業務委託契約書の注意点|作成・確認前のチェックポイントを解説 |淡路島(淡路・洲本・南あわじ)の弁護士|初回相談無料|弁護士法人ひょうご あわじみらい法律会計事務所

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業務委託契約書の注意点|作成・確認前のチェックポイントを解説

取引先や外注先から業務委託契約書を渡されたものの、どこを確認すればよいのか分からない。あるいは、これから外部に業務を委託するため契約書を用意したいが、何を書けば足りるのか自信がない。このような場面は、発注する側でも、受注する側でも数多く生じます。個人事業主やフリーランスの方が「提示された契約書にそのまま署名してよいか」と迷われることも少なくありません。

結論から申し上げると、「業務委託契約書」という表題が付いているかどうかで、契約の法的な性質や当事者の責任が自動的に決まるわけではありません。重要なのは、実際に行う業務の内容、成果物の有無、報酬の決め方、権利の帰属といった中身です。表題だけを整えても、内容が実態に合っていなければ、後から追加作業・未払い・解除・権利帰属をめぐる争いにつながることがあります。

この記事では、業務委託契約書の基本、請負・委任・準委任の違い、確認しておきたい主な条項、発注者と受注者それぞれの視点、フリーランス法や取適法・労働者性との関係、印紙税や電子契約、そして契約締結前のチェックポイントまでを整理します。まず手元に、契約書案だけでなく、見積書・仕様書・発注メールなどの関連資料をそろえておくと確認がスムーズです。なお、具体的な結論は、業務内容・当事者の関係・契約類型などの個別事情により異なります。署名・発注の前に、資料を確認したうえで検討されることをおすすめします。

「渡された契約書のどこを見ればよいか分からない」「発注する前に条項を整理しておきたい」という段階でも問題ありません。業務の内容や当事者の関係によって、確認すべき条項は変わります。契約書案と関連資料を確認することで、検討すべき事項を整理しやすくなります。

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業務委託契約書を確認するときの結論

細かな条項に入る前に、全体像を整理します。業務委託契約書を作成・確認するときは、次の観点を順に押さえておくと、抜け漏れや後日の争いを防ぎやすくなります。いずれも「契約書の名称」ではなく「実際の業務と合意の中身」で判断する点が共通しています。

業務委託契約書を作成・確認するときの主な観点
観点 主に確認すること 曖昧なときに生じやすい問題
契約の性質 請負・委任・準委任のいずれに近いか。成果物の完成が目的か、業務の遂行が目的か。 報酬の発生条件や責任の範囲について認識がずれる。
業務範囲・成果物 何を、どこまで、どの品質で行うか。仕様書・別紙で特定できているか。 範囲外の追加作業を無償で求められる。
検収・修正 検収の基準・期間、修正回数、合格の判断方法。 いつまでも修正を求められ、報酬が確定しない。
報酬・追加費用 金額または算定方法、支払時期、経費負担、追加作業の費用。 支払時期や追加費用をめぐって争いになる。
知的財産権 成果物の著作権など権利の帰属、既存素材・第三者素材の扱い。 納品後に権利の所在で対立する。
秘密保持・データ 秘密情報の範囲、個人情報の取扱い、再委託、終了後の返還・消去。 情報漏えいや目的外利用の責任が不明確になる。
責任・解除 契約不適合・損害賠償・責任上限、契約期間、更新、中途解約、解除。 途中終了や不具合の際の精算・責任が定まらない。
適用法令 フリーランス法、取適法、労働者性、著作権、個人情報、印紙税など。 法令上の義務や規制を見落とす。
関連資料 見積書・発注書・仕様書・メールなど契約書以外の資料との整合。 複数の資料の内容が食い違い、どれが優先するか争いになる。

業務委託契約書を確認するときは、次の二点を意識すると判断しやすくなります。

(1)契約の性質は表題ではなく実際の業務内容で評価されること、(2)契約書だけでなく、見積書・仕様書・発注書・メールなど関連資料と一体で確認することです。特に、複数の資料の内容が食い違う場合に備え、どの資料が優先するかを契約書で定めておくと、後の混乱を避けやすくなります。

