「不動産のことで相手方ともめているが、弁護士に相談するとき何を持って行けばよいのか分からない」「登記簿や公図を取ればよいと聞いたが、どこで、どう取るのか」「契約書が手元にないと相談できないのだろうか」。不動産のトラブルでは、確認すべき資料の種類が多く、名前も似ているため、準備の段階でつまずいてしまう方が少なくありません。
この記事では、不動産のトラブルや紛争について、相手方へ回答する前、契約書へ署名する前、示談や明渡しに応じる前、あるいは弁護士へ相談する前に、どのような資料を確認・準備しておくとよいかを、資料の種類別・トラブルの種類別に整理します。登記事項証明書や公図といった公的な資料だけでなく、契約書・通知書・写真・メールといった手元の資料の整理の仕方までを扱います。
先に大切な点をお伝えします。必要な資料はトラブルの種類によって異なり、すべての資料をそろえてからでなければ相談できない、というものではありません。むしろ、対象となる不動産・当事者・これまでの経緯・現在の手続の状況を、手元にある資料から整理しておくことが出発点になります。足りない資料は、相談後に優先順位をつけて取得できる場合もあります。個別の事情によって確認すべき資料や対応は変わりますので、迷う場面では早めにご相談ください。
「何を準備すればよいか分からない」という段階でも問題ありません。手元にある契約書・通知書・やり取りの記録を確認するだけでも、次に何を取得すべきかの見通しを整理しやすくなります。まずは取扱業務のページから、対応できる不動産トラブルの範囲をご確認ください。
Contents
まず結論|不動産トラブルで確認する資料の全体像
不動産トラブルで確認する資料は数多くありますが、目的で整理すると、次の6つの観点に分けて考えると分かりやすくなります。どのトラブルでも、この観点のいくつかにあてはまる資料を確認していくことになります。
| 観点 | 主な資料の例 |
|---|---|
| 対象の不動産を特定する | 登記事項証明書、公図・地図、地積測量図、建物図面・各階平面図、住宅地図 |
| 当事者の関係を確認する | 登記事項証明書(所有者・担保)、賃貸借契約書、相続関係の資料、法人の登記事項 |
| 契約の内容を確認する | 売買契約書、賃貸借契約書、重要事項説明書、物件状況報告書、管理規約 |
| トラブルの経緯を示す | 通知書、内容証明郵便、メール・LINE、写真・動画、やり取りのメモ |
| 損害や支払の状況を示す | 入金記録・賃料台帳、領収書、請求書、見積書、修繕履歴 |
| 期限や手続の状況を示す | 裁判所や行政からの書類、契約に定められた期限、催告書・解除通知 |
資料がすべてそろっていなくても、相談を始めることはできます。まずは、対象の不動産がどこか(所在地・地番・家屋番号)、誰と何をめぐって対立しているのか、これまでにどのようなやり取りがあったかを、手元の資料から整理しておくと、その後の確認や相談がスムーズになります。
不動産トラブルで最初に確認したい基本資料
トラブルの種類にかかわらず、まず手元にあるかを確認しておきたい基本的な資料です。ただし、すべてのトラブルでこれらが必須というわけではありません。手元にあるものから確認していけば十分です。
| 資料 | 確認したいこと |
|---|---|
| 登記事項証明書(登記簿) | 対象不動産の所在・地番・地目・地積・床面積、所有者、抵当権などの担保の有無。 |
| 契約書(売買・賃貸借など) | 当事者、対象物件、金額、期間、解除や違約に関する条項。 |
| 相手方とのやり取りの記録 | 通知書、内容証明郵便、メール、LINE等のメッセージ、通話や面談のメモ。 |
| 対象不動産の現況が分かるもの | 現地の写真・動画、住宅地図、位置や状況が分かるメモ。 |
| 時系列を整理したメモ | いつ、誰が、何をしたか。契約日、支払日、通知の日付、トラブルが起きた日など。 |
トラブルの種類別に確認したい資料
