人身事故を起こしてしまい、警察での実況見分や取調べを終えたものの、「このあと自分はどのような処分を受けるのか」「罰金で済むのか、裁判になるのか」「前科がついて仕事に影響しないか」と不安を抱えていないでしょうか。検察庁から呼出しの書面が届き、初めて事態の重さを実感したというご相談も少なくありません。
人身事故で問題となる代表的な犯罪が、過失運転致死傷罪です。この記事では、過失運転致死傷罪の法定刑、不起訴・略式命令による罰金・正式裁判といった処分の種類、処分や量刑を左右する事情、運転免許の行政処分、示談と被害者対応の注意点、弁護士へ相談するタイミングを、2026年7月時点の法令・公的資料に基づいて解説します。
先に結論の方向性をお伝えすると、人身事故の処分は、被害者のけがの重さだけで機械的に決まるわけではありません。事故の態様、過失の内容、事故後の対応、被害弁償の状況など、多くの事情を総合して判断されます。また、刑事処分、運転免許に関する行政処分、損害賠償という民事責任は、それぞれ別の制度であり、別々に進みます。個別の事情により結論は変わりますので、この記事は一般的な整理としてお読みください。
警察や検察庁から連絡を受けて対応にお悩みの方は、書面や事故の資料を確認しながら、今後の流れを整理することができます。
人身事故を起こした後の刑事処分の全体像
過失運転致死傷罪で捜査を受けた場合に考えられる主な結論(終局処分)は、次の3つに大別されます。
| 処分・手続 | 内容 | 前科との関係 |
|---|---|---|
| 不起訴処分 | 検察官が起訴しないと判断する処分。裁判は開かれず、刑罰も科されません。起訴猶予(罪を認定できても諸事情から起訴しない場合)や嫌疑不十分などの理由があります。 | 前科はつきません(捜査対象となった記録は前歴として残ります)。 |
| 略式命令による罰金 | 簡易裁判所が書面審理で100万円以下の罰金等を命じる手続です。本人に異議がないことが前提で、公開の法廷は開かれません。 | 罰金も刑罰であり、前科となります。 |
| 公判請求(正式裁判) | 公開の法廷で審理され、判決で刑が言い渡されます。罰金のほか、拘禁刑(執行猶予付き・実刑)があり得ます。 | 有罪判決が確定すれば前科となります。 |
なお、検索でよく使われる「量刑相場」という言葉について、用語を整理しておきます。量刑とは、裁判所が有罪と認めた場合に、どのような刑をどの程度科すかという判断を指します。これに対し、不起訴は検察官による処分であり、そもそも刑が科されない結論です。「不起訴の相場」「罰金の相場」とひとくくりに語られることがありますが、検察官の処分の見通しと、有罪となった場合の量刑の見通しは、本来別の問題です。そして、いずれについても、一律の相場を示すことはできません。同じ「全治○週間」の事故でも、過失の内容や事故後の対応によって結論が変わり得るためです。
最初に確認したい事情
- 事故の態様(速度、信号、道路状況、相手方の動きなど)
- 被害者のけがの程度・治療状況(死亡・後遺障害の有無を含む)
- 飲酒、無免許、ひき逃げなど道路交通法違反の有無
- 事故直後の対応(救護・警察への報告をしたか)
- 警察・検察・公安委員会から届いている書面の内容
- 任意保険会社による賠償対応・示談の進み具合
刑事責任・行政処分・民事責任の違い
人身事故を起こした運転者には、性質の異なる3つの責任が別々に問われます。「罰金を払ったのに、なぜ免許停止の通知が来るのか」という疑問は、この3つを区別すると整理できます。
| 責任の種類 | 判断する主体 | 主な内容 | 中心となる手続 |
|---|---|---|---|
| 刑事責任 | 検察官・裁判所 | 罰金や拘禁刑などの刑罰 | 捜査、起訴・不起訴の決定、略式手続または正式裁判 |
| 行政処分 | 都道府県公安委員会 | 違反点数の付加、免許停止・免許取消し | 点数制度に基づく処分、意見の聴取など |
| 民事責任 | 当事者間・裁判所 | 治療費、休業損害、慰謝料などの損害賠償 | 示談交渉、調停、訴訟(任意保険会社が交渉を代行することが多い) |
