脛骨高原骨折の後遺障害|変形性膝関節症と将来の人工膝関節 |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|

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脛骨高原骨折の後遺障害|変形性膝関節症と将来の人工膝関節

交通事故で脛骨高原骨折(脛骨プラトー骨折)と診断され、手術やリハビリを続けてきたものの、膝の曲げ伸ばしがしにくい、体重をかけると痛む、膝がぐらつく感じが残る、といった症状が続いている方は少なくありません。主治医から「関節の面に段差が残っている」「将来、変形性膝関節症が進めば人工膝関節を検討することになるかもしれない」と説明を受け、これから先の見通しに不安を感じている方もいらっしゃいます。

この記事では、脛骨高原骨折で膝に症状が残っている方に向けて、症状固定の時点で問題となる後遺障害の考え方、外傷後の変形性膝関節症へ進行し得るという医学的な指摘の意味、将来の人工膝関節置換術にかかる費用を損害賠償として請求する場合の立証事項、そして後遺障害の申請前・示談前に何を残しておくべきかを整理します。

先に結論の方向性を申し上げます。医学的に将来のリスクが指摘されていることと、そのリスクに対応する費用が損害賠償として認められることは、別の問題です。将来、人工膝関節が必要になるかもしれないという可能性だけでは、人工関節を挿入置換した後の後遺障害等級が現在当然に適用されるわけではありません。現在の等級は、あくまで症状固定時に実際に残っている膝の機能、痛み、変形などを基礎に評価されます。そのうえで、将来の手術費用等を今回の賠償に含められるかは、必要性、蓋然性、事故との因果関係、実施時期、費用の見込みを、資料でどこまで示せるかによって変わります。

症状固定を打診された、後遺障害診断書の作成を控えている、示談案が届いた、といった段階では、手元の資料で何が示せて何が足りないのかを一度整理しておくと、その後の判断がしやすくなります。

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結論の全体像|4つの段階を分けて考える

脛骨高原骨折の事案では、次の4つが混ざりやすく、そのために「将来人工関節になるのだから高い等級になるはずだ」「将来のことは何も請求できない」といった、どちらにも偏った理解が生まれがちです。まず、段階を分けて整理します。

脛骨高原骨折の事案で分けて考えるべき4つの段階
段階 何を判断するか 主な判断材料
現在の後遺障害 症状固定の時点で、膝の機能障害、動揺性、疼痛、変形などがどの程度残っているか 症状固定時の画像、関節可動域の測定結果、動揺性の検査結果、後遺障害診断書の記載
将来の医学的リスク 外傷後の変形性膝関節症へ進行する可能性について、主治医等がどのように見ているか 受傷時から症状固定時までの経時的な画像、関節面の状態、下肢のアライメント、主治医の医学的見解
将来治療費・将来手術費 将来の手術等にかかる費用を、今回の損害賠償に含められるか 必要性、蓋然性、事故との因果関係、想定される実施時期、費用の見積り
示談の方法と時期 一括で解決するか、将来分について取扱いを定めるか、解決時期をいつにするか 予後の見通しがどこまで具体化しているか、証拠の保全状況、相手方の対応、期間制限

この記事で最も重要な区別 将来、人工膝関節を入れる可能性があるという事情は、現在の後遺障害等級を引き上げる理由には直接なりません。人工関節を挿入置換した場合の評価は、実際に置換がなされた関節について問題となるものです。既に人工関節・人工骨頭を置換された方の等級の考え方は、次の記事で扱っています。

既に人工関節・人工骨頭を置換した場合の後遺障害等級を確認する

脛骨高原骨折とはどのような骨折か

脛骨高原骨折は、すねの骨である脛骨のうち、膝関節をつくる上端部分の骨折です。日本整形外傷学会の一般向け解説では、「プラトー」は英語で高原を意味し、膝の関節で体重を受ける部分を指すと説明されています。つまり、単に骨が折れたというだけでなく、膝関節の関節面そのものが損なわれ得る骨折である点に特徴があります。

受傷の仕方と合併する損傷

同学会の解説によれば、若い方では交通事故や高所からの転落など大きな外力で生じ、高齢の方では転倒などの小さな外力でも生じ得るとされています。また、関節内の軟骨や靱帯なども一緒に損傷している場合があるとされており、半月板、前十字靱帯、後十字靱帯、側副靱帯などの合併損傷が問題となることがあります。

