信号機のない交差点で四輪車同士が衝突した場合の過失割合は、一律には決まりません。まず車種、交差点の形、双方の進行方向を確かめ、一時停止の規制、法的な優先道路かどうか、道幅の明らかな違いを順に確認して基準となる事故類型を選びます。そのうえで、速度、見通し、事故を避けることができたかなどを検討します。「広い道だから優先道路」「先に入ったから過失はない」「T字路ならいつも同じ割合」という理解は、いずれも正確ではありません。
この記事では、保険会社から示された過失割合が事故の実情に合った基準によるものかを確かめたい方に向けて、優先関係と事故類型を分けて確認する手順、T字路の考え方、集めておきたい資料を整理します。実際の過失割合は、個別の事故の状況と資料によって異なります。
信号のない交差点の過失割合は何で決まるか
交通事故の損害賠償は、民法第709条などに基づいて請求されます。被害者にも過失があるときは、裁判所はこれを考慮して賠償額を定めることができ(民法第722条第2項)、過失割合はこの過失相殺の割合を示すものです。法律が事故の形ごとに具体的な数字を定めているわけではありません。
実務では、『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準〔全訂6版〕』(別冊判例タイムズ39。以下「認定基準」といいます)などを参照し、事故類型ごとの「基本割合」を出発点として、個別の事情による修正を検討します。ただし、基本割合は判断の目安です。過失の有無と程度は、事故の態様と当事者それぞれの具体的な落ち度から判断され、落ち度のない人に、表の数字だけを理由として過失が認められるわけではありません。「双方が走っていた以上、どちらにも過失がある」という説明も正確ではありません。
最初に車種・交差点形状・進行方向を確認する
過失割合の基準は、四輪車同士の事故か、自転車・二輪車・歩行者が関係する事故かによって異なります。同じ四輪車同士でも、十字路で直進車同士が衝突したのか、T字路で右折や左折をする車が関係したのかによって、使う基準が変わります。十字路の直進車同士の数字を、T字路で曲がる車にそのまま当てはめることはできません。
この記事では、信号機などによる交通整理が行われていない交差点での、四輪車同士の次の三つの場面を扱います。
- 十字路で、双方が直進していた場合
- T字路で、直線の道路(以下「直線路」といいます)を直進する車と、直線路に突き当たる道路(以下「突き当たり路」といいます)から直線路へ右折又は左折する車が衝突した場合
- T字路で、直線路から突き当たり路へ右折する車と、突き当たり路から直線路へ右折する車が衝突した場合
自転車・二輪車・歩行者が関係する事故、駐車場など道路外の施設から道路に出る車の事故、一方通行の逆走、環状交差点や変形した交差点での事故、十字路での右折車と直進車の事故、信号の表示が争われる事故には、この記事の数字を当てはめることはできません。黄色や赤色の点滅信号がある交差点も、点滅信号に応じた義務を別に検討するため、この記事の表をそのまま当てはめないでください。自転車や歩行者が関係する事故については、次の記事もご覧ください。
一時停止・優先道路・道幅を確認する分岐図
基準となる事故類型は、次の順序で確認すると整理しやすくなります。この分岐は、認定基準の事故図を写したものではなく、確認の順序を示したものです。どの段階の結果も判断の目安であり、数字が自動的に決まるわけではありません。
入口 この記事の類型に当たるか
- 四輪車同士の事故で、交通整理が行われていない交差点か
- 交差点の形と双方の進行方向が、前の項目で挙げた三つの場面のいずれかに当たるか
- T字路では、道路の関係が後で掲げる表と同じ向きか(突き当たり路のほうが広い場合、突き当たり路が優先道路である場合、直線路の側に一時停止の規制がある場合などは、向きが逆です)
いずれかに当たらない場合や、道路の関係が逆の場合は、この記事の表で割合を決めず、事故の形に合う基準を個別に検討します。表のAとBや数字を入れ替えて使うこともできません。
