「事務所として貸したはずの物件で、いつの間にか飲食店の営業が始まっている」「居住用として契約した部屋が、実際には荷物の保管や事業の拠点として使われている」「借主が無断で室内を大きく改装してしまった」――。建物を貸している貸主・賃貸人の方から、契約で定めた使い方(用法)と異なる使用について、どう対応すればよいかというご相談を受けることがあります。
この記事では、建物賃貸借において借主が用法遵守義務(契約で定めた使い方を守る義務)に違反した場合に、貸主が契約を解除して建物の明渡しを求められるのはどのような場合か、その判断の枠組みである信頼関係破壊の法理、必要な証拠、是正要求・催告から解除通知、交渉、明渡請求までの流れ、そして貸主が避けるべき対応までを、貸主側の視点から整理します。
先に結論の方向性をお伝えすると、契約と異なる使い方がされているという事実だけで、常に直ちに契約を解除できるとは限りません。解除できるかどうかは、違反の内容・程度・期間、是正の状況、建物や近隣への影響などを総合して、賃貸借を続けることが難しいといえる程度に信頼関係が破壊されたかによって判断されます。まずは契約書と使用状況を確認し、証拠を保存することが出発点になります。なお、本文の法令の記載は、調査時点(2026年7月)の民法・借地借家法に基づくものです。
用途違反への対応をご検討中の貸主・オーナーの方へ。解除できるかどうかは、契約書の内容と使用状況の確認が欠かせません。通知を出す前に資料を整理しておくことで、対応の見通しを検討しやすくなります。
弁護士法人ひょうご あわじみらい法律会計事務所では、契約書・証拠・是正状況を確認したうえで、対応方針を一緒に整理いたします。
Contents
結論:用途違反があっても、それだけで直ちに解除できるとは限りません
建物の賃貸借契約では、借主は契約で定めた使い方に従って建物を使用する義務(用法遵守義務)を負います。しかし、この義務に違反したからといって、貸主が当然に、いつでも契約を解除できるわけではありません。裁判実務では、次のような枠組みで解除の可否が検討されます。
解除の可否を検討するときの基本的な考え方
- 借主の使用が、契約で定めた使用目的・用法に違反しているか(用法遵守義務違反の有無)
- その違反が、賃貸借関係を続けることを難しくする程度に、貸主・借主間の信頼関係を破壊したといえるか(信頼関係破壊の法理)
- 解除にあたって、あらかじめ是正の催告(一定期間内に直すよう求めること)が必要か、催告なしの解除(無催告解除)が問題となる場面か
解除通知を出す前に、少なくとも次の点を確認しておくことをおすすめします。いずれも、後の交渉や手続で重要になります。
| 確認する事項 | 確認の視点 |
|---|---|
| 契約書・特約 | 使用目的の定め方、用法に関する条項、無催告解除条項の有無 |
| 契約時の説明・募集条件 | どのような使い方を前提に貸したか(重要事項説明書・募集図面・申込書など) |
| 実際の使用状況 | いつから、どの範囲で、どの程度、契約と異なる使い方がされているか |
| 違反の影響 | 建物・設備への影響、近隣や他の入居者への影響、安全・衛生・許認可上の問題の有無 |
| これまでの経緯 | 貸主が違反を知った時期、注意・警告の履歴、借主の対応・是正状況 |
重要:用途違反への対応は、個別事情により結論が変わります。同じ「用途違反」でも、違反の程度や是正の状況、建物への影響などによって、解除が認められる方向にも、認められにくい方向にも傾きます。この記事は一般的な考え方を整理したものであり、実際の見通しは、契約書と資料を確認したうえで検討する必要があります。
用法遵守義務とは(契約で定めた使い方を守る義務)
用法遵守義務とは、借主が契約で定められた使用目的や、目的物の性質によって定まる使い方に従って、建物を使用・収益しなければならないという義務です。まずは、この義務がどこから来るのかを確認します。
根拠となる民法の規定(第616条・第594条第1項)
