取引先に商品を納め、業務を終え、請求書も送ったのに、支払期日を過ぎても入金がない。電話やメールで催促しても返事が来ない。こうした売掛金の未回収は、資金繰りに直結するため、できるだけ早く手を打ちたい場面です。一方で、感情的な督促や根拠の乏しい請求は、かえって回収を難しくすることがあります。
未回収が生じたときにまず確認すべきは、請求額、支払期日、契約当事者、納品・検収の状況、そして相手方が支払わない理由です。そのうえで、契約書・発注書・納品書・請求書・メールなどの証拠を整理することが、その後の回収方法を検討する出発点になります。契約書がない場合でも、他の資料を組み合わせて請求を検討できる場合があります。
この記事では、神戸市須磨区・垂水区周辺で事業を営む法人・個人事業主・フリーランスの方に向けて、売掛金を支払ってもらえないときの初動対応と、確保しておくべき証拠を整理します。なお、回収の見通しや採るべき手続は、契約内容・証拠関係・相手方の資力など個別事情により異なります。実際の対応にあたっては、資料を確認したうえで判断する必要があります。
支払期日を過ぎても入金がなく、対応に迷っている方へ。契約書や請求書、相手方とのやり取りを確認することで、回収に向けた方針を整理しやすくなる場合があります。まずは手元の資料をそろえたうえでご相談ください。
Contents
売掛金を支払ってもらえないとき、まず確認すべきこと
回収に向けて動き出す前に、自社の請求内容そのものを点検しておくことが重要です。請求額や当事者があいまいなまま督促や法的手続に進むと、相手方の反論を招いたり、手続をやり直すことになったりするおそれがあります。最初に次の点を整理してください。
請求先と契約当事者を特定する
誰に対して請求できるのかは、契約の当事者が誰かによって決まります。取引の相手が法人なのか個人事業主なのか、法人であればどの会社(商号・所在地)なのかを、登記事項証明書なども参照して確認します。担当者個人とやり取りしていても、契約上の債務者は会社であることが通常です。代表者など個人に請求できるかは、連帯保証の有無など個別の事情によるため、安易に個人へ請求すると争いになることがあります。
請求額・支払期日・対象取引を整理する
いくらを、いつまでに支払う約束だったのか、どの取引の代金なのかを明確にします。継続的に取引している相手の場合、複数の請求が混在していることがあるため、取引ごとに金額・納品日・支払期日・入金状況を一覧にして整理しておくと、後の手続でも役立ちます。支払期日は、契約や請求書の記載、これまでの支払慣行などから確認します。
納品・役務提供・検収が完了しているか
代金を請求するうえでは、自社側の義務(納品や役務の提供)を果たしていることが前提になります。物品の引渡し、サービスの提供、成果物の納品が完了しているか、契約上検収が必要な場合は検収が済んでいるかを確認します。相手方が「まだ受け取っていない」「検収していない」と主張する余地がないか、納品書・受領印・配送記録・成果物データなどで裏づけられるかを点検しておくとよいでしょう。
相手方が述べている未払い理由を確認する
相手方が単に支払を忘れているのか、資金繰りが厳しいのか、それとも品質・数量・仕様・納期・検収などに不満があって支払を拒んでいるのかによって、その後の対応は変わります。相手方が損害の発生や別債権との相殺を主張している場合、単純な未払いとは異なる検討が必要です。相手方の言い分は、できる限りメールなど記録の残る形で確認しておきます。
まず行うべき初動対応
請求内容を点検したら、回収に向けた初動として、入金状況の確認、資料の整理、相手方への連絡の記録化を進めます。ここで証拠を散逸させないことが、その後の交渉や手続を有利に進めるための基礎になります。
入金確認と社内記録の整理
まず、本当に入金がないのかを通帳やインターネットバンキングの明細で確認します。入金額が一部にとどまっていないか、別口座に入っていないか、相殺や手数料控除がないかもあわせて点検します。確認した内容は、いつ・誰が・何を確認したかがわかる形で社内に記録しておきます。