- 確認1 一時停止の規制の有無と、規制を受ける側を記録する
- 標識の位置、停止線の有無、どちらの道路の車が規制を受けるかを記録します。
- 規制がある場合でも、この段階では数字を決めません。規制のない側の道路が法的な優先道路であるとは限らないためです。
- 確認2 法的な優先道路に当たるか
- 当たる場合:優先性が明瞭かどうかと事故類型を確かめ、優先道路の基準などを検討します。優先性が明瞭でない場合は、一時停止の規制がある場合の基準に準じることもあります。一時停止の規制が併せて設けられていないかも確認します。
- 当たらない場合:確認3へ進みます。
- 確認3 一時停止の規制がどちらの道路にあるか
- 道幅が同じ程度の交差点で一方だけに規制がある場合や、狭い道路の側だけに規制がある場合:道幅の差だけによる基準ではなく、一時停止の規制がある場合の基準を検討します。
- 広い道路の側だけに規制がある場合や、双方に規制がある場合:個別に検討します。
- 規制がない場合:確認4へ進みます。
- 確認4 道幅に明らかな違いがあるか
- ある場合:広い道路と狭い道路の基準を検討します。幹線道路と路地のように、広い道路の優先性が特に顕著な場合は、優先道路の基準に準じることもあります。
- ない場合:同じ程度の道幅の基準を検討します。
- 確認5 選んだ類型の中で修正の要否を確認する
- 減速の有無、法定の徐行をしたか、見通しの状況、明らかな先入に当たるかなどを、資料に基づいて確かめます。
優先道路と道幅が広い道路の違い
道路交通法は、交通整理の行われていない交差点で、交差する道路が優先道路である場合や、交差する道路の幅が明らかに広い場合には、その道路を通行する車の進行を妨げてはならないと定めています(第36条第2項)。そのような交差点に入ろうとする車には、徐行の義務もあります(同条第3項)。
もっとも、「優先道路」と「明らかに広い道路(以下「広路」といいます)」は別の概念です。広い道路が当然に優先道路になるわけではなく、民事の過失割合でも基準が分かれています。また、法的な優先道路に当たるかという問題と、民事でどの基準を選ぶかという問題も、分けて考える必要があります。
中央線・車両通行帯が交差点内まで続いているか
法的な優先道路とは、道路標識等により優先道路として指定されている道路と、その交差点において道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている道路をいいます(道路交通法第36条第2項)。交差点の手前に中央線が引かれていても、交差点の中で途切れていれば、中央線を理由に優先道路と判断することはできません。国道や県道といった道路の名称、交通量の多さ、相手の道路に一時停止の標識があることだけでも決まりません。
中央線が交差点の中でかすれていたり、見えにくくなっていたりすることもあります。交差点の中と手前を分けて撮影した写真や映像で線の続き方や消え方を確かめ、それが交通規制としての中央線や車両通行帯に当たるかを、必要に応じて規制の資料でも確認します。線がはっきりしない場合に、写真1枚から優先道路かどうかを断定することは避けるべきです。
明らかな広狭差は車道の幅と見え方を確認する
「明らかに広い」かどうかについて、最高裁判所は、交差点の入口で徐行状態になるために必要な制動距離だけ手前の地点で、通常の自動車運転者が、道路の幅が客観的にかなり広いと一見して見分けられるかどうかを基準としています(最高裁判所第三小法廷昭和45年11月10日決定)。
歩道と車道の区別がある道路では、車道の幅で比べます。車道の幅が約9メートルと約7.9メートルの道路の交差点について、具体的な道路の状況を前提に、明らかな広狭差を否定した判例もあります(最高裁判所第二小法廷昭和47年1月21日判決。昭和46年改正前の道路交通法が適用された事件)。ただし、この判例は「差が1.1メートル以下なら常に同じ程度の道幅」という一般的な基準を示したものではありません。