靱帯損傷が中心となる事案については、膝の後遺障害と将来リスクという観点から別の記事で扱っています。関節面の骨折を伴わない靱帯損傷の場合と、本記事が扱う関節面骨折の場合とでは、確認すべき画像も残る症状も異なります。

前十字靭帯損傷後の膝の後遺障害と将来リスクを見る

画像検査がそれぞれ何を示す資料になるか

同学会の解説では、X線は骨折の発見と骨折の状態の把握のために複数枚撮影され、CTは骨折部をより詳細に立体的に把握するため、MRIは軟骨や靱帯の損傷、X線では骨折線が見えない骨折の把握のために用いられるとされています。

これは診療上の説明ですが、後遺障害の申請や示談交渉においても、そのまま資料としての意味を持ちます。関節面の陥没や段差がどの程度残っているか、骨癒合はどうか、変形癒合や下肢のアライメントの変化があるかといった点は、X線やCTの画像と読影報告書、主治医の所見によって示すほかありません。撮影されていない検査の結果は、後から作ることができません。これが、経時的な画像の保存を重視すべき理由です。

手術と術後の一般的な経過

同学会の解説では、一般に3ミリメートル以上のずれや陥没があれば手術をしないといけないと言われている、とされ、手術方法としてプレート内固定や関節鏡視下手術が挙げられています。また、術後2週から4週は足をつけないようにする、一本杖歩行になるまで2か月弱はかかる、1か月から2か月の入院リハビリが必要になることが多い、といった経過が示されています。

これらは一般的な医学的説明であり、実際の治療方針、手術の適応、実施時期、荷重の開始時期は、骨折の型や合併損傷、全身状態などを踏まえて主治医が個別に判断する医学的事項です。本記事は法律事務所による損害賠償上の整理であり、個別の診断や治療の指示を行うものではありません。治療内容についてのご判断は、必ず主治医等にご確認ください。

症状固定の時点で問題となる後遺障害

脛骨高原骨折では、残る症状が1つとは限りません。可動域制限、動揺性、疼痛、変形などが重なることがあり、それぞれ評価の枠組みが異なります。自動車損害賠償保障法施行令別表第二に定められた等級・号のうち、この傷病で問題となり得る主なものは次のとおりです。

脛骨高原骨折で問題となり得る後遺障害の類型(自動車損害賠償保障法施行令別表第二)
障害の類型 問題となり得る等級・号と条文の文言 主に確認される資料
膝関節の機能障害
(可動域制限・強直)
第8級7号「一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの」
第10級11号「一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの」
第12級7号「一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの」
症状固定時の関節可動域測定結果(健側との比較)、可動域制限の器質的な原因を示す画像
疼痛その他の神経症状 第12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」
第14級9号「局部に神経症状を残すもの」
画像上の器質的所見、受傷から症状固定までの症状の一貫性、治療経過
脛骨の変形・偽関節 第12級8号「長管骨に変形を残すもの」
第8級9号「一下肢に偽関節を残すもの」
第7級10号「一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」
骨癒合の状態、変形の程度と部位を示す画像、硬性補装具の必要性
下肢の短縮 第8級5号「一下肢を五センチメートル以上短縮したもの」
第10級8号「一下肢を三センチメートル以上短縮したもの」
第13級8号「一下肢を一センチメートル以上短縮したもの」
健側との下肢長の測定結果
手術痕などの醜状 第14級5号「下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの」 瘢痕の部位・大きさを示す記録

醜状障害でいう「露出面」について、厚生労働省の認定基準(平成23年2月1日基発0201第2号)は、下肢にあってはひざ関節以下(足背部を含む。)としています。また「てのひら大」は指の部分を含まないとされています。膝より上に及ぶ手術痕は、この号の対象とならない場合があります。

関節の機能障害は3段階で整理される

厚生労働省が公表している労災の障害等級認定基準では、関節の機能障害を次の3段階で整理しています。

  • 関節の用を廃したもの 関節が強直したもの、関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にあるもの、人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されているもの
  • 関節の機能に著しい障害を残すもの 可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されているもの、人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち上記以外のもの
  • 関節の機能に障害を残すもの 可動域が健側の可動域角度の4分の3以下に制限されているもの

