所有者不明土地の法改正とは|相続登記・国庫帰属・共有の全体像 |淡路島(淡路・洲本・南あわじ)の弁護士|初回相談無料|弁護士法人ひょうご あわじみらい法律会計事務所

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所有者不明土地の法改正とは|相続登記・国庫帰属・共有の全体像

「親や祖父母の名義のままになっている土地がある」「相続したものの使う予定のない土地を手放したい」「隣の土地の所有者が分からず、境界や樹木の越境で困っている」「土地の共有者の一人と連絡が取れず、売却も活用も進まない」――。淡路島(南あわじ市・洲本市・淡路市)の土地や空き家をめぐって、こうしたお悩みのご相談は少なくありません。近年、これらの背景にある「所有者不明土地」の問題に対応するため、民法・不動産登記法が大きく改正され、あわせて相続した土地を手放すための新しい制度も設けられました。

先に結論の方向性をお伝えします。今回の法改正は「一つの新しい制度」ではなく、目的の異なる複数の制度の集まりです。そのため、読者の方が「今どの制度を確認すべきか」は、抱えている困りごとによって変わります。相続登記の義務化、相続した土地を国に引き取ってもらう制度、所有者が分からない土地を管理する制度、共有関係や隣地との関係を整理するルールは、それぞれ目的も手続も相談先も異なります。これらを混同すると、必要のない手続に時間を使ったり、逆に期限のある手続を見落としたりするおそれがあります。

この記事では、令和3年に成立した改正民法・不動産登記法と相続土地国庫帰属制度の全体像を、「困りごと別にどの制度を確認すればよいか」という視点で整理します。個別の制度の詳しい手続は、それぞれの専門の記事や公的機関の資料へご案内します。まずは、ご自身の状況に近いところから読み進めてください。なお、以下は令和3年改正法に関する一般的な整理であり、実際の対応は土地の現況や相続関係などの個別事情によって変わります。

相続した土地や空き家、共有名義の不動産、隣地とのトラブルなど、どの制度から手をつければよいか分からない段階でも、登記簿や相続関係の資料を確認することで、検討すべき制度や対応の順序を整理しやすくなります。手続を進める前に、一度確認しておくことをおすすめします。

不動産問題の取扱業務を確認する

まず結論|法改正は「困りごと別」に確認する

令和3年の法改正は、大きく分けると二つの目的で組み立てられています。一つは、これ以上「所有者が分からない土地」を増やさないための「発生の予防」です。相続登記の義務化や、相続した土地を手放せる制度がこれにあたります。もう一つは、すでに所有者が分からなくなっている土地や、放置されている土地・建物の利用・管理を進めやすくするための「利用の円滑化」です。土地・建物の管理制度の新設、共有関係の見直し、隣地との関係(相隣関係)の見直しがこれにあたります。

細かい要件に入る前に、ご自身の困りごとから「主にどの制度を確認すればよいか」を整理できるよう、早見表にまとめます。あくまで一般的な整理であり、実際にどの制度を使うべきかは個別事情により異なります。

困りごと別・確認する制度の早見表(一般的な整理。個別事情により結論は異なります)
困っていること 主に確認する制度 最初に確認する資料 主な相談先 注意点
親・祖父母名義のままの土地がある 相続登記の申請義務化/相続人申告登記 登記事項証明書、戸籍、固定資産税の通知 弁護士、司法書士、法務局 相続人が複数いる、遺産分割が未了の場合は登記だけでは解決しないことがある
相続した土地を手放したい 相続土地国庫帰属制度/売却・寄附・相続放棄との比較 登記事項証明書、公図、現況が分かる写真 弁護士、法務局(国庫帰属の相談) 建物や担保権がある土地などは対象外。相続放棄とは別の制度
被相続人名義の不動産を把握したい 所有不動産記録証明制度 戸籍、法定相続情報一覧図など相続関係の資料 法務局、弁護士、司法書士 網羅性に限界があり、未登記不動産などは把握できない
登記簿上の住所・氏名が古いままである 住所等変更登記の申請義務化 登記事項証明書、住民票、戸籍 法務局、司法書士、弁護士 引越しや婚姻から時間が経っている場合は早めの確認を
土地・建物の共有者と連絡が取れない 共有制度の見直し/所在等不明共有者に関する裁判手続 登記事項証明書、共有者の連絡先が分かる資料 弁護士(裁判手続の検討) 共有者が不明でも自由に処分できるわけではない
所有者不明・放置された土地建物に困る 所有者不明土地建物管理制度/管理不全土地建物管理制度 現況の写真、周辺への影響が分かる資料 弁護士、自治体(空き家の場合) 民法上の管理制度と自治体の空き家対策は別の仕組み
隣地の使用・越境した枝・境界で困る 相隣関係の見直し(隣地使用権・ライフライン設備・枝の切取り) 登記事項証明書、公図、現況の写真 弁護士、土地家屋調査士(境界・測量) 相手が拒否しても実力行使はできない

