13週資金繰り表|資金不足日から再建・法的整理の判断時期を逆算 |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|

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13週資金繰り表|資金不足日から再建・法的整理の判断時期を逆算

支払日が近づくたびに口座残高を確認して不安になる、決算は黒字なのに手元の資金が増えている実感がない、金融機関から今後の見通しを尋ねられても「いつまでに、いくら足りないのか」を数字で説明できない。こうした状態のときに、まず整えるべき資料が13週資金繰り表です。

13週資金繰り表は、これからおよそ3か月間の入金と出金を週単位で並べ、どの週に、いくら資金が足りなくなる見込みかを可視化する管理資料です。もっとも、この表から読み取れるのは「予定した支払に充てられる資金が不足する見込みの時期」であって、「法律上の支払不能に当たるかどうか」でも「いつまでに破産を申し立てなければならないか」でもありません。週末残高がマイナスになる週と、社内で方針を判断すべき期限は、別のものとして設計する必要があります。

この記事では、使える現預金の確定から、週別の入出金の置き方、下振れケースの作り方、毎週の更新方法、そして資金不足の見込日から逆算して社内の判断期限を設定するところまでを、実際に手を動かせる順序で整理します。あわせて、判断が固まる前に実行してしまうと後の再建又は法的整理に影響し得る行為も確認します。

13週資金繰り表が未完成でも、直近の通帳、支払予定表及び借入金一覧があれば整理を始められます。まずは相談予約フォームへ進むことでも、必要な資料の絞り込みから着手できます。

結論|13週資金繰り表で出す数字と、別に決める判断期限

この記事の要点

  • 13週資金繰り表の目的は、これから13週間の入金と出金を週単位で並べ、各時点の使える現預金と、会社が自ら定めた最低必要現預金との差額を見えるようにすることです。
  • 表から読み取る日は一つではありません。最低必要現預金を初めて下回る週、予定した支払を行うと使える現預金が不足する週、危機が見込まれる週の中で実際に資金が足りなくなる具体的な日の三つを切り分けます。
  • 最低必要現預金は、全国一律の金額や月商比率で決まるものではなく、支払日の集中、季節性、入金の確実性、予測誤差、緊急支出などを踏まえて会社ごと・時点ごとに設定する内部管理基準です。
  • 基本ケースのほかに下振れケースを作り、主要な売掛金の入金遅延や売上未達を織り込みます。未承認の融資や未契約の資産売却は、基本ケースの確定入金には入れません。
  • 社内の判断期限は、資金不足の見込日から、資料作成、社内意思決定、金融機関等との協議、従業員・取引先対応、手続費用の確保などに必要な期間を逆算して設定します。資金が尽きる日まで待ってから判断する設計にはしません。
  • 13週資金繰り表だけで、破産法上の支払不能や債務超過が確定するわけではなく、再建か清算かの結論も決まりません。表は判断材料を整える道具であり、結論を自動的に出す道具ではありません。

以下では、この六点を実際の作業手順に落とし込みます。数字の置き方に迷う箇所は、そのまま資料の確認事項になりますので、飛ばさずに読み進めていただくことをおすすめします。

13週資金繰り表とは|月次資金繰り表・損益計算書との違い

13週資金繰り表は、基準日から13週間分の入金予定と出金予定を、実際の着金日・支払日を基準として週ごとに並べ、各週末の使える現預金を計算する表です。会計上の発生額を並べるのではなく、口座からいくら出ていき、口座にいくら入ってくるかだけを見るという点で、損益計算書とは目的が異なります。

損益計算書・キャッシュ・フロー計算書との違い

損益計算書は、収益と費用を発生した期間に割り当てて損益を示す書類です。売上を計上した時点と代金が入金される時点、費用を計上した時点と代金を支払う時点は一致しないため、黒字であっても資金が不足することがあります。また、借入金の元金返済は費用ではありませんが、資金は確実に減ります。

キャッシュ・フロー計算書は、過去の一定期間について資金の増減を営業活動・投資活動・財務活動に区分して示す書類です。これに対して資金繰り表は、将来の資金の動きを予測し、不足の時期と金額を先に把握するための管理資料です。独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営するJ-NET21も、資金繰り表を「一定期間内の現金の動きをまとめ、手持ち資金の過不足を可視化できるようにした資料」と説明し、キャッシュ・フロー計算書との違いを将来の資金流動を予測する目的にあると整理しています(J-NET21「資金繰り表を活用する」を確認する)。

13週という期間の位置付け

13週は法令上の期間ではありません。13週資金繰り表は、短期の資金を週次で管理するための実務上の管理手法であり、法令が定める期間でも、倒産を判定する法定基準でも、破産の申立期限でもありません。「13週で作らなければならない」という決まりはなく、おおむね四半期先までを週単位で見渡しつつ、毎週更新しても運用が破綻しにくい長さである、という実務上の理由で用いられています。

したがって、期間の長さそのものに意味を求める必要はありません。重要なのは、支払日の集中する週を漏らさずに置けているか、毎週更新して予測と実績の差を確認できているか、という運用の側です。

日次表・月次表との使い分け

業種、入出金のサイクル、資金危機の近さによって、次のように併用します。どの時点で日次表へ切り替えるかは、支払日の集中度や残高の余裕によって変わるため、個別に判断してください。

  • 直近1週間から2週間は、給与、手形・電子記録債権の決済、口座振替が集中しやすいため、日次表を併用して週の途中の残高不足を確認します。
  • 第3週から第13週は、週単位で入出金を置き、支払日の集中する週を特定します。
  • 13週より先は、月次資金繰り表で、季節性のある支出、納税、賞与、借入金の元金返済、設備支出などを延長して確認します。

予測をどこまで延ばすかは、会社の規模、事業サイクル及び利用を検討する支援制度の要件によって異なります。全国一律に必要とされる期間はありません。

作成前に「使える現預金」を確定する

13週資金繰り表の精度は、開始残高の置き方でほぼ決まります。試算表の「現金及び預金」をそのまま開始残高にすると、実際には支払へ充てられない資金まで含めてしまい、不足の時期を実態より遅く見せてしまいます。

帳簿上の現預金と、実際に支払へ充てられる金額は違う

基準日時点の残高を口座別に確認し、次の区分で整理してください。通帳、インターネットバンキングの残高照会、当座勘定照合表、定期預金証書、保険証券、担保差入れに関する契約書を突き合わせます。