人工関節・人工骨頭が同基準の中に位置づけられているとおり、実際に置換がなされた場合には、この枠組みで検討されることになります。もっとも、将来置換する可能性がある段階で、この評価が先取りされるものではありません。現在の等級は、症状固定時に実際に残っている状態を基礎に判断されます。

可動域はどのように測られるか

同基準では、測定は原則として他動運動によること(他動運動による測定値を採用することが適切でない場合の例外があります)、通常は5度刻みで測定すること、原則として健側と比較すること、ひざ関節の主要運動は屈曲・伸展であることなどが示されています。

労災と自賠責は別の制度であり、根拠となる法令も号数も一致しない部分があります。たとえば「一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの」は、労災では第10級10号、自賠責では第10級11号です。下肢の短縮や下肢の醜状についても、労災と自賠責とで号数が異なります。労災の認定基準は自賠責の実務でも参照されますが、労災でこう扱われるから自賠責でも当然に同じ結論になる、とは限りません。実際の認定は、個別の資料に基づいて判断されます。

実務上、ご本人がご自宅で測った角度や、痛みのために自分では曲げられないという申告だけでは、等級の判断材料として十分とはいえません。誰が、いつ、どの方法で測定したのかが記録として残っていることが重要です。

膝の動揺性・不安定性の扱い

膝のぐらつき(動揺関節)は、自動車損害賠償保障法施行令別表第二に固有の号が置かれているものではなく、関節の機能障害の等級を準用する形で検討されます。労災の障害等級認定基準では、下肢の動揺関節について、常に硬性補装具を必要とするものは第8級に準ずる関節の機能障害、時々必要とするものは第10級に準ずるもの、重激な労働等の際以外には必要としないものは第12級に準ずるものとして取り扱うとされています。

自賠責での評価が当然に同じ結論になるとは限らず、徒手検査の結果、ストレス撮影、装具の処方内容と実際の使用状況を踏まえて個別に判断されます。装具については、処方の事実だけでなく、どの場面でどの程度使っているかが分かる記録が意味を持ちます。

複数の症状が残っている場合

膝の可動域制限と、同じ膝の痛みが同時に残っている場合、これらを別々に評価して単純に足し合わせることはできません。同一の部位に生じた障害をどう評価するか、併合・準用・加重をどう扱うかは、障害の系列や派生関係の考え方に沿って判断されます。どの症状をどの枠組みで評価するのが実態に合っているかは、資料を確認したうえで判断する必要があり、傷病名や手術歴だけで決まるものではありません。

自動車損害賠償保障法施行令別表第二に定められた金額は、自賠責保険から支払われる限度額です。裁判実務上検討される損害額とは考え方も金額も異なりますので、等級ごとの保険金額を、そのまま受け取れる賠償額と理解しないようご注意ください。

外傷後の変形性膝関節症への進行をどう考えるか

関節面を含む骨折の後に、変形性膝関節症が生じ得ることは、医学的に指摘されています。日本整形外科学会の一般向け解説は、変形性膝関節症の原因は関節軟骨の老化によることが多く、肥満や素因も関与しているとしたうえで、「骨折、靱帯や半月板損傷などの外傷、化膿性関節炎などの感染の後遺症として発症することがあります」と説明しています。

ただし、これは一般論としてそのような経過をたどることがあるという説明であって、脛骨高原骨折を負った方が必ず変形性膝関節症になる、という意味ではありません。

研究上の数値を自分の見通しと読み替えない

脛骨高原骨折後に人工膝関節置換術へ移行する割合については、42件の研究、52,577人を対象としたシステマティックレビューが公表されています(ハスルホーファーほか「Risk for total knee arthroplasty after tibial plateau fractures:a systematic review」Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc誌 2023年 第31巻第11号)。同レビューでは、全体としての移行率は5.1パーセントと報告され、42件のうち38件で10パーセント未満であったこと、骨折後の最初の5年間で移行が特に多いことが述べられ、結論として、人工膝関節置換術のリスクは臨床上管理可能である、とされています。

