税務調査で「この仕入れは控除できない」と指摘された、修正申告を勧められた、消費税の還付が入金されない――仕入税額控除をめぐる問題は、このような形で表面化します。
取引が実在し代金を支払っていても、それだけで控除が認められるわけではありません。他方で、請求書の記載に不備があっても、直ちに全額が控除できなくなるとは限りません。まず、否認の理由が取引の実在、課税区分・計上時期、帳簿と請求書等の記載、保存、調査での提示・提出のどこにあるのかを、取引と課税期間ごとに特定し、適法な訂正・特例・経過措置で補える部分と、手続で争う部分とを分けて検討します。
以下は、国内取引について一般課税で申告した中小企業・個人事業主の方に向けて、調査で指摘を受けた段階から更正などの処分を受けた後までの確認事項を整理したものです。説明は令和5年(2023年)10月1日以後の取引に適用される現在の制度(適格請求書等保存方式)を前提とし、それより前の取引は当時の制度で判断します。結論は、取引の内容と資料の状況によって異なります。
仕入税額控除の否認は、まず理由と手続の段階を分ける
一般課税の事業者が仕入税額控除を受けるには、課税仕入れ等に当たることに加えて、原則として、法定の事項を記載した帳簿と請求書等の両方を保存していることが必要です(消費税法第30条第1項・第7項、国税庁による帳簿・請求書等の保存要件の解説)。保存がない場合に控除が認められないのは、保存がない課税仕入れ等に係る税額です。災害その他やむを得ない事情で保存できなかったことを事業者が証明した場合は例外とされていますが(同条第7項ただし書)、単なる紛失や受け取り忘れが当然にこれに当たるわけではありません。「取引は本物だから控除できるはずだ」という説明だけでは結論は出ないため、どの要件が問題とされ、手続がどの段階にあるのかを最初に確認します。
還付の保留と否認処分は同じではない
還付申告の内容に確認が必要と認められる場合、国税当局は還付金の支払をいったん保留し、行政指導として資料の提出を求めたり、税務調査を行ったりすることがあります(国税庁「消費税還付申告に関する国税当局の対応」)。入金がないことだけで、控除が否認されたと決まったわけではありません。保留が長引く場合も、その性質や当否は経過を踏まえて個別に検討します。
行政指導としての資料提出の依頼と税務調査は区別され(国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」)、段階によって取れる手続と期限が異なります。まず、次のどの段階にあるかを確認してください。
- 資料の提出依頼(行政指導)又は税務調査を受けている段階(どちらに当たるかは担当者に確認します)
- 調査結果の説明を受け、修正申告を勧められた段階
- 更正などの処分の通知書を受け取った段階
否認理由を5つに分ける
指摘の内容は、次の5つのどれに当たるかで整理すると、確認すべき資料と対応が見えやすくなります。理由が重なることもあるため、取引ごと・課税期間ごとに確認します。
| 否認理由 | 主な確認事項 | 資料・対応 |
|---|---|---|
| 取引の実在・内容 | 相手方、給付の内容、時期が帳簿・請求書等と一致するか | 契約書、発注書、納品書、検収記録、成果物、当時のメール。請求書と入出金の記録だけでは、給付の全体を示したことになりません |
| 課税区分・計上時期 | 課税仕入れに当たるか(給与等、非課税取引、事業と関係のない支出でないか)、どの課税期間の取引か | 契約内容、引渡し・役務完了・検収の記録、総勘定元帳、税区分の明細 |
| 帳簿・請求書等の 記載 |
法定の記載事項、書類の種類、登録番号と取引時点の登録状況 | 元の請求書、修正後の書類、仕入明細書と相手方の確認記録、登録情報の確認記録 |
| 保存 | 原則として帳簿と請求書等の両方を、保存期間中、確認できる形で保存しているか | 電子データの原本、保存場所、アクセス・取得の履歴 |
| 提示・提出 | 調査の際に適時に確認できる状態だったか、求めにどう対応したか | 求められた日時と内容、回答の記録、提出物の控え |
課税仕入れに当たる取引でも、その課税期間の課税売上高が5億円を超える場合や課税売上割合が95%未満の場合は、個別対応方式又は一括比例配分方式で計算するため、控除できる額が制限されることがあります(国税庁による仕入控除税額の計算方法の解説)。簡易課税制度は売上げに係る税額を基礎に計算する別の仕組みで、一般課税と同じ否認・還付の計算はできません。否認の原因が外注費と給与の区別や、居住用賃貸建物・輸出免税といった個別の制度にある場合は、その制度に即して別に検討します。