ここからは、代表的な不動産トラブルの種類ごとに、まず確認したい資料を整理します。あくまで一般的な整理であり、実際に必要となる資料は個別の事情によって異なります。手元にないものは、相談のなかで取得の要否や優先順位を検討できます。
| トラブルの種類 | まず確認したい資料 | 補助的に役立つ資料 | 特に確認したい点 |
|---|---|---|---|
| 賃料滞納・契約違反・建物明渡し | 賃貸借契約書、入金記録・賃料台帳、督促や催告の記録 | 連帯保証契約書、保証会社の契約書、登記事項証明書 | 滞納の開始時期・月数・合計額、解除条項、通知の到達 |
| 原状回復・敷金の精算 | 賃貸借契約書、重要事項説明書、入居時・退去時の写真 | 特約の記載、精算明細、見積書、修繕の請求書 | 敷金の額、原状回復の特約、通常損耗の範囲 |
| 不動産売買・契約不適合・説明不足 | 売買契約書、重要事項説明書、物件状況報告書、付帯設備表 | 広告・図面、写真、やり取りのメール、修補の見積書 | 引渡日、告知事項、契約不適合を知った時期 |
| 境界・越境・通行 | 登記事項証明書、公図・地図、地積測量図 | 境界標の写真、筆界確認書・境界確認書、測量成果、協議の記録 | 地番と現地の対応、境界標の有無、越境物の状況 |
| 共有不動産 | 登記事項証明書(共有者と持分)、対象不動産の資料 | 相続関係の資料、これまでの管理・利用の記録、固定資産の資料 | 共有者と持分割合、管理・利用の実態、費用負担 |
| 相続した不動産 | 登記事項証明書、固定資産税納税通知書・名寄帳 | 権利証(登記済証・登記識別情報)、遺産分割協議書、相続関係の資料 | 被相続人名義かどうか、不動産の所在・数、未登記の有無 |
| 建築・修繕・工事代金 | 請負契約書、見積書、設計図書・仕様書 | 検査記録、写真・動画、施工中のやり取り、請求書 | 工事の範囲、代金と支払時期、不具合の内容と時期 |
| 管理組合・区分所有 | 管理規約、総会・理事会の議事録、登記事項証明書 | 使用細則、通知書、費用の請求・入金記録 | 規約の定め、決議の内容、滞納や違反の状況 |
| 差押え・競売などの手続段階 | 裁判所・執行機関から届いた書類、登記事項証明書 | 契約書、通知書、これまでの経緯のメモ | 書類に記載された期限、手続の種類と現在の段階 |
この表は出発点を示すものです。たとえば同じ「境界」の問題でも、越境した建物の撤去を求める場面と、土地を売る前に境界を確定したい場面とでは、重点を置く資料が変わります。個別事情により結論は異なりますので、手元の資料を確認したうえで検討する必要があります。
「どの資料から手をつければよいか」「足りない資料をどう補えばよいか」を整理したい段階でも、ご相談いただけます。手元の資料を確認することで、優先して取得すべき資料や、相手方への対応の見通しを整理しやすくなります。
法務局で確認・取得する資料
不動産の所在・所有者・形状・境界などを確認するための資料の多くは、法務局(登記所)で取得します。ここでは代表的なものを、何が分かる資料か、どこで・誰が取得できるか、どのような限界があるかという観点で整理します。
登記事項証明書(登記簿)
登記事項証明書は、土地や建物の所在・地番・地目・地積・床面積といった物理的な状況(表題部)と、所有者や抵当権などの権利関係(権利部)を証明する書面です。不動産トラブルでは、対象不動産の特定と、所有者・担保の確認のために、まず取得したい資料です。
登記事項証明書は、その不動産の所有者でなくても、どなたでも請求できます。請求の際に、利害関係を証明したり、印鑑や身分証明書を用意したりする必要はありません。請求の方法は、次の3通りです。
- 登記所の窓口で交付請求書を提出する
- 交付請求書に収入印紙・返信用封筒を同封して郵送する
- オンライン(「登記・供託オンライン申請システム」の「かんたん証明書請求」など)で請求する