賃貸借は、貸主が物を使わせることを約束し、借主が賃料を支払うこと及び契約終了時に物を返還することを約束することで成立する契約です(民法第601条)。そのうえで、借主の用法遵守義務については、使用貸借に関する民法第594条第1項が、賃貸借に準用されています(民法第616条)。
借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。(民法第594条第1項)
出典:e-Gov法令検索「民法」(調査時点2026年7月)
つまり、借主が使用できる範囲は、まず契約でどう定めたかによって決まり、契約に定めがない部分は、その建物の性質に応じた通常の使い方によって決まります。この範囲を超えた使用が、用法遵守義務違反(いわゆる用途違反・目的外使用)として問題になります。
「用途違反(用法違反)」として問題になりやすい場面
実務で相談が多いのは、次のような場面です。ただし、いずれも違反にあたるかどうか、解除できるかどうかは、契約の定めや使用の実態によって異なります。
- 居住用として契約した部屋を、事務所・店舗・倉庫など事業の拠点として使用している
- 事務所として契約した物件で、飲食店営業や不特定多数が出入りする営業を行っている
- 契約で定めた業種と異なる業種の営業を始めた
- ペットの飼育禁止、楽器の使用禁止などの特約に反する使用をしている
- 貸主に無断で、間取りや設備を大きく変更する改装・工事を行った
居住用と事業用(店舗・事務所など)とでは、想定される使い方や、近隣・建物への影響の評価が異なることがあります。契約書に使用目的がどのように書かれているか、募集や契約締結時にどのような使い方を前提としていたかが、判断の出発点になります。
似ているが別の問題(混同しやすい論点)
用途違反による解除は、次の論点としばしば混同されますが、法律上の位置づけや必要な検討が異なります。ご自身のケースがどれにあたるかを整理しておくと、対応を誤りにくくなります。
| 論点 | 内容 | この記事との関係 |
|---|---|---|
| 無断譲渡・無断転貸 | 貸主の承諾なく賃借権を譲渡したり、第三者に又貸ししたりする問題(民法第612条)。用法違反とは別の解除原因として整理されます。 | 別論点 |
| 賃料の不払い(滞納) | 賃料を支払わないことを理由とする解除。用途違反とは別の債務不履行です。 | 別記事で解説 |
| 更新拒絶・解約申入れの正当事由 | 貸主の側から契約を終了させる場面で必要となる要件(借地借家法第28条)。借主の契約違反を理由とする解除とは、検討する内容が異なります。 | 別記事で解説 |
| 原状回復・修繕費 | 契約終了後の損傷の回復(民法第621条)や修繕の費用負担の問題。解除の可否とは区別して考えます。 | 別論点 |
賃料滞納を理由とする解除については賃料滞納への対応に関する記事を、貸主からの解約申入れ・更新拒絶の正当事由については解約申入れと正当事由に関する記事を、それぞれご参照ください。
信頼関係破壊の法理(形式的な違反だけでは解除できないことがある理由)
用法遵守義務違反があっても、貸主が直ちに解除できるとは限らない――その理由を理解するための考え方が、信頼関係破壊の法理です。賃貸借契約に特有の、重要な考え方ですので、少し丁寧に説明します。
なぜ形式的な違反だけで解除できないのか
賃貸借は、借主の生活や事業の基盤に関わる、長期間にわたって続く継続的な契約です。そのため裁判実務では、契約に違反する事実があっても、それが直ちに解除を基礎づけるのではなく、貸主・借主間の信頼関係を破壊する(賃貸借関係の継続を著しく困難にする)程度のものかどうかを重視してきました。
最高裁判所も、契約上の義務違反や特約違反があっても、賃貸人に対する背信的な行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、信義誠実の原則(信義則)に照らして解除は認められない、という考え方(背信行為論)を示してきました。逆に、違反の程度が重大で、信頼関係が破壊されたといえる場合には、解除が認められやすくなります。