この数値は、対象、骨折の型、治療方法の異なる多数の研究を集計した集団としての割合であり、個々の方が将来手術を受ける確率を示すものではありません。抄録上、集計対象となった各研究の追跡期間はまとめて示されていません。ご自身の膝がどうなるかは、関節面の状態、整復の程度、合併損傷、年齢、活動性など、個別の事情によって異なります。将来の見通しについては、画像と治療経過を把握している主治医等の医学的見解を確認する必要があります。

因果関係や将来リスクの検討で問題となる事情

事故と膝の状態との関係、そして将来のリスクを検討する際には、次のような事情が問題となり得ます。いずれも、その医学的な意味は資料と主治医等の判断を前提に評価すべきものです。

  • 事故前に同じ膝の症状、通院歴、画像所見があったかどうか
  • 受傷直後の画像に写っている骨折の型と関節面の損傷の程度
  • 整復の状態、残っている陥没・段差・転位
  • 骨癒合の状態、変形癒合の有無、下肢のアライメント
  • 半月板、靱帯、関節軟骨の合併損傷の有無
  • 感染などの合併症の有無
  • 反対側の膝の状態
  • 事故後に生じた別の原因の有無

事故前から同じ膝に症状や障害があった場合には、①事故との医学的な因果関係、②自賠責における既存障害・加重の取扱い、③民事の損害賠償における素因減額を、それぞれ別の問題として整理する必要があります。加齢による変化や体格・体重といった事情があることだけをもって、当然に一定割合の減額が認められるというものではありません。この点は、事故前の診療録や画像が残っているかどうかで、議論の前提が大きく変わります。

将来の人工膝関節置換術と損害賠償

将来、人工膝関節置換術を受ける可能性があるとして、その費用を今回の賠償に含められるか。ここでも、医学的な可能性と、損害賠償上の認定とを分けて考える必要があります。

将来治療費・将来手術費で立証が問題となる事項

症状固定後の治療費は、当然に認められるものでも、当然に認められないものでもありません。将来の手術費用等を請求する場合には、少なくとも次の点が問題となります。

  • 事故と将来の手術との相当因果関係
  • その手術を受ける必要性と相当性
  • 単なる可能性にとどまらない、具体的な蓋然性
  • 想定される実施時期
  • 手術、入院、リハビリ、通院、交通、装具、付添いなど、何にいくらかかると見込まれるか
  • 保険診療を前提とするのか、自己負担額をどう見るのかという計算の前提
  • 将来の手術に伴う休業や業務上の制限
  • 現在価値に引き直す場合の中間利息控除の考え方
  • 再置換まで請求する場合の医学的な根拠と不確実性

実務上、単なる可能性にとどまるか、具体的な蓋然性まで示せるかが分かれ目になります。主治医等が、現在の関節面の状態と症状の推移を踏まえて、どのような場合にどの時期に手術を検討することになるかを具体的に述べられるかどうかは、大きな意味を持ちます。あわせて、想定される費用の内訳をどこまで裏付けられるかも問題になります。

他の損害項目との関係

将来の手術に伴う休業損害、現在の後遺障害による逸失利益、将来の介護費・付添費などを併せて検討する場合は、対象となる期間、損害の原因、評価の対象を区別する必要があります。同じ不利益を二重に計上した部分は、認められない可能性があります。

逸失利益についても、等級が決まれば自動的に金額が決まるわけではありません。職種、実際に担当している職務の内容、収入、配置転換や業務内容の変更、減収の有無、勤務先の配慮の内容、今後の就労の見通しを、資料で具体的に示す必要があります。立ち仕事、階段の昇降、しゃがみ込み、重量物の運搬、長時間の運転といった具体的な動作にどのような支障が出ているかを、日々記録しておくことが役立ちます。

将来の手術費用を請求に含めるかどうかは、主治医等の見解と手元の資料でどこまで示せるかによって判断が変わります。示談案に署名する前であれば、資料を確認したうえで方針を検討する余地があります。

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示談の方法として検討できる選択肢

将来のリスクが残る事案では、示談の内容だけでなく、示談の方法と時期も検討の対象になります。いずれの方法にも一長一短があり、どれかが常に有利ということはありません。

