解雇予告又は予告手当、休業手当、離職票の交付、社会保険や雇用保険の資格喪失の手続が必要になります。倒産の場面でも、解雇予告が不要になるのは天災事変その他やむを得ない事由により事業の継続が不可能となった場合などに限られ、行政官庁の認定を受ける必要があります。賃金が支払われないまま退職した従業員については、未払賃金立替払制度の利用を検討できる場合があります(労働者健康安全機構の公表資料。2026年9月調査時点)。

  • 事業主が、労働者災害補償保険の適用事業に該当し、1年以上事業活動を行っていたこと。
  • 労働者が、破産手続開始等の申立てがなされた日の6か月前の日から2年の間に退職したこと。
  • 対象は定期賃金と退職手当で、賞与その他臨時に支払われる賃金、解雇予告手当、延滞利息などは含まれず、未払賃金の総額が2万円未満のときも対象になりません。
  • 立替払の額は未払賃金総額の100分の80で、退職日の年齢に応じた限度があります。未払賃金総額の限度額は、30歳未満が110万円、30歳以上45歳未満が220万円、45歳以上が370万円で、立替払の上限額はそれぞれ88万円、176万円、296万円です。
  • 請求は、破産手続開始の決定等の日の翌日から2年以内に行う必要があります。

未払賃金が全額補償される制度ではなく、働いていた方全員が対象になるわけでもありません。労働基準法上の労働者に当たること、退職の時期が要件を満たすことが必要で、真正な業務委託の報酬は対象になりません。また、立替払が行われても事業主の債務が当然に消滅するわけではなく、立替払をした側がその額の限度で事業主に請求する仕組みです。個人が雇用主である場合に、非免責債権としての性質がどのように扱われるかは、個別の確認が必要です。

委託美容師・面貸しの精算

真正な業務委託と評価される場合、その報酬は賃金と同じには扱われません。未精算の売上、店が預かっているお金、材料費や席料との相殺、持ち込まれた機材の所有権、解除の条件を、契約書と実際の運用の双方から確認します。また、業務委託の相手方が従業員を使用しない個人などに当たる場合には、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(いわゆるフリーランス法。令和5年法律第25号、2024年11月1日施行)の適用があることがあります。同法では、報酬の支払期日を給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間内に定めることや、一定の継続的業務委託を中途解除する場合に原則として30日前までに予告することが定められています。適用の有無は発注側と受注側の双方の要件を確認する必要があり、労働基準法の解雇予告の制度とは別のものです。

閉店と破産申立てを進めるときの順序と、避けたい行動

閉店を検討する場面ごとの確認事項と、避けたい自己判断
場面 確認・調整すること 避けたい自己判断 用意する資料
支払の見通しが立たなくなったとき 資金繰りの見込み、支払先ごとの期日と金額、営業を続けた場合の収支 すべての支払を一律に止める。口座から現金をまとめて引き出す 試算表、預金通帳、返済予定表、滞納の一覧
回数券や予約の受付を続けるか決めるとき 提供できる見込み、未利用残高の総額、受付を止める場合の告知方法 資金繰りのために回数券の販売を強化する 顧客別の残高台帳、販売条件、利用と返金の履歴
スタッフに伝えるとき 解雇・退職の手続、予告又は予告手当、未払額の確定、離職票と社会保険の手続 口頭だけで退職を促す。未払額を確定しないまま解散する 雇用契約書、賃金台帳、勤怠記録、退職金規程
設備・リース・賃貸借を調整するとき 所有関係、返還の要否、解約予告、原状回復の範囲と見積り、搬出費用の負担 設備を廉価で売却する。知人に無償で譲る。名義だけを変更する 契約書一式、設備の写真と型式、査定資料、見積書
顧客に案内するとき 提供できるサービスと日程、予約の取扱い、残高の確認方法、連絡の窓口 親しい方にだけ先に返金する。確定していない返金額や日程を伝える 顧客別の残高一覧、掲示や通知の文案、連絡の記録
申立ての準備をするとき、開始決定の後 資料の保全、債権者と財産の一覧、費用の見込み、申立ての時期。開始決定後は管財人への説明と資料の提出、物件の引渡し 帳簿や顧客台帳を削除する。入金先を別の口座に付け替える。管財人に相談せず設備を処分する 帳簿、総勘定元帳、決算書、通帳、契約書、督促状