オンラインで請求した場合も、証明書は窓口での受取または郵送で受け取ります。オンライン請求の受付時間は、平日の午前8時30分から午後9時までです(法務省の案内による。詳細は最新の公式案内をご確認ください)。手数料の目安は、書面請求で1通600円、オンライン請求で郵送受取が520円、窓口受取が490円です(2026年7月時点。手数料は改定されることがあります)。
登記事項証明書には、証明する範囲によっていくつかの種類があります。一般的には、次のように理解されています(正確な区分・名称は請求時の様式でご確認ください)。
| 種類 | 主な内容 |
|---|---|
| 全部事項証明書 | 現に効力のある事項に加え、過去の抹消された履歴も含めて記載。 |
| 現在事項証明書 | 現に効力のある事項に絞って記載。 |
| 一部事項証明書 | 指定した一部の事項に絞って記載。 |
| 所有者事項証明書 | 所有者の氏名・住所などに絞って記載。 |
登記事項証明書と「登記情報提供サービス」の違い
インターネットで登記の内容を確認する方法として、「登記情報提供サービス」があります。これは登記所が保有する登記情報をパソコンなどの画面で確認できる有料サービスで、その場で最新の情報をPDFで確認できます。手数料も証明書より安く設定されています。
ただし、注意したい違いがあります。登記情報提供サービスで取得する登記情報には、登記事項証明書と異なり、証明文や公印などは付加されません。そのため、内容を確認する目的には使えますが、公的な証明書としての提出を求められる場面では、登記事項証明書が必要になることがあります。提出先が証明書を求めているのか、確認用の情報で足りるのかによって、使い分けることになります。
閉鎖事項証明書・閉鎖登記簿
登記の記録は、合筆や建物の滅失などによって「閉鎖」されることがあります。過去の所有者や土地の変遷をたどりたいときには、閉鎖された記録を確認します。ここで区別が必要なのは、コンピュータ化された後に閉鎖された記録(閉鎖事項証明書)と、コンピュータ化される前の紙の記録(閉鎖登記簿)です。
両者は取得方法が異なることがあり、特にコンピュータ化前の閉鎖登記簿は、オンラインや登記情報提供サービスでは取得できず、管轄する登記所での窓口・郵送に限られる場合があります。もっとも、記録の種類や閉鎖された時期、登記所ごとの電子化の状況によって取扱いが異なりますので、一律に「オンラインで取れない」と決めつけず、対象不動産を管轄する登記所に確認することをおすすめします。
公図・法第14条地図・地図に準ずる図面
土地の位置関係や形状、隣接する土地との関係を確認するための図面です。一般に「公図」と呼ばれますが、法務局に備え付けられている図面には、正確性の異なる2種類があります。
- 地図(不動産登記法第14条第1項の地図)…精度の高い測量に基づき作成され、土地の位置・形状・地番を比較的正確に表します。
- 地図に準ずる図面(いわゆる公図)…地図が備え付けられるまでの間に用いられる図面で、その多くは明治期に作成された旧土地台帳附属地図に由来します。位置や形状の概略は分かりますが、精度は地図に比べて限られます。
いずれも、地番や隣接関係、おおよその位置・形状を把握するのに役立ちます。ただし、公図や地図は、現地の境界を当然に確定する資料ではありません。土地によっては、境界(筆界)を表示せず地番だけを並べて記載しているものもあります。境界が問題になる場面では、次に説明する地積測量図や、現地の状況とあわせて確認することになります。
地積測量図
地積測量図は、一筆の土地の測量の結果を表した図面で、地積(面積)や求積の方法、境界点などが記載されます。分筆や地積更正などの際に作成され法務局に備え付けられますが、すべての土地に地積測量図があるとは限りません。また、作成された年代によって記載内容や精度が異なるため、古いものと新しいものを同じ前提で扱うことはできません。
