資金繰り悪化の兆候7つ|顧問弁護士に共有する資料と切替えの判断 |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|

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資金繰り悪化の兆候7つ|顧問弁護士に共有する資料と切替えの判断

「赤字ではないのに、預金が減っている」「売掛金の入金が遅れているが、給与と納付の期日は動かせない」「金融機関から追加資料を求められた」——。こうした変化は、決算で赤字が確定するより前、支払が実際に遅れるより前に現れます。
資金繰りには支払期日という動かせない期限があるため、気付くのが遅れるほど選べる手段が減ります。社内で数字を整え切ってから相談すると、その時間の分だけ選択肢も減ります。資料がそろっていない段階でも、分かっている事実と期限を先に共有することが実務上は有効です。

この記事では、中小企業の経営者、取締役、経理・財務責任者の方に向けて、資金繰りの変化を捉える7つの兆候を、何を確認し、どの資料を誰に共有し、どの判断に進むかという順序で整理します。既に顧問弁護士がいる会社を主に想定していますが、顧問弁護士がいない場合の相談準備にも使えます。個別事情により結論は異なりますので、資料を確認したうえで判断する必要があります。

この記事で分かること

  • 資金繰りの変化を捉える7つの兆候と、それぞれで確認する数値・通知
  • 顧問弁護士に共有する資料と、その資料が何の判断に使われるか
  • 利益・資金繰り・債務超過・支払不能という似て非なる四つの概念の区別
  • 通常の顧問対応から、事業再生の検討を含む対応へ切り替える三つの段階の考え方
  • 支払、資金移動、追加保証、資産売却、通知への回答について実行前に確認すべきこと

資金繰り表が未完成でも、直近の通帳、支払予定表及び借入金一覧があれば整理を始められます。相談予約フォームへ進むことでも、必要な資料の絞り込みから着手できます。

結論|7つの兆候と、特に対応を急ぐ事情

結論として、次の七つの変化のいずれかが見えた段階で、顧問弁護士と経理・会計の担当者に共有することをおすすめします。七つがそろうまで待つ必要はありませんし、該当した数によって結論が決まるものでもありません。重要なのは、支払期日までに残された時間と、資金調達や関係者との合意形成に必要な時間との対比です。

資金繰りの変化を捉える7つの兆候と、確認・共有・急ぐ事情の対応関係
兆候 確認する数値・通知 共有する資料 対応を急ぐ事情
1 使える手元資金の減少 支払へ充てられる現預金、期日別の最低残高、最初に不足する見込日と不足額 口座別残高一覧、預金明細、拘束の有無、支払予定表、資金繰り表 不足見込日が給与・納付・返済の期日と重なる。調達や合意に必要な日数より残り日数が短い
2 粗利益・本業の採算の悪化 粗利益額と粗利益率、固定費、営業損益、営業活動に伴う資金収支、案件別の採算 月次試算表、前年同月・予算との比較、原価・固定費の内訳、受注残と必要な支出 採算悪化が大口案件や主要取引先に集中し、契約条件の見直しを要する
3 売掛金の長期化・在庫の滞留 約定入金日と実績のずれ、遅延先への集中、滞留期間別の売掛金残高、在庫の増加 売掛金一覧(滞留期間別)、請求書、契約書、検収記録、交渉履歴、在庫台帳 相手方の資力に不安がある。担保・相殺・所有権留保の確認を要する
4 返済負担の増加・借換えの不透明化 据置期間の終了、一括返済日、金利と返済額の変化、更新期限、融資申込みの進捗 借入一覧、金銭消費貸借契約書、銀行取引約定書、返済予定表、担保・保証一覧 借換えや条件変更を前提に計画を組んでいるが、実行が確定していない
5 給与・租税公課・仕入代金の支払遅延 未払先、債務の種類、金額、期限、遅延期間、分納・猶予の申請や合意の状況 給与台帳、未払金一覧、納付書、督促状、請求書、合意書 督促状の指定期限が近い。猶予制度の申請期限(納期限から6か月以内)が迫る
6 条件厳格化・回収に関する通知 送付者、書類の正式名称、発行日、到達日、回答期限、支払期限、対象契約 通知書の原本と封筒、電子メールの送受信情報、対象契約書、交渉記録 回答期限・支払期限が定められている。裁判所から書類が送達された
7 個人資金・高コスト調達・臨時売却への依存 代表者からの借入れ、個人保証の追加、調達に要する費用、資産売却の頻度と金額 資金移動の明細、役員借入金・貸付金の内訳、調達契約書、保証契約書、売却条件 追加の個人保証を求められている。資産売却の決済日が近い