この記事の要点

  • 令和3年の法改正は「発生の予防」と「利用の円滑化」という二つの目的からなる複数の制度の集まりです。
  • どの制度を確認すべきかは、抱えている困りごとによって変わります。制度を混同しないことが大切です。
  • 制度を「使える可能性」があることと、実際に「認められる・手続が完了する」ことは別で、いずれも資料の確認が前提になります。
  • 相続登記・隣地使用・空き家など個別の論点は、それぞれの詳しい記事や公的資料もあわせてご確認ください。

法改正の全体像と施行時期

令和3年に成立した「民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)」と「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律第25号)」により、複数の制度が段階的に施行されてきました。いずれもこの記事の作成時点(令和8年7月)では、すでに施行されています。まずは、どの制度がいつから始まっているかを時系列で確認します。

令和3年改正法に関する主な制度と施行日(法務省資料に基づく。詳細は本文と参考資料を確認)
施行日 主な制度 対象・ポイント
令和5年4月1日 民法のルール見直し(共有制度、財産管理制度、相隣関係) 所有者不明・管理不全の土地建物の管理制度、共有関係・隣地関係の整理
令和5年4月27日 相続土地国庫帰属制度 相続・遺贈で取得した土地を、一定の要件のもとで国に引き取ってもらう制度
令和6年4月1日 相続登記の申請義務化、相続人申告登記 施行前に発生した相続も対象。相続人申告登記も選択できる
令和8年2月2日 所有不動産記録証明制度 登記記録から、名義人ごとの不動産を一覧的に証明する制度
令和8年4月1日 住所等変更登記の申請義務化ほか 登記名義人の住所・氏名の変更登記を義務化。職権による登記の仕組みも導入

注意|「これから始まる」ではなく「すでに始まっている」制度です

相続登記の義務化(令和6年4月1日)、所有不動産記録証明制度(令和8年2月2日)、住所等変更登記の義務化(令和8年4月1日)は、いずれもこの記事の作成時点で施行済みです。「まだ先の話」と考えていると、期限のある手続を見落とすおそれがあります。施行日や経過措置の詳細は、法務省の公式資料で最新の内容をご確認ください。

不動産登記に関する制度|相続登記・住所変更登記など

まず「発生の予防」にあたる、不動産登記に関する制度を確認します。これらは、相続や引越しなどの機会に登記を正しく行うことで、名義と実態のずれを防ごうとするものです。ご自身に関係するかどうかを判断できるよう、制度ごとに要点を整理します。

相続登記の申請義務化(令和6年4月1日〜)

相続によって不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつその不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請することが義務づけられました。遺産分割が成立した場合は、成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記を申請する必要があります。正当な理由がないのに申請を怠ったときは、10万円以下の過料の対象となることがあります(不動産登記法)。

重要なのは、この義務が施行日より前に発生した相続にも及ぶ点です。令和6年4月1日より前に相続した不動産で相続登記をしていない場合も対象となり、法務省の説明では、原則として令和9年3月31日までに登記をする必要があるとされています。「何代も前の名義のまま」という土地ほど、相続人の確定や資料集めに時間がかかるため、早めの確認が必要です。相続登記の期限や手続の詳細は、専門の記事もあわせてご覧ください。