帳簿・インボイス・取引実態を1件ずつ照合する
否認の対象となった取引は、帳簿の記載を起点に、発注、納品、検収、支払までの資料を1件ずつ対応づけます。社内で照合表を作るなら、取引ごとに番号を付け、「税務署の指摘」「自社の説明」「裏付けとなる資料」「不足している点」を分けて書き出すと、争いのない部分と争う部分を区別しやすくなります。照合表は作業上の工夫で、法律が求める書類ではありません。元の資料は上書きせず、作成・整理した日も実際の日付で残します。
帳簿と請求書で確認する事項
帳簿には、相手方の氏名又は名称、取引年月日、取引の内容(軽減税率の対象であればその旨)、支払対価の額を記載します(消費税法第30条第8項第1号)。適格請求書(インボイス)の記載事項は、発行者の氏名又は名称と登録番号、取引年月日、取引の内容(軽減税率の対象であればその旨)、税率ごとに区分した対価の合計額と適用税率、税率ごとの消費税額等、交付を受ける事業者の氏名又は名称です(同法第57条の4第1項)。
小売業など、不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う一定の事業で交付される適格簡易請求書では、交付を受ける事業者の氏名又は名称は記載事項ではなく、適用税率と消費税額等はいずれか一方の記載で足ります(同法第57条の4第2項)。書類の種類を確かめずに「宛名がないから控除できない」と判断するのは正確ではありません(国税庁による保存する帳簿・請求書等の記載事項の解説)。
記載事項は、請求書と納品書のように相互の関連が明確な複数の書類を合わせて満たすこともできます(国税庁のインボイス制度資料)。関連の明らかでない書類を寄せ集めれば足りるわけではなく、請求書をつづっただけで帳簿の保存に常に代わるわけでもありません。
登録番号をもとに、国税庁の公表サイトで適格請求書発行事業者の登録情報を確認することができます。現在の検索結果だけでなく、取引の時点で登録されていたかを確認してください。
送金記録と納品・業務実施の資料をつなぐ
振込みの記録は、お金が動いたことは示しますが、それだけでは、誰から、何の給付を、いつ受けたのかまで十分には示せません。給付の内容・相手方・時期は、契約書、発注書、納品書、検収記録、成果物、当時のメールなどで裏付けます。
また、実質が給与等に当たる支払、非課税取引、事業と関係のない支出は、請求書や送金の記録があっても課税仕入れになりません(国税庁による仕入税額控除の対象の解説)。指摘が「取引がない」「取引はあるが課税仕入れに当たらない」「計上する課税期間が違う」のどれかによって、集める資料が変わります。
電子データは保存と提出方法を分けて確認する
電子データで受け取った適格請求書は、そのデータを整然とした形式で明瞭に出力した書面を保存することで、消費税の請求書等の保存要件を満たす取扱いがあります(国税庁「電子で受領したインボイスの保存」)。他方、所得税・法人税の保存義務者には、電子帳簿保存法による電子取引データの保存が別に求められます。出力した紙しか残っていないから消費税の控除が当然に否認されるわけでも、紙に出力すれば元の電子データを消してよいわけでもないため、元のデータと保存・取得の履歴を残しておきます。
保存期間は、原則として、帳簿は閉鎖の日、請求書等は受領した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間です。6年目と7年目は帳簿と請求書等のいずれか一方の保存で足りる取扱いがありますが(前記の国税庁による保存要件の解説)、他の法令による保存義務や、争いが続く間の証拠の保全も考えて廃棄を判断してください。
調査について必要があるときは、税務職員は帳簿書類その他の物件を検査し、その提示又は提出を求めることができます(国税通則法第74条の2第1項)。電子データの「提示」は画面上で内容を確認できる状態にすること、「提出」は印刷した書面や記録媒体へのコピー、e-Taxなどで渡すことと説明されています(前記の国税庁FAQ)。
修正交付・特例・経過措置で補える範囲を確認する
記載に不備があるときは、不備の種類に応じて、売手からの修正交付、帳簿のみで控除できる取引、少額特例、経過措置を検討します。
国税庁は、前記のインボイス制度資料(令和8年5月。該当する頁は令和5年8月の関係府省庁会議の資料に基づくもの)で、軽微な記載不備を目的とした調査は行っておらず、調査の過程で把握した軽微な不足などには、他の関連書類による確認や修正したインボイスの交付で対応する運用を説明しています。ただし、法定の要件を免除するものではなく、取引の実態に疑いがある場合や保存・提示がない場合まで許容する趣旨でも、個別の指摘の撤回を約束するものでもありません。