3つの手続は相互に影響し合う場面もあります。たとえば、民事上の賠償(被害弁償)の状況は刑事処分の判断で考慮され得ますし、刑事で不起訴となっても行政処分が行われることはあります。逆もまた同様で、免許の処分が済んだから刑事手続も終わり、という関係にはありません。民事上の対応全般については、次の記事で整理しています。
過失運転致死傷罪の基礎知識
根拠となる法律と法定刑
過失運転致死傷罪は、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(自動車運転死傷処罰法)第5条に定められています。条文は、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。」というものです。
「運転上必要な注意を怠り」とは、前方不注視、脇見、安全確認の不足、速度の出し過ぎ、信号の見落としなど、運転者に求められる注意義務に違反したことを指します。人身事故のうち、後述する危険運転致死傷罪のような特に危険な態様に当たらないものは、多くがこの過失運転致死傷罪として捜査されます。
ただし書の「刑の免除」は、傷害が軽い場合に、裁判で有罪としつつ刑を科さないことができるという規定です。検察官が起訴しない不起訴処分とは別の制度ですので、混同しないよう注意が必要です。
「拘禁刑」への一本化と適用関係
以前の条文では「懲役若しくは禁錮」と定められていましたが、刑法改正により、2025年(令和7年)6月1日から懲役と禁錮は「拘禁刑」に一本化されました。現在の過失運転致死傷罪の法定刑が「7年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」とされているのは、この改正によるものです。
なお、拘禁刑が適用されるのは、原則として施行日以後の行為です。2025年5月31日以前に起こした事故については、従前の懲役・禁錮を前提に処理されるため、事故がいつ発生したかによって適用される刑の呼び方が変わる場合があります。
無免許運転の場合の加重
無免許運転で過失運転致死傷罪を犯した場合は、同法第6条第4項により「10年以下の拘禁刑」に加重されます。罰金刑の定めがなくなる点でも、通常の過失運転致死傷罪より重い扱いです。
危険運転致死傷罪との違い(2026年7月施行の改正を含む)
危険運転致死傷罪(同法第2条・第3条)は、アルコールや薬物の影響により正常な運転が困難な状態での走行、制御困難な高速度での走行、殊更な赤信号無視など、特に危険性の高い運転行為によって人を死傷させた場合に成立する犯罪です。第2条の類型では、人を負傷させた場合は15年以下の拘禁刑、死亡させた場合は1年以上の有期拘禁刑と、過失運転致死傷罪よりはるかに重い法定刑が定められています。
重要なのは、過失運転致死傷罪と危険運転致死傷罪は、被害結果の重さで分かれるのではなく、運転行為の態様・危険性で分かれるという点です。死亡事故であっても過失運転致死罪にとどまる場合もあれば、傷害にとどまっても危険運転致傷罪が成立する場合もあります。
また、この区別に関わる重要な法改正が、ごく最近施行されています。「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律及び道路交通法の一部を改正する法律」(令和8年法律第52号)が2026年(令和8年)6月25日に成立し、同年7月21日に施行されました。この改正により、危険運転致死傷罪に数値による基準が導入され、飲酒運転については血液1ミリリットルにつき1.0ミリグラム以上又は呼気1リットルにつき0.5ミリグラム以上のアルコールを保有した状態での運転が、高速度運転については最高速度が時速60キロメートル以下の道路でこれを時速50キロメートル以上超える速度、最高速度が時速60キロメートルを超える道路でこれを時速60キロメートル以上超える速度での運転が、それぞれ処罰対象として明確化されたほか、殊更にタイヤを滑走させる等の類型も追加されました。改正法は施行日以後の行為に適用されるため、事故の発生時期によって適用される法律の内容が異なります。ご自身の事故がどちらの罪に当たり得るかは、事故態様の資料を確認したうえでの検討が必要です。