  • 手元現金及び直ちに使用できる普通預金・当座預金
  • 基準日時点で担保契約、払戻制限その他の法的又は契約上の利用制限がかかっている預金
  • 基準日時点では使えるものの、期限の利益喪失、相殺、差押えなどにより将来使えなくなる可能性がある預金
  • 定期預金、積立金、保証金、敷金など、換金に時間又は条件を要する資産
  • 未実行の融資枠、審査中の借入、交渉中の出資、未契約の資産売却代金
  • 回収期日、相手方の支払能力又は紛争の有無が不確実な売掛金
  • グループ会社、関連会社又は代表者が保有する資金

ここで注意したいのは、基準日時点の利用制限と、将来の相殺や差押えのリスクを同じ扱いにしないことです。前者は開始残高に入れてよいかどうかの問題であり、後者は下振れケース又は実行前の法的確認事項として整理します。借入先の金融機関に預金がある場合の相殺の可否は、契約条項と期限の利益喪失事由の内容によって異なりますので、預金全額を使えないものと決めつけることも、当然に使えるものと考えることも避けてください。

未確定の入金を基本ケースへ入れない

審査中の融資、交渉段階の資産売却、回収の見込みが立っていない売掛金を基本ケースの確定入金に含めると、表は実態より安全に見えます。これらを表に入れる場合は、契約書、稟議・承認の状況、実行条件、入金予定日を確認したうえで、確度を区分して別の行又は別のケースに置いてください。確度区分の具体的な考え方は、後述の前提条件台帳で整理します。

グループ会社・代表者の資金は当然には合算しない

資金繰り表は、原則として法人ごとに作成します。グループ会社や代表者個人の資金を当然に合算すると、実際には動かせない資金を前提とした計画になりかねません。資金移動の法的・契約上の可否、利益相反の有無、機関決定の要否、会計上及び税務上の処理、返済可能性を個別に確認したうえで、動かせることが確認できたものだけを、確度を明示して計上してください。

代表者個人の資金投入は、資金不足の時期を後ろへずらす効果はありますが、再建の見込みを検討しないまま繰り返すと、個人の生活資金と保証債務の負担だけが増えることがあります。投入の前に、投入額でどの週まで資金がもつのか、その間に何を成立させるのかを、この表の上で確認してください。

EXCELで作る13週資金繰り表のひな型|行項目・列設計・数式

ここからは、表計算ソフトへそのまま転記できる形で、行項目、列設計及び数式を示します。列は「項目」+「第1週から第13週」の合計14列、行は開始残高から資金余力までの19行を基本とします。実際の開始日と終了日は、会社の給与支給日や締日に合わせて設定してください。様式を一から作るのが難しい場合は、公的機関が公表している書式を出発点にする方法もあります(日本政策金融公庫の各種書式ダウンロードで資金繰り表の様式を確認する)。

行項目と、確認すべき根拠資料

まず、どの行に何を置き、何を見て金額と日付を決めるかを固定します。損益計算書の発生額を機械的に転記するのではなく、実際の着金日・支払日を基準とする直接法で作成します。

表1 13週資金繰り表の主要行項目と根拠資料
区分 主な項目 主な根拠資料 入出金日の確認点
開始残高 手元現金、普通預金、当座預金 通帳、当座勘定照合表、残高照会画面 基準日時点で実際に払い出せるかどうか。担保・払戻制限の有無を口座別に確認する。
入金(営業) 現金売上、売掛金回収、前受金 請求書控、取引基本契約、得意先元帳、入金サイトの一覧 売上計上日ではなく着金日。締日から支払日までのサイト、月末が銀行休業日の場合の繰上げ・繰下げ。
入金(臨時) 返金、税の還付、保険金、補助金・助成金 更正の請求・還付通知、保険会社の連絡文書、交付決定通知 決定から着金までの期間。請求手続が未了のものは確度を落とす。
入金(財務) 借入実行、増資・出資、資産売却代金、代表者等からの資金投入 金融機関の稟議・承認の状況、契約書、売買契約書、議事録 実行条件が満たされる時期。営業入金と区別し、財務入金として別行に一度だけ計上する。
出金(人件費) 給与、賞与、役員報酬、源泉所得税、社会保険料 給与台帳、支給日一覧、納付書、口座振替の予定 支給日と納付期限。口座振替日が休業日に当たる場合の振替日。
出金(仕入・外注) 仕入代金、外注費、荷造運賃 買掛金元帳、発注書、支払予定表、取引基本契約 締日と支払日、手形・電子記録債権による決済の有無。
出金(固定費) 家賃、リース料、水道光熱費、通信費、決済手数料、保険料 賃貸借契約、リース契約、口座振替の明細 口座振替日。年払い・半年払いの契約が13週間内にないか。
出金(税・公課) 消費税、法人税等の中間・確定、事業所税、固定資産税 申告書控、納付書、納税予定表 納付期限と振替日。分割納付・猶予の申請中のものは別行で管理する。
出金(金融) 借入元金返済、支払利息、保証料 返済予定表、金銭消費貸借契約書 約定返済日。元金と利息は費用計上の有無が異なるため、金額はいずれも資金ベースで置く。
出金(決済) 支払手形、電子記録債権の支払、小切手 手形帳控、でんさいの発生記録、支払手形記入帳 決済日。決済できない場合の影響が大きいため、日次でも確認する。
出金(その他) 設備投資、解約・撤退費用、返金・前受金の返還、弁護士・公認会計士等の費用 発注書、解約通知、見積書、委任契約書 着手時期と支払条件。手続の準備に必要な資金は別に管理する。
管理指標 最低必要現預金、資金余力 社内で定めた基準、過去の週次残高の変動記録 週次出金へ既に計上した支払を、最低必要現預金へ重ねて二重計上していないか。

自社の口座間の資金移動は、会社全体の入金合計・出金合計には計上せず、口座別残高との照合に必要な振替として区別してください。同じ資金を入金にも出金にも計上すると、総額が実態より大きく見えます。

記号式ひな型|第1週から第13週の列設計

次の表は、実際の金額を入れる前の型です。「入力」と表示した欄が入力箇所、「自動計算」と表示した欄が数式で求める箇所です。各週の見出しには、自社の締日・支払日に合わせた実際の開始日と終了日を記入してください。