ポイント:「契約に違反している」という形式だけでなく、「その違反によって、この賃貸借を続けるのが難しいといえるか」という実質が問われます。だからこそ、違反の程度や是正の状況、建物・近隣への影響などの具体的な事情の積み重ねが重要になります。
信頼関係が破壊されたかを判断する主な事情
信頼関係が破壊されたといえるかは、次のような事情を総合して判断されます。これらは、どれか一つがあれば当然に解除できる(あるいはできない)という性質のものではなく、複数の事情を合わせて評価される点に注意が必要です。
- 違反の内容が、契約の目的からみてどの程度重大か
- 違反がどのくらいの期間続いているか、繰り返されているか
- 違反が故意によるものか、隠していた事情があるか
- 貸主からの是正の求めに、借主が応じたか
- 建物の構造・安全・衛生・価値に与える影響の大きさ
- 近隣住民や他の入居者に具体的な迷惑・被害が生じているか
- 許認可違反や法令違反、違法な営業が伴っていないか
- 貸主に、賃料減収・苦情対応・信用低下などの具体的な不利益が生じているか
- 契約締結時の説明や交渉の経緯、貸主が違反を認識しながら容認してきた事情がないか
これらは「点数表」ではありません。同じ用途違反でも、たとえば近隣に深刻な被害を与える違法営業と、契約目的との実質的な差が小さく速やかに是正された使用とでは、評価が大きく異なります。個別事情の総合判断である以上、結論を事前に断定することはできません。
催告解除と無催告解除(第541条・第542条)
解除には、大きく分けて、あらかじめ是正を求めてから行う催告解除と、催告なしに行う無催告解除があります。
催告解除は、相当の期間を定めて履行(是正)を求め、その期間内に是正がないときに解除するものです。ただし、期間経過時の不履行が契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、解除は認められません(民法第541条)。無催告解除は、履行不能や履行拒絶など一定の場合に、催告をせずに解除できるとするものです(民法第542条)。
用法違反の場面では、まず是正を求める催告を行うのが基本的な流れになりやすい一方、違反の態様によっては催告が意味を持たない場合もあり、催告の要否は事案によって異なります。
「契約書に無催告解除特約があるから催告なしで解除できる」とは限りません
契約書に「用途違反があれば催告なく解除できる」といった無催告解除の特約が入っていることがあります。もっとも、こうした特約があっても、当然に無催告での解除が認められるわけではありません。裁判実務では、無催告で解除しても不合理でないといえる事情(信頼関係が破壊されたといえる程度の背信性)が必要と考えられています。契約書の条項だけを見て「無催告で解除できる」と決めつけることは避けるべきです。
解除が認められやすい方向・認められにくい方向の事情
裁判所は、これまで述べた信頼関係破壊の法理のもとで、個別の事情を総合して解除の可否を判断しています。参考として、解除が認められやすい方向に働きやすい事情と、認められにくい方向に働きやすい事情を整理すると、次のように対比できます。あくまで傾向の整理であり、一つの事情だけで結論が決まるものではありません。
| 事情の種類 | 解除が認められやすい方向 | 認められにくい方向 |
|---|---|---|
| 違反の重大性 | 契約目的から大きく外れた使用 | 契約目的との実質的な差が小さい使用 |
| 継続期間・反復性 | 長期間・反復して継続 | 短期間で、速やかに是正された |
| 是正要求への対応 | 是正の求めに応じない | 求めに応じて速やかに是正した |
| 建物・設備への影響 | 大きな改変・損傷を伴う | 建物への影響がほとんどない |
| 近隣・他の入居者への影響 | 具体的な迷惑・被害が生じている | 具体的な影響が乏しい |
| 許認可・安全・衛生 | 違法営業や消防・安全上の問題を伴う | 法令上の問題を伴わない |
| 貸主の不利益 | 具体的な損害・信用低下が生じている | 具体的な不利益が乏しい |
| 貸主の認識・経緯 | 借主が違反を隠していた | 貸主が長期間認識しながら容認していた可能性がある |