特定の債権者への優先的な返済、設備の廉価売却や無償譲渡、名義だけの変更、売上の入金先の付替え、帳簿や顧客台帳の削除は、いずれも避けてください。破産債権者を害することを知ってした行為や支払の停止等の後にした行為は否認の対象となり得(破産法第160条第1項)、無償の行為も支払の停止等の後又はその前6月以内のものは否認され得ます(同条第3項)。既存の債務についての担保の供与や弁済も、支払不能後や申立て後のものは否認の対象となり得ます(同法第162条第1項第1号)。財産の隠匿や不利益な処分(同法第252条第1項第1号)、特定の債権者への義務によらない弁済(同項第3号)、帳簿等の隠滅・偽造・変造(同項第6号)は、免責不許可事由として定められています。

他方で、「今日からすべての支払を止める」「口座から全額を現金化する」といった一律の対応も適切ではありません。生活費、営業を続けるために必要な支出、賃金などを含め、支払先・目的・時期・原資・債権の性質を一覧にしたうえで、代理人と方針を整理してください。

手続の段階も区別してください。受任通知を発送する段階、裁判所に申し立てる段階、破産手続開始の決定がされる段階、免責許可の決定が確定する段階は、それぞれ効果が異なります。受任通知だけですべての債権者の取立てや差押えが止まるわけではなく、開始決定だけで債務が消えるわけでもありません(受任通知と取立ての記事を読む)。租税等の請求権は免責の対象から除かれており(破産法第253条第1項第1号)、消費税や社会保険料の滞納がある場合は別途の検討が必要です(消費税・社会保険料が払えないときの記事を読む自己破産で免除されない借金の記事を読む)。

就職・面貸し・事業譲渡・再開業を検討するとき

美容師として他店に就職すること、適法な体制で面貸しを利用すること、事業を譲渡すること、将来あらためて開業することは、いずれも検討できます。ただし、いまの設備・契約・顧客情報を無条件に持ち出せることを意味するものではありません。

親族や知人へ店舗を譲渡する場合には、対価が妥当か、資産の評価に根拠があるか、代金が実際に入金され何に使われるか、債権者にどのような影響があるか、貸主やリース会社などの承諾が得られているか、雇用や顧客との契約をどう扱うか、美容所の承継の手続をどう進めるかを確認します。適正な価格であれば必ず問題がないと言い切れるものでもありませんので、交渉を始める前にご相談ください。

顧客のカルテ、施術の履歴、連絡先、予約データ、SNSや予約サイトのアカウントは、契約上どこに帰属し、どのような条件で利用できるかを確認する必要があります。合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合、その提供を受ける者は第三者に該当しないものとされていますが(個人情報の保護に関する法律第27条第5項第2号)、事業の承継に伴って個人情報を取得した場合には、あらかじめ本人の同意を得ないで、承継前における利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱ってはならないとされています(同法第18条第2項)。承継の例外があるからといって、利用目的による制限がなくなるわけではありません。適法な事業承継に伴う提供と、担当美容師が転職や独立の際に顧客情報を持ち出すこととは、まったく別の問題です。

続けられるかを先に確認する|資金繰りと会計の整理

閉店の判断と債務整理の判断は、分けて考えることができます。まず、借入の返済を除いた収支、家賃・リース料、賃金・外注費、材料費、税金・社会保険料、生活費を整理し、そこに前払残高に対応する未提供のサービスの負担、閉店と明渡しの費用、申立てにかかる費用の見込みを加えて、どの時点で資金が不足するかを確認します。注意したいのは、回数券の販売で現金が入っていても、将来の施術という負担が残っている点です。入金額、会計上の売上と前受金の残高、契約上の未履行の義務、返金すべき額は必ずしも一致せず、会計上の科目だけで法的な結論や税務上の処理を決めることはできません。

