「スピード違反で赤切符を切られた」「無免許運転や飲酒運転で警察の取調べを受けている」「検察庁から呼出状が届いた」「家族が交通違反で逮捕された」――。ひと口に交通違反といっても、その場で反則金を納めれば終わるものもあれば、刑事事件として取調べや裁判に進むものもあります。いま自分(またはご家族)がどちらの手続にいるのかによって、前科がつくのか、免許はどうなるのか、仕事に影響するのかといった見通しは大きく変わります。
この記事では、速度違反、無免許運転、酒気帯び運転、酒酔い運転、救護義務・報告義務違反(いわゆるひき逃げ・当て逃げ)などを中心に、交通反則通告制度(青切符・赤切符)と反則金・罰金・違反点数の違い、道路交通法違反が刑事事件となる場合の法定刑と手続の流れ、前科や運転免許への行政処分、そして弁護士に相談するタイミングを、一般の方向けに整理します。
先に結論の方向性をお伝えします。交通違反のすべてが刑事事件になるわけではなく、多くは交通反則通告制度により反則金の納付で刑事手続に進まずに処理されます。他方で、赤切符が交付される違反や飲酒・無免許・ひき逃げなどは、刑事手続の対象となり得ます。もっとも、実際の処分は、違反の内容、前科前歴、事故の有無、違反後の対応などの個別事情によって変わり、「初犯だから罰金」「示談すれば不起訴」といった形で機械的に決まるものではありません。なお、本文の法令・制度の記載は2026年(令和8年)7月時点の法令・公的資料に基づくものです。
いま、警察や検察から出頭・取調べを求められている、あるいはご家族が逮捕されたという段階であれば、まず「自分の違反が反則金で終わるのか、刑事手続に進むのか」を整理することが出発点になります。交付された切符(青・赤)、警察・検察からの書面、違反の日時・場所などをお手元にご準備ください。手続の前に、確認できることを一緒に整理できます。
Contents
まず結論:反則金で終わる違反と、刑事手続に進む違反がある
道路交通法違反への対応を考えるうえで、最初に押さえたいのは次の三つの区別です。これらを混同すると、見通しを誤りやすくなります。
混同しやすい三つの区別
- 刑事処分と行政処分は別の手続です。罰金などの刑事処分と、免許停止・取消しなどの行政処分は、別々の基準・手続で進みます。
- 反則金と罰金は法的性質が違います。反則金は交通反則通告制度に基づく行政上の措置で、罰金は刑事罰です。
- 反則金・罰金と違反点数は別制度です。違反点数は行政処分(免許)のための制度で、金銭の支払とは別に加算されます。
さらに、人身事故を伴う場合には、これらに加えて被害者に対する民事上の損害賠償(民事責任)も問題になります。
まず、いまご自身が置かれている状況を整理するために、最初に確認しておきたい書類・情報を挙げます。手元にそろえておくと、手続の段階と見通しの検討がスムーズになります。
| 区分 | 確認したいもの |
|---|---|
| 交付された切符 | 青切符(交通反則告知書)か赤切符か、違反名、反則金額、納付書の有無 |
| 警察・検察・裁判所からの書面 | 出頭通知、呼出状、勾留に関する書面、略式手続に関する書面 |
| 違反の事実関係 | 違反の日時・場所・道路の状況、標識、同乗者の有無 |
| 運転免許・行政処分 | 運転免許証、過去の違反歴、免許停止・取消しや意見の聴取に関する通知 |
| 事故がある場合 | 交通事故証明書、負傷の状況が分かる資料、保険会社とのやり取り |
交通反則通告制度の基礎知識(青切符・赤切符・反則金・罰金・前科)
交通違反の多くは、交通反則通告制度によって処理されます。まずこの制度の基本を確認します。
青切符と赤切符
「青切符」「赤切符」はいずれも通称です。比較的軽微な違反(反則行為)については、交通反則通告制度により、告知を受けて一定期間内に反則金を納めると、刑事事件として起訴されずに処理されます。この場合に交付されるのが、通称「青切符」(交通反則告知書)です。警察庁の説明でも、反則金を期限内に納めると「刑事裁判や家庭裁判所の審判を受けないで事件が処理される」とされています。
他方で、反則行為に当たらない違反(酒気帯び運転、酒酔い運転、無免許運転、著しい速度超過、ひき逃げなど)については、この簡略な手続によらず、通常の刑事手続の対象となります。この場合に交付されるのが、通称「赤切符」(告知票・免許証保管証など)です。
反則金と罰金は法的性質が違う