表2 13週資金繰り表の記号式ひな型(「入力」は入力欄、「自動計算」は数式で求める欄)
項目 第1週
開始日・終了日を入力
第2週
開始日・終了日を入力
第3週
開始日・終了日を入力
第4週
開始日・終了日を入力
第5週
開始日・終了日を入力
第6週
開始日・終了日を入力
第7週
開始日・終了日を入力
第8週
開始日・終了日を入力
第9週
開始日・終了日を入力
第10週
開始日・終了日を入力
第11週
開始日・終了日を入力
第12週
開始日・終了日を入力
第13週
開始日・終了日を入力
開始残高 入力 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算
入金(確定) 売掛金回収 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力
入金(確定) 現金売上・前受金 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力
入金(高確度) 回収予定の売掛金・臨時収入 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力
入金合計 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算
財務入金(借入実行・増資・資産売却代金) 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力
出金 人件費(給与・役員報酬・源泉所得税・社会保険料) 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力
出金 仕入代金・外注費 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力
出金 家賃・リース料・水道光熱費・通信費 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力
出金 消費税その他の税・公課 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力
出金 借入元金返済 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力
出金 支払利息・保証料・決済手数料 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力
出金 手形・電子記録債権の決済 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力
出金 その他(設備・保険料・専門職費用等) 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力
出金合計 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算
当週純増減 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算
週末の使える現預金 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算
最低必要現預金 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力 入力
資金余力 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算 自動計算

表2の出金項目の並び順は、資料の確認しやすさを基準にした整理であり、支払の法的な優先順位を示すものではありません。賃金、税金、社会保険料、担保権付債務、リース料、相殺の可能性がある債務、所有権留保付きの仕入代金、預り金などは、一般の取引債務とは法律上の扱いが異なることがあります。どの支払を続け、どの支払を止めるかを、この並び順から決めないでください。

数式と、二つの補填額

各行の関係は次のとおりです。

  • 各週末の使える現預金 = 当該週の開始時現預金 + 当該週の入金合計 - 当該週の出金合計
  • 翌週の開始時現預金 = 前週末の使える現預金
  • 資金余力 = 各時点の使える現預金 - 当該時点について会社が設定する最低必要現預金

表2の行をそのまま表計算ソフトの第2行から順に並べ、第1行を週の見出し、C列を第1週、O列を第13週とした場合、数式例は次のようになります。数式はコード上の表記であるため、半角で入力してください。

  • 入金合計(C6) =SUM(C3:C5)
  • 出金合計(C16) =SUM(C8:C15)
  • 当週純増減(C17) =C6+C7-C16
  • 週末の使える現預金(C18) =C2+C17
  • 第2週の開始残高(D2) =C18
  • 資金余力(C20) =C18-C19

不足額を示す指標は二つあり、意味が異なります。

  • ゼロ割れ補填額 = MAX(0、-予測期間中の最低利用可能現預金)。表計算ソフトでは =MAX(0,-MIN(C18:O18)) と設定します。予定した支払を行っても残高をゼロ以上に保つために、いくら不足するかを示します。
  • 最低必要現預金維持額 = 予測期間中の各時点について算定した「最低必要現預金 - 利用可能現預金」の最大値(0未満は0)。資金余力の行を使えば =MAX(0,-MIN(C20:O20)) と設定できます。会社が定めた手元資金の下限を維持するために、いくら不足するかを示します。

各週のマイナス額を単純に合計しないでください。不足は週をまたいで繰り越されるため、各週の不足額を足し上げると、必要額を大幅に過大計上します。また、対策を実行した後の必要額を示すときは、対策による入出金を反映した表で再計算し、元の不足額に機械的に加減しないでください。週末残高から算定した額は週の途中の不足を見落とすため、危機が見込まれる週は日次残高で再計算します。

計算例(計算構造を示すための架空例)

次の数値は、計算の流れを説明するための架空例です。標準額でも、事務所の取扱実績でもなく、再建の可能性を示すものでもありません。

表3 開始残高から資金余力までの計算例(架空の数値)
項目 第1週 第2週 第3週(予測)
開始残高 1,200万円 900万円 400万円
入金合計 800万円 500万円 600万円
財務入金 0円 0円 0円
出金合計 1,100万円 1,000万円 1,150万円
当週純増減 △300万円 △500万円 △550万円
週末の使える現預金 900万円 400万円 △150万円
最低必要現預金 600万円 600万円 600万円
資金余力 300万円 △200万円 △750万円

この例では、最低必要現預金を初めて下回るのは第2週、週末残高がマイナスになるのは第3週です。ゼロ割れ補填額は、予測期間中の最低利用可能現預金が△150万円ですから150万円、最低必要現預金維持額は、資金余力の最小値が△750万円ですから750万円となります。第2週の200万円と第3週の750万円を足して950万円とするのは誤りです。

そして、第3週の週末残高が△150万円ということは、その週の途中のどこかで、予定した支払を行えば残高が不足する日が来るという意味です。第3週は日次に分解し、給与日、口座振替日、手形・電子記録債権の決済日を並べて、不足が生じる具体的な日を特定してください。

入出金の確度区分と前提条件台帳

資金繰り表の数字は、必ず「誰との、どの契約に基づく、いつの入出金か」という前提を伴います。表の数字だけを更新していると、前提が変わったことに気付けません。表とは別に、前提条件台帳を作ってください。

前提条件台帳に記録する項目

表4 前提条件台帳の主要項目
項目 記録する内容 確認する資料・確認先
相手方 取引先名、金融機関名、行政機関名 取引基本契約、請求書、通知書
金額 税込金額、相殺・控除の有無、値引きの合意 請求書控、注文書、覚書
着金日・支払日 予定日、銀行営業日の調整後の日、振替日 入金サイトの一覧、口座振替の予定、返済予定表
根拠資料 契約書、請求書、稟議書、承認記録の所在 社内の保管場所、電子データの所在
確度 確定・高確度・未確定のいずれか、判定した理由 後述の確度区分の判定条件
最終確認日と担当者 いつ、誰が、どの方法で確認したか 電話・面談の記録、電子メール
未達時の影響と代替策 入金がずれた場合にどの週が不足するか、代替の資金手当て 下振れケースの計算結果