関係資料を一か所に集める
契約書、発注書、注文請書、見積書、納品書、検収書、請求書、領収書、入金履歴、相手方とのメールやチャット、議事録など、その取引に関する資料を一か所に集めます。後で「どの資料があるか」を探す手間を省くだけでなく、証拠として何が足りないかを早い段階で把握できます。電子データは削除・上書きされないよう保存し、紙の資料はスキャンしておくと安全です。
相手方への連絡は記録に残す
支払を求める連絡は、できる限りメールや書面など、後から内容と日時を確認できる形で行うことをおすすめします。電話で話した場合も、日時・相手・話した内容をメモに残します。相手方が「支払う」と述べた、分割払いを申し出た、一部を入金した、といったやり取りは、後述する債務の承認との関係で意味を持つ場合があるため、特に丁寧に記録しておきます。
安易な口頭合意・追加取引に注意する
その場をしのぐための口頭での支払猶予や減額の合意は、後で内容をめぐる争いを生みやすく、慎重に判断する必要があります。分割払いに応じる場合は、合意内容を書面化することを検討します。また、未払いが続いている相手に対し、出荷停止やサービス停止、新たな取引の可否をどうするかは、契約内容や実務上の影響を踏まえて判断する必要があります。威圧的な取立て、SNSでの公表、取引先への過度な連絡などは、別のトラブルを招くおそれがあるため避けてください。相手方の資金繰り悪化や倒産の兆候がうかがえる場合は、通常の督促にとどまらない検討が必要になるため、早めに相談することが望ましいといえます。
初動の段階で資料を整理しておくと、どの回収方法が現実的かを検討しやすくなります。証拠が足りるか不安な場合や、相手方の対応に迷う場合は、早めに状況を整理することをおすすめします。
回収に向けて確保すべき証拠
売掛金を請求するうえでは、契約が成立したこと、債権の金額、支払期日、自社が納品・役務提供を完了したこと、(必要な場合)検収が済んだこと、相手方が支払義務を認めていることを、資料によって示せるかどうかが重要になります。どの資料が何を示す証拠になるかを整理すると、次のとおりです。確保できていない資料があれば、早めに収集・保存を検討してください。
| 立証したい事項 | 主な証拠 | 保存・収集の留意点 |
|---|---|---|
| 契約の成立・取引条件 | 取引基本契約書、個別契約書、見積書、発注書、注文書、注文請書、申込みと承諾のわかるメール・チャット | 契約書がない場合は、見積りから受注・納品までの一連のやり取りを時系列でそろえる |
| 債権の金額 | 請求書、見積書、発注書、過去の同種取引の請求・支払履歴 | 金額の根拠(単価・数量・期間など)がわかる資料も併せて保存する |
| 支払期日 | 契約書・請求書の支払条件、これまでの支払サイクルがわかる資料 | 「月末締め翌月末払い」などの慣行がある場合は、過去の入金実績で裏づける |
| 納品・役務提供の完了 | 納品書、受領印、配送記録、成果物データ、クラウド管理画面の履歴、納品物の写真 | 電子データは更新日時が変わらないよう原本を保存し、別途バックアップを取る |
| 検収の完了 | 検収書、検収完了の連絡メール、システム上の検収記録 | 検収条件が契約で定められている場合は、その条項とあわせて確認する |
| 相手方が支払義務を認めたこと | 支払を約束したメール・メッセージ、分割払いの申出、一部入金の記録、債務を認める書面 | 後述の時効との関係で重要になるため、日付がわかる形で確実に保存する |
| 相手方の特定・資力に関する情報 | 取引先の登記事項証明書、取引銀行がわかる資料、保証書、担保設定契約書、所有権留保条項のある契約書 | 強制執行を見据える場合に備え、判明している範囲で把握しておく |
どの証拠がどの程度の意味を持つか、不足分をどう補うかは、事案により異なります。手元の資料で請求を裏づけられるか判断に迷う場合は、資料を確認したうえで検討することをおすすめします。
契約書がない場合でも請求できる可能性