この七つは、記事を読みやすくするための編集上の分類であり、公的機関が定めた診断項目ではありません。該当した数で会社の状態が決まるわけではなく、逆に一件だけでも対応を急ぐ場合があります。特に、回答期限や支払期限が定められた通知、裁判所から送達された書類、直近の給与や重要な事業支出の資金が不足する見込みは、通常の定例報告を待たずに共有する必要があります。

先に区別する|赤字・債務超過・資金ショート・支払不能

この四つは、いずれも「経営が苦しい」ことを指すように見えますが、意味も、確認する資料も、法律上の位置付けも異なります。分けないまま議論すると、まだ検討できる選択肢を早く諦めたり、逆に既に対応が必要な事態を軽く見たりすることになります。

赤字・債務超過・資金ショート・支払不能の区別
概念 意味 主に確認する資料 留意点
赤字 一定期間の収益より費用が大きい状態(損益の問題) 損益計算書、月次試算表 赤字でも手元資金があれば支払は続けられる。逆に黒字でも資金が不足することがある
債務超過 資産より負債が大きい状態(貸借対照表上の問題) 貸借対照表、資産の評価資料 会計上の債務超過と、破産法第16条第1項が法人の開始原因として定める債務超過(財産をもって債務を完済することができない状態)は、評価の前提が異なり得る
資金ショート 支払に充てられる資金が期日に足りない状態(資金繰りの問題) 資金繰り表、預金明細、支払予定表 会計上の概念ではなく、期日ごとに判定する。一時的な不足と継続的な不足を分けて確認する
支払不能 破産法第2条第11項が定める法律上の状態。支払能力を欠くために、弁済期にある債務につき一般的かつ継続的に弁済することができない状態 資金繰りのほか、資産、信用、労務による支払能力全体 資金繰り表上の一時的な不足や、特定の支払の遅延と同じではない。破産法第15条第2項は、支払を停止したときは支払不能にあるものと推定すると定める

なお、民事再生法第21条第1項は、破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるときに再生手続開始の申立てができるとし、事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないときも同様と定めています。つまり、完全に資金が尽きるまで法的な再建手続を検討できない、という制度ではありません。もっとも、実際に利用できるかどうかは、事業の収益力、資金の裏付け、債権者の構成など個別の事情によって異なります。

資金繰りが深刻化する前に共有したい7つの兆候

ここからは、七つの兆候について、確認する数値・出来事読み取り方共有する資料対応を急ぐ事情判断上の注意の順に整理します。

兆候1 使える手元資金が減り、支払日までの余裕が縮まっている

確認する数値・出来事 帳簿上の預金残高ではなく、実際に支払へ充てられる現預金です。口座別の残高、入出金の予定、期日別に見たときの最低残高、最初に不足する見込日と不足額を確認します。

読み取り方 月末残高がプラスでも、給与日、納付期限、口座振替日、借入返済日が重なる月中に不足することがあります。審査中の融資や交渉中の資産売却を確定した資金として数えると、不足する時期を実態より遅く見積もることになります。

共有する資料 口座別残高一覧、預金明細、拘束預金や担保差入れの有無が分かる資料、支払予定表、資金繰り表。

対応を急ぐ事情 最初の不足見込日が給与、租税・社会保険料、借入返済の期日と重なる場合や、不足見込日までの残り日数が、資金調達や合意形成に必要な日数より短い場合です。

判断上の注意 資金繰り表上でマイナスの週が出ることと、破産法第2条第11項の支払不能に当たることは、別の事柄です。資金繰り表は事実を整理する資料であり、法律上の状態を確定するものではありません。

兆候2 売上があっても粗利益や本業の採算が悪化している

確認する数値・出来事 売上高だけでなく、粗利益額と粗利益率、固定費、営業損益、営業活動に伴う資金収支、部門別・主要案件別の採算を確認します。

読み取り方 前年同月及び予算と比較します。増収でも、粗利益率の低下や固定費の増加により本業から資金が流出し続けていることがあります。営業利益や、減価償却費を足し戻した利益(EBITDA)が黒字であることは、借入元本の返済や納税を賄えることを意味しません。減価償却費は現金支出を伴いませんが、元本返済と納税は現金支出です。