確度区分の判定条件と、計上するケース

確度は、感覚ではなく客観的な条件で区分します。同じ入出金を複数のケースに重複計上しないよう、どのケースに一度だけ計上するかを決めてください。

表5 入出金の確度区分と計上するケース
確度区分 判定条件の例 計上するケース 未達時の扱い
確定 契約又は請求書があり、金額と支払期日が特定され、相手方の支払実績にも問題がない 基本ケースに計上する 下振れケースで、主要な相手方の遅延を検討する
高確度 契約又は発注はあるが、検収・請求手続が未了、又は相手方の支払時期に変動がある 基本ケースに計上したうえで、別行として区別する 下振れケースでは、遅延又は減額を織り込む
未確定・対策項目 審査中の融資、未合意のリスケジュール、交渉中の資産売却、回収に紛争がある売掛金 基本ケースには入れず、対策実行後ケースに計上する 実現条件と回答期限を定め、期限までに成立しなければ計上を取り消す

確率を掛けた期待値を、実際の着金予定額と同じ行に混ぜないでください。資金繰り表は、期待値ではなく、その日に口座へ実際に入る金額を並べる表です。「8割方入りそうな300万円」を240万円として置くと、どちらの数字も検証できなくなります。

基本ケース・下振れケース・対策実行後ケース

表6 三つのケースの違いと使い分け
比較項目 基本ケース 下振れケース 対策実行後ケース
目的 現在の前提が実現した場合の資金の動きを示す 前提が崩れた場合に、いつ資金が不足するかを示す 対策が成立した場合に、不足がどこまで解消するかを示す
入金の扱い 確定及び高確度のみを計上する 主要な売掛金の入金遅延、売上未達、粗利の悪化を会社の実情に基づき織り込む 未確定・対策項目を、実現条件と期限を明示して計上する
出金の扱い 契約・予定に基づく支払を計上する 予期せぬ返金、修繕、解約費用、追加の運転資金を検討する 対策に伴う費用(手数料、専門職費用等)も計上する
主な用途 週次の管理と、金融機関等への説明 社内判断期限の設定と、切替条件の検討 交渉材料の整理と、対策の優先順位付け
注意点 未確定の入金を混ぜると、不足の時期を実態より遅く見せる 裏付けのない一律の減少率を置かない。主要な相手方ごとに検討する 成立しなかった場合に基本ケースへ戻す運用を決めておく

13週資金繰り表の作り方|10の手順

作業の順序を固定すると、担当者が代わっても同じ品質で更新できます。次の順序で進めてください。

  1. 基準日と、第1週から第13週までの週区切り(開始日・終了日)を決める。給与支給日や締日をまたぐ位置に注意する。
  2. 全口座の残高を照合し、実際に払い出せる金額と、制限のある金額を区分する。
  3. 契約書、請求書、支払予定表、返済予定表から、確定している入出金を日付順に置く。
  4. 売掛金を取引先別・請求書別に回収予定週へ置き、入金サイトと相手方の支払実績から確度を判定する。
  5. 給与、源泉所得税、社会保険料、消費税、借入元金返済、大口の仕入代金など、集中する支出を漏れなく置く。
  6. 各週の純増減、週末残高及び最低必要現預金との差額(資金余力)を計算する。
  7. 基本ケースを固めたうえで、下振れケースを作る。必要に応じて対策実行後ケースを分ける。
  8. 最低必要現預金を割る週、週末残高がマイナスになる週、及び最初に支払資金の不足が見込まれる具体的な日を特定する。
  9. 危機が見込まれる週を日次表に分解し、週の途中の残高不足を確認する。
  10. 実績と予測の差異を分析し、経過した週を実績へ置き換え、新たな第13週を追加して毎週更新する。

各週には実際の開始日と終了日を設定し、表そのものに基準日時、更新日、版番号及び更新責任者を記録してください。土日祝日、銀行営業日、入金の締切時刻、口座振替日、手形・電子記録債権の決済日によって、着金や引落しが前後することにも注意が必要です。

会社の資金はあと何週間もつか|三つの不足日を切り分ける

「あと何週間もつか」という問いに、現金残高を平均的な支出で割って答えることはできません。J-NET21も、資金ショートが見込まれる場合の対応として、まず日単位又は週単位の資金繰り表で不足の日と金額を特定することを挙げています(J-NET21の資金ショート時の対応に関する解説を確認する)。支出は週によって大きく偏り、給与日と納付期限が重なる週は他の週の何倍にもなるためです。次の三つを分けて特定してください。

  • 最低必要現預金割れ日(週) 会社が自ら定めた手元資金の下限を初めて下回る時点です。まだ支払は回っていますが、余裕がなくなった合図として扱います。
  • 予定支払後の資金不足見込日(週) 予定した支払を実行すると、使える現預金が足りなくなる時点です。基本ケースと下振れケースの双方で特定します。
  • 危機週の中の具体的な不足日 週末残高がプラスでも、週の途中の支払日に残高が足りないことがあります。日次に分解して、何月何日のどの支払で不足するかまで落とします。

最低必要現預金の決め方

最低必要現預金は、全社共通の金額や月商の何か月分といった比率で決めるものではありません。支払日の集中、季節性、入金の確実性、予測誤差の幅、緊急の修繕や返金、そして再建又は整理の検討に必要な資金を踏まえ、会社ごと・時点ごとに設定する内部管理基準です。

給与、仕入代金、税・社会保険料、専門職費用などを既に週次の出金へ計上している場合、同じ金額を最低必要現預金にも含めると、必要資金を二重に計上することになります。最低必要現預金に含めるリスク又は支出は、その算定根拠と、週次出金との関係を書き出し、重複がないことを確認してください。

危機週は日次に分解する

日次表では、各営業日の開始残高、その日の入金、その日の出金、終了残高を並べます。給与の振込データ送信日、口座振替日、手形・電子記録債権の決済日は、当日の残高で判定されますので、前日までに資金が用意できているかを確認してください。

特に手形及び小切手については、一般社団法人全国銀行協会が、6か月間に2回、手形・小切手の不払い(不渡り)を起こした者について、その後2年間、参加銀行との当座預金取引や貸出取引を禁止する取引停止処分制度を運営しています。決済日の資金は、他の支払とは切り離して確認することをおすすめします(全国銀行協会の手形交換制度の説明を確認する)。

13週以内に資金不足が出ない場合の読み方

13週間の予測期間内に不足が現れない場合でも、「会社は安全である」「13週より先も資金は続く」という結論にはなりません。正しくは、「現在の前提及び予測期間内では、資金不足を確認できない」という状態です。