業務委託契約書とは

業務委託契約書の役割

業務委託契約は、自社の業務の一部を外部の事業者に委託するときに広く用いられる契約の総称です。システム開発、デザイン、ライティング、コンサルティング、保守運用、清掃、配送、データ入力など、対象は多岐にわたります。もっとも、「業務委託契約」という名称の典型契約が民法にあるわけではなく、その中身は、後述する請負・委任・準委任、またはこれらが組み合わさった契約として評価されます。

契約書を作成する意味は、当事者が合意した業務範囲・報酬・権利関係・責任分担を、後から確認できる形で残しておくことにあります。口頭やメールだけの合意でも契約は成立し得ますが、内容が曖昧だと、追加作業や未払い、成果物の権利をめぐって認識のずれが生じやすくなります。

口頭・メール・発注書との関係

契約は、必ずしも書面がなければ成立しないわけではありません。メールのやり取りや発注書・注文請書によって成立していることもあります。しかし、条件が断片的にしか残っていないと、いざ争いになったときに「どこまで合意したのか」を示しにくくなります。契約書は、こうした合意内容を一つにまとめ、当事者双方が保管しておくための書面です。

基本契約と個別契約

継続的に取引する場合は、共通のルールを定める基本契約書と、個々の案件の内容・報酬・納期を定める個別契約書(発注書・注文請書を含む)に分ける方法がよく用いられます。この場合、基本契約と個別契約で内容が食い違ったときにどちらを優先するかを、あらかじめ定めておくことが重要です。

請負・委任・準委任の違い

業務委託契約の中身を見極めるうえで基本となるのが、請負・委任・準委任の区別です。おおまかには、「仕事の完成」に対して報酬を支払うのが請負、「事務の処理(業務の遂行)」に対して報酬を支払うのが委任・準委任です。法律行為の委託が委任(民法643条)、それ以外の事務の委託が準委任(民法656条で委任の規定を準用)と整理されます。次の表は主な違いの傾向を示すものであり、実際の分類は契約内容によって変わります。

請負・委任・準委任の主な違い(傾向。実際の分類は契約内容による)
項目 請負 委任・準委任
目的 仕事の完成(民法632条) 事務の処理・業務の遂行(民法643条・656条)
報酬の考え方 完成した仕事の結果に対して支払う。原則として引渡しと同時(民法633条) 事務処理に対して支払う。履行の割合に応じる型(民法648条)と成果に対する型(民法648条の2)がある
主な義務 仕事を完成させる義務 善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務(民法644条)・報告義務(民法645条)
成果物の不具合 契約不適合責任が問題となり得る(民法559条・562条以下の準用ほか) 成果完成型か履行割合型か、善管注意義務を尽くしたかにより異なる
代表例(あくまで例) システムの完成、成果物の制作 コンサルティング、保守・運用、継続的な助言

ここで注意したいのは、「準委任は請負と委任の中間だ」といった単純な整理はできないということです。準委任は、法律行為以外の事務処理を委託するもので、成果の完成を約束するかどうか(成果完成型か履行割合型か)によっても扱いが変わります。契約の一部が請負的、別の部分が準委任的という混在型もあり、業務ごとに性質を確認する必要があります。

契約書の表題だけでは法的性質は決まらない

実務で誤解されやすいのが、この点です。契約書に「請負契約書」「準委任契約書」と書いてあっても、その表題どおりに法的性質が決まるわけではありません。裁判などで争いになった場合、報酬の決め方、成果物の有無、検収の仕組み、責任分担などの実際の内容から、請負か(準)委任かが判断されます。表題と中身が食い違っていると、想定と異なる規律が適用されることがあるため、名称よりも中身を実態に合わせることが大切です。

業務委託契約書で確認したい主な条項

ここからは、業務委託契約書で特に確認しておきたい条項を、重要度の高いものから整理します。すべての契約に同じ条項が必要というわけではなく、業務内容や当事者の関係に応じて、定めるべき事項は変わります。各条項は「何を決めるものか」だけでなく、「発注者・受注者それぞれが何を確認すべきか」の視点で見ると、抜けに気づきやすくなります。