反則金と罰金は、名前が似ていますが、法的な性質がまったく異なります。次の表で整理します。
| 項目 | 反則金 | 罰金 |
|---|---|---|
| 性質 | 交通反則通告制度に基づく行政上の措置 | 刑罰(刑事罰) |
| 対象 | 比較的軽微な違反(反則行為) | 反則行為以外の違反、赤切符の事件など |
| 前科 | 期限内に納付すれば刑事手続に進まず、前科は残らない | 有罪が確定すれば前科となり得る |
| 手続 | 告知・通告を受けて納付 | 検察官の起訴を経て、略式手続または公判 |
反則金を納付した場合・納付しない場合
反則行為について反則金を期限内に納付すると、その事件について公訴を提起されないのが原則で、前科は残りません。もっとも、反則金を納付しない場合には、通告の手続を経て、通常の刑事手続(検察官による処理)に移行することがあります。「反則金を払わなければ、そのまま何も起こらない」というわけではない点に注意が必要です。
違反点数は金銭の支払とは別の制度
違反点数は、運転免許の停止・取消しといった行政処分を判断するための制度で、反則金や罰金の支払とは別に加算されます。よく「減点」と表現されますが、実際には違反ごとに点数が加算され、一定の点数に達すると免許停止・取消しの対象になります。したがって、反則金を納付しても、違反点数は別に付き、免許への影響は別途検討する必要があります。
青切符と赤切符のどちらなのか、反則金を納めるべきか、赤切符を受け取ったこれからどうなるのか――迷われている段階でも、確認できることがあります。交付された切符と、警察からの説明の内容をお手元にご準備ください。手続の段階と、次に取るべき対応を整理できます。
道路交通法違反で刑事事件となる主なケースと法定刑
ここからは、道路交通法違反のうち、刑事手続の対象となり得る代表的なものについて、現行の法定刑を確認します。法定刑は法律で定められた刑の範囲であり、実際に科される刑(量刑)とは別のものです。実際の処分は、後述のとおり個別事情により変わります。
「懲役」と「拘禁刑」について。2025年(令和7年)6月1日に施行された刑法改正により、それまでの「懲役」と「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。このため、現行の道路交通法の法定刑も「拘禁刑」で表記されます。古い解説やご記憶にある「懲役」の表記が、いまの事件にそのまま当てはまるとは限りません。他方で、施行日より前の行為については、経過措置により従来の刑名を前提とした取扱いになる場合があり、時期に応じた確認が必要です。
速度違反(スピード違反)
速度超過のうち比較的軽度のものは、反則行為として反則金の対象になります。しかし、超過の程度が大きい場合には反則行為から除かれ、刑事手続の対象となります。日本自動車連盟(JAF)の解説などでは、一般道路で時速30キロメートル以上、高速道路で時速40キロメートル以上の超過は反則行為から除かれるとされています。この場合、いわゆる赤切符が交付されます。
最高速度違反の法定刑は、道路交通法第118条により、六月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金です。もっとも、超過速度だけで処分が機械的に決まるわけではなく、違反の態様、道路や交通の状況、前科前歴、常習性、事故の有無などが問題となり得ます。速度の測定方法、標識、運転者が誰かといった点に争いがある場合には、その根拠となる資料の確認が重要になります。手続としては、罰金で終わる略式手続となる場合もあれば、事案により公開の法廷で審理される正式裁判となることもあります。
無免許運転
無免許運転は、免許を受けずに運転する場合のほか、免許の取消し・停止中に運転する場合などが含まれます。道路交通法第64条第1項で禁止され、その法定刑は三年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。あわせて、違反点数25点として免許取消しの対象となり、欠格期間(再取得ができない期間)が問題になります(前歴やその他の累積点数がない場合の基礎的な取扱い。個別の事情により異なります)。