この対比は、あくまで判断の視点を示すものです。実際には複数の事情が同時に存在し、方向性が入り混じることが通常です。下級審の裁判例一件の結論をそのまま自分のケースに当てはめることは適切ではなく、契約内容・違反態様・証拠・是正状況などの個別事情を総合して判断する必要があります。
貸主が取るべき対応の流れ
用途違反への対応は、感情的に解除通知を出すのではなく、事実と証拠を確認したうえで、段階を踏んで進めることが基本です。原則的な流れを整理すると、次のようになります。ただし、緊急性や違反の重大性(違法営業・安全上の危険・証拠隠滅のおそれなど)によって、検討すべき対応は変わります。
| 段階 | 主な内容 | 留意点 |
|---|---|---|
| 1 | 契約書・特約の確認 | 使用目的の定め、用法条項、無催告解除条項の有無を確認 |
| 2 | 契約時の使用目的・募集条件の確認 | どの使い方を前提に貸したかを、書面で裏づける |
| 3 | 使用状況の確認と証拠の保存・時系列化 | いつ・どの範囲で・どの程度違反しているかを記録に残す |
| 4 | 違反の内容・程度の評価 | 信頼関係破壊の観点から、違反の重大性を検討 |
| 5 | 是正要求・催告の要否と内容の検討 | 是正を求めるか、期間をどう設定するかを検討 |
| 6 | 借主の回答・是正状況の確認 | 回答内容・是正の有無を記録に残す |
| 7 | 解除の可否・解除通知の内容の検討 | 解除できる見込みと、通知に記載する事項を整理 |
| 8 | 任意交渉 | 明渡し・原状回復・未払分などの条件を協議 |
| 9 | 明渡請求訴訟・強制執行 | 任意に明け渡さない場合に検討する法的手続 |
内容証明郵便の位置づけ:是正要求や解除の通知は、内容証明郵便(配達証明付き)で送ることで、通知の内容と送付した時期を後から証明しやすくなります。ただし、内容証明郵便を送れば当然に解除できるわけではなく、また常に必須というわけでもありません。あくまで通知を証拠化する一つの方法として位置づけられます。
なお、解除通知や催告書の完成した文例をそのまま流用することは、かえって不利になる場合があるため、この記事では掲載していません。通知書では、少なくとも次のような事項を、事案に応じて整理することが考えられます。
- 対象物件・契約の特定(物件の表示、契約年月日など)
- 契約上の使用目的・用法に関する定め
- 違反していると考える具体的な事実(いつ・どの範囲で・どのような使用か)
- 是正を求める場合は、その内容と期間
- 解除の意思表示をする場合は、その根拠と効果
記載の仕方や順序、催告の要否は事案によって異なり、通知の内容次第で後の争点が増えることもあります。通知を出す前に確認することをおすすめします。
是正要求や解除通知を出す前に。通知の内容や手順を誤ると、かえって争点が増え、解決まで時間がかかることがあります。契約書・証拠・是正状況を確認したうえで、催告の要否や通知に記載すべき事項、自力救済を避けた進め方を整理できます。
解除通知を出す前に確認・整理したい資料(証拠チェックリスト)
用途違反の有無や程度は、資料によって裏づけられているかどうかで、対応の見通しが大きく変わります。次のような資料を確認・整理しておくと、検討がしやすくなります。すべてがそろっていなくても、あるものから整理していくことが大切です。
確認・整理しておきたい主な資料
- 賃貸借契約書、特約、覚書
- 重要事項説明書、募集図面、申込書
- 使用目的に関するやり取り(メール、メッセージ、議事録、契約時の説明記録)
- 物件の使用状況が分かる写真・動画(撮影日が分かるもの)
- 管理会社の報告書
- 近隣住民・他の入居者からの申告・苦情の記録
- 騒音・臭気・振動などの記録
- これまでの注意・警告書、催告書、解除通知と、その送付記録(配達証明など)
- 借主からの回答
- 改装・工事に関する資料、修繕の記録
- 行政機関からの通知、営業許可に関する資料
- 賃料の支払状況が分かる資料
- 出来事を時系列で整理したメモ