「契約書を作っていないから請求できないのではないか」と心配される方は少なくありません。しかし、契約書がないことだけを理由に直ちに請求できないとは限りません。契約は、当事者の合意があれば書面がなくても成立し得るためです。
契約書以外の証拠を組み合わせる
契約書がない場合は、契約が成立したこと、金額、納品・役務提供、支払期日、相手方の受領・検収などを、他の資料の組み合わせで示すことを検討します。具体的には、見積書、発注書、納品書、請求書、相手方とのメールやチャット、過去の同種取引における支払履歴などです。とりわけ、相手方が発注の意思や支払義務を示したメール・メッセージは、契約成立を裏づける有力な手がかりになり得ます。
契約書がないことのリスク
もっとも、契約書がない場合、取引条件(数量・仕様・納期・検収条件・支払時期など)について相手方と認識が食い違い、争いになりやすい面があります。請求できるかどうか、どこまで請求できるかは、残っている証拠の内容と相手方の主張により変わります。証拠が十分かどうかは、個別に確認する必要があります。
再発防止として取引フローを整える
同じトラブルを繰り返さないために、今後は取引基本契約書や個別契約書、発注書・注文請書、検収書といった書面を取り交わす運用を整えることが有効です。契約書に支払期日・遅延損害金・検収条件・契約不適合への対応などを明記し、受発注から検収・請求までの流れを記録に残す仕組みをつくることで、未回収が生じた際の立証が容易になります。継続的な取引が多い場合は、こうした体制づくりについても専門家に相談する余地があります。
契約書がない取引や、口頭・メール中心の取引で未回収が生じた場合も、残っている資料から請求を検討できることがあります。あわせて、今後の契約・検収の体制づくりについてもご相談いただけます。
催促・内容証明を送る前の注意点
支払を求める際は、相手方との関係や取引の継続も視野に入れつつ、段階を踏んで対応することが基本です。いきなり強い手段に出る前に、次の点に注意してください。
感情的・威圧的な督促は避ける
支払が滞ると強い口調で催促したくなりますが、威圧的な取立てや、取引先・第三者を巻き込む行為は、かえって不利に働くおそれがあります。督促は、事実(金額・支払期日・未入金の状況)と、いつまでに支払を求めるかを、冷静に伝えることが大切です。
支払期限を明示し、記録に残す
催促の際は、支払を求める期限を具体的に示し、その内容と送付日が記録に残る形で行います。後日の手続を見据えると、口頭だけでなく書面やメールで残しておくことが有効です。
分割払い・減額・支払猶予の申出への対応
相手方から分割払いや支払猶予、減額の申出があった場合、応じるかどうかは資金繰りや回収可能性を踏まえて判断します。応じる場合は、合意内容(金額・期日・分割回数・遅延時の取扱いなど)を書面化することを検討してください。なお、相手方が支払義務を認めたり、一部を支払ったりすることは、時効との関係で意味を持つ場合があります(後述)。その効果は事案により異なるため、重要な合意を交わす前に確認しておくと安心です。
内容証明郵便の位置付け
内容証明郵便は、いつ・どのような内容の通知を相手方に送ったかを証拠化できる方法です。配達証明を付ければ、相手方に到達した事実も残せます。心理的に支払を促す効果が期待できる一方、それ自体で相手方に支払を強制できるものではありません。後述する時効との関係(催告による完成猶予など)でも用いられますが、その効果や期限の取扱いは個別の確認が必要です。内容証明を送るべきか、どのような内容にするかについては、送付前に検討することをおすすめします。
相手方の反応別に検討する回収方法
採るべき手段は、相手方の反応によって変わります。代表的なケースごとの考え方を整理します。いずれの場合も、回収の見通しは証拠と相手方の資力によって左右されるため、一律の結論にはなりません。
| 相手方の状況 | 検討される対応の方向性 |
|---|---|