地積測量図があっても、それだけで境界(筆界)や所有権の範囲が当然に確定するわけではありません。現地の測量、境界標の位置、隣接する土地の所有者との立会いや確認の記録などとあわせて検討する必要があります。
筆界と所有権界(境界の問題)
境界の話では、「筆界」と「所有権界」という2つの概念を区別しておくと理解が整理しやすくなります。筆界は、土地が登記されたときにその区画を構成するものとされた公法上の境界で、当事者の合意で自由に動かせるものではありません。これに対し所有権界は、実際に所有権が及ぶ範囲を指す私法上の境界です。両者は一致することが多いものの、一致しないこともあります。
筆界の位置に争いがある場合には、筆界特定登記官が筆界調査委員の意見を踏まえて筆界を明らかにする「筆界特定制度」(不動産登記法第123条以下)を利用できることがあります。境界の問題は個別性が高いため、この記事では概要にとどめます。隣地との関係については、次の関連コラムもあわせてご確認ください。
相隣関係(隣地使用権)に関するコラムを読む/相隣関係(囲繞地通行権)に関するコラムを読む
建物図面・各階平面図
建物図面は敷地のなかでの建物の位置を、各階平面図は建物の各階の形状や床面積を表す図面で、多くは一体で作成されます。建物の表題登記の際などに法務局へ提出されます。もっとも、建物によっては図面が備え付けられていないことや、増改築などにより現況と図面が一致していないことがあります。未登記の増築部分がある場合には、登記の内容と実際の建物がずれていないかを確認することが大切です。
登記申請書・添付書面(附属書類)の閲覧
過去の登記が、どのような書類に基づいて行われたのかを確認したい場面では、登記の申請書やその添付書面(附属書類)の閲覧を検討することがあります。ただし、これらは誰でも自由に見られるものではありません。
令和5年4月から、附属書類の閲覧請求の要件は、従来の「利害関係」から「正当な理由があること」に変わりました。自分が申請人であった登記の書類は理由を問わず閲覧できますが、第三者が閲覧するには、訴状の案や当事者の陳述書など、正当な理由を明らかにする具体的な資料が必要とされています。閲覧の可否や方法、写しの取得、撮影の可否などの取扱いは、事案や登記所によって異なりますので、実際に閲覧を検討する際は、あわせて確認しておくと安心です。
所有不動産記録証明書(令和8年2月開始)
被相続人が全国にどのような不動産を持っていたかを把握したい、といった場面のために、所有不動産記録証明制度が令和8年(2026年)2月に始まりました(不動産登記法第119条の2)。これは、特定の人が所有権の登記名義人として記録されている不動産を、登記官が一覧化して証明する制度です。
請求できるのは、原則として自分自身の名義の不動産について本人が請求する場合と、相続人その他の一般承継人が被相続人の名義について請求する場合です。相続した不動産の所在や数を把握しきれていないときに役立ちますが、いくつかの限界があります。氏名や住所をもとに検索する仕組みのため、住所変更の登記が済んでいない場合や表記のゆれ、同姓同名などにより、結果に反映されなかったり別人の不動産が含まれたりすることがあります。また、コンピュータ化されていない記録や、所有権の登記がない未登記の不動産は対象になりません。
所有不動産記録証明書は、名寄帳などと役割が似ていますが、名寄帳が市町村ごとに当該市町村内の資産をまとめるものであるのに対し、所有不動産記録証明書は登記記録を全国的に検索する点に違いがあります。もっとも、上記の限界があるため、「これだけで所有不動産をすべて把握できる」と考えるのは避け、名寄帳・固定資産税の課税明細・権利証などとあわせて確認する、補助的な手段として位置づけるのが安全です。
自治体や手元で確認する資料
法務局の資料に加えて、市役所などで取得する資料や、契約当事者の手元にある資料も、トラブルの内容によって重要になります。
固定資産評価証明書・公課証明書