無免許運転では、運転者本人だけでなく、車両を提供した人(同法第64条第2項)や、無免許運転と知りながら同乗を依頼して同乗した人(同条第3項)にも罰則が定められています。また、免許を取得していないことの認識(故意)が問題になる場合もあります。「車を処分すれば必ず有利になる」「初犯なら必ず罰金で終わる」と決まっているわけではなく、同種前科の有無、反復の有無、運転に至った事情、事故の有無などを踏まえた個別の判断になります。
酒気帯び運転
酒気帯び運転は、身体に一定量以上のアルコールを保有した状態で運転する行為です。警察庁の資料では、呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上のアルコールが数値の基準とされ、0.15ミリグラム以上0.25ミリグラム未満と、0.25ミリグラム以上とで、行政処分上の取扱いが分けられています。
酒気帯び運転の法定刑は、三年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。行政処分としては、警察庁の資料によると、呼気1リットルにつき0.25ミリグラム以上は違反点数25点で免許取消し・欠格期間2年、0.15ミリグラム以上0.25ミリグラム未満は違反点数13点で免許停止90日とされています(いずれも前歴およびその他の累積点数がない場合)。呼気検査の結果、飲酒の量・時刻と運転の時刻、運転の状況などが問題となることがあります。
酒酔い運転
酒酔い運転は、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で運転する行為です。酒気帯び運転と異なり、呼気の数値だけで決まるものではなく、実際の状態から判断されます。法定刑は、五年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金で、酒気帯び運転より重く定められています。行政処分としても、違反点数35点で免許取消し・欠格期間3年とされています(前歴等がない場合)。
車両提供者・酒類提供者・同乗者について。飲酒運転では、運転者本人のほかにも、車両を提供した人、酒類を提供した人、飲酒を知りながら同乗した人などが処罰の対象となることがあり、それぞれ法定刑が定められています。また、飲酒運転により人身事故を起こした場合には、危険運転致死傷罪など別の重い犯罪が問題となることもあります。誰がどの立場で関与したかにより、問題となる条文と責任は異なります。
救護義務違反・報告義務違反(ひき逃げ・当て逃げ)
交通事故を起こした運転者には、道路交通法第72条第1項により、負傷者を救護する義務(救護義務)、道路における危険を防止する措置をとる義務、警察官へ事故を報告する義務(報告義務)が定められています。これらを怠って現場を離れる行為が、一般に「ひき逃げ」「当て逃げ」と呼ばれます。
救護義務違反の法定刑は、五年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。さらに、その死傷が運転者自身の運転に起因する場合には、十年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金と、より重く定められています。報告義務違反については、三月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金とされています。
ひき逃げでは、事故を認識していたか、現場を離れた経緯、負傷者の有無やその認識などが問題になります。「救護義務違反が成立するには必ず過失運転致死傷罪も成立する」といった単純な関係にあるわけではなく、事案の類型により結論は異なります。なお、人を死傷させたこと自体については、過失運転致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条。法定刑は七年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)などが別に問題となります。人身事故そのものの刑事責任や量刑については、次の記事もあわせてご確認ください。
主な違反類型の現行の法定刑を、次の表にまとめます。いずれも法定刑(刑の範囲)であり、実際の量刑を示すものではありません。
| 違反類型 | 主な条文 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 最高速度違反(著しい超過) | 道路交通法第118条 | 六月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金 |