何メートル違えば、又は何倍あれば広路になるという固定の数字はありません。車道の幅、歩道の有無、各進入方向からの見え方、運転者が幅の違いを一見して認識できる状況だったかを、資料で確かめます。なお、ここで挙げた判例は、いずれも道路交通法の解釈を示した刑事事件の判断で、民事の過失割合を直接定めたものではありません。
十字路で直進車同士が衝突した場合
十字路で四輪車同士がいずれも直進して出会い頭に衝突した場合、認定基準の代表的な基本割合は次のとおりです。AとBは表の中で定めていますので、ご自身がどちらに当たるかを確かめてお読みください。[ ]内は認定基準の図番号です。
| 道路の関係 | AとB | 基本割合(A:B) | 前提と注意点 |
|---|---|---|---|
| 同じ程度の道幅 [Ⅲ-4] |
A:相手から見て左方から来た車(左方車) B:相手から見て右方から来た車(右方車) |
40:60 | 双方が同程度の速度で、見通しのきかない交差点の場合です。減速の差や見通しで変わります。 |
| 一方が明らかに広い [Ⅲ-6] |
A:広い道路の車 B:狭い道路の車 |
30:70 | 双方が同程度の速度の場合です。狭い道路に一時停止の規制があれば、「一方に一時停止の規制」の基準を検討します。 |
| 一方に一時停止の規制 [Ⅲ-7] |
A:規制のない道路の車 B:規制のある道路の車 |
20:80 | 双方が同程度の速度の場合です。減速の差や、一時停止後の進入に当たるか(止まっただけでは足りません)で変わります。 |
| 一方が優先道路 [Ⅲ-8] |
A:優先道路の車 B:交差する道路の車 |
10:90 | 優先道路の車にも通常程度の前方不注視などがあることが前提です。優先性の明瞭さなどによる留保があります。 |
同幅員では左方優先と双方の減速状況を確認する
道幅が同じ程度で、どちらも優先道路でない交差点では、交差する道路を左方から進行してくる車の進行を妨げてはならないとされています(道路交通法第36条第1項)。ここでいう「左方」とは、相手の車の運転者から見て左側の道路から来るという意味で、地図の上での左側という意味ではありません。
認定基準では、この類型の基本割合が双方の減速の状況によって分けられています。ここでいう「減速」は、通常の速度や制限速度より明らかに速度を落とすことで、法定の「徐行」と同じ意味ではありません。衝突の直前に急ブレーキをかけただけでは減速に当たらず、「同程度の速度」には、双方が減速した場合と、双方が減速しなかった場合の両方が含まれます。
| 双方の速度の関係 | 基本割合(左方車A:右方車B) | 数字の読み方 |
|---|---|---|
| 同程度の速度 | 40:60 | 双方が減速した場合と、双方が減速しなかった場合を含みます。 |
| Aは減速せず、Bは減速 | 60:40 | 左方車Aの割合のほうが大きくなります。 |
| Aは減速し、Bは減速せず | 20:80 | 左方車Aの割合がさらに小さくなります。 |
この類型は、左右の見通しがきかない交差点(一方からだけ見通しがきかない場合を含みます)を前提としています。見通しのよい交差点などでは左方車の過失を10ポイント小さくする取扱いが示されており、双方が十分に減速して法定の徐行をし、交差点に入る直前に相手を認識できた場合も、同じように検討されます。「同じ道幅ならいつでも4対6」とはいえず、左方車が減速せず、右方車が減速した場合には、左方車A:右方車B=60:40と割合が逆転します。
広路・一時停止規制・優先道路では基準が異なる
一方の道路が明らかに広い場合、広い道路を直進する車A:狭い道路を直進する車Bの基本割合は、双方が同程度の速度なら30:70です。Aが減速せずBが減速した場合は40:60、Aが減速しBが減速しなかった場合は20:80とされ、ここでも減速の有無で割合が動きます([Ⅲ-6])。
狭い道路の側に一時停止の規制がある場合は、道幅の差による基準ではなく、一時停止の規制がある場合の基準を検討します。代表的な基本割合は、規制のない道路を直進する車A:規制のある道路を直進する車B=20:80(双方が同程度の速度の場合)ですが、減速の差や、一時停止後の進入に当たるか(止まっただけでは足りません)によって変わるため、一律の数字ではありません([Ⅲ-7])。