  • 13週より先に、賞与、納税、保険料の年払い、設備の支払、借入金の一括返済期日などが控えていないかを、月次資金繰り表で延長して確認します。
  • 前提が崩れた場合にどうなるかを、下振れケースで確認します。主要な取引先1社の入金が1か月遅れただけで不足が生じるのであれば、余裕があるとはいえません。
  • 毎週、実績と予測の差異を確認します。差異が一方向に続いている場合は、前提そのものを見直します。

毎週ローリング更新する方法

13週資金繰り表は、作った時点ではなく、更新し続けることで役に立ちます。更新の作業は、次の順序で固定してください。

  1. 経過した第1週を、通帳と口座明細に基づく実績へ置き換える。
  2. 予測と実績の差異を、金額差、入金時期のずれ、計上漏れ、二重計上、一時要因に分けて分析する。
  3. 差異の原因を前提条件台帳へ反映し、確度区分を見直す。
  4. 全体を1週ずらし、新たな第13週を追加する。
  5. 危機が見込まれる週を日次表へ分解し直す。
  6. 更新日、版番号、更新責任者及び根拠資料の保存場所を記録する。

更新の頻度は、原則として週1回です。資金不足の見込日が近い場合や、大口の入金・支払が控えている場合は、日次で残高を確認します。更新した表は差し替えて捨てるのではなく、版を残してください。予測がどの方向に外れやすいかは、過去の版を並べることで初めて分かります。金融機関や支援機関との協議でも、更新の履歴が残っている表は、説明の裏付けになります。

資金不足日から相談・一次判定・最終判定・方針切替日を逆算する

資金繰り表で不足の見込日が出たとき、その日まで営業を続けてから方針を決める、という設計にはしないでください。追加融資、返済条件の変更、スポンサーの探索、私的整理、民事再生、事業譲渡、法人破産のいずれを選ぶにしても、資料の作成、社内の意思決定、相手方との協議、従業員及び取引先への対応、手続費用と当面の運転資金の確保に、相応の期間がかかるためです。

社内判断期限は、法律が定めた期限ではありません。ここでいう判断期限は、必要な準備期間を資金不足の見込日から逆算して社内で設定する管理上の期限です。「資金ショートの何週間前までに決めなければならない」という全社共通の数値はありませんし、事業を継続しているすべての会社について、資金繰り表から機械的に算出できる破産の申立期限を定めた一般的な規定もありません。

逆算のスケジュール表

表7 資金不足の見込日から逆算する社内判断スケジュール
判断事項 逆算の起点 その前に終えておく作業 社内で担当する者の例 社内期限の設定方法 未達のときの切替条件
相談開始日 下振れケースの資金不足見込日 使える現預金の確定、直近の通帳・支払予定表・借入金一覧の整理、13週表の初版作成 代表取締役、経理財務責任者 資料の整理と初回相談の日程調整に要する期間を確保して設定する 資料が揃わなくても、期限が来たら未整理のまま相談を開始する
再建方針の一次判定日 資金不足見込日と、交渉相手の回答に要する期間 追加融資・条件変更の打診、主要取引先との条件見直し、遊休資産の売却可能性の確認、対策実行後ケースの作成 代表取締役、経理財務責任者、顧問の税理士・公認会計士 金融機関等の検討期間と、社内の意思決定に要する期間を積み上げて設定する 主要な対策のいずれについても見通しが立たない場合は、私的整理及び法的整理の検討を並行して開始する
再建案の最終判定日 法的整理等の準備に要する期間の始期 再建案が成立するための最終条件の特定、必要な資金額と時期の確定、スポンサー候補の意向確認 取締役会又は経営会議 手続の準備に必要な期間を確保できる時点を限度として設定する 最終条件が満たされない場合は、別方針へ切り替える
別方針への切替日 手続費用と当面の必要資金を確保できる限界時点 必要資料の洗い出し、費用の見積り、従業員・取引先・賃貸人・リース会社への対応方針の整理、社内の意思決定 取締役会又は経営会議、代理人となる弁護士 資料作成、費用確保及び関係者対応に要する期間を逆算して設定する 切替日を過ぎても方針が定まらない場合は、支払・処分を止め、資料の保全を優先する
期限の見直し日 毎週の更新日 実績差異の分析、確度区分の見直し、新たな第13週の追加 経理財務責任者 毎週の更新に合わせて固定する 不足見込日が前倒しになった場合は、上記の各期限を同じ日数だけ前倒しする

期限の名称と、法律上の概念を混同しない

「交渉開始」「交渉継続」「法的整理の準備開始」「事業停止」「個別の支払への対応」「受任通知の発送」「申立て」は、同じ日とは限りません。誰に、いつ、何を伝えるか、どの支払をどう扱うかは、信用不安、債権の保全、相殺、担保の実行、在庫・売掛金・事業価値の維持、従業員への対応に影響し得ます。会社だけで一律に決めず、実行前に個別に確認してください。

なお、破産法第15条第2項は「債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定する」と定めており、「支払停止」は法律上の意味を持つ用語です。社内のマイルストーンの名称としては使わないでください。

資金不足の見込日は表で計算できますが、そこから逆算する判断期限は、会社の債権者構成、担保・保証の状況、主要契約、従業員数などによって変わります。13週資金繰り表、直近の通帳、支払予定表及び借入金一覧をご確認のうえで、選択肢と切替条件、準備すべき事項と対応の順序を整理することができます。

当事務所は、初回の法律相談を無料で承っています(事前予約制)。まずは会社名、ご相談者のお名前、相手方となり得る取引先・金融機関の名称、事情の概要及び直近の支払期限をお知らせください。決算書、総勘定元帳、通帳などの資料の送付方法は、利益相反の確認後に当事務所からご案内します。

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13週資金繰り表だけで再建・破産は決まらない

資金繰り表は、事実を整理する道具です。表の上で週末残高がマイナスになったからといって、法律上の状態が確定するわけではありませんし、再建か清算かの結論が自動的に出るわけでもありません。

資金繰り表の不足と、破産法上の支払不能は別の概念

破産法第2条第11項は、支払不能を「債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態」と定義しています(e-GOV法令検索で破産法の条文を確認する)。ここでいう「一般的かつ継続的に」という要素は、一時的な資金の不足や、特定の支払の遅延とは区別されます。