飲酒運転やひき逃げなどが併存する場合
酒気帯び運転、酒酔い運転、無免許運転、救護義務違反(ひき逃げ)、警察への報告義務違反などは、単に「量刑を重くする事情」であるだけでなく、道路交通法上の別の犯罪です。人身事故にこれらが伴う場合、過失運転致死傷罪とあわせて複数の罪が成立し、まとめて処罰の対象となり得ます(併合罪)。また、飲酒の発覚を免れる目的でその場を離れて追加飲酒をするなどの行為には、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪(同法第4条・12年以下の拘禁刑)という重い犯罪が別に定められています。交通違反そのものの刑事手続については、次の記事で詳しく解説しています。
| 罪名(条文) | 法定刑 |
|---|---|
| 過失運転致死傷罪(第5条) | 7年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(傷害が軽いときは情状により刑の免除あり) |
| 無免許運転による加重(第6条第4項) | 10年以下の拘禁刑 |
| 過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪(第4条) | 12年以下の拘禁刑 |
| 危険運転致死傷罪(第2条) | 負傷させた場合は15年以下の拘禁刑、死亡させた場合は1年以上の有期拘禁刑 |
| 危険運転致死傷罪(第3条) | 負傷させた場合は12年以下の拘禁刑、死亡させた場合は15年以下の拘禁刑 |
処分や量刑を左右する主な事情
検察官の処分や裁判所の量刑判断では、次のような事情が総合的に考慮されます。どれか1つの事情だけで結論が決まる単純な加点・減点の仕組みではない点が重要です。
- 事故態様と過失の内容・程度 速度超過の程度、信号の状況、前方不注視や脇見の時間、一時停止や安全確認の状況など、注意義務違反の内容と重さが中心的な考慮要素になります。被害者側にも落ち度があった場合は、その点も検討対象です。
- 被害結果 けがの部位・程度、治療期間、後遺障害の有無、死亡という結果は、重要な考慮要素です。ただし、結果が重ければ当然に正式裁判・実刑になるという関係ではなく、他の事情とあわせて判断されます。
- 被害弁償・示談・被害者側の意向 任意保険による賠償の見込み、示談の成立、被害者や遺族の処罰に関する意向は、考慮され得る事情です。
- 事故後の対応 直ちに救護・通報を行ったか、現場から離れなかったか、捜査に誠実に対応したかといった点です。
- 別の違反・犯罪の有無 飲酒、無免許、大幅な速度超過、ひき逃げなどが伴う場合は、処分が重くなる方向で考慮され、前記のとおり別罪も成立し得ます。
- 交通違反歴・前科前歴 同種の違反や事故を繰り返していないかが確認されます。
- 反省・再発防止の姿勢 運転を控える、家族による監督、安全運転の講習受講など、再発防止に向けた具体的な取組みも事情の1つです。仕事で運転が不可欠かどうかといった生活状況が話題になることもあります。
不起訴・略式命令による罰金・正式裁判の違い
不起訴処分(起訴猶予など)
不起訴処分は、検察官が裁判にかけないと決める処分です。証拠が足りない場合(嫌疑不十分)のほか、罪を犯したと認められる場合でも、犯行の内容や犯行後の状況などから起訴を必要としないと判断されること(起訴猶予)があります。不起訴となれば刑罰は科されず、前科もつきません。
統計として、法務省の令和7年版犯罪白書によると、検察庁で終局処理された過失運転致死傷等の事件の起訴率は、令和6年(2024年)で15.3%、起訴猶予率は84.2%とされています(検察統計年報に基づく数値)。この数値は「過失運転致死傷等」という罪名で検察庁が処理した事件全体に関するものであり、危険運転致死傷や道路交通法違反は別に集計されています。全体としては起訴に至らない事件が多いことが読み取れますが、これはあくまで統計上の全体傾向です。個々の事件の見通しは事故態様や結果の重大性などによって大きく異なりますので、「8割以上は不起訴だから大丈夫」と受け取ることはできません。