共有する資料 月次試算表、前年同月・予算との比較資料、原価と固定費の内訳、受注残とその履行に必要な支出が分かる資料。

対応を急ぐ事情 採算の悪化が特定の大口案件や主要取引先に集中している場合です。契約条件の見直し、単価改定の申入れ、解除や中途終了の可否は、契約書を確認したうえで判断します。

判断上の注意 会計上の損益と、支払に充てられる資金は別です。損益が改善しても、入金の時期が後ろにある限り、資金が不足する時期は動かないことがあります。

兆候3 売掛金の回収が長期化し、在庫や仕掛品に資金が滞留している

確認する数値・出来事 約定した入金日と実績とのずれ、遅延先への残高の集中、滞留期間別に区分した売掛金残高、在庫と仕掛品の増加、買掛金の支払条件との不均衡を確認します。

読み取り方 売上を計上した時期と、現金として回収できる時期を分けて見ます。在庫も、帳簿価額と実際に換金できる金額は別です。季節要因や受注増に伴う一時的な増加と、回収が滞っている状態とは区別してください。

共有する資料 売掛金一覧(滞留期間別)、請求書、契約書、検収記録、入金交渉の履歴、在庫台帳。

対応を急ぐ事情 主要取引先の支払遅延が続いている場合です。相手方の資力に起因するものであれば、時間の経過とともに回収可能性が下がるため、担保、相殺、所有権留保の有無を先に確認します。

判断上の注意 将来の回収を無条件に確実なものとして扱わないでください。回収の見込みが不確実な売掛金を確定入金として資金繰り表に入れると、不足の時期を見誤ります。

兆候4 返済負担が増え、借換えや融資更新の見通しが不透明になっている

確認する数値・出来事 借入金の返済予定、据置期間の終了時期、一括返済日、金利と毎月返済額の変化、更新期限、未使用枠の利用条件、融資申込みの進捗を確認します。

読み取り方 据置期間の終了により返済額が増える時期を先に把握します。金融機関からの追加資料の求め、条件変更の打診、借換えの見送りといった連絡は、資金計画の前提が変わった合図として扱ってください。

共有する資料 借入一覧、金銭消費貸借契約書、銀行取引約定書、返済予定表、担保・保証一覧、金融機関とのやり取りの記録。

対応を急ぐ事情 借換えや条件変更を前提に資金計画を組んでいるにもかかわらず、その実行が確定していない場合です。

判断上の注意 返済条件の変更(リスケジュール)は返済の時期や金額を組み替えるものであって、元本の免除とは異なります。金融機関の同意と条件の確認が必要です。独立行政法人中小企業基盤整備機構の解説でも、返済期間の延長により毎月の返済額が減っても総返済額が増える場合があること、構造的な赤字がある場合には追加融資のみでは解決にならないことが指摘されています。

兆候5 給与、税金・社会保険料、仕入代金等の支払が遅れ、又は遅れる見込みがある

確認する数値・出来事 未払先、債務の種類、金額、期限、遅延している期間、分納や猶予の申請・合意の状況を整理します。

読み取り方 既に延滞している場合と、次回の支払が難しい見込みである場合は分けて扱ってください。取り得る手段も残された時間も異なります。金融機関との返済条件の変更と、租税・社会保険料の猶予は窓口も制度も別で、銀行が同意しても税や社会保険料が猶予されるわけではありません。

共有する資料 給与台帳、未払金一覧、納付書、督促状、請求書、合意書。

対応を急ぐ事情 国税については、換価の猶予(国税徴収法第151条の2第1項)の申請期限が、納期限から6か月以内と定められています。厚生年金保険料等についても、日本年金機構は、納期限から6か月以内に申請することで換価の猶予を受けられる場合があると案内しています。厚生年金保険料等を滞納したまま督促状の指定期限を経過すると、国税滞納処分の例による処分が行われることがあります(厚生年金保険法第86条第5項、第89条)。滞納してから相談するのでは、選べる手段が狭まります

判断上の注意 給与、租税・社会保険料、一般の取引債務を同列に扱わないでください。たとえば民事再生法第122条は、一般の先取特権その他一般の優先権がある債権(共益債権であるものを除く。)を一般優先債権とし、再生手続によらないで随時弁済すると定めています。税金や給与を、通常の再生債権と同じ割合で減額できると説明することはできません。猶予の申請中と、許可や合意が成立した後も分けて考える必要があります。