優先道路を直進する車A:交差する道路を直進する車Bの基本割合は、10:90とされています([Ⅲ-8])。ただし、これは優先道路の車にも通常程度の前方不注視などがあることを前提とした数字です。認定基準は、優先性が明瞭でない優先道路では一時停止の規制がある場合の基準に準じるのが相当な場合があること、反対に、幹線道路と路地のように広路の優先性が特に顕著な場合には優先道路の基準に準じるのが相当な場合があることも示しています。道路の名称や中央線があることだけで、10:90になると決めることはできません。
T字路は進行方向を重ねて別の基準を選ぶ
T字路であれば常に同じ割合になるわけではありません。また、T字路だからといって、直線路が当然に法的な優先道路になるわけでもありません。まず道路の関係(同じ程度の道幅か、直線路が広路か、突き当たり路に一時停止の規制があるか、直線路が優先道路か)を確かめ、そこに双方の進行方向を重ねて基準を選びます。認定基準では、直線路を直進する車と突き当たり路から右左折する車の組合せと、直線路から右折する車と突き当たり路から右折する車の組合せとで、別の基準が設けられています。
| 道路の関係 | 直線路を直進する車A 対 突き当たり路から右左折する車B |
直線路から右折する車A 対 突き当たり路から右折する車B |
|---|---|---|
| 同じ程度の道幅 | A30:B70 [Ⅲ-42] |
A40:B60 [Ⅲ-46] |
| 直線路が 明らかに広い |
A20:B80 [Ⅲ-43] |
A30:B70 [Ⅲ-47] |
| 突き当たり路に 一時停止の規制 |
A15:B85 [Ⅲ-44] 原則としてBの一時停止義務違反を想定 |
A25:B75 [Ⅲ-48] 原則としてBの一時停止義務違反を想定 |
| 直線路が 優先道路 |
A10:B90 [Ⅲ-45] 優先性の明瞭さなどの留保あり |
A20:B80 [Ⅲ-49] 優先性の明瞭さなどの留保あり |
表と道路の関係が逆になる事故(突き当たり路のほうが広い、突き当たり路が優先道路である、直線路の側に一時停止の規制があるなど)では、AとBや数字を入れ替えて使うことはできず、個別の検討が必要です。表に掲げた二つの組合せ以外の進行関係にも、表の数字は当てはめません。
直線道路を直進する車と突き当たり道路から右左折する車
直線路をそのまま直進する車Aと、突き当たり路から直線路へ右折又は左折して出てくる車Bの事故には、表の「直線路を直進する車A対突き当たり路から右左折する車B」の列の基準を検討します。道幅が同じ程度ならA30:B70で、直線路が広路である、突き当たり路に一時停止の規制がある、直線路が優先道路である、という道路の関係に応じて、Aの割合が小さくなります。
突き当たり路に一時停止の規制がある類型([Ⅲ-44])は、原則として、Bが一時停止の義務に違反した場合を想定しています。Bが停止線で止まって確認したうえで進入した場合でも、一時停止後の進入に当たるかは、後で説明する条件に照らして検討します。直線路が広く、狭い突き当たり路に一時停止の規制がある場合も、この類型を検討します。直線路が優先道路である類型([Ⅲ-45])でも、十字路の優先道路で述べた優先性の明瞭さなどの留保を踏まえる必要があります。
直線道路から右折する車と突き当たり道路から右折する車
直線路を走ってきて突き当たり路へ右折しようとする車Aと、突き当たり路から直線路へ右折して出ようとする車Bの事故は、直進車が関係する事故とは別の基準によります。表の「直線路から右折する車A対突き当たり路から右折する車B」の列のとおり、道幅が同じ程度ならA40:B60で、同じ道路の関係でも直進車の列とは数字が異なります。直進車の列の数字を、右折車同士の事故に使うことはできません。
ここでも、T字路の形だけで直線路が優先道路になるわけではありません。突き当たり路に一時停止の規制がある類型([Ⅲ-48])は、原則としてBの一時停止義務違反を想定しています。また、十字路の減速の有無による基本割合とT字路の数字を組み合わせて、割合を計算することもできません。
