「役員報酬はいくらに設定すればよいのか」「期の途中で増やしたり減らしたりしてよいのか」「役員に賞与を出したいが、経費にできるのか」——中小企業の経営者や経理のご担当者から、こうしたご相談を多くいただきます。
役員報酬は、毎月の支給額をいくらにするかという金額の問題にとどまりません。会社法上、誰が、どの手続で決めるのかという意思決定のルールと、法人税法上、その報酬を損金(税務上の経費)に算入できるかという要件は、別の問題として分けて確認する必要があります。会社法上の手続を適切に行っていても税務上の要件を満たさなければ損金に算入できない場合があり、その逆もあります。
この記事では、株式会社を念頭に、役員報酬の決定手続(会社法)と、定期同額給与・事前確定届出給与を中心とした損金算入の要件(法人税法)を整理し、決算前・改定前・役員賞与の支給前に確認しておきたい資料と、相談すべきタイミングをご説明します。なお、具体的な税務上の取扱いは、会社の決算期・支給時期・決議日・支給実態・届出状況などの個別事情により結論が変わります。実際の判断にあたっては、資料を確認したうえで、税理士等とも連携して検討することが重要です。
この記事で分かること
- 役員報酬を会社法上、誰がどの手続で決めるのか
- 株主総会・取締役会・代表取締役の役割と、議事録を残す意味
- 損金算入が認められる役員給与の3類型(定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与)
- 中小企業で特に問題になりやすい定期同額給与と事前確定届出給与の注意点
- 決算前・税務調査前に確認しておきたい資料と、相談のタイミング
役員報酬の決定手続や議事録の整備に不安がある場合は、会社法上の手続と税務上の確認事項を分けて整理することで、対応の方針を検討しやすくなります。まずは現状の資料を確認するところから始められます。
Contents
役員報酬をめぐる結論と全体像
はじめに、役員報酬を検討するときに確認すべき観点を整理します。役員報酬は、次の5つの観点を分けて考えると、論点が整理しやすくなります。
| 観点 | 主な確認事項 | 主に関係する分野 |
|---|---|---|
| 決め方 | 定款の定め、株主総会決議、取締役会・代表取締役への配分の委任 | 会社法 |
| 証拠資料 | 株主総会議事録、取締役会議事録、決定書、役員報酬規程 | 会社法・実務 |
| 損金算入 | 定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれかへの該当性 | 法人税法 |
| 変更時期 | 改定が認められる時期・事由、届出の要否と期限 | 法人税法 |
| 相談タイミング | 決議前・改定前・役員賞与支給前・税務調査前の確認 | 弁護士・税理士等 |
まず押さえる3つのポイント
第一に、会社法上の決定手続と税務上の損金算入要件は別問題です。株主総会で決議していても税務上の要件を満たさなければ損金算入できないことがあり、税務上の要件を満たしていても会社法上の手続を欠けば株主・役員間の紛争や決議の効力の問題が生じ得ます。
第二に、損金算入が認められる役員給与は限られた類型に限定されるという点です。法人税法上、役員給与は原則として損金不算入で、一定の類型に該当するものだけが例外的に損金算入されます。
第三に、金額だけでなく、決定の手続・時期・証拠資料が重要です。議事録や規程が整っていないと、税務調査の際に支給の根拠を説明しにくくなり、過大かどうかの判断にも影響することがあります。
役員報酬・役員給与・役員賞与・役員退職金の基礎知識
はじめに用語を整理します。実務では「役員報酬」と「役員給与」がほぼ同じ意味で使われますが、税務上の制度名としては「役員給与」が用いられます。本記事でも、税務の文脈では「役員給与」、一般的な文脈では「役員報酬」を用います。
役員に対して会社が支払うものには、毎月の役員報酬(役員給与)のほか、一時金として支払う役員賞与、退任時に支払う役員退職金(役員退職給与)などがあります。これらは会社法上も税務上も取扱いが異なります。
この記事では、主に在任中の役員報酬(役員給与)を扱います。役員退職金は、損金算入の考え方(不相当に高額な部分の判定など)が在任中の報酬とは別の枠組みで整理されるため、詳細は別の記事でご説明します。
会社法上の役員報酬の決め方
役員報酬を「誰が、どのように決めるか」は、会社法に基本的なルールがあります。ここを押さえておくことが、後の株主・役員間のトラブル予防や、税務調査の際の説明にもつながります。
定款・株主総会・取締役会・代表取締役の関係