略式命令による罰金
起訴のうち、簡易裁判所の管轄に属する100万円以下の罰金又は科料に相当する明白・簡易な事件については、検察官が略式命令を請求することがあります。書面だけの審理で罰金額が決まり、公開の法廷には出廷しません。この手続をとるには本人に異議がないこと(同意)が必要で、検察庁で説明を受けて書面に署名するのが通常です。略式命令に不服がある場合は、受け取りから14日以内に正式裁判を請求できます。
注意すべきなのは、略式命令による罰金も有罪の裁判であり、前科となる点です。「略式だから前科はつかない」という理解は誤りです。また、交通反則金(いわゆる青切符で納付するもの)は行政上の措置であり、刑罰である罰金とは異なります。人身事故は反則金では処理されません。
正式裁判(公判請求)
検察官が公判請求すると、公開の法廷で審理が行われます。判決では、罰金となる場合もあれば、拘禁刑が言い渡される場合もあります。拘禁刑には、一定期間刑の執行を猶予し、猶予期間を問題なく過ごせば刑の執行を受けない執行猶予付きのものと、直ちに刑事施設に収容される実刑があります。執行猶予を付けられるかどうかは法律上の要件があり、言い渡される刑の重さや前科の有無などによって決まります。死亡事故や悪質な態様の事故では、正式裁判の可能性も視野に入れた準備が必要になりますが、ここでも一律の基準があるわけではなく、処分や判決の内容は個別の事情によります。
事故発生から処分までの一般的な流れ
一般的な在宅事件の流れは次のとおりです。実際の事件では順序が前後したり、一部が省略されたりすることがあります。
- 事故発生。負傷者の救護、危険防止の措置、警察への報告(いずれも道路交通法上の義務です)
- 警察による実況見分・現場捜査。後日、実況見分調書などが作成されます
- 警察での取調べ(供述調書の作成)。在宅のまま進む場合と、逮捕される場合があります
- 捜査書類の検察庁への送致(在宅の場合、いわゆる書類送検)
- 検察官による取調べ。検察庁から呼出状や電話で連絡があります
- 検察官の処分決定(不起訴、略式命令請求、公判請求のいずれか)
- 略式の場合は罰金の納付、公判請求の場合は裁判・判決を経て刑が確定します
淡路島内の事故では、島内の警察署で取調べを受けた後、神戸地方検察庁洲本支部(洲本市)などから呼出しを受ける例がありますが、事件を取り扱う警察署・検察庁・裁判所は事案により異なります。届いた書面に記載された出頭先・日時・持参物を確認してください。呼出しへの対応に不安がある場合や、事故状況について記憶と調書の内容が食い違っている場合は、出頭前に整理しておくことが大切です。
これと並行して、運転免許の行政処分の手続と、保険会社を通じた民事の賠償交渉が、それぞれ別に進みます。
検察庁からの呼出しや略式手続の説明を受けた段階でも、書面や事故資料をもとに、手続の意味と対応方針を整理することができます。署名の前に確認したい点がある方は、ご相談ください。
逮捕・勾留・保釈の考え方
人身事故の捜査は、逮捕されずに在宅のまま進む場合と、逮捕・勾留といった身体拘束を伴う場合があります。どちらになるかは、逃亡や証拠隠滅のおそれ、事故の態様や結果の重大性、飲酒・ひき逃げなど併存する違反の有無、捜査への対応状況などを踏まえて判断されるものであり、「人身事故なら逮捕されない」「死亡事故なら必ず逮捕される」といった一律の基準はありません。
逮捕された場合、引き続き勾留(原則10日間、延長があり得ます)が請求されることがあります。保釈は、起訴された後に保証金を納めて釈放を求める制度であり、起訴前の段階では利用できません。用語が混同されやすいところですので、家族が逮捕されたという場面では、今どの段階にあるのかを正確に把握することが第一歩になります。身体拘束の当否や釈放に向けた活動は時間との関係が重要ですので、早い段階での弁護士への相談をおすすめします。