そのうえで、破産法第15条第1項は、債務者が支払不能にあるときに、申立てにより破産手続を開始する旨を定め、同条第2項は「債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定する」と定めています。法人については、破産法第16条第1項により、支払不能に加えて債務超過(債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態)も破産手続開始の原因となります。ただし、同条第2項により、存立中の合名会社及び合資会社にはこの規定は適用されません。

次の四つは、それぞれ別の事柄です。会計上の債務超過(貸借対照表上の純資産がマイナス)、資金繰り表上の一時的な残高不足、個別の支払の遅延、そして破産法上の支払不能。将来の週末残高がマイナスになる予測が出たからといって、その日が支払不能の日として確定するわけではありませんし、現在の残高がプラスであることが支払不能でないことを意味するわけでもありません。

民事再生は支払不能になるまで使えない手続ではない

民事再生法第21条第1項は、「債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとき」に再生手続開始の申立てができると定め、後段で「債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき」も同様であるとしています。つまり、支払不能に至るのを待つ必要はありません(e-GOV法令検索で民事再生法の条文を確認する)。もっとも、申立てが認められるかどうか、また事業を維持できるかどうかは、資金、取引先の対応、債権者構成、スポンサーの有無などにより異なりますので、資料を確認したうえで検討する必要があります。

取締役の義務・責任は、資金繰り表から機械的には決まらない

「資金繰りが悪化したまま営業を続ければ、取締役は当然に個人責任を負う」「破産を申し立てなければ直ちに違法である」といった説明は正確ではありません。取締役と会社の関係は、会社法第330条により委任に関する規定に従い、民法第644条の善管注意義務を負います。会社法第355条は忠実義務を定め、任務を怠ったことによる会社への責任は会社法第423条第1項、職務を行うについて悪意又は重大な過失があった場合の第三者に対する責任は会社法第429条第1項が定めています。いずれも、具体的な行為、損害、因果関係を踏まえた個別の判断が必要です(e-GOV法令検索で会社法の条文を確認するe-GOV法令検索で民法の条文を確認する)。

なお、会社法第511条第2項は「清算株式会社に債務超過の疑いがあるときは、清算人は、特別清算開始の申立てをしなければならない」と定めていますが、これは清算手続に入った株式会社の清算人に関する規定であり、事業を継続している会社のすべての取締役にそのまま当てはまるものではありません。破産手続開始の申立てについては、破産法第18条第1項が債権者又は債務者による申立てを認め、株式会社については破産法第19条第1項第2号により取締役が、同条第2項により清算人が申立てをすることができるとされています。取締役等の全員が申し立てるときを除き、破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければならないとされています(同条第3項)。

方向性を検討するときの材料

再建方向と清算方向を、点数表や「残り何週なら破産」といった信号で振り分けることはできません。営業活動から生み出せる資金、事業の採算、必要な運転資金、資金調達の確度、債権者の構成、担保・保証の状況、税及び社会保険料の滞納、賃金の未払、主要契約の継続可否、スポンサー候補の有無、手続に要する費用などを総合して検討します。

表8 方向性を検討するときの主な材料と、詳しい解説の参照先
検討の方向 主に確認する材料 13週表から分かること 13週表では分からないこと
自力再建(融資・条件変更) 金融機関の対応、返済条件、担保・保証、改善計画の実現性 条件変更が成立した場合に、資金不足の時期がどこまで後ろへ動くか 金融機関が応じるかどうか、改善計画の合理性
私的整理(準則型を含む) 対象債権者の範囲、一時停止の要否、計画の内容、税務上の影響 手続期間中に必要な運転資金の額と時期 債権者の同意が得られるかどうか、手続の適格性
民事再生・事業譲渡 事業の採算、スポンサー候補、主要契約の承継、従業員の雇用 手続開始までに必要な資金と、費用の支払時期 事業価値の評価、譲渡の相当性、債権者の賛否
法人破産・特別清算 財産の内容、債権者数、従業員数、賃借物件の明渡し、費用 準備期間中の資金と、費用を確保できる限界時点 裁判所の運用、手続の類型、費用の見込額

制度そのものの違いや選び方については、別の記事で整理しています。あわせて会社の破産か再建かの判断軸を確認するほか、私的整理と法人破産の違いを確認することで、資金繰り表から先の検討につなげられます。資金繰り悪化時の一般的な初動については、会社の資金繰りが厳しいときの初動を確認するページをご覧ください。

私的整理のうち準則型の手続については、中小企業の事業再生等に関する研究会が策定した「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」(令和8年3月改定版、令和8年4月1日から適用)があります。同ガイドラインは、その第三部において、私的整理を公正かつ迅速に行うための準則であり、「法的拘束力はないものの、債務者である中小企業者、債権者である金融機関等及びその他の利害関係人によって、自発的に尊重され遵守されることが期待されている」と位置付けています。法令と同じ強制力を持つものではなく、申出だけで全ての債権者や強制執行を当然に拘束するものでもありません(全国銀行協会の中小企業の事業再生等に関するガイドラインを確認する)。

また、公的な相談窓口として、全ての都道府県に中小企業活性化協議会が設置されており、収益力改善支援、再生支援及び再チャレンジ支援が用意されています。中小企業庁の説明では、相談は無料で、相談内容及び相談申込みについて秘密は厳守するとされています。兵庫県では、兵庫県中小企業活性化協議会が神戸市中央区の神戸商工会議所会館内に置かれています(中小企業庁の中小企業活性化協議会の説明を確認する兵庫県中小企業活性化協議会の案内を確認する)。なお、破産手続そのものの概要は、裁判所の「破産」の説明を確認することでも把握できます。