| 支払う意思はあるが遅れている | 支払期限を明示した催促、必要に応じて分割払いの合意書化。関係の維持と早期入金のバランスを検討する |
| 一部しか支払われない | 残額の内訳と支払計画を明確にし、合意内容を書面化。残額について手続を検討する |
| 連絡が取れない | 書面・内容証明で記録を残しつつ、支払督促や訴訟など法的手続を検討する。所在不明の場合は手続上の制約に注意する |
| 品質・検収を理由に争っている | 契約内容・仕様・検収条件・契約不適合の有無・損害の有無を確認。単純な回収とは別の論点として整理する |
| 資金繰り悪化・倒産の兆候がある | 担保・保証・相殺の可否、保全(仮差押え)、取引停止などを早めに検討する |
| 相手方の財産が不明 | 判明している情報を整理しつつ、債務名義取得後の財産開示手続・第三者からの情報取得手続も視野に入れる |
法的手続の選択肢
任意の交渉で解決しない場合、法的手続を検討します。手続にはそれぞれ向き・不向きがあり、請求額、相手方が争うかどうか、相手方の資力、かけられる費用と時間によって選択は変わります。主な手続の概要は次のとおりです。なお、各手続の要件・費用・管轄・申立書式・オンライン提出の可否は変更されることがあるため、利用にあたっては裁判所の公式情報などで最新の取扱いを確認してください。
| 手続 | 向いているケース | 主な留意点 |
|---|---|---|
| 任意交渉 | 相手方に支払意思があり、条件を調整すれば解決が見込める場合 | 合意内容は書面化する。解決しなければ次の手続を検討する |
| 内容証明郵便 | 請求の事実を記録に残し、支払を促したい場合 | それ自体に強制力はない。時効との関係での効果は個別確認が必要 |
| 民事調停 | 話合いによる解決を図りたい場合、分割など柔軟な解決を望む場合 | 相手方の出席・合意が前提。不成立なら訴訟等を検討する |
| 支払督促 | 債権の存在・金額に実質的な争いがなく、書面手続で迅速に進めたい場合 | 請求額の上限はない。相手方が異議を述べると通常訴訟へ移行する(民事訴訟法382条以下) |
| 少額訴訟 | 請求額が60万円以下で、原則1回の期日で解決したい場合 | 同一の簡易裁判所で年10回まで。相手方の移行申述等で通常訴訟になることがある(民事訴訟法368条) |
| 通常訴訟 | 請求額が大きい場合、相手方が争う場合、複雑な争点がある場合 | 140万円以下は簡易裁判所、超える場合は地方裁判所。時間・費用がかかることが多い |
| 仮差押え | 判決を待つ間に相手方が財産を処分するおそれがある場合に、財産を仮に確保したいとき | 担保(保証金)の供託が必要となることが多い。要件の検討を要する(民事保全法) |
| 強制執行 | 判決・和解調書・支払督促などの債務名義を得た後、実際に回収するとき | 差し押さえる財産の特定が必要。財産がなければ回収できないことがある(民事執行法) |
| 財産開示手続・第三者からの情報取得手続 | 債務名義はあるが、相手方の財産(預貯金口座・勤務先など)が不明なとき | 令和元年改正で実効性が高められた。利用には債務名義などの要件がある(民事執行法) |
これらは段階的に組み合わせて用いることもあります。たとえば、内容証明で催告したうえで支払督促や訴訟に進み、債務名義を得てから強制執行を行う、という流れです。どの手続が適しているかは、証拠の状況や相手方の資力、費用対効果を踏まえて検討する必要があります。執行認諾文言付きの公正証書を作成しておくと、訴訟を経ずに強制執行が可能になる場合がありますが、これも個別の検討が必要です。
時効・倒産兆候・取適法等の注意点
回収方法を考えるうえで見落とせないのが、消滅時効、相手方の倒産リスク、適用され得る特別法、そして相手方以外への請求可能性です。
売掛金の消滅時効