相続登記義務化の期限と手続を確認する

相続人申告登記

相続人が複数いて遺産分割にすぐには至らない場合などに、期限内の義務を簡易に果たすための仕組みとして、相続人申告登記が設けられています。これは、登記名義人について相続が開始したことと、自分が相続人であることを法務局に申し出る手続です。もっとも、これで果たせるのは基本的な申請義務にとどまります。その後に遺産分割が成立した場合には、あらためて分割内容に基づく登記の申請が必要になるなど、追加の対応が残ることがあります。相続人申告登記をしたからといって、遺産分割そのものが解決するわけではない点に注意が必要です。

所有不動産記録証明制度(令和8年2月2日〜)

所有不動産記録証明制度は、ある人が所有権の登記名義人として登記記録に記録されている不動産を、一覧的に証明する書面(所有不動産記録証明書)の交付を受けられる制度です(不動産登記法第119条の2)。相続人などは、被相続人名義の不動産について交付を請求でき、相続財産の把握に役立てることができます。

ただし、この制度には限界があります。氏名・住所などで検索する仕組みであるため、登記記録上の住所と検索条件が異なる場合や、コンピュータ化されていない登記記録、所有権の登記がされていない未登記の不動産などは、結果に反映されないことがあります。したがって、この制度だけですべての不動産を必ず把握できるわけではありません。手数料や必要書類の詳細は法務省の公式資料で確認してください。

住所・氏名等の変更登記の申請義務化(令和8年4月1日〜)

所有権の登記名義人の住所や氏名(法人の場合は名称・所在地)に変更があったときは、その変更の日から2年以内に変更の登記を申請することが義務づけられました。正当な理由なく怠った場合は、5万円以下の過料の対象となる可能性があります。この義務も、施行日より前に生じた住所・氏名の変更に及び、法務省の説明では、原則として令和10年3月末までに登記をする必要があるとされています。

あわせて、登記名義人があらかじめ一定の情報(検索用情報)を申し出ておくことで、住民基本台帳などの公的機関の情報と連携し、法務局の側から住所等の変更登記を行う仕組みも導入されています。もっとも、どのような場合に職権で登記されるか、何をしておけばよいかは制度の運用にかかわるため、引越しや婚姻から時間が経っている方は、最新の取扱いを確認しておくことをおすすめします。

相続した土地を手放したい|相続土地国庫帰属制度(令和5年4月27日〜)

相続土地国庫帰属制度は、相続または遺贈(相続人に対する遺贈に限ります)によって土地を取得した方が、一定の要件を満たす場合に、法務大臣の承認を受けて、その土地の所有権を国庫に帰属させる(国に引き取ってもらう)ことができる制度です。施行前に相続した土地も対象となるため、数十年前に相続した土地についても利用を検討できます。ただし、どのような土地でも引き取ってもらえるわけではなく、また「相続放棄」とは異なる制度である点に注意が必要です。

利用を検討できる人・対象

申請できるのは、相続等によって土地を取得した相続人です。土地が共有になっている場合は、相続以外の原因で持分を取得した共有者も含め、共有者の全員が共同して申請する必要があります。逆に言えば、共有者の一人だけで単独に申請することはできません。

引き取ってもらえない土地(却下・不承認となる土地)

相続土地国庫帰属制度には、そもそも申請ができない土地(却下の対象)と、審査の結果として承認を受けられない土地(不承認の対象)があります。法務省が示している主な類型は次のとおりです。ご自身の土地が該当しそうかどうかは、現況や権利関係を確認したうえで慎重に検討する必要があります。

相続土地国庫帰属制度で引き取ってもらえない土地の主な類型(法務省資料に基づく整理)
区分 主な土地の類型(例)
申請ができない土地(却下) 建物がある土地/担保権や使用収益権(抵当権、地上権、賃借権など)が設定されている土地/通路・墓地・境内地・水道用地など他人による利用が予定されている土地/土壌汚染がある土地/境界が明らかでない土地や、所有権の存否・範囲に争いがある土地
承認を受けられない土地(不承認) 一定の勾配・高さの崖があり管理に過分な費用・労力がかかる土地/工作物・車両・樹木など、管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地/除去しなければ管理・処分ができない地下埋設物がある土地/隣接地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地/その他、通常の管理・処分に過分な費用・労力がかかる土地