| 無免許運転 | 道路交通法第64条 | 三年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
| 酒気帯び運転 | 道路交通法第117条の2の2 | 三年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
| 酒酔い運転 | 道路交通法第117条の2 | 五年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金 |
| 救護義務違反 | 道路交通法第117条 | 五年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(運転に起因する死傷の場合は十年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金) |
| 報告義務違反 | 道路交通法第119条 | 三月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金 |
生活道路・自転車に関する最近の制度改正
道路交通に関する制度は、近年、いくつかの見直しが行われています。本記事の中心は自動車・原動機付自転車の重大な違反ですが、次の点は多くの方に関係するため、簡潔に触れておきます。
生活道路の法定速度(未施行の予定を含みます)。警察庁の資料によると、中央線等がない生活道路の法定速度を時速30キロメートルに引き下げる見直しが予定されており、施行日は2026年(令和8年)9月1日とされています。2026年(令和8年)7月時点では未施行のため、現時点の法定速度と混同しないようご注意ください。
自転車の交通反則通告制度(施行済み)。2026年(令和8年)4月1日から、16歳以上の自転車の運転者による一定の違反にも交通反則通告制度(いわゆる青切符)が適用されています。自転車の違反類型の詳細は、警察庁など公的資料をご確認ください。
刑事処分を検討する際に考慮される主な事情
「初犯なら罰金で済むのか」「どのくらいの刑になるのか」は、多くの方が気にされる点です。もっとも、量刑は、多くの事情を総合して個別に判断されるものであり、少数の事例や一般論から個別の刑を見通すことには限界があります。ここでは、処分の判断で考慮され得る主な事情を挙げます。
- 違反の態様、危険性(速度超過の程度、飲酒の程度、運転の状況など)
- 事故や被害結果の有無、その内容
- 前科・前歴、同種前科の有無
- 違反の反復、常習性
- 違反後の対応(出頭・自首の状況、証拠隠滅の有無など)
- 事実を認めているか、否認しているか(認否)
- 速度測定記録や呼気検査結果などの客観証拠
- 再発防止に向けた状況
- 被害者がいる場合の被害弁償・示談の状況
これらは、いずれか一つで結論が決まるものではなく、「有利」「不利」と単純に振り分けられるものでもありません。統計上の傾向があっても、個別事案の結論を保証するものではなく、資料を確認したうえで見通しを検討する必要があります。個別事情により結論は変わります。
取締りから事件終了までの流れ
道路交通法違反が刑事手続に進む場合の、基本的な流れを確認します。逮捕されて身柄を拘束される「身柄事件」と、逮捕されずに進む「在宅事件」があります。
| 段階 | 主な内容 |
|---|---|
| 交通取締り | 違反の告知、切符の交付、初期の事情聴取 |
| 警察による捜査・取調べ | 供述調書の作成、証拠の収集。在宅事件と身柄事件がある |
| 検察官への送致 | 警察から検察官へ事件が送られる |
| 検察官による処分 | 不起訴、略式手続の請求、または公判請求(正式起訴)の判断 |
| 裁判・処分 | 略式命令(罰金)または公開の法廷での審理 |
| 行政処分 | 刑事処分とは別に、違反点数に基づく免許の処分が進む |
在宅事件と身柄事件
交通事件でも、逃亡や証拠隠滅のおそれが小さいと判断されれば、逮捕されずに在宅のまま捜査が進むことがあります。任意の出頭や取調べを求められている段階は、この在宅捜査に当たることが多いといえます。もっとも、在宅事件でも捜査は行われ、後に起訴・不起訴が判断されます。逮捕されなかったからといって、当然に不起訴になるとは限りません。
検察庁からの呼出し