在宅事件の場合も、処分の重さが軽くなるわけではなく、呼出しや取調べに適切に対応する必要がある点は同じです。連絡を無視すると、身体拘束の検討につながる可能性もあります。
示談と被害者への対応で注意すべきこと
任意保険に加入している場合、治療費や慰謝料などの損害賠償の交渉は、通常、保険会社が窓口となって進めます。これは民事責任への対応として重要ですが、保険会社による賠償交渉が進んでいることと、刑事手続との関係で示談や宥恕(被害者が処罰を望まない意思を示すこと)の確認がされていることとは、必ずしも同じではありません。刑事処分の判断との関係では、賠償の状況に加えて、被害者側の処罰に関する意向が別途問題となる場合があります。
もっとも、加害者本人が被害者やご遺族へ直接連絡することには、慎重な検討が必要です。被害者側は治療や悲しみの中にあり、加害者からの連絡自体が負担になることがあります。連絡先を教えてもらえないことも多く、無理に連絡を取ろうとすれば、謝罪のつもりでも圧力と受け取られ、かえって処罰感情を強めるおそれがあります。通夜・葬儀への参列や自宅への訪問も、一律に行うべきものではありません。謝罪や被害弁償の申入れは、被害者側の意向を最優先に、保険会社や弁護士を通じて方法と時期を検討するのが基本です。
示談書や謝罪文を作成する場合は、民事の賠償との関係(清算条項の範囲、既に支払われた保険金との関係)、刑事手続で提出することの可否、表現の適切さなど、確認すべき点が多くあります。署名した後にやり直すことは難しいため、内容が固まる前の確認をおすすめします。なお、被害者に示談を急がせたり、宥恕の文言を求めて繰り返し連絡したりすることは、あってはならない対応です。
運転免許の行政処分(免許停止・免許取消し)
運転免許に関する処分は、刑事処分とは別に、都道府県公安委員会が点数制度に基づいて行う行政処分です。刑事で不起訴となった場合でも、行政処分が行われることはあります。
人身事故では、事故の原因となった違反行為の基礎点数(安全運転義務違反など)に、被害の程度と責任の程度に応じた付加点数が加算されます。付加点数の基本的な区分は次のとおりです。
| 被害の程度 | 不注意が専ら運転者にある場合 | それ以外の場合 |
|---|---|---|
| 死亡事故 | 20点 | 13点 |
| 治療期間3か月以上又は後遺障害 | 13点 | 9点 |
| 治療期間30日以上3か月未満 | 9点 | 6点 |
| 治療期間15日以上30日未満 | 6点 | 4点 |
| 治療期間15日未満 | 3点 | 2点 |
行政処分の前歴がない場合、累積点数が6点以上で免許停止(6点で30日間など)、15点以上で免許取消し(欠格期間1年以上)が基準とされています。もっとも、実際の処分は、基礎点数と付加点数の合計、過去3年間の他の違反、行政処分の前歴の有無によって変わります。ひき逃げ(救護義務違反)は単独で35点とされており、免許取消しと長期の欠格期間の対象になります。単純に表だけで結論を断定せず、ご自身の累積点数と前歴を前提に確認することが必要です。
免許取消しや長期間の免許停止に当たる場合には、処分の前に「意見の聴取」という意見を述べる手続の通知が届きます。公安委員会や警察から届いた通知書面には処分の内容や手続の期日が記載されていますので、放置せず、内容を確認して対応してください。仕事で運転が必要な方は、処分の見通しを踏まえた準備が重要になります。
よく問題になるケースと確認すべき資料
実際のご相談でよく問題になる場面を、確認すべき資料・事情とあわせて整理します。いずれのケースも、記載した事情がそのまま結論に直結するわけではなく、個別の判断が必要です。
- 初犯で被害者が比較的軽傷のケース 治療期間の見込み、診断内容について把握している情報、賠償・示談の進行状況、違反歴を確認します。不起訴や罰金にとどまる可能性も検討対象になりますが、事故態様によって見通しは変わります。
- 重い後遺障害が残る可能性のあるケース 治療経過、後遺障害の認定手続の状況、保険会社の対応状況を確認します。刑事・民事の両面で長期的な対応が必要になり得ます。