主な条項と、発注者・受注者それぞれの確認ポイント
条項 発注者の確認ポイント 受注者の確認ポイント
業務内容・範囲 依頼したい業務が仕様書等で特定されているか。 範囲外の作業まで含まれていないか。
成果物・納期 成果物と納期が明確か。品質基準はあるか。 実現可能な納期・品質か。
検収・修正 検収基準と期間、合格の判断方法が定まっているか。 修正回数の上限、追加修正の費用が定まっているか。
報酬・支払 成果に見合った額か。支払時期は検収と連動しているか。 支払期日が明確か。遅延時の取扱いはあるか。
追加作業・変更 仕様変更・追加時の合意手続と費用の決め方があるか。 追加分の報酬をどう請求するかが定まっているか。
知的財産権 必要な権利が確実に移転・許諾されるか。 既存素材・ノウハウまで手放す内容になっていないか。
秘密保持・再委託 情報管理と再委託の可否・条件が定まっているか。 負担が過大な管理義務になっていないか。
損害賠償・責任上限 損害が生じた場合の賠償の範囲は十分か。 責任の上限や範囲が過大になっていないか。
契約期間・解除 更新・中途解約・解除の条件が明確か。 一方的に不利な解除条項になっていないか。

業務の内容・範囲・成果物・検収

もっとも争いになりやすいのが、業務範囲と成果物の特定です。「どこまでが契約に含まれる作業か」が曖昧だと、追加作業の無償対応を求められたり、逆に想定外の請求を受けたりします。業務内容は本文で概要を定め、詳細は仕様書・業務記述書などの別紙で特定し、双方が確認できる形にしておくと安全です。成果物がある場合は、検収の基準・期間、修正回数、合格の判断方法まで決めておくと、報酬の確定時期が明確になります。

報酬・支払・追加費用

報酬は、固定額か、月額か、時間単価か、成果報酬かによって考え方が異なります。前述のとおり、請負では原則として仕事の完成後(引渡しと同時)に報酬が発生し(民法633条)、委任・準委任では履行割合型(民法648条)と成果完成型(民法648条の2)で扱いが分かれます。「完成前には報酬が一切発生しない」と一律に決まるわけではなく、契約が途中で終了した場合に、既にした部分について割合的に報酬を請求できることもあります(請負につき民法634条など)。支払時期、経費の負担、追加作業の費用、消費税や源泉徴収の扱いは、対象となる報酬や取引によって変わるため、契約書と関連資料で確認しておく必要があります。

知的財産権(著作権)の帰属

成果物に著作物が含まれる場合、権利の帰属は重要な確認事項です。委託料を支払えば当然に著作権が発注者へ移転する、というわけではありません。著作権は譲渡できますが(著作権法61条)、翻案権など(同法27条)や二次的著作物の利用に関する権利(同法28条)は、譲渡契約で「特掲」して定めておかないと、譲渡した側(受注者)に留保されたものと推定されます(同法61条2項)。また、著作者人格権は譲渡できない権利とされているため(同法59条)、実務では「著作者人格権を行使しない」旨の特約を置くことがあります。成果物そのものの権利だけでなく、既存素材・第三者素材・編集可能データ・ノウハウの扱いも分けて確認しておくと、納品後の対立を避けやすくなります。

秘密保持・個人情報・再委託

秘密保持条項では、秘密情報の範囲、目的外利用の禁止、開示できる範囲、例外、保存期間、終了後の返還・消去を定めます。個人データの取扱いを委託する場合は、個人情報保護法上、委託先に対する必要かつ適切な監督(同法25条)や、安全管理措置(同法23条)が求められます。再委託を認めるかどうか、認める場合の条件や責任分担も、あわせて確認しておきたい事項です。すべての業務委託に同じ水準の情報管理条項が必要というわけではなく、取り扱う情報の性質に応じて過不足なく定めることが大切です。