手続の流れと費用

手続は、承認申請を行い、法務大臣(実際には法務局)の審査を経て、承認された場合に負担金を納付し、その納付の時点で土地の所有権が国庫に帰属する、という流れになります。費用は、大きく分けて審査手数料と負担金の二つがあります。

相続土地国庫帰属制度の主な費用(法務省資料に基づく。最新の金額は公式資料で要確認)
費用の種類 内容
審査手数料 土地一筆当たり14,000円。申請の際に納付する
負担金 承認された場合に納付する。国が10年分の管理に要する標準的な費用を考慮して算定され、20万円が基本。ただし、市街化区域内などの宅地、農用地区域内などの農地、森林については、面積に応じて20万円を超える額となることがある

注意|「国が必ず引き取ってくれる」制度ではありません

相続土地国庫帰属制度は、申請すれば必ず承認されるものではなく、上記のように対象外となる土地や、審査で承認されない土地があります。また、承認された場合でも負担金の納付が必要です。利用できる可能性があるかどうかは、土地の現況、建物や工作物の有無、境界の状況、権利関係などを確認したうえで検討する必要があります。

相続放棄との違い

「使わない土地だけを手放したい」というご相談で、相続放棄と混同されることがよくあります。相続放棄は、家庭裁判所での手続により、初めから相続人でなかったものとして扱われる制度です。したがって、放棄をすると、いらない土地だけでなく、預貯金など他のプラスの財産も一切相続できなくなります。「特定の土地だけを選んで放棄する」ことはできません。また、相続放棄をした場合でも、放棄の時に現に占有していた財産については、一定の保存・管理に関する義務が残ることがあります。

これに対して相続土地国庫帰属制度は、土地をいったん相続したうえで、その特定の土地を国に引き取ってもらう制度です。他の遺産は相続したまま、対象となる土地だけを手放せる可能性がある点で、相続放棄とは異なります。どちらの方法が適しているか、あるいは売却や寄附なども含めてどの選択肢が現実的かは、財産の内容や相続関係によって変わります。

相続した土地を手放したい場合、国庫帰属・売却・寄附・相続放棄のいずれが現実的かは、土地の現況や他の遺産の状況によって変わります。申請や手続を進める前に、資料を確認したうえで選択肢を整理できます。

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所有者が不明・放置された土地建物の管理|管理命令の制度

ここからは「利用の円滑化」にあたる制度です。まず、所有者が分からない土地建物や、管理が行き届かず周囲に悪影響を及ぼしている土地建物について、裁判所が管理人を選任する制度を確認します。名前が似ていますが、対象とする状況が異なる二つの制度があります。

所有者不明・管理不全の土地建物の管理制度の比較(一般的な整理。要件は個別に確認が必要)
制度 対象の状況 主に申立てを検討する人 ポイント
所有者不明土地・建物管理制度 所有者が分からない、または所有者の所在が分からない土地・建物 その土地建物の利用・取得に利害関係のある人など 裁判所が管理人を選任。対象の土地建物に特化して管理する
管理不全土地・建物管理制度 所有者は分かるが、管理が不適当で、他人の権利や生活が侵害され、またはそのおそれがある土地・建物 その状態によって不利益を受けている隣地所有者など 裁判所が管理人を選任。所有者がいても管理命令の対象になり得る
(参考)空家等対策特別措置法の制度 放置された空き家など(行政による対応の枠組み) ――(市区町村が主体) 民法上の管理制度とは別の、自治体による行政上の仕組み

これらの管理制度は、いずれも土地の所在地を管轄する裁判所への申立てによって行われ、手続には予納金などの費用がかかる場合があります。管理人が売却などの処分を行うには裁判所の許可が必要になるなど、制度を利用すればすぐに土地を売れる、というものではありません。また、放置された空き家の問題は、民法上の管理制度で対応するのか、自治体の空き家対策で対応するのかによって、相談先も手続も変わります。空き家に関する具体的な対応は、専門の記事もあわせてご確認ください。

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共有関係の見直し(令和5年4月1日〜)