徐行・先入・一時停止後の進入で確認すること
「減速した」「先に入った」「一旦止まった」という事情は、それぞれ法律上の意味や認定基準での扱いが異なります。言葉の印象ではなく、条件を一つずつ確認します。
「徐行」は、車が直ちに停止できるような速度で進行することをいいます(道路交通法第2条第1項第20号)。優先道路や広路に入ろうとする側の車に徐行の義務があることは前に述べたとおりですが(第36条第3項)、左右の見通しがきかない交差点に入るときにも徐行の義務があります(第42条第1号)。この第42条第1号の義務は、条文上、優先道路を通行している場合には除かれます。他方、広路を通行しているだけでは除かれないとした判例があります(最高裁判所第二小法廷昭和63年4月28日決定。刑事事件で道路交通法の解釈を示したものです)。
優先道路を通行している車も、注意する義務がなくなるわけではありません。交差点に入るときは、交差道路を通行する車などに特に注意し、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならず(第36条第4項)、安全運転の義務もあります(第70条)。右折や左折をするときにも徐行の義務があり(第34条第1項・第2項)、優先道路から曲がる車について、第42条第1号の除外だけを理由に徐行が不要とはいえません。認定基準の「減速」と法定の「徐行」の違いは、十字路の同じ程度の道幅の項目で説明したとおりです。
先に入ったことや側面衝突だけでは決まらない
認定基準でいう「明らかな先入」は、交差点に少し先に入ったというだけでは足りません。双方の速度、衝突した地点や車の部位などを総合して、後から来た車が、先に入った車を認識し、制限速度の範囲内で適時に制動などをすれば容易に衝突を避けられた関係にあるかを検討します。相手の車の側面に衝突した、又は側面に衝突されたという事実だけで、どちらが先に入ったかは決まりません。
一時停止の規制がある類型(十字路の[Ⅲ-7]、T字路の[Ⅲ-44][Ⅲ-48])では、規制を受ける側の車が先に交差点に入ったことは、当然には有利な事情として扱われません。また、交差点の中ですでに止まっていた車に衝突した場合など、先入の程度が著しいときは、出会い頭の事故の類型そのものが適切でないことがあります。
一時停止後の進入と速度違反は事故時の条件で確認する
一時停止の指定がある場合、車は停止線の直前(停止線がないときは交差点の直前)で一時停止し、交差道路を通行する車の進行を妨げてはなりません(道路交通法第43条)。止まったという一点だけで、過失が小さく評価されるわけではありません。
認定基準が「一時停止後に進入した」場合として想定しているのは、停止して左右を確認し、相手の車が近づいていることも認めたものの、その速度や距離の判断を誤って低速で交差点に入り、減速しなかった相手と衝突した、といった態様です。停止した位置、確認の仕方、再発進後の速度、相手の速度を資料で確かめます。このような進入に当たる場合の基本割合は、十字路の直進車同士では規制のない道路の車A:規制のある道路の車B=40:60([Ⅲ-7])、T字路では直線路を直進する車A:突き当たり路から右左折する車B=30:70([Ⅲ-44])、直線路から右折する車A:突き当たり路から右折する車B=40:60([Ⅲ-48])とされ、類型ごとに異なります。
速度は、事故の日に適用される指定速度又は法定速度を基準に確認します(道路交通法第22条)。道路交通法施行令の改正により、令和8年(2026年)9月1日から、中央線や車両通行帯などがない一般道路では、自動車の法定速度が時速30キロメートルとされました。中央線や車両通行帯がある一般道路、道路の構造や柵などにより往復の方向別に分離された一般道路、自動車専用道路などはこの扱いの対象外で、標識などで最高速度が指定されている場合はその速度によります。住宅街かどうかや道幅だけで判断せず、同日より前の事故は事故当時の規定で考えます。なお、法定速度の区分で見る中央線の有無と、交差点の中の中央線などで判断する優先道路とは、別の判断です。