責任・契約不適合・損害賠償・責任上限

成果物に不具合があった場合、請負に近い契約では契約不適合責任が問題となり得ます。種類・品質に関する契約不適合については、注文者が不適合を知った時から一定期間内(原則として1年以内)に通知しないと権利を失うことがあるため(民法637条)、期間の定めにも注意が必要です。一方、委任・準委任に近い契約では、「準委任だから責任が一切ない」わけではなく、善管注意義務(民法644条)や報告義務(同法645条)に違反すれば、債務不履行として損害賠償責任(同法415条)を負うことがあります。損害賠償の範囲や責任の上限(上限額、間接損害の除外など)は、発注者・受注者のいずれに偏りすぎていないかを確認します。

契約期間・更新・中途解約・解除

契約の終了に関する規律は、契約類型によって異なります。請負では、注文者は仕事が完成しない間はいつでも損害を賠償して契約を解除できるとされ(民法641条)、委任・準委任では、各当事者がいつでも解除できるものの、相手方に不利な時期の解除などでは損害賠償が問題となることがあります(民法651条)。これらは契約で別段の定めを置くこともでき、実務では中途解約の予告期間や違約金の条項が設けられます。「いつでも無条件で解除できる」と一律に断定はできず、任意解約条項と、相手方の債務不履行を理由とする解除(民法541条・542条)は区別して考える必要があります。解除の際の既履行分の精算、成果物やデータの返還、引継ぎについても定めておくと、終了時の混乱を避けやすくなります。

その他の一般条項

このほか、反社会的勢力の排除、不可抗力、権利義務の譲渡制限、準拠法、協議条項、紛争が生じた場合の合意管轄なども、あわせて確認します。これらは定型的に見えても、当事者の所在地や取引の性質によって、適切な内容は変わります。

条項ごとに「発注者として抜けがないか」「受注者として不利になっていないか」を確認したい場合は、契約書案の段階でご相談いただけます。相談により、契約類型の見立て、修正の候補、関連する法令、確認しておきたい資料を整理しやすくなります。

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発注者と受注者で異なる確認の視点

同じ条項でも、発注者と受注者では確認すべき点が異なります。契約書を一方が用意した場合、その立場に有利な内容になっていることは珍しくありません。どちらが契約書を用意したかにかかわらず、自分の立場から見て過不足がないかを確認することが大切です。

同じ論点に対する発注者・受注者の主な関心の違い
論点 発注者が重視しやすい点 受注者が重視しやすい点
業務範囲 必要な作業が漏れなく含まれているか。 際限のない追加対応を求められないか。
報酬・支払 成果に見合った額で、検収後に支払う形か。 支払期日が明確で、遅延なく支払われるか。
権利帰属 必要な権利を確実に取得できるか。 本来手放す必要のない権利まで譲渡していないか。
責任 不具合・情報漏えい時に十分な手当てがあるか。 責任の範囲・上限が過大になっていないか。
解除 問題があれば適切に終了・是正できるか。 一方的・不利な時期の解除で不利益を受けないか。

業務委託契約書に関係する主な法令

業務委託契約書は、民法だけでなく、フリーランス法・取適法・労働関係法規・著作権法・個人情報保護法・印紙税法など、複数の法令と関係します。ここでは、契約書や発注実務に影響する範囲に絞って整理します。適用の有無や具体的な内容は、当事者の属性や取引の内容によって変わるため、詳細は公的資料での確認が必要です。

フリーランス法との関係

フリーランス法(正式名称「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、通称「フリーランス・事業者間取引適正化等法」)は、令和6年(2024年)11月1日から施行されています。従業員を使用しない個人などの受注者(特定受託事業者)に業務を委託する場合、発注者には、原則として取引条件を書面や電磁的方法で明示する義務が生じます。さらに、発注者が従業員を使用し、一定期間以上の委託を行う場合には、報酬の支払期日(物品等を受領した日から60日以内のできる限り短い期間内)を定めて支払うこと、募集情報の的確な表示、一定の禁止行為の遵守、継続的な委託における中途解除等の30日前までの予告など、追加の義務が課されます。どの義務がどこまで及ぶかは、発注者が従業員を使用するか、委託期間がどの程度かによって変わります。業務委託契約書や取引条件の明示書面を整える際は、これらの義務との整合を確認する必要があります。