租税・社会保険料の滞納が先行している場合の考え方は、消費税・社会保険料が払えないときの対応を確認することでも整理できます。

兆候6 金融機関・取引先から条件厳格化や回収に関する通知が届いている

確認する数値・出来事 現金前払いへの変更、与信枠の縮小、取引停止や契約解除の予告、期限の利益の喪失に関する通知、保証債務の履行請求、裁判所からの書類、差押えなどです。いずれについても、送付者、書類の正式名称、発行日、到達日、回答期限、支払期限、対象となる契約を確認します。

読み取り方 単なる協議の申入れと、法的な効果を伴う通知は別です。差押えの予告と実際の差押命令も別であり、同じ期限や効果を当てはめないでください。なお期限の利益とは、期限が来るまでは支払わなくてよいという債務者側の利益をいい、これを失うと残額の一括請求につながります。喪失事由は契約ごとに定められているため、契約書の確認が必要です。

共有する資料 通知書の原本に加え、封筒(消印や受領日が分かるもの)も保存してください。電子メールで届いた場合は、本文だけでなく送受信の日時が分かる形で保存します。あわせて対象契約書と、これまでの交渉記録を共有します。

対応を急ぐ事情 回答期限や支払期限が定められている通知、裁判所から送達された書類は、期限を過ぎると取り得る手段が変わります。裁判所からの書類への初動は、訴状・支払督促が届いたときの初動と期限を確認することでも整理できます。

判断上の注意 通知が一件だけであっても、内容によっては直ちに対応が必要です。逆に、複数の通知が届いていることだけで法的整理が決まるわけでもありません。回答の内容と時期は、契約と資料を確認したうえで判断する必要があります。

兆候7 社長の個人資金、高コストの調達、臨時の資産売却に依存している

確認する数値・出来事 代表者からの借入れ、個人保証の追加、ファクタリングなどの調達に要する費用、資産売却による一時的な収入の頻度と金額、その後の事業への影響を確認します。

読み取り方 一回限りの対応か、反復しているかを見ます。反復している場合は、その間に採算が改善しているか、将来の入金を先に受け取ってしまっていないか、契約条件がどうなっているかを確認します。代表者による資金の投入やファクタリングの利用そのものが違法であるとか、倒産の証拠であるということはありません

共有する資料 資金移動の明細、役員借入金・役員貸付金の内訳、調達契約書、保証契約書、売却条件が分かる資料。

対応を急ぐ事情 追加の個人保証を求められている場合や、資産売却の決済日が近い場合は、署名や実行の前に確認してください。会社と代表者個人とでは、債務も財産も保証も別に整理する必要があります。

判断上の注意 特定の債権者への弁済、追加担保の提供、関係者への資金の移転、廉価での売却は、時期、目的、相手方の認識、取引の内容などにより、後の手続で否認の対象となり得ます(破産法第160条から第162条まで)。債権者による詐害行為取消請求(民法第424条)の問題となることもあります。もっとも、これらは要件が定められた制度であり、事業継続のための支払や処分がすべて問題になるわけでもありません。親族や関係会社への資金移転、役員借入金の優先的な返済を先に行わないでください。個人保証の整理については、経営者保証に関するガイドラインと代表者保証の整理を確認することもできます。

七つを判断する前提としての、社内の情報整備

次のような状態は、八つ目の兆候ではなく、七つの兆候を判断するための情報が整っていないという問題です。優先して手当てすることで、他の兆候の把握が速くなります。

  • 月次試算表の完成が翌月の後半以降になっており、判断に使える時期に間に合っていない
  • 預金残高と帳簿残高が一致せず、差異の理由を説明できない
  • 未払金、未払費用、未納の租税公課の全体像を把握できていない
  • 入出金の予定を特定の担当者しか把握しておらず、確認できる人が限られている
  • 金融機関や取引先とのやり取りが個人の記憶や個人の端末にとどまり、記録として残っていない

数値の読み方|期日別に確認し、二重計上と計上漏れを避ける

「手元資金が月商の何か月分を下回ったら危険」「自己資本比率が何%を下回ったら危険」といった一律の危険ラインは、本記事では示しません。業種、季節性、入出金の周期、資金調達の条件、最低限必要な運転資金によって、必要な水準は異なるためです。重視すべきは、過去の実績や計画との差と、支払期日との対応関係です。

最も基本となる関係

資金の見通しは、次の関係で確認します。

  • 期末の利用可能資金見込み = 期首の利用可能資金 + 期間中の入金予定 - 期間中の支払予定
  • 入金と支払の予定は期日別に確認し、月末だけでなく月中・週中の不足も確認する
  • 営業に伴う収支、設備投資等に伴う収支、借入れ・返済等の財務収支を区別する