証拠収集の注意:証拠を集めるためであっても、貸主が無断で室内に立ち入ることや、違法な方法での録音・撮影、個人情報の不当な取得は避けるべきです。室内への立入りが認められるかは、契約の内容、借主の承諾、緊急性などによって異なり、一律には判断できません。立入りや調査の方法に迷う場合は、事前に確認することをおすすめします。
貸主が避けるべき対応(自力救済に注意)
借主が用途違反をしている、あるいは任意に退去しないという場合でも、貸主が実力で問題を解決しようとする対応(自力救済)は、原則として避ける必要があります。次のような行為は、たとえ借主に違反があっても、かえって貸主が責任を問われる原因になり得ます。
独断で行うべきでない主な対応
- 無断で鍵を交換し、借主の立入りを妨げる
- 電気・水道・ガスなどを止める
- 室内の家財を勝手に運び出し、処分する
- 無断で室内に立ち入る
- 営業を実力で妨害する、退去を強要する
- 威圧的な連絡や、反復・継続する連絡をする
これらの行為の法的な評価は事案によって異なりますが、借主が任意に明け渡さない場合は、原則として明渡請求訴訟や、判決等に基づく強制執行といった法的手続による解決を検討することになります。明渡し・強制執行の具体的な手続については、建物明渡しの手続に関する記事もあわせてご確認ください。
手続前チェックリスト
是正要求・解除通知・明渡請求などに進む前に、次の点を確認しておくと、対応の抜け漏れを防ぎやすくなります。
手続前に確認したいチェック項目
- 賃貸借契約書・特約の内容(使用目的、用法条項、無催告解除条項)を確認したか
- 契約時にどのような使い方を前提としていたかを、資料で確認したか
- 実際の使用状況(範囲・程度・期間)を把握し、証拠を保存したか
- これまでの注意・警告の履歴を時系列で整理したか
- 借主の回答・是正状況を記録したか
- 建物・設備への影響、近隣・他の入居者への影響を確認したか
- 許認可・安全・衛生上の問題の有無を確認したか
- 賃料の支払状況を確認したか
- 是正の催告が必要か、無催告解除が問題となる場面かを検討したか
- 解除通知に記載する事項と、送付方法(配達証明など)を検討したか
- 任意交渉と法的手続のどちらから進めるかを検討したか
弁護士に相談するタイミング
用途違反への対応は、解除できるかどうかの見通しが立てにくく、通知の出し方や手順によって後の争点が変わることがあります。弁護士への相談は、結果を保証するものではありませんが、次のような点を整理するのに役立ちます。
- 契約書の使用目的・用法条項をどう解釈できるかを整理できる
- 手元の資料で証拠が足りているか、何を補うべきかを確認できる
- 是正の催告が必要か、解除通知にどのような事項を記載すべきかを検討できる
- 自力救済を避けた、適切な手順を整理できる
- 任意交渉と明渡請求訴訟のどちらから進めるか、選択肢を検討できる
- 相談にあたって、どのような資料を準備すればよいかを確認できる
特に、解除通知を出す前や、借主との交渉に入る前の段階で一度整理しておくと、方針を立てやすくなります。相談時に準備しておきたい資料については、不動産の相談で準備する資料に関する記事もご参照ください。
よくあるご質問(FAQ)
Q1.借主が契約と異なる用途で使用していれば、すぐに契約を解除できますか。
用途違反があるという事実だけで、直ちに解除できるとは限りません。裁判実務では、その違反が、賃貸借を続けることを難しくする程度に信頼関係を破壊したかどうかが重視されます。まずは契約書と使用状況を確認し、違反の内容・程度・期間や是正の状況を整理する必要があります。個別事情により結論は異なります。
Q2.契約書に無催告解除の条項があれば、警告せずに解除できますか。
無催告解除の特約があっても、当然に催告なしで解除できるとは限りません。裁判実務では、催告なしで解除しても不合理でないといえる程度の事情(信頼関係が破壊されたといえる背信性)が必要と考えられています。契約書の条項だけを見て判断せず、違反の態様や是正状況を確認することをおすすめします。
Q3.用途違反への対応で、最初に何を確認すべきですか。