資金繰りが厳しいときに、実行前の確認が必要な行為

資金が不足しかけている局面では、目の前の支払を回すための行為が、後の再建交渉や法的整理に影響することがあります。次の行為は、実行する前に確認してください。

表9 実行前に確認が必要な主な行為
行為の類型 具体例 実行前に確認すべき点 確認せずに実行した場合に生じ得る問題
特定の債権者への弁済 取引継続のための優先的な支払、担保権者への一部返済 支払の必要性、時期、相手方との関係、他の債権者との均衡 後の手続で否認の対象となり得る。破産法第162条第1項は、既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為の否認を定めている
役員・株主・関係会社への支払、資産移転 役員貸付金の回収、関係会社への資金移動、役員報酬の増額 機関決定の有無、対価の相当性、利益相反、税務上の取扱い 否認又は責任追及の対象となり得るほか、金融機関等との信頼関係を損なう
資産の処分 在庫、機械、車両、不動産、保険の解約 査定・相見積りによる価格の相当性、処分の必要性、代替策、担保の有無、契約上の制限、税務上の影響 破産法第160条第1項は、破産債権者を害する行為の否認を定めている。廉価処分は責任追及の対象にもなり得る
売掛債権の譲渡・担保設定 債権譲渡、ファクタリングの利用、集合債権への担保設定 契約条件、手数料の実質的な負担、対抗要件、二重譲渡の有無、譲渡制限特約、将来の資金繰りへの影響 翌週以降の入金が消えて資金繰りが急速に悪化する。契約内容によっては紛争になる
新規の資金調達 高金利の借入、返済原資の見通しがない追加融資 返済原資、改善計画の有無、既存の借入条件への影響、保証の追加 不足の時期を先送りするだけで、負担と保証債務が増える
賃金・税・社会保険料の取扱い 給与の遅配、源泉所得税・社会保険料の滞納、消費税の未納 法律上の優先関係、滞納処分の可能性、猶予制度の利用可否、従業員への影響 差押えにより口座が使えなくなることがある。賃金の未払は労働者の生活に直結する
関係者への説明 金融機関、取引先、従業員への見通しの説明 説明する内容の根拠、説明の時期と順序、書面の残し方 根拠のない説明は信用不安を招き、後に虚偽の説明と評価されるおそれがある
資料の取扱い 帳簿、通帳、契約書、請求書、電子メール、会計データ、クラウド上のデータ 保存の範囲と方法、バックアップ、サービス解約による消失の有無 廃棄・改変は、後の手続で不利益に評価され得る。解約によりデータを取り戻せなくなる

資産を処分する場合は、査定書や相見積り、機関決定の記録、契約書、入出金の経路、代金の使途を残してください。もっとも、「時価であれば問題ない」というものでも、記録を残したことによって当然に適法と評価されるものでもありません。処分の必要性と相当性は、会社の状況と処分の内容によって個別に判断されます。

賃金と、法的手続の準備に必要な資金

賃金については、破産法第149条第1項が「破産手続開始前三月間の破産者の使用人の給料の請求権は、財団債権とする」と定め、同条第2項が退職手当の請求権について一定の範囲を財団債権としています。また、未払賃金の立替払制度がありますが、対象となる労働者、退職の時期、対象となる賃金の範囲、立替払の割合及び年齢区分ごとの上限額、請求できる期間に要件があり、未払給与の全額が支払われる制度ではありません(労働者健康安全機構の未払賃金の立替払制度の概要を確認する)。破産手続開始前の賃金の支払と、開始後の債権の分類及び立替払制度は、別のものとして整理してください。

法的手続の準備に必要な資金は、法律上保護された積立金ではありません。会社の財産を代表者個人の口座へ移すこと、現金化して保管することは避けてください。「申立費用であるから差押えや否認の対象にならない」ということはありません。

税・社会保険料の猶予制度は、滞納する前に確認する

国税については、国税徴収法第151条の2第1項に基づく換価の猶予の申請制度があります。国税庁の手引では、国税を一時に納付することにより事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあると認められること、納税について誠実な意思を有すると認められることなどが要件とされ、納付すべき国税の納期限から6か月以内に申請書を提出することが求められています。猶予期間は1年の範囲内で、猶予が認められた期間中の延滞税は軽減されます(国税庁の猶予の申請の手引を確認する)。

厚生年金保険料等についても、日本年金機構が換価の猶予及び納付の猶予の制度を案内しており、換価の猶予は、猶予を受けようとする保険料等の納期限から6か月以内に申請することとされ、猶予期間内の分割納付と延滞金の一部免除が認められます。いずれも要件と期限がありますので、滞納が生じてから調べるのではなく、13週資金繰り表で納付期限の週を確認した段階で、所轄の税務署又は年金事務所へ相談してください(日本年金機構の厚生年金保険料等の猶予制度を確認する)。

相談前に準備する資料

すべてが揃わなければ相談できない、ということはありません。まずは直近の通帳、支払予定表及び借入金一覧があれば、資金不足の見込時期の見当を付けることができます。そのうえで、順次そろえていく資料は次のとおりです。

  • 全ての預金口座の直近残高、通帳及び入出金明細
  • 作成中の13週資金繰り表、月次資金繰り表、実績差異表
  • 直近の決算書、月次試算表、総勘定元帳
  • 売掛金、受取手形、電子記録債権の一覧及び回収予定
  • 買掛金、未払金、支払手形、電子記録債務の一覧及び支払予定
  • 借入金一覧、返済予定表、金銭消費貸借契約書、担保・保証・代表者保証に関する資料
  • 給与台帳、従業員一覧、未払賃金、退職金・解雇等に関する資料
  • 税金及び社会保険料の納付状況、申告書、納付書、督促・催告・差押えに関する資料
  • 主要な取引契約、賃貸借契約、リース契約、割賦契約、所有権留保、フランチャイズ契約その他の継続的契約
  • 在庫、固定資産、不動産、車両、機械、保険、敷金・保証金等の一覧
  • 訴訟、差押え、クレーム、返金義務、保証債務、偶発債務に関する資料
  • 関連当事者との取引、役員貸付金・借入金、直近の資産移動及び弁済に関する資料
  • 株主構成、定款、登記事項証明書、取締役会・株主総会等の意思決定に関する資料
  • 会計データ、販売・購買・給与データその他重要な電子資料のバックアップ状況

弁護士に相談するタイミング

相談によって結果が保証されるわけではありません。もっとも、資料を確認することで、次のような事項を整理することができます。

  • 基本ケースと下振れケースで、資金不足が見込まれる時期がいつか
  • 検討し得る選択肢と、それぞれの前提条件
  • 方針を切り替える条件と、そのための社内判断期限
  • 実行する前に確認が必要な支払、資産処分、資金調達がどれか
  • 従業員、取引先、金融機関への対応の順序
  • 準備すべき資料と、その優先順位

相談の時期としては、資金不足の見込日が確認できた時点、主要な対策の見通しが立たなくなった時点、あるいは金融機関から返済条件の見直しを打診された時点が一つの目安です。示談や合意の前、申請の前、署名の前、支払の前に一度確認しておくと、後から取り消せない行為を避けやすくなります。当事務所は法人破産・事業者破産の取扱業務を確認するページのとおり法人の倒産・再建に関するご相談に対応しており、法務と会計・財務が交わる法律相談について確認することもできます。法的整理を選択する場合の準備については、法人破産の準備について確認するページもあわせてご覧ください。