減価償却費を現金支出として重ねて計上しないこと、借入元本の返済や税金の支払を落とさないことが、実務上よく生じる誤りへの備えになります。

二重計上と重複計上を避ける

  • 利用可能資金から除外した拘束額を、再び支出として計上しない(二重控除を避ける)
  • 売掛金と、ファクタリング等で既に資金化した債権を重ねて計上しない
  • 借入枠と、調達予定額を重ねて計上しない
  • 未承認の融資、未確定のスポンサー出資、補助金、資産売却は、確定入金と分けて示す。補助金の採択は入金ではありません
  • 資産売却は、売却額の全額を使えるとは限らない。担保解除に伴う返済や費用、入金の時期を確認する
  • 借入先の金融機関にある預金も、借入れがあるという理由だけで一律に利用不能とはせず、相殺や差押えなど具体的な事情を確認する

予測残高がマイナスとなる場合は、不足額として示し、資金手当てができたものとして扱わないでください。あわせて、予測期間の外にある大型の返済や納税も、別途把握しておきます。

週単位で見通す方法と、資金繰り表の項目

短期の資金を管理する方法の一つとして、今後13週程度を週単位で見通し、直近は日単位、さらに先は月単位で確認するという進め方があります。これは任意の管理方法の一例であり、法定の期間でも、制度の必須要件でも、倒産を判定する期間でもありません。事業の支払周期に応じて調整してください。

資金繰り表で整理する主な項目と確認元の資料
区分 主な項目 主な確認元
期首残高 口座別の利用可能残高(拘束分を除く)、手元現金 預金明細、残高証明、担保・拘束の有無が分かる資料
営業に伴う収入 現金売上、売掛金の回収、手形・電子記録債権の決済入金、その他入金 売掛金一覧、契約書、請求書、入金サイトの取決め
営業に伴う支出 仕入代金、外注費、人件費、経費、家賃・リース料、租税公課、社会保険料 買掛金・未払金一覧、給与台帳、納付書、契約書
設備等の収支 設備の取得支出、資産売却による収入 稟議書、売買契約書、担保設定の状況
財務収支 借入実行、元本返済、利息の支払 返済予定表、金銭消費貸借契約書、融資申込みの進捗
期末残高 期末の利用可能資金見込み、不足額 上記の集計。不足はマイナスのまま示す

税込みか税抜きか、単位、対象期間、実績と予測の区別は、表全体で統一してください。また、支払猶予の希望を、既に成立した合意として予測に反映しないことが重要です。

下振れした場合の確認

通常の見込みに加えて、主要取引先の入金が一定期間遅れた場合、借換えが成立しなかった場合を想定し、そのときの不足日と不足額を確認します。前提を一つずつ外して再計算するだけでも、どの前提が資金繰りを支えているのかが分かります。

通常の顧問対応から、事業再生の検討を含む対応へ切り替える判断

ここでいう切替えとは、既存の顧問弁護士を交代させることでも、直ちに破産や民事再生を申し立てることでもありません。財務情報の把握、資金管理、金融債務・契約・保証の整理、関係者との調整、手続の選択までを含む体制へ、対応の範囲を広げることです。

対応を検討するための三つの段階(判定点数や一律の資金残存日数は設けていません)
段階 当てはまる状況 最初の行動 共有する資料
早期共有 支払は継続できているが、残高、採算、回収、借入条件のいずれかに変化がある 顧問弁護士と経理・会計の担当者へ共有し、資金の見通しと契約上のリスクを確認する 直近の預金明細、支払予定表、借入一覧、月次試算表
事業再生の検討を含む対応 通常の営業収入と確定した調達では支払に不足が生じる見込みがあり、返済条件の変更、複数の債権者との調整、スポンサーの検討などが必要になる 資金繰りの更新頻度を上げ、担当体制と選択肢を整理する。委任範囲と費用を確認する 上記に加え、資金繰り表、決算書・申告書、担保・保証一覧、主要契約、金融機関との交渉記録
緊急の対応判断 直近の給与や重要な事業支出を賄えない、取引停止が迫っている、期限の利益の喪失・差押え・裁判所からの書類への対応が必要である 定例報告を待たず、具体的な期日と資料を共有する。資金管理と法的対応を並行して検討する 上記に加え、通知書の原本と封筒、督促状、裁判所からの書類、直近の入出金明細