取適法(旧・下請法)との関係

従来の「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」は、令和7年の改正により「中小受託取引適正化法(取適法)」へと名称が改められ、令和8年(2026年)1月1日から施行されています。適用の対象は、従来の資本金の額による基準に加えて、従業員数の基準(製造委託等では300人、役務提供委託等では100人が目安)も用いられるようになりました。適用がある取引では、発注者に、書面の交付や支払期日に関する規律、一定の禁止行為の遵守などが求められます。自社の取引が取適法の対象になるかは、当事者の資本金・従業員数や取引の類型によって異なります。フリーランス法と取適法のいずれが(あるいは双方が)適用されるかも含め、公正取引委員会の資料で確認することをおすすめします。

労働者性・偽装請負との関係

業務委託契約書に「個人事業主に委託する」と書いてあっても、それだけで労働関係法規の適用が当然に否定されるわけではありません。実際の働き方が、仕事の依頼に対する諾否の自由の有無、業務遂行上の指揮監督、勤務時間・場所の拘束、代替性、報酬の性質といった要素からみて「労働者」に当たると判断されれば、残業代・労災・社会保険などの労働法規が問題になることがあります(労働基準法上の労働者性)。また、発注者が受託会社の従業員に直接指揮命令している場合などには、実態が労働者派遣に当たるとして偽装請負が問題となることもあります(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準)。契約書の名称ではなく、実際の指揮命令関係や業務遂行の実態が判断の基礎になります。

著作権・知的財産権

前述のとおり、著作権は譲渡の対象や特掲(著作権法27条・28条)、著作者人格権の不行使(同法59条)など、条文上の細かな規律があります。成果物の権利をどの範囲で発注者に帰属させるのか、あるいは利用許諾にとどめるのかは、契約で明確に定める必要があります。

個人情報・情報セキュリティ

個人データの取扱いを委託する場合は、委託先の監督(個人情報保護法25条)や安全管理措置(同法23条)が求められます。取り扱う情報の性質に応じて、秘密保持条項や情報セキュリティに関する定めを設けます。

印紙税

紙で作成する契約書には、印紙税が問題となります。ここでも「業務委託契約書」という表題だけで課否が決まるわけではなく、文書の内容で判断されます。仕事の完成に対して報酬を支払う請負に関する契約書は第2号文書に、継続的な取引の基本となる契約書は第7号文書(1通につき4,000円)に該当し得ます。他方、事務処理を委託する委任・準委任にとどまる契約書は、原則として課税文書に当たらないとされています。具体的な文書区分や税額は、国税庁の資料で確認してください。

電子契約・電子署名

電子契約サービスなどを用いて、紙の文書を作成せずに電磁的記録として契約を締結する場合、印紙税は課税されないと一般に理解されています。印紙税は「文書」に対して課される税であり、電磁的記録はこの文書に当たらないと解されているためです(国税庁の質疑応答事例による)。ただし、「電子契約ならあらゆる税や手続が不要になる」わけではありません。契約の成立や証拠力は別の問題であり、本人による電子署名がある電磁的記録については、真正に成立したものと推定する定めがあります(電子署名法3条)。押印の有無、本人確認の方法、保存の仕方は、利用するサービスの内容によって異なります。

よく問題になる場面

業務委託をめぐって相談が多いのは、次のような場面です。いずれも結論は個別事情によって変わりますが、確認しておくべき条項・事実・資料の見当をつけておくと、初動が早くなります。