保険会社の提示割合を確認する資料と手順
示された過失割合に疑問があるときは、まず争いのある事実とそれを裏付ける資料を対応させ、そのうえで保険会社に、用いた基準と修正の理由を分けて確認します。
争点と証拠を対応させる
事故の直後は、負傷者の救護、安全の確保、警察への連絡を優先してください。そのうえで、ドライブレコーダーの映像は、上書きされる前に元のデータのまま保存し、編集や加工をしないでください。道幅を測るために車道に立ち入ったり、事故を再現するために走行したりすることは危険ですので、避けてください。
次の表は、ここまでの争点と、確認したい資料を一般的に対応させたものです。
| 争点 | 確認したい資料 | 注意点 |
|---|---|---|
| 優先道路の指定と 中央線などの標示 |
事故当時の道路の全体と、交差点の中と手前を分けて写した写真や映像。必要に応じて、警察や道路管理者への交通規制や補修の履歴の確認 | 線がかすれている場合などは、写真1枚から断定しないようにします。 |
| 道幅の広狭と 見通し |
車道と歩道を区別した現場の図面や計測の資料、各進入方向から写した写真 | 後日撮影した写真と事故当時の状態を区別します。車道上で自ら計測することは避けます。 |
| 減速・停止・先入 | 事故の前後を連続して記録したドライブレコーダーなどの元データ、停止した位置、衝突地点、車両の損傷の写真 | 映像の時刻のずれや、位置・速度を推定した前提を確認します。映像の印象だけで速度を断定しないようにします。 |
| 相手の説明との 食い違い |
保険会社の事故図や提示の書面、双方の説明の記録、実況見分調書などの刑事記録 | 刑事記録は、事件の段階などにより、取得できるかどうかや方法が異なります。 |
| 事故の基本事項 | 交通事故証明書(日時、場所、当事者などの確認) | 事故の原因や過失割合を証明する書面ではありません。甲・乙の欄の記載だけで割合を判断しないようにします。 |
映像の保存と、刑事記録の取得や読み方については、次の記事で説明しています。
図番号・基本割合・修正理由を分けて確認する
保険会社に説明を求めるときは、次の点を分けて確認すると、どこに食い違いがあるのかが分かりやすくなります。
- 用いた基準の書名、版、図番号(版が異なると、図番号や記載が異なることがあります)
- その図を選んだ理由となる道路の関係と、双方の進行方向
- 基本割合
- 採用した修正要素と、その裏付けとなる資料
- 相手方と言い分が食い違っている事実
反論するときは、希望する割合だけでなく、「どの事実の認定が違うのか」「どの類型を選ぶべきか」を資料とともに示します。同じ減速の不足などが、基本割合と修正要素の両方で重ねて評価されていないかも点検します。
また、過失割合について合意することと、示談全体で何を清算するかは、別に確認すべき事項です。話合いで解決しない場合には、弁護士による交渉のほか、ADR(裁判外紛争解決手続)、調停、訴訟などを検討することになります。いずれの方法でも、割合の変更や賠償額の増加が約束されるものではなく、資料に基づく検討が前提となります。手続の選び方は、示談交渉がまとまらない場合の手続で説明しています。
よくある質問
優先道路を走っていた側にも、必ず1割の過失がつくのですか。
当然にそうなるわけではありません。十字路で優先道路を直進する車A:交差する道路を直進する車B=10:90という基本割合は、優先道路の車にも通常程度の前方不注視などがあることを前提にした目安です。具体的な落ち度がなく、事故を避けられなかったことが資料から認められれば、過失がないと判断される余地があります。また、優先道路から右折する場合など、類型によって基本割合は異なります。
道幅が数十センチ広いだけでも「広い道路」になりますか。
何メートル、何倍違えば広い道路になるという一律の数字はありません。判例は、通常の運転者が道路の幅を客観的にかなり広いと一見して見分けられるかを基準としており、わずかな差がこれに当たるかは、車道の幅や各進入方向からの見え方を資料で確かめて判断します。