取締役の報酬・賞与その他の職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益(報酬等)については、定款にその事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定めるとされています(会社法第361条第1項)。株主総会で定めるべき事項は、額が確定しているものはその額、額が確定していないものはその具体的な算定方法、自社の募集株式等によるものはその数の上限などの事項です(同項各号)。また、これらの事項を定める議案を提出した取締役は、株主総会でその事項を相当とする理由を説明しなければならないとされています(同条第4項)。
実務では、株主総会で取締役全員の報酬総額(上限)を定め、その範囲内での各取締役への配分を取締役会の決定に委ね、さらに代表取締役に一任するという運用が広く行われています。これは、株主総会で総額の上限さえ定めておけば、いわゆる「お手盛り」を防止できるという考え方に基づくもので、裁判例でも認められてきた取扱いです(最高裁昭和60年3月26日判決、最高裁昭和31年10月5日判決)。もっとも、配分を一任する場合でも、一任の決議や、一任を受けた者による決定の記録を残しておくことが重要です。
なお、監査役の報酬等は、取締役の報酬とは区別し、定款に定めがなければ株主総会の決議によって定める必要があります(会社法第387条)。取締役分と監査役分は分けて決議・記録します。
機関設計によって手続が変わる
役員報酬の決定手続は、会社の機関設計によって異なります。取締役会を設置しているかどうか、監査役・監査等委員会・指名委員会等を置いているかどうかで、配分の決定権限や手続が変わります。
取締役会設置会社・非設置会社
取締役会設置会社では、株主総会で総額を決議したうえで、各取締役への配分を取締役会で決定する(または代表取締役に一任する)流れが一般的です。取締役会を設置していない会社では、配分を取締役の過半数で決定するなど、会社の体制に応じた手続が必要になります。いずれの場合も、決定の過程と結果を議事録や決定書として残すことが、後日の説明のために重要です。
また、上場会社等の一定の会社や監査等委員会設置会社では、取締役の個人別の報酬等の決定方針を取締役会で定める義務がありますが(会社法第361条第7項)、これは中小企業の多くでは通常該当しません。自社がどの類型に当たるかは、機関設計を確認したうえで判断する必要があります。
一人会社・同族会社でも議事録を残す理由
株主と役員が同一人物である一人会社や、家族で経営する同族会社であっても、株主総会議事録・取締役会議事録・決定書を作成しておくことには実務上の重要な意味があります。理由は主に次のとおりです。
- 将来、株主構成や役員構成が変わったときに、過去の報酬決定の根拠を示せること
- 税務調査の際に、報酬の決定時期・金額・手続を説明できること
- 会計処理の根拠を明確にできること
- 過大役員給与の判定で問題となる「定款・株主総会決議による支給限度額」を裏づける資料となること
会社法上の手続が不十分なまま支給を続けると、株主・役員間で争いが生じたときに不利に働いたり、税務調査の際に説明が難しくなったりするおそれがあります。手続自体は難しいものではないため、早めに整えておくことをおすすめします。
税務上の損金算入の基本(役員給与の3類型)
続いて、税務上の取扱いです。法人税法上、役員給与は原則として損金の額に算入されません。例外として、次の3つの類型のいずれかに該当する役員給与が損金算入の対象となります(法人税法第34条第1項)。
| 類型 | 概要 | 主な対象 | 事前届出 | 中小企業での位置づけ |
|---|---|---|---|---|
| 定期同額給与 | 支給時期が1か月以下の一定期間ごとで、各支給時期の支給額が同額である給与など | 毎月の役員報酬 | 不要 | 中心となる類型 |
| 事前確定届出給与 | 所定の時期に確定額を支給する定めに基づく給与で、原則として事前の届出が必要なもの | 役員賞与、非常勤役員への報酬など | 原則必要 | 役員賞与等で問題になりやすい |
| 業績連動給与 | 利益・株価・売上高などの指標に基づき算定される給与で、客観的な算定方法や開示などの要件を満たすもの | 主に上場企業等 | — | 同族会社では利用場面が限られる |
業績連動給与は、算定方法の客観性や有価証券報告書での開示などの要件があり、中小企業(特に同族会社)では利用できる場面が限られます。そのため、本記事では中小企業で問題になりやすい定期同額給与と事前確定届出給与を中心にご説明します。
3類型に該当しても過大・隠蔽仮装は別問題
注意したいのは、上記の3類型のいずれかに該当しても、それだけで全額が損金算入されるとは限らないという点です。法人税法は、次の二つの場合に追加の制限を設けています。