債権は、一定期間行使しないと、相手方が時効を主張することで消滅し得ます。令和2年4月1日施行の改正民法では、債権の消滅時効は、原則として権利を行使することができることを知った時から5年(民法166条1項1号)、または権利を行使することができる時から10年(同項2号)のいずれか早い方の経過で完成するとされています。改正前にあった売掛金の短期消滅時効(2年など)や商事債権の時効(5年)は廃止されました。もっとも、改正法の施行日より前に生じた債権については、なお改正前の規定が適用されるとされており(改正債権法附則10条4項)、古い債権では取扱いが異なる可能性があります。
時効は、一定の事由により完成が猶予されたり、進行がリセットされたり(更新)します。たとえば、催告(請求)には6か月の完成猶予の効果があるとされ(民法150条)、当事者間で協議を行う旨を書面等で合意した場合にも完成猶予が生じ得ます(同151条)。また、相手方が債務を承認した場合には時効が更新されるとされています(同152条)。分割払いの申出や一部入金が承認に当たることもあります。これらの効果や期限の計算は事案により異なるため、時効が迫っている可能性がある場合は、早めに資料を確認することが重要です。古い債権で旧法が適用される可能性がある場合は、特に注意を要します。
なお、支払が遅れた場合の遅延損害金は、契約で利率を定めていればその利率により、定めがなければ法定利率によります。法定利率は変動制で、現時点では年3パーセントとされています(民法404条)。具体的な金額の算定は、起算日や利率の確認が必要です。
相手方の資金繰り悪化・倒産の兆候
支払猶予の依頼が繰り返される、連絡が取れなくなる、事務所や店舗が閉まっている、他社への未払いの話が聞こえてくる、代理人弁護士から通知が届く、破産や民事再生の噂がある——こうした兆候がある場合は、通常の督促だけでなく、担保・保証・相殺の可否、保全(仮差押え)、取引の停止、相手方が法的整理に入った場合の債権届出などを早めに検討する必要があります。対応が遅れると回収が困難になることがあるため、兆候に気づいた段階で相談することをおすすめします。具体的にどの手段が適切かは、個別事情により異なります。
取適法・フリーランス法の適用可能性
事業者間の委託取引では、取引の内容や当事者の規模によって、特別法が適用される場合があります。一つは、令和8年1月1日に施行された「中小受託取引適正化法」(通称・取適法。従来の下請法を改正したもの)で、製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託などの一定の取引について、委託事業者(旧・親事業者)に支払期日の設定や支払遅延の禁止などの義務を課しています。もう一つは、令和6年11月1日に施行された「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)で、従業員を使用しない個人などへの業務委託について、取引条件の明示や報酬の支払期日に関するルールを定めています。
ただし、これらの法律はすべての取引に当然に適用されるわけではありません。対象となる取引の種類、当事者の関係、資本金や従業員数、委託内容、取引の時期などにより適用関係が変わります。自社の取引が対象になるか、対象になる場合に何を主張できるかは、別途確認が必要です。とりわけ取適法は施行されて間もないため、適用の有無や具体的な取扱いについては、公正取引委員会・中小企業庁の公式情報を確認したうえで判断することをおすすめします。
代表者個人への請求・保証・担保
相手方が法人の場合、原則として請求できるのは法人に対してであり、代表者個人に当然に請求できるわけではありません。代表者個人への請求が考えられるのは、連帯保証契約がある場合などに限られます。保証書や担保設定契約、所有権留保条項のある契約書などがあれば、回収手段の幅が広がる可能性があります。これらの資料の有無と内容を確認しておくとよいでしょう。誰に・どこまで請求できるかは、契約関係により異なります。
弁護士に相談するタイミング
弁護士に相談すると必ず相手方が支払う、というわけではありません。もっとも、資料を整理して相談することで、請求できる見込み、採り得る手続、想定される相手方の反論、費用対効果、取引継続への影響などを踏まえて、方針を検討しやすくなります。次のような場合は、早めの相談を検討する価値があります。