固定資産評価証明書は、固定資産課税台帳に登録された評価額などを証明する書面です。公課証明書は、これに加えて課税標準額や税額まで記載されます。不動産の価値や課税の状況を確認する際に用いられます。
ここで注意したいのは、証明書に記載される固定資産税評価額は、課税のための評価額であり、市場で売買される価格(時価)とは異なるという点です。宅地の評価額は、地価公示価格などの一定割合を目安に定められており、実際の売却価格とは一致しないのが通常です。また、これらの証明書は課税台帳の記載を証明するものであって、所有権を最終的に証明する資料ではありません。
名寄帳・固定資産税納税通知書
名寄帳(固定資産課税台帳の名寄帳)は、同じ所有者がその市町村内に持つ固定資産を一覧にしたものです。相続した不動産の所在や数を把握したいときに役立ちます。ただし、名寄帳で確認できるのは、その市町村内にある資産に限られます。複数の市町村に不動産がある場合には、それぞれの市町村で確認する必要があります。固定資産税納税通知書は、毎年市町村から送られてくる通知で、課税されている不動産のおおまかな把握に役立ちます。
これらの証明書は、所有者本人のほか、同居の親族、相続人、借地人・借家人などの利害関係人、委任を受けた代理人が請求できます。請求の際には、本人確認書類や、相続人・代理人であることを示す資料、委任状などが必要になります。淡路島内でも、洲本市・南あわじ市・淡路市で必要書類や手数料の数え方が異なりますので、請求前に各市の最新の案内をご確認ください。手数料は各市とも1通あたりおおむね300円程度ですが、何件を1通として数えるかは市によって異なります。
| 市 | 確認できること |
|---|---|
| 南あわじ市 | 評価証明書・公課証明書・名寄帳の請求方法、必要書類、手数料。 |
| 洲本市 | 同上(案内の更新時期が他市より古いため、特に最新情報の確認を推奨)。 |
| 淡路市 | 同上(請求できる件数の数え方が独自に定められています)。 |
住宅地図・ブルーマップ
住宅地図や、住宅地図に地番を重ねた「ブルーマップ」は、住所と地番の対応を確認したり、現地の位置関係を把握したりするのに役立ちます。ただし、これらは民間の事業者が作成する資料であり、登記事項証明書や公図のような公的な資料ではありません。最新の状況と一致しないこともあります。あくまで補助的な確認のための資料として用います。
契約書・通知書・写真・メールなどの手元資料
公的な資料と同じくらい重要なのが、当事者の手元にある資料です。トラブルの経緯や当事者の認識を示す証拠として、次のようなものが役立ちます。
- 売買契約書、賃貸借契約書、請負契約書、重要事項説明書、物件状況報告書、付帯設備表
- 管理規約、総会・理事会の議事録
- 賃料の入金記録、領収書、請求書、見積書、修繕の履歴
- 内容証明郵便、催告書、解除通知、相手方から届いた通知書
- メール、LINEなどのメッセージ、録音、写真・動画、防犯カメラの映像
- 境界標の写真、筆界確認書・境界確認書、測量の成果、隣地所有者との協議の記録
- 相続関係を示す資料、遺産分割協議書、時系列を整理したメモ
資料を取得・確認するときの注意点
資料を集める際には、取得の仕方と保存の仕方の両方に注意しておくと、後の交渉や手続で役立ちます。
取得の際に確認したいこと
- その資料を請求できる立場か(本人・相続人・利害関係人・代理人など)を確認する
- 本人確認書類や委任状など、請求に必要なものを事前に確認する
- 手数料や、証明書か閲覧用の情報かの違いを確認する
- いつ時点の情報か(証明書の日付、評価の年度など)を確認する
証拠として保存する際の注意点
- 原本を処分せず、提出用のコピーと区別して保管する
- 写真・動画は、撮影日時・場所・対象が分かる形で残す
- メールやメッセージは、前後の文脈や送受信の日時・相手が分かる形で保存する(一部の画面だけを切り取らない)
- 録音は編集しない
- 相手方とのやり取りを時系列で整理しておく
- 期限が記載された通知書や裁判所からの書類は、早めに内容を確認する