- 死亡事故となったケース 事故態様に関する資料(実況見分の状況、ドライブレコーダー)、ご遺族への対応窓口、報道の有無などを確認します。公判請求の可能性を含め、早期に方針の整理が必要です。
- 示談がまとまっていない・被害者に連絡を断られているケース 保険会社の交渉状況、被害者側の意向に関する情報を確認します。直接の連絡は控え、対応方法を検討します。
- 飲酒・無免許・ひき逃げが問題となっているケース 検知結果や違反の内容に関する書面を確認します。危険運転致死傷罪や道路交通法違反の成立が問題となり、身体拘束の可能性も含めた検討が必要です。
- 取調べで説明した内容と記憶が食い違っているケース 署名済みの調書の内容、実況見分で再現した状況、ドライブレコーダー映像との整合を確認します。今後の取調べでの説明の仕方を整理する必要があります。
- 免許の処分通知が届いたケース 通知書面の内容(点数、処分の種類、意見の聴取の期日)、累積点数と前歴を確認します。刑事手続とは別に期限管理が必要です。
手続前チェックリスト
警察・検察庁への出頭、示談書への署名、意見の聴取などの前に、手元にある資料を整理しておくと、その後の検討がしやすくなります。
- 警察・検察庁・裁判所・公安委員会から届いた書面一式(呼出状、通知書など)
- 交通事故証明書(自動車安全運転センターで取得できます)
- ドライブレコーダーの映像データ(上書きされる前の保存が重要です)
- 事故現場・車両損傷の写真、事故状況を記録したメモ(日時・天候・速度・信号など)
- 実況見分や取調べで説明した内容に関する記憶のメモ
- 任意保険会社から届いた書面・担当者とのやり取りの記録
- 被害者側との連絡の記録(連絡の経緯・内容)
- 示談書案・謝罪文案(署名前のもの)
- 被害弁償や見舞金の支払記録
- 被害者のけがについて把握している情報(保険会社経由の治療状況など。被害者の診断書等は通常手元にありません)
- 運転免許証、過去の交通違反歴が分かるもの(運転記録証明書など)
- 勤務先の就業規則(懲戒・報告義務の規定)、業務で運転が必要なことが分かる資料
弁護士へ相談するタイミング
次のような場面では、手続が進む前の相談をおすすめします。相談によって結果が約束されるものではありませんが、資料を整理し、事故状況と法律上の論点、今後の手続の見通し、被害者対応の進め方を検討しやすくなります。
- 警察で本格的な取調べを受ける前、または説明した内容に不安があるとき
- 検察庁から呼出しを受けたとき(出頭前の整理が有益です)
- 略式手続の説明を受け、同意するかどうか迷っているとき
- 被害者への謝罪・連絡の方法が分からないとき、示談書や謝罪文を作成する前
- 飲酒・無免許・ひき逃げなどが問題となっているとき
- 家族が逮捕・勾留されたとき
- 正式裁判になる可能性を指摘されたとき
- 免許停止・免許取消しに関する通知が届いたとき
- 勤務先への報告や資格への影響を整理したいとき
よくある質問(FAQ)
Q1.初めての人身事故でも前科がつきますか。
不起訴処分となれば前科はつきません。一方、略式命令による罰金を含め、有罪の裁判が確定すれば初犯でも前科となります。どの処分になるかは事故態様や事後対応などによって異なります。
Q2.被害者のけがが軽ければ不起訴になりますか。
けがの程度は重要な考慮要素ですが、それだけで処分が決まるわけではありません。過失の内容、飲酒等の有無、賠償状況などを含めた総合判断であり、個別事情により結論は変わります。
Q3.示談が成立すれば不起訴になりますか。
示談や被害弁償は考慮され得る事情の1つですが、不起訴を保証するものではありません。示談の内容や時期によっても評価は異なるため、資料を確認したうえで検討する必要があります。
Q4.任意保険会社に任せていれば、刑事手続の対応も終わりますか。
保険会社が行うのは損害賠償という民事面の交渉が中心です。刑事手続における示談や宥恕の確認、取調べへの対応は別の問題として残る場合があります。両者を分けて確認することをおすすめします。