在宅事件でも、捜査の過程で検察庁から呼出しを受けることがあります。呼出しを受けたこと自体が、直ちに重い処分を意味するわけではありませんが、そこで説明した内容や作成される供述調書は、その後の処分の判断に影響し得ます。呼出しの前に、事実関係と資料を整理しておくことが役立ちます。
略式手続と正式裁判
比較的軽い罰金相当の事件では、公開の法廷を開かずに書面審理で罰金・科料を科す略式手続がとられることがあります。略式手続によるには本人の同意が必要です。ここで注意したいのは、略式命令による罰金も有罪の判断であり、前科に当たり得るという点です。反則金の納付とは異なります。略式手続に同意すべきかどうかは、事実関係や争いの有無を踏まえて検討する必要があり、内容に納得できない場合には正式裁判を求める道もあります。
逮捕・勾留された場合
ご家族が交通事件で逮捕された場合、身柄の拘束がいつまで続くのかは大きな不安です。基本的な仕組みを確認します。
逮捕された後は、警察は原則として48時間以内に検察官へ送致し、検察官は送致から24時間以内かつ逮捕から72時間以内に、勾留を請求するかどうかを判断します(刑事訴訟法第203条・第205条)。勾留が認められると、原則として10日間、やむを得ない場合はさらに最大10日間、身柄が拘束され得ます(同法第208条)。一つの事件では、逮捕から起訴・不起訴の判断まで、最大でおおむね23日間程度、身柄を拘束され得ることになります。ただし、別の事件で再逮捕される場合などには、さらに長くなることがあります。
身柄が拘束されている間は、弁護人による接見(面会)ができます。起訴される前の段階では、検察官に勾留を請求しないよう意見を述べる、勾留の決定に対して不服を申し立てる(準抗告。刑事訴訟法第429条)、勾留の取消しを求めるといった対応が考えられます。
「保釈」は起訴された後の制度です。保釈は、起訴された後の被告人について、保証金を納めるなどして身柄の拘束を解く制度です(刑事訴訟法第89条・第90条など)。逮捕・勾留されている起訴前の段階では、保釈を請求することはできません。起訴前の身柄解放に向けた活動と、起訴後の保釈は別のものです。「交通違反なら勾留されにくい」「保釈を請求すれば認められる」といった一般化はできず、いまどの段階にいるかを正確に把握することが重要です。
事実を認める場合と争う場合で、対応は変わる
道路交通法違反の事件では、本人が事実関係を認めているのか、違反の成立や測定結果などを争うのかによって、優先すべき対応が大きく異なります。
事実を認めている場合
事実を認めている場合には、事実関係と適用される法令の確認、取調べで説明する内容の整理、前科前歴や生活状況・運転の必要性の確認、再発防止に向けた取組み、事故や被害者がいる場合の被害弁償・示談、家族や勤務先の協力の確認などが検討事項になります。これらは、検察官の処分の判断や裁判での量刑で考慮される可能性があります。ただし、それだけで不起訴や執行猶予といった結果が保証されるわけではありません。
違反の成立や測定結果を争う場合
「運転していたのは自分ではない」「速度測定や呼気検査の結果に納得できない」「事故に気づかなかった」など、違反の成立や事実関係を争う場合には、別の注意が必要です。次のような客観的な資料が、検討の手がかりになります。
- 速度測定に関する記録、標識や道路の状況
- 呼気検査に関する資料、飲酒した時刻・量と運転の時刻
- ドライブレコーダーや防犯カメラの映像、位置情報などの記録
- 運転者が誰かに関する資料、事故の認識に関する事情
- 取調べで述べた内容、供述調書への署名・押印の状況
取調べと証拠の保全について。取調べでは黙秘権があり、弁護人を選任する権利も保障されています。「分からないことを推測で認める」ことは避け、供述調書の内容をよく確認したうえで署名・押印の意味を理解することが大切です。また、ドライブレコーダーの映像などは、時間の経過により上書きされて失われることがあります。適法な範囲で早めに保全を検討してください。もっとも、警察や検察に提出すべきかどうかは、内容により判断が分かれるため、提出の要否を含めて確認することをおすすめします。なお、この記事は、違反を免れる方法や取締りを回避する方法を案内するものではありません。
運転免許への行政処分
刑事処分とは別に、運転免許については行政処分が進みます。両者は別の手続であり、刑事処分が軽くても行政処分が重くなること、その逆もあります。