売手の修正交付と確認済み仕入明細書
受け取った適格請求書に誤りがあった場合、買手が自分で書き直すことは原則として認められず、売手に修正した適格請求書の交付を求めます。売手には、記載事項に誤りがあったときに修正した適格請求書を交付する義務があります(消費税法第57条の4第4項・第5項)。
このほか、必要な事項を記載した仕入明細書等を買手が作成し、売手の確認を受けて保存する方法があります(同法第30条第9項第3号)。受け取った書類に修正事項を記載し、その修正事項について売手の確認を受けて、仕入明細書等にも当たる書類とする方法も、国税庁は認めています(国税庁「記載誤りがあるインボイスへの対応」)。元の書類、訂正の内容、確認を受けた日と方法は記録しておきます。
もっとも、修正交付の仕組みがあることと、過去の不保存や不提示が後から当然に解消されることとは、区別して考える必要があります。否認後に書類を入手・訂正した場合の効果は、元の書類の有無と保存の状況、不備の内容、取得した時期、調査での対応、申告・処分の段階を確認して、個別に判断されます。
書類の作成日・訂正日・確認日を実際より前の日付にすること、存在しない納品・検収の記録を作ること、相手方の確認を受けていないのに確認済みと表示することは、行わないでください。取引年月日は実際の日付で記載します。
帳簿のみで足りる取引と少額特例
請求書等の交付を受けることが難しい一定の取引は、帳簿の保存だけで控除できます。たとえば、税込3万円未満の公共交通機関による旅客の運送や、従業員等に支給する出張旅費等のうち通常必要と認められるものです。帳簿に必要な事項を記載することが前提で、「3万円未満の支出なら請求書は要らない」という意味ではありません。
少額特例は、基準期間の課税売上高が1億円以下、又は特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が、令和5年(2023年)10月1日から令和11年(2029年)9月30日までに国内で行う税込1万円未満の課税仕入れについて、一定の事項を記載した帳簿の保存だけで控除を認める制度です(国税庁「少額特例の要件」)。
- 1万円未満かどうかは、商品1点ごとや月の合計ではなく、1回の取引ごとに判定します(国税庁「1万円未満の判定単位」)。ちょうど1万円の取引は対象外です。
- 特定期間の判定は課税売上高で行い、給与等の支払額では代えられません。
- 仕入先が適格請求書発行事業者でない場合も対象となり得ます。帳簿に特例の適用を書き加える必要はありません。
- 設立間もない法人で基準期間がない課税期間なども、一律に対象外となるわけではないため、個別に確認します。
取引時期に応じた経過措置
適格請求書発行事業者以外の者(消費者、免税事業者、登録を受けていない課税事業者。以下「免税事業者等」といいます)からの課税仕入れは、原則として控除できませんが、経過措置により、仕入税額相当額の一定割合を控除できます。割合は、課税仕入れを行った時期によって次のとおりです。
| 課税仕入れを行った期間 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 令和5年(2023年)10月1日から 令和8年(2026年)9月30日まで |
仕入税額相当額の80% |
| 令和8年(2026年)10月1日から 令和10年(2028年)9月30日まで |
仕入税額相当額の70% |
| 令和10年(2028年)10月1日から 令和12年(2030年)9月30日まで |
仕入税額相当額の50% |
| 令和12年(2030年)10月1日から 令和13年(2031年)9月30日まで |
仕入税額相当額の30% |
情報基準日(令和8年(2026年)10月17日)の時点で新たに行う課税仕入れには70%が適用されますが、令和8年(2026年)9月30日までに行った課税仕入れには80%が適用されます。いずれも仕入代金ではなく、仕入代金に含まれる消費税相当額に対する割合です。割合は請求書の発行日や支払日ではなく、原則として、商品は引渡しの日、役務は約した役務の全部を完了した日で判定します(国税庁「2026年10月前後の取引時期の判定」)。取引の内容によっては時期に関する特例があるため、個別に確認します。
経過措置を受けるには、区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等と、経過措置の適用を受ける旨などを記載した帳簿の保存が必要です(国税庁「免税事業者等からの仕入れに係る経過措置」)。免税事業者等から受け取った請求書等に、軽減税率の対象である旨や税率ごとに区分して合計した税込価額の記載がない場合は、買手がこれらを追記して保存することが認められています。認められるのはこれらの事項の追記に限られ、適格請求書を買手が無断で修正することとも異なります。