債務整理の方法としては、任意整理、個人再生、法人の再生手続、私的整理、事業譲渡などが考えられ、それぞれ利用できる主体、要件、限界が異なります。「個人再生であれば店と設備を必ず残せる」とも、「破産であれば事業の継続は一切できない」とも言い切れません。破産手続開始の決定後であっても、破産管財人が裁判所の許可を得て事業を継続できる場合はありますが(破産法第36条)、これは管財人の権限に基づくもので、経営者が従前どおり営業を続けられるという意味ではありません。

なお、事業を営んでいた方の破産では、事業用の財産と個人の財産を区別する調査や取引関係の調査が必要になるため、破産管財人が選任される取扱いとなることが一般的です。同時廃止か管財事件かは、財産の額と調査の必要性を踏まえた裁判所の運用によります。神戸市内から申し立てる場合の申立先や費用の考え方は、自己破産・個人再生の費用が払えないときの記事を読むで整理しています。

相談前に準備する資料と、相談するタイミング

次の資料があると、状況の整理と見通しの検討がしやすくなります。すべてがそろうまで相談を待つ必要はありません。まずは手元にあるものからお持ちください。

  • 決算書又は確定申告書、直近の試算表、現金出納帳
  • 預金通帳(事業用・個人用の双方)、借入契約書と保証条項、返済予定表、滞納の一覧
  • 店舗の賃貸借契約書、敷金・保証金の入金が分かる資料、原状回復の見積り
  • リース契約書・割賦契約書、設備台帳、購入時の資料、設備の写真(型式や設置状況が分かるもの)
  • 予約金・回数券・チャージ残高の顧客別台帳、販売条件、利用と返金の履歴
  • 決済代行会社・予約サイトとの契約書と未精算の明細
  • 雇用契約書、就業規則、賃金台帳、勤怠記録、給与明細、退職金規程、未払額の計算
  • 業務委託契約書・面貸し契約書、報酬の精算書
  • 美容所の開設・変更に関する届出の控えと検査確認証
  • 税金・社会保険料の通知、督促状、解除通知、差押えに関する書類
  • 取引先・貸主・リース会社・顧客との主なやり取りの記録

資料は改変せず、権限のある方法で保存してください。顧客情報を含む資料の受渡しの方法は、事務所からのご案内に従ってください。相談の時期は、支払の見通しが立たなくなったとき、回数券や前払を伴う予約の受付を続けるか迷っているとき、スタッフに閉店を伝える前、賃貸借やリースの解約・返還を決める前、設備の売却や事業譲渡の話が出たとき、督促状や差押えに関する書類が届いたときが目安です。方針が固まってからではなく、判断を迫られた段階でご相談いただくことで、選択肢を整理しやすくなります。