  • 業務範囲が曖昧で追加作業が発生した…契約書・仕様書・発注メールで、どこまでが当初の範囲だったかを確認します。追加合意の有無や、変更手続の定めが手掛かりになります。
  • 検収基準や修正回数が決まっていない…検収条項の有無、合格の判断方法、修正の範囲を確認します。基準がない場合、どの時点で報酬が確定するかが争点になります。
  • 納品したのに支払われない…支払時期の定め、検収の状況、契約類型(完成に対する報酬か、履行に対する報酬か)を確認します。契約書がない場合でも、メールや納品の記録が資料になります。
  • 契約途中で終了を求められた…中途解約条項、予告期間、既履行分の精算、解除の理由が債務不履行によるものか任意解約かを確認します。
  • 成果物の著作権を双方が自分にあると考えている…権利帰属条項、特掲の有無(著作権法27条・28条)、既存素材の扱いを確認します。
  • 再委託先で情報事故が起きた…再委託の可否・条件、秘密保持、個人情報の委託先監督、事故発生時の報告の定めを確認します。
  • 個人事業主でありながら従業員に近い働き方になっている…指揮命令や時間・場所の拘束などの実態から、労働者性や偽装請負が問題にならないかを検討します。

契約締結前・署名前のチェックリスト

契約書に署名する前、あるいは発注・追加作業・更新・解除通知の前に、次のような資料・情報がそろっているかを確認しておくと、後の判断や相談がスムーズになります。すべてが必須というわけではなく、そろっている範囲から整理すれば十分です。

  • 契約書案(基本契約書・個別契約書の別を含む)
  • 見積書・発注書・注文請書
  • 仕様書・業務記述書・スケジュール
  • 検収基準・修正回数など品質に関する資料
  • 報酬・経費・追加費用の算定方法が分かる資料
  • 成果物のサンプルや、権利帰属に関する取り決め
  • 秘密情報・個人情報の取扱いに関する資料、再委託の体制
  • これまでのメール・チャットなど合意の経緯が分かる記録
  • 当事者の属性(資本金・従業員数、個人か法人か)や取引条件が分かる資料
  • 契約変更・解除に関する通知や、予告期間の定め

弁護士に相談するタイミング

次のような場面では、契約書と関連資料を確認したうえで方針を整理しておくことが、その後の判断に役立ちます。相談は結果を保証するものではありませんが、契約類型の見立て、条項の過不足や修正の候補、適用される法令、確認しておきたい資料の整理のための場としてご利用いただけます。

  • これから契約を締結する前に、条項を整理しておきたいとき
  • インターネット上のひな形を、実際の取引に合わせて修正したいとき
  • 請負か準委任か判断しにくく、報酬や責任の定め方に迷うとき
  • 追加作業や仕様変更が多く、費用や範囲の取り決めを見直したいとき
  • 知的財産権や秘密情報の扱いが重要な業務のとき
  • 損害賠償の責任上限や、解除・中途解約の条件を調整したいとき
  • フリーランス法や取適法の適用があるか分からないとき
  • 労働者性や偽装請負が懸念されるとき
  • 未払い・解除・損害賠償・権利帰属などの問題が現に生じたとき

継続的に契約書のレビューを依頼したい場合は、顧問契約を利用する方法もあります。顧問弁護士の活用については、中小企業における顧問弁護士の活用に関するコラムを読むもあわせてご確認ください。

よくあるご質問(FAQ)

Q1.業務委託契約書は、必ず作成しなければなりませんか。

契約は口頭やメールでも成立し得るため、書面がなければ契約が無効になるわけではありません。もっとも、業務範囲・報酬・権利帰属などが曖昧だと、後の争いで合意内容を示しにくくなります。書面にまとめておくことで、認識のずれや未払い・追加作業をめぐるトラブルを避けやすくなります。フリーランス法などにより、取引条件の明示が求められる場合もあります。

Q2.請負契約と準委任契約は、何が違いますか。

おおまかには、仕事の完成に対して報酬を支払うのが請負、事務の処理・業務の遂行に対して報酬を支払うのが準委任です。報酬の発生条件や、成果物の不具合に対する責任の考え方が異なります。ただし、契約書の表題ではなく実際の内容で判断されるため、どちらに当たるかは業務内容により変わります。

Q3.業務委託契約書には、どのようなことを書けばよいですか。

業務範囲・成果物・検収、報酬・支払・追加費用、知的財産権、秘密保持・再委託、損害賠償・責任上限、契約期間・解除などが主な項目です。もっとも、すべての契約に同じ条項が必要というわけではなく、業務内容や当事者の関係に応じて過不足なく定めることが大切です。