まず、賃貸借契約書と特約で使用目的がどう定められているかを確認し、契約時にどのような使い方を前提としていたか(重要事項説明書・募集図面など)を確認します。あわせて、実際の使用状況を記録し、写真・報告書・苦情記録などの証拠を保存しておくと、その後の検討がしやすくなります。
Q4.借主へ是正を求めるとき、内容証明郵便は必要ですか。
内容証明郵便は、通知の内容と送付した時期を後から証明しやすくする方法として有用ですが、必ず用いなければならないものではありません。是正の催告が必要かどうか自体も、違反の態様により異なります。通知の目的や記載事項を整理したうえで、送付方法を検討することをおすすめします。
Q5.借主が用途違反を是正した場合でも、解除できますか。
是正されたかどうかは、信頼関係が破壊されたといえるかの判断に影響する重要な事情です。速やかに是正された場合には、解除が認められにくい方向に働くことがあります。もっとも、それまでの違反の重大性や、建物・近隣への影響、反復性など他の事情もあわせて総合的に判断されるため、是正すれば必ず解除できないと断定することもできません。
Q6.借主が退去しない場合、貸主が鍵を交換してもよいですか。
借主に違反があっても、貸主が無断で鍵を交換したり、家財を運び出したりする自力救済は、原則として避ける必要があります。かえって貸主が責任を問われる原因になり得ます。任意に明け渡さない場合は、原則として明渡請求訴訟や強制執行といった法的手続による解決を検討することになります。
Q7.弁護士に相談する際は、何を持参すればよいですか。
賃貸借契約書・特約、重要事項説明書や募集資料、使用状況が分かる写真、管理会社の報告書、近隣からの苦情記録、これまでの注意・警告や借主の回答、出来事を整理した時系列メモなどがあると、具体的な検討につながりやすくなります。すべてがそろっていなくても、あるものをお持ちいただければ差し支えありません。
まとめ
- 契約と異なる使い方(用途違反)があっても、その事実だけで直ちに解除できるとは限りません。
- 解除の可否は、違反の内容・程度・期間、是正の状況、建物・近隣への影響などを総合し、信頼関係が破壊されたといえるかによって判断されます。
- 契約書に無催告解除の特約があっても、当然に催告なしで解除できるとは限りません。
- 解除通知を出す前に、契約書・特約、使用状況の証拠、注意履歴、近隣からの申告などを確認・保存することが出発点になります。
- 鍵の交換や家財の撤去などの自力救済は避け、任意に明け渡されない場合は、原則として法的手続による解決を検討します。
- 個別事情により結論が変わるため、通知や実力行使の前に、資料を確認して見通しを検討することが重要です。
用途違反への対応は、初動の進め方によって、その後の交渉や手続のしやすさが変わります。是正要求・解除通知・明渡請求といった後戻りしにくい対応をする前に、一度、契約書と資料を確認しておくことをおすすめします。
建物の用途違反・明渡しにお悩みの貸主・オーナーの方へ。弁護士法人ひょうご あわじみらい法律会計事務所では、賃貸借トラブル・建物明渡しを含む不動産問題に対応しています。契約書・証拠・是正状況を確認したうえで、解除の見通しや手続の選択肢、進め方を整理いただけます。
執筆者・監修者
藤井 貴之(ふじい たかゆき)
弁護士法人ひょうご あわじみらい法律会計事務所 代表弁護士・公認会計士
兵庫県弁護士会所属・日本公認会計士協会兵庫会所属
2012年(平成24年)司法試験合格、2013年弁護士登録。2020年(令和2年)公認会計士試験合格。兵庫県・山口県・東京都での実務経験を経て、2023年に淡路島(南あわじ市)へ事務所を開設しました。個人・法人の不動産トラブルのほか、相続・企業法務などにも対応しています。
参考資料
- e-Gov法令検索「民法」(第541条・第542条・第594条・第601条・第612条・第616条・第620条・第621条ほか)(調査時点2026年7月)
- e-Gov法令検索「借地借家法」(第28条ほか)(調査時点2026年7月)
- 裁判所 公式サイト(裁判例検索)(調査時点2026年7月)

24時間365日受付