将来のリスクが残る事案で検討される示談の方法
方法 内容 検討すべき点
将来分を含めて一括で解決する 将来治療費・将来手術費等を現在の賠償額に含めて請求する 必要性と蓋然性、費用の見込みを示せるか。相手方が応じるか。早期に解決できる反面、後から不足が判明しても原則として追加請求は難しくなります。
将来分について留保条項を設ける 特定の手術や特定の悪化について、後日改めて協議・請求できる旨を定める 対象となる症状・手術、因果関係の要件、請求の手続、期限、立証の在り方を具体的に定めないと、実際には機能しません。相手方の合意が必要です。
最終的な示談の時期を急がない 予後の見通しがより具体化するまで、最終的な合意を先延ばしする 証拠の散逸、記憶の風化、期間制限の進行、解決までの生活への影響と、見通しの具体化による利益とを比較する必要があります。
既に発生した損害だけを先に処理する 争いのない部分について先行して支払いを受けることを検討する 相手方が応じるか、どの範囲を確定させるのか、後に残す部分をどう特定するのかが問題となります。

示談書や免責証書には、通常、これ以外に債権債務がないことを確認する清算条項が置かれます。示談成立後に症状が悪化したり、新たな後遺症が判明したりした場合に追加の請求ができるかは、清算条項があるから必ずできない、あるいは必ずできる、と一律に決まるものではありません。示談の時点でその症状を予測できたか、示談の金額や交渉の経過、条項の文言、後に生じた症状と事故との因果関係などによって、結論は変わり得ます。

示談後に後遺症が悪化・判明した場合の追加請求の考え方を確認する

相手方から想定される主張と、切り分けに使う資料

将来治療費を含む請求では、相手方の保険会社から一定の主張がなされることがあります。あらかじめ、どの資料で切り分けるのかを把握しておくと、対応の見通しが立ちやすくなります。

想定される主張と、確認すべき資料
想定される主張 何を切り分ける必要があるか 確認する資料
将来の手術は単なる可能性にすぎない 可能性の段階か、具体的な蓋然性まで示せるか 主治医等の具体的な見解、関節面の状態を示す画像、症状の推移の記録
加齢や既存の変形性膝関節症によるものである 事故前の状態と、事故後に生じた変化との区別 事故前の診療録・画像、受傷直後の画像、反対側の膝の状態
事故前から膝に症状があった 因果関係、既存障害・加重、素因減額のいずれの問題か 事故前の通院歴、事故前後の症状の内容と程度を示す記録
症状固定後の治療は必要でない 症状の維持・進行防止のための医療か、将来の手術の前提となる経過観察か 症状固定後の通院内容、主治医の指示、投薬・注射・装具の内容
減収がなく、仕事にも支障がない 収入の変動と、実際の就労上の制約とを分けて示せるか 源泉徴収票、給与明細、確定申告書、職務内容資料、配置転換・配慮の記録、具体的な支障の記録
同じ障害を二重に評価している 可動域制限、動揺性、疼痛のうち、どれをどの枠組みで評価するか 可動域測定結果、動揺性の検査結果、画像所見、後遺障害診断書の記載