よくあるご質問

なぜ13週間で作るのですか。法律で決まっているのですか。

法律で決まっているものではありません。13週資金繰り表は、短期の資金を週単位で管理するための実務上の手法で、おおむね四半期先までを見渡しつつ毎週更新しても運用が続けやすい長さとして用いられています。倒産を判定する法定基準でも、申立ての期限でもありません。会社の入出金サイクルによっては、より短い期間の日次表や、より長い期間の月次表と併用します。

月次の資金繰り表があれば、13週表は不要ですか。

目的が異なります。月次表は季節性のある支出や中期の返済計画を見るのに適していますが、給与日、納付期限、口座振替日、手形や電子記録債権の決済日が集中する週の資金不足は、月単位では見えません。資金不足が近い局面では、週次の表と、危機が見込まれる週の日次表を併用することをおすすめします。

13週表には、審査中の融資や交渉中の資産売却を入れてよいですか。

基本ケースの確定入金には入れないでください。これらは未確定・対策項目として区分し、対策実行後ケースに、実現条件と回答期限を明示して計上します。基本ケースに混ぜると、資金不足の時期を実態より遅く見せることになり、判断を誤る原因になります。

週末残高がプラスなら、その週は安全ですか。

安全とは限りません。週末残高がプラスでも、週の途中の支払日に残高が不足することがあります。給与、口座振替、手形・電子記録債権の決済が集中する週は、日次に分解して、各営業日の開始残高と終了残高を確認してください。

資金がマイナスになる週が出たら、会社は支払不能又は破産状態ですか。

そうとは限りません。破産法第2条第11項の支払不能は、支払能力を欠くために、弁済期にある債務につき一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいい、資金繰り表上の一時的な不足や特定の支払の遅延とは区別されます。会計上の債務超過とも別の概念です。資金繰り表は事実を整理する資料であり、法律上の状態を確定するものではありませんので、資料を確認したうえで判断する必要があります。

どの支払を優先し、どの支払を止めるべきですか。

一般的な順位を示すことはできません。賃金、税金、社会保険料、担保権付債務、リース料、相殺の可能性がある債務、所有権留保付きの仕入代金などは、一般の取引債務とは法律上の扱いが異なることがあります。特定の債権者への支払は、後の手続で否認の対象となり得る一方、支払を止めれば事業の継続や信用に影響します。実行する前に、契約、法的な優先関係、事業への影響を確認してください。

代表者が個人の資金を入れれば、判断を先送りできますか。

資金不足の時期を後ろへずらす効果はありますが、再建の見込みを検討しないまま繰り返すと、個人の生活資金と保証債務の負担だけが増えることがあります。投入する前に、その金額でどの週まで資金がもつのか、その間に何を成立させるのかを表の上で確認し、成立しなかった場合の切替条件をあらかじめ決めておくことをおすすめします。

資金繰り表が完成していなくても、弁護士に相談できますか。

相談できます。直近の通帳、支払予定表及び借入金一覧があれば、資金不足が見込まれる時期の見当を付け、次に確認すべき資料を絞り込むことができます。表の作成そのものを目的にして相談の時期が遅れるより、手元の資料で早めにご相談いただくほうが、検討できる選択肢は多くなります。

まとめ

  • 13週資金繰り表は、これから13週間の入金と出金を週単位で並べ、各時点の使える現預金と最低必要現預金との差を見えるようにする管理資料です。法定の基準期間ではありません。
  • 開始残高は、試算表の現預金ではなく、口座別に確認した「実際に払い出せる金額」で置きます。
  • 未確定の融資、未合意の条件変更、未契約の資産売却は、基本ケースの確定入金に入れず、対策実行後ケースで実現条件と期限を明示します。
  • 読み取る日は、最低必要現預金割れ、予定支払後の資金不足、危機週内の具体的な不足日の三つに分けます。ゼロ割れ補填額と最低必要現預金維持額も別に計算します。
  • 社内の判断期限は、資金不足の見込日から準備期間を逆算して設定します。資金が尽きる日まで待つ設計にはしません。
  • 資金繰り表の不足と、破産法上の支払不能や債務超過は別の概念です。表だけで再建か清算かの結論は決まりません。
  • 特定の債権者への支払、資産の処分、債権譲渡、新規の資金調達、関係者への説明は、実行する前に確認してください。
  • 次の行動は、今週の通帳残高の確認、支払予定表の集約、借入金一覧の作成、そして第1週から第13週までの週区切りの設定です。

13週資金繰り表が未完成でも、直近の通帳、支払予定表及び借入金一覧があれば、資金不足が見込まれる時期の整理を始められます。資料を確認したうえで、検討し得る選択肢、方針を切り替える条件、実行前に確認が必要な支払や資産処分、準備すべき資料の優先順位を整理することができます。

当事務所では、初回の法律相談を無料で承っています(事前予約制)。お電話又はお問い合わせフォームからご予約ください。お電話は078-797-5227(受付9:00〜20:00)、お問い合わせフォーム及びメールでのご予約は24時間受け付けています。オンラインでのご相談にも対応しています。

最初のご連絡では、会社名、ご相談者のお名前、相手方となり得る取引先・金融機関の名称、事情の概要及び直近の支払期限をお知らせください。決算書、総勘定元帳、通帳などの資料の送付方法は、利益相反の確認後に当事務所からご案内します。

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監修者

弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所
代表弁護士・公認会計士 藤井 貴之(ふじい たかゆき)

  • 兵庫県弁護士会 所属
  • 日本公認会計士協会兵庫会 所属
  • 所在地 〒654-0154 兵庫県神戸市須磨区中落合2丁目2-5 名谷センタービル7階
  • 電話 078-797-5227(受付9:00〜20:00)

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本記事は法律相談に関する情報提供であり、公認会計士法上の監査証明業務、税務申告書の作成又は税務代理をご案内するものではありません。

参考資料

いずれも令和8年(2026年)9月3日に内容を確認しました。

本記事は、令和8年(2026年)9月3日時点で確認できる法令、公的資料及び公表情報に基づく一般的な情報提供であり、個別の事案に対する法的助言ではありません。個別の事情により結論は異なります。法令、制度及びその運用は変更されることがありますので、実際の判断に当たっては最新の情報をご確認のうえ、弁護士にご相談ください。

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