相隣関係⑵ ~ 囲繞地通行権
不動産問題相隣関係⑵ ~ 囲繞地通行権
1 袋地・囲繞地・囲繞地通行権とは
袋地とは、他の土地に囲まれて(囲繞されて)、公道に通じない土地のことをいいます。
準袋地とは、池沼、河川、水路、海もしくは著しい高低差のある崖を通らなければ行動に至ることができない土地のことをいいます。
囲繞地とは、袋地を囲んでいる(囲繞している)土地のことをいいます。
囲繞地通行権は、袋地・準袋地の所有者が公道に至るために囲繞地を通行することができる権利のことをいいます。
2 囲繞地通行権の内容
囲繞地通行権が認められる場合、囲繞地通行権の行使として認められる通行の場所と方法は、通行権を有する者の必要性と通行地の負担の程度を相関的に判断して決定されます。
具体的には、囲繞地通行権者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければなりません。 したがって、囲繞地通行権の場所的範囲は、個別事例に応じて、土地の用法、位置関係、利用や通路開設の経緯、付近の状況等諸般の事情を考慮して決定されることになります。
通行権者は必要のあるときは、自己負担で障害物を取り除いたり、小砂利を敷くなどの方法によって通路を開設することができます。
通行権の幅員は、社会通念に照らし、付近のチリ状況、相隣地利用者の利害得失、その他の諸般の事情を斟酌した上で、具体的事例に応じて決定されることになります。
通行権者は、通行する土地の損害に対して償金(通行料)を支払わなければなりません。
したがって、舗装、建築物・物件等の除去に伴う損害等、通路開設によって生じた損害に対する償金を支払う必要があります。
なお、袋地所有者が支払うべき償金の支払を怠っているとしても、囲繞地通行権は消滅せず、囲繞地所有者は通行を拒否することはできません。
3 囲繞地通行権の諸問題
囲繞地通行権が発生する要件としての公道とは、道路法による道路などの公道とは同義ではなく、現に一般公衆の用に供されている道であれば、私道であっても要件を満たします。
公道に至る狭い通路がある土地については、公道に至る土地が狭過ぎるなどの土地利用に堪えないようなときに限り、袋地と認定されることがあります。
囲繞地通行権は、独立して時効取得の対象とはならず、他の原因も含めて袋地から独立して取得されることはありません。
囲繞地通行権は、袋地の所有者だけでなく、袋地の地上権者、袋地の賃借権者にも認められます。
袋地の実体法上の所有者は、袋地の所有権移転登記を得ていなくても、囲繞地通行権を主張することができます。
また、囲繞地通行権はその登記の方法がなく、相隣関係に基づく袋地所有権の一内容として認められる権利であるため、囲繞地通行権を主張するにあたって、登記を備える必要はありません。
囲繞地通行権は、公道に通ずる他の通路が生じるなど袋地でなくなった場合に限り消滅するため、合意により囲繞地通行権を消滅させたり、放棄したりすることはできません。