後遺障害の申請前・示談前に確認したい資料

資料は、揃えること自体が目的ではありません。何を確認できる資料なのか、いつまでに手元に置く必要があるのか、なければどう困るのかを押さえておくことが重要です。

資料と、その資料で確認できること
資料 確認できる事項 入手・保存のタイミング 不足した場合の影響
事故前の診療録・画像 事故前に同じ膝に症状や所見があったか 既存障害や素因が争点になり得ると分かった時点 事故前から悪かったという主張に反論しにくくなります
受傷直後・手術前後・骨癒合後・症状固定時のX線、CT 骨折の型、関節面の陥没・段差・転位、整復の状態、骨癒合、変形、下肢のアライメント 各時点で撮影された都度 経過を示せず、現在の状態が事故によるものであることを示しにくくなります
MRIと読影報告書 半月板、靱帯、関節軟骨の状態 主治医が必要と判断して実施した時点 合併損傷を前提とした評価を求めにくくなります
手術記録、インプラント情報、退院時要約、診療録、診療報酬明細書 実施された処置の内容、経過 入院中から退院後にかけて 治療内容の説明が診断書の記載に依存することになります
関節可動域の測定結果 健側と比較した可動域の制限の程度 症状固定時(後遺障害診断書の作成時) 機能障害の評価に必要な資料を欠き、あらためて測定や医師への照会が必要になる場合があります
徒手検査・ストレス撮影などの結果 膝の動揺性の有無と程度 主治医が必要と判断して実施した時点 ぐらつきの訴えを裏付ける資料がなくなります
リハビリ記録、荷重制限、装具・杖の使用記録 治療経過、装具の必要性と使用の実態 治療中を通じて 装具の必要性を前提とした主張がしにくくなります
後遺障害診断書 症状固定時の症状、所見、改善の見込み 症状固定時 記載が不十分だと、実態より軽い評価につながることがあります
主治医等の具体的な医学的見解 現在の症状、改善の見込み、外傷後の変形性膝関節症についての見方、将来の手術の必要性・時期・内容・費用の見込み 症状固定の前後 将来治療費の蓋然性を示す中心的な資料を欠くことになります
保険会社からの各種通知、示談案、損害計算書、免責証書 相手方の主張の内容と根拠 受領した都度(署名前) 署名後は、条項の効力が争点になります
交通事故証明書、実況見分調書など 事故の態様、受傷の機序 早い段階 因果関係や過失割合の検討材料を欠きます
源泉徴収票、給与明細、休業損害証明書、確定申告書、決算書、職務内容資料 収入の状況、就労への影響 示談交渉の前 逸失利益や休業損害を具体的に主張しにくくなります
日常生活・就労上の支障の記録 歩行、階段、しゃがみ込み、立位、運転、家事、通勤、睡眠などへの具体的な影響 治療中から継続的に 実際の不便さが、数字や画像だけでは伝わりにくくなります

検査は、受ければ受けるほど有利になるというものではありません。どの検査が必要かは主治医等が医学的に判断する事項であり、後遺障害の申請のために不要な検査を求めることは適切ではありません。また、主治医に特定の等級や法的な結論を書いてもらうよう求めるのではなく、医学的な事実と見通しを中立的に確認することが基本です。

期間制限について

請求の相手方と根拠によって、期間の考え方は異なります。まとめて「交通事故の時効は3年」と理解してしまうと、判断を誤ることがあります。

  • 自賠責保険への被害者請求について、国土交通省の案内では、後遺障害に関するものは症状固定日の翌日から3年以内、傷害に関するものは事故発生の翌日から3年以内とされています。あわせて同案内は、請求が遅れる場合について時効更新の制度があるため各損害保険会社(共済組合)に相談するよう示しています。
  • 加害者に対する不法行為に基づく損害賠償請求については、民法第724条が、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間、不法行為の時から20年間と定め、同法第724条の2が、人の生命又は身体を害する不法行為については前者を5年間とする旨を定めています。
  • 任意保険契約に基づく請求については、保険法第95条第1項が、保険給付を請求する権利等は行使することができる時から3年間行使しないときは時効によって消滅する旨を定めています。起算点の具体的な扱いや請求の手続は約款の定めにもよるため、契約内容とあわせて確認する必要があります。

いずれについても、事故日、症状固定日、権利を行使できることを知った時期、改正法の経過措置、請求の主体などによって起算点や期間の扱いが変わり得ます。将来、人工膝関節の手術を受けたという事実だけで、当然に新たな期間が始まるわけではありません。他方で、示談や請求の時点で予測できなかった後遺症について、起算点をどのように考えるかが別途問題となる場合もあります。期限が問題になり得ると感じた時点で、事故日と症状固定日を前提に確認しておくことをおすすめします。

弁護士に相談を検討したい場面

相談したからといって、結果が保証されるわけではありません。相談で整理できるのは、手元の資料で何が示せて何が足りないのか、どの順序で何を検討するのか、という点です。次のような場面では、判断の前に一度整理しておく意味があります。

  • 保険会社から症状固定を打診された、あるいは治療費の対応を終了すると連絡があったとき
  • 後遺障害診断書の作成を主治医に依頼する前
  • 後遺障害の認定結果を受け取り、内容に疑問があるとき
  • 主治医から、将来の変形性膝関節症や人工膝関節置換術について説明を受けたとき
  • 示談案や免責証書を受け取り、署名する前