行政処分は、違反ごとに加算される違反点数を基礎に判断されます。事故を起こした場合には、その付加点数も加わります。さらに、過去3年以内の免許停止などの前歴や、累積している点数によって、最終的な処分(免許停止・取消し)や欠格期間は変わります。免許の取消しなどにあたっては、意見を述べる機会(意見の聴取・聴聞)が設けられることがあります。
このように、行政処分は違反の種類だけで機械的に決まるものではありません。具体的な違反点数や欠格期間は、違反の態様、前歴、累積点数などにより異なるため、警察庁や各都道府県の公安委員会の資料で確認する必要があります。飲酒運転・無免許運転など一部の違反の点数・欠格期間は、前掲の各項目でも触れたとおりですが、いずれも前歴等がない場合の基礎的な取扱いであり、個別事情により異なります。
よく問題になるケース
ご相談の場面で迷いやすい、いくつかの典型的なケースを整理します。いずれも一般的な考え方であり、結論は個別事情により変わります。
- 初めての速度違反で赤切符を受け取った。赤切符は刑事手続の入口ですが、それだけで前科が確定するわけではありません。超過の程度や事情により、略式手続となる場合も、正式裁判となる場合もあります。
- 検察庁から呼出状が届いた。在宅事件でも呼出しはあります。説明する内容と資料を整理してから臨むことが役立ちます。
- 仕事で車を使っている・免許停止中に運転した。運転の必要性は考慮され得る事情ですが、無免許運転や免許停止中の運転は、それ自体が独立した違反として問題になります。
- 前日の飲酒が残っていた。飲酒の時刻と運転の時刻、呼気の数値などが問題になります。「翌日だから大丈夫」とは限りません。
- 呼気検査結果や速度測定結果に納得できない。測定の方法や記録の確認が出発点になります。
- 事故に気づかなかったと考えている・現場を離れた後に警察へ連絡した。事故の認識の有無や、現場を離れた経緯、その後の対応の評価が問題になります。
- 家族が逮捕された。まず、逮捕された場所と事件名(被疑事実)を確認し、早めに対応を検討することが役立ちます。
- 被害者がいるが保険会社が対応している。保険会社の対応(民事)と、刑事責任・行政責任は別です。刑事事件としての対応は別に検討する必要があります。
手続前チェックリスト
取調べや出頭、書面への署名の前に、次のような資料を確認・保全しておくと、方針の検討がスムーズになります。ご自身の事件に関係するものを中心に、そろえられる範囲で構いません。
- 交付された切符(青切符・赤切符)、交通反則告知書、納付書
- 警察署・検察庁・裁判所から届いた書面(出頭通知、呼出状、勾留に関する書面など)
- 出頭を求められた日時、担当の部署・担当者
- 違反の日時・場所、道路や標識の状況に関するメモ
- 運転免許証、過去の交通違反・行政処分・前科前歴が分かる資料
- 免許停止・取消し・意見の聴取に関する通知
- 速度測定・呼気検査に関する書類
- 飲酒した時刻・量・店・同席者などのメモ
- ドライブレコーダー映像、現場写真、車載機器・位置情報の記録(削除・上書きをしない)
- 事故がある場合の交通事故証明書、診断書、被害状況が分かる資料、保険会社とのやり取り
- 勤務先で車を使用する状況が分かる資料
- 本人が警察・検察で説明した内容のメモ
証拠となり得る資料を、削除・変更・初期化しないでください。不利に見える資料であっても、自己判断で処分することは、かえって説明を難しくしたり、不利に受け取られたりするおそれがあります。取扱いに迷う場合は、そのままの状態で保全し、提出の要否を含めて確認することをおすすめします。
弁護士に相談するタイミング
道路交通法違反の事件では、段階が進むほど、取り得る選択肢が限られていくことがあります。次のような場面では、早い段階で確認することが役立ちます。
- 警察・検察から出頭や取調べの連絡を受けたとき
- 赤切符を受け取り、今後の見通しを知りたいとき
- 本人またはご家族が逮捕・勾留されたとき
- 供述調書に署名する前、略式手続への同意を求められたとき
- 違反の成立や、速度測定・呼気検査の結果を争いたいとき
- 人身事故や救護義務違反などが問題となっているとき
- 免許が仕事や生活に大きく関係する場合、過去の違反や前科があるとき
弁護士に相談しても、不起訴や執行猶予、身柄の解放といった結果が保証されるわけではありません。もっとも、相談によって、適用される可能性のある法令と手続、証拠の状況、取調べや供述の方針、身柄に関する手続、刑事処分と行政処分の見通し、被害者がいる場合の対応、そして今後準備すべき資料や再発防止策を整理することができます。