土地や建物が複数人の共有になっていると、一人でも反対したり、連絡が取れなかったりすると、管理や処分が進まないという問題が生じます。改正民法は、こうした共有関係の行き詰まりを解消しやすくするため、いくつかのルールを整理しました。ここでは、一般の読者が制度の使い分けをイメージできる範囲で整理します。

共有物の管理・変更の基本

共有物について、どの範囲の行為に、どれだけの共有者の同意が必要かは、行為の性質によって異なります。改正民法では、共有物に軽微な変更を加える行為は、持分の価格の過半数で決められることが明確にされるなど、管理に関するルールが整理されました。もっとも、共有物全体を売却するような重大な行為には、原則として共有者全員の同意が必要である点は変わりません。

所在等不明共有者・賛否を明らかにしない共有者がいる場合

共有者の中に、どこにいるか分からない人(所在等不明共有者)や、連絡はついても賛否を明らかにしない人がいる場合について、改正民法は、裁判所の関与のもとで管理や変更を進める仕組みを設けました。たとえば、所在等不明共有者以外の共有者の同意により共有物の変更・管理を可能とする裁判、賛否を明らかにしない共有者を除いて管理を決する裁判などがあります。

さらに、所在等不明共有者がいる場合には、その持分を他の共有者が取得する裁判(持分取得)や、その持分を含めて第三者に譲渡する権限を与える裁判(持分譲渡権限の付与)といった仕組みもあります。これらは、土地の所在地を管轄する裁判所への申立てにより、公告や供託などの手続を経て行われます。

注意|「共有者が行方不明なら自由に処分できる」わけではありません

共有者の一人が行方不明だからといって、残りの共有者が当然に土地全体を売却できるわけではありません。所在等不明共有者の持分を扱うには、裁判所の手続を経る必要があり、探索の程度や供託などの要件も定められています。共有関係の解消は、遺産分割や共有物分割の手続とも関係するため、個別事情の確認が欠かせません。

相隣関係の見直し|隣地使用・ライフライン設備・越境した枝

隣り合う土地の間の関係(相隣関係)についても、改正民法でルールが整理されました。主なものは、工事などのために隣地を使用できる隣地使用権、水道・ガス・電気などの設備を設置・使用するための権利、そして越境した竹木の枝の切取りに関するルールです。

たとえば越境した枝については、原則として竹木の所有者に切除させることになりますが、所有者に催告しても相当の期間内に切除しないとき、所有者やその所在が分からないとき、急迫の事情があるときなどには、土地の所有者が自ら切り取ることができるとされています。ただし、これは「越境した枝はいつでも自由に切ってよい」という意味ではありません。同様に、隣地使用権も、あらかじめ通知をしたうえで一定の目的のために使用できる場合があるにとどまり、相手が拒否しているのに実力で立ち入ることは認められません。

隣地の使用や越境した枝、境界に関する具体的な要件や進め方は、個別の記事で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。

隣地使用権の詳しい要件を確認する囲繞地通行権について確認する

よく問題になるケース

実際のご相談では、次のような「判断が分かれやすい場面」が多くみられます。いずれも結論は個別事情によって変わりますが、最初に確認すべき事実と、関係しそうな制度、集めておきたい資料を整理しておくと、相談や手続がスムーズになります。

何代も前の名義のままの土地が残っている

まず、登記事項証明書で現在の名義と権利関係を確認し、戸籍をたどって相続人を確定することが出発点になります。相続人が多数にのぼる、あるいは一部と連絡が取れないことも珍しくありません。相続登記の義務化の対象となる一方、遺産分割が未了であれば登記だけでは解決しないため、遺産分割と登記の両面から検討する必要があります。長期間放置された遺産分割については、令和5年に施行された改正民法で新たな取扱いも導入されており、適用の要件や経過措置の確認が必要です。

島外に住み、淡路島の土地の現況が分からない

固定資産税の通知だけが届き、土地の場所や現況、境界が分からないというご相談があります。登記事項証明書、公図、地積測量図などで土地を特定し、現況を写真などで確認することが第一歩です。そのうえで、管理・売却・国庫帰属などのどれを検討するかを整理します。現地確認が難しい場合ほど、早めに資料をそろえておくことが役立ちます。