- 支払期日を過ぎても入金がなく、催促しても回答がない
- 分割払い・減額・支払猶予を求められており、応じてよいか判断に迷う
- 契約書がなく、請求できるか、証拠が足りるか不安がある
- 相手方が品質や検収を理由に支払を拒んでいる、相殺を主張している
- 時効が迫っている可能性がある、または古い債権で取扱いがわからない
- 相手方の資金繰り悪化や倒産の兆候がある
- 内容証明を送るべきか、支払督促・訴訟・仮差押えを検討すべきか迷っている
- 金額が大きく、継続取引への影響も大きい
当事務所では、弁護士と公認会計士の視点から、契約・取引の証拠関係の整理や、回収方針の検討についてご相談に対応しています。回収の可否や見通しは個別事情により異なりますので、まずは資料をそろえてご相談ください。
相談前に準備しておきたいチェックリスト
相談前に手元の資料を整理しておくと、状況を正確に伝えやすく、検討もスムーズになります。次の資料・情報のうち、あるものをそろえておくとよいでしょう。
- 取引基本契約書・個別契約書(ある場合)
- 見積書・発注書・注文請書
- 納品書・検収書・受領印・配送記録
- 請求書・領収書
- 通帳・インターネットバンキングの入金履歴
- 相手方とのメール・チャット・議事録
- 相手方が支払や分割払いに言及したやり取り、一部入金の記録
- 相手方(取引先)の登記事項証明書、所在・連絡先がわかる資料
- 相手方の資産・取引銀行など、わかる範囲の情報
- 取引開始から現在までの経緯をまとめた時系列メモ
上記の資料がそろっていなくても、ある範囲でご相談いただけます。神戸市須磨区・垂水区周辺で売掛金の未回収にお困りの事業者・個人事業主の方は、まずは状況をお聞かせください。
よくある質問
契約書がなくても売掛金を請求できますか。
契約書がないことだけを理由に請求できないとは限りません。契約は合意があれば成立し得るため、見積書・発注書・納品書・請求書・メールなど他の証拠で、契約の成立や金額、納品、相手方の受領などを示せるかが重要になります。請求できるかどうかは残っている証拠の内容によるため、資料を確認したうえで判断する必要があります。
請求書だけで裁判はできますか。
請求書は債権額を示す資料の一つですが、それだけで請求が認められるとは限りません。相手方が契約の成立や納品を争う場合には、発注のやり取りや納品・検収の記録など、他の資料とあわせて立証することが必要になります。どの程度の証拠が必要かは事案により異なります。
内容証明を送れば支払ってもらえますか。
内容証明郵便は、いつどのような請求をしたかを記録に残せる方法で、心理的に支払を促す効果が期待できる場合があります。ただし、それ自体で支払を強制できるものではありません。支払がなければ、支払督促や訴訟などの次の手続を検討することになります。
支払督促と訴訟はどちらがよいですか。
債権の存在や金額に実質的な争いがなく、書面手続で迅速に進めたい場合は支払督促が向くことがあります。一方、相手方が争うことが見込まれる場合や争点が複雑な場合は、はじめから訴訟を選ぶ方が適切なこともあります。支払督促は相手方の異議で通常訴訟に移行するため、見通しを踏まえて選択する必要があります。
少額訴訟は売掛金回収に使えますか。
請求額が60万円以下の金銭の支払を求める場合に利用でき、原則として1回の期日で判決が言い渡されます。ただし、同一の簡易裁判所で利用できるのは年10回までとされ、相手方が通常手続への移行を求めた場合などには通常訴訟になります。金額や事案の性質に応じて、他の手続とあわせて検討します。
分割払いの提案を受けてもよいですか。
資金繰りや回収可能性を踏まえ、分割でも回収を進める方が合理的な場合があります。応じる場合は、金額・期日・分割回数・遅延時の取扱いなどを書面化することを検討してください。なお、相手方が支払義務を認めることは時効との関係で意味を持つ場合があるため、合意内容は慎重に検討するとよいでしょう。