- 不相当に高額な部分……3類型に該当する給与であっても、不相当に高額な部分の金額は損金に算入されません(法人税法第34条第2項)。何が不相当に高額かは、役員の職務の内容、会社の収益や使用人への給与の支給状況、同種・類似規模の会社の役員給与の支給状況などに照らして判断される実質基準と、定款の定めや株主総会決議による支給限度額を基準とする形式基準により、いずれか多い金額が対象となります(法人税法施行令第70条第1号)。
- 隠蔽・仮装経理によるもの……事実を隠蔽し、または仮装して経理することにより役員に支給する給与は、その全額が損金に算入されません(法人税法第34条第3項)。
つまり、「3類型に当てはめれば終わり」ではなく、金額の相当性と経理の適正さもあわせて確認する必要があります。実際の判断は個別事情により異なるため、資料を確認したうえで、税理士等と連携して検討することが重要です。
定期同額給与の注意点
定期同額給与は、毎月の役員報酬の損金算入の基本となる類型です。中心となる考え方は、支給時期が1か月以下の一定期間ごとで、その事業年度の各支給時期の支給額(または源泉所得税・社会保険料などを控除した後の金額)が同額であることです。期の途中で金額を変えると、原則として同額性が崩れ、損金算入に問題が生じるおそれがあります。
改定が認められる3つの事由
もっとも、一定の場合には期中の改定が認められています。国税庁の説明によれば、改定が認められるのは主に次の3つの事由がある場合です。
| 改定事由 | 内容 | 留意点 |
|---|---|---|
| 通常改定 | 事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日までに行う改定 | 定時株主総会のタイミングで行うのが一般的 |
| 臨時改定事由 | 役員の職制上の地位の変更、職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情による改定 | 地位・職務の実質的な変更が前提 |
| 業績悪化改定事由 | 経営状況が著しく悪化したことその他これに類する理由による減額改定 | 減額の場合に限られる |
業績悪化改定事由は範囲が限定される
期中の減額については、業績悪化改定事由に当たるかどうかが問題になりやすい論点です。国税庁は、法人の一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標値に達しなかったことなどは、業績悪化改定事由には含まれないと説明しています。したがって、「資金繰りが厳しいので一時的に下げたい」「目標未達だったので下げたい」といった理由だけでは、改定が認められない可能性があります。
期中に通常改定の時期を過ぎてから増額した場合は増額部分が、上記の事由がないのに減額した場合は減額前の上乗せ部分が、それぞれ損金に算入されないおそれがあります。期中の改定を検討する際は、改定の事由・時期・金額が要件を満たすかを、事前に資料で確認することが重要です。具体的な結論は、決議の内容や経営状況の資料を確認したうえで判断する必要があります。
事前確定届出給与の注意点
役員に対して、毎月の定額とは別に、賞与のようにまとまった金額を支給したい場合に問題となりやすいのが事前確定届出給与です。これは、役員の職務につき所定の時期に確定した額を支給する定めに基づいて支給する給与で、定期同額給与にも業績連動給与にも該当しないものをいいます。
届出期限と「届出どおりの支給」
事前確定届出給与は、原則として、あらかじめ所轄の税務署長に届出をしている必要があります。国税庁の説明によれば、届出期限は原則として次の(1)または(2)のうちいずれか早い日です。
- (1)株主総会等の決議によりその定めをした日(その日が職務の執行を開始する日後である場合は、その開始する日)から1か月を経過する日
- (2)その会計期間開始の日から4か月を経過する日
新たに設立した法人が、設立時に開始する役員の職務についてこの定めをした場合は、設立の日以後2か月を経過する日が届出期限とされています。また、臨時改定事由が生じたことによりこの定めをした場合は、上記のいずれか早い日と、臨時改定事由が生じた日から1か月を経過する日のうち、いずれか遅い日が届出期限とされています。届出期限までに届出がなかった場合でも、やむを得ない事情があると認められるときの取扱いが定められています。
届出額と支給額がずれたとき
事前確定届出給与でとくに注意したいのは、届出どおりの時期に届出どおりの金額を支給することです。届出をしていても、実際の支給時期や支給額が届出と異なると、原則としてその給与が事前確定届出給与に該当しないものとして扱われ、損金に算入できなくなるおそれがあります。これは「金額が高すぎるかどうか(過大かどうか)」とは別の、そもそもの該当性(入口)の問題です。
役員賞与を検討する場合は、支給時期・金額・届出の有無と期限を、支給前に確認しておくことが重要です。届出の要否や期限の当てはめは個別事情により異なるため、税理士等と連携して確認することをおすすめします。