証拠として使えるかどうか(証拠能力や評価)は、資料の内容や取得の経緯によって変わり、一般化して判断できるものではありません。集め方に迷う場合や、相手方に無断で取得した資料の扱いに不安がある場合は、実行の前後で確認しておくことをおすすめします。
資料がそろっていない場合の考え方
「資料が足りないから相談できない」と、対応を先送りにしてしまうのは避けたいところです。期限のある手続では、準備に時間をかけすぎることがかえって不利に働くこともあります。資料が不十分なときは、次のように進めると整理しやすくなります。
- 手元にある資料だけで、まず時系列のメモを作る
- 対象不動産の所在地・地番・家屋番号を、分かる範囲で書き出す
- 相談のなかで、取得すべき資料と、その優先順位を決める
また、次のような場面では、資料の集め方自体に工夫が必要になります。
- 相手方の資料しか手元にない場合…登記事項証明書のように誰でも取得できる資料から確認を始められます。
- 契約書を紛失している場合…相手方や仲介業者の控え、通帳の記録、やり取りのメールなど、契約内容を推認できる資料を探します。
- 不動産が登記されていない可能性がある場合…固定資産税の資料や現地の状況から確認を進めることがあります。
相談前・対応前チェックリスト
次のような行動に移る前には、いったん立ち止まって、関係する資料と内容を確認しておくと安全です。当てはまる項目がある場合は、実行する前に一度ご確認ください。
相手方へ回答・署名する前に
- 相手方へ回答・返信する前に、契約書やこれまでの経緯と矛盾がないかを確認したか
- 契約書・示談書・合意書に署名・押印する前に、内容と条件を確認したか
- 示談やその他の合意をする前に、金額・期限・条件を書面で確認したか
不動産の明渡し・工事などの前に
- 明渡しや退去に応じる前に、敷金の精算・原状回復の範囲・引渡しの条件を確認したか
- 解除通知を送る前に、契約の解除条項と、これまでの経緯を確認したか
- 工事や撤去を行う前に、費用の負担と、後日の争いに備えた記録の残し方を確認したか
期限のある対応の前に
- 裁判所や行政機関から届いた書類に、対応の期限が記載されていないかを確認したか
- 時効や申立ての期限が問題になり得る事情がないかを確認したか
期限や時効は、事案の種類や個別の事情によって扱いが大きく変わります。書類に日付や期限の記載がある場合や、時間の経過が気になる場合は、日数を自己判断で決めつけず、早めに確認することをおすすめします。
弁護士に相談するタイミング
資料がすべてそろっていなくても、相談すること自体に意味があります。相談は結果を保証するものではありませんが、手元の資料をもとに、次のような点を整理するための場になります。
- どの資料を優先して確認・取得すべきか
- 相手方の主張に対して、どのように対応するか
- 交渉や回答の前に、確認しておくべき事項は何か
- 証拠が不足している部分を、どのように補うか
- 交渉・調停・訴訟など、取り得る手続の選択肢
- 今後の対応の方針と、その順序
特に、相手方へ回答する前、契約書や示談書に署名する前、明渡しや工事に応じる前など、いったん動くと元に戻しにくい場面では、その前に資料を確認しておくことが、後の選択肢を広げることにつながります。
よくあるご質問(FAQ)
Q1.すべての資料をそろえてからでないと相談できませんか。
いいえ。必要な資料はトラブルの種類によって異なり、すべてそろえてからでなければ相談できないというものではありません。手元にある資料と、対象不動産・当事者・経緯の整理から始められます。足りない資料は、優先順位をつけて後から取得できる場合があります。
Q2.登記事項証明書は誰でも取得できますか。
はい。その不動産の所有者でなくても、どなたでも請求できます。請求の際に利害関係の証明や、印鑑・身分証明書は必要ありません。窓口・郵送・オンラインのいずれの方法でも取得できます。