相続人・共有者の一人と連絡が取れない

遺産分割や共有物の処分を進めたいのに、相続人や共有者の一人と連絡が取れないという場面です。まず戸籍の附票などから所在の調査を行いますが、判明しない場合には、所在等不明共有者に関する裁判手続や、状況に応じた財産管理の制度を検討することになります。手続の選択は個別事情によって変わるため、資料を確認したうえでの検討が必要です。

相続した山林・農地や、建物が残る土地を手放したい

相続した山林や農地について国庫帰属制度を利用できるか、というご相談も多くあります。森林や農地も制度の対象になり得ますが、負担金の算定が面積に応じて変わることや、管理・処分に過分な費用がかかる土地は承認されないことがある点に注意が必要です。また、建物が残っている土地は、その状態のままでは申請ができないため、建物の取扱いを含めて検討する必要があります。

登記簿上の住所を長期間変更していない

引越しや婚姻から時間が経ち、登記簿上の住所・氏名が古いままになっている場合です。住所等変更登記の義務化の対象となり得るため、登記事項証明書で現在の登記内容を確認し、住民票や戸籍で変更の経緯を整理しておくとよいでしょう。相続や売却の場面で、住所のずれが手続の妨げになることもあります。

手続前に確認したい資料(チェックリスト)

どの制度を検討する場合でも、資料がそろっているほど見通しを立てやすくなります。すべてを完璧にそろえてからでないと動けないわけではありませんが、あるものから確認しておくと、相談や手続が進めやすくなります。ご自身の困りごとに応じて、必要なものから確認してください。

  • 登記事項証明書(土地・建物)
  • 固定資産税の納税通知書、課税明細書
  • 公図、地積測量図
  • 境界確認書、現況測量図
  • 売買契約書、賃貸借契約書
  • 遺言書、遺産分割協議書
  • 戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍
  • 相続関係説明図、法定相続情報一覧図
  • 土地・建物の現況が分かる写真
  • 自治体や法務局からの通知
  • 共有者・近隣とのやり取り(手紙、メール)
  • 管理費、修繕費、固定資産税などの支払いが分かる資料
  • 農地・森林に関する資料(農業委員会・森林の届出関係など)

不動産に関するトラブルで準備しておきたい資料は、別の記事でもまとめています。あわせてご確認ください。

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弁護士に相談するタイミング

これらの制度は、登記の申請だけで済む場面もあれば、相続人や共有者、隣地所有者との調整、さらには裁判所の手続を要する場面もあります。弁護士に相談したからといって、必ず土地を手放せる、必ず相手を説得できるというものではありませんが、資料や当事者の関係、争点、選べる手段、対応の順序を整理しやすくなります。次のような場面は、確認のタイミングの目安です。

  • 相続人の間で意見が対立している、または遺産分割が終わっていない
  • 共有者の所在や意向が分からず、管理・処分が進まない
  • 隣地所有者との交渉や、越境・境界・管理不全をめぐる紛争がある
  • 管理命令や共有関係の裁判手続を検討している
  • 相続した土地を手放したいが、国庫帰属・売却・相続放棄のどれがよいか分からない
  • 売買・賃貸・処分に先立って、権利関係を整理しておきたい
  • 複数の制度のうち、どの手段から進めるべきか整理したい

登記そのものの申請や、土地の測量・筆界の確定、税務の申告など、他の専門職(司法書士、土地家屋調査士、税理士など)の役割にわたる事柄もあります。どの窓口に相談すべきかを含めて整理したい場合も、まずは全体像を確認するところから始められます。

よくある質問(FAQ)

昔の相続で名義が変わっていない土地も、相続登記の義務化の対象ですか。

対象となります。相続登記の申請義務化は、施行日(令和6年4月1日)より前に発生した相続にも及びます。法務省の説明では、こうした過去の相続については、原則として令和9年3月31日までに登記をする必要があるとされています。相続人の確定や資料集めに時間がかかることも多いため、早めの確認をおすすめします。