「期中に役員報酬を変更したい」「役員賞与を出したい」「届出が必要か分からない」といった場面では、会社法上の決議・議事録と、税務上の支給時期・届出の要否を分けて整理することで、判断の見通しを立てやすくなります。資料を確認したうえで、税理士等との連携が必要な論点も整理できます。
よく問題になるケースと確認ポイント
役員報酬をめぐっては、次のような場面で迷いやすく、確認が必要になります。以下は一般的な注意点であり、実際の結論は個別事情により異なります。
| 場面 | 主な確認ポイント | 関係する資料 | 相談のタイミング |
|---|---|---|---|
| 設立後にいつ報酬を決めるか | 通常改定の期限、事前確定届出給与の届出期限 | 株主総会議事録、決定書 | 設立直後・初回決算前 |
| 期中に増額したい | 通常改定の時期を過ぎていないか、臨時改定事由の有無 | 議事録、職務変更が分かる資料 | 改定の検討時 |
| 業績悪化で減額したい | 業績悪化改定事由に当たるか(一時的な資金繰り・目標未達では足りない場合がある) | 議事録、経営状況が分かる資料 | 減額の検討時 |
| 役員賞与を支給したい | 事前確定届出給与の届出と届出どおりの支給 | 届出書の控え、議事録 | 支給を決める前 |
| 届出額と支給額がずれた | 該当性を失い損金不算入となるおそれ | 届出書の控え、振込記録 | 気づいた時点で早めに |
| 議事録を作っていなかった | 決定の根拠資料の不足 | 株主総会議事録、取締役会議事録 | 決算前・調査前 |
| 個別配分のプロセスが不明確 | 一任の決議の有無、決定書の有無 | 取締役会議事録、決定書 | 体制整備時 |
| 代表者が事後的に自分の報酬を変更 | 決定手続・時期・証拠の有無 | 議事録、決定書 | 変更の検討時 |
| 非常勤役員に年1〜2回支給 | 定期同額に当たらず届出が必要となるおそれ | 届出書の控え、委任契約に相当する資料 | 支給設計時 |
| 使用人兼務役員の給与が混在 | 使用人分と役員分の区別、規程の整備 | 役員報酬規程、賃金台帳 | 支給設計時 |
| 家族役員への報酬 | 職務内容・実態に見合うか(実質基準) | 職務内容が分かる資料、給与台帳 | 金額設定時 |
| 同業・規模との比較で過大か不安 | 実質基準・形式基準(支給限度額) | 株主総会議事録、決算書 | 金額設定時 |
| 未払の役員報酬がある | 定期同額・事前確定の要件、支給実態 | 総勘定元帳、振込記録 | 決算前 |
| 役員貸付金・借入金・経済的利益 | 役員給与該当性の検討 | 総勘定元帳、契約に相当する資料 | 判断に迷う時 |
| 税務調査で根拠資料を求められた | 決議・規程・台帳の整合 | 議事録、規程、各台帳 | 調査前・調査対応時 |
手続前チェックリスト
決算前・報酬改定前・役員賞与の支給前・税務調査対応前には、次のような資料を確認・整備しておくと、説明や判断がしやすくなります。
- 定款
- 株主名簿
- 登記事項証明書
- 株主総会議事録
- 取締役会議事録
- 取締役の同意書または決定書
- 役員報酬規程
- 役員退職慰労金規程(ある場合)
- 役員の職務内容が分かる資料
- 委任契約・雇用契約に相当する資料
- 給与台帳・賃金台帳
- 総勘定元帳・仕訳帳
- 預金通帳または振込記録
- 源泉徴収簿
- 社会保険関係資料
- 事前確定届出給与に関する届出書の控え
- 法人税申告書の別表
- 決算書
- 税理士・会計士・社会保険労務士・弁護士との相談記録
- 税務署からの問い合わせ資料(ある場合)
弁護士に相談するタイミング
役員報酬については、税額計算や申告は税理士に、会社法上の手続や紛争予防は弁護士に、というように、確認すべき観点によって相談先が分かれます。次のような場面では、早めに弁護士に相談することで、対応の方針を整理しやすくなります。
- 株主総会・取締役会の決議の進め方や、議事録の整備に不安がある
- 役員報酬規程を整備したい、または見直したい
- 配分の一任の決議や決定書の作り方を確認したい
- 株主間・役員間で報酬をめぐる意見の対立がある
- 顧問契約により、決議・議事録・規程を継続的に確認したい
- 税理士等と連携して、会社法と税務の両面から整理したい
弁護士への相談は、結果を保証するものではありませんが、会社法上の決定手続・議事録・支給実態を整理し、税理士等と連携すべき論点を明確にすることに役立ちます。神戸みらい法律会計事務所では、弁護士・公認会計士の視点から、法律面と会計・税務面の論点を分けて整理するご相談をお受けしています。
役員報酬の決定手続や議事録の整備、役員報酬規程の見直しについては、会社法と税務の確認事項を分けて整理することで、次に取るべき対応が見えやすくなります。
よくある質問(FAQ)