顧問契約の範囲、担当体制、利益相反、費用を先に確認する

通常の顧問相談に、債務整理、複数の金融機関との調整、事業計画の検証、裁判所への申立てが当然に含まれているとは限りません。切り替える際には、委任の範囲、担当する体制、利益相反の有無、追加の費用、連携先を確認してください。顧問契約で何を依頼できるかは顧問弁護士に相談できることを確認することで、当事務所の顧問業務の内容は法律顧問の取扱業務を確認することで、それぞれご確認いただけます。

また、会社の代理人が、代表者個人や保証人の利益を当然に同時に代表できるとは限りません。会社と代表者個人とで利害が対立し得る場面では、別に相談の機会を設ける必要があるかを確認してください。取締役の責任についても、業績が悪化したという事実だけで直ちに認められるものではなく、個別の判断が必要です。

公的な支援機関の役割

中小企業活性化協議会は、すべての都道府県に設置され、商工会議所等が運営する公的な機関です。中小企業庁は、収益力改善支援、再生支援、再チャレンジ支援の三つの支援を行うものとし、「相談は無料です」「相談内容はもちろん、相談申込みについても秘密は厳守」と案内しています。兵庫県中小企業活性化協議会は、自らを「国が設置する公正中立な機関」と説明したうえで、「当協議会では、融資および融資のあっせんは行っていません」と明示しています。したがって、支援機関は資金を供給する制度ではなく会社の代理人である弁護士と同じ立場でもありません。どの局面でどの機関を使うかは、債権者の構成や必要な調整の内容によって異なります。

再生の見通しを検討するときの材料

事業再生の見通しは、次のような事情を踏まえて検討します。数値の一つで決まるものではありません。

  • 事業自体の収益力と、改善の可能性(どの費用を、いつまでに、どれだけ動かせるか)
  • 計画の実現可能性と、計画に必要な運転資金の裏付け
  • 関係者との調整に要する時間と、支払期日までに残された時間との対比
  • 債権者の構成、主要債権者の協力の見通し
  • 担保の設定状況と、経営者保証の有無・内容
  • 事業を第三者へ承継する場合の事業価値

私的整理による再建の枠組みとしては、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」に基づく手続があり、再生型と廃業型が区別されています。同ガイドラインの内容は、中小企業の事業再生等に関するガイドラインによる私的整理を確認することで確認できます。なお、相談、受任通知の発送、私的整理の申入れ、民事再生の申立てのいずれについても、それだけで全債権者の回収や差押えが一律・自動的に止まるものではありません。担保権については、民事再生法第53条が、再生手続開始時に存する担保権を有する者は別除権を有し、別除権は再生手続によらないで行使することができると定めています。

再生だけを前提にしない

借入金の返済を減らしても本業からの資金流出が止まらない場合や、再生に必要な資金の裏付けがない場合には、再生だけを前提とすることはできません。事業譲渡や、事業の終了・法人破産を並行して検討する必要がある局面もあります。どちらが適切かは、事業の収益力、資金の残り時間、債権者の構成、雇用や取引先への影響によって変わります。判断の枠組みは会社の破産か再建かの見極め方を確認することで確認できます。手続の内容は法人破産・事業者破産の取扱業務を確認することでご確認いただけます。

なお、事業を別の会社へ移せば債務を自由に切り離せる、という説明は正確ではありません。事業譲渡やスポンサーによる再生は、契約の承継、担保、労働関係、許認可、会社法上の手続の検討を伴います。

資金不足が見込まれる時期は資料から計算できますが、そこから逆算する社内の判断時期は、債権者の構成、担保と保証の状況、主要契約、従業員数によって変わります。資料を確認したうえで、検討し得る選択肢、方針を切り替える条件、実行前に確認が必要な支払や資産処分を整理することができます。

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対応の前に確認が必要なこと

資金が不足しそうな局面では、支払、資金移動、追加の保証、資産の売却、通知への回答について、実行してしまうと元に戻せない事柄が増えます。次の点は、実行の前に確認してください。