よくある質問

自己破産をすると美容師免許は取り消されますか。
美容師法第3条第2項の免許を与えないことがある事由にも、同法第10条の取消し・業務停止の事由にも、破産は含まれていません。破産手続開始の決定を受けたことだけを理由に免許が取り消される仕組みにはなっていません。他の資格や役職を併せてお持ちの場合は、それぞれの法令を個別に確認する必要があります。
破産すると、いまの店で営業を続けることはできなくなりますか。
免許が残ることと、いまの店舗を維持できることは別の問題で、店舗の賃貸借、リース契約、資金繰り、雇用体制のそれぞれについて継続できるかを確認します。破産手続開始の決定後に破産管財人が裁判所の許可を得て事業を継続する場合はありますが(破産法第36条)、経営者が従前どおり営業を続けられるという意味ではありません。
シャンプー台やはさみは手元に残せますか。
まず、その物が誰の所有物かを確認します。ご本人の所有であれば、業務に欠くことができない器具その他の物として差押えが禁止されるか(民事執行法第131条第6号、破産法第34条第3項第2号)、自由財産の拡張の対象とするか(同法第34条第4項)を検討します。「仕事に使う設備はすべて残せる」というものではなく、手道具と据付けの大型設備とで判断が同じとは限りません。法人が所有する設備には、この仕組みは当てはまりません。
リース設備を返却すれば、残りのリース料は払わなくてよくなりますか。
物件を返す義務と、金銭を支払う義務は別のものです。返却しても、残リース料や規定損害金の債務が当然に消えるわけではありません。契約の類型、所有者、残期間、解約と返還の条項、個人保証の有無を確認したうえで整理します。返還や精算に合意する前にご相談ください。
お客様の回数券は返金されますか。先に返金してもよいですか。
「必ず全額返金される」とも「一切返金されない」とも言えません。契約の内容、支払の時期、資金の管理方法、資金決済法上の位置づけによって整理が変わります。また、親しい方にだけ先に返金することは、否認や免責不許可事由の問題になり得ます(破産法第162条第1項、第252条第1項第3号)。返金を始める前に、顧客ごとの残高を整理したうえでご確認ください。
スタッフへの未払給与は、破産すればなくなりますか。
個人が雇用主である場合、雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権と使用人の預り金の返還請求権は、免責の対象から除かれています(破産法第253条第1項第5号)。また、破産手続開始前3月間の給料の請求権は財団債権とされ(同法第149条第1項)、それより前の期間の賃金も優先的破産債権となります(同法第98条第1項)。未払賃金立替払制度を利用できる場合もありますが、対象となる賃金の範囲や限度額に制限があります。
業務委託の美容師への未払報酬も、給与と同じ扱いになりますか。
同じではありません。まず、契約の名称ではなく実態から、労働基準法上の労働者に当たるかを確認します。真正な業務委託と評価される場合、その報酬は賃金としては扱われず、未払賃金立替払制度の対象にもなりません。未精算の売上、預り金、席料や材料費との相殺の取決めもあわせて確認します。
破産した後に、また美容室を開業することはできますか。
美容師法に破産を理由とする制限はありませんので、免許の面での制約はありません。もっとも、開業には美容所の開設の届出と構造設備の確認(美容師法第11条第1項、第12条)、資金の調達、物件の賃借が必要です。破産手続の後は信用情報に登録され、一定期間は融資やリースの審査に影響し得ます。前の店舗の設備・顧客情報・回数券をそのまま引き継げるものでもありませんので、時期と方法を含めて事前にご相談ください。

まとめ

  • 美容師法には破産を理由とする免許の欠格事由も取消事由もなく、美容所の開設が破産で自動的に失効する定めもありません。営業をやめる場合は廃止の届出を確認します。
  • 免許が残ることと、いまの店舗・設備・雇用体制を維持できることは別に判断します。個人経営か法人経営かで整理する範囲も変わります。
  • 設備・道具は、まず所有関係を確認します。差押禁止動産と自由財産の拡張は別の仕組みで、法人所有の設備には当てはまりません。リースは、物件を返す義務と金銭を支払う義務を分けて確認します。
  • 回数券やチャージ残高は、契約内容、残高、資金決済法上の位置づけを確認します。特定の顧客にだけ先に返金することは避けてください。
  • 従業員の給与と委託美容師の報酬は扱いが異なり、個人が雇用主である場合、使用人の請求権は非免責債権とされています。
  • 閉店前の支払、資産の移転、資料の廃棄は否認や免責不許可事由の問題になり得ますが、一律に支払を止めることも適切ではありません。就職・面貸し・事業譲渡・再開業のいずれも検討できますが、設備・契約・顧客情報を無条件に持ち出せるわけではありません。

美容室の経営に行き詰まりを感じたときは、店舗の賃貸借契約、リース契約、未利用の回数券残高、未払の給与や委託報酬を確認したうえで、営業を続ける余地があるか、閉店と債務整理をどの順序で進めるかを検討することになります。当事務所では、弁護士と公認会計士の資格を活かし、財務の状況と契約関係の双方を確認したうえで対応方針を整理します。

神戸みらい法律会計事務所では、初回の法律相談を無料としています(事前のご予約が必要です。初回無料相談では、1回あたり60分を目安に、案件の概要をうかがったうえで、大まかな方向性や費用の見込みをお伝えします)。無料相談の対象・条件は、初めての方へのご案内を確認するでご確認ください。

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参考資料

本記事は、2026年9月10日時点の法令・公式資料に基づく一般的な解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。法令の改正、行政の運用、裁判所の運用、各社の契約条件は変更されることがあります。個別事情により結論は異なりますので、閉店、返金、契約の解約、資産の処分などを決める前に、資料を確認したうえでご判断ください。

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