Q5.検察庁から呼出しが届きました。何を準備すればよいですか。
届いた書面の出頭先・日時・持参物を確認し、事故状況のメモ、保険や賠償の資料を整理しておくとよいでしょう。説明内容に不安がある場合は、出頭前に弁護士へ相談することで論点を整理できます。呼出しを無視することは避けてください。
Q6.罰金になった場合、免許停止も受けるのですか。
刑事処分と免許の行政処分は別の制度で、それぞれ行われます。点数によっては罰金とは別に免許停止・取消しがあり得ますし、不起訴でも行政処分が行われることがあります。
Q7.逮捕されずに手続が進むこともありますか。
在宅のまま捜査・処分が進む事件もあります。ただし在宅だから軽く済むという関係にはなく、呼出しへの対応や処分の見通しの検討が必要な点は同じです。身体拘束の有無は逃亡・証拠隠滅のおそれなどの個別事情によります。
まとめ
- 過失運転致死傷罪の法定刑は7年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です(無免許の場合は10年以下の拘禁刑に加重)。
- 処分には不起訴、略式命令による罰金、正式裁判があり、罰金でも前科となります。
- 統計上は起訴に至らない事件が多数ですが、一律の「相場」はなく、事故態様・事後対応などの総合判断です。
- 危険運転致死傷罪との区別は運転行為の態様によります。2026年7月21日施行の改正で数値基準が導入されました。
- 刑事処分・免許の行政処分・民事の損害賠償は別の制度で、別々に進みます。
- 被害者への直接連絡は慎重に検討し、保険会社や弁護士を通じた対応を基本にしてください。
- 検察庁からの呼出し、示談書への署名、意見の聴取の前が、相談の重要なタイミングです。
弁護士法人ひょうご あわじみらい法律会計事務所では、人身事故を起こしてしまった方やそのご家族からのご相談について、初回無料の法律相談(予約制)を実施しています(法テラスの扶助相談や弁護士費用特約を利用できる場合など、対象・条件の詳細は費用ページをご確認ください)。警察・検察庁から届いた書面、事故状況の資料、保険会社とのやり取りを確認しながら、刑事処分と行政処分の見通し、被害者対応の進め方を整理いただけます。
ご予約は、お電話(0799-53-6782・受付9時~20時)または相談予約フォームから承っています。
執筆者・監修者
藤井 貴之(ふじい たかゆき)
弁護士法人ひょうご あわじみらい法律会計事務所 代表弁護士・公認会計士
兵庫県弁護士会所属・日本公認会計士協会兵庫会所属
2012年(平成24年)司法試験合格、2013年弁護士登録。2020年(令和2年)公認会計士試験合格。兵庫県・山口県・東京都での実務経験を経て、2023年に淡路島(南あわじ市)で事務所を開設。刑事事件・交通事故をはじめ、相続・債務整理・労働問題などの個人のご相談から、企業法務・事業承継まで幅広く対応しています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案における処分や量刑の見通しは、事故の態様、被害の程度、事後の対応などによって異なります。
参考資料
- e-Gov法令検索「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(2026年7月確認)
- e-Gov法令検索「道路交通法」(2026年7月確認)
- e-Gov法令検索「道路交通法施行令」(2026年7月確認)
- 法務省「危険運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法)の法改正Q&A」(2026年7月確認)
- 法務省「令和7年版犯罪白書」(2026年7月確認)
- 検察庁「刑事事件の手続について」(2026年7月確認)
- 検察庁「略式裁判について」(2026年7月確認)
- 裁判所「検察官による起訴・不起訴の決定」(2026年7月確認)
- 兵庫県警察「運転免許」(2026年7月確認)

24時間365日受付