  • 一律の支払優先順位表は作れません。倒産手続上の優先性と、手続前に個別の支払を行うことの適否は、別に検討する必要があります
  • すべての支払を一律に止めることも、指示できません。事業の継続、雇用、信用に直結するため、継続する支払の要否を含めて確認が必要です
  • 預金の引出し、口座間の移動、現金化を一律に行わないでください。相殺や差押えの可能性は、契約と個別の事情によって異なります
  • 追加の個人保証、追加担保の差入れ、資産の売却は、署名や実行の前に確認してください。後の手続における評価が変わり得ます
  • 通知への回答は、事実関係と期限を確認してから行ってください。口頭での約束と書面の内容が食い違うと、後の交渉が難しくなります
  • 帳簿、通帳、契約書、メールは保存してください。会社財産の隠匿、帳簿の改変、日付の遡及、架空取引、債権者からの回収を免れるための資産移転は、いずれも行ってはなりません
  • 入出金、交渉、取締役会等の判断の経過を記録してください。誰が、いつ、何を前提に決めたのかを残しておくことが、後の説明の食い違いを防ぎます

弁護士へ共有する資料と、最初の連絡で伝えること

最初の連絡で伝える内容

資料がすべてそろうまで相談を待つ必要はありません。最初の連絡では、次の点が分かれば、確認すべき資料を絞り込むことができます。

  • 会社の概要と、ご相談者の立場(代表者、取締役、経理・財務の責任者など)
  • 具体的な支払期限(給与日、納付期限、返済日、決済日など)
  • 把握できている資金不足の見込み(時期と、おおよその金額)
  • 届いている通知の種類と、その回答期限・支払期限
  • 既存の顧問弁護士や顧問税理士の有無

初回のお問い合わせの段階で、決算書や総勘定元帳などの機密資料を一括して送付いただく必要はありません。相手方となり得る取引先や金融機関の名称を確認したうえで、資料の提出先と方法を個別にご案内します。

面談・検討のためにご用意いただく資料

面談・検討用の資料と、その資料を用いる判断
資料 何の判断に使うか
口座別残高と入出金明細、資金繰り表 支払に充てられる資金の確定、不足する時期と金額の特定
直近の決算書・申告書、月次試算表 採算の状況、資産と負債の状況、損益と資金の乖離の把握
借入・返済・担保・保証の一覧 返済負担の見通し、条件変更の可否、経営者保証の影響の確認
売掛金の入金予定と滞留状況 入金見込みの確度の区分、回収手段と時期の検討
買掛金・未払金・給与・租税公課・社会保険料の一覧 債務の性質ごとの取扱いの整理、猶予制度の申請期限の確認
主要契約(賃貸借、リース、取引基本契約、業務委託等) 期限の利益の喪失事由、解除事由、担保・所有権留保の有無の確認
通知書、督促状、裁判所からの書類 回答期限と法的効果の確認、対応の優先順位の決定
金融機関との交渉記録 これまでの経緯の把握、説明内容の一貫性の確保
役員・関係会社との資金取引の内訳 会社と個人・関係会社の資金関係の整理、後の手続での評価の確認

共有を続けるための社内の運用例

次のような運用は、いずれも一般的な提案であり、法律上の義務ではありません。自社の体制に合わせて取捨選択してください。

  • 社内の担当者と、内容を確認する責任者を決めておく
  • 会計データと銀行の入出金明細を定期的に照合する
  • 資金繰り表について、予測と実績の差を更新し、差が出た理由を記録する
  • 通知や督促は、受領日とあわせて保存する
  • 金融機関や取引先への説明を行う担当者を決め、説明内容をそろえる

よくある質問

黒字でも相談したほうがよいのでしょうか。

損益が黒字であることと、支払に充てられる資金があることは別です。売掛金の回収が入金より先に計上されている場合や、借入元本の返済と納税が重なる場合には、黒字でも資金が不足することがあります。預金残高の推移、入金の遅れ、借入条件の変化のいずれかに気付いた段階でご相談いただければ、確認すべき資料を絞り込むことができます。

七つの兆候のうち、いくつ当てはまったら相談すべきですか。

該当した数で判断する基準はありません。七つは記事上の整理であり、公的な診断項目ではないためです。回答期限のある通知が一件届いただけでも急ぐ場合がありますし、複数が当てはまっていても直ちに法的整理が決まるわけではありません。判断の基準となるのは、支払期日までに残された時間と、資金調達や合意形成に必要な時間との対比です。

まず何の資料を用意すればよいですか。

直近の預金明細、支払予定表、借入金一覧の三点があれば、資金が不足する見込みの時期について見当を付け、次に確認すべき資料を絞り込むことができます。資金繰り表や試算表が未完成でも差し支えありません。初回のお問い合わせで機密資料を一括して送付いただく必要はなく、提出先と方法は個別にご案内します。