適格請求書発行事業者から受け取った請求書に登録番号の記載がないなど、適格請求書として扱えない場合でも、区分記載請求書等の記載事項と帳簿の保存などの要件を満たせば、経過措置の適用を検討できます(国税庁「適格請求書発行事業者からの課税仕入れに係る経過措置の適用」)。
一の免税事業者等からの課税仕入れには上限もあり、その年又は事業年度の合計額(税込み)について、令和6年(2024年)10月1日から令和8年(2026年)9月30日までの間に開始する課税期間は10億円、令和8年(2026年)10月1日以後に開始する課税期間は1億円を超える部分に適用できません。割合は課税仕入れの時期で、上限は課税期間の開始日で判定します。
税務調査での提示・提出が争点になった場合
帳簿や請求書等を保管しているだけでは十分といえない場合があります。調査の際、求めに応じて適時に確認できる状態にあったか、実際にどう対応したかという経過が問題になるためです。
最高裁判決から確認すべきこと
最高裁判所第一小法廷平成16年12月16日判決(平成13年(行ヒ)第116号・民集58巻9号2458頁)は、平成2年の課税期間について、税務職員が日程を調整したうえで5回にわたり訪れて帳簿書類の提示を求めたのに対し、事業者が接待交際費に関する領収書以外の提示に応じなかった事案です(最高裁平成16年12月16日判決)。最高裁は、提示の求めに特に違法な点はなく、応じ難い格別の理由もなかったとしたうえで、帳簿又は請求書等を整理し、税務職員の検査の際に適時に提示できるよう態勢を整えて保存していなかった場合は、当時の消費税法第30条第7項の「保存しない場合」に当たり、災害その他やむを得ない事情により保存できなかったことを証明しない限り、保存がない課税仕入れについて控除は認められないと判断しました。
もっとも、この判決は、帳簿「又は」請求書等の保存を求めていた平成6年法律第109号による改正前の消費税法に関するもので、現行の帳簿「及び」請求書等の要件、インボイスの訂正、電子データの保存、1回だけの提出の遅れといった問題を直接判断したものではありません。確定した最高裁判所の判断ですが、現在の事案の結論は、求められた内容と対応の経過を踏まえて個別に判断されます。
直ちに出せない資料があるときの対応
資料をすぐに出せない場合は、理由と対応予定を説明し、担当者と提示・提出の方法を協議します。経過は次の事項を記録しておくと、後の判断や説明の材料になります。
- 求められた日時、資料、対象期間、提示・提出の方法
- 担当者からの説明と、こちらからの説明の内容
- 提示・提出した資料の範囲(提出物の控えを残します)
- まだ出せていない資料とその理由、代わりに確認してもらえる方法、対応予定日
ただし、予定日を伝えたことで提示・提出の求めに応じなくてよくなるわけではありません。担当者と提出方法を取り決めたことと、法定の保存要件を満たすこととも区別が必要です。調査の事前通知を受けた段階からの準備は「税務調査の事前通知を受けたときの準備」で解説しています。
修正申告に応じる前に、指摘の内容と資料を確認する
修正申告をすると、その修正申告を対象とする不服申立てはできず、争う場合は、要件を満たすときに更正の請求を検討することになります。調査結果の説明や修正申告の勧奨を受けたとき、提示・提出への対応に迷うときは、ご予約のうえ、指摘された取引・課税期間・金額・理由のメモと手元の帳簿・請求書等をご相談の際にお持ちください。補える部分と争う余地を整理します。
課税期間別に再計算し、争う範囲と手続を決める
否認の範囲が見えてきたら、課税期間ごとに、対象取引、本税、加算税・延滞税を分けて整理し、争いのない部分と争う部分を区別します。控除が否認されたことだけで不正な還付や脱税と評価されるわけではなく、本税、加算税、延滞税、刑事責任はそれぞれ別に検討します。
全額否認・一部控除・時期の違いを再計算する
全額が控除できない場合、経過措置の割合だけ控除できる場合、計上する課税期間がずれている場合とでは、税額への影響が異なります。取引日、適用税率、控除の計算方式、経過措置の割合を反映させ、課税期間ごとに計算し直します。
仮定の設例(考え方を示すための仮定であり、実際の事件ではありません)