時効が近い場合はどうすればよいですか。
時効が迫っている可能性がある場合は、まず手元の資料で支払期日や取引の時期を確認することが重要です。催告や協議の合意、相手方の承認などにより時効の完成が猶予されたり更新されたりすることがありますが、その効果や期限の計算は事案により異なります。古い債権では旧法が適用される可能性もあるため、早めに確認することをおすすめします。
取引先が倒産しそうな場合はどうすればよいですか。
支払猶予の繰り返しや連絡途絶、他社への未払いの噂などの兆候がある場合は、通常の督促に加え、担保・保証・相殺の可否、仮差押えなどの保全、取引停止、相手方が法的整理に入った場合の債権届出などを早めに検討する必要があります。対応が遅れると回収が難しくなることがあるため、兆候に気づいた段階での相談が望ましいといえます。
弁護士に相談するときは何を準備すればよいですか。
契約書・発注書・納品書・検収書・請求書・入金履歴・相手方とのメールやチャット、取引先の登記事項証明書、これまでの経緯をまとめた時系列メモなど、あるものをそろえておくと状況を正確に伝えやすくなります。すべてそろっていなくても、ある範囲でご相談いただけます。
まとめ
売掛金を支払ってもらえないときは、感情的に督促する前に、まず事実と証拠を整理することが回収への近道になります。要点は次のとおりです。
- 最初に、請求額・支払期日・契約当事者・納品/検収の状況・相手方の未払い理由を確認する
- 契約書・発注書・納品書・検収書・請求書・入金履歴・メールなどを一か所に集めて保存する
- 契約書がなくても、他の証拠を組み合わせて請求を検討できる場合がある
- 督促は冷静に、支払期限を明示し、やり取りは記録に残す。安易な口頭合意は避ける
- 相手方の反応に応じて、任意交渉・内容証明・調停・支払督促・少額訴訟・通常訴訟・仮差押え・強制執行などを段階的に検討する
- 時効、相手方の倒産、品質・検収・相殺の争い、保証・担保、取適法・フリーランス法の適用可能性に注意する
- 資料を整理して弁護士に相談すると、回収方針や費用対効果を検討しやすくなる
回収の可否や採るべき手続は、契約内容・証拠・相手方の資力など個別事情により異なります。判断に迷う場合や時効・倒産の懸念がある場合は、早めに資料を確認することをおすすめします。
神戸市須磨区・垂水区・西区・北区周辺で、売掛金や業務委託料、工事代金、報酬の未回収にお困りの事業者・個人事業主・フリーランスの方へ。弁護士と公認会計士の視点から、証拠関係の整理と回収方針の検討についてご相談に対応しています。まずは手元の資料をそろえてご相談ください。
監修者・執筆者
弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所
弁護士・公認会計士 藤井 貴之
所属:兵庫県弁護士会
取扱分野:債権回収、企業法務・法律顧問、契約紛争、相続、交通事故ほか
当事務所は、弁護士業務に加えて会計・税務の知見をふまえ、事業者の取引トラブルや債権回収に関するご相談に対応しています。なお、税務申告など税理士業務の範囲については、別途のご案内となる場合があります。
参考資料
- e-Gov法令検索「民法」(消滅時効・催告・協議による完成猶予・承認・遅延損害金・法定利率ほか)
- e-Gov法令検索「民事訴訟法」(支払督促・少額訴訟ほか)
- e-Gov法令検索「民事保全法」(仮差押えほか)
- e-Gov法令検索「民事執行法」(強制執行・財産開示手続・第三者からの情報取得手続ほか)
- 裁判所「支払督促」「少額訴訟」「民事調停」「民事執行」「財産開示手続」各案内ページ
- 法務省「法定利率について」
- 公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」
- 公正取引委員会・厚生労働省・中小企業庁「フリーランス・事業者間取引適正化等法」関係情報

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