返済条件の変更(リスケジュール)だけで解決しますか。

返済の時期や金額を組み替えるものであり、元本が免除されるわけではありません。金融機関の同意と条件の確認が必要です。返済期間を延ばすことで毎月の負担は軽くなっても、総返済額が増える場合があります。本業から資金が流出し続けている場合には、返済負担の軽減だけでは資金不足の時期が動かないことがあり、採算そのものの見直しと並行して検討する必要があります。

税金や社会保険料も、金融機関と一緒に減額・猶予できますか。

窓口も制度も別です。国税には換価の猶予(国税徴収法第151条の2第1項)や納税の猶予(国税通則法第46条)があり、換価の猶予の申請は納期限から6か月以内とされています。厚生年金保険料等についても、日本年金機構が納期限から6か月以内の申請による換価の猶予を案内しています。地方税は各自治体の窓口となります。金融機関が返済条件の変更に応じたからといって、これらの支払が猶予されるわけではありません。申請中であることと、許可や合意が成立したことも別に扱う必要があります。

事業再生の検討に切り替えると、顧問弁護士を変更することになりますか。

当然に変更となるものではありません。ここでいう切替えは、財務情報の把握、資金管理、金融債務・契約・保証の整理、関係者との調整、手続の選択までを含む体制へ対応の範囲を広げることを指します。実際には、委任の範囲、担当する体制、利益相反の有無、追加の費用、連携先を確認したうえで、既存の顧問弁護士と役割を分担する形も、体制を組み替える形もあり得ます。

社長個人の資金を入れることや、個人保証を追加することは、どう判断すればよいですか。

資金を投入すること自体が問題となるわけではありません。ただし、反復して投入している場合には、その間に採算が改善しているか、将来の入金を先に受け取ってしまっていないかを確認する必要があります。追加の個人保証や資産の売却は、署名や実行の後では戻せません。会社と代表者個人とで債務・財産・保証を分けて整理したうえで、実行の前にご確認ください。

弁護士に相談すると、すぐに銀行へ通知が行きますか。

相談したことが直ちに金融機関へ通知されるものではありません。相談、委任契約の締結、受任通知の発送、私的整理の申入れ、裁判所への申立ては、それぞれ別の段階です。どの段階でどの関係者へ、どのような順序で説明するかは、資金の状況、契約の内容、債権者の構成を確認したうえで検討します。弁護士は職務上の守秘義務を負いますが、手続の内容によっては関係者への通知が必要になる場面があるため、想定される時期を含めて事前にご確認ください。

まとめ

  • 資金繰りの変化は、赤字の確定や支払の遅れより前に、手元資金、採算、回収、借入条件、支払、通知、資金の調達方法という七つの場面に現れます
  • 該当した数で結論は決まりません。判断の基準は、支払期日までに残された時間と、調達や合意形成に必要な時間との対比です
  • 赤字、債務超過、資金ショート、支払不能は別の概念です。混同したまま議論すると、選択肢を早く狭めてしまうことがあります
  • 資金の見通しは期日別に確認し、未確定の入金を確定入金と分け、二重計上と計上漏れを避けます
  • 租税・社会保険料の猶予制度には申請期限(納期限から6か月以内のもの)があり、滞納してからでは手段が狭まります
  • 支払、資金移動、追加保証、資産売却、通知への回答は、実行の前に確認してください
  • 資料を揃え切るまで待たず、分かっている事実と期限を先に共有してください。直近の預金明細、支払予定表、借入金一覧があれば、検討を始められます

資金繰りの変化に気付いた段階でご相談いただければ、資金の見通し、契約と通知の期限、検討し得る選択肢、実行前に確認が必要な事項を整理することができます。資料がそろっていない段階でも差し支えありません。

当事務所では、初回の法律相談を無料で承っています(事前のご予約をお願いしています。無料相談の対象・条件は、初めての方へで相談の条件を確認することでご確認いただけます。)。

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監修者・執筆者

藤井 貴之(ふじい たかゆき)
弁護士・公認会計士/兵庫県弁護士会所属・日本公認会計士協会兵庫会所属
弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所 代表弁護士

企業法務、法人・事業者の債務整理、事業承継、相続、交通事故等のご相談に対応しています。資金繰りに関するご相談では、会社の財務資料と契約・通知の内容を分けて確認したうえで、選択肢と確認事項を整理します。

所在地:兵庫県神戸市須磨区中落合2丁目2-5 名谷センタービル7階

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参考資料

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