相続した不要な土地だけを、相続放棄で手放せますか。

できません。相続放棄は特定の財産だけを選んで放棄することができず、放棄をすると預貯金など他の遺産も相続できなくなります。土地だけを手放したい場合は、相続土地国庫帰属制度や売却などの別の方法を検討することになります。どの方法が適するかは、財産の内容や相続関係によって異なります。

相続した山林や農地でも、国庫帰属制度を利用できますか。

森林や農地も対象になり得ますが、負担金が面積に応じて算定されることや、管理・処分に過分な費用・労力がかかる土地は承認されない場合がある点に注意が必要です。利用できるかどうかは、土地の現況や権利関係を確認したうえで判断する必要があります。

建物が残っている土地でも、国庫帰属制度を利用できますか。

建物がある土地は、そのままでは申請ができない土地(却下の対象)とされています。建物を取り壊すかどうかを含め、対応を検討する必要があります。建物や他の権利がある場合の扱いは個別事情により異なるため、事前の確認が重要です。

共有者の一人が行方不明でも、土地を売却できますか。

行方不明の共有者がいるからといって、当然に土地全体を売却できるわけではありません。改正民法では、所在等不明共有者の持分を取得する裁判や、譲渡の権限を与える裁判などの仕組みがありますが、いずれも裁判所の手続を経る必要があります。要件や進め方は事案により異なります。

隣地の所有者が分からない場合、越境した枝を切ってよいですか。

竹木の所有者やその所在が分からないときなど、一定の場合には、土地の所有者が自ら枝を切り取ることができるとされています。もっとも、無条件に切ってよいわけではなく、原則は所有者に切除させることが前提です。判断に迷う場合は、切り取る前に要件を確認することをおすすめします。

登記簿上の住所を変更していない場合、何を確認すべきですか。

住所等変更登記の義務化(令和8年4月1日〜)の対象となり得ます。まず登記事項証明書で現在の登記内容を確認し、住民票や戸籍で変更の経緯を整理してください。施行前の変更も対象となり、経過措置の期限が定められているため、古いままの場合は早めの確認が必要です。

所有者不明土地管理制度と管理不全土地管理制度は、何が違いますか。

所有者不明土地管理制度は、所有者やその所在が分からない土地を対象とします。これに対し管理不全土地管理制度は、所有者は分かるものの管理が不適当で、他人の権利や生活が侵害される(そのおそれがある)土地を対象とします。いずれも裁判所が管理人を選任する制度ですが、対象とする状況が異なります。

まず弁護士、司法書士、法務局のどこへ相談すべきですか。

相続人や共有者・隣地との対立や交渉、裁判手続を伴う場合は弁護士、登記申請の手続は司法書士、制度や必要書類の一般的な案内は法務局、といった役割の違いがあります。どの窓口が適切かを含めて整理したい場合は、全体像を確認するところから始められます。土地の測量・筆界は土地家屋調査士、税務は税理士の分野です。

まとめ

  • 令和3年の法改正は「発生の予防」と「利用の円滑化」を目的とする複数の制度の集まりで、どれを確認すべきかは困りごとによって変わります。
  • 相続登記の義務化、住所等変更登記の義務化、所有不動産記録証明制度、相続土地国庫帰属制度、共有・相隣関係の見直しは、いずれもすでに施行されています。
  • 相続土地国庫帰属制度は「必ず国が引き取る」制度ではなく、対象外の土地や負担金があり、相続放棄とも異なります。
  • 共有者が行方不明でも自由に処分できるわけではなく、隣地の枝も無条件に切れるわけではありません。制度の使い分けと資料の確認が大切です。
  • まずは登記事項証明書や相続関係の資料を確認し、制度を決めつける前に、対応の順序を整理することから始めてください。

相続した土地や共有名義の不動産、隣地とのトラブル、空き家の管理など、どの制度から検討すればよいか迷う場合は、登記簿や相続関係の資料を確認することで、検討すべき制度と対応の順序を整理できます。申請や合意、売却の前に、一度確認しておくことをおすすめします。

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監修・執筆

弁護士法人ひょうご あわじみらい法律会計事務所(兵庫県南あわじ市)

弁護士・公認会計士 藤井 貴之(兵庫県弁護士会所属)

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