Q4.インターネット上のひな形を、そのまま使ってよいですか。

ひな形は出発点として有用ですが、そのまま使えるとは限りません。実際の業務範囲や、請負か準委任か、検収基準、権利帰属、責任上限、中途解約などが実態に合っているか、見積書・仕様書と矛盾しないかを確認する必要があります。一方当事者に偏った内容になっていることもあるため、内容の確認をおすすめします。

Q5.業務委託契約書に、収入印紙は必要ですか。

表題ではなく内容で判断されます。仕事の完成に対して報酬を支払う請負に関する契約書は第2号文書に、継続的取引の基本となる契約書は第7号文書に該当し得ます。事務処理を委託する委任・準委任にとどまる契約書は、原則として課税文書に当たらないとされています。具体的な区分と税額は国税庁の資料でご確認ください。

Q6.電子契約で締結しても有効ですか。印紙はどうなりますか。

電磁的記録として締結する契約も有効に成立し得ます。電子契約(電磁的記録)には、印紙税は課税されないと一般に理解されています。もっとも、本人確認や証拠の残し方は利用するサービスによって異なり、本人による電子署名がある場合の推定に関する定めもあります(電子署名法3条)。「電子契約ならすべての手続が不要になる」わけではない点に注意が必要です。

Q7.契約を途中で解除できますか。

契約類型と契約条項によります。請負では、注文者は仕事の完成前は損害を賠償して解除できるとされ(民法641条)、委任・準委任では各当事者がいつでも解除できるものの、不利な時期の解除などでは損害賠償が問題となることがあります(同法651条)。契約に中途解約や予告期間の定めがあればそれによります。相手方の債務不履行を理由とする解除とは区別して考える必要があります。

Q8.個人事業主・フリーランスへの発注では、どの法律に注意すればよいですか。

従業員を使用しない個人などへの発注では、フリーランス法により、取引条件の明示や、発注者の属性・委託期間に応じた支払期日・禁止行為・中途解除の予告などが問題になります。取引の内容によっては取適法の対象になることもあります。また、働き方の実態によっては労働者性や偽装請負が問題となる場合があります。適用の有無は個別事情により変わるため、資料を確認したうえで検討する必要があります。

まとめ

  • 「業務委託契約書」という表題で法的性質が決まるわけではなく、実際の業務内容から請負・委任・準委任のいずれに当たるかが判断されます。
  • 業務範囲・成果物・検収、報酬・追加費用、知的財産権、秘密保持・再委託、責任・解除は、発注者・受注者双方の視点で確認しておくと、後の争いを避けやすくなります。
  • フリーランス法(令和6年施行)、取適法(旧・下請法。令和8年施行)、労働者性・偽装請負、著作権、個人情報、印紙税、電子契約は、いずれも契約書や発注実務に影響します。適用の有無は当事者の属性や取引内容により変わります。
  • 契約書だけでなく、見積書・仕様書・発注書・メールなどの関連資料と一体で確認することが大切です。
  • 署名・発注・追加作業・更新・解除通知の前に、資料を整理して確認しておくことをおすすめします。

業務委託契約書は、締結する前に一度内容を確認しておくことで、追加作業・未払い・権利帰属・解除をめぐるトラブルを避けやすくなります。契約書案・見積書・仕様書・発注メールなどを確認することで、契約類型の見立て、修正の候補、適用される法令、確認しておきたい資料を整理できます。発注する前、署名する前に、一度ご確認ください。

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執筆者・監修者

藤井 貴之(ふじい たかゆき)
弁護士法人ひょうご あわじみらい法律会計事務所 代表弁護士・公認会計士
兵庫県弁護士会所属・日本公認会計士協会兵庫会所属

2013年弁護士登録、2020年公認会計士試験合格。兵庫県・山口県・東京都での実務を経て、南あわじ市に事務所を開設。業務委託契約をはじめとする契約書の作成・確認、債権回収などの企業法務のご相談に対応しています。

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