役員報酬は誰が決めるのですか。
取締役の報酬等は、定款に定めがなければ株主総会の決議によって定めます(会社法第361条第1項)。実務では、株主総会で総額(上限)を決議し、各取締役への配分を取締役会や代表取締役に委ねる運用が多く行われています。会社の機関設計により手続が異なるため、自社の体制を確認したうえで判断する必要があります。
一人会社でも株主総会議事録は必要ですか。
株主と役員が同一であっても、議事録や決定書を作成しておくことには実務上の意味があります。税務調査の際の説明や、将来の株主・役員構成の変化への備え、過大役員給与の判定で問題となる支給限度額の裏づけなどに役立ちます。作成しておくことをおすすめします。
役員報酬は期の途中で変更できますか。
定期同額給与では、通常改定(会計期間開始の日から3か月を経過する日まで)、臨時改定事由、業績悪化改定事由のいずれかに当たる場合に改定が認められます。これらに当たらない期中の変更は、損金算入に問題が生じるおそれがあります。改定の事由・時期・金額を資料で確認する必要があります。
役員賞与は損金算入できますか。
役員賞与は、原則として事前確定届出給与の要件(事前の届出と届出どおりの支給など)を満たす場合に損金算入の対象となり得ます。届出をしていない場合や、届出と支給がずれた場合は、損金に算入できないおそれがあります。支給を決める前に確認することが重要です。
事前確定届出給与の届出を忘れた場合はどうなりますか。
原則として、その給与は事前確定届出給与に該当しないものとして、損金に算入できなくなるおそれがあります。届出がなかったことについてやむを得ない事情があると認められるときの取扱いも定められていますが、当てはまるかどうかは個別事情によります。早めに税理士等と連携して確認することをおすすめします。
業績が悪化した場合、役員報酬を減額できますか。
経営状況が著しく悪化したことその他これに類する理由による減額は、業績悪化改定事由として認められる場合があります。ただし、一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標値に達しなかったことは、これに含まれないとされています。減額の理由と時期を資料で確認する必要があります。
株主総会で決めていれば税務上も問題ありませんか。
会社法上の決議と、税務上の損金算入要件は別問題です。株主総会で決議していても、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれにも該当しない場合や、不相当に高額な部分がある場合などは、損金に算入できないことがあります。両面を分けて確認する必要があります。
税務調査で役員報酬について確認されやすい資料は何ですか。
株主総会議事録・取締役会議事録・決定書・役員報酬規程などの決定の根拠資料、給与台帳・総勘定元帳・振込記録などの支給実態が分かる資料、事前確定届出給与の届出書の控えなどが挙げられます。これらの整合が確認できるよう整えておくとよいでしょう。
まとめ
役員報酬を検討する際の要点と、次に取るべき行動を整理します。
- 会社法上の決定手続(定款・株主総会・取締役会・代表取締役)と、税務上の損金算入要件は分けて確認する。
- 損金算入が認められる役員給与は、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与の3類型に限られ、過大な部分や隠蔽仮装によるものは別に制限がある。
- 定期同額給与は同額性と改定事由、事前確定届出給与は届出期限と届出どおりの支給が要点。
- 一人会社・同族会社でも議事録・規程・決定書を整えておく。
- 決算前・改定前・役員賞与の支給前・税務調査前に、チェックリストの資料を確認する。
- 具体的な結論は個別事情により異なるため、資料を確認のうえ、税理士等と連携して検討する。
役員報酬の決定手続・議事録・規程の整備や、期中変更・役員賞与の検討にあたっては、会社法と税務の確認事項を分けて整理することで、対応の方針を検討しやすくなります。弁護士・公認会計士の視点で、税理士等と連携すべき論点もあわせて整理します。
監修・執筆
神戸みらい法律会計事務所(弁護士法人ひょうご支所)
弁護士・公認会計士 藤井 貴之
所属:兵庫県弁護士会/日本公認会計士協会
企業法務・会社法務に関するご相談に対応しています。弁護士の紹介は弁護士紹介ページをご覧ください。
参考資料
本記事は、役員報酬に関する一般的な解説であり、特定の事案に対する法的・税務的助言ではありません。実際の取扱いは、会社の機関設計・決算期・支給時期・決議日・支給実態・届出状況などの個別事情により結論が変わります。具体的な判断にあたっては、資料を確認のうえ、弁護士・税理士等にご相談ください。

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