資料がすべて揃っていなくても、現時点で何があるかを確認するところから整理を始めることができます。

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よくある質問

脛骨高原骨折を負うと、いずれ人工膝関節が必要になるのでしょうか。

必ずそうなるとはいえません。関節面を含む骨折の後に変形性膝関節症が生じ得ることは医学的に指摘されていますが、進行するかどうか、手術に至るかどうかは、関節面の状態、整復の程度、合併損傷、年齢、活動性などにより異なります。ご自身の見通しは、画像と経過を把握している主治医等にご確認ください。

将来、人工膝関節を入れる可能性があることは、後遺障害の等級に反映されますか。

現在の等級は、症状固定の時点で実際に残っている膝の機能、痛み、変形などを基礎に評価されます。人工関節を挿入置換した場合の評価は、実際に置換がなされた関節について問題となるものであり、将来の可能性だけで先取りできるものではありません。

将来の手術費用は、今回の示談で請求できますか。

請求できる可能性はありますが、当然に認められるわけではありません。事故との相当因果関係、手術の必要性と具体的な蓋然性、想定される実施時期、費用の見込みを資料で示せるかどうかによって結論が変わります。主治医等の具体的な見解が重要な資料になります。

症状固定は誰が決めるのですか。

医学的な改善の見込みについての判断と、自賠責の審査や示談交渉、訴訟における法的な評価とは、別のものです。保険会社が治療費の対応を終了した日が当然に症状固定日になるわけではなく、受傷から一定期間が経過したことや骨がついたことだけで当然に決まるものでもありません。個別の治療経過を前提に検討する必要があります。

示談した後に膝が悪化したら、追加で請求できますか。

清算条項があれば必ずできない、というものではありませんが、必ずできるというものでもありません。示談の時点でその症状を予測できたか、示談の金額や交渉の経過、条項の文言、後に生じた症状と事故との因果関係などによって結論が変わります。署名の前に、条項の内容を確認しておくことをおすすめします。

膝の可動域は、自分で測った角度でも資料になりますか。

ご自身の測定値だけを根拠に等級が判断されるものではありません。誰が、いつ、どの方法で測定したのかが記録として残っていることが重要です。労災の認定基準では、原則として他動運動により、健側と比較して測定することが示されています。

膝がぐらつきますが、可動域は保たれています。後遺障害の対象になりますか。

動揺関節として検討される場合があります。労災の認定基準では硬性補装具の必要性の程度に応じた準用の取扱いが示されていますが、自賠責で当然に同じ結論になるとは限りません。徒手検査やストレス撮影の結果、装具の処方内容と実際の使用状況を確認したうえで判断する必要があります。

事故の前から膝に痛みがありました。請求できないのでしょうか。

請求できないと決まるわけではありません。事故との医学的な因果関係、自賠責における既存障害・加重の取扱い、民事の損害賠償における素因減額は、それぞれ別の問題です。事故前の診療録や画像が残っているかどうかで、議論の前提が変わります。

まとめ

  • 脛骨高原骨折は膝の関節面を含み得る骨折であり、可動域制限、動揺性、疼痛、変形など複数の症状が重なることがあります。
  • 現在の後遺障害は、症状固定時に実際に残っている状態を基礎に評価されます。将来人工膝関節を入れる可能性があることだけでは、置換後の等級を先取りできません。
  • 関節面を含む骨折の後に変形性膝関節症が生じ得ることは医学的に指摘されていますが、個々の方の予後を断定することはできません。研究上の割合を自分の手術確率と読み替えないことが大切です。
  • 将来の手術費用は、必要性、具体的な蓋然性、事故との因果関係、実施時期、費用の見込みをどこまで示せるかによって、結論が変わります。
  • 示談の方法には、一括での解決、留保条項、時期を急がない、部分的な処理といった選択肢があり、いずれにも検討すべき点があります。
  • 次の行動としては、症状固定時の画像と可動域の測定結果を確認すること、主治医等に将来の見通しを具体的に確認すること、示談案の条項を署名前に確認することが挙げられます。

脛骨高原骨折の事案では、現在残っている症状の評価と、将来のリスクへの備えとを、それぞれ別に整理する必要があります。後遺障害の申請前や示談案への署名前であれば、資料を確認したうえで方針を検討する余地があります。

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監修者

藤井 貴之(弁護士・公認会計士/兵庫県弁護士会所属)

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