先に交差点に入った車が有利になるのですか。
少し先に入ったというだけでは、有利な事情になるとは限りません。後から来た車が容易に衝突を避けられた関係にあったかが問われ、一時停止の規制がある類型では、規制を受ける側が先に入ったことは当然には有利に扱われません。
一時停止をしてから交差点に入れば、過失はなくなりますか。
なくなるとは限りません。一時停止の指定がある場合は、停止するだけでなく、交差道路を通行する車の進行を妨げてはならないとされています(道路交通法第43条)。停止して確認したうえで進入したものの、相手の速度や距離の判断を誤ったといえる場合は、一時停止後の進入として別の基本割合が検討されますが、この記事で取り上げた類型では、その場合も規制のある側の基本割合のほうが大きくなっています。
過失割合に疑問がある場合の相談
保険会社から示された過失割合が、事故の形や道路の状況に合った基準によるものか分からない場合は、示談をする前に、資料をもとに一度確認することをおすすめします。相談の際は、次のものがあると、事故の類型や争点を整理しやすくなります。
- 事故の日時と場所(交差点の位置が分かる地図など)
- 双方の車種と進行方向(直進、右折、左折)
- 一時停止の標識、停止線、中央線などの状況が分かる写真
- ドライブレコーダーの映像(元のデータ)
- 双方の車両の損傷の写真
- 保険会社から示された過失割合と、その理由が分かる書面
- 示談案が届いている場合は、その書面
- ご自身の自動車保険の契約内容が分かる資料(保険証券など)
資料がすべてそろうまで相談を待つ必要はありません。保険会社から回答の期限を示されている場合や、時効などの期限が気になる場合は、早めにご相談ください。示談案が届いている場合に確認したい点は、示談案で確認すべき項目で整理しています。交通事故の相談でお受けする内容は、交通事故の取扱業務でご案内しています。
相談のご予約
相談方法・費用をご確認のうえ、相談予約フォームからお問い合わせください。フォームの送信は相談予約のお申込みであり、送信の時点で相談の日時が確定したり、事件のご依頼(受任)が成立したりするものではありません。
事務所・弁護士のご案内
弁護士法人ひょうご支所神戸みらい法律会計事務所(兵庫県弁護士会)は、神戸市営地下鉄西神・山手線の名谷駅から徒歩1分の事務所で、交通事故のご相談をお受けしています。所属する弁護士については、所属弁護士の紹介をご覧ください。
参考資料
- e-Gov法令検索「道路交通法」(昭和35年法律第105号)第2条第1項第20号、第22条、第34条第1項・第2項、第36条、第42条第1号、第43条、第70条
- e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号)第709条、第722条第2項
- 最高裁判所第三小法廷昭和45年11月10日決定(PDF)(昭和44年(あ)第878号・刑集24巻12号1603頁)
- 最高裁判所第二小法廷昭和47年1月21日判決(PDF)(昭和45年(あ)第1247号・刑集26巻1号36頁)
- 最高裁判所第二小法廷昭和63年4月28日決定(PDF)(昭和62年(あ)第644号・刑集42巻4号793頁)
- 警察庁「生活道路における自動車の法定速度が引き下げられます!!」
- 自動車安全運転センター「交通事故に関する証明書」
- 菊池憲久・堂薗幹一郎・伊東智和編『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準〔全訂6版〕』別冊判例タイムズ39(判例タイムズ社、2026年)はしがき、29~34頁、43~45頁、221~230頁、278~283頁
情報基準日:2026年10月10日(法令は同日に施行されている規定を確認しています)
この記事は一般的な情報の提供を目的とするもので、個別の事故の過失割合や解決の見通しを示すものではありません。

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