Q3.登記事項証明書と、登記情報提供サービスの情報は何が違いますか。
登記情報提供サービスは画面上で登記情報を確認できる有料サービスで、その場で最新の情報を確認できますが、証明文や公印は付加されません。公的な証明書としての提出を求められる場面では、登記事項証明書が必要になることがあります。内容の確認用か、証明書が必要かで使い分けます。
Q4.公図と地積測量図は何が違いますか。
公図(地図に準ずる図面)は、位置関係や地番、おおよその形状を把握するための図面で、精度は限られます。地積測量図は、一筆の土地の測量結果を表した図面で、地積や境界点などが記載されます。ただし、すべての土地に地積測量図があるとは限りません。
Q5.公図や地積測量図があれば、境界は確定しますか。
これらの図面だけで境界(筆界)や所有権の範囲が当然に確定するわけではありません。現地の測量、境界標の位置、隣地所有者との立会いや確認の記録などとあわせて検討する必要があります。境界の問題は個別性が高く、結論は事案により異なります。
Q6.地番や家屋番号が分からない場合はどうすればよいですか。
住所(住居表示)と地番は異なることがあります。住宅地図に地番を重ねたブルーマップや、固定資産税の納税通知書・名寄帳、権利証などから地番・家屋番号を確認できる場合があります。分かる範囲で所在地を整理しておけば、相談のなかで特定を進められます。
Q7.名寄帳と所有不動産記録証明書は何が違いますか。
名寄帳は市町村ごとに、その市町村内の資産を一覧にするものです。所有不動産記録証明書(令和8年2月開始)は、登記記録を全国的に検索して一覧化するものです。ただし後者にも、住所変更未了や同姓同名、未登記不動産は対象外といった限界があるため、両者を含めて確認するのが安全です。
Q8.契約書を紛失していても相談できますか。
はい。契約書がなくても相談は可能です。相手方や仲介業者の控え、通帳の記録、やり取りのメールなど、契約内容を推認できる資料から確認を進められます。まずは手元にある資料を持参いただければ、次に取得すべき資料を整理できます。
まとめ
- 必要な資料はトラブルの種類によって異なり、すべてそろえてからでなくても相談できます。
- まずは、対象不動産の所在・当事者・経緯・現在の手続状況を、手元の資料から整理します。
- 登記事項証明書は誰でも取得でき、対象不動産の特定と所有者・担保の確認に役立ちます。
- 登記情報提供サービスの情報には証明文・公印が付かないため、証明書が必要な場面では登記事項証明書を用います。
- 公図・地図・地積測量図があっても、境界(筆界)や所有権の範囲が当然に確定するわけではありません。
- 固定資産税評価額は課税のための評価額で、市場価格とは異なります。
- 契約書・通知書・写真・メールなどの手元資料も、経緯を示す重要な資料です。原本を残し、時系列で整理しておきます。
- 相手方への回答・署名・明渡し・工事など、元に戻しにくい対応の前に、資料を確認しておくと安全です。
不動産のトラブルは、確認すべき資料が多く、名前も似ているため、どこから手をつけるか迷いやすい分野です。手元の資料を確認することで、優先して取得すべき資料や、相手方への対応の見通しを整理しやすくなります。相手方へ回答する前、署名や示談・明渡しに応じる前に、一度ご確認ください。初回の法律相談は無料です(予約制。対象や時間などの詳細は費用ページをご確認ください)。
執筆者・監修者
藤井 貴之(ふじい たかゆき)
弁護士法人ひょうご あわじみらい法律会計事務所 代表弁護士・公認会計士
兵庫県弁護士会所属・日本公認会計士協会兵庫会所属
2013年弁護士登録、2020年公認会計士試験合格。兵庫県・山口県・東京都での実務を経て、南あわじ市に事務所を開設。不動産の賃貸借トラブル、明渡し、境界、共有、相続した不動産など、不動産に関する相談に対応しています。

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