よくある質問(FAQ)
- 青切符と赤切符は何が違いますか。
- 青切符は、比較的軽微な違反(反則行為)について交通反則通告制度により交付され、反則金を期限内に納めれば刑事手続に進まないのが原則です。赤切符は、反則行為に当たらない違反について交付され、通常の刑事手続の対象となります。どちらに当たるかは違反の内容によります。
- 反則金を払うと前科がつきますか。
- 反則行為について反則金を期限内に納付した場合は、その事件について公訴を提起されないのが原則で、前科は残りません。反則金は刑罰である罰金とは法的性質が異なります。ただし、反則金を納付しない場合は、通常の刑事手続に移行することがあります。
- 赤切符を受け取ると必ず前科がつきますか。
- 赤切符は刑事手続の入口ですが、それだけで前科が確定するわけではありません。前科となり得るのは、起訴されて有罪(略式命令による罰金を含みます)が確定した場合です。検察官の判断で不起訴となる場合もあり、結論は個別事情により変わります。
- 交通違反でも逮捕されることはありますか。
- あります。無免許運転や飲酒運転、ひき逃げなどでは、逃亡や証拠隠滅のおそれなどから逮捕・勾留される場合があります。他方で、逮捕されずに在宅のまま捜査が進むこともあり、事案の内容や本人の状況などの個別事情により異なります。
- 初めての速度違反はどのような処分になりますか。
- 一律には決まりません。超過の程度、道路や交通の状況、前科前歴、事故の有無などを踏まえた個別の判断です。反則金で終わる場合もあれば、赤切符として略式手続や正式裁判に進む場合もあります。資料を確認したうえで見通しを検討する必要があります。
- 略式手続に同意するとどうなりますか。
- 略式手続では、公開の法廷を開かずに書面審理で罰金・科料が科されます。略式命令による罰金も有罪の判断であり、前科に当たり得ます。内容に納得できない場合は正式裁判を求めることもできるため、同意の前に事実関係と争いの有無を確認することをおすすめします。
- 罰金と免許停止は別の手続ですか。
- 別の手続です。罰金などの刑事処分と、免許停止・取消しなどの行政処分は、それぞれ別の基準・手続で進みます。刑事処分が軽くても行政処分が重くなること、その逆もあり、両者を分けて検討する必要があります。
- 検察庁から呼出しを受けたら弁護士に相談できますか。
- できます。呼出しを受けた段階でも、説明する内容や資料の整理、手続の見通しの確認について相談できます。相談により結果が保証されるわけではありませんが、出頭の前に準備できることを整理できます。
まとめ
- 交通違反のすべてが刑事事件になるわけではなく、多くは交通反則通告制度により反則金の納付で処理されます。反則金・罰金・違反点数は、それぞれ別の制度です。
- 酒気帯び運転・酒酔い運転・無免許運転・著しい速度超過・ひき逃げなどは、刑事手続の対象となり得ます。法定刑は現在「拘禁刑」で表記されます(2025年(令和7年)6月1日施行)。
- 刑事処分と行政処分(免許)は別の手続で、事故があれば民事責任も別に問題になります。
- 処分は、違反の態様、前科前歴、事故の有無、違反後の対応などの個別事情により変わり、「初犯だから」「示談すれば」といった理由だけで決まるものではありません。
- 起訴前の身柄解放と起訴後の保釈は別の手続です。略式命令による罰金も前科に当たり得ます。
- 切符・書面を保管し、ドライブレコーダー等の証拠を削除せず、手続の前に確認することが大切です。
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執筆者・監修者
藤井 貴之(ふじい たかゆき)
弁護士法人ひょうご あわじみらい法律会計事務所 代表弁護士・公認会計士
兵庫県弁護士会所属・日本公認会計士協会兵庫会所属
2012年(平成24年)司法試験合格、2013年弁護士登録。2020年(令和2年)公認会計士試験合格。兵庫県・山口県・東京都での実務経験を経て、2023年に淡路島(南あわじ市)へ事務所を開設。刑事事件をはじめ、相続・交通事故・離婚・労働問題などの個人のご相談から、企業法務・事業承継まで対応しています。

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