一般課税の事業者が、令和8年(2026年)10月中に、国内で免税事業者から標準税率の対象となる商品を税込相当額11万円で仕入れたとします。取引の実在、時期、帳簿と区分記載請求書等の要件を満たし、上限の範囲内で、課税売上げに対応する部分として全額を計算でき、ほかに控除の制限はないものとします。国税と地方税を合わせた概算で比べると、仕入税額相当額は11万円×10/110=1万円、経過措置で控除できる額は1万円×70%=7,000円です。適格請求書発行事業者から仕入れて適格請求書を保存している場合(全額を控除できる場合)と比べた差は3,000円です。
実在しない取引は控除の対象になりません。また、必要な保存を欠く場合も、70%の控除が当然に残るわけではありません。実際の申告では、国税と地方税の区分、控除の計算方式、課税期間全体の集計と端数処理が必要になるため、この数字は追徴税額や還付額そのものではありません。
修正申告前・修正申告後・処分後で手続は異なる
調査の結果、更正等をすべきと認める場合、職員はその額と理由を含む調査結果の内容を説明します(国税通則法第74条の11第2項)。説明は原則として口頭で行われ、求めれば否認の理由を記載した書面が当然に交付される仕組みではないため(前記の国税庁FAQ)、対象の取引、課税期間、金額、理由と根拠を確認し、説明の内容を記録してください。調査中の口頭の説明と、処分の通知書に記載される理由とは区別して扱います。
修正申告の勧奨に応じるかどうかは任意ですが、応じない場合は、調査結果に基づいて更正等の処分が行われることになります(前記の国税庁FAQ)。職員は、勧奨の際に、修正申告をすると不服申立てはできないが更正の請求はできる旨を説明し、その旨を記載した書面を交付することとされています(国税通則法第74条の11第3項)。応じる前に、証拠と税額を確認します。
| 現在の段階 | 検討する手続 | 期限 |
|---|---|---|
| 還付の確認中・ 税務調査中 |
指摘の対象と理由の確認、資料の提示・提出の方法の協議 | 処分前のため、不服申立ての期間は始まっていません。取り決めた提出予定日(法定の期限ではありません)を記録し、守れない見込みのときは早めに協議します |
| 調査結果の説明・ 修正申告の勧奨を 受けた |
説明の内容の確認と、修正申告に応じるかどうかの判断 | 応じるかどうかは任意です(応じない場合は更正等の処分に進みます)。応じた後は、その修正申告への不服申立てはできません |
| 修正申告をした後 | 更正の請求(要件を満たす場合) | 原則として法定申告期限から5年以内(修正申告の日からではありません) |
| 更正などの処分の 通知を受けた後 |
再調査の請求(処分をした税務署長等に対して)又は審査請求(国税不服審判所長に対して) | 通知を受けた日の翌日から3か月以内。処分があった日の翌日から1年を経過するとできません |
| 再調査の請求についての 決定を受けた後 |
審査請求 | 再調査決定書の謄本の送達を受けた日の翌日から1か月以内 |
更正の請求は、原則として法定申告期限から5年以内にする必要があります(国税通則法第23条第1項)。請求には理由を裏付ける資料が必要で、請求できることと認められることは別です。後発的な理由による更正の請求の特則は別に検討が必要で、請求書等を後から入手しただけで期限が当然に延びるわけではありません(国税庁「消費税の更正の請求手続(法人)」「消費税の更正の請求手続(個人事業者)」)。
処分を受けた場合は、通知書を受け取った日を確定させて期限を管理します(国税通則法第75条・第77条、国税不服審判所「不服申立ての手続と期限」)。税務署への電話での抗議、担当者との協議、資料の収集を続けていることを理由に法定の期限が延びることはなく、正当な理由がある場合の例外を前提に動くことも避けます。提出先は、通知書に記載された処分庁と不服申立ての案内で確認します。
納付と資金繰りは別に確認する
不服申立てをしても、それだけで処分の効力や執行、手続の続行は止まりません(国税通則法第105条第1項)。差し押さえた財産の換価は、原則として不服申立ての決定又は裁決があるまで行うことができないとされていますが(同項ただし書)、それ以外の手続は進み得ます。更正の請求をしても、原則として徴収は猶予されません(同法第23条第5項)。争うことと納付・資金繰りの判断は分けて検討し、一度に納付することが難しい場合は、猶予の制度も含めて早めに確認してください。
相談前に整理したい資料と相談の進め方
資料がすべてそろうまで相談を待つ必要はありません。処分の通知を受けている場合は、期限の確認を優先してください。次の資料のうち、手元にあるものから整理しておくと、否認の範囲と争点を早く確認できます。
- 処分の通知書と、受け取った日が分かるもの(封筒を含みます)
- 対象の課税期間の申告書・付表、修正申告をした場合はその控え
- 指摘を受けた取引の一覧と、税務署の説明(対象・金額・理由)のメモ
- 対象取引の帳簿、請求書等、契約書・発注書・納品書・検収記録・送金の記録
- 電子データで受け取った請求書等の元データと保存場所
- 提示・提出を求められた日時・内容と、こちらの対応の記録
顧問税理士がいる場合も、税理士による申告や調査への対応と並行して、否認理由の法的な検討、証拠の整理、修正申告に応じるかどうかや不服申立ての方針について、弁護士にご相談いただけます。税務調査での関与の仕方は「税務調査での弁護士・公認会計士・税理士の役割」で解説しています。
仕入税額控除の否認について相談したい方へ
ご相談では、否認の対象となった取引と課税期間、資料の状況、手続の段階を伺い、補える部分と争う部分、期限と納付への対応を整理します。相談方法・費用は、案内ページ又はご予約の際にご確認ください。ご予約の際は、次の事項をお知らせください。資料がそろう前でもご予約いただけます。
- 対象の課税期間と、現在の段階(調査中、修正申告の勧奨、処分の通知)
- 処分の通知を受け取った日(処分を受けている場合)
- 否認の対象となった主な取引先の名称(当事務所との関係を確認するため)
確認の結果、ご相談をお受けできない場合があります。予約のお申込みの受付と相談の実施は別で、相談の日時はご予約の手続の中で調整します。お問い合わせやご予約によって、不服申立てなどの期限が延びることはありません。
相談の方法と条件は「初めての方へ(相談方法と相談条件)」、費用は「弁護士費用」のページで確認できます。
事務所紹介
弁護士法人ひょうご支所神戸みらい法律会計事務所(兵庫県弁護士会所属)は、神戸市須磨区中落合2丁目2-5 名谷センタービル7階にあり、名谷駅から徒歩1分です。在籍する弁護士の資格と経歴は、弁護士紹介のページでご覧いただけます。
よくある質問
取引先への振込みの記録があれば、仕入税額控除は認められますか。
振込みの記録だけでは足りません。課税仕入れに当たることと、原則として法定の事項を記載した帳簿と請求書等を保存していることが必要です。取引の相手方・内容・時期が問題とされた場合は、契約書や納品書などで裏付けることが重要になります。
請求書に登録番号がないと、全額が否認されますか。
直ちに全額が否認されるとは限りません。売手が適格請求書発行事業者であれば修正した適格請求書の交付を求めることができ、区分記載請求書等の記載事項と帳簿の保存などの要件を満たせば、経過措置により仕入税額相当額の一定割合を控除できる場合があります。税込1万円未満の取引は、少額特例の対象となることもあります。
後からインボイスを訂正してもらえば、控除は認められますか。
修正交付や、売手の確認を受けた仕入明細書等で記載の誤りを補える場合はありますが、過去の不保存や不提示まで当然に解消されるわけではありません。元の書類の有無、保存の状況、取得した時期、調査での対応などを確認して、個別に判断されます。訂正の日付を実際より前の日付にしてはいけません。
修正申告をした後でも、争うことはできますか。
修正申告そのものを対象として不服申立てをすることはできませんが、要件を満たせば、原則として法定申告期限から5年以内に更正の請求をすることができます。請求には理由を裏付ける資料が必要で、請求をしても当然に認められるわけではありません。
参考資料と情報基準日
- 消費税法(e-Gov法令検索)
- 国税通則法(e-Gov法令検索)
- 国税庁「No.6496 仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存」
- 国税庁「No.6497 仕入税額控除のために保存する帳簿および請求書等の記載事項」
- 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問113
- 国税庁「インボイス制度~応用編~」
- 国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」
- 国税庁「消費税還付申告に関する国税当局の対応について」
- 国税不服審判所「不服申立手続等」
- 最高裁判所第一小法廷平成16年12月16日判決(裁判所ウェブサイト)
この記事は、令和8年(2026年)10月17日時点の法令と公表資料(国税庁のタックスアンサーは令和8年4月1日現在の法令等、経過措置のQ&A(問113)は令和8年4月改訂版)に基づく一般的な情報です。個々の取引には、その取引の時点で適用される法令が適用され、結論は取引の内容と